【解決手段】本発明の照明光学装置は、入射光束に基づいて所定面に輪帯状の光強度分布を形成するための光束変換素子(50)を備えている。光束変換素子は、旋光性を有する光学材料により形成されて、入射光束に基づいて輪帯状の光強度分布のうちの第1円弧状領域分布を形成するための第1基本素子(50A)と、第2円弧状領域分布を形成するための第2基本素子(50B)と、第3円弧状領域分布を形成するための第3基本素子(50C)と、第4円弧状領域分布を形成するための第4基本素子(50D)とにより構成されている。各基本素子は光の透過方向に沿った厚さが互いに異なる。
前記第1基本素子の厚さおよび前記第2基本素子の厚さは、直線偏光が入射したときに前記第1領域分布を形成する直線偏光の偏光方向と前記第2領域分布を形成する直線偏光の偏光方向とが異なるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の光束変換素子。
前記第1基本素子および前記第2基本素子は、使用波長の光に対して100度/mm以上の旋光能を有する光学材料により形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光束変換素子。
前記所定面上の光強度分布と、前記所定輪帯領域を通過する前記光束変換素子からの光束の偏光状態との少なくとも何れか一方は、前記光源と前記被照射面との間の光路中に配置される光学部材による影響を考慮して設定されることを特徴とする請求項16乃至18のいずれか1項に記載の照明光学装置。
前記光束変換素子からの光束の偏光状態を、前記被照射面に照射される光がS偏光を主成分とする偏光状態となるように設定することを特徴とする請求項16乃至19のいずれか1項に記載の照明光学装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態にかかる照明光学装置を備えた露光装置の構成を概略的に示す図である。
図1において、感光性基板であるウェハWの法線方向に沿ってZ軸を、ウェハWの面内において
図1の紙面に平行な方向にY軸を、ウェハWの面内において
図1の紙面に垂直な方向にX軸をそれぞれ設定している。本実施形態の露光装置は、露光光(照明光)を供給するための光源1を備えている。
【0018】
光源1として、たとえば248nmの波長の光を供給するKrFエキシマレーザ光源や193nmの波長の光を供給するArFエキシマレーザ光源などを用いることができる。光源1からZ方向に沿って射出されたほぼ平行な光束は、X方向に沿って細長く延びた矩形状の断面を有し、一対のレンズ2aおよび2bからなるビームエキスパンダー2に入射する。各レンズ2aおよび2bは、
図1の紙面内(YZ平面内)において負の屈折力および正の屈折力をそれぞれ有する。したがって、ビームエキスパンダー2に入射した光束は、
図1の紙面内において拡大され、所定の矩形状の断面を有する光束に整形される。
【0019】
整形光学系としてのビームエキスパンダー2を介したほぼ平行な光束は、折り曲げミラー3でY方向に偏向された後、1/4波長板4a、1/2波長板4b、デポラライザ(非偏光化素子)4c、および輪帯照明用の回折光学素子5を介して、アフォーカルレンズ6に入射する。ここで、1/4波長板4a、1/2波長板4b、およびデポラライザ4cは、後述するように、偏光状態切換手段4を構成している。アフォーカルレンズ6は、その前側焦点位置と回折光学素子5の位置とがほぼ一致し且つその後側焦点位置と図中破線で示す所定面7の位置とがほぼ一致するように設定されたアフォーカル系(無焦点光学系)である。
【0020】
一般に、回折光学素子は、基板に露光光(照明光)の波長程度のピッチを有する段差を形成することによって構成され、入射ビームを所望の角度に回折する作用を有する。具体的には、輪帯照明用の回折光学素子5は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、そのファーフィールド(またはフラウンホーファー回折領域)に輪帯状の光強度分布を形成する機能を有する。したがって、光束変換素子としての回折光学素子5に入射したほぼ平行光束は、アフォーカルレンズ6の瞳面に輪帯状の光強度分布を形成した後、ほぼ平行光束となってアフォーカルレンズ6から射出される。
【0021】
なお、アフォーカルレンズ6の前側レンズ群6aと後側レンズ群6bとの間の光路中においてその瞳面またはその近傍には、光源側から順に、円錐アキシコン系8、第1シリンドリカルレンズ対9、および第2シリンドリカルレンズ対10が配置されているが、その詳細な構成および作用については後述する。以下、説明を簡単にするために、円錐アキシコン系8、第1シリンドリカルレンズ対9、および第2シリンドリカルレンズ対10の作用を無視して、基本的な構成および作用を説明する。
【0022】
