【実施例】
【0023】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0024】
1.蛍光材料の合成
作製例1.Sr
3Al
2O
6:Eu(III)
SrCO
3、Al
2O
3、Eu
2O
3の各原料を、Sr:Eu:Alのモル比が2.97:0.03:2となる比率で混合した。この混合物を大気条件下において、1200℃で4時間焼成することにより、(Sr
0.99Eu
0.01)
3Al
2O
6の組成比を有する蛍光材料(Sr
3Al
2O
6:Eu(III))を得た。得られた蛍光材料は、粉末X線回析パターンを測定することにより同定した。
【0025】
作製例2.Ca
3Al
2O
6:Eu(III)
SrCO
3をCaCO
3に変更したこと以外は、作製例1と同様の方法により、(Ca
0.99Eu
0.01)
3Al
2O
6の組成比を有する蛍光材料(Ca
3Al
2O
6:Eu(III))を得た。得られた蛍光材料は、粉末X線回析パターンを測定することにより同定した。
【0026】
作製例3.Sr
3Al
2O
6:Eu(III)−Tb(III)
SrCO
3、Al
2O
3、Eu
2O
3、Tb
2O
3の各原料を、Sr:Eu:Tb:Alのモル比が2.94:0.03:0.03:2となる比率で混合した。この混合物を大気条件下において、1200℃で4時間焼成することにより、(Sr
0.98Eu
0.01Tb
0.01)
3Al
2O
6の組成比を有する蛍光材料(Sr
3Al
2O
6:Eu(III)−Tb(III))を得た。得られた蛍光材料は、粉末X線回析パターンを測定することにより同定した。
【0027】
作製例4.(Sr
2.5Mg
0.5)Al
2O
6:Eu(III)
SrCO
3、MgCO
3、Al
2O
3、Eu
2O
3の各原料を、Sr:Mg:Eu:Alのモル比が2.475:0.495:0.03:2となる比率で混合した。この混合物を大気条件下において、1200℃で4時間焼成することにより、(Sr
0.825Mg
0.165Eu
0.01)
3Al
2O
6の組成比を有する蛍光材料((Sr
2.5Mg
0.5)Al
2O
6:Eu(III))を得た。得られた蛍光材料は、粉末X線回析パターンを測定することにより同定した。
【0028】
作製例5.(Sr
1.5Ca
1.5)Al
2O
6:Eu(III)
SrCO
3、CaCO
3、Al
2O
3、Eu
2O
3の各原料を、Sr:Ca:Eu:Alのモル比が1.485:1.485:0.03:2となる比率で混合した。この混合物を大気条件下において、1200℃で4時間焼成することにより、(Sr
0.495Ca
0.495Eu
0.01)
3Al
2O
6の組成比を有する蛍光材料((Sr
1.5Ca
1.5)Al
2O
6:Eu(III))を得た。得られた蛍光材料は、粉末X線回析パターンを測定することにより同定した。
【0029】
作製例6.Sr
3(Al
1.9Ga
0.1)O
6:Eu(III)
SrCO
3、Al
2O
3、Ga
2O
3、Eu
2O
3の各原料を、Sr:Eu:Al:Gaのモル比が2.97:0.03:1.9:0.1となる比率で混合した。この混合物を大気条件下において、1200℃で4時間焼成することにより、(Sr
0.99Eu
0.01)
3(Al
0.95Ga
0.05)
2O
6の組成比を有する蛍光材料(Sr
3(Al
1.9Ga
0.1)O
6:Eu(III))を得た。得られた蛍光材料は、粉末X線回析パターンを測定することにより同定した。
【0030】
作製例7.Sr
3(Al
1.9In
0.1)O
6:Eu(III)
Ga
2O
3をIn
2O
3に変更したこと以外は、作製例6と同様の方法により、(Sr
0.99Eu
0.01)
3(Al
0.95In
0.05)
2O
6の組成比を有する蛍光材料(Sr
3(Al
1.9In
0.1)O
6:Eu(III))を得た。得られた蛍光材料は、粉末X線回析パターンを測定することにより同定した。
【0031】
2.蛍光材料の発光スペクトルの測定
作製例1〜7の各蛍光材料の粉末に対し、任意の波長の励起光を照射し、蛍光材料からの発光を測定した。励起光による発光特性の測定装置として、HORIBA Fluorolog−3 spectrofluorometerと光電子増倍管を用いた。
【0032】
(1)Sr
3Al
2O
6:Eu(III)
Sr
3Al
2O
6:Eu(III)に対し、303nmの波長の励起光を照射したところ赤色の発光が観測され、365nmの波長の励起光を照射したところ紫色の発光が観測された。
図1は、Sr
3Al
2O
6:Eu(III)に対し、250nm又は397nmの波長の励起光を照射した際の発光スペクトルを示す。これらの結果から、Sr
3Al
2O
6:Eu(III)は励起光の波長によって、発光色及び発光スペクトルが異なることが確認された。
【0033】
(2)Ca
3Al
2O
6:Eu(III)
図2は、Ca
3Al
2O
6:Eu(III)に対し、250nm、397nm又は464nmの波長の励起光を照射した際の発光スペクトルを示す。Ca
3Al
2O
6:Eu(III)は、これらの波長の励起光によって同じ紫色の発光を示したが、その発光スペクトルは互いに異なった。
【0034】
(3)Sr
3Al
2O
6:Eu(III)とCa
3Al
2O
6:Eu(III)の比較
Sr
3Al
2O
6:Eu(III)とCa
3Al
2O
6:Eu(III)を比較した結果、蛍光材料の組成が異なることにより、同じ303nmの波長の励起光を照射した場合、Sr
3Al
2O
