特開2017-226558(P2017-226558A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2017-226558昇温装置、結晶育成装置、抵抗ヒーターの温度制御方法及び結晶育成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-226558(P2017-226558A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】昇温装置、結晶育成装置、抵抗ヒーターの温度制御方法及び結晶育成方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 15/20 20060101AFI20171201BHJP
   C30B 29/20 20060101ALI20171201BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   C30B15/20
   C30B29/20
   H05B3/00 310D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-122076(P2016-122076)
(22)【出願日】2016年6月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 学
【テーマコード(参考)】
3K058
4G077
【Fターム(参考)】
3K058AA91
4G077AA02
4G077BB01
4G077CF10
4G077EG01
4G077EG12
4G077EG18
4G077EH07
4G077PE03
4G077PF16
4G077PF55
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、従来に比べ簡易かつ低コストな温度制御が可能な昇温装置、結晶育成装置、抵抗ヒーターの温度制御方法及び結晶育成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】抵抗ヒーター10と、該抵抗ヒーターに電力を供給する電力供給手段20と、該電力供給手段から前記抵抗ヒーターへの電力の供給により前記抵抗ヒーターに印加される電圧値を検出する電圧検出手段30と、前記抵抗ヒーターに供給される電流値を検出する電流検出手段40と、前記電圧検出手段により検出された前記電圧値と、前記電流検出手段により検出された前記電流値とに基づいて電力値を算出し、該電力値を、前記抵抗ヒーターを所定の目標温度にする所定の目標電力値に接近させるように前記電力供給手段を制御する制御手段50と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗ヒーターと、
該抵抗ヒーターに電力を供給する電力供給手段と、
該電力供給手段から前記抵抗ヒーターへの電力の供給により前記抵抗ヒーターに印加される電圧値を検出する電圧検出手段と、
前記抵抗ヒーターに供給される電流値を検出する電流検出手段と、
前記電圧検出手段により検出された前記電圧値と、前記電流検出手段により検出された前記電流値とに基づいて電力値を算出し、該電力値を、前記抵抗ヒーターを所定の目標温度にする所定の目標電力値に接近させるように前記電力供給手段を制御する制御手段と、を有する昇温装置。
【請求項2】
前記電流値は、前記電流検出手段の検出範囲を超え、前記電流検出手段の検出上限値として検出された検出上限電流値を含み、
前記制御手段は、前記検出上限電流値を含む前記電流値と、前記電圧検出手段により検出された前記電圧値を補正した補正電圧値とに基づいて前記電力値を算出する請求項1に記載の昇温装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記電力値が略一定となるように前記電圧値を補正する請求項2に記載の昇温装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記補正電圧値をV(x)、補正係数をb(bは定数)、前記電圧検出手段により検出され、入力電圧である前記電圧値をVin、前記電圧値の平均値をVav、前記電圧値の変動率をaとしたときに、下記(1)、(2)式を用いて前記電力値を算出する請求項2又は3に記載の昇温装置。
V(x)=(ab+1)Vin (1)
a=(Vin−Vav)/Vav (2)
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の昇温装置と、
原料融液を保持する坩堝と、
該坩堝の上方に設けられ、下端に種結晶を保持可能であるとともに、前記種結晶を前記原料融液に接触させてから結晶の引き上げが可能な引き上げ軸と、を有し、