アフォーカルレンズ6を介した光束は、σ値可変用のズームレンズ11を介して、オプティカルインテグレータとしてのマイクロフライアイレンズ(またはフライアイレンズ)12に入射する。マイクロフライアイレンズ12は、縦横に且つ稠密に配列された多数の正屈折力を有する微小レンズからなる光学素子である。一般に、マイクロフライアイレンズは、たとえば平行平面板にエッチング処理を施して微小レンズ群を形成することによって構成される。
【0023】
ここで、マイクロフライアイレンズを構成する各微小レンズは、フライアイレンズを構成する各レンズエレメントよりも微小である。また、マイクロフライアイレンズは、互いに隔絶されたレンズエレメントからなるフライアイレンズとは異なり、多数の微小レンズ(微小屈折面)が互いに隔絶されることなく一体的に形成されている。しかしながら、正屈折力を有するレンズ要素が縦横に配置されている点でマイクロフライアイレンズはフライアイレンズと同じ波面分割型のオプティカルインテグレータである。
【0024】
所定面7の位置はズームレンズ11の前側焦点位置の近傍に配置され、マイクロフライアイレンズ12の入射面はズームレンズ11の後側焦点位置の近傍に配置されている。換言すると、ズームレンズ11は、所定面7とマイクロフライアイレンズ12の入射面とを実質的にフーリエ変換の関係に配置し、ひいてはアフォーカルレンズ6の瞳面とマイクロフライアイレンズ12の入射面とを光学的にほぼ共役に配置している。
【0025】
したがって、マイクロフライアイレンズ12の入射面上には、アフォーカルレンズ6の瞳面と同様に、たとえば光軸AXを中心とした輪帯状の照野が形成される。この輪帯状の照野の全体形状は、ズームレンズ11の焦点距離に依存して相似的に変化する。マイクロフライアイレンズ12を構成する各微小レンズは、マスクM上において形成すべき照野の形状(ひいてはウェハW上において形成すべき露光領域の形状)と相似な矩形状の断面を有する。
【0026】
マイクロフライアイレンズ12に入射した光束は多数の微小レンズにより二次元的に分割され、その後側焦点面(ひいては照明瞳)には、
図2に示すように、入射光束によって形成される照野とほぼ同じ光強度分布を有する二次光源、すなわち光軸AXを中心とした輪帯状の実質的な面光源からなる二次光源が形成される。マイクロフライアイレンズ12の後側焦点面に形成された二次光源(一般的には照明光学装置の瞳面またはその近傍に形成された照明瞳分布)からの光束は、ビームスプリッター13aおよびコンデンサー光学系14を介した後、マスクブラインド15を重畳的に照明する。
【0027】
こうして、照明視野絞りとしてのマスクブラインド15には、マイクロフライアイレンズ12を構成する各微小レンズの形状と焦点距離とに応じた矩形状の照野が形成される。なお、ビームスプリッター13aを内蔵する偏光モニター13の内部構成および作用については後述する。マスクブラインド15の矩形状の開口部(光透過部)を介した光束は、結像光学系16の集光作用を受けた後、所定のパターンが形成されたマスクMを重畳的に照明する。
【0028】
すなわち、結像光学系16は、マスクブラインド15の矩形状開口部の像をマスクM上に形成することになる。マスクMのパターンを透過した光束は、投影光学系PLを介して、感光性基板であるウェハW上にマスクパターンの像を形成する。こうして、投影光学系PLの光軸AXと直交する平面(XY平面)内においてウェハWを二次元的に駆動制御しながら一括露光またはスキャン露光を行うことにより、ウェハWの各露光領域にはマスクMのパターンが逐次露光される。
【0029】
なお、偏光状態切換手段4において、1/4波長板4aは、光軸AXを中心として結晶光学軸が回転自在に構成されて、入射する楕円偏光の光を直線偏光の光に変換する。また、1/2波長板4bは、光軸AXを中心として結晶光学軸が回転自在に構成されて、入射する直線偏光の偏光面を変化させる。また、デポラライザ4cは、相補的な形状を有する楔形状の水晶プリズム(不図示)と楔形状の石英プリズム(不図示)とにより構成されている。水晶プリズムと石英プリズムとは、一体的なプリズム組立体として、照明光路に対して挿脱自在に構成されている。
【0030】
光源1としてKrFエキシマレーザ光源やArFエキシマレーザ光源を用いる場合、これらの光源から射出される光は典型的には95%以上の偏光度を有し、1/4波長板4aにはほぼ直線偏光の光が入射する。しかしながら、光源1と偏光状態切換手段4との間の光路中に裏面反射鏡としての直角プリズムが介在する場合、入射する直線偏光の偏光面がP偏光面またはS偏光面に一致していないと、直角プリズムでの全反射により直線偏光が楕円偏光に変わる。
【0031】
偏光状態切換手段4では、たとえば直角プリズムでの全反射に起因して楕円偏光の光が入射しても、1/4波長板4aの作用により変換された直線偏光の光が1/2波長板4bに入射する。1/2波長板4bの結晶光学軸が入射する直線偏光の偏光面に対して0度または90度の角度をなすように設定された場合、1/2波長板4bに入射した直線偏光の光は偏光面が変化することなくそのまま通過する。
【0032】
