特開2017-226935(P2017-226935A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-226935(P2017-226935A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】捺染剤及び布帛物
(51)【国際特許分類】
   D06P 1/44 20060101AFI20171201BHJP
   D06P 5/00 20060101ALI20171201BHJP
   C09B 67/46 20060101ALN20171201BHJP
【FI】
   D06P1/44 H
   D06P5/00 111
   C09B67/46 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-124578(P2016-124578)
(22)【出願日】2016年6月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】橋本 賢志
(72)【発明者】
【氏名】梶川 正浩
【テーマコード(参考)】
4H057
4H157
【Fターム(参考)】
4H057AA01
4H057BA15
4H057CA03
4H057CB08
4H057GA04
4H157AA01
4H157BA15
4H157CA03
4H157CB08
4H157GA04
(57)【要約】
【課題】 有色顔料を使用したときの発色性がよく、且つ印刷された布帛は風合いに優れ、高温洗濯であっても良好な耐水堅牢性を示す捺染剤を提供する。
【解決手段】 顔料と、水と、有機溶剤と、バインダー樹脂とを含有し、前記バインダー樹脂が、重量平均分子量が50000〜200000のポリカーボネート系ウレタン樹脂である捺染剤、及び該捺染剤を布帛に印捺した布帛物。捺染剤に含まれるポリカーボネート系ウレタン樹脂は脂肪族ポリイソシアネートまたは脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート由来の構成単位を有するポリカーボネート系ウレタン樹脂であることが好ましい。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、水と、有機溶剤と、バインダー樹脂とを含有し、前記バインダー樹脂が、重量平均分子量が50000〜200000のポリカーボネート系ウレタン樹脂であることを特徴とする捺染剤。
【請求項2】
前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂が、脂肪族ポリイソシアネートまたは脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート由来の構成単位を有するポリカーボネート系ウレタン樹脂である請求項1に記載の捺染剤。
【請求項3】
前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂の酸価が15〜50mgKOH/gの範囲である請求項1または2に記載の捺染剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の捺染剤を布帛に印捺した布帛物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捺染剤及びそれを使用した布帛物に関する。
【背景技術】
【0002】
織布や不織布、編布などの布帛に、文字、絵、図柄などの画像を印捺する捺染方法として、水性の顔料捺染剤を使用した顔料捺染法が知られている。顔料捺染法は、着色顔料及びバインダー樹脂を含む顔料捺染剤を印刷した後、必要に応じ乾燥硬化工程を経て基材に固着させる方法である。この印刷方法としては、スクリーン紗の図柄を布帛に連続的に印刷するシルクスクリーン法(例えば特許文献1参照)や、ノズルよりインクを噴射し布帛に付着せしめるインクジェット記録法等(例えば特許文献2参照)が知られている。
【0003】
顔料捺染法は染料を使用した捺染法に比べ、繊維種による着色剤の選定を必要とせず、加工方法も単純であり、また蒸し工程や水洗・ソーピング工程も必要としないため、エネルギーコストがかからない。しかも廃液が発生しないため、環境面において安全な加工方法である。
しかしながら顔料捺染法は染料を使用した捺染法とは異なり、色材である顔料は布帛にバインダー樹脂で物理的に固着されている状態のため、洗濯や外的摩擦等により印捺箇所が布帛から剥離する等(洗濯堅牢度)の問題があった。特に皮脂や油汚れがひどい工業用ユニフォームや、消毒・洗浄を繰返す浴衣等においては、40度や60度等の温水で洗濯される場合があるため、通常の家庭洗濯よりも高い洗濯堅牢性が要求される。また染料捺染のような風合いや、鮮やかな発色が得られ難いといった問題もある。
このように顔料捺染剤は配合するバインダー樹脂の影響を多大にうけるため、顔料捺染剤に適したバインダー樹脂の開発が行われている。
【0004】
顔料捺染剤に適したバインダー樹脂としてウレタン樹脂が検討されており、例えば特許文献3,4では、ポリエーテルポリオールを使用したポリウレタン樹脂をバインダー樹脂とするインクジェット記録用捺染インクが、耐擦性、ドライクリーニング性、及び吐出安定性に優れることが記載されている。
また、特許文献5には、ポリカーボネートジオールを使用したポリウレタン樹脂の水性分散体からなる顔料捺染用バインダーが、耐熱ブロッキング性が低く風合い、耐ドライクリーニング性に優れることが記載されている。
また特許文献6には、皮膜伸度や抗張力、ゼータ電位が特定の範囲にあるウレタン樹脂を使用した白顔料のインクジェット記録用捺染インクが、白インクの発色性や洗濯堅牢度に優れることが記載されている。
【0005】
特許文献3〜6には、耐擦性や洗濯堅牢性、耐ドライクリーニング性についての知見が書かれている。しかしながら顔料捺染剤の保存安定性や、有色顔料を使用したときの発色性、且つこれらの物性と洗濯堅牢性や風合いとを両立させる顔料捺染剤を検討した例については開示されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−332523号公報
【特許文献2】特開2009−215506号公報
【特許文献3】特開2011−246632号公報
【特許文献4】特開2011−246634号公報
【特許文献5】特開2007−270362号公報
【特許文献6】特開2009−30014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、有色顔料を使用したときの発色性がよく、且つ印刷された布帛は風合いに優れ、高温洗濯であっても良好な耐水堅牢性を示す捺染剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定の物性を有するポリカーボネート系ウレタン樹脂をバインダー樹脂として使用することで、シルクスクリーン法であってもインクジェット記録法であっても問題なく使用でき、高温洗濯でも良好な耐洗濯性を示し、印字物の発色性、風合いに優れる捺染剤が得られることを見出した。
【0009】
即ち本発明は、顔料と、水と、有機溶剤と、バインダー樹脂とを含有し、前記バインダー樹脂が、重量平均分子量が50000〜200000のポリカーボネート系ウレタン樹脂であることを特徴とする捺染剤を提供する。
【0010】
また本発明は、前記記載の捺染剤を布帛に印捺した布帛物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の捺染剤は、重量平均分子量が50000〜200000のポリカーボネート系ウレタン樹脂をバインダー樹脂として使用することで、捺染剤を布帛に印捺した布帛物は発色性がよく、且つ優れた耐洗濯性、風合いを示す。また本発明の捺染剤は、シルクスクリーン法であってもインクジェット記録法であっても問題なく使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(顔料)
本発明で使用する顔料は特に限定はなく、顔料捺染剤に通常使用される顔料であれば特に限定なく使用できる。具体的には、水や水溶性有機溶剤に分散可能な公知の無機顔料や有機顔料が使用できる。無機顔料としては例えば、酸化チタン、酸化鉄、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラック等がある。また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。
【0013】
顔料の具体例としては、カーボンブラックとして、三菱化学社製のNo.2300、No.2200B、No.900、No.980、No.33、No.40、No,45、No.45L、No.52、HCF88、MCF88、MA7、MA8、MA100、等が、コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、Raven700等が、キャボット社製のRegal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、Mogul 700、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400等が、デグサ社製のColor Black FW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、Printex 35、同U、同V、同1400U、Special Black 6、同5、同4、同4A、NIPEX150、NIPEX160、NIPEX170、NIPEX180等が挙げられる。
イエローインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、174、180、185等が挙げられる。
マゼンタインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、146、168、176、184、185、202、209、及びこれらの顔料から選ばれる少なくとも2種以上の顔料の混合物もしくは固溶体が挙げられる。
シアンインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:3、15:4、15:6、16、22、60、63、66等が挙げられる。
レッドインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド17、49:2、112、149、150、177、178、179、188、254、255及び264からなる群から選ばれる1種又は2種以上が好適に用いられる。
オレンジインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63、64、71、73、81等が挙げられる。
グリーンインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントグリーン7、10、36、58、59等が挙げられる。
バイオレットインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントバイオレット19、23、32、33、36、38、43、50等が挙げられる。