前記昇温装置の前記抵抗ヒーターは、前記坩堝の周囲に設けられている結晶育成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記引き上げ軸が前記結晶の引き上げを行うときに前記抵抗ヒーターを前記目標温度に接近させる制御を行う請求項5に記載の結晶育成装置。
【請求項7】
電力が供給された抵抗ヒーターに印加された電圧値を検出する電圧検出工程と、
前記電力が供給された前記抵抗ヒーターを流れる電流値を検出する電流検出工程と、
検出された前記電圧値及び前記電流値に基づいて電力値を算出し、該電力値を、前記抵抗ヒーターを所定の目標温度にする所定の目標電力値に接近させるように制御する制御工程と、を有する抵抗ヒーターの温度制御方法。
【請求項8】
前記電流値は、電流検出範囲を超え、検出上限値として検出された検出上限電流値を含み、
前記制御工程は、前記検出上限電流値を含む前記電流値と、検出された前記電圧値を補正した補正電圧値とに基づいて前記電力値を算出する補正電力算出工程と、
前記電力値に基づいて、前記電力値を前記目標電力値に接近させるように前記電力を制御する電力制御工程と、を含む請求項7に記載の抵抗ヒーターの温度制御方法。
【請求項9】
前記補正電力算出工程では、前記電力値が略一定となるように前記電圧値を補正する請求項8に記載の抵抗ヒーターの温度制御方法。
【請求項10】
前記補正電力算出工程では、前記補正電圧値をV(x)、補正係数をb(bは定数)、前記電圧値をVin、前記電圧値の平均値をVav、前記電圧値の変動率をaとしたときに、下記(3)、(4)式を用いて前記電力値を算出する請求項8又は9に記載の抵抗ヒーターの温度制御方法。
V(x)=(ab+1)Vin (3)
a=(V−Vav)/Vav (4)
【請求項11】
原料融液を保持する坩堝を加熱する原料溶融工程と、
種結晶を前記原料融液に接触させてから結晶を引き上げる結晶引き上げ工程と、を有し、
該結晶引き上げ工程において、前記坩堝の周囲に配置された抵抗ヒーターの温度を、請求項7乃至10のいずれか一項に記載された抵抗ヒーターの温度制御方法を用いて制御する結晶育成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇温装置、結晶育成装置、抵抗ヒーターの温度制御方法及び結晶育成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗ヒーターは、色々な昇温装置に採用されており、結晶育成装置においても加熱手段として使用されている。例えば、サファイアやシリコンの単結晶の製造に用いられる結晶育成装置では、チョクラルスキー法(CZ法)を用いて結晶体を育成させる。詳細には、結晶原料を坩堝内に入れ、この坩堝を加熱して結晶原料を溶解させ、溶融した結晶原料の液面に種結晶を浸漬して回転させながら引き上げることで、結晶体を製作する。結晶原料を加熱する方法には、高周波コイルにより高周波を印可する誘導加熱と、抵抗ヒーターを用いた輻射加熱がある。一般的に、大口径の結晶体を製作する場合においては、坩堝から離れた位置に配置された抵抗ヒーターによる輻射加熱を用いることが多い。
【0003】
育成する結晶は、結晶育成装置内のさまざまな製造条件の影響を受けるため、結晶の品質を向上させるためには、各条件を安定させることが重要である。特に溶液の液温は、結晶体の直径や結晶構造等に大きく影響する。このため、一般的には、特許文献1に記載されているように、温度センサーを坩堝近傍に配置し、この温度センサーの検出値に応じて加熱体の出力を調整することで、温度制御を行っている。しかしながら、結晶原料の溶解温度が高い結晶体では、装置の構造上温度センサーを坩堝近傍に配置することはできず、耐熱壁等で断熱した場所に配置することになる。このため、坩堝内の温度を直接測定することができず、温度センサーの検出値に基づく温度制御は困難であった。このため、伝熱解析プログラム等を利用したシミュレーションを行い制御する方法が検討されてきている。特許文献2には、育成条件の異なる複数の結晶を実測してその結果を基に伝熱解析プログラムより大口径の温度分布を正確に予測する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−338596号公報