また、1/2波長板4bの結晶光学軸が入射する直線偏光の偏光面に対して45度の角度をなすように設定された場合、1/2波長板4bに入射した直線偏光の光は偏光面が90度だけ変化した直線偏光の光に変換される。さらに、デポラライザ4cの水晶プリズムの結晶光学軸が入射する直線偏光の偏光面に対して45度の角度をなすように設定された場合、水晶プリズムに入射した直線偏光の光は非偏光状態の光に変換(非偏光化)される。
【0033】
偏光状態切換手段4では、デポラライザ4cが照明光路中に位置決めされたときに水晶プリズムの結晶光学軸が入射する直線偏光の偏光面に対して45度の角度をなすように構成されている。ちなみに、水晶プリズムの結晶光学軸が入射する直線偏光の偏光面に対して0度または90度の角度をなすように設定された場合、水晶プリズムに入射した直線偏光の光は偏光面が変化することなくそのまま通過する。また、1/2波長板4bの結晶光学軸が入射する直線偏光の偏光面に対して22.5度の角度をなすように設定された場合、1/2波長板4bに入射した直線偏光の光は、偏光面が変化することなくそのまま通過する直線偏光成分と偏光面が90度だけ変化した直線偏光成分とを含む非偏光状態の光に変換される。
【0034】
偏光状態切換手段4では、上述したように、直線偏光の光が1/2波長板4bに入射するが、以下の説明を簡単にするために、
図1においてZ方向に偏光方向(電場の方向)を有する直線偏光(以下、「Z方向偏光」と称する)の光が1/2波長板4bに入射するものとする。デポラライザ4cを照明光路中に位置決めした場合、1/2波長板4bの結晶光学軸を入射するZ方向偏光の偏光面(偏光方向)に対して0度または90度の角度をなすように設定すると、1/2波長板4bに入射したZ方向偏光の光は偏光面が変化することなくZ方向偏光のまま通過してデポラライザ4cの水晶プリズムに入射する。水晶プリズムの結晶光学軸は入射するZ方向偏光の偏光面に対して45度の角度をなすように設定されているので、水晶プリズムに入射したZ方向偏光の光は非偏光状態の光に変換される。
【0035】
水晶プリズムを介して非偏光化された光は、光の進行方向を補償するためのコンペンセータとしての石英プリズムを介して、非偏光状態で回折光学素子5に入射する。一方、1/2波長板4bの結晶光学軸を入射するZ方向偏光の偏光面に対して45度の角度をなすように設定すると、1/2波長板4bに入射したZ方向偏光の光は偏光面が90度だけ変化し、
図1においてX方向に偏光方向(電場の方向)を有する直線偏光(以下、「X方向偏光」と称する)の光になってデポラライザ4cの水晶プリズムに入射する。水晶プリズムの結晶光学軸は入射するX方向偏光の偏光面に対しても45度の角度をなすように設定されているので、水晶プリズムに入射したX方向偏光の光は非偏光状態の光に変換され、石英プリズムを介して、非偏光状態で回折光学素子5に入射する。
【0036】
これに対し、デポラライザ4cを照明光路から退避させた場合、1/2波長板4bの結晶光学軸を入射するZ方向偏光の偏光面に対して0度または90度の角度をなすように設定すると、1/2波長板4bに入射したZ方向偏光の光は偏光面が変化することなくZ方向偏光のまま通過し、Z方向偏光状態で回折光学素子5に入射する。一方、1/2波長板4bの結晶光学軸を入射するZ方向偏光の偏光面に対して45度の角度をなすように設定すると、1/2波長板4bに入射したZ方向偏光の光は偏光面が90度だけ変化してX方向偏光の光になり、X方向偏光状態で回折光学素子5に入射する。
【0037】
以上のように、偏光状態切換手段4では、デポラライザ4cを照明光路中に挿入して位置決めすることにより、非偏光状態の光を回折光学素子5に入射させることができる。また、デポラライザ4cを照明光路から退避させ且つ1/2波長板4bの結晶光学軸を入射するZ方向偏光の偏光面に対して0度または90度の角度をなすように設定することにより、Z方向偏光状態の光を回折光学素子5に入射させることができる。さらに、デポラライザ4cを照明光路から退避させ且つ1/2波長板4bの結晶光学軸を入射するZ方向偏光の偏光面に対して45度をなすように設定することにより、X方向偏光状態の光を回折光学素子5に入射させることができる。
【0038】
換言すれば、偏光状態切換手段4では、1/4波長板4aと1/2波長板4bとデポラライザ4cとからなる偏光状態切換手段の作用により、回折光学素子5への入射光の偏光状態(後述する本発明にかかる周方向偏光輪帯照明用の回折光学素子以外の通常の回折光学素子を用いている場合にはマスクMおよびウェハWを照明する光の偏光状態)を直線偏光状態と非偏光状態との間で切り換えることができ、直線偏光状態の場合には互いに直交する偏光状態間(Z方向偏光とX方向偏光との間)で切り換えることができる。
【0039】
図3は、
図1においてアフォーカルレンズの前側レンズ群と後側レンズ群との間の光路中に配置された円錐アキシコン系の構成を概略的に示す図である。円錐アキシコン系8は、光源側から順に、光源側に平面を向け且つマスク側に凹円錐状の屈折面を向けた第1プリズム部材8aと、マスク側に平面を向け且つ光源側に凸円錐状の屈折面を向けた第2プリズム部材8bとから構成されている。