【0014】
本発明においては、顔料表面に水分散性付与基を有し、分散剤が無くとも安定に分散状態が維持できる、いわゆる自己分散型顔料(表面処理顔料)でも良いし、顔料表面の全体をポリマーで被覆し、これにより分散剤が無くとも安定に分散状態が維持できる、いわゆるカプセル顔料(水分散性ポリマー包含顔料)でも良いし、分散剤により分散された顔料を使用してもよい。
【0015】
本発明で使用する顔料は、ドライパウダー及びウェットケーキのいずれも用いることができる。また、これらの顔料は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明で使用する顔料は、その粒子径が25μm以下のものからなる顔料が好ましく、1μm以下のものからなる顔料が特に好ましい。粒子径がこの範囲にあれば、顔料の沈降が発生しにくく、顔料分散性が良好となる。
粒子径の測定は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して測定した値を採用することができる。
【0017】
(水)
本発明で使用する水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、紫外線照射、または過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いることにより、インク組成物を長期保存する場合にカビまたはバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
【0018】
前記水は、捺染剤で顔料やバインダー樹脂の媒体として機能する。水性捺染剤の場合は、媒体は大部分が水であり、一部水溶性溶媒を添加している場合が多い。たとえば水:水溶性溶媒の割合は4:1〜1:1の範囲で使用することが一般的である。
【0019】
(有機溶剤)
本発明で使用する有機溶剤は、従来より捺染用のスクリーン記録用インクや水性インクジェット記録用インクに用いられているものをいずれも使用できる。有機溶剤としては、保湿剤として機能するもの及び浸透溶剤として機能するものに大別される。
【0020】
前記保湿剤の具体例としては、例えば、グリセリン、グリセリンのエチレングリコール付加物(具体例:リポニックEG−1(リポケミカル社製)等)、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(具体例:和光純薬社製「#200」、「#300」、「#400」、「#4000」、「#6000」)、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリノン、チオジグリコール、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ネオペンチルアルコール、トリメチロールプロパン、2,2−ジメチルプロパノール等が挙げられる。これら有機溶剤は単独または2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0021】
前記浸透溶剤の具体例としては、1価又は多価のアルコール類、アミド類、ケトン類、ケトアルコール類、環状エーテル類、グリコール類、多価アルコールの低級アルキルエーテル類、ポリアルキレングリコール類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類,エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類および多価アルコールアラルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクタム類、1,3−ジメチルイミダゾリジノンアセトン、酢酸エチル、N−メチルー2−ピロリドン、m−ブチロラクトン、グリセリンのポリオキシアルキレン付加物、酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジオキソラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルスルホキシド、ジアセトンアルコール、ジメチルホルムアミドプロピレングリコールモノメチルエーテルなどである。これら有機溶剤は単独または2種以上組み合わせて用いることもできる。再溶解性の観点から、1,2−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルから少なくとも1種選択することが好ましく、3−メチル−1,5−ペンタンジオールを使用することが更に好ましい。
【0022】
捺染剤中の上記浸透剤の含有量は、捺染剤全量に対して、3〜15質量%が好ましい。3質量%未満であると、再溶解性が低下するおそれがあり、また15質量%を超えると、印捺部の耐水性が不十分となる可能性があり洗濯堅牢性に影響するおそれがある。
【0023】
(バインダー樹脂)
本発明においては、バインダー樹脂として、重量平均分子量が50000〜200000のポリカーボネート系ウレタン樹脂を使用する。なお本発明においてポリカーボネート系ウレタン樹脂とはカーボネート結合を有するウレタン樹脂を意味し、具体的には一般式(1)のポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を意味する。
【0024】
【化1】

(1)
【0025】
式(1)中、Rは任意の基を表し、nは繰り返し数を表す。
ポリカーボネート系ウレタン樹脂を使用することで、捺染剤に各種溶剤が配合された場合であっても保存安定性の低下は少なく、且つ有色顔料を使用したときの発色性に優れる。
【0026】
高温での洗濯堅牢性は、捺染物の評価においては、JIS L 0844の洗濯に対する染色堅ろう度試験方法で評価されることが一般的である。使用する洗剤の違いでA法やB法、C法が規定され、それぞれ試験条件によって細分されているが、洗濯時の温度の違いでA−1号(40±2℃)、A−2号(50±2℃)がある。洗濯時の温度条件が高いほど厳しい試験となるが、このような高い温度条件においても洗濯堅牢性に優れた捺染剤とするのに、重量平均分子量が50000〜200000ポリカーボネート系ウレタン樹脂をバインダー樹脂とすることが有効である。
【0027】
前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が50000〜200000であることが好ましいが、80000〜200000がより好ましい。
本発明において、重量平均分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した。
【0028】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のTHF溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0029】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0030】
(破断伸度)
破断伸度が300%以上のポリカーボネート系ウレタン樹脂を使用すると、特に風合いに優れる印捺部を得ることができる。
布帛のような伸縮しやすい基材や、耐屈曲性が要求される皮革のような基材に対して洗濯・摩擦堅牢度、風合いを確保するためには、印捺部の伸縮のしやすさ、すなわち破断伸度(皮膜伸度)が重要である。破断伸度が300%以上のポリカーボネート系ウレタン樹脂を用いることにより、印捺部が布帛の伸縮に追随して伸縮できるため、印捺部の破断、ひび割れを防ぎ、洗濯・摩擦堅牢度、風合いを確保することができる。一方、ポリカーボネート系ウレタン樹脂の伸度が2000%を超えると、印捺部の基材への密着性が減少し、洗濯・摩擦堅牢度が低下するため好ましくない。
ポリカーボネート系ウレタン樹脂の破断伸度は、なかでも300%〜1000%であることが好ましく、410%〜800%であることがなお好ましく、410%〜600%であることが最も好ましい。
【0031】
本発明において、破断伸度は次のように測定した。主収縮方向と直交する方向(フィルム幅方向)の長さ50mm×主収縮方向(フィルム長手方向)の長さ5mmの長方形状にサンプリングして試験片とし、万能引張試験機((株)島津製作所製 オートグラフ(登録商標))を利用して、試験片の両端(長尺方向の両端)を掴み、引張速度300mm/分の条件にて引張試験を行い、破断時の伸びを破断伸度とした。
【0032】
(ポリカーボネート系ウレタン樹脂)
本発明で使用するポリカーボネート系ウレタン樹脂は、重量平均分子量が50000〜200000のポリカーボネート系ウレタン樹脂であれば特に限定なく使用することができる。中でも、捺染剤の溶媒である水への分散性の容易さから、親水性基を有するポリカーボネート系ウレタン樹脂であることが好ましい。
【0033】
具体的には、ポリカーボネートポリオール(a1−1)と、アニオン性基、カチオン性基、ポリオキシエチレン基またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基である親水性基を有するポリオール(a1−2)とを含有するポリオール(a1)由来の構成単位と、ポリイソシアネート(a2)由来の構成単位とを有するポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)が挙げられる。
【0034】
(ポリオール(a1))
前記ポリオール(a1)は、ポリウレタンの原料として通常使用されるポリオールを適宜選択して使用され、ポリカーボネートポリオール(a1−1)と、アニオン性基、カチオン性基、ポリオキシエチレン基またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基である親水性基を有するポリオール(a1−2)とを使用することが好ましい。
【0035】
(ポリカーボネートポリオール(a1−1))
前記ポリカーボネートポリオール(a1−1)としては、例えば炭酸エステル由来の構成単位とポリオール由来の構成単位とを有するポリカーボネートポリオール(a1−1)が好ましい。これは例えば炭酸エステルと、ポリオール好ましくは脂肪族ジオールとを原料とし反応させて得ることができる。
【0036】
前記炭酸エステルとしては、メチルカーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネ−ト等を使用することできる。
【0037】
前記低分子量のポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族ジオールや、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F、4,4’−ビフェノール等の芳香族ジオールや、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールや、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール等を使用することができる。