【特許文献2】特開2004−203634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、さらに高温で溶解する結晶体、例えばサファイア等の2000℃前後で溶解する結晶の育成においては、炉内温度を溶解温度に維持することが最重要である。特にサファイアの結晶の育成は、種結晶を浸漬して回転させながら引き上げが完了するまで数十時間かけて結晶を育成する。この間、電力会社より供給される電力そのものにもばらつきが生じることがある。温度センサーによる温度制御でない場合、抵抗ヒーターの出力がばらつくことになる。これらをプログラムによるシミュレーションに組み込むことは、プログラムが複雑になり難しい。また、供給電力のばらつきを抑える装置等もあるが、このような装置は高価であり、かつ結晶育成装置の場合、電気容量が大きく大型の装置が必要となる。
【0006】
そこで、本発明は、上記状況を鑑み、従来に比べ簡易かつ低コストな温度制御が可能な昇温装置、結晶育成装置、抵抗ヒーターの温度制御方法及び結晶育成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る昇温装置は、抵抗ヒーターと、
該抵抗ヒーターに電力を供給する電力供給手段と、
該電力供給手段から前記抵抗ヒーターへの電力の供給により前記抵抗ヒーターに印加される電圧値を検出する電圧検出手段と、
前記抵抗ヒーターに供給される電流値を検出する電流検出手段と、
前記電圧検出手段により検出された前記電圧値と、前記電流検出手段により検出された前記電流値とに基づいて電力値を算出し、該電力値を、前記抵抗ヒーターを所定の目標温度にする所定の目標電力値に接近させるように前記電力供給手段を制御する制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来に比べて簡易かつ低コストで温度制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る昇温装置の一例を示した構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る結晶育成装置の一例を示した構成図である。
図3】本発明の実施形態に係る結晶育成装置に用いられる電力供給装置から供給される電力の電圧・電流波形の一例を示した図である。
図4】本発明の実施形態に係る昇温装置及び抵抗ヒーターの温度制御方法で制御した時の炉内の温度を測定したデータを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る昇温装置の一例を示した構成図である。本発明の実施形態に係る昇温装置100は、抵抗ヒーター10と、電力供給装置20と、電圧検出部30と、電流検出部40と、制御部50とを有する。
【0012】
抵抗ヒーター10は、昇温して加熱対象物を加熱する加熱手段である。抵抗ヒーター10は、加熱対象物を加熱できる発熱作用を有すれば、種類、構成は問わない。抵抗ヒーター10は、抵抗の発熱体であり、交流電源ではなく、直流電源により動作する。なお、この点については後述する。
【0013】
電力供給装置20は、抵抗ヒーター10に電力を供給する手段である。電力供給装置20も、抵抗ヒーター10に所定の電力を供給できれば、構成や種類等は問わない。しかしながら、電力会社から供給される電源から受けた電力を抵抗ヒーター10に供給する場合には、交流電力を直流電力に変換する変換機能を備える必要がある。変換機能は、構成や種類は問わないが、例えば、整流回路であってもよく、より詳細には、サイリスター式全波整流回路を搭載していてもよい。
【0014】
電圧検出部30は、電力供給装置20から抵抗ヒーター10への電力の供給により、抵抗ヒーター10に印加される電圧を検出する電圧測定手段である。電圧検出部30も、用途に応じて種々の電圧検出器を用いることができ、抵抗ヒーター10に印加される直流電圧を測定できれば、その構成や種類は問わない。
【0015】
電流検出部40は、電力供給装置20から抵抗ヒーター10への電力の供給により、抵抗ヒーター10に供給される電流を検出する電流測定手段である。電流検出部40も、用途に応じて種々の電流検出器を用いることができ、抵抗ヒーター10に供給される、又は抵抗ヒーター10を流れる直流電流を測定できれば、その構成や種類は問わない。
【0016】
制御部50は、電圧検出部30にて検出された電圧値と電流検出部40で検出された電流値とから電力値を算出し、算出した電力値を所定の目標電力値に接近させるように電力供給装置20から供給される電力を制御するための手段である。つまり、制御手段は、電力を制御対象として抵抗ヒーター10の温度を制御する。なお、後に詳細に説明するが、制御部50は、電圧検出部30で検出された電圧を補正して補正電圧を算出し、これを用いて電力を制御する。これにより、電力の変動に影響されず、安定した温度制御を行うことが可能となる。
【0017】