【0040】
そして、第1プリズム部材8aの凹円錐状の屈折面と第2プリズム部材8bの凸円錐状の屈折面とは、互いに当接可能なように相補的に形成されている。また、第1プリズム部材8aおよび第2プリズム部材8bのうち少なくとも一方の部材が光軸AXに沿って移動可能に構成され、第1プリズム部材8aの凹円錐状の屈折面と第2プリズム部材8bの凸円錐状の屈折面との間隔が可変に構成されている。
【0041】
ここで、第1プリズム部材8aの凹円錐状屈折面と第2プリズム部材8bの凸円錐状屈折面とが互いに当接している状態では、円錐アキシコン系8は平行平面板として機能し、形成される輪帯状の二次光源に及ぼす影響はない。しかしながら、第1プリズム部材8aの凹円錐状屈折面と第2プリズム部材8bの凸円錐状屈折面とを離間させると、円錐アキシコン系8は、いわゆるビームエキスパンダーとして機能する。したがって、円錐アキシコン系8の間隔の変化に伴って、所定面7への入射光束の角度は変化する。
【0042】
図4は、輪帯状の二次光源に対する円錐アキシコン系の作用を説明する図である。
図4を参照すると、円錐アキシコン系8の間隔が零で且つズームレンズ11の焦点距離が最小値に設定された状態(以下、「標準状態」という)で形成された最も小さい輪帯状の二次光源30aが、円錐アキシコン系8の間隔を零から所定の値まで拡大させることにより、その幅(外径と内径との差の1/2:図中矢印で示す)が変化することなく、その外径および内径がともに拡大された輪帯状の二次光源30bに変化する。換言すると、円錐アキシコン系8の作用により、輪帯状の二次光源の幅が変化することなく、その輪帯比(内径/外径)および大きさ(外径)がともに変化する。
【0043】
図5は、輪帯状の二次光源に対するズームレンズの作用を説明する図である。
図5を参照すると、標準状態で形成された輪帯状の二次光源30aが、ズームレンズ11の焦点距離を最小値から所定の値へ拡大させることにより、その全体形状が相似的に拡大された輪帯状の二次光源30cに変化する。換言すると、ズームレンズ11の作用により、輪帯状の二次光源の輪帯比が変化することなく、その幅および大きさ(外径)がともに変化する。
【0044】
図6は、
図1においてアフォーカルレンズの前側レンズ群と後側レンズ群との間の光路中に配置された第1シリンドリカルレンズ対および第2シリンドリカルレンズ対の構成を概略的に示す図である。
図6において、光源側から順に、第1シリンドリカルレンズ対9および第2シリンドリカルレンズ対10が配置されている。第1シリンドリカルレンズ対9は、光源側から順に、たとえばYZ平面内に負屈折力を有し且つXY平面内に無屈折力の第1シリンドリカル負レンズ9aと、同じくYZ平面内に正屈折力を有し且つXY平面内に無屈折力の第1シリンドリカル正レンズ9bとにより構成されている。
【0045】
一方、第2シリンドリカルレンズ対10は、光源側から順に、たとえばXY平面内に負屈折力を有し且つYZ平面内に無屈折力の第2シリンドリカル負レンズ10aと、同じくXY平面内に正屈折力を有し且つYZ平面内に無屈折力の第2シリンドリカル正レンズ10bとにより構成されている。第1シリンドリカル負レンズ9aと第1シリンドリカル正レンズ9bとは、光軸AXを中心として一体的に回転するように構成されている。同様に、第2シリンドリカル負レンズ10aと第2シリンドリカル正レンズ10bとは、光軸AXを中心として一体的に回転するように構成されている。
【0046】
こうして、
図6に示す状態において、第1シリンドリカルレンズ対9はZ方向にパワーを有するビームエキスパンダーとして機能し、第2シリンドリカルレンズ対10はX方向にパワーを有するビームエキスパンダーとして機能する。なお、第1シリンドリカルレンズ対9のパワーと第2シリンドリカルレンズ対10のパワーとは、互いに同じに設定されている。
【0047】
図7〜
図9は、輪帯状の二次光源に対する第1シリンドリカルレンズ対および第2シリンドリカルレンズ対の作用を説明する図である。
図7では、第1シリンドリカルレンズ対9のパワー方向がZ軸に対して光軸AX廻りに+45度の角度をなし、第2シリンドリカルレンズ対10のパワー方向がZ軸に対して光軸AX廻りに−45度の角度をなすように設定されている。
【0048】
したがって、第1シリンドリカルレンズ対9のパワー方向と第2シリンドリカルレンズ対10のパワー方向とが互いに直交し、第1シリンドリカルレンズ対9と第2シリンドリカルレンズ対10との合成系においてZ方向のパワーとX方向のパワーとが互いに同じになる。その結果、
図7に示す真円状態では、第1シリンドリカルレンズ対9と第2シリンドリカルレンズ対10との合成系を通過する光束は、Z方向およびX方向に同じパワーで拡大作用を受けることになり、照明瞳には真円輪帯状の二次光源が形成されることになる。
【0049】
これに対し、