中でも、比較的低分子量の脂肪族鎖式ジオールが好ましく使用される。好ましい脂肪族鎖式ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が上げられる。その数平均分子量は50〜250が好ましい。
【0038】
前記ポリカーボネートポリオール(a1−1)は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)の製造に使用するポリオール(a1)の合計質量に対して、80〜99質量%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは85〜99質量%である。
【0039】
また、前記ポリカーボネートポリオール(a1−1)は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)の製造に使用するポリオール(a1)及びポリイソシアネート(a2)の合計質量に対して、10〜90質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0040】
(アニオン性基、カチオン性基、ポリオキシエチレン基またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基である親水性基を有するポリオール(a1−2))
本発明で使用するポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)は、捺染剤中における分散安定性を付与する上で、アニオン性基やカチオン性基、ノニオン性基を有することが好ましく、中でもアニオン性基やカチオン性基を有することが好ましい。(以下アニオン性基、カチオン性基、ポリオキシエチレン基またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基である親水性基を有するポリオール(a1−2)を単に「ポリオール(a1−2)」と称する場合がある。)
【0041】
前記アニオン性基としては、例えばカルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基等が挙げられる。なかでも、一部または全部が塩基性化合物等によって中和されたカルボキシレート基やスルホネート基が、良好な水分散性を維持するうえで好ましい。
また前記アニオン性基としてのカルボキシル基やスルホン酸基の一部又は全てを中和する際に使用することができる塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミンや、モノエタノールアミン等のアルカノールアミンや、Na、K、Li、Ca等を含む金属塩基化合物等を使用することができる。中でも、乾燥皮膜への残留を少なくする意味から、沸点100℃以下の有機アミンを選択することが好ましい。
【0042】
また、前記カチオン性基としては、例えば3級アミノ基等が挙げられる。また前記3級アミノ基の一部又は全てを中和する際に使用することができる酸としては、例えば、蟻酸、酢酸等を使用することができる。また前記3級アミノ基の一部又は全てを4級化する際に使用することができる4級化剤としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のジアルキル硫酸類を使用することができる。
【0043】
また、前記ノニオン性基としては、例えばポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)基、及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基が挙げられる。なかでもオキシエチレン単位を有するポリオキシアルキレン基が、親水性をより一層向上させるうえで好ましい。
【0044】
ポリオール(a1−2)としては、例えば前記したポリカーボネートポリオール(a1−1)を除くアニオン性基含有ポリオール、カチオン性基含有ポリオール、及びノニオン性基含有ポリオールを使用することができる。なかでも、アニオン性基含有ポリオールまたはカチオン性基含有ポリオールを使用することが好ましく、アニオン性基含有ポリオールを使用することがより好ましい。
【0045】
前記アニオン性基含有ポリオールとしては、例えばカルボキシル基含有ポリオールや、スルホン酸基含有ポリオールが挙げられる。
前記カルボキシル基含有ポリオールとしては、例えば2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸や、それらとジカルボン酸とを反応して得られるカルボキシル基含有ポリエステルポリオール等が挙げられる。なかでも2,2’−ジメチロールプロピオン酸が好ましい。
【0046】
また、前記カチオン性基含有ポリオールとしては、例えば3級アミノ基含有ポリオールが挙げられ、具体的にはN−メチル−ジエタノールアミンや、1分子中にエポキシを2個有する化合物と2級アミンとの反応物であるポリオールなどが挙げられる。
【0047】
また、前記ノニオン性基含有ポリオールとしては、エチレンオキサイド由来の構造単位を有するポリアルキレングリコール等が挙げられる。
【0048】
ポリオール(a1−2)は、前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)の製造に使用するポリオール(a1)の全量に対して、0.3質量%〜15.0質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0049】
前記親水性基は、前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)全体に対して100mmol/kg〜1200mmol/kg存在することがより一層良好な水分散性を付与し、150mmol/kg〜1000mmol/kgの範囲であることがより好ましい。
【0050】
また、前記親水性基がアニオン性基である場合、その酸価は15〜50mgKOH/gの範囲であることが好ましく、20〜45mgKOH/gの範囲であることがなお好ましい。なお本発明で言う酸価は、前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)の製造に使用したカルボキシル基含有ポリオール等の酸基含有化合物の使用量に基づいて算出した理論値である。
【0051】
前記ポリオール(a1)は、前記ポリカーボネートポリオール(a1−1)と、前記ポリオール(a1−2)の他、本発明の効果を損なわない範囲において他のポリオールを併用することができる。
前記他のポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートポリオール(a1−1)の原料として使用するポリオールを使用することができる。
【0052】
(ポリイソシアネート(a2))
前記ポリオール(a1)と反応しうるポリイソシアネート(a2)としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族環式構造含有ポリイソシアネートを使用することができる。
【0053】
前記ポリイソシアネート(a2)において、印捺部の黄変を抑制する点では、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族環式構造含有ポリイソシアネートを使用することが好ましい。
【0054】
前記ポリイソシアネート(a2)は、前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)が300%以上の破断伸度を有するために、ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)製造に使用するポリオール(a1)及びポリイソシアネート(a2)の合計質量に対して、12〜30質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0055】
(鎖伸張剤)
前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)は、前述の通りポリカーボネートポリオール(a1−1)と、アニオン性基、カチオン性基、ポリオキシエチレン基またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基である親水性基を有するポリオール(a1−2)とを含有するポリオール(a1)由来の構成単位と、ポリイソシアネート(a2)由来の構成単位とを有するが、場合によっては鎖伸張剤由来の構造単位を有していてもよい。
【0056】
前記鎖伸長剤としては、ポリアミンや、その他活性水素原子含有化合物等を使用することができる。
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類、N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン、コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3−セミカルバジッド−プロピル−カルバジン酸エステル、セミカルバジッド−3−セミカルバジドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンを使用することができる。
【0057】
前記鎖伸長剤は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)製造に使用するポリオール(a1)、ポリイソシアネート(a2)及び鎖伸張剤の合計質量に対して、3質量部以下となることが好ましく、2.5質量%以下となる範囲で使用することがより好ましく、更に好ましくは0.5質量%以下の範囲で使用することが好ましい。
【0058】
また本発明の捺染剤が、洗濯堅牢性、摩擦堅牢性をより一層向上することを目的として、後述する架橋剤(F)を使用する場合がある。前記架橋剤(F)を使用する場合、前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)としては、前記架橋剤(F)の有する官能基と架橋反応しうる官能基[X]を有するものを使用することが好ましい。
前記官能基[X]としては、前記親水性基として使用可能なカルボキシル基やカルボキシレート基等が挙げられる。前記カルボキシル基等は、水媒体中においてポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)の水分散安定性に寄与し、それらが架橋反応する際には、前記官能基[X]としても作用し、前記架橋剤(F)の一部架橋反応しうる。
前記官能基[X]としてカルボキシル基等を使用する場合、前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)としては、2〜55の酸価を有するものであることが好ましく、15〜50の酸価を有するものを使用することが、洗濯堅牢性、摩擦堅牢性を向上するうえで好ましい。なお、本発明で言う酸価は、前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)の製造に使用したカルボキシル基含有ポリオール等の酸基含有化合物の使用量に基づいて算出した理論値である。
【0059】