制御部50は、電力制御を行える演算処理ができれば、種々の形態の制御手段を用いることができ、例えば、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶手段を備え、プラグラムにより動作するマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)であってもよし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のような、特定の用途向けに設計、製造された集積回路であってもよい。つまり、制御部50は、所定の電力制御機能を有する限り、ソフトウェアを用いて実現されてもよいし、回路(ハードウェア)のみで実現されてもよい。
【0018】
なお、これらの構成要素の他、電力会社から供給された電力を電力供給装置20に供給する電源60が設けられる。電源60は、100V又は200V等の所定の電力を供給する。なお、電力供給装置20は、交流電力として電源60から供給された電力を、直流電力に変換して抵抗ヒーター10に供給する。かかる点から、電力供給装置20は、電力変換装置と呼んでもよい。
【0019】
昇温装置100は、加熱対象を加熱して昇温する種々の用途に適用可能であるが、例えば、坩堝内に溶融原料を保持するとともに坩堝を加熱し、所定の時期に種結晶を溶融原料に接触させて結晶を引き上げる結晶育成装置に適用することも可能である。本実施形態に係る昇温装置100は、特に、高温で溶解する結晶体の育成炉においては、結晶育成中の炉内温度を簡単に安定した温度で制御することができる。そこで、以下、結晶育成装置に昇温装置100を用いる一例に詳細に説明する。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に係る結晶育成装置の一例を示した構成図である。この結晶育成装置はサファイアやシリコンの単結晶を、チョクラルスキー法(CZ法)を用いて育成する装置である。
【0021】
以下、結晶育成装置の個々の構成要素について説明する。坩堝110は、結晶原料190を保持し、結晶を育成するための容器である。結晶原料は、結晶化する金属等が溶融した融液の状態で保持される。坩堝軸120は、坩堝110を支持するための支持軸であり、坩堝110の重量及び高温に耐え得る材料から構成される。抵抗ヒーター10は、坩堝110を加熱するための手段であり、坩堝110を囲むように配置される。断熱材160は、坩堝110及び抵抗ヒーター10を囲む形で形成されている。これにより、ほぼ高熱は遮断できる。断熱材160の外側には炉体170が配置される。炉体170は、抵抗ヒーター10からの高熱を遮断する断熱材160を取り囲む装置の外形部になる。抵抗ヒーター10への電力供給は、交流電源を電源60より受け、電力供給装置20で、交流電源を全波整流して直流電力に変換してから抵抗ヒーター10に電力を供給する。抵抗ヒーター10へ供給する電力については、電圧検出部30で供給電力の電圧値、電流検出部40で供給電流の電流値が逐次検出される。制御部50では、電圧検出部30及び電流検出部40で検出された電圧値、電流値を基に所定の目標電力になるように電力出力値を算出し、その信号を電力供給装置20に送付する。電力供給装置20は、制御部50からの指令信号に従い、所定の電力を抵抗ヒーター10に供給する。
【0022】
その他、結晶育成装置は、種結晶を下端に保持し、種結晶を溶融した結晶原料190に接触させ、結晶体191の引き上げを行う引き上げ軸130と、引き上げ軸130を回転させて引き上げるためのモータ140を有する。更に、断熱材160の内部であって、坩堝110の上方に、引き上げ軸130を囲むように熱遮蔽板150が必要に応じて設けられてもよい。
【0023】
また、本実施形態に係る昇温装置100及び抵抗ヒーター10の温度制御方法では使用しないが、断熱材160の外側の所定箇所、例えば炉体170の内周壁面上に、温度センサー180を設けるようにしてもよい。結晶体191の引き上げの際には、本実施形態に係る昇温装置100及び抵抗ヒーター10の温度制御方法を用いることが好ましいが、結晶原料190を溶解して溶融原料を加熱している際には、正確な温度制御は必ずしも必要でなく、断熱材160の外部に設けられた温度センサー180を用いた制御で十分な場合も多いからである。なお、温度センサー180を用いた温度制御は、制御部50で行うようにしてもよいし、他の制御手段を設けてもよい。図2においては、温度センサー180が制御部50と接続され、制御部50が温度センサー180の検出温度に基づく温度制御も実施する構成が一例として示されている。
【0024】