図8では、第1シリンドリカルレンズ対9のパワー方向がZ軸に対して光軸AX廻りに例えば+80度の角度をなし、第2シリンドリカルレンズ対10のパワー方向がZ軸に対して光軸AX廻りに例えば−80度の角度をなすように設定されている。したがって、第1シリンドリカルレンズ対9と第2シリンドリカルレンズ対10との合成系において、Z方向のパワーよりもX方向のパワーの方が大きくなる。その結果、
図8に示す横楕円状態では、第1シリンドリカルレンズ対9と第2シリンドリカルレンズ対10との合成系を通過する光束は、Z方向よりもX方向の方が大きなパワーで拡大作用を受けることになり、照明瞳にはX方向に細長い横長の輪帯状の二次光源が形成されることになる。
【0050】
一方、
図9では、第1シリンドリカルレンズ対9のパワー方向がZ軸に対して光軸AX廻りに例えば+10度の角度をなし、第2シリンドリカルレンズ対10のパワー方向がZ軸に対して光軸AX廻りに例えば−10度の角度をなすように設定されている。したがって、第1シリンドリカルレンズ対9と第2シリンドリカルレンズ対10との合成系において、X方向のパワーよりもZ方向のパワーの方が大きくなる。その結果、
図9に示す縦楕円状態では、第1シリンドリカルレンズ対9と第2シリンドリカルレンズ対10との合成系を通過する光束は、X方向よりもZ方向の方が大きなパワーで拡大作用を受けることになり、照明瞳にはZ方向に細長い縦長の輪帯状の二次光源が形成されることになる。
【0051】
さらに、第1シリンドリカルレンズ対9および第2シリンドリカルレンズ対10を
図7に示す真円状態と
図8に示す横楕円状態との間の任意の状態に設定することにより、様々な縦横比にしたがう横長の輪帯状の二次光源を形成することができる。また、第1シリンドリカルレンズ対9および第2シリンドリカルレンズ対10を
図7に示す真円状態と
図9に示す縦楕円状態との間の任意の状態に設定することにより、様々な縦横比にしたがう縦長の輪帯状の二次光源を形成することができる。
【0052】
図10は、
図1の偏光モニターの内部構成を概略的に示す斜視図である。
図10を参照すると、偏光モニター13は、マイクロフライアイレンズ12とコンデンサー光学系14との間の光路中に配置された第1ビームスプリッター13aを備えている。第1ビームスプリッター13aは、たとえば石英ガラスにより形成されたノンコートの平行平面板(すなわち素ガラス)の形態を有し、入射光の偏光状態とは異なる偏光状態の反射光を光路から取り出す機能を有する。
【0053】
第1ビームスプリッター13aにより光路から取り出された光は、第2ビームスプリッター13bに入射する。第2ビームスプリッター13bは、第1ビームスプリッター13aと同様に、例えば石英ガラスにより形成されたノンコートの平行平面板の形態を有し、入射光の偏光状態とは異なる偏光状態の反射光を発生させる機能を有する。そして、第1ビームスプリッター13aに対するP偏光が第2ビームスプリッター13bに対するS偏光になり、且つ第1ビームスプリッター13aに対するS偏光が第2ビームスプリッター13bに対するP偏光になるように設定されている。
【0054】
また、第2ビームスプリッター13bを透過した光は第1光強度検出器13cにより検出され、第2ビームスプリッター13bで反射された光は第2光強度検出器13dにより検出される。第1光強度検出器13cおよび第2光強度検出器13dの出力は、それぞれ制御部(不図示)に供給される。制御部は、偏光状態切換手段4を構成する1/4波長板4a、1/2波長板4bおよびデポラライザ4cを必要に応じて駆動する。
【0055】
上述のように、第1ビームスプリッター13aおよび第2ビームスプリッター13bにおいて、P偏光に対する反射率とS偏光に対する反射率とが実質的に異なっている。したがって、偏光モニター13では、第1ビームスプリッター13aからの反射光が、例えば第1ビームスプリッター13aへの入射光の10%程度のS偏光成分(第1ビームスプリッター13aに対するS偏光成分であって第2ビームスプリッター13bに対するP偏光成分)と、例えば第1ビームスプリッター13aへの入射光の1%程度のP偏光成分(第1ビームスプリッター13aに対するP偏光成分であって第2ビームスプリッター13bに対するS偏光成分)とを含むことになる。
【0056】
また、第2ビームスプリッター13bからの反射光は、例えば第1ビームスプリッター13aへの入射光の10%×1%=0.1%程度のP偏光成分(第1ビームスプリッター13aに対するP偏光成分であって第2ビームスプリッター13bに対するS偏光成分)と、例えば第1ビームスプリッター13aへの入射光の1%×10%=0.1%程度のS偏光成分(第1ビームスプリッター13aに対するS偏光成分であって第2ビームスプリッター13bに対するP偏光成分)とを含むことになる。
【0057】
こうして、偏光モニター13では、第1ビームスプリッター13aが、その反射特性に応じて、入射光の偏光状態とは異なる偏光状態の反射光を光路から取り出す機能を有する。その結果、第2ビームスプリッター13bの偏光特性による偏光変動の影響を僅かに受けるものの、第1光強度検出器13cの出力(第2ビームスプリッター13bの透過光の強度に関する情報、すなわち第1ビームスプリッター13aからの反射光とほぼ同じ偏光状態の光の強度に関する情報)に基づいて、第1ビームスプリッター13aへの入射光の偏光状態(偏光度)を、ひいてはマスクMへの照明光の偏光状態を検知することができる。
