【課題】練肉工程を必要とせず、使用する樹脂の選択の自由度が高く、易分散性に優れた顔料組成物及びその製造方法、さらには該顔料組成物を用いた活性エネルギー線硬化性顔料組成物及び印刷インキを提供する。
【解決手段】フタロシアニンブルー顔料(A)及びショ糖酢酸エステル(B)を含有することを特徴とする顔料組成物を用いる。さらには、前記ショ糖酢酸エステル(B)の含有量が、前記フタロシアニンブルー顔料(A)100質量部に対して、1〜20質量部の範囲の顔料組成物を用いる。
水の存在下で、フタロシアニンブルー顔料(A)及びショ糖酢酸エステル(B)を80℃以上に加温して攪拌混合した後、水を除去することを特徴とする顔料組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の顔料組成物は、フタロシアニンブルー顔料(A)及びショ糖酢酸エステル(B)を含有するものである。
【0012】
前記フタロシアニンブルー顔料(A)としては、例えば、無金属フタロシアニンブルー、銅フタロシアニンブルー等のブルーの色調を持ったフタロシアニン化合物が挙げられる。これらの中でも、銅フタロシアニンブルーが好ましい。また、銅フタロシアニンブルーには、α結晶、β結晶及びε結晶の結晶構造が知られているが、これらの結晶構造の中でもβ結晶が好ましい。
【0013】
前記ショ糖酢酸エステル(B)としては、どのような形態のものでも用いることができるが、本発明顔料組成物を製造する際に、前記フタロシアニンブルー顔料(A)との均一に混合しやすくなることから、粉末状のものが好ましい。
【0014】
本発明の顔料組成物中の前記ショ糖酢酸エステル(B)の含有量は、より優れた易分散性が得られることから、前記フタロシアニンブルー顔料(A)100質量部に対して、1〜25質量部の範囲が好ましく、3〜20質量部の範囲がより好ましく、5〜15質量部の範囲がさらに好ましい。
【0015】
本発明の顔料組成物には、易分散性がより一層向上できることから、前記フタロシアニンブルー顔料(A)及び前記ショ糖酢酸エステル(B)以外に、水添ロジンを添加してもよい。前記水添ロジンは、松ヤニを精製したロジン樹脂から誘導される樹脂である。水添ロジンは、ロジン樹脂中に含まれる二重結合に水素原子を添加させたもので、酸化重合を防止して安定な材料である。
【0016】
前記水添ロジンを用いる場合、その使用量としては、易分散性がより向上できることから、前記フタロシアニンブルー顔料(A)100質量部に対して、0.5〜10質量部の範囲が好ましく、1〜8質量部の範囲がより好ましく、2〜5質量部の範囲がさらに好ましい。
【0017】
本発明の顔料組成物の製造方法としては、本発明の顔料組成物の原料である各成分を製造時に均一混合することで、易分散性がより向上できることから、水の存在下で、前記フタロシアニンブルー顔料(A)及び前記ショ糖酢酸エステル(B)を混合した後、水を除去する方法が好ましい。この場合、前記フタロシアニンブルー顔料(A)及び前記ショ糖酢酸エステル(B)の混合時に、水が存在すればよいので、前記フタロシアニンブルー顔料(A)の合成後に得られる水を含んだウェットケーキ顔料又はスラリー顔料に前記ショ糖酢酸エステル(B)を加えて混合し、撹拌することで、本発明の顔料組成物を製造できる。また、前記フタロシアニンブルー顔料(A)の乾燥顔料に水を加えて顔料スラリーを製造した後、同様に前記ショ糖酢酸エステル(B)を加えて混合し、撹拌して本発明の顔料組成物を製造してもよい。
【0018】
また、本発明の顔料組成物の製造方法において、水の存在下で、前記フタロシアニンブルー顔料(A)及び前記ショ糖酢酸エステル(B)を混合する際に、前記ショ糖酢酸エステル(B)が前記フタロシアニンブルー顔料(A)の表面を均一に被覆して易分散性がより向上できることから、加熱することが好ましい。加熱温度としては、水の沸点未満で、前記ショ糖酢酸エステル(B)の及び後述する水添ロジンの融点又は軟化点以上にすることが好ましく、具体的には、80℃以上でかつ水の沸点未満が好ましく、85〜98℃の範囲がより好ましく、90〜95℃の範囲がさらに好ましい。
【0019】
さらに、本発明の顔料組成物の製造方法において、水の存在下で、前記フタロシアニンブルー顔料(A)及び前記ショ糖酢酸エステル(B)を混合する方法として、易分散性がより向上できることから、材料を解砕して水中に分散できるビーズミル、ディスクミキサー、ホモジナイザー等の装置を用いる方法が好ましい。
【0020】
また、前記水添ロジンを本発明の顔料組成物に用いる場合、本発明の顔料組成物の原料である各成分を均一混合することで、易分散性がより向上できることから、前記フタロシアニンブルー顔料(A)に前記ショ糖酢酸エステル(B)を加える前に、前記フタロシアニンブルー顔料(A)のウェットケーキ顔料又はスラリー顔料に加えることが好ましい。
【0021】
本発明の活性エネルギー線硬化性顔料組成物は、上記の前記フタロシアニンブルー顔料(A)及び前記ショ糖酢酸エステル(B)を含有する顔料組成物と、活性エネルギー線硬化性化合物(C)とを含有するものである。
【0022】
前記活性エネルギー線硬化性化合物(C)としては、例えば、多官能(メタ)アクリレート(C1)、ウレタン(メタ)アクリレート(C2)等が挙げられる。これらは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0023】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基とメタクリロイル基の一方又は両方をいう。
【0024】
前記多官能(メタ)アクリレート(C1)は、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。この多官能(メタ)アクリレート(C1)の具体例としては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリレート(C1)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの多官能(メタ)アクリレート(C1)の中でも、本発明で用いる活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の耐擦傷性が向上することから、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0025】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(C2)は、ポリイソシアネート(c2−1)と水酸基を有する(メタ)アクリレート(c2−2)とを反応させて得られたものである。