次に、本発明の特徴である、電力制御方法について説明する。前述したように、一般的な昇温装置の電力制御は、昇温部付近に温度センサーを配置し、温度センサーにより昇温部の温度を検出し、抵抗ヒーター10に供給する電力を制御して昇温部の温度管理を行う。しかし、高温で溶解する結晶育成装置等は、1800℃、2000℃といった温度になるため、装置の構造上温度センサーを坩堝110の付近に配置することはできない。このため、高熱を遮断する断熱材160の外側に配置される。つまり、坩堝110付近の温度を直接計測することはできず、断熱材160を通した間接的な測定となる。当然、坩堝110内での温度変化は、断熱材160を通すため小さく、検出が困難である。また、応答性が悪く、坩堝110内で温度変化があったとしても、断熱材160の外側での検出値の変化は数十分後であり、温度制御を行うための検出値には適さない。
【0025】
そこで、本発明の実施形態に係る昇温装置100では、炉内温度センサーの代りに電圧検出部30及び電流検出部40を設け、電力を用いて温度制御を行う。つまり、抵抗ヒーター10に供給されている電力から、抵抗ヒーター10の温度を把握し、電力を用いて温度を間接的に制御する。抵抗ヒーター10に供給されている電力と、抵抗ヒーター10の温度が何度であるかの相関関係は、予め把握することができるので、供給電力と温度との相関関係を用いて、供給電力を制御することにより温度を制御することが可能となる。抵抗ヒーター10に供給されている電力は、電圧検出部30で供給電力の電圧値、電流検出部40で供給電流の電流値を逐次検出し、検出された電圧値と電流値を乗ずることにより算出することができる。制御部50では、電力検出部30及び電流検出部40で検出された電圧値、電流値を基に現状の電力値を算出し、算出された電力が所定の目標電力値に接近するように電力供給装置20から出力される電力を制御する。
【0026】
なお、電力会社より電源60に供給される電力においては、時間により電圧がばらつくことがある。これは、昼間や夜間、あるいは昼休み等で電力使用量等に違いがあり、これにより供給電圧に変化が生じるためである。本発明の実施形態に係る昇圧装置100、結晶育成装置、抵抗ヒーター10の温度制御方法及び結晶育成方法では、電圧値、電流値を直接検出しているため、これらの変化を捉えて正確に制御することができる。前述した特許文献2であるようなシミュレーションによる温度制御では、これら供給電力のばらつきを考慮するのは難しい。
【0027】
次に、昇温装置100及び抵抗ヒーター10の温度制御方法について、より詳細に説明する。抵抗ヒーター10を定電力制御する場合、電力会社から供給される電源60は、交流電源であることが一般的である。抵抗ヒーター10は、直流電源により動作する構造であるため、電力供給装置20としては、交流電源から直流電源に変換するためサイリスター式全波整流電源装置を用いる場合が多い。電力会社から供給される電源60の電圧が変動しても、上述したように、電力供給装置20が出力する電力の電圧値、電流値を検出して制御すれば、抵抗ヒーター10に供給される電力は安定する。しかしながら、電力供給装置20としてサイリスター式全波整流電源装置を使用する場合、突入電流の影響を受ける場合がある。突入電流とは、電気機器に電源を投入したときに、電磁誘導作用により一時的に流れる大電流の事である。サイリスター式全波整流電源装置でも突入電流の問題は発生する。突入電流は、供給電圧の変動に相関して変動する。
【0028】
図3は、本発明の実施形態に係る結晶育成装置に用いられる電力供給装置20から供給される電力の電圧・電流波形の一例を示した図である。図3は、より詳細には、抵抗ヒーター10に流れる電流(分流器の出力)と電圧をオシロスコープで測定した波形である。なお、電圧については測定回路の関係で上下が反転している。図3の○印の箇所が突入電流である。突入電流の値は、定格電流の10倍以上になることがある。電流検出部40の電流測定用の電流計は、突入電流を計測できるほどの入力レンジではない。そのため、電流計の上限を超えた値は、全て測定されず測定誤差となる。つまり、電流計の測定上限値が電流値として検出され、測定上限値を超えた分はカットされて測定誤差となってしまう。抵抗ヒーター10への印加電圧が大きいほど、突入電流の大きさは大きくなる。つまり、測定誤差も大きくなる。このように、電流値を正確に測定できない場合には、電力制御したとしても、入力電圧の変動につられて出力電力が変動する場合がある。なお、突入電流は、電力供給装置20にサイリスター式全波整流電源装置を用いた場合、電源投入時だけでなく、サイリスターで位相角制御をするときに毎回発生する場合があり、三相全波整流で周期毎に突入電流が発生することになるため、測定誤差を無視できなくなる。
【0029】
