【解決手段】エポキシ当量が200〜400g/当量の範囲でかつ水酸基価が25mgKOH/g以上である水酸基含有エポキシ樹脂(A)、式(1)で表されるポリイソシアネート化合物(B)及びポリカーボネートポリオール(C)を必須の反応原料とし、反応原料の総質量に対するポリカーボネートポリオール(C)の割合が15〜50質量%の範囲であるポリカーボネート変性エポキシ樹脂、これを含有する硬化性組成物、その硬化物、及び前記硬化性組成物を用いた接着剤。
水酸基含有エポキシ樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及びポリカーボネートポリオール(C)を必須の反応原料とし、反応原料の総質量に対するポリカーボネートポリオール(C)の割合が15〜50質量%の範囲であるポリカーボネート変性エポキシ樹脂。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリカーボネート変性エポキシ樹脂は、水酸基含有エポキシ樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及びポリカーボネートポリオール(C)を必須の反応原料とし、反応原料の総質量に対するポリカーボネートポリオール(C)の割合が15〜50質量%の範囲であることを特徴とする。
【0013】
前記水酸基含有エポキシ樹脂(A)は、分子構造中に水酸基とエポキシ基とを有するものであれば特に限定されないが、特に、硬化物における柔軟性と靱性に優れるポリカーボネート変性エポキシ樹脂となることから、2官能のエポキシ樹脂が好ましい。2官能のエポキシ樹脂は、具体的には、下記構造式(1)
【0014】
【化3】
[式中Xはそれぞれ独立に下記構造式(2−1)〜(2−8)
【0015】
【化4】
(式中、R
2はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基の何れかであり、R
3はそれぞれ独立に炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基の何れかであり、nは0又は1以上の整数である。)
の何れかで表される構造部位である。]
で表されるものが挙げられる。
【0016】
前記構造式(1)中のXは、前記構造式(2−1)〜(2−8)の何れかで表される構造部位であり、分子中に複数存在するXは同一の構造部位であっても良いし、それぞれ異なる構造部位であっても良い。中でも、硬化物における柔軟性と靱性に優れるポリカーボネートエポキシ樹脂となることから、前記一般式(2−1)又は(2−2)で表される構造部位であることが好ましい。
【0017】
前記水酸基含有エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は、硬化物における柔軟性と靱性に優れるポリカーボネートエポキシ樹脂となることから、200〜400g/当量の範囲であることが好ましく、210〜300g/当量の範囲であることがより好ましい。また、その水酸基価は25mgKOH/gの範囲であることが好ましく、40〜100mgKOH/gの範囲であることがより好ましい。
【0018】
本発明で用いるポリイソシアネート化合物(B)は、例えば、ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;下記構造式(3)で表される繰り返し構造を有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0019】
【化1】
[式中、R
4はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜6の炭化水素基の何れかである。R
5はそれぞれ独立に炭素原子数1〜4のアルキル基、又は構造式(3)で表される構造部位と*印が付されたメチレン基を介して連結する結合点の何れかである。mは0又は1〜3の整数であり、lは1以上の整数である。]
【0020】
前記ポリイソシアネート化合物(B)の中でも、硬化物における柔軟性と靱性に優れるポリカーボネート変性エポキシ樹脂となることから、各種のジイソシアネート化合物が好ましく、分子構造中に環構造を有するジイソシアネート化合物、即ち、脂環式ジイソシアネート又は芳香族ジイソシアネートがより好ましい。
【0021】
前記ポリカーボネートポリオール(C)は、分子構造中にカーボネート基と水酸基とを有するであれば、その他の部分構造は特に限定されず、種々多様なものを用いることができる。その数平均分子量(Mn)は、硬化物における柔軟性と靱性に優れるポリカーボネート変性エポキシ樹脂となることから、500〜5,000の範囲であることが好ましい。また、水酸基価は20〜300mgKOH/gの範囲であることが好ましい。前記ポリカーボネートポリオール(C)は、例えば、各種のポリオール化合物とカルボニル化剤との縮合反応にて製造することができる。また、その市販品の例としては、旭化成ケミカルズ株式会社製の「デュラノール」シリーズや、株式会社クラレの「Kuraray Polyol C−」シリーズ等が挙げられる。
【0022】
尚、本発明において、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は下記条件のゲルパーミアーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0023】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC−8220GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSK−GUARDCOLUMN SuperHZ−L
+東ソー株式会社製 TSK−GEL SuperHZM−M×4
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0024】
