特開2017-224067(P2017-224067A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大学共同利用機関法人自然科学研究機構の特許一覧 ▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2017224067-わき見状態判定装置 図000003
  • 特開2017224067-わき見状態判定装置 図000004
  • 特開2017224067-わき見状態判定装置 図000005
  • 特開2017224067-わき見状態判定装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-224067(P2017-224067A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】わき見状態判定装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20171124BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   G08G1/16 F
   B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-117655(P2016-117655)
(22)【出願日】2016年6月14日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム『精神的価値が成長する感性イノベーション拠点』委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】伊佐 正
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正俊
(72)【発明者】
【氏名】ヴィール、リチャード・エドモンド
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 耕二
(72)【発明者】
【氏名】武田 雄策
(72)【発明者】
【氏名】原 利宏
(72)【発明者】
【氏名】岸 篤秀
(72)【発明者】
【氏名】西川 一男
(72)【発明者】
【氏名】農沢 隆秀
【テーマコード(参考)】
3D344
5H181
【Fターム(参考)】
3D344AA20
3D344AA30
3D344AB01
3D344AC25
3D344AD13
5H181AA01
5H181CC04
5H181FF27
5H181FF33
5H181FF35
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】判定対象者の視線方向にある視認対象物を的確に特定しつつ、特定された視認対象物を見ていないわき見状態であることを簡便に判定できるようにする。
【解決手段】車内カメラ1で撮像された撮像画像Gに基づいて、車両前方に存在する視認対象物となる視覚特徴点(例えば前方車両44、信号機45)が検出される。視覚特徴点と判定対象者の注視点とに基づいて、わき見状態であるか否かが判定される。例えば、視覚特徴点に対する判定対象者の視線移動の頻度が所定値以下のときに、視線方向(進行方向)わき見状態であると判定することができる。撮像画像Gから視線方向とは大きく異なる領域R1、R2を除外した後の補正画像に基づいて視覚特徴点を検出したり、危険対象物に限定して視覚特徴点を検出することもできる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
わき見の判定対象者の視線方向にある風景を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で取得された撮像画像から、判定対象者が注視すべき視認対象物となる視覚的特徴点を検出する視覚特徴点検出手段と、
前記判定対象者の注視点を検出する注視点検出手段と、
前記視覚特徴点検出手段により検出された視覚特徴点と前記注視点検出手段により検出された注視点とに基づいて、判定対象者が前記視覚特徴点を見ていないわき見であるか否かを判定するわき見判定手段と、
を備えていることを特徴とするわき見状態判定装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記わき見判定手段は、前記注視点の前記視覚特徴点への視線移動頻度があらかじめ設定された所定値以下のときに、わき見であると判定する、ことを特徴とするわき見状態判定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記視覚特徴点検出手段は、前記撮像画像中における少なくとも輝度、色、エッジ方向、動きに基づいて視覚特徴点を検出する、ことを特徴とするわき見状態判定装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記撮像画像中から、視認しなくともよい領域を除外する領域除外手段を備え、