その他、前記ポリイソシアネート(a2)と反応しうる、活性水素含有化合物を本発明の効果を損なわない範囲で反応させてもよい。
【0060】
前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)は、例えば無溶剤下または有機溶剤の存在下で、前記ポリオール(a1)と前記ポリイソシアネート(a2)とを反応させることでポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)を製造し、次いで、前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)中に親水性基がある場合には、該親水性基の一部または全部を必要に応じて中和したものを、水性媒体中に混合し水性化することによって製造することができる。なお、必要に応じて前記鎖伸長剤を使用する場合には、前記水性化の際に、水性媒体とともに混合することによって、鎖伸長されたポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)を製造することができる。
【0061】
前記ポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)との反応は、例えば、前記ポリオール(a1)が有する水酸基に対する、前記ポリイソシアネート(a2)が有するイソシアネート基の当量割合が、0.8〜2.5の範囲で行うことが好ましく、0.9〜1.5の範囲で行うことがより好ましい。
【0062】
また、前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)を製造する際に使用可能な有機溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を、単独で使用または2種以上を使用することができる。
【0063】
また、前記方法で製造したポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)の水性化は、例えば、前記ポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)とを反応させて得られた水性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)の親水性基の一部又は全てを中和又は4級化した後、水を投入して水分散させる方法によって行うことができる。その際、必要に応じて乳化剤を使用してもよい。また、水溶解や水分散の際には、必要に応じてホモジナイザー等の機械を使用してもよい。
【0064】
前記乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン系乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン系乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン系乳化剤が挙げられる。
【0065】
前記水性媒体としては、例えば、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム類、等が挙げられる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
【0066】
このようにして得られたポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)は、水性媒体中にポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)が分散された状態となっている。捺染剤として調整する際には、このように、ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)が水性媒体中に分散された水分散体となっていると、配合させやすく好ましい。このとき、前記水性媒体は、前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)の組成物の全量に対して、20質量%〜90質量%の範囲で含まれることが、水分散安定性に優れた樹脂組成物を得るうえで好ましい。
【0067】
前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)の水分散体の粒径は3nm〜1000nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは5nm〜400nmである。なお、粒径は、固形分5%に希釈したポリカーボネート系ウレタン樹脂(A)の水分散体の「平均粒径D50」を意味し、粒度分布計(日機装(株)社製「マイクロトラックUPA150」)にて3回測定した粒度分布におけるD50(50%の粒子がこの粒子径以下の大きさであることを示す)の平均値を、平均粒径D50としている。
【0068】
前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂と顔料との比率は、通常スクリーン記録用インクやインクジェット記録用インクに使用する範囲の比率でよく、例えばウレタン樹脂と顔料との比率=1:3〜8:1の範囲が好ましい。
洗濯堅牢性、摩擦堅牢性は前述の通り、使用するウレタン樹脂の分子量が寄与し、ウレタン樹脂の分子量が高いほど、洗濯堅牢性、摩擦堅牢性は良好となる。但しインクジェット記録用インクに適用する場合は、インク中に高分子量のウレタン樹脂を過剰に使用すると、インクの高粘度化や樹脂が皮膜化しやすいことに起因して、連続吐出性の低下、ノズル閉塞を引き起こす恐れがあるため、インクの物性値とインクジェットヘッドでの吐出性を考慮して使用量を決定することが好ましい。
【0069】
(バインダー樹脂の添加量)
本発明において使用するウレタン樹脂は、顔料を繊維上に固着するためのバインダー樹脂であるが、捺染剤中のバインダー樹脂量が多いと洗濯堅牢性、摩擦堅牢性は向上する一方、繊維の風合いが硬くなる。従って捺染剤中のバインダー樹脂と顔料の比率は、1:3〜8:1の範囲で使用することが一般的であり、1:1〜8:1が好ましく、1:1〜5:1が最も好ましい。
【0070】
(捺染剤の製造方法)
本発明の捺染剤は、前記顔料の高濃度水分散液(顔料ペースト)を作成し、それを水で希釈し、前記バインダー樹脂、必要に応じてその他の添加剤を添加して調製することができる。
【0071】
前記顔料を前記水に分散させて顔料ペーストを得る方法は特に限定はなく、前述の自己分散型顔料(表面処理顔料)やカプセル顔料(水分散性ポリマー包含顔料)を使用する場合は適宜所望の濃度となるように水と混合すればよく、また汎用の顔料の場合は分散剤により分散させる方法が挙げられる。このとき使用する分散剤は特に限定はなく公知のポリマー型の分散剤や界面活性剤、顔料誘導体を使用することができる。
前記顔料分散剤としては中でもポリマー型の顔料分散剤がよく、好ましい例としては、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアニオン性基を有するアクリル樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアニオン性基を有するスチレン−アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アニオン性基を有するウレタン樹脂等が挙げられる。これらは塩を形成していてもよい。
中でも、カルボキシル基等のアニオン性基を有するポリマー型の顔料分散剤が分散安定性に優れ好ましく、アニオン性基及びスチレン等の芳香族基を有するポリマー型の顔料分散剤が好ましい。このようなアニオン性基及び芳香族基を有するポリマー型の顔料分散剤として具体的には、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、等が挙げられる。
【0072】
前記共重合体の塩を形成するための化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの水酸化アルカリ金属類、およびジエチルアミン、アンモニア、エチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリンなどが挙げられる。これらの塩を形成するための化合物の使用量は、前記共重合体の中和当量以上であることが好ましい。
また市販品を使用することも勿論可能である。市販品としては、味の素ファインテクノ(株)製品)のアジスパーPBシリーズ、ビックケミー・ジャパン(株)のDisperbykシリーズ、BYK−シリーズ、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製のEFKAシリーズ等を使用できる。
【0073】
また、分散方法としては、例えば以下(1)〜(3)を示すことができる。
(1)顔料分散剤及び水を含有する水性媒体に、顔料を添加した後、攪拌・分散装置を用いて顔料を該水性媒体中に分散させることにより、顔料ペーストを調製する方法。
(2)顔料、及び顔料分散剤を2本ロール、ミキサー等の混練機を用いて混練し、得られた混練物を、水を含む水性媒体中に添加し、攪拌・分散装置を用いて顔料ペーストを調製する方法。
(3)メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等のような水と相溶性を有する有機溶剤中に顔料分散剤を溶解して得られた溶液に顔料を添加した後、攪拌・分散装置を用いて顔料を有機溶液中に分散させ、次いで水性媒体を用いて転相乳化させた後、前記有機溶剤を留去し顔料ペーストを調製する方法。
【0074】
混練機としては、特に限定されることなく、例えば、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサーなどがあげられる。
また、攪拌・分散装置としても特に限定されることなく、例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザー等を挙げられる。
これらのうちの1つを単独で用いてもよく、2種類以上装置を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
前記顔料ペーストに占める顔料量は5〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。顔料量が5質量%より少ない場合は、前記顔料ペーストから調製した水性インクの着色が不充分であり、充分な画像濃度が得られない傾向にある。また、逆に60質量%よりも多い場合は、顔料ペーストにおいて顔料の分散安定性が低下する傾向がある。
【0076】
また、粗大粒子が、画像特性を劣化させる原因になるため、インク調製前後に、遠心分離、あるいは濾過処理等により粗大粒子を除去することが好ましい。
【0077】
分散工程の後に、イオン交換処理や限外処理による不純物除去工程を経て、その後に後処理を行っても良い。イオン交換処理によって、カチオン、アニオンといったイオン性物質(2価の金属イオン等)を除去することができ、限外処理によって、不純物溶解物質(顔料合成時の残留物質、分散液組成中の過剰成分、有機顔料に吸着していない樹脂、混入異物等)を除去することができる。イオン交換処理は、公知のイオン交換樹脂を用いる。限外処理は、公知の限外ろ過膜を用い、通常タイプ又は2倍能力アップタイプのいずれでもよい。