本発明のポリカーボネート変性エポキシ樹脂は、前記水酸基含有エポキシ樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及びポリカーボネートポリオール(C)と併せて、その他の化合物(D)を反応原料に用いても良い。その他の化合物(D)は、例えば、前記ポリカーボネートポリオール(C)以外のその他のポリオール化合物(D1)が挙げられる。前記その他のポリオール化合物(D1)は、具体的には、ポリオールモノマーとポリカルボン酸モノマーとの反応物であるポリエステルポリオール、ラクトン化合物の開環重合物或いはポリオールモノマーとラクトン化合物との重合物であるラクトン変性ポリオール、分子中にポリオキシアルキレン構造を有するポリエーテルポリオール等が挙げられる。これらその他のポリオール化合物(D1)を用いる場合には、硬化物における柔軟性と靱性に優れるという本願発明の効果が十分に発現することから、前記ポリカーボネートポリオール(C)と前記その他のポリオール化合物(D1)との合計質量に対し、前記ポリカーボネートポリオール(C)を50質量%以上用いることが好ましく、80質量%以上用いることがより好ましい。
【0025】
また、前記その他の化合物(D)を用いる場合には、硬化物における柔軟性と靱性に優れるという本願発明の効果が十分に発現することから、ポリカーボネート変性エポキシ樹脂の反応原料の総質量に対し、前記水酸基含有エポキシ樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及びポリカーボネートポリオール(C)の合計質量が70質量%以上となることが好ましく、90質量%以上となることがより好ましい。
【0026】
本発明のポリカーボネート変性エポキシ樹脂は、その反応原料の総質量に対する前記ポリカーボネートポリオール(C)の割合が15〜50質量%の範囲であることを特徴とする。更に、硬化物における柔軟性と靱性に一層優れるポリカーボネート変性エポキシ樹脂となることから、反応原料の総質量に対する前記ポリカーボネートポリオール(C)の割合が15〜30質量%の範囲であることがより好ましい。
【0027】
本発明のポリカーボネート変性エポキシ樹脂は、前記水酸基含有エポキシ樹脂(A)、前記ポリイソシアネート化合物(B)及び前記ポリカーボネートポリオール(C)を必須の反応原料とし、分子中にこれらの反応原料に由来する構造部位を有するものであれば、その製造方法は特に限定されず、如何なる方法にて製造されたものであっても良い。製造方法の一例としては、例えば、前記ポリイソシアネート化合物(B)と前記ポリカーボネートポリオール(C)とをイソシアネート基か過剰となる条件でウレタン化反応させて、イソシアネート基含有中間体(M)を得、これと前記水酸基含有エポキシ樹脂(A)とをウレタン化反応させる方法が挙げられる。
【0028】
前記ポリイソシアネート化合物(B)と前記ポリカーボネートポリオール(C)との反応割合は、例えば、公知のウレタン化触媒の存在下、20〜120℃程度の温度範囲で行うことができる。両者の反応割合は、前記ポリイソシアネート化合物(B)が有するイソシアネート基と、前記ポリカーボネートポリオール(C)が有する水酸基とのモル比[(NCO)/(OH)]が、1.5/1〜4.5/1の範囲となる割合であることが好ましい。得られるイソシアネート基含有中間体(M)のイソシアネート基含有量は、1〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0029】
前記イソシアネート基含有中間体(M)と前記水酸基含有エポキシ樹脂(A)との反応は、例えば、公知のウレタン化触媒の存在下、20〜120℃程度の温度範囲で行うことができる。両者の反応割合は、その質量比[(A)/(M)]が50/50〜90/10の範囲であることが好ましく、60/40〜80/20の範囲であることがより好ましい。
【0030】
本発明のポリカーボネート変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は、硬化物における柔軟性と靱性に優れるポリカーボネート変性エポキシ樹脂となることから、250〜500g/当量の範囲であることが好ましく、280〜400g/当量の範囲であることがより好ましい。
【0031】
本発明の硬化性組成物は前記ポリカーボネート変性エポキシ樹脂と、硬化剤又は硬化促進剤とを含有する。
【0032】
前記硬化剤又は硬化促進剤は、エポキシ樹脂の硬化用に一般的に用いられるものを広く用いることができ、例えば、ポリアミン化合物、アミド化合物、酸無水物、フェノ−ル性水酸基含有樹脂、リン化合物、イミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、尿素系化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。
【0033】
前記ポリアミン化合物は、例えば、トリメチレンジアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ジプロピレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン(トリエチレンジアミン)、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、トリエタノールアミン、ジメチルアミノヘキサノール等の脂肪族アミン化合物;
【0034】
ピペリジン、ピペラジン、メンタンジアミン、イソホロンジアミン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、N,N’,N”−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、N−アミノエチルピペラジン、トリメチルアミノエチルピペラジン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)等の脂環式及び複素環式アミン化合物;