前記視覚特徴点検出手段は、前記領域除外手段で領域除外された後の撮像画像に基づいて視覚特徴点を検出する、
ことを特徴とするわき見状態判定装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記視覚特徴点検出手段は、危険対象物に限定して視覚特徴点を検出する、ことを特徴とするわき見状態判定装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記判定対象者が、移動体を運転あるいは操縦する者とされ、
前記わき見判定手段は、前記判定対象者の視線方向が前記移動体の移動方向とほぼ一致していることを条件としてわき見の判定を行う、ことを特徴とするわき見状態判定装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、
前記わき見判定手段によって前記判定対象者がわき見をしていると判定されたときに警報を行う警報手段を備えている、ことを特徴とするわき見状態判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、わき見状態判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運転者のわき見は、安全運転を行う上で好ましくないものである。特許文献1には、視線が動くときに生じる跳躍運動の1回あたりの移動量から、進行方向を見ていないときのわき見を判定するものが開示されている。
【0003】
わき見の中には、車両の進行方向を見ていない一般的なわき見の他、進行方向を見ているるが、注視すべき物を見ていないときのわき見(「進行方向わき見」と定義する)がある。すなわち、運転者の注意力が散漫なとき等は、運転者の視線が車両の前方を向いていても(視線方向が車両前方方向であって)、車両前方に存在する危険物等の視認すべき視認対象物を十分に見ていないために、事実上わき見状態となっていることがある。なお、特許文献2には、運転者の脳波に基づいて、運転者の視線方向が前方を向いている状態でのわき見を判定するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−99899号公報
【特許文献2】特開2012−85746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した進行方向わき見つまり視線方向わき見であるか否かを判定するために、特許文献2に記載のように運転者の脳波を用いることは一般的でなく(脳波検出装置がかなり大掛かりでコスト高)、より簡便な手法で判定できるようにすることが望まれる。また、わき見であるか否かを判定するには、注視すべき対象物を特定する必要があるが、この注視すべき対象物をいかに的確に特定するかも問題になる。
【0006】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、注視すべき対象物を的確に特定しつつ、簡便な手法により視線方向わき見を判定できるようにしたわき見状態判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明にあっては、次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
わき見の判定対象者の視線方向にある風景を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で取得された撮像画像から、判定対象者が注視すべき視認対象物となる視覚的特徴点を検出する視覚特徴点検出手段と、
前記判定対象者の注視点を検出する注視点検出手段と、
前記視覚特徴点検出手段により検出された視覚特徴点と前記注視点検出手段により検出された注視点とに基づいて、判定対象者が前記視覚特徴点を見ていないわき見であるか否かを判定するわき見判定手段と、
を備えているようにしてある。判定対象者が注視すべき対象物を視覚特徴点検出手段によって的確に特定することができる。そして、特定された視覚特徴点と判定対象者の注視点とに基づくという簡便な手法によって視線方向わき見であるか否かを判定することができる。
【0008】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
前記わき見判定手段は、前記注視点の前記視覚特徴点への視線移動頻度があらかじめ設定された所定値以下のときに、わき見であると判定する、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、わき見することなく視覚特徴点を視認しているときは、視覚特徴点に対する視線移動の頻度が高くなることから、この視線移動の頻度に基づいてわき見であるか否かを精度よく判定することができる。
【0009】
前記視覚特徴点検出手段は、前記撮像画像中における少なくとも輝度、色、エッジ方向、動きに基づいて視覚特徴点を検出する、ようにしてある(請求項3対応)。この場合、輝度、色、エッジ方向、動きというような人間が直感的に認識しやすいものを注視すべき(わき見によって見過ごしてはならない)視認対象物として特定して、注視すべき視認対象物をより的確に検出する上で好ましいものとなる。