【0026】
前記ポリイソシアネート(c2−1)としては、脂肪族ポリイソシアネートと芳香族ポリイソシアネートとが挙げられるが、本発明で用いる活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の着色をより低減できることから、脂肪族ポリイソシアネートが好ましい。
【0027】
前記脂肪族ポリイソシアネートは、イソシアネート基を除く部位が脂肪族炭化水素から構成される化合物である。この脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2−メチル−1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、2−メチル−1,5−ジイソシアナトシクロヘキサン等の脂環式ポリイソシアネートなどが挙げられる。また、前記脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートを3量化した3量化物も前記脂肪族ポリイソシアネートとして用いることができる。また、これらの脂肪族ポリイソシアネートは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0028】
前記脂肪族ポリイソシアネートの中でも、本発明の活性エネルギー線硬化性顔料組成物の硬化皮膜の耐擦傷性を向上させるには、脂肪族ポリイソシアネートの中でも、直鎖脂肪族炭化水素のジイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートであるノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0029】
前記(メタ)アクリレート(c2−2)は、水酸基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。この(メタ)アクリレート(c2−2)の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのモノ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の3価のアルコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、あるいは、これらのアルコール性水酸基の一部をε−カプロラクトンで変性した水酸基を有するモノ及びジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の1官能の水酸基と3官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、あるいは、該化合物をさらにε−カプロラクトンで変性した水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート;ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレン−ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等のブロック構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート;ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等のランダム構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート(c2−2)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0030】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(C2)の中でも、本発明の活性エネルギー線硬化性顔料組成物の硬化皮膜の耐擦傷性を向上できるため、1分子中に4つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。前記ウレタン(メタ)アクリレート(C2)を1分子中に4つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するものとするため、前記(メタ)アクリレート(c2−2)としては、(メタ)アクリロイル基は2つ以上有するものが好ましい。このような(メタ)アクリレート(c2−2)としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレート(c2−2)は、前記脂肪族ポリイソシアネートの1種に対して、1種を用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの(メタ)アクリレート(c2−2)の中でも、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートは、耐擦傷性を向上できるため好ましい。
【0031】
前記ポリイソシアネート(c2−1)と前記(メタ)アクリレート(c2−2)との反応は、常法のウレタン化反応により行うことができる。また、ウレタン化反応の進行を促進するために、ウレタン化触媒の存在下でウレタン化反応を行うことが好ましい。前記ウレタン化触媒としては、例えば、ピリジン、ピロール、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン等のアミン化合物;トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィン等のリン化合物;ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫等の有機錫化合物、オクチル酸亜鉛等の有機亜鉛化合物などが挙げられる。
【0032】