【0078】
前記顔料ペーストを作成した後、適宜希釈し必要に応じた添加剤を添加して、着色したい繊維に応じて浸染、捺染など好ましい処理方法に合わせた捺染剤を得る。
【0079】
例えばスクリーン記録用の捺染剤は、添加剤として、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、架橋剤等を使用し、最終的な顔料濃度は1〜10質量%の範囲が好ましい。このような場合、前記添加剤は、前記のバインダー樹脂と一緒に添加することが好ましい。
【0080】
また、例えば浸染用の捺染剤は、添加剤として、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、架橋剤等とバインダー樹脂を使用し、最終的な顔料濃度は1〜10質量%の範囲が好ましい。また粘度は1mPa・s〜100mPa・sの範囲で装置に合わせて任意に設定される。また、例えば、用途が、スプレー捺染用の捺染剤では添加剤として、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等とバインダー樹脂を使用し、最終的な顔料濃度は1〜10質量%の範囲が好ましい。また粘度は1mPa・s〜100mPa・sの範囲で装置に合わせて任意に設定される。
【0081】
また、例えばインクジェット記録用の捺染剤は、添加剤として、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、架橋剤等を使用し、最終的な顔料濃度は、充分な画像濃度を得る必要性と、インク中での顔料の分散安定性を確保するために、1〜20質量%であることが好ましい。このような場合、前記添加剤は、前記バインダー樹脂と一緒に添加することが好ましい。
【0082】
防腐剤または防かび剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン(アーチケミカルズ社のプロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルLV、プロキセルAQ、プロキセルBD20、プロキセルDL)等が挙げられる。
【0083】
粘度調整剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、スターチ等の主として水溶性の天然あるいは合成高分子物が挙げられる。
【0084】
pH調整剤の具体例としては、コリジン、イミダゾール、燐酸、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ほう酸等が挙げられる。
【0085】
キレート化剤の具体例としては、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、ニトリロ三酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、イミノ二酢酸、ウラミル二酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸及びこれらの塩(水和物を含む)等があげられる。
【0086】
酸化防止剤または紫外線吸収剤の具体例としては、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類等、L−アスコルビン酸およびその塩等、チバガイギー社製のTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024等、あるいはランタニドの酸化物等が挙げられる。
【0087】
前記希釈、添加剤の添加方法は、特に限定なく従来一般的に用いられる方法により行うことができる。例えば、前記顔料ペーストと、バインダー樹脂、添加剤として界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、酸化防止剤または紫外線吸収剤、防腐剤等、希釈率に応じた溶媒を混合した後、各種分散機や攪拌機、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、パールミル等を利用して分散・混合する方法が挙げられる。必要に応じてこの後に更に各種添加剤を添加してもよい。
【0088】
また、前記添加剤と、顔料や顔料分散剤、前記ウレタン樹脂とを安定に溶解または分散させて保持する目的で、水溶性有機溶媒をさらに添加してもよい。
【0089】
前期水溶性溶媒としては、例えば、1価又は多価のアルコール類、アミド類、ケトン類、ケトアルコール類、環状エーテル類、グリコール類、多価アルコールの低級アルキルエーテル類、ポリアルキレングリコール類、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類,エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類および多価アルコールアラルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクタム類、1,3−ジメチルイミダゾリジノンアセトン、酢酸エチル、N−メチルー2−ピロリドン、m−ブチロラクトン、グリセリンのポリオキシアルキレン付加物、酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジオキソラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルスルホキシド、ジアセトンアルコール、ジメチルホルムアミドプロピレングリコールモノメチルエーテルなどである。これらは、単独で用いても、又は2種以上を併用してもよい。
【0090】
さらに、同様な目的で、糖類を用いることもできる。その例としては、単糖類および多糖類が挙げられ、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の他にアルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類を用いることができる。
【0091】
また、本発明の捺染剤は、その浸透性を制御するため、界面活性剤が含まれていてもよい。その際使用する界面活性剤は、本発明の捺染剤に存在する他の成分と相溶性のよいものが好ましい。また、浸透性が高く安定な界面活性剤が好ましい。
【0092】
具体的には、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤の利用が好ましい。
両性界面活性剤の好ましい例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体などが挙げられる。
【0093】
非イオン界面活性剤の好ましい例としては、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系、ジメチルポリシロキサン等のシリコン系界面活性剤、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等の含フッ素系界面活性剤等が挙げられ、特に、アセチレングリコール系界面活性剤およびアセチレンアルコール系界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤はインク組成物に添加された場合、発泡性が少なく、また優れた消泡性機能を有するので好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤およびアセチレンアルコール系界面活性剤の具体例としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オールなどが挙げられるが、市販品で入手も可能で、例えば、エアープロダクツ社(英国)のサーフィノール61、82、104、440、465,485、TGや、日信化学工業株式会社のオルフィンSTG、オルフィンE1010等が挙げられる。
【0094】
界面活性剤の添加量は、好ましくは、前記捺染剤の全量に対して、0.01重量%以上10重量%以下であり、より好ましい上限値は5.0重量%であり、好ましい下限値は0.1重量%である。
【0095】
さらに、本発明の捺染剤をインクジェット記録法に適用する場合は、その表面張力を20mN/m以上60mN/m以下と調整することが好ましい。より好ましくは、20mN以上50mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上45mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となるとノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、60mN/mを超えると非吸収基材でのはじきが発生し易い傾向がある。 また粘度は、1.2mPa・s以上20.0 mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2.0 mPa・s以上 15.0mPa・s未満、更に好ましくは3.0mPa・s以上 12.0 mPa・s未満である。粘度がこの範囲において、優れた吐出性と、長期間にわたる良好な噴射性の維持が達成できる。表面張力は前記界面活性剤により適宜調整可能である。
【0096】
また、例えば、分散樹脂及びバインダー樹脂の架橋性官能基と反応性を有する基を2つ以上持つ架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂等のアミノ樹脂、トリメチロールフェノール、その縮合物等のフェノール樹脂、テトラメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、それらの変性イソシアネートやブロックドイソシアネート等のポリイソシアネート、脂肪族アミン、芳香族アミン、N−メチルピペラジン、トリエタノールアミン、モルホリン、ジアルキルアミノエタノール、ベンジルジメチルアミン等のアミン類、ポリカルボン酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート等の酸無水物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノール系エポキシ樹脂、グリシジルメタクリレート共重合体、カルボン酸のグリシジルエステル樹脂、脂環式エポキシ等のエポキシ化合物、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエングリコール、ポリカプロラクトンポリオール、トリスヒドロキシエチルイソシアネート等のアルコール類等が挙げられる。
【0097】
本発明の捺染剤への添加量としては、反応する分散樹脂及びバインダー樹脂の架橋性官能基の数に見合う量を配合する必要があり、20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5%質量以下である。配合量が多いと繊維の風合いが硬くなり、少なければ、堅牢性が悪くなる。
【0098】
(被着体)