6:Eu(III)では赤色に発光し、Ca
3Al
2O
6:Eu(III)では紫色に発光した。
図3は、それぞれの蛍光材料に対し、250nmの波長の励起光を照射した際の発光スペクトルを示す。
図4は、それぞれの蛍光材料に対し、464nmの波長の励起光を照射した際の発光スペクトルを示す。この際、それぞれの蛍光材料は、同じ紫色の発光を示したが、その発光スペクトルは互いに異なった。これらの結果から、蛍光材料に含まれるM
1の金属(Sr又はCa)を選択することによって、発光色及び発光スペクトルを制御できることが確認された。これは、蛍光材料に含まれる金属によって、結晶構造中の希土類イオンが入る位置が変化するためと考えられる。
【0035】
(4)Sr
3Al
2O
6:Eu(III)−Tb(III)
Sr
3Al
2O
6:Eu(III)−Tb(III)に対し、254nmの波長の励起光を照射したところ赤色の発光が観測され、303nmの波長の励起光を照射したところ黄色の発光が観測された。この結果から、蛍光材料に用いる希土類イオンを組み合わせることにより、励起光の波長に応じて異なる発光色が得られることが確認された。
【0036】
(5)(Sr
2.5Mg
0.5)Al
2O
6:Eu(III)
(Sr
2.5Mg
0.5)Al
2O
6:Eu(III)に対し、250nmの波長の励起光を照射したところ赤色の発光が観測され、397nmの波長の励起光を照射したところオレンジ色の発光が観測された。
図5は、(Sr
2.5Mg
0.5)Al
2O
6:Eu(III)に対し、250nm、397nm又は464nmの波長の励起光を照射した際の発光スペクトルを示す。この結果から、蛍光材料に含まれるM
1の金属(Sr及びMg)が2種以上である場合でも、1種類の金属を含む場合と同様に励起光に応じて異なる発光色及び発光スペクトルが得られることが確認された。
【0037】
図6の(a)、(b)及び(c)は、Sr
3Al
2O
6:Eu(III)及び(Sr
2.5Mg
0.5)Al
2O
6:Eu(III)に対し、250nm、397nm又は464nmの波長の励起光を照射した際の発光スペクトルを示す。この結果から、M
1の金属のモル分率(Sr:Mg)を、3:0から2.5:0.5に変化させることでも、発光スペクトルを制御できることが確認された。
【0038】
(6)(Sr
1.5Ca
1.5)Al
2O
6:Eu(III)
図7は、Sr
3Al
2O
6:Eu(III)、Ca
3Al
2O
6:Eu(III)及び(Sr
1.5Ca
1.5)Al
2O
6:Eu(III)に対し、250nmの波長の励起光を照射した際の発光スペクトルを示す。(Sr
1.5Ca
1.5)Al
2O
6:Eu(III)では、M
1の金属(Sr及びCa)が2種であることにより、M
1の金属が1種類であるそれぞれの蛍光材料とは異なる発光スペクトルが確認された。
【0039】
(7)Sr
3(Al
1.9Ga
0.1)O
6:Eu(III)
Sr
3(Al
1.9Ga
0.1)O
6:Eu(III)に対し、254nmの波長の励起光を照射したところ黄色の発光が観測され、365nmの波長の励起光を照射したところ紫色の発光が観測された。
図8は、Sr
3(Al
1.9Ga
0.1)O
6:Eu(III)に対し、250nm、397nm又は464nmの波長の励起光を照射した際の発光スペクトルを示す。これらの結果から、蛍光材料に含まれるM
2の金属(Al及びGa)が2種である場合でも、M
1に2種の金属を有する(Sr
2.5Mg
0.5)Al
2O
6:Eu(III)及び(Sr
1.5Ca
1.5)Al
2O
6:Eu(III)と同様に、励起光に応じて異なる発光色及び発光スペクトルが得られることが確認された。
【0040】
図9の(a)、(b)及び(c)は、Sr
3Al
2O
6:Eu(III)及びSr
3(Al
1.9Ga
0.1)O
6:Eu(III)に対し、250nm、397nm又は464nmの波長の励起光を照射した際の発光スペクトルを示す。この結果から、M
2の金属のモル分率(Al:Ga)を2:0から1.9:0.1に変化させることでも、発光スペクトルを制御できることが確認された。
【0041】
(8)Sr
3(Al
1.9In
0.1)O
6:Eu(III)
Sr
3(Al
1.9In
0.1)O
6:Eu(III)に対し、254nmの波長の励起光を照射したところ橙色の発光が観測され、365nmの波長の励起光を照射したところ紫色の発光が観測された。
図10は、Sr
3(Al
1.9In
0.1)O
6:Eu(III)に対し、250nm、397nm又は464nmの波長の励起光を照射した際の発光スペクトルを示す。これらの結果から、蛍光材料に含まれるM
2の金属としてAl及びInを用いた場合でも、Al及びGaを用いているSr
3(Al
1.9Ga
0.1)O
6:Eu(III)と同様に、励起光に応じて異なる発光色及び発光スペクトルが得られることが確認された。また、Inを用いたSr
3(Al
1.9In
0.1)O
6:Eu(III)の発光色及び発光スペクトルは、Gaを用いたSr
3(Al
1.9Ga
0.1)O
6:Eu(III)の発光色及び発光スペクトルとは異なっていた。
【0042】
図11の(a)、(b)及び(c)は、Sr
3Al
2O
6:Eu(III)及びSr
3(Al
1.9In
0.1)O
6:Eu(III)に対し、250nm、397nm又は464nmの波長の励起光を照射した際の発光スペクトルを示す。この結果から、M
2の金属のモル分率(Al:In)を、2:0から1.9:0.1に変化させることでも、発光スペクトルを制御できることが確認された。