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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-226550(P2017-226550A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】ナノ結晶膜の作製方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/00 20060101AFI20171201BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20171201BHJP
【FI】
   C01G23/00 C
   B82Y40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-121735(P2016-121735)
(22)【出願日】2016年6月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100185018
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】高塚 裕二
【テーマコード(参考)】
4G047
【Fターム(参考)】
4G047CA07
4G047CB05
4G047CC02
4G047CD02
4G047CD07
(57)【要約】
【課題】誘電体膜の誘電特性を維持し、その成膜速度が従来に比べ速い、ナノ結晶膜の作製方法を提供すること。
【解決手段】チタン酸バリウムナノ結晶及びチタン酸ストロンチウムナノ結晶のうち少なくとも1種と溶媒とを含むナノ結晶含有液と基板との界面の近傍で、溶媒の蒸発によりナノ結晶を集積し、毛管現象を利用して、ナノ結晶を基板に成膜するナノ結晶膜の作製方法であって、基板の表面に、ナノ結晶含有液の液層を形成する工程と、基板を囲うチャンバ部材で基板を囲い、チャンバ部材の内部を溶媒の飽和蒸気圧又は飽和蒸気圧近傍にする工程と、基板を徐々に移動し、液層の一部分を、チャンバ部材の外部に移動して、溶媒を蒸発により乾燥させ、ナノ結晶を基板に成膜する工程と、を含むことを特徴とするナノ結晶膜の作製方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸バリウムナノ結晶及びチタン酸ストロンチウムナノ結晶のうち少なくとも1種と溶媒とを含むナノ結晶含有液と基板との界面の近傍に、前記溶媒の蒸発により前記ナノ結晶を集積し、毛管現象を利用して、前記ナノ結晶を前記基板に成膜するナノ結晶膜の作製方法であって、
前記基板の表面に、前記ナノ結晶含有液の液層を形成する工程と、
前記基板を囲うチャンバ部材で前記基板を囲い、前記チャンバ部材の内部の雰囲気を前記溶媒の飽和蒸気圧又は飽和蒸気圧近傍にする工程と、
前記基板を徐々に移動し、前記液層の一部分を前記チャンバ部材の外部に移動して、前記溶媒を蒸発により乾燥させ、前記ナノ結晶を前記基板に成膜する工程と、
を含むことを特徴とするナノ結晶膜の作製方法。
【請求項2】
前記溶媒は非極性溶媒であることを特徴とする、請求項1に記載のナノ結晶膜の作製方法。
【請求項3】
前記ナノ結晶含有液は、前記ナノ結晶と前記溶媒とを容器に入れ、前記容器内から前記ナノ結晶を含む上澄み液を採取して作製することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のナノ結晶膜の作製方法。
【請求項4】
前記溶媒は沸点が60℃以上100℃以下であることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のナノ結晶膜の作製方法。
【請求項5】
前記溶媒は、ハイドロフルオロエーテルであることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のナノ結晶膜の作製方法。
【請求項6】
前記基板を移動する速度は、0.1μm/sec以上0.5μm/sec以下であることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のナノ結晶膜の作製方法。
【請求項7】
前記ナノ結晶は6面体状であることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のナノ結晶膜の作製方法。
【請求項8】
前記基板の移動は水平方向である、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のナノ結晶膜の作製方法。
【請求項9】
前記液層は、枠状の部材を用いて形成する、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のナノ結晶膜の作製方法。
【請求項10】
前記基板は電極を備え、前記ナノ結晶を前記電極に成膜する、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のナノ結晶膜の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノ結晶膜の作製方法に関し、さらに詳しくは、強誘電体のナノ結晶膜の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層コンデンサに使用される誘電体の材料には、高い比誘電率を有するチタン酸バリウム(BaTiO、以下「BT」と称すこともある。)やチタン酸ストロンチウム(SrTiO、以下「ST」と称すこともある。)が用いられている。近年の携帯電話等の電子デバイスの小型化に伴い、そこに搭載される積層コンデンサも、小型化、薄型化と同時に大容量化が要求されている。コンデンサの電気容量は、材料の比誘電率に比例して増加することとともに、材料の厚みの逆数にも比例して増加することが知られている。このため、コンデンサの電気容量を増大するには、比誘電率が高い強誘電体の薄膜化が必要とされる。