【0058】
また、偏光モニター13では、第1ビームスプリッター13aに対するP偏光が第2ビームスプリッター13bに対するS偏光になり且つ第1ビームスプリッター13aに対するS偏光が第2ビームスプリッター13bに対するP偏光になるように設定されている。その結果、第2光強度検出器13dの出力(第1ビームスプリッター13aおよび第2ビームスプリッター13bで順次反射された光の強度に関する情報)に基づいて、第1ビームスプリッター13aへの入射光の偏光状態の変化の影響を実質的に受けることなく、第1ビームスプリッター13aへの入射光の光量(強度)を、ひいてはマスクMへの照明光の光量を検知することができる。
【0059】
こうして、偏光モニター13を用いて、第1ビームスプリッター13aへの入射光の偏光状態を検知し、ひいてはマスクMへの照明光が所望の非偏光状態または直線偏光状態になっているか否かを判定することができる。そして、制御部が偏光モニター13の検知結果に基づいてマスクM(ひいてはウェハW)への照明光が所望の非偏光状態または直線偏光状態になっていないことを確認した場合、偏光状態切換手段4を構成する1/4波長板4a、1/2波長板4bおよびデポラライザ4cを駆動調整し、マスクMへの照明光の状態を所望の非偏光状態または直線偏光状態に調整することができる。
【0060】
なお、輪帯照明用の回折光学素子5に代えて、4極照明用の回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、4極照明を行うことができる。4極照明用の回折光学素子は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、そのファーフィールドに4極状の光強度分布を形成する機能を有する。したがって、4極照明用の回折光学素子を介した光束は、マイクロフライアイレンズ12の入射面に、たとえば光軸AXを中心とした4つの円形状の照野からなる4極状の照野を形成する。その結果、マイクロフライアイレンズ12の後側焦点面にも、その入射面に形成された照野と同じ4極状の二次光源が形成される。
【0061】
また、輪帯照明用の回折光学素子5に代えて、円形照明用の回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、通常の円形照明を行うことができる。円形照明用の回折光学素子は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、ファーフィールドに円形状の光強度分布を形成する機能を有する。したがって、円形照明用の回折光学素子を介した光束は、マイクロフライアイレンズ12の入射面に、たとえば光軸AXを中心とした円形状の照野からなる4極状の照野を形成する。その結果、マイクロフライアイレンズ12の後側焦点面にも、その入射面に形成された照野と同じ円形状の二次光源が形成される。
【0062】
さらに、輪帯照明用の回折光学素子5に代えて、他の複数極照明用の回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、様々な複数極照明(2極照明、8極照明など)を行うことができる。同様に、輪帯照明用の回折光学素子5に代えて、適当な特性を有する回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、様々な形態の変形照明を行うことができる。
【0063】
本実施形態では、輪帯照明用の回折光学素子5に代えて、いわゆる周方向偏光輪帯照明用の回折光学素子50を照明光路中に設定することによって、輪帯状の二次光源を通過する光束が周方向偏光状態に設定された変形照明、すなわち周方向偏光輪帯照明を行うことができる。
図11は、本実施形態にかかる周方向偏光輪帯照明用の回折光学素子の構成を概略的に示す図である。また、
図12は、周方向偏光状態に設定された輪帯状の二次光源を概略的に示す図である。
【0064】
図11および
図12を参照すると、本実施形態にかかる周方向偏光輪帯照明用の回折光学素子50は、互いに同じ矩形状の断面を有し且つ光の透過方向(Y方向)に沿った厚さ(光軸方向の長さ)が互いに異なる4種類の基本素子50A〜50Dを縦横に且つ稠密に配置することにより構成されている。ここで、第1基本素子50Aの厚さが最も大きく、第4基本素子50Dの厚さが最も小さく、第2基本素子50Bの厚さは第3基本素子50Cの厚さよりも大きく設定されている。
【0065】
また、回折光学素子50は、第1基本素子50Aと第2基本素子50Bと第3基本素子50Cと第4基本素子50Dとをほぼ同数含み、4種類の基本素子50A〜50Dはほぼランダム配置されている。さらに、各基本素子50A〜50Dのマスク側には回折面(図中斜線部で示す)が形成され、各基本素子50A〜50Dの回折面が光軸AX(