本発明の捺染剤は、布帛、人工皮革、天然皮革等に対して印字することができる。特に布帛に対しての印捺に優れる。なお紙等の汎用の被着体にも印字可能である。
本発明で使用する布帛は、繊維で構成される媒体であることが好ましく、織物の他不織布でもよい。素材は綿、絹、羊毛、麻、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、レーヨン等の任意の天然・合成繊維からなる布帛や、これらが混紡された布帛を用いることができる。
【実施例】
【0099】
以下、本発明の効果を実施例及び比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の記載において部および%は質量部を示す。
【0100】
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した。
【0101】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のTHF溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0102】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0103】
<破断伸度の測定方法>
主収縮方向と直交する方向(フィルム幅方向)の長さ50mm×主収縮方向(フィルム長手方向)の長さ5mmの長方形状にサンプリングして試験片とし、万能引張試験機((株)島津製作所製 オートグラフ(登録商標))を利用して、試験片の両端(長尺方向の両端)を掴み、引張速度300mm/分の条件にて引張試験を行い、破断時の伸びを破断伸度とした。
【0104】
<酸価の測定方法>
酸価は、ウレタン樹脂の合成に使用したカルボキシル基含有ポリオール等の酸基含有化合物の使用量に基づいて算出した。
【0105】
<ウレタン樹脂の合成>
【0106】
(製造例1)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,6−ヘキサンジオールとメチルカーボネートとを反応して得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量2000)500質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸37.7質量部及びメチルエチルケトン420質量部を加え、均一に混合した。次いで、トリレンジイソシアネート 92.4質量部を加えた後、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、80℃で15時間反応させることによって、重量平均分子量が75000のポリウレタン「PCUD−1」(酸価25)の有機溶剤溶液を得た。
その後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン29.8質量部及び水2069質量部を加えた。減圧下、40℃〜60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、前記ウレタン樹脂が水性媒体中に分散された不揮発分23質量%(破断伸度300%)の樹脂組成物を得た。
【0107】
(製造例2)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,6−ヘキサンジオールとメチルカーボネートとを反応して得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量2000)500質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸36.5質量部及びメチルエチルケトン436質量部を加え、均一に混合した。次いで、トリレンジイソシアネート 118.2質量部を加えた後、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、80℃で3時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
上記で得られたウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液にトリエチルアミン41.3質量部を加え、前記ウレタンプレポリマー中のカルボキシル基を中和した後、水1504質量部を加えた。次いで、エチレンジアミン17.3質量部を加えて反応させた。反応終了後、減圧下、40℃〜60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、前記ウレタン樹脂が水性媒体中に分散された不揮発分23質量%(破断伸度400%)の重量平均分子量が150000のポリウレタン「PCUD−2」(酸価23)樹脂組成物を得た。
【0108】
(製造例3)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,6−ヘキサンジオールとメチルカーボネートとを反応して得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量2000)500質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸59.8質量部及びメチルエチルケトン475質量部を加え、均一に混合した。次いで、イソホロンジイソシアネート154.8質量部を加えた後、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、80℃で7時間反応させることによって、重量平均分子量が73000のポリウレタン「PCUD−3」(酸価35)の有機溶剤溶液を得た。
その後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン47.4質量部及び水2689質量部を加え、減圧下、40℃〜60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、前記ウレタン樹脂が水性媒体中に分散された不揮発分23質量%(破断伸度380%)の樹脂組成物を得た。
【0109】
(製造例4)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,6−ヘキサンジオールとメチルカーボネートとを反応して得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量2000)500質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸39.5質量部及びメチルエチルケトン440質量部を加え、均一に混合した。次いで、イソホロンジイソシアネート 121.0質量部を加えた後、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、80℃で7時間反応させることによって、重量平均分子量が80000のポリウレタン「PCUD−4」(酸価25)の有機溶剤溶液を得た。
その後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン31.3質量部及び水2169質量部を加え、減圧下、40℃〜60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、前記ウレタン樹脂が水性媒体中に分散された不揮発分23質量%(破断伸度500%)の樹脂組成物を得た。
【0110】
(製造例5)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,6−ヘキサンジオールとメチルカーボネートとを反応して得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量2000)500質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸49.2質量部及びメチルエチルケトン456質量部を加え、均一に混合した。次いで、イソホロンジイソシアネート137.3質量部を加えた後、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、80℃で7時間反応させることによって、重量平均分子量が12000のポリウレタン「PCUD−5」(酸価30)の有機溶剤溶液を得た。
その後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン39.0質量部及び水2588質量部を加え、減圧下、40℃〜60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、前記ウレタン樹脂が水性媒体中に分散された不揮発分23質量%(破断伸度350%)の樹脂組成物を得た。
【0111】
(製造例6)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,6−ヘキサンジオールとメチルカーボネートとを反応して得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量2000)500質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸39.5質量部及びメチルエチルケトン440質量部を加え、均一に混合した。次いで、イソホロンジイソシアネート 121.0質量部を加えた後、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、80℃で7時間反応させることによって、重量平均分子量が46000のポリウレタン「PCUD−S1」(酸価25)の有機溶剤溶液を得た。
その後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン31.3質量部及び水2169質量部を加え、減圧下、40℃〜60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、前記ウレタン樹脂が水性媒体中に分散された不揮発分23質量%(破断伸度480%)の樹脂組成物を得た。
【0112】
(製造例7)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,6−ヘキサンジオールとメチルカーボネートとを反応して得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量2000)500質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸37.4質量部及びメチルエチルケトン 420質量部を加え、均一に混合した。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート 89.0質量部を加えた後、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、80℃で6時間反応させることによって、重量平均分子量が34000のポリウレタン「PCUD−S2」(酸価20)の有機溶剤溶液を得た。