また、必要に応じて、上記の多官能(メタ)アクリレート(C1)、ウレタン(メタ)アクリレート(C2)以外の活性エネルギー線硬化性化合物(C)として、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の比較的高分子量の(メタ)アクリレート(C3)を用いることができる。前記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリグリシジルメタクリレート等に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得られるものが挙げられる。また、前記ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールを重縮合して得られた両末端が水酸基であるポリエステルに、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得られたもの、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加したものに(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得られたものが挙げられる。さらに、前記ポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエーテルポリオールに(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得られたものが挙げられる。また、前記(メタ)アクリレート(C3)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0033】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性顔料組成物は、印刷インキとして用いることができる。この印刷インキを基材に印刷後、活性エネルギー線を照射することで硬化皮膜とすることができる。この活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線をいう。これらの活性エネルギー線の発生源又は装置としては、例えば、殺菌灯、紫外線蛍光灯、紫外線発光ダイオード(UV−LED)、カーボンアーク灯、キセノンランプ、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、太陽光等を光源とする紫外線;走査型、カーテン型電子線加速器等による電子線などが挙げられる。
【0034】
前記活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合には、本発明の活性エネルギー線硬化性顔料組成物(印刷インキ)に硬化性を付与するため、光重合開始剤(D)を配合することが好ましい。
【0035】
前記光重合開始剤(D)としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル(ジベンゾイル)、メチルフェニルグリオキシエステル、オキシフェニル酢酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステル、オキシフェニル酢酸2−(2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ)エチルエステル等のベンジル系化合物;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;ミヒラ−ケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルサルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルサルフォニル)プロパン−1−オン等が挙げられる。これらの光重合開始剤(D)は、1種で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0036】
前記光重合開始剤(D)の使用量は、実用的な硬化性が得られることから、前記フタロシアニンブルー顔料(A)、前記ショ糖酢酸エステル(B)及び前記活性エネルギー線硬化性化合物(C)の合計100質量部に対して、1〜20質量部の範囲が好ましく、3〜15質量%の範囲がより好ましい。
【0037】
本発明の活性エネルギー線硬化性顔料組成物(印刷インキ)の硬化性を更に向上させるために、前記光重合開始剤(D)の他に光増感剤(E)を配合してもよい。前記光増感剤(E)としては、例えば、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリブチルアミン等の3級アミン化合物;o−トリルチオ尿素等の尿素化合物;ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。
【0038】
前記光増感剤(E)を用いる場合のその使用量は、前記フタロシアニンブルー顔料(A)、前記ショ糖酢酸エステル(B)及び前記活性エネルギー線硬化性化合物(C)の合計100質量部に対して、1〜20質量部の範囲が好ましく、3〜15質量%の範囲がより好ましい。
【0039】
本発明の活性エネルギー線硬化性顔料組成物を印刷インキとして用いる場合には、印刷インキに要求される各種物性に合わせるため、各種添加剤を配合することができる。前記添加剤としては、ワックス、前記フタロシアニンブルー顔料(A)以外の顔料、体質顔料、バインダー樹脂等が挙げられる。これらの添加剤は、それぞれ1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0040】
前記ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、カルナバワックス、みつろう、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、アマイドワックス等のワックス;ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸等のC
8〜C
18程度の範囲にある脂肪酸などが挙げられる。
【0041】
前記フタロシアニンブルー顔料(A)以外の顔料としては、公知公用の着色用有機顔料が挙げられ、例えば、「有機顔料ハンドブック(著者:橋本勲、発行所:カラーオフィス、2006年初版)」に掲載された印刷インキ用有機顔料が挙げられる。具体的には、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、金属フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン顔料、金属錯体顔料、ジケトピロロピロール顔料、カーボンブラック顔料、その他多環式顔料等が挙げられる。
【0042】