【0003】
強誘電体の薄膜化の要求に伴い、チタン酸バリウム及びチタン酸ストロンチウムは、微粒子化が要求され、微粒子を合成する技術が開発されている。また、チタン酸バリウムは、結晶系により強誘電相から常誘電相に変化することが知られている。このため、チタン酸バリウムは、強誘電相を保持したまま、ナノ粒子化する技術が開発されてきている。チタン酸バリウムをナノ粒子化する技術に関しては、水熱法、焼結法、あるいはゾル−ゲル法などの方法を用いた合成例が報告されている。例えば、下記の非特許文献1では、温度135℃の水熱条件下において、脂肪酸金属塩の熱分解によりチタン酸バリウムのナノ結晶を合成する方法が報告されている。また、下記の非特許文献2では、チタン酸ストロンチウムのナノ結晶を合成する方法が報告されている。また、ドクターブレード法により誘電体グリーンシートを作製する方法が知られているが、下記非特許文献3では、ドクターブレード法で形成できるグリーンシートの厚みは0.5μmが限界とされている。このため、ナノ結晶を膜厚0.5μm以下の電子デバイス等に応用するには、基板上にナノ結晶を整列する技術の確立が必要とされる。
【0004】
また、下記の非特許文献4及び非特許文献5には、微細粒子を整列させる手法として、移流集積法の例が記載されている。移流集積法については、また、下記の特許文献1及び下記の特許文献2にも記載されている。特許文献1では、強誘電相であるチタン酸バリウム(BaTiO)のキューブ状のナノ結晶を作製する方法が報告されている。特許文献2ではチタン酸バリウムナノ結晶、チタン酸ストロンチウムナノ結晶、又は、チタン酸バリウムナノ結晶及びチタン酸ストロンチウムナノ結晶をトルエンやヘキサン等の非極性溶媒に分散させた溶液を遠心分離して得た上澄み液に、主に分子や非角型の粒子に対して用いられてきた移流集積法を適用することで、基板上にナノ結晶を二次元的に配列させる方法が記載されている。この方法では、ナノ結晶を上澄み液中に浮遊させ、その上澄み液に基板を浸漬し、上澄み液が基板の上方に濡れ拡がる毛管現象を利用して上澄み液を基板上に濡れ広がせる。さらに濡れ広がった上澄み液から非極性媒質が蒸発すると液面が下がり、液面から粒子の一部が露出し粒子間に引き寄せあう力(横毛管力)が働くことでナノ結晶が整列する。これは、粒子間に存在する溶媒の表面エネルギーを小さくするように変化しようとするためである。
【0005】
さらに、下記の非特許文献6〜非特許文献8には、非極性溶媒としてメシチレン(トリクロロベンゼン)を使用し、メシチレンにチタン酸バリウムのナノ結晶を加えて濃度を約0.1%(5×10−3g/cm)とした液にPt/TiO/SiO/Si基板(20mm×8mm)を浸漬し、0.01〜0.05μm/secの速度で引き上げることによりナノ結晶を配列し、配列したナノ結晶膜を乾燥した後、酸素雰囲気中で400℃1時間の仮焼、及び850℃1時間の焼成を行うことによりチタン酸バリウムのナノ結晶膜を作製し、作製したナノ結晶膜の誘電率が3000であったことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−188334号公報
【特許文献2】特開2012−188335号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】S. Adireddy, C .Lin, B. Cao, W. Zhou, G. Caruntu, Chemistry of Materials, 2010, 22, 6, p1946-1948
【非特許文献2】K. Fujinami, K. Katagiri, J. Kamiya, T. Hamanaka, K. Koumoto, Nanoscale, 2010, 2, p2080-2083
【非特許文献3】村田製作所(編者)、「セラミックコンデンサの基礎と応用」、オーム社、2003年
【非特許文献4】永山国昭、「自己集積の自然と科学」、丸善、1997年
【非特許文献5】Y. Xia, B. Gates, Y. Yin, Y. Lu, Advanced Materials, 2000, 12, 693-713
【非特許文献6】K. Mimura, K. Kato, Journal of Nanoparticle Research, 2013, 15, p1995
【非特許文献7】K. Mimura, K. Kato, Applied Physics Express, 2014, 7, 061501
【非特許文献8】加藤一実、「セラミックデータブック 2014」、Vol.42, p44-49
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の方法では、高特性の誘電体膜を作製できるが、成膜速度が非常に遅い。例えば、1mmの長さの膜を作るのに20000秒〜100000秒(5.5〜28時間)かかる。従来の方法では、ナノ粒子の集積がブラウン運動によって行われるため、成膜速度を大きくできないことが問題であった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、誘電体膜の誘電特性を維持し、且つ成膜速度が速い、ナノ結晶膜の作製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために、ナノ粒子を含む液体と基板界面のナノ粒子集積、配列現象を検討し、従来の方法ではナノ粒子の集積が希薄液体からブラウン運動により起きていることと、一旦集積した粒子は脱離しにくいことを見出した。