電流検出部40の電流測定用の電流計を、突入電流を測定できるレンジに変更することも可能であるが、突入電流は、定格電流の10倍以上となることもあるため、定格の10倍以上の測定レンジの電流計を使用する必要がある。この場合、逆に突入電流以外の定格付近の電流値を精度よく測定できなくなり、電力制御自体の精度が落ちる。また、コンデンサー等を電力供給装置20の回路に追加することにより、突入電流の発生を防止する方法もある。しかしながら、結晶育成装置等に用いられる抵抗ヒーター10の容量は大きく、これに対応する突入電流の発生を防止する装置は大型となり、かつ、コストも高くなる。
【0030】
そこで、本発明の実施形態に係る昇温装置100、結晶育成装置、抵抗ヒーター10の温度制御方法及び結晶育成方法では、制御部で以下の計算式(1)及び(2)を用いて補正電圧値を算出し、この補正電圧値を基に電力制御を行う。
【0031】
V(x)=(a*b+1)*Vin (1)
ここで、V(x):補正電圧、b:補正係数(bは定数)である。
【0032】
入力電圧変動率a=(Vin−Vav)/Vav (2)
ここで、Vin:入力電圧、Vav:入力平均電圧値、a:入力電圧変動率(aは定数)である。
【0033】
なお、入力電圧Vinは、抵抗ヒーター10に入力される電圧という意味であり、電圧検出部30で検出される電圧に相当する。
【0034】
補正電圧V(x)は、入力電圧変動率aに補正係数を乗じた値に1を加えた値に入力電圧Vinを乗じた値とする。入力電圧変動率aは、入力電圧Vinが2%〜10%程度変動するため、0.02〜0.1となる。補正係数は、実験データより算出した値である。補正係数を替えて算出した補正電圧で複数実験を行い、その中で最適は任意の数値を取る。補正係数は、電力供給装置20の電源容量にもよるが0.3〜0.6の範囲が適当である。この補正値を電力値に乗じて算出した電力を実測電力とみなして制御部50が電力制御を行い、制御された電力を抵抗ヒーター10に供給することで、抵抗ヒーター10の出力を一定に保つことができる。なお、式(1)、(2)は、電力会社から供給される電源60が変動する場合にも有効であるし、突入電流が発生する場合にも有効であるように作成されているので、いかなる電圧変動にも共通して適用可能である。上述のように、電流の方は、電流検出部40の検出範囲の上限を超え、電流値を検出できない場合があるが、電圧検出部30による電圧の検出は、そのような突入電流が発生した場合でも検出範囲内で検出が可能であるので、突入電流の発生による変動を、電圧値の方で補正し、電力を算出した際に、電力が略一定となるように式(1)、(2)を構成している。
【0035】
また、制御部50による電力制御の形式は問わないが、例えば、抵抗ヒーター10が所定の目標温度を出力するような所定の目標電力に、電力供給装置20の出力電力が接近するように制御する、いわゆるフィードバック制御を行うようにしてもよい。
【0036】
これにより、低コスト、かつ安定した温度制御が可能となる。
【0037】
なお、このような温度制御は、昇温装置100を結晶育成装置に適用した場合、結晶育成装置が結晶の引き上げを行う際に実施するようにしてもよい。つまり、結晶の引き上げの際には、加熱温度を一定に保つことが、高品質の結晶を製造するために重要であるので、結晶の引き上げ時に本実施形態に係る抵抗ヒーター10の温度制御方法を用いることは、極めて有効である。なお、結晶引上げ工程にのみ本実施形態に係る抵抗ヒーター10の温度制御方法を適用する場合、原料溶融工程においては通常の温度センサーを用いて温度制御を行い、結晶引上げ工程において、本実施形態に係る昇温装置100を用いて、抵抗ヒーター10の温度制御方法を実施するようにしてもよい。
【0038】
この場合、制御部50が、引き上げ軸130の動作と連動して抵抗ヒーター10の温度制御を開始してもよいし、制御部50が結晶育成装置の総ての動作を制御し、引き上げのタイミングで本実施形態に係る抵抗ヒーター10の温度制御方法を開始するようにしてもよい。また、逆に、結晶引き上げ時以外の所定のタイミングで本実施形態に係る抵抗ヒーター10の温度制御方法を実施してもよいし、常時本実施形態に係る抵抗ヒーター10の温度制御方法を実施するようにしてもよい。
【0039】
このように、本実施形態に係る昇温装置100、結晶育成装置、抵抗ヒーター10の温度制御方法及び結晶育成方法によれば、温度センサーを用いることなく、電力供給装置20の電力を制御することにより、抵抗ヒーター10の温度を適切に制御することができる。更に、電源60の電力変動が生じたり、電力供給装置20に突入電流が発生したりする場合であっても、電圧値を補正し、補正電圧値を用いて電力を補正し、制御を行うことで変動の影響を受けずに安定した電力制御を行うことができる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明の実施例について説明する。なお、理解の容易のため、今まで説明した構成要素に対応する構成要素には、同一の参照符号を付す。