【0035】
o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルメチルアミン、ジメチルベンジルアミン、m−キシレンジアミン、ピリジン、ピコリン、α−メチルベンジルメチルアミン等の芳香族アミン化合物;
【0036】
エポキシ化合物付加ポリアミン、マイケル付加ポリアミン、マンニッヒ付加ポリアミン、チオ尿素付加ポリアミン、ケトン封鎖ポリアミン、ジシアンジアミド、グアニジン、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、アミンイミド、三フッ化ホウ素−ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素−モノエチルアミン錯体等の変性アミン化合物等が挙げられる。
【0037】
前記アミド化合物は、例えば、ジシアンジアミドやポリアミドアミン等が挙げられる。前記ポリアミドアミンは、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、脂肪酸、ダイマー酸等のカルボン酸化合物と、脂肪族ポリアミンやポリオキシアルキレン鎖を有するポリアミン等を反応させて得られるものが挙げられる。
【0038】
前記酸無水物は、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0039】
前記フェノ−ル性水酸基含有樹脂は、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0040】
前記リン化合物は、例えば、エチルホスフィン、ブチルホスフィン等のアルキルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジプロピルホスフィン等のジアルキルホスフィン;ジフェニルホスフィン、メチルエチルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィン等が挙げられる。
【0041】
前記イミダゾール化合物は、例えば、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、3−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、5−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、3−エチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、5−エチルイミダゾール、1−n−プロピルイミダゾール、2−n−プロピルイミダゾール、1−イソプロピルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1−n−ブチルイミダゾール、2−n−ブチルイミダゾール、1−イソブチルイミダゾール、2−イソブチルイミダゾール、2−ウンデシル−1H−イミダゾール、2−ヘプタデシル−1H−イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,3−ジメチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、2−フェニル−1H−イミダゾール、4−メチル−2−フェニル−1H−イミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(2−シアノエトキシ)メチルイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール塩酸塩等が挙げられる
【0042】
前記イミダゾリン化合物は、例えば、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等が挙げられる。
【0043】
前記尿素化合物は、例えば、p−クロロフェニル−N,N−ジメチル尿素、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−N,N−ジメチル尿素、N−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素等が挙げられる。
【0044】
本発明の硬化性組成物は、本発明のポリカーボネート変性エポキシ樹脂以外の、その他のエポキシ樹脂を併用しても良い。その他のエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型、F型、S型等のビスフェノール型エポキシ樹脂、アルコキシ変性ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、ナフトールノボラック型、クレゾールノボラック型、フェノール−クレゾール共縮ノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0045】
本発明において、エポキシ樹脂成分と前記硬化剤又は硬化促進剤との配合量は、エポキシ基と反応し得る官能基を有する硬化剤を用いる場合、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1モルに対し、硬化剤中の官能基が0.5〜1.1モルの範囲となる割合で配合することが好ましい。また、硬化促進剤を用いる場合には、エポキシ樹脂成分100質量部に対し、0.5〜10質量部の割合で配合することが好ましい。
【0046】
本発明の硬化性組成物は、この他、有機溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコン系添加剤、フッ素系添加剤、難燃剤、可塑剤、シランカップリング剤、有機ビーズ、無機微粒子、無機フィラー、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、防曇剤、着色剤等を含有していても良い。これら各種成分は所望の性能に応じて任意の量を添加してよい。