ナノ粒子の濃度を高くするとナノ粒子の集積速度は高くなるが、ナノ粒子が集積する際、ナノ粒子の凝集などが起こり、その結果、ナノ粒子を含む液の分散安定性が悪くなる。そこで、本発明者らは、溶媒と基板の界面の近傍を部分的に乾燥させて、界面近傍のナノ粒子濃度を高くすることで成膜速度が大幅に向上することを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の第1の態様によれば、チタン酸バリウムナノ結晶及びチタン酸ストロンチウムナノ結晶のうち少なくとも1種と溶媒とを含むナノ結晶含有液と基板との界面の近傍で、溶媒の蒸発によりナノ結晶を集積し、毛管現象を利用して、ナノ結晶を基板に成膜するナノ結晶膜の作製方法であって、基板の表面に、ナノ結晶含有液の液層を形成する工程と、基板を囲うチャンバ部材で基板を囲い、チャンバ部材の内部の雰囲気を溶媒の飽和蒸気圧又は飽和蒸気圧近傍にする工程と、基板を徐々に移動し、液層の一部分をチャンバ部材の外部に移動して、溶媒を蒸発により乾燥させ、ナノ結晶を基板に成膜する工程と、を含むことを特徴とするナノ結晶膜の作製方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第2の態様によれば、第1の態様において、溶媒は非極性溶媒であることを特徴とするナノ結晶膜の作製方法が提供される。
【0013】
また、本発明の第3の態様によれば、第1又は第2の態様において、ナノ結晶含有液は、チタン酸バリウムナノ結晶及びチタン酸ストロンチウムナノ結晶のうち少なくとも1つと溶媒とを容器に入れ、容器内からナノ結晶を含む上澄み液を採取して作製することを特徴とするナノ結晶膜の作製方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第4の態様によれば、第1から第3のいずれかの態様において、溶媒は沸点が60℃以上100℃以下であることを特徴とするナノ結晶膜の作製方法が提供される。
【0015】
また、本発明の第5の態様によれば、第1から第4のいずれかの態様において、溶媒は、ハイドロフルオロエーテルであることを特徴とするナノ結晶膜の作製方法が提供される。
【0016】
また、本発明の第6の態様によれば、第1から第5のいずれかの態様において、基板を移動する速度は、0.1μm/sec以上0.5μm/sec以下であることを特徴とするナノ結晶膜の作製方法が提供される。
【0017】
また、本発明の第7の態様によれば、第1から第6のいずれかの態様において、ナノ結晶は6面体状であることを特徴とするナノ結晶膜の作製方法が提供される。
【0018】
また、本発明の第8の態様によれば、第1から第7のいずれかの態様において、基板の移動は水平方向であることを特徴とするナノ結晶膜の作製方法が提供される。
【0019】
また、本発明の第9の態様によれば、第1から第8のいずれかの態様において、液層は、枠状の部材を用いて形成することを特徴とするナノ結晶膜の作製方法が提供される。
【0020】
また、本発明の第10の態様によれば、第1から第9のいずれかの態様において、基板は電極を備え、ナノ結晶を電極に成膜することを特徴とするナノ結晶膜の作製方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明のナノ結晶膜の作製方法によれば、誘電体膜の誘電特性を維持し、且つ成膜速度が速い、ナノ結晶膜の作製方法を提供することが可能であり、その工業的価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係るナノ結晶膜の一例を示す図である。
図2】実施形態に係るナノ結晶膜の作製方法の一例を示すフローチャートである。
図3】実施形態に係るナノ結晶膜の作製方法を示す図である。
図4図3に続いて、ナノ結晶膜の作製方法を示す図である。
図5図4に続いて、ナノ結晶膜の作製方法を示す図である。
図6図5に続いて、ナノ結晶膜の作製方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。以下の各図において、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、水平面に平行な平面をXY平面とする。また、XY平面に垂直な方向はZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるものとして説明する。
【0024】
本実施形態のナノ結晶膜の作製方法を説明する。以下、「ナノ結晶膜の作製方法」を「作製方法」と称す。図1は本実施形態のナノ結晶膜1の一例を示す側面図である。本実施形態の作製方法は、ナノ結晶2により形成されたナノ結晶膜1を作製する方法である。ナノ結晶膜1は、例えば、基板Sの表面に作製される。
【0025】
ナノ結晶2は、チタン酸バリウムナノ結晶及びチタン酸ストロンチウムナノ結晶のうち少なくとも1種である。なお、チタン酸バリウム(BaTiO)及びチタン酸ストロンチウム(SrTiO)は、それぞれ、一部の原子が他の原子に置換されていてもよい。なお、ナノ結晶2は、その粒径が0.1nm以上1000nm未満のものをいう。ナノ結晶2の粒径は、特に限定されず、例えば、10nm以上50nm以下程度である。ナノ結晶2の粒子の形状は、特に限定されないが、例えば、ナノ結晶2の粒子の形状が、球状、6面体状のものを用いることができる。ナノ結晶2の粒子の形状が、6面体状である場合、ナノ結晶2が緻密に配列されたナノ結晶膜1を製造することができる。
【0026】
図2は、本作製方法の一例を示すフローチャートである。図3から図6は、本製造方法の一例を示す図である。なお、図3(A)は側面図であり、図3(B)は図3(A)の上面図である。図4(A)は断面図であり、図4(B)は図4(A)の上面図である。図5は断面図である。図6(A)から図6(C)は、それぞれ、断面図である。図2の説明において、適宜、図1及び図3から図6を参照する。なお、以下の説明は、本作製方法の一例であり、これに限定されるものではない。