前記体質顔料としては、例えば、酸化チタン、クラファイト、亜鉛華等の無機着色顔料;炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ粉、珪藻土、タルク、カオリン、アルミナホワイト、硫酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、バライト粉、砥の粉等の無機体質顔料;シリコーン、ガラスビーズなどが挙げられる。
【0043】
前記バインダー樹脂としては、例えば、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、石油樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、セルロース誘導体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブタジエン−アクリルニトリル共重合体等が挙げられる。
【0044】
また、本発明の顔料組成物(印刷インキ)には、必要に応じて、上記の添加剤の他、染料、有機溶剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、顔料分散剤等の添加剤を配合してもよい。
【0045】
本発明の印刷インキを印刷する際に用いる印刷基材としては、例えば、上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙;各種合成紙;ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリカーボネート等のフィルム又はシート;セロファン、アルミニウムホイルなどが挙げられる。
【0046】
本発明の印刷インキは、フタロシアニンブルー顔料(A)及び前記ショ糖酢酸エステル(B)を含有する顔料組成物をまず製造し、それに前記活性エネルギー線硬化性化合物(C)、前記光重合開始剤(D)、前記光増感剤(E)、及びその他添加剤を配合して、ミキサー等で撹拌混合することで製造できる。
【実施例】
【0047】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明する。
【0048】
(実施例1:顔料組成物(1)の製造)
容器にフタロシアニンブルー顔料(DIC株式会社製「FASTOGEN BLUE FA−5380」)94.1質量部、水添ロジン(丸善油化商事株式会社「水添ロジンHR」)1.8質量部及び純水1900質量部を仕込み、分散攪拌機で攪拌して顔料スラリーを得た。次に、この顔料スラリーにショ糖酢酸エステル粉体(第一工業製薬株式会社製「モノペットSOA」)4.1質量部を加え、再び分散攪拌機で均一に混合した後、90℃に温調した加熱ビーズミル(ビューラー社「K8ミル」)に顔料スラリーを通した。この際、顔料表面にショ糖酢酸エステルを均一に吸着したものと推定される。ビーズミルを通した顔料スラリーを室温まで冷却し、ガラスビーカー内で水と顔料が明確に分離することが観察された。次に、吸引濾過にて水と顔料を分離した後、分離した顔料を50℃熱風乾燥機内に一晩静置、乾燥させることで、顔料組成物(1)を得た。
【0049】
(実施例2:顔料組成物(2)の製造)
表1に示した組成に変更した以外は実施例1と同様に行い、顔料組成物(2)を得た。
【0050】
(比較例1:顔料組成物(R1)の製造)
容器にフタロシアニンブルー顔料(DIC株式会社製「FASTOGEN BLUE FA−5380」)98.2質量部及び純水1900質量部を仕込み、分散攪拌機で攪拌して顔料スラリーを得た。次に、90℃に温調した加熱ビーズミル(ビューラー社「K8ミル」)に顔料スラリーを通した。ビーズミルを通した顔料スラリーを室温まで冷却したが、顔料と水の分離は確認できなかった。次に、吸引濾過にて水と顔料を分離した後、分離した顔料を50℃熱風乾燥機内に一晩静置、乾燥させることで、顔料組成物(R1)を得た。
【0051】
(比較例2〜9:顔料組成物(R2)〜(R9)の製造)
表1に示した組成に変更した以外は実施例1と同様に行い、顔料組成物(R2)〜(R9)を得た。
【0052】
上記の実施例1、2及び比較例1〜9で得られた顔料組成物(1)、(2)及び(R1)〜(R9)について、下記の評価を行った。
【0053】
[分離性の評価]
上記の顔料組成物の製造工程で得られた顔料スラリーを室温まで冷却した際の顔料と水の分離の状態を目視で確認し、下記の基準にしたがって分離性(フラッシュ性)を評価した。
○:明確に顔料と水が分離し、水層は着色無く透明である。
×:明確に顔料と水が分離せず、液全体が着色又は水層が着色している。
【0054】
[易分散性の評価]
ガラスビーカーに顔料組成物20gとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)80gを仕込み、分散攪拌機にて3,000回転で10分間撹拌し、DPHAを含有する顔料組成物を得た。得られた顔料組成物をスライドガラス上に20μL採取し、カバーガラスで封入後、光学顕微鏡(株式会社キーエンス製「VHX−900」、倍率100倍)で粒子サイズを確認した。確認した粒子サイズから下記の基準にしたがって易分散性を評価した。
○:10μm以上の大きさの粒子は確認できなかった。
×:10μm以上の大きさの粒子が確認された。
【0055】
実施例及び比較例で得られた各顔料組成物の組成及び評価結果を表1及び2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
表1及び2に示した評価結果から、下記のことが確認できた。
【0059】
本発明の顔料組成物である実施例1〜3のものは、水との分離性に優れ、易分散性に優れることが確認できた。
【0060】
一方、本発明の顔料組成物で必須成分となっているショ糖酢酸エステルを用いなかった比較例1のものは、水との分離性に劣り、易分散性にも劣ることが確認できた。
【0061】
比較例2〜9の顔料組成物は、ショ糖酢酸エステル以外のショ糖脂肪酸エステルを用いた例である。ショ糖脂肪酸エステルにショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ショ糖安息香酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル及びショ糖エルカ酸エステルを用いた顔料組成物(比較例2〜4、8及び9)は、水との分離性は良好であった。しかしながら、これらのものを含め、比較例のすべて顔料組成物は、易分散性に劣ることが確認できた。