【0047】
本発明の硬化性組成物は、前記ポリカーボネート変性エポキシ樹脂、硬化剤又は硬化促進剤、及び前記各種の任意成分を、ポットミル、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ホモジナイザー、スーパーミル、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて均一に混合することにより調製することができる。
【0048】
本発明の硬化性組成物の用途は特に限定されず、塗料、コーティング剤、成形材料、絶縁材料、封止剤、シール剤、繊維の結束剤など様々な用途に用いることができる。中でも、硬化物における柔軟性と靭性に優れる特徴を生かし、自動車、電車、土木建築、エレクトロニクス、航空機、宇宙産業分野の構造部材の接着剤として好適に用いることができる。本発明の接着剤は、例えば、金属−非金属間のような異素材の接着に用いた場合にも、温度環境の変化に影響されず高い接着性を維持することができ、剥がれ等が生じ難い。また、本発明の接着剤は、構造部材用途の他、一般事務用、医療用、炭素繊維、電子材料用などの接着剤としても使用でき、電子材料用の接着剤としては、例えば、ビルドアップ基板などの多層基板の層間接着剤、光学部品接合用接着剤、光ディスク貼り合わせ用接着剤、プリント配線板実装用接着剤、ダイボンディング接着剤、アンダーフィルなどの半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム、異方性導電性ペーストなどの実装用接着剤などが挙げられる。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例および比較例をもって本発明をより詳しく説明する。
【0050】
製造例1 イソシアネート基含有中間体(M−1)の製造
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコを窒素で置換し、ポリカーボネートジオール[旭化成ケミカルズ株式会社製「デュラネート T−5652」数平均分子量(Mn)2,000]818質量部、イソホロンジイソシアネート182質量部を仕込み、触媒としてジオクチル錫触媒(日東化成株式会社製「ネオスタンU−820」)0.1質量部を添加した。撹拌しながら70℃で3時間反応させ、イソシアネート基含有中間体(M−1)を得た。イソシアネート基含有中間体(M−1)のイソシアネート基含有量は3.3質量%であった。
【0051】
製造例2及び3
反応原料を表1に示すとおりに変更した以外は、製造例1と同様にしてイソシアネート基含有中間体(M−2)及び(M−3)を得た。
【0052】
【表1】
【0053】
表1中のポリカーボネートポリオール(C)の詳細は以下の通り
「デュラネート T−6002」:旭化成ケミカルズ株式会社製ポリカーボネートジオール 数平均分子量(Mn)2,000
「デュラネート T−6001」:ポリカーボネートジオール 数平均分子量(Mn)1,000
【0054】
実施例1 ポリカーボネート変性エポキシ樹脂(1)の製造
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、窒素雰囲気下、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850」エポキシ当量188g/当量)643質量部、ビスフェノールA57質量部、及び触媒としてテトラメチルアンモニウムクロライド0.1質量部を仕込んだ。140℃まで加熱して撹拌しながら反応させ、エポキシ当量240g/当量、水酸基価57mgKOH/gの水酸基含有エポキシ樹脂(A−1)を得た。
反応系中を60℃まで冷却した後、製造例1で得たイソシアネート基含有中間体(M−1)300質量部を加えた。80℃に昇温してイソシアネート基含有量がほぼ0になるまで反応させて、ポリカーボネート変性エポキシ樹脂(1)を得た。ポリカーボネート変性エポキシ樹脂(1)のエポキシ当量は343g/当量であった。また、ポリカーボネート変性エポキシ樹脂(1)の反応原料総質量に対するポリカーボネートポリオール(C)の割合は24.5%であった。
【0055】
実施例2 ポリカーボネート変性エポキシ樹脂(2)の製造
実施例1と同様にして水酸基含有エポキシ樹脂(A−1)を得、反応系中を60℃まで冷却した後、製造例2で得たイソシアネート基含有中間体(M−2)300質量部を加えた。80℃に昇温してイソシアネート基含有量がほぼ0になるまで反応させて、ポリカーボネート変性エポキシ樹脂(2)を得た。ポリカーボネート変性エポキシ樹脂(2)のエポキシ当量は344g/当量であった。また、ポリカーボネート変性エポキシ樹脂(2)の反応原料総質量に対するポリカーボネートポリオール(C)の割合は24.5%であった。
【0056】
実施例3 ポリカーボネート変性エポキシ樹脂(3)の製造
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、窒素雰囲気下、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 830」エポキシ当量170g/当量)671質量部、ビスフェノールF79質量部、及び触媒としてテトラメチルアンモニウムクロライド0.1質量部を仕込んだ。140℃まで加熱して撹拌しながら反応させ、エポキシ当量237g/当量、水酸基価75mgKOH/gの水酸基含有エポキシ樹脂(A−2)を得た。
反応系中を70℃まで冷却した後、製造例3で得たイソシアネート基含有中間体(M−3)250質量部を加えた。80℃に昇温してイソシアネート基含有量がほぼ0になるまで反応させて、ポリカーボネート変性エポキシ樹脂(3)を得た。ポリカーボネート変性エポキシ樹脂(3)のエポキシ当量は317g/当量であった。また、ポリカーボネート変性エポキシ樹脂(3)の反応原料総質量に対するポリカーボネートポリオール(C)の割合は18.6%であった。