【0027】
本作製方法は、例えば、下記の4つの工程を含む。ステップS1において、ナノ結晶含有液3を作製する。ステップS2において、基板Sの表面に、ナノ結晶含有液3の液層5を形成する。ステップS3において、基板Sを囲うチャンバ部材8で基板Sを囲い、チャンバ部材8の内部9の雰囲気を溶媒4の飽和蒸気圧又は飽和蒸気圧近傍にする。ステップS4において、基板Sを徐々に移動し、液層5の一部分を、チャンバ部材8の外部に移動して、溶媒4を蒸発により乾燥させ、ナノ結晶2を基板Sに成膜する。以下、各工程について順に説明する。
【0028】
ステップS1は、ナノ結晶含有液3を作製する工程である。ナノ結晶2の作製は、特に限定されず、公知の方法を用いて行うことができる。チタン酸バリウムのナノ結晶2の作製は、例えば、従来技術である以下に説明する方法により行うことができるが、この方法に限定するものではない。例えば、チタン酸バリウムのナノ結晶2の作製方法は、上記特許文献1あるいは特許文献2に記載される方法を用いてもよい。また、チタン酸ストロンチウムのナノ結晶2の作製方法は、上記特許文献2あるいは非特許文献2に記載される方法を用いてもよい。
【0029】
チタン酸バリウムのナノ結晶2の作製は、0.05mol/L(0.05M)の水酸化バリウム水溶液(Ba(OH))31.2mLと、TALH(水溶性チタン錯体)0.94mLと、オレイン酸(OLA)(有機カルボン酸)4.9mLと、tert−ブチルアミン(アミン化合物)1.66mLと、1mol/L(1M)の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液7.8mLとをPTFE容器(三愛科学製、HUT−50)に入れて混合する。ここで、水酸化バリウム水溶液とTALHはBa:Ti=1:1に、また、Ba:OLA:tert−ブチルアミン=1:8:8になるように混合する。この混合物を耐圧ステンレス製外筒(例、三愛科学製、HUS−50)に入れて密閉し、オートクレーブで、200℃、76時間の条件で加熱した後、室温まで冷却することにより、チタン酸バリウムのナノ結晶2を合成できる。この方法により合成されるナノ結晶2は六面体状の結晶である。なお、合成したナノ結晶2は、X線粉末回折法を用いて、(100)回折線が22°付近に、また、(200)回折線が44°付近に現れることから、チタン酸バリウムであることが確認される。
【0030】
次いで、オートクレーブからチタン酸バリウムのナノ結晶2を含有する液を取り出し、遠心分離機用の専用の容器に移して、遠心分離機(例、株式会社コクサン製、H−103n型)で、5300rpm(第1の回転速度)、3分間の条件で遠心し、容器の底に沈殿したチタン酸バリウムのナノ結晶2を回収する。チタン酸バリウムのナノ結晶2の合成後の溶液を遠心分離して、ナノ結晶2を回収する場合、ナノ結晶膜1の作製に用いない粒径が小さな結晶などを取り除くことができる。なお、上記チタン酸バリウムのナノ結晶2の合成後の遠心分離の条件は、上記条件に限定されず、ナノ結晶2を再分散可能な状態で回収可能であればよい。
【0031】
次いで、遠心分離により回収したチタン酸バリウムのナノ結晶2は脱水エタノールで複数回洗浄する。洗浄回数は、例えば、3回から5回行うことが好ましい。以上の工程により、チタン酸バリウムのナノ結晶2を作製することができる。
【0032】
次に、ナノ結晶2と溶媒4とを含むナノ結晶含有液3(図4(A)参照)を作製する。ナノ結晶含有液3は、例えば、溶媒4でナノ結晶2を分散したものである。ナノ結晶含有液3は、例えば、ナノ結晶2と溶媒4とを容器に入れ、ナノ結晶2を分散し、容器内からナノ結晶2を含む上澄み液を採取して作製することができる。この場合、ナノ結晶2の凝集が抑制され、ナノ結晶2が分散されたナノ結晶含有液3を作製することができる。ナノ結晶2の分散は、例えば、超音波などを照射することにより行うことができる。ナノ結晶含有液3におけるナノ結晶2の濃度は、特に限定されないが、例えば、0.01質量%以上1質量%以下が好ましい。ナノ結晶2の濃度が0.01質量%未満の場合、蒸発させる溶媒4の量が多いため、乾燥に時間がかかり、その結果、成膜速度が抑制される。なお、ナノ結晶含有液3は、凝集を防ぐための分散剤を添加すると、ナノ結晶2を集積した際に密に詰まらないため、ナノ結晶含有液3には分散剤を入れないことが好ましい。ナノ結晶含有液3が分散剤を含まない場合、ナノ結晶含有液3におけるナノ結晶2の濃度が1質量%を超えると、ナノ結晶含有液3を長時間保存(保持)した際に、ナノ結晶2の凝集が起こるため好ましくない。なお、ナノ結晶含有液3は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の物質を含んでもよい。
【0033】
溶媒4は、特に制限されないが、非極性溶媒であるのが好ましい。非極性溶媒は、その沸点が35℃以上160℃以下であるのが好ましく、50℃以上130℃以下であるのが特に好ましい。沸点が上記範囲である場合、蒸発速度が移流集積法に適した速度になる。沸点が35℃未満の場合、蒸発速度が速すぎてナノ粒子が成膜せず凝集を起こすため、好ましくない。また、沸点が160℃を超える場合、蒸発速度が遅く成膜時間が長くなるため、好ましくない。
【0034】
溶媒4は、表面張力が10mN/m以上20mN/m以下であるのが好ましく、12mN/m以上16mN/m以下であるのがより好ましい。上記範囲の場合、表面張力が比較的小さく濡れやすいため、本実施形態のナノ結晶膜の作製方法に適している。
【0035】