その後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン29.7質量部及び水2057質量部を加え、減圧下、40℃〜60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、前記ウレタン樹脂が水性媒体中に分散された不揮発分23質量%(破断伸度500%)の樹脂組成物を得た。
【0113】
(製造例8)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,6−ヘキサンジオールとメチルカーボネートとを反応して得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量2000)500質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸37.7質量部及びメチルエチルケトン420質量部を加え、均一に混合した。次いで、トリレンジイソシアネート 92.4質量部を加えた後、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、80℃で7時間反応させることによって、重量平均分子量が37000のポリウレタン「PCUD−S3」(酸価25)の有機溶剤溶液を得た。
その後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン29.8質量部及び水2069質量部を加え、減圧下、40℃〜60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、前記ウレタン樹脂が水性媒体中に分散された不揮発分23質量%(破断伸度320%)の樹脂組成物を得た。
【0114】
(製造例9)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,6−ヘキサンジオールとメチルカーボネートとを反応して得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量2000)500質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸21.2質量部及びメチルエチルケトン395質量部を加え、均一に混合した。次いで、トリレンジイソシアネート 71.1質量部を加えた後、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、80℃で7時間反応させることによって、重量平均分子量が34000のポリウレタン「PCUD−S4」(酸価15)の有機溶剤溶液を得た。
その後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン16.8質量部及び水1957質量部を加え、減圧下、40℃〜60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、前記ウレタン樹脂が水性媒体中に分散された不揮発分23質量%(破断伸度330%)の樹脂組成物を得た。
【0115】
(製造例10)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,6−ヘキサンジオールとメチルカーボネートとを反応して得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量2000)500質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸49.2質量部及びメチルエチルケトン456質量部を加え、均一に混合した。次いで、イソホロンジイソシアネート137.3質量部を加えた後、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、80℃で7時間反応させることによって、重量平均分子量が54000のポリウレタン「PCUD−S5」(酸価30)の有機溶剤溶液を得た。
その後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン39.0質量部及び水2588質量部を加え、減圧下、40℃〜60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、前記ウレタン樹脂が水性媒体中に分散された不揮発分23質量%(破断伸度530%)の樹脂組成物を得た。
【0116】
(製造例11)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,6−ヘキサンジオールとメチルカーボネートとを反応して得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量2000)500質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸59.8質量部及びメチルエチルケトン475質量部を加え、均一に混合した。次いで、イソホロンジイソシアネート154.8質量部を加えた後、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、80℃で7時間反応させることによって、重量平均分子量が51000のポリウレタン「PCUD−S6」(酸価35)の有機溶剤溶液を得た。
その後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン47.4質量部及び水2689質量部を加え、減圧下、40℃〜60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、前記ウレタン樹脂が水性媒体中に分散された不揮発分23質量%(破断伸度500%)の樹脂組成物を得た。
【0117】
(製造例12)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,6−ヘキサンジオールとメチルカーボネートとを反応して得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量2000)500質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸71.2質量部及びメチルエチルケトン496質量部を加え、均一に混合した。次いで、イソホロンジイソシアネート173.8質量部を加えた後、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、80℃で7時間反応させることによって、重量平均分子量が50000のポリウレタン「PCUD−S7」(酸価40)の有機溶剤溶液を得た。
その後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン56.4質量部及び水2795質量部を加え、減圧下、40℃〜60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、前記ウレタン樹脂が水性媒体中に分散された不揮発分23質量%(破断伸度460%)の樹脂組成物を得た。
【0118】
(製造例13)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,6−ヘキサンジオールとメチルカーボネートとを反応して得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量2000)500質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸36.5質量部及びメチルエチルケトン436質量部を加え、均一に混合した。次いで、トリレンジイソシアネート 118.2質量部を加えた後、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、80℃で3時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
上記で得られたウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液にトリエチルアミン41.3質量部を加え、前記ウレタンプレポリマー中のカルボキシル基を中和した後、水1502質量部を加えた。次いで、エチレンジアミン15.3質量部を加えて反応させた。反応終了後、減圧下、40℃〜60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、前記ウレタン樹脂が水性媒体中に分散された不揮発分23質量%(破断伸度330%)の重量平均分子量が40000のポリウレタン「PCUD−S8」(酸価23)樹脂組成物を得た。

【0119】
【表1】

【0120】
【表2】

【0121】
【表3】

【0122】
表1〜3中の略称について、以下に説明する。
PCUD−1:製造例1で得たウレタン樹脂
PCUD−2:製造例2で得たウレタン樹脂
PCUD−3:製造例3で得たウレタン樹脂
PCUD−4:製造例4で得たウレタン樹脂
PCUD−5:製造例5で得たウレタン樹脂
PCUD−S1:製造例6で得たウレタン樹脂
PCUD−S2:製造例7で得たウレタン樹脂
PCUD−S3:製造例8で得たウレタン樹脂
PCUD−S4:製造例9で得たウレタン樹脂
PCUD−S5:製造例10で得たウレタン樹脂
PCUD−S6:製造例11で得たウレタン樹脂
PCUD−S7:製造例12で得たウレタン樹脂
PCUD−S8:製造例13で得たウレタン樹脂
【0123】
<ポリマー型の分散剤の合成>
<ポリマー型の分散剤(A)>
スチレン−マレイン酸共重合体(株式会社岐阜セラック製造所製「DSS−25」)15部、水酸化カリウム1.6部(スチレン−マレイン酸ハーフエステル中の酸性基の総量に対して0.9当量に相当する量)及び水83.4部を、撹拌機を用いて、70℃で5時間混合撹拌することにより、ポリマー型の分散剤(A)を得た。
【0124】
<ポリマー型の分散剤(B)>
攪拌装置、滴下装置、温度センサー、および上部に窒素導入装置を有する還流装置を取り付けた反応容器を有する自動重合反応装置(重合試験機DSL−2AS型、轟産業(株)製)の反応容器にイソプロピルアルコール(IPA)1,200部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸2-ヒドロキシエチル75.0部、メタクリル酸260.8部、スチレン400.0部、メタクリル酸ベンジル234.2部、メタクリル酸グリシジル30.0部、および「パーブチル(登録商標)O」(有効成分ペルオキシ2−エチルヘキサン酸t−ブチル、日本油脂(株)製)80.0部の混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で15時間反応を継続させた後、IPAの一部を減圧留去し、固形分含有比率を42.5%に調整し、酸価170のスチレン−メタクリル酸ランダム共重合体であるポリマー型の分散剤(B)を得た。
【0125】
<ポリマー型の分散剤(C)>
3つのT字型マイクロミキサーM1、M2、M3を有するマイクロリアクターを使用し、リビングアニオン重合型のブロック共重合体を合成した。