【0010】
前記撮像画像中から、視認しなくともよい領域を除外する領域除外手段を備え、
前記視覚特徴点検出手段は、前記領域除外手段で領域除外された後の撮像画像に基づいて視覚特徴点を検出する、
ようにしてある(請求項4対応)。この場合、判定対象者の視認方向とは無関係な方向にある視覚特徴点等を、不必要に判定対象としてしまう事態を防止して、制御系の負担軽減やわき見であると誤って判定してしまう事態を防止する上でも好ましいものとなる。
【0011】
前記視覚特徴点検出手段は、危険対象物に限定して視覚特徴点を検出する、ようにしてある(請求項5対応)。この場合、わき見判定の対象とすべき視認対象物を的確に限定して、請求項4に対応した効果をより一層高める上で好ましいものとなる。
【0012】
前記判定対象者が、移動体を運転あるいは操縦する者とされ、
前記わき見判定手段は、前記判定対象者の視線方向が前記移動体の移動方向とほぼ一致していることを条件としてわき見の判定を行う、
ようにしてある(請求項6対応)。この場合、移動体の進行方向とは大きくずれた方向にある物体等をわき見判定の視認対象物として特定してしまう事態を防止して、進行方向わき見を的確に判定する上で好ましいものとなる。
【0013】
前記わき見判定手段によって前記判定対象者がわき見をしていると判定されたときに警報を行う警報手段を備えている、ようにしてある(請求項7対応)。この場合、わき見状態から視認対象物をきちんと視認する正常状態へと復帰させる上で好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、注視すべき視覚特徴点を的確に特定しつつ、視線方向わき見であることを簡便に判定して、安全運転向上の上で好ましいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の制御系統例を示す図。
図2】車両前方に存在する視覚特徴点の例を示す図。
図3図2に示す前方風景を撮像した撮像画像から、除外領域を設定する例を示す図。
図4】本発明の制御例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明するが、実施形態では、判定対象者が移動体としての車両(実施形態では自動車)の運転者であり、したがって視線方向わき見の判定は、視線方向が車両の進行方向であるときとなる進行方向わき見について行うようにしてあ
まず、図1は、本発明の制御系統例をブロック図的に示すものであり、移動体としての自動車(自車両)に搭載されている。図中、Uはマイクロコンピュータを利用して構成されたコントローラ(制御ユニット)である。このコントローラUには、各種センサや機器類1〜4からの信号が入力される。すなわち、1は、自車両前方を撮像するカメラであり、このカメラ1により、自車両前方の周囲状況が取得される。なお、カメラ1をカラー方式のステレオカメラとすることにより、視認対象物までの距離や色をも検出することができる。なお、視認対象物までの距離の検出のために、別途レーダを利用することもできる。
【0017】
図1中、2は、車室内に搭載されたアイカメラであり、特に運転者の視線方向(注視方向)を検出するものとなっている。3は、各種センサを利用した車両状態検出手段であり、例えば、車速、加速度、ヨーレート、エンジン回転数、舵角、ワイパの作動状況(雨天、降雪等の検出用)、ライト作動状況(昼間、夜間の検出)等が検出される。4は、ナビゲーション装置であり、現在走行している道路の状況や前方の道路状況に関する情報((例えば高速道路、一般道路、直線路、カーブ路、交差点、各種道路標識や交通信号機の存在等)が取得される他、自車両位置情報等が取得される。
【0018】
コントローラUは、後述するように、視認すべき対象物となるを示す視覚特徴点の検出と、この検出された視覚特徴点と運転者の視線(注視点)との比較結果に基づいて進行方向わき見をしているか否かを判定するわき見判定と、を行うようになっている。そして、進行方向わき見であると判定したときは、プロジェクションマッピング装置11、ヘッドアップディスプレイ12あるいはスピーカ13を制御して、運転者に注意喚起(警告)を行うようになっている。
【0019】
コントローラUは、視覚特徴点つまり運転者が視認すべき視認対象物を決定(抽出)するために、後述するように、サリエンシーモデル21のモデル系を有している。サリエンシーモデル21は、見た瞬間に視認されるもの(目立つもの)を視認対象物として決定するためのものであり、例えば、大きいもの、明るいもの(輝度が高いもの)、コントラストが強いもの(色)、周囲と異なるエッジ方向や動きをしている物等が対象となる。そして、サリエンシーモデル21には、車両前方に存在する多くの視認対象物のうち、特に危険となる視認対象物(例えば前方車両、対向車両、信号機、歩行者等々)の情報が数多く記憶されている。
【0020】