溶媒4は、蒸発熱が50kJ/kg以上300kJ/kgであるのが好ましく、50kJ/kg以上200kJ/kgであるのがより好ましい。上記範囲の場合、蒸発熱が比較的小さく乾燥時に乾燥物の温度変化を小さくできるため、安定した乾燥(蒸発)を容易にできる。
【0036】
溶媒4は、25℃における蒸気圧が、5kPa以上100kPaであるのが好ましく、5kPa以上80kPaであるのがより好ましい。蒸気圧が上記範囲の場合、沸点が上記範囲である場合、蒸発速度が移流集積法に適した速度になる。
【0037】
ところで、上記特許文献1及び特許文献2、並びに非特許文献1〜8に記載されるナノ結晶膜の作製方法では、ヘキサン、トルエン、メシチレン等の溶媒が使用されているが、これらの溶媒は、毒性や引火性を有するものである。例えば、溶媒4は、毒性あるいは引火性が低い観点から、フッ素系液体であるのが好ましい。好ましいフッ素系液体としては、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンなどを挙げることができる。具体的には、例えば、パーフルオロカーボンとしては株式会社3Mから市販されているフロリナート(登録商標、商品名)などがあり、ハイドロフルオロエーテルとしては株式会社3Mから市販されているノベック(登録商標、商品名)などがある。また、ハイドロクロロフルオロカーボンとしては旭硝子株式会社から市販されているアサヒクリン(登録商標、商品名)などがあり、及びハイドロフルオロカーボンとしては三井・デュポンフロロケミカル株式会社から市販されているバートレル(商品名)などがある。中でも、沸点、表面張力、蒸気圧、あるいは蒸発熱が上記範囲を満たすものが好ましい。また、中でも、ハイドロフルオロエーテルの場合、ヘキサン、トルエン、メシチレン等に比べ毒性や引火性がないため取扱いやすく安全性が高い点、非極性溶媒である点、下記の表1に示すように、沸点、表面張力、蒸気圧、あるいは蒸発熱が上記範囲を満たす点で好ましい。中でも、溶媒4は、COCH、COC、及びCCF(OCH)Cから選ばれる群の少なくとも1種であるのがより好ましい。なお、これらは、例えば、株式会社3M社製のNovec(登録商標)7100(COCH)、Novec7200(COC)、Novec7300(CCF(OCH)C)等の市販品を用いてもよい。下記の表1に各種液体の物性値を示す。
【0038】
【表1】
【0039】
なお、上記表1の蒸気圧において、符号「*」は20℃の蒸気圧を示す。
【0040】
次に、ステップS2において、基板Sの表面に、ナノ結晶含有液3の液層5を形成する工程について説明する。基板Sは、特に制限されず、例えば、ガラス、シリコン、金属、セラミックス、ポリマー、紙、ゴムなどを用いることができる。基板Sは、平坦な面を有するのが好ましい。また、ナノ結晶膜1は、基板Sの平坦な面に形成するのが好ましい。
【0041】
以下、一例として、図1に示す電極6を備える基板Sにナノ結晶膜1を形成する例を説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。電極6を備える基板Sにナノ結晶膜1を形成した場合、薄層コンデンサの材料として好適に用いることができる。すなわち、電極6を備える基板Sにナノ結晶膜1を形成する方法は、薄層コンデンサの製造方法に好適に用いることができる。
【0042】
電極6を備える基板Sは、特に制限されず公知のものを用いることができる。例えば、電極6を備える基板Sは、基板Sの表面に絶縁層(図示せず)を備え、絶縁層の上に電極6を備える。基板Sは、例えば、Siである。絶縁層は、例えば、熱酸化膜(SiO)である。絶縁層の厚みは、特に制限されないが、例えば、200nm〜800nm程度である。電極6は、例えば、絶縁層の上に成膜される密着層(図示せず)と、密着層の上に成膜される貴金属層(図示せず)と、を備える積層構造である。密着層は、特に制限されないが、例えば、チタン(Ti)、タンタル(Ta)などの酸素親和性が高い金属薄膜、あるいは、それらの酸化物の薄膜により形成される。密着層の厚さは、特に制限されないが、例えば、50〜300nm程度である。貴金属層は、特に制限されないが、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、金(Au)により形成される。貴金属層の厚さは、特に制限されないが、例えば、50〜500nm程度である。
【0043】
上記した電極6を備える基板Sは、例えば、0.5μmの厚みの熱酸化膜(SiO)付Si基板に、密着層としての250nmの厚さのTiO層、貴金属層として200nmの厚さのPt層を順次成膜し、成膜後に、酸素中で800℃、1時間の条件でアニールすることで作製できる。密着層及び貴金属層の成膜は、特に限定されず、例えば、スパッタリングや蒸着法等が使用できる。TiOはスパッタ成膜速度が遅いため、Ti層を成膜(形成)して酸素を含む雰囲気で熱処理することによりTiO層としてもよい。なお、絶縁層、密着層及び電極6の形状は、それぞれ、限定されず任意である。絶縁層、密着層及び電極6の形状は、それぞれ、例えば、矩形状でもよいし、不定形でもよい。また、例えば、電極6は、基板S全体を覆わずに、基板Sの一部を覆うものでもよい。また、例えば、電極6は、絶縁層(例、SiO)全体を覆わずに、絶縁層の一部を覆い、絶縁層の一部が露出してもよい。
【0044】