【0057】
実施例4 ポリカーボネート変性エポキシ樹脂(4)の製造
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、窒素雰囲気下、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 830」エポキシ当量170g/当量)641質量部、ビスフェノールF59質量部、及び触媒としてテトラメチルアンモニウムクロライド0.1質量部を仕込んだ。140℃まで加熱して撹拌しながら反応させ、エポキシ当量220g/当量、水酸基価64mgKOH/gの水酸基含有エポキシ樹脂(A−3)を得た。
反応系中を70℃まで冷却した後、製造例1で得たイソシアネート基含有中間体(M−1)300質量部を加えた。80℃に昇温してイソシアネート基含有量がほぼ0になるまで反応させて、ポリカーボネート変性エポキシ樹脂(4)を得た。ポリカーボネート変性エポキシ樹脂(4)のエポキシ当量は314g/当量であった。また、ポリカーボネート変性エポキシ樹脂(4)の反応原料総質量に対するポリカーボネートポリオール(C)の割合は24.5%であった。
【0058】
実施例5 ポリカーボネート変性エポキシ樹脂(5)の製造
実施例3と同様にして水酸基含有エポキシ樹脂(A−3)を得、反応系中を70℃まで冷却した後、製造例2で得たイソシアネート基含有中間体(M−2)250質量部を加えた。80℃に昇温してイソシアネート基含有量がほぼ0になるまで反応させて、ポリカーボネート変性エポキシ樹脂(5)を得た。ポリカーボネート変性エポキシ樹脂(5)のエポキシ当量は317g/当量であった。また、ポリカーボネート変性エポキシ樹脂(5)の反応原料総質量に対するポリカーボネートポリオール(C)の割合は20.5%であった。
【0059】
比較製造例1 ポリエーテル変性エポキシ樹脂(1’)の製造
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコを窒素で置換し、ポリプロピレングリコール[三井化学株式会社製「D−2000」重量平均分子量(Mw)2,000]818質量部、イソホロンジイソシアネート182質量部を仕込み、触媒としてジオクチル錫触媒(日東化成株式会社製「ネオスタンU−820」)0.1質量部を添加した。撹拌しながら70℃で3時間反応させ、イソシアネート基含有中間体(M’−1)を得た。イソシアネート基含有中間体(M’−1)のイソシアネート基含有量は3.3質量%であった。
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、窒素雰囲気下、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850」エポキシ当量188g/当量、水酸基価20mgKOH/g)700質量部、イソシアネート基含有中間体(M’−1)300質量部を添加した。80℃まで加熱し、イソシアネート基含有量がほぼ0になるまで反応させて、ポリエーテル変性エポキシ樹脂(1‘)を得た。得られたポリエーテル変性エポキシ樹脂(1’)のエポキシ当量は269g/当量であった。
【0060】
比較製造例2 ポリエーテル変性エポキシ樹脂(2’)の製造
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコを窒素で置換し、ポリプロピレングリコール[三井化学株式会社製「D−1000」重量平均分子量(Mw)1,000]742質量部、トリレンジイソシアネート258質量部を仕込み、触媒としてジオクチル錫触媒(日東化成株式会社製「ネオスタンU−820」)0.1質量部を添加した。撹拌しながら70℃で3時間反応させ、イソシアネート基含有中間体(M’−2)を得た。イソシアネート基含有中間体(M’−2)のイソシアネート基含有量は6.2質量%であった。
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、窒素雰囲気下、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850」エポキシ当量188g/当量、水酸基価20mgKOH/g)800質量部、イソシアネート基含有中間体(M’−2)200質量部を添加した。80℃まで加熱し、イソシアネート基含有量がほぼ0になるまで反応させて、ポリエーテル変性エポキシ樹脂(2‘)を得た。得られたポリエーテル変性エポキシ樹脂(2’)のエポキシ当量は235g/当量であった。
【0061】
実施例6〜15及び比較例1、2
硬化性組成物の調整及び評価
実施例1〜5及び比較製造例1で得た変性エポキシ樹脂を用いて下記要領で硬化性組成物を調整し、その硬化物について以下の要領で各種評価試験を行った。結果を表2〜5に示す。
【0062】
硬化性組成物の製造
表2又は3に示す割合で各成分を配合し、硬化性組成物を得た。
【0063】
引張試験
硬化性組成物を膜厚が2mmになるように金型に注入し、表に示す硬化条件で硬化させた。硬化物から1号ダンベル型のサンプルを切り出し、島津製作所株式会社製「AUTOGRAPH AG−IS 1kN」を用いて引張試験を行い、伸び率(%)で評価した。
【0064】
接着性試験
硬化性組成物用いて2枚の鋼板を熱硬化接着した。接着層の膜厚は0.2mmとし、表に示す硬化条件で硬化させた。得られた接着試験鋼板について、JIS K6859(接着剤のクリープ破壊試験)に基づき、島津製作所株式会社製「AUTOGRAPH AG-IS 10kN」を用いて25℃又は80℃の温度条件下での引張せん断試験を行い、破断強度(MPa)で評価した。
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】