コントローラUは、データベース22を有しており、このデータベース22には、視認対象物を確実に注視しているときの当該視認対象物に対する視線移動の頻度(単位時間あたりの視線移動回数)を記憶している。すなわち、データベース22には、視認対象物が例えば交差点の信号機としたとき、注視状態であれば(わき見することなく信号機を見ている状態であれば)、この信号機に対して単位時間あたり何回以上視線移動するかという情報を対応づけて記憶している。そして、データベース22には、視認対象物として、信号機の他、歩行者、前方車両、対向車両等々、数多くの視認対象物について、道路状況や天候等々をも対応させつつ、上記視線移動回数が対応づけて記憶されている。
【0021】
次に、図2に基づいて、視認対象物となる視覚特徴点の検出手法について説明する。図2中、31はフロントウインドガラスで、ルーフパネル32の前縁部によってフロントウインドガラス31の上縁部(上枠部)が規定され、インストルメントパネル33の前縁部によってフロントウインドガラスの下縁部(下枠部)が規定され、左右のフロントピラー34R、34Lによってフロントウインドガラス31の左右縁部(左右枠部)が規定される。35R、35Lは左右のサイドミラー、36はバックミラー、37はメータパネル、38はステアリングハンドルである(図2では左ハンドル車となっている)。
【0022】
図2においては、フロントウインドガラス31を通して運転者により視認される前方の道路状況として、自車両が走行している走行車線が符号41で示され、対向車線が符号42で示され、その中央境界線が符号43で示される。車線41には、前方車両44が存在し、前方車両44の前方に信号機45が存在し、対向車線42の路肩沿いに点灯式の看板46が存在している。
【0023】
図2において、サリエンシーモデル21においては、見た瞬間に目立つものを視認対象物として決定することから、すぐ前方を走行している前方車両44の他、信号機45と光っている看板46とが視認対象物として決定される。特に、前方車両44のブレーキランプが点灯された場合には、このブレーキランプが点灯された前方車両44は危険対象物とされ、また信黄色表示あるいは赤色表示のときにおける号機45も危険対象物とされる。
【0024】
カメラ1によって撮像された撮像画像には、少なくとも上記前方車両44、信号機45、看板46が視認対象物を示す視覚特徴点として表示されたものとなる。撮像画像中に含まれる全ての視覚特徴点のうち、わき見の対象とならない視覚特徴点も多く存在するのが実情である。例えば、車両の進行方向とは大きく左右にずれた位置にある看板46はわき見判定の対象外であり、また、フロントウインドガラス31の左上方領域も、わき見判定の対象外となる。さらに、フロントウインドガラス31の上縁部付近にある空の景色も判定対象外として問題のない領域となる。このため、わき見判定の対象となる視覚特徴点を抽出する(絞り込む)ために、例えば図3に示すように、撮像画像G中における領域R1とR2とはわき見判定する領域から除外するように処理される。
【0025】
コントローラUは、進行方向わき見の判定を行う判定実行条件として、アイカメラ2によって検出される運転者の視線方向が、車両の進行方向とほぼ一致しているとき、つまり車両進行方向に対する視線方向のオフセット量が所定量(所定角度)以下のときとしてある。
【0026】
コントローラUは、運転者の視線方向(つまり注視点)が、図3に示すような撮像画像Gから検出される視覚特徴点となる例えば前方車両44、信号機45のそれぞれに対して、運転者の視線の移動頻度が所定値以下のときに、前方車両44あるいは信号機45を見ていないわき見状態(進行方向わき見状態)であると判定する。
【0027】
次に、コントローラUの制御内容の詳細について、図4に示すフローチャートを参照しつつ説明する。なお、以下の説明でQはステップを示す。
【0028】
まず、Q1において、車両の車速、加速度、ヨーレート等の巣状態が読み込まれる。この後、Q2において、カメラ1によって撮像された前方状況(前方風景)を示す撮像画像が取得される。この後、Q3において、車両状態に応じて、視覚特徴点を抽出するための撮像画像中から除外する領域を設定するための前処理が行われる。すなわち、除外する領域として、例えば、車速が高いときや加速時には撮像画像中の左右領域が除外領域として設定され、ヨーレートが発生しているときは、カーブ走行なので曲がる方向とは反対側の領域が除外される。なお、このような除外領域の設定は一例であり、この他、車両状態や運転者状態(特に疲労状態)に応じて適宜除外領域を設定することもできる。
【0029】
Q4においては、Q3で設定された除外領域が除外された(補正された)後の撮像画像が取得される。この後、Q5において、除外領域を除いた撮像画像(例えば図3に示すように領域R1とR2を除外した撮像画像)から、視覚特徴点(領域)を示すサリエンシーが演算(抽出)される(図3の場合、前方車両44、信号機45が抽出される)。
【0030】