次に、図2に示すステップS2の基板Sの表面にナノ結晶含有液3の液層5を形成する方法を説明する。ナノ結晶含有液3の液層5を形成する方法は、特に制限されないが、例えば、図3に示す枠状の形状を有する枠状部材7を用いて形成するのが好ましい。液層5は、例えば、図4(A)及び図4(B)に示すように、ナノ結晶含有液3を枠状部材7の枠内に塗布することにより形成する。枠状部材7を用いて液層5を形成する場合、ナノ結晶含有液3の液層5を簡単に形成することができる。また、この場合、ナノ結晶膜1を作製する範囲や形状を簡単に設定できること、作製するナノ結晶膜1の厚みを簡単に制御すること、液層5を形成する際にナノ結晶含有液3が飛散するのを抑制することができる。枠状部材7の外形および枠内の形状は、それぞれ、特に制限されない。例えば、枠状部材7の枠内の形状は、図3に示すように矩形状にしてもよいし、不定形でもよいし、回路等に合わせた形状でもよい。枠状部材7の高さは、特に制限されないが、例えば、枠の高さは0.5〜1mm程度である。枠状部材7の材料は、特に制限されないが、例えば、紫外線硬化樹脂、UV効果樹脂、接着剤、ペースト、金属材料等である。なお、枠状部材7の材料は、溶媒4により変化しない材料が選択される。枠状部材7は、液層5の形成の後に取り外しができる構成にしてもよいし、また、そのまま基板Sに固定してもよい。例えば、枠状部材7は、基板Sに固定して電子部品の一部として用いてもよい。
【0045】
液層5は、例えば、図3(B)に示すように、電極6の部分に形成してもよいし、電極6がない部分に形成してもよい。また、枠状部材7は、図3(B)に示すように、電気特性測定のため、枠状部材7の外側に電極6が露出するように形成(配置)してもよい。
【0046】
液層5は、例えば、図5に示すように、枠状部材7を形成(配置)した基板Sを水平方向に移動可能なステージに載置した状態で、所定量のナノ結晶含有液3を枠状部材7の枠内に注入することにより形成する。ナノ結晶含有液3の注入量は、特に制限されないが、例えば、ナノ結晶含有液3におけるナノ結晶2の濃度、作製するナノ結晶膜1の大きさ、厚み、体積等により、適宜決定される。例えば、ナノ結晶含有液3の注入量は、枠状部材7の面積と作製するナノ結晶膜1の厚みから計算したナノ結晶膜1(ナノ結晶2)の重量に対して、1.1倍から1.2倍に設定するのが好ましい。この場合、次の工程における、ナノ結晶含有液3の不足を抑制することができる。また、ナノ結晶含有液3の注入量は、液層5が乾燥する乾燥する部分と液層5との角度が接触角以上にならないように、量と濃度を調整するのが好ましい。この場合の液層5の高さは、例えば、0.5mm以下である。なお、液層5を形成する際、液層5を形成する部分に溶媒4を予め塗布することが、液層5を簡単かつ精度よく形成する点で好ましい。また、枠状部材7を用いて液層5を形成する際、ナノ結晶含有液3を注入後、ナノ結晶含有液3が枠状部材7内で均一になるように基板Sに振動を与えたり傾斜を繰り返したりしてもよい。
【0047】
続いて、図2に示すステップS3において、基板Sを囲うチャンバ部材8で基板Sを囲い、チャンバ部材8の内部9の雰囲気を溶媒4の飽和蒸気圧又は飽和蒸気圧近傍にする。チャンバ部材8は、その内部9を溶媒4の飽和蒸気圧又は飽和蒸気圧近傍に保持可能であるものを用いることができる。例えば、チャンバ部材8は、図5に示すように、基板S全体を囲むものを用いることができる。チャンバ部材8の形状は、特に制限されないが、例えば、開口部11を有する箱状のものを用いることができる。開口部11は、チャンバ部材8の内部9と外部12とを連結する孔である。開口部11は、例えば、基板S及びステージ14を、チャンバ部材8の内部9に出し入れ可能な大きさに形成される。開口部11の大きさは、溶媒4の蒸気が外側にできるだけ漏れないように狭いことが好ましい。開口部11と枠状部材7との間隔D(図6(A)参照)は、例えば、加工の精度や取扱やすさから間隔は0.2mm〜0.05mm程度が好ましい。なお、開口部11には、開口部11を覆うシャッタあるいは蓋が設けられていてもよい。
【0048】
本ステップS3では、例えば、ステップS2でナノ結晶膜1を形成する部分にナノ結晶含有液3を均一に広げた後、図5に示すように、ステージ14を−X方向に移動し、基板S全体をチャンバ部材8に入れて、チャンバ部材8の内部9の雰囲気が溶媒4の飽和蒸気圧あるいは飽和蒸気圧近傍になるように保持する。
【0049】
チャンバ部材8の内部9に基板Sを保持する際の保持温度は、例えば、溶媒4の沸点以下であるのが好ましい。また、この保持温度において、溶媒4の蒸気圧が10kPa以上50kPa以下であるのが好ましい。なお、ナノ結晶含有液3の量が少ない場合等、チャンバ部材8の内部9に溶媒4を入れて溶媒4を蒸発させて、チャンバ部材8の内部9の雰囲気を溶媒4の飽和蒸気圧又は飽和蒸気圧近傍にしてもよい。また、チャンバ部材8は、少なくともその一部が透明な材料で形成される場合、チャンバ部材8の内面が溶媒4で濡れることで、溶媒4の飽和蒸気圧であることを確認できるので好ましい。なお、ステージ14及びチャンバ部材8は、それぞれ、除振台の上に設置されることが好ましい。
【0050】
続いて、図2に示すステップS4の基板Sを徐々に移動し、液層5の一部分Pをチャンバ部材8の外部12に移動して、溶媒4を蒸発により乾燥させ、ナノ結晶2を基板Sに成膜する工程を説明する。
【0051】
基板Sは、例えば、図6(A)等に示すように、ステージ14により徐々に+X方向(水平方向)に移動する。例えば、基板Sは、液層5の+X方向の端部(部分P)がチャンバ部材8の外部12に配置されるように+X方向(水平方向)に移動する。外部12の雰囲気は、例えば、通常の大気の雰囲気である。なお、外部12の雰囲気は、大気と同様でなくてもよく、例えば、溶媒4が蒸発可能な雰囲気であればよい。また、外部12は、温度、あるいは湿度を、特定の範囲に設定してもよい。また、基板Sはチャンバ部材8に対して相対的に移動すればよい。例えば、基板Sは移動せず、チャンバ部材8が移動する構成でもよい。
【0052】