第一のT字型マイクロミキサーM1に、重合開始剤としてブチルリチウム(BuLi)と第一のモノマーとしてスチレン(St)とを、それぞれT字型マイクロミキサーM1に繋がるチューブリアクターP1及びP2から導入し、リビングアニオン重合させ重合体を形成させた。
次に、得られた重合体を、T字型マイクロミキサーM1とT字型マイクロミキサーM2とを繋ぐチューブリアクターR1を通じてT字型マイクロミキサーM2に移動させ、該重合体の成長末端を、T字型マイクロミキサーM2につながるチューブリアクターP3から導入した反応調整剤(α−メチルスチレン(α−MeSt))によりトラップした。
次いで、第二のモノマーとしてメタクリル酸tert−ブチルエステル(t−BMA)をT字型マイクロミキサーM3に繋がるチューブリアクターP4からT字型マイクロミキサーM3に導入し、T字型マイクロミキサーM2とT字型マイクロミキサーM3とを繋ぐチューブリアクターR2を通じて移動させた前記重合体と、連続的なリビングアニオン重合反応を行った。その後メタノールで反応をクエンチしてブロック共重合体(PA−1)を製造した。
【0126】
この際、マイクロリアクター全体を恒温槽に埋没させることで、反応温度を24℃に設定した。また、マイクロリアクターに導入するモノマーおよび反応調整剤はテトラヒドロフラン(THF)で溶解し、またBuLiは市販の2.6Mヘキサン溶液をヘキサンで希釈し、その希釈濃度及び導入速度により、ブロック共重合体(PA−1)のmol比を重合開始剤/第一モノマー/反応調整剤/第二モノマー=1.0/12.0/1.3/8.1に調整した。
得られたブロック共重合体は、陽イオン交換樹脂で処理することでt−BMAブロックのt−ブトキシカルボニル基を加水分解し、カルボキシル基に再生した。反応溶液を減圧下で留去し、得られた固体を粉砕して、スチレン−メタクリル酸ブロック共重合体であるポリマー型の分散剤(C)を得た。
【0127】
<顔料ペーストの作製>
【0128】
<顔料ペースト(A−1)の作製>
前記ポリマー型の分散剤(A)80部、およびβ型銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)20部(固形分換算)を混合撹拌し、この混合物に0.3mmφセラミックビーズ500部を加えた後、6筒式サンドグラインダーで6時間摩砕した。摩砕終了後、セラミックビーズを分離して、ミルベースを得た。上記で得たミルベースを出力600Wで超音波ホモジナイザーを用いて、3時間細分化処理して、顔料分が20%の顔料ペースト(A−1)を得た。
【0129】
<顔料ペースト(A−2)の作製>
前記顔料ペースト(A−1)の銅フタロシアニン顔料をキナクリドン顔料(C.I.ピグメントレッド122)に変更した以外は、顔料ペースト(A−1)と同様の方法によって、顔料ペースト(A−2)を得た。
【0130】
<顔料ペースト(A−3)の作製>
前記顔料ペースト(A−1)の銅フタロシアニン顔料をモノアゾ顔料(C.I.ピグメント イエロー74)に変更した以外は、顔料ペースト(A−1)と同様の方法によって、顔料ペースト(A−3)を得た。
【0131】
<顔料ペースト(A−4)の作製>
前記顔料ペースト(A−1)の銅フタロシアニン顔料をカーボンブラック(C.I.ピグメント ブラック7)に変更した以外は、顔料ペースト(A−1)と同様の方法によって、顔料ペースト(A−4)を得た。
【0132】
<顔料ペースト(B−1)の作製>
冷却用ジャケットを備えた混合槽に、β型銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)360部と、前記ポリマー型の分散剤(B)170部、25%水酸化ナトリウム水溶液61部、イソプロピルアルコール180部、イオン交換水1220部を仕込み、スリーワンモーターで1時間攪拌し混合した。得られた混合液を直径0.3mmのジルコニアビーズを充填した分散装置(SCミルSC100/32型、三井鉱山(株)製)に通し、循環方式(分散装置より出た分散液を混合槽に戻す方式)により分散した。分散工程中は、冷却用ジャケットに冷水を通して分散液温度を30℃以下に保つよう制御し、分散装置のローター周速を11.25m/秒に固定して4時間分散した。分散終了後、混合槽より分散原液を抜き採り、次いで水1000部で混合槽および分散装置流路を洗浄し、分散原液と合わせてミル分散液を得た。次いで、ガラス製蒸留装置にミル分散液を入れ、イソプロピルアルコールの全量と水の一部を留去した。室温まで放冷後、攪拌しながら2%塩酸を滴下してpH3.5に調整した後、固形分をヌッチェ式濾過装置で濾過、水洗した。ウエットケーキを容器に採り、25%水酸化ナトリウム水溶液部を加えてpH9.0に調整し、ディスパー(TKホモディスパー20型、特殊機化工業(株)製)にて再分散した。その後、遠心分離工程(6000G、30分間)を経て、更にイオン交換水を加えて固形分含有比率18%の顔料ペースト(B−1)を得た。
【0133】
<顔料ペースト(B−2)の作製>
前記顔料ペースト(B−1)の銅フタロシアニン顔料をキナクリドン顔料(C.I.ピグメントレッド122)に変更した以外は、顔料ペースト(B−1)と同様の方法によって、顔料分散体(B−2)を得た。
【0134】
<顔料ペースト(B−3)の作製>
前記顔料ペースト(B−1)の銅フタロシアニン顔料をモノアゾ顔料(C.I.ピグメント イエロー74)に変更した以外は、顔料ペースト(B−1)と同様の方法によって、顔料ペースト(B−3)を得た。
【0135】
<顔料ペースト(B−4)の作製>
前記顔料ペースト(B−1)の銅フタロシアニン顔料をカーボンブラック(C.I.ピグメント ブラック7)に変更した以外は、顔料ペースト(B−1)と同様の方法によって、顔料ペースト(B−4)を得た。
【0136】
<顔料ペースト(C−1)の作製>
β型銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)を150部、前記ポリマー型の分散剤(C)を45部、水溶性溶剤としてトリエチレングリコールを95部、34%水酸化カリウム水溶液19部を、1.0Lのインテンシブミキサー(日本アイリッヒ株式会社)に仕込み、ローター周速2.94m/s、パン周速1m/sで、25分間混練を行う工程1を行った。続いて、インテンシブミキサー容器内の混練物に、撹拌を継続しながらイオン交換水450部を徐々に加えた後、水溶性溶剤としてトリエチレングリコールを55部、イオン交換水186部の混合液を加え混合する工程2を行い、顔料濃度は15.0%の顔料ペースト(C−1)を得た。
<顔料ペースト(C−2)の作製>
前記顔料ペースト(C−1)の銅フタロシアニン顔料をキナクリドン顔料(C.I.ピグメントレッド122)に変更した以外は、顔料ペースト(C−1)と同様の方法によって、顔料ペースト(C−2)を得た。
【0137】
<顔料ペースト(C−3)の作製>
前記顔料ペースト(C−1)の銅フタロシアニン顔料をモノアゾ顔料(C.I.ピグメント イエロー74)に変更した以外は、顔料ペースト(C−1)と同様の方法によって、顔料ペースト(C−3)を得た。
【0138】
<顔料ペースト(C−4)の作製>
前記顔料ペースト(C−1)の銅フタロシアニン顔料をカーボンブラック(C.I.ピグメント ブラック7)に変更した以外は、顔料ペースト(C−1)と同様の方法によって、顔料ペースト(C−4)を得た。
【0139】
<捺染剤の調製>
前記顔料ペーストを顔料分が4部となるように添加し、前記製造例のウレタン樹脂 4部(固形分換算)と、水、界面活性剤、水溶性有機溶剤を添加して、実施例および参考例の捺染剤を得た。各捺染剤の組成は別表に示した。各例の添加時に分散攪拌機(特殊機化工業(株)製のTKホモディスパー L)にて十分攪拌した。
【0140】
<堅牢度評価用布帛の作製_スクリーン印刷>
オートスクリーン捺染機(辻井染機工業株式会社製)を用いてスクリーン印刷法により印字評価を行った。135メッシュのストライプ柄のスクリーンにて、各インクをポリエステル/綿布帛に印捺後、120℃、2分間乾燥させ、150℃、2分間の加熱処理を行った。印捺物を目視した結果いずれも良好な品質であった。
【0141】
<評価用布帛の作製_インクジェット印刷>
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、MJ−510C)のインクカートリッジに充填し、印字した。各インキをポリエステル/綿布帛に印捺後、120℃、2分間乾燥させ、150℃、2分間の加熱処理を行った。印捺物を目視した結果いずれも良好な品質であった。
【0142】
<印字濃度評価方法>
上記評価用布帛の作製_スクリーン印刷で作製した印捺物を分光濃度計(エックスライト株式会社製528)で測定し、OD値で発色性を評価した。
【0143】
<乾式及び湿式摩擦性堅牢度評価方法>
スクリーン印刷により得た印捺物について、JIS L 0849:2013に準拠して、学振型摩擦堅牢度試験機を使用して、乾式及び湿式の試験を行った後、JIS L 0801:2011の汚染用グレースケールを用いた視感法による判定基準にしたがって、1級〜 5級で等級を判定した。なお、等級は、1級が最も退色が大きく、5級に近づくほど退色が少ない。
【0144】
<洗濯性堅牢度評価方法>
スクリーン印刷により得た印捺物について、JIS L 0844:2011のA−1号に準拠して、洗濯温度40℃で試験をおこなった後、JIS L 0801:2011の変退色用グレースケールを用いた視感法による判定基準にしたがって、1級〜5級で等級を判定した。なお、等級は、1級が最も退色が大きく、5級に近づくほど退色が少ない。また、A−2号については、洗濯温度を40℃から50℃に変更する以外は、A−1号と同様におこなった。
【0145】
<風合い評価方法>
上記で得られた評価用布帛を触手により、以下の基準に従って評価した。
○:プリント面と生地の境目が感じられない、もしくは、わずかに感じられる程度の触感である。
△:プリント面と生地の境目が感じられる触感である。
×:プリント面と生地の境目が明確に感じられる堅い触感である。
なお、他の風合い評価法としては、JIS L 1913:2010 に準拠して、剛軟度試験機(カンチレバー法、ガーレ法、ハンドルオメータ法等)を使用して、算出した剛軟度での評価が好ましい。なお、剛軟度が小さいほど風合いは軟らかく、大きいほど風合いは硬くなる。
【0146】
実施例及び参考例の捺染剤の組成、各種評価結果を表4〜表6に示す。なお表中の配合の単位は部である。
【0147】
【表4】


【0148】
【表5】

【0149】
【表6】


【0150】
表4〜表6中の略称について、以下に説明する。
PC:ポリカーボネートポリオール
MPD:3−メチル1,5−ペンタンジオール
ポリオール中のPC含有率(%):ポリカーボネート系ウレタン樹脂の製造に使用する全ポリオールの合計質量に対するポリカーボネートポリオールの質量%
NCO含有率(%):ポリカーボネート系ウレタン樹脂の製造に使用する全ポリオール及びポリイソシアネートの合計質量に対するポリイソシアネートの質量%
NH含有率(%):ポリカーボネート系ウレタン樹脂製造に使用する全ポリオール、ポリイソシアネート及び鎖伸張剤の合計質量に対する、鎖伸張剤の質量%
【0151】
表4〜表6の結果から、本発明(実施例1〜16)の捺染剤は、洗濯試験条件が異なっても良好な洗濯堅牢度を示した。