【0041】
本実施例の昇温装置100を、結晶育成装置に用いて実施した。結晶体の原料は、融点が2030℃程度の原料を用いた。このため、温度センサーは、耐熱壁の外側に配置した。結晶体191は、直径200mm、長さ200mm程度とした。この結晶育成装置の電力制御に関する構成は、次の通りとした。結晶育成装置の加熱部は、抵抗ヒーター10を使用した。電源60は、平均電圧値が205Vの交流電源とした。電力供給装置20は、サイリスター式全波整流電源装置を用い、交流電源を整流し抵抗ヒーター10に電力を供給した。また、抵抗ヒーター10へ供給される電力については、電圧検出部30で電圧値を、電流検出部40では電流値をそれぞれ検出し、制御部50へ信号を出力する。制御部50では、所定の演算を行い、その演算結果により電力の出力を調整する構成とした。
【0042】
この結晶育成装置を用いた結晶育成方法は、結晶原料190を坩堝110内に入れ、この坩堝110を加熱して溶解させて、この液面に種結晶を浸漬して回転させながら引き上げることで結晶体191を製作するものとした。結晶原料190を坩堝に入れ、この坩堝110を加熱して溶解させるまでの工程においては、従来の温度制御方法であり、断熱材160の外側に配置した温度センサー180により電力を制御し昇温した。断熱材160の外側に配置した温度センサー180により、温度が安定し十分な時間が経過した後、本発明の実施例に係る温度制御方法に切り替えた。この安定した時の抵抗ヒーター10への電力値が維持できるように制御した。まずは、抵抗ヒーター10への電力を算出すべく、電圧検出部30で電圧値を、電流検出部40では電流値をそれぞれ検出し、制御部50へ信号を出力した。制御部50では、安定した時の抵抗ヒーター10への電力値を基準とし、この電力値が維持できるように、検出した電圧値と電流値と比較し制御した。つまり、この場合には、安定時の電力値が目標電力値とした。また、突入電力の影響を減少させるため、補正係数を0.46として、以下の式(3)、(4)にて補正電圧V(x)を算出した。
【0043】
V(x)=(a*0.46+1)*Vin (3)
ここで、V(x):補正電圧
入力電圧変動率a=(Vin−Vav)/Vav (4)
ここで、Vin:入力電圧、Vav:入力平均電圧値、a:入力電圧変動率
この演算結果より、制御部50の出力を補正電力値に変更して抵抗ヒーター10に供給する電力を出力した。
【0044】
この制御方法を使用している間に、結晶育成装置においては、坩堝110内で溶解した結晶原料190の液面に種結晶を浸漬して回転させながら引き上げた。結晶体191の引き上げが完了した後は、一定の勾配で炉内の温度が下がるように電力供給装置20の出力を調整した。
【0045】
図4は、本発明の実施形態に係る昇温装置100及び抵抗ヒーター10の温度制御方法で制御した時の炉内の温度を測定したデータを示した図である。横軸は時間を示し、縦軸は温度を示す。なお、横軸には、計測した時刻が記載されており、22時から翌日の6時40分までの経過が記載されている。
【0046】
図4の電力補正前が本実施例の内、補正係数を用いない場合、電力補正後は、補正係数を用いて補正値を算出し場合である。補正前では約8時間の間、5℃程度の変化で抑えられている。補正後は、8時間の間、0.3℃以内とほぼ一定の温度で推移しており、より制御が安定していることが分かる。補正値を用いた温度制御方法を使用しない場合には、電力値を一定にするだけであり、供給電圧のばらつきがそのまま反映される。供給電圧は2%〜10%のばらつきがあり、炉内温度は10℃以上のばらつきがある。
【0047】
よって、本実施例に係る昇温装置、抵抗ヒーター10の温度制御方法、結晶育成装置及び結晶育成方法において、補正値を用いることで、安定した温度制御が可能となることが分かる。
【0048】
このように、本発明の実施形態及び実施例に係る昇温装置、抵抗ヒーター10の温度制御方法、結晶育成装置及び結晶育成方法において、補正値を用いると、低コスト、かつ安定した温度制御が可能となることが分かる。
【0049】
なお、補正値を用いない場合には、温度制御を安定させることはできないが、温度センサー180を用いることなく温度制御が可能であり、温度センサー180を用いることができない高温環境でも温度制御を行うことができ、技術上の効果は十分に達成されている。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0051】
10 抵抗ヒーター
20 電力供給装置
30 電圧検出部
40 電流検出部
50 制御部
60 電源
100 昇温装置
110 坩堝
130 引き上げ軸
190 結晶原料
191 結晶体
図1
図2
図3
図4