基板Sの移動速度は、ナノ結晶2が良好に成膜される速度である。基板Sの移動速度は、液層5が乾燥する速度以下であるのが好ましい。例えば、基板Sが長さXを時間T1で移動する場合、この時間T1が、チャンバ部材8の外部に配置される水平方向の長さXの液層5が乾燥する時間T2に対して小さくなるように設定するのが好ましく、これにより基板Sの移動速度を設定することができる。この基板Sの移動速度は、例えば、予備実験などで予め求めてもよい。例えば、基板Sの移動速度は、0.1μm/sec以上0.5μm/sec以下が好ましい。基板Sの移動速度が、上記した好ましい速度である場合、優れたナノ結晶膜1を高速に製造することができる。なお、基板Sは、連続的に移動させてもよいし、不連続的に移動させてもよい。なお、基板Sの移動方向は、水平方向でなくてもよく、例えば、鉛直方向でもよいし、水平方向に対して傾く方向でもよい。
【0053】
液層5の一部分Pを開口部11からチャンバ部材8の外部12に移動すると、液層5の一部分Pの溶媒4の蒸発が始まる。液層5の乾燥部分(部分P)では、図6(B)に示すように、ナノ結晶含有液3と基板Sとの界面の近傍で、溶媒4の蒸発によりナノ結晶2が集積して、ナノ結晶2の濃度が上昇し、固液界面に、成膜するのに十分なナノ粒子2を供給することが可能になる。そして、溶媒4の蒸発がさらに進み、液層5の乾燥部分(部分P)で、移流集積によるナノ結晶2の成膜が起きる。液層5の厚みが0.5mm以下に設定される場合、固液界面の傾斜角が十分小さくなり、液層5の乾燥部分(部分P)で、移流集積による成膜が起きる。このような移流集積により形成されたナノ結晶膜1は、ナノ粒子2同士が横毛管力により緻密に配列されたものである。また、上記のように基板Sを水平方向に移動して、ナノ結晶2を製膜する場合、3次元的に配列された厚みのあるナノ結晶膜1を容易に形成することができる。なお、ナノ結晶膜1は、その一部に隙間があってもよい。
【0054】
次いで、図6(C)に示すように、ステージ14を、図6(B)に示す状態から、さらに徐々に+X方向(水平方向)に移動させて、ナノ結晶2の基板Sへの成膜を行い、図1に示すナノ結晶膜1が形成される。ナノ結晶膜1が形成された乾燥後の基板Sは、ナノ粒子2同士を焼結させるため、焼成する。この焼成は、例えば、500℃以上800℃以下の条件で行う。焼成の温度が500℃未満の場合、焼結が不十分であり、好ましくない。また、焼成の温度が800℃を超える場合、電極と反応してリーク電流が大きくなる可能性があるため、好ましくない。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
実施例1では、以下の手順でナノ結晶膜を作製した。
【0057】
[工程1]
上記した従来技術である方法によりチタン酸バリウムのナノ結晶2の合成及び回収をした。得られたナノ結晶2の粉末とハイドロフルオロエーテルとしてのNovec7200(COC、株式会社3M社製)との濃度が、0.5質量%になるように容器に入れ、その容器を10分間の超音波処理することによりナノ結晶2の分散を促進し、容器内からナノ結晶2を含む上澄み液を採取しナノ結晶含有液3を製造した。
【0058】
[工程2]
電極6を備える基板Sを製造した。電極6を備える基板Sは、4インチ丸の熱酸化膜(厚さ0.5μm)付Si基板である。この基板Sの上に、TiO層(厚さ250nm)、Pt層(厚さ200nm)を順次成膜し、成膜した後、酸素中で、800℃、1時間の条件で、アニール(焼成)したものを製造した。Pt層は、開口したマスクを用いて、10mm(図3(B)に示すX方向の長さL1)×15mm(図3(B)に示すY方向の長さL2)の大きさに形成した。基板Sは、Pt電極(Pt層)が中央部分に配置されるように、Pt電極を含んで、40mm(図3(B)に示すX方向の長さL3)×25mm(図3(B)に示すY方向の長さL4)角に切り出した。
【0059】
次に、図3(A)及び図3(B)に示す形状の枠状部材7を基板S上に形成した。枠状部材7は、その外形および枠内の形状を矩形状に形成した。枠状部材7の内寸法は、20mm(図3(B)に示すX方向の長さL5)×10mm(図3(B)に示すY方向の長さL6)、枠の幅(図3(B)に示すL7)が0.1mm、高さ0.8mmの大きさになるように、マスクを用いて低温硬化型導電性銀ペースト(トーヨーケム株式会社製、RAFS074)を印刷法で塗布し、その後、100℃、30分の条件で硬化させることにより形成した。
【0060】
次に、図5に示す、開口部11を備えるチャンバ部材8を用意した。チャンバ部材8は、透明の塩化ビニル樹脂で形成した。開口部11は長方形状に形成し、開口部11の上端と枠状部材7の上端との間隔D(図6(A)参照)は0.15mmとした。
【0061】
予めチャンバ部材8の内部9に、Novec7200を100cc入れて蒸発させ、容器の内側がnovec7200で濡れるのを確認し、チャンバ部材8の内部9の雰囲気が飽和蒸気圧であることを確認した。
【0062】
マイクロピペットを用いてNovec7200を10μL、枠状部材7の枠内に注入して枠内及び基板Sを濡らした。枠状部材7の枠内を濡らした後、さらにナノ結晶含有液3を10.6μL枠内へ注入して数回揺らして、ナノ結晶含有液3を均一に広げることにより液層5を形成した。この条件は、製造するナノ結晶膜1の膜厚を400nmとしたものである。その後、基板Sを水平に保持したステージ14上に載置した。ステージ14を移動して、基板Sをチャンバ部材8の内部に移動し、5分間保持した。
【0063】
[工程3]
図5に示す枠状部材7の+X方向の端が開口部11の端に一致するまでステージを移動させた後、0.2μm/secの速度でステージ14を+X方向に移動した。100,000秒後(27時間46分40秒)に移動を終了した。これにより、ナノ結晶2を基板S(電極6)に成膜した。成膜が終了した基板Sを、800℃、1時間の条件で焼成して、成膜を終了した。
【0064】