Q5の後、Q6において、Q5で抽出された視覚特徴点のうち、危険領域が設定される。すなわち、視覚特徴点としては、例えば図3に示すように前方車両44および信号機45が抽出されるが、例えば、前方車両44においては特異な動きをしておらず、また前方車両44に対する車間距離も十分にあるときは、この前方車両44は特に危険対象物とする必要がないことになる。この一方、前方車両44との車間距離が小さすぎる場合や、ブレーキランプが点灯されたときは、この前方車両44の存在領域が危険領域とされる。一方、信号機45について、黄色表示あるいは赤色表示であるときは、信号機45が危険対象物であるとされる(青色表示であるときは危険対象物とされない)。このように、視覚特徴点が複数存在する場合は、その中から特に注意すべき危険対象物が絞り込まれることになる。
【0031】
上記Q6の後、Q7において、アイカメラ2によって、運転者の視線行動が検出される。この後、Q8において、Q6において絞り込まれた危険対象物(例えば信号機45)に対して行われた運転者の視線移動の頻度が演算される。
【0032】
Q8の後、Q9において、Q8で取得された視線移動の頻度が、データベース22に記憶された基準の視線頻度と比較されてる。この基準の視線移動の頻度は、危険対象物が例えば信号機45であるときは、データベース22に記憶されている信号機に対する視線移動の頻度のうち、例えば車両の現在の状況や信号機の表示状態に対応した視線移動の頻度が選択(抽出)される。Q9での比較は、Q8で取得された視線移動の頻度が、データベース22から抽出された基準の視線移動の頻度以上であるか否かの比較となる。
【0033】
この後、Q10において、注意状態の判定が行われる。このQ10での判定は、Q9での比較の結果が、Q8で3取得された視線移動の頻度が、データベース22から抽出された基準の視線移動の頻度以上であるときは、信号機45を注視している正常状態であって、注意低下ではないとされる。逆に、Q8で3取得された視線移動の頻度が、データベース22から抽出された基準の視線移動の頻度未満であるときは、信号機45を見落としているあるいは信号機45の表示内容を十分に認識していない注意低下状態(進行方向のわき見状態)であるとされる。
【0034】
Q11においては、Q10での比較結果に基づいて、注意低下状態(進行方向わき見状態)であるか否かが判別される。このQ11の判別でNOのときは、そのままリターンされる.Q11の判別でYESのときは、Q12において、運転者に対する注意喚起方法が演算された後、Q13において、Q12で演算された注意喚起方法でもって注意喚起が実行される。
【0035】
Q12、Q13の処理は、進行方向わき見であると判定されている状態で、例えば車両の状況や道路状況等に応じて注意すべき内容を変更するための処理となる。例えば、黄色表示や赤色表示されているときの信号機45に対するわき見のときは、危険なので、スピーカ13により音声による注意喚起(重度の注意喚起)が行われる(例えば「前方の信号機が赤です」というような音声注意)。また、前方車両44までの車間距離が小さいときでこの前方車両44に対するわき見のときは、例えばヘッドアップディスプレイ12はプロジェクションマッピング11による表示によって、例えば「車間距離をもっと確保しましょう」といいうような注意喚起が行われる(軽度の注意喚起)。なお、注意喚起(警報)の内容は、種々選択でき、例えば視認対象物(特に危険対象物)の位置に対応した位置に、プロジェクションマッピング装置11によって点灯表示(あるいは点滅表示)を行って、注視すべき位置を運転者に報知することもできる。
【0036】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能である。判定対象者としては、車両の運転者に限らず、船舶や航空機の操縦者、クレーン等のオペレータ等々、視線方向(移動体の進行方向)のわき見が問題となるような者であれば、適宜のものを判定対象者とすることができ、また移動体の運転者あるいは操縦者に限らず、例えば定位置でもって監視を行う者であってもよい。視線方向が移動体の進行方向とは所定以上大きくずれた一般的なわき見についても合わせて判定することもでき、この場合、運転者に対するわき見の注意喚起(警報)の内容を、一般的なわき見と視認方向(移動体の場合は進行方向)のわき見とで区別して行うこともできる。図4に示すステップ(あるいはステップ群)は、コントローラUの有する機能(あるいは手段)として表現することができる。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、注視すべき視覚特徴点を的確に特定しつつ、例えば車両の運転者における進行方向わき見であることを簡便に判定して、安全運転向上の上で好ましいものとなる。
【符号の説明】
【0038】
U:コントローラ
1:カメラ(前方風景)
2:アイカメラ
3:センサ(車両状態検出)
4:ナビゲーション装置
11:プロジェクションマッピング(注意喚起用)
12:ヘッドアップディスプレイ(注意喚起用)
13:スピーカ(注意喚起用)
図1
図2
図3
図4