図11では不図示)と直交する1つの平面に沿うように整列されている。その結果、回折光学素子50のマスク側の面は平面状であるが、回折光学素子50の光源側の面は各基本素子50A〜50Dの厚さの違いにより凹凸状になっている。
【0066】
そして、第1基本素子50Aの回折面は、
図12に示す輪帯状の二次光源31のうち、光軸AXを通るZ方向の軸線に関して対称的な一対の円弧状領域31Aを形成するように構成されている。すなわち、
図13に示すように、第1基本素子50Aは、回折光学素子50のファーフィールド(ひいては各基本素子50A〜50Dのファーフィールド)50Eに光軸AXを通るZ方向の軸線に関して対称的な一対の円弧状の光強度分布32A(一対の円弧状領域31Aに対応)を形成する機能を有する。
【0067】
第2基本素子50Bの回折面は、光軸AXを通るZ方向の軸線をY軸廻りに−45度回転させた(
図12中反時計回りに45度回転させた)軸線に関して対称的な一対の円弧状領域31Bを形成するように構成されている。すなわち、
図14に示すように、第2基本素子50Bは、ファーフィールド50Eに、光軸AXを通るZ方向の軸線をY軸廻りに−45度回転させた軸線に関して対称的な一対の円弧状の光強度分布32B(一対の円弧状領域31Bに対応)を形成する機能を有する。
【0068】
第3基本素子50Cの回折面は、光軸AXを通るX方向の軸線に関して対称的な一対の円弧状領域31Cを形成するように構成されている。すなわち、
図15に示すように、第3基本素子50Cは、ファーフィールド50Eに、光軸AXを通るX方向の軸線に関して対称的な一対の円弧状の光強度分布32C(一対の円弧状領域31Cに対応)を形成する機能を有する。
【0069】
第4基本素子50Dの回折面は、光軸AXを通るZ方向の軸線をY軸廻りに+45度回転させた(
図12中時計回りに45度回転させた)軸線に関して対称的な一対の円弧状領域31Dを形成するように構成されている。すなわち、
図16に示すように、第4基本素子50Dは、ファーフィールド50Eに、光軸AXを通るZ方向の軸線をY軸廻りに+45度回転させた軸線に関して対称的な一対の円弧状の光強度分布32D(一対の円弧状領域31Dに対応)を形成する機能を有する。なお、各円弧状領域31A〜31Dの大きさは互いにほぼ等しく、8つの円弧状領域31A〜31Dが互いに重複することなく且つ互いに離間することなく、光軸AXを中心とした輪帯状の二次光源31を構成している。
【0070】
また、本実施形態では、各基本素子50A〜50Dが旋光性を有する光学材料である水晶により構成され、各基本素子50A〜50Dの結晶光学軸が光軸AXとほぼ一致するように設定されている。以下、
図17を参照して、水晶の旋光性について簡単に説明する。
図17を参照すると、厚さdの水晶からなる平行平面板状の光学部材35が、その結晶光学軸と光軸AXとが一致するように配置されている。この場合、光学部材35の旋光性により、入射した直線偏光の偏光方向が光軸AX廻りにθだけ回転した状態で射出される。
【0071】
このとき、光学部材35の旋光性による偏光方向の回転角θは、光学部材35の厚さdと水晶の旋光能ρとにより、次の式(1)で表わされる。
【0072】
θ=d・ρ (1)
一般に、水晶の旋光能ρは使用光の波長が短くなると大きくなる傾向があるが、「応用光学II」の第167頁の記述によれば、250.3nmの波長を有する光に対する水晶の旋光能ρは153.9度/mmである。
【0073】
本実施形態において、第1基本素子50Aは、
図13に示すように、Z方向に偏光方向を有する直線偏光の光が入射した場合、Z方向をY軸廻りに+180度回転させた方向すなわちZ方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように厚さdAが設定されている。その結果、ファーフィールド50Eに形成される一対の円弧状の光強度分布32Aを通過する光束の偏光方向もZ方向になり、
図12に示す一対の円弧状領域31Aを通過する光束の偏光方向もZ方向になる。
【0074】
第2基本素子50Bは、
図14に示すように、Z方向に偏光方向を有する直線偏光の光が入射した場合、Z方向をY軸廻りに+135度回転させた方向すなわちZ方向をY軸廻りに−45度回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように厚さdBが設定されている。その結果、ファーフィールド50Eに形成される一対の円弧状の光強度分布32Bを通過する光束の偏光方向もZ方向をY軸廻りに−45度回転させた方向になり、
図12に示す一対の円弧状領域31Aを通過する光束の偏光方向もZ方向をY軸廻りに−45度回転させた方向になる。
【0075】
第3基本素子50Cは、
図15に示すように、Z方向に偏光方向を有する直線偏光の光が入射した場合、Z方向をY軸廻りに+90度回転させた方向すなわちX方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように厚さdCが設定されている。その結果、ファーフィールド50Eに形成される一対の円弧状の光強度分布32Cを通過する光束の偏光方向もX方向になり、
図12に示す一対の円弧状領域31Cを通過する光束の偏光方向もX方向になる。
【0076】
第4基本素子50Dは、
図16に示すように、Z方向に偏光方向を有する直線偏光の光が入射した場合、Z方向をY軸廻りに+45度回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように厚さdDが設定されている。その結果、ファーフィールド50Eに形成される一対の円弧状の光強度分布32Dを通過する光束の偏光方向もZ方向をY軸廻りに+45度回転させた方向になり、
図12に示す一対の円弧状領域31Dを通過する光束の偏光方向もZ方向をY軸廻りに+45度回転させた方向になる。
【0077】
本実施形態では、周方向偏光輪帯照明に際して、周方向偏光輪帯照明用の回折光学素子50を照明光路中に設定し、Z方向に偏光方向を有する直線偏光の光を回折光学素子50に入射させる。その結果、マイクロフライアイレンズ12の後側焦点面(すなわち照明瞳またはその近傍)には、
図12に示すように、輪帯状の二次光源(輪帯状の照明瞳分布)31が形成され、この輪帯状の二次光源31を通過する光束が周方向偏光状態に設定される。
【0078】
周方向偏光状態では、輪帯状の二次光源31を構成する円弧状領域31A〜31Dをそれぞれ通過する光束は、各円弧状領域31A〜31Dの円周方向に沿った中心位置における光軸AXを中心とする円の接線とほぼ一致する偏光方向を有する直線偏光状態になる。
【0079】
このように本実施形態では、入射光束に基づいて所定面に所定の光強度分布を形成するための光束変換素子50が、旋光性を有する光学材料により形成されて、前記入射光束に基づいて前記所定の光強度分布のうちの第1領域分布32Aを形成するための第1基本素子50Aと;旋光性を有する光学材料により形成されて、前記入射光束に基づいて前記所定の光強度分布のうちの第2領域分布32Bを形成するための第2基本素子50Bとを備えており、第1基本素子50Aと第2基本素子50Bとの光の透過方向に沿った厚さが互いに異なっている。
【0080】
このような構成により、本実施形態では、開口絞りにおいて大きな光量損失が発生する従来技術とは異なり、光束変換素子としての回折光学素子50の回折作用と旋光作用とにより、光量損失を実質的に発生させることなく、周方向偏光状態の輪帯状の二次光源31を形成することができる。
【0081】
ここで、本実施形態の好ましい態様によれば、第1基本素子50Aの厚さおよび第2基本素子50Bの厚さは、直線偏光が入射したときに第1領域分布32Aを形成する直線偏光の偏光方向と第2領域分布32Bを形成する直線偏光の偏光方向とが異なるように設定されている。また、第1領域分布32Aおよび第2領域分布32Bは、所定面における所定点を中心とする所定の輪帯領域である所定輪帯領域の少なくとも一部に位置決めされ、第1領域分布32Aおよび第2領域分布32Bを通過する光束は、所定輪帯領域の円周方向を偏光方向とする直線偏光を主成分とする偏光状態を有することが好ましい。
【0082】
この場合、所定の光強度分布は、所定輪帯領域とほぼ同一形状の外形を有し、第1領域分布32Aを通過する光束の偏光状態は、第1領域分布32Aの円周方向に沿った中心位置における所定点を中心とする円の接線方向とほぼ一致した直線偏光成分を有し、第2領域分布32Bを通過する光束の偏光状態は、第2領域分布32Bの円周方向に沿った中心位置における所定点を中心とする円の接線方向とほぼ一致した直線偏光成分を有することが好ましい。あるいは、所定の光強度分布は、所定輪帯領域内に分布する多極状であり、第1領域分布を通過する光束の偏光状態は、第1領域分布の円周方向に沿った中心位置における所定点を中心とする円の接線方向とほぼ一致した直線偏光成分を有し、第2領域分布を通過する光束の偏光状態は、第2領域分布の円周方向に沿った中心位置における所定点を中心とする円の接線方向とほぼ一致した直線偏光成分を有することが好ましい。
【0083】
また、本実施形態の好ましい態様によれば、第1基本素子および第2基本素子は、使用波長の光に対して100度/mm以上の旋光能を有する光学材料により形成されている。また、第1基本素子および第2基本素子は、水晶により形成されていることが好ましい。また、光束変換素子は、第1基本素子と第2基本素子とをほぼ同数含むことが好ましい。また、第1基本素子および第2基本素子は、回折作用または屈折作用を有することが好ましい。
【0084】
また、本実施形態の好ましい態様によれば、第1基本素子は、入射光束に基づいて少なくとも2つの第1領域分布を所定面上に形成し、第2基本素子は、入射光束に基づいて少なくとも2つの第2領域分布を所定面上に形成することが好ましい。また、旋光性を有する光学材料により形成されて、入射光束に基づいて所定の光強度分布のうちの第3領域分布32Cを形成するための第3基本素子50Cと、旋光性を有する光学材料により形成されて、入射光束に