得られたナノ結晶膜1にφ0.35mmのマスクを用いてPt電極(厚み100nm)をスパッタ法で作製し、誘電特性を測定した。測定にはsolatron製のLF周波数アナライザー(LF Frequency response Analyzer 1255B)とインターフェース(Dielectricinterface 1296)を使用し、測定電圧0.1V、測定周波数1MHzの測定条件で、ナノ結晶膜1の誘電特性の測定を行った。続いて、測定後の基板Sを切断して断面のSEM観察を行うことにより、ナノ結晶膜1の膜厚を求めた。誘電特性およびナノ結晶膜1の膜厚の結果を表2に示す。
【0065】
(実施例2)
基板Sの移動速度を0.5μm/secにした以外は、実施例1と同様にして、ナノ結晶膜1を作製した。
【0066】
(実施例3)
溶媒4を株式会社3M社製のNovec7100(COCH)にした以外は、実施例1と同様にして、ナノ結晶膜1を作製した。誘電特性およびナノ結晶膜1の膜厚の結果を表2に示す。
【0067】
(実施例4)
溶媒4を株式会社3M社製のNovec7300(CCF(OCH)C)にした以外は、実施例1と同様にして、ナノ結晶膜1を作製した。誘電特性およびナノ結晶膜1の膜厚の結果を表2に示す。
【0068】
(比較例1)
基板Sの移動速度を1μm/secにした以外は実施例1と同様にして、ナノ結晶膜を作製した。誘電特性およびナノ結晶膜の膜厚の結果を表2に示す。なお、本例では、膜厚のばらつきが大きくナノ結晶膜の成膜が不良であった。また、本例では、溶媒4の乾燥速度が小さく、開口部11から離れた部分でも溶媒4の乾燥が不十分で濡れた部分が発生していた。このため、得られた膜に粒子数の濃淡と成膜の乱れが生じたと思われる。
【0069】
(比較例2)
基板Sの移動速度を0.05μm/secにした以外は実施例1と同様にして、ナノ結晶膜を作製した。誘電特性およびナノ結晶膜の膜厚の結果を表2に示す。なお、本例では、膜厚のばらつきが大きくナノ結晶膜の成膜が不良であった。また、本例では、基板Sを移動した後、枠状部材7の+X方向の端がチャンバ部材8の外部12に出てから、75時間経過後にチャンバ部材8内に位置する枠状部材7の部分も乾燥したので、基板Sの移動を終了した。本例では、チャンバ部材8に配置した100ccのNovec7200も無かったため、100cc以上のNovec7200が蒸発したと思われる。75時間経過後にチャンバ部材8内に位置していた枠状部材7の枠内の乾燥部分には、縞状の濃淡が見られ、膜厚が不均一になっていた。
【0070】
(比較例3)
使用した溶媒4を株式会社3M社製のNovec7000(COCH)にした以外は、実施例1と同様にして、ナノ結晶膜を作製した。誘電特性およびナノ結晶膜の膜厚の結果を表2に示す。なお、本例では、膜厚のばらつきが大きくナノ結晶膜の成膜が不良であった。また、本例では、乾燥部分にナノ結晶の段差が見られた。これは、溶媒4の乾燥速度が大きいため、ナノ結晶の成膜速度より基板Sの移動速度が大きくなり、その結果、成膜できなかった粒子が乱雑な集積物を形成したため思われる。
【0071】
(比較例4)
使用した溶媒をフロリナート(株式会社3M社製、商品名:FC43)にした以外は、実施例1と同様にして、ナノ結晶膜を作製した。誘電特性およびナノ結晶膜の膜厚の結果を表2に示す。なお、本例では、膜厚のばらつきが大きくナノ結晶膜の成膜が不良であった。また、本例では、乾燥部分に縞模様が見られた。これは、乾燥速度が小さいため、開口部11から離れた部分でも溶媒4の乾燥不十分で濡れた部分が発生し、その結果、粒子数の濃淡と成膜の乱れが生じたことによると思われる。
【0072】
【表2】
【0073】
なお、上記表2の膜厚において、符号「×」は、膜厚のばらつきが大きくナノ結晶膜の成膜が不良であることを意味する。また、表2の比誘電率および誘電損失において、符号「−」は測定ができなかったものであり、符号「*」は、ナノ結晶膜の成膜は不良であるが、乾燥部分を用いて測定したことを意味する。
【0074】
表2から実施例1〜4では、ナノ結晶膜1の厚さが目標膜厚400nmより厚いが、誘電率は700以上であり、且つ誘電損失も小さいことが確認される。また、実施例1〜4の結果から、本製造方法によれば、0.2μm/sec〜0.5μm/secの成膜速度で、ナノ結晶膜1を高速で製造することができるのが確認される。一方、比較例1〜比較例4は、いずれも、膜厚のばらつきが大きくナノ結晶膜の成膜が不良であった。このため、比較例1、比較例3及び比較例4では、電気的な測定を行わなかった。
【0075】
以上のように、本発明のナノ結晶膜の作製方法は、誘電体膜の誘電特性を維持し、その成膜速度が従来に比べ速いものである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上より明らかなように、本発明のナノ結晶膜の作製方法は、特に薄膜キャパシタ形成用材料、及びその薄膜キャパシタ形成用材料を用いて得られる部品内蔵キャパシタに、好適に用いられるものである。
【0077】
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態などで説明した態様に限定されるものではない。上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態などで引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0078】
例えば、上記説明において、本製造方法は、基板Sにナノ結晶膜1を作製する例を説明したが、本製造方法は、基板S以外の物体にも適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1…ナノ結晶膜、2…ナノ結晶、3…ナノ結晶含有液、4…溶媒、5…液層、6…電極
7…枠状部材、8…チャンバ部材、9…内部、12…外部、S…基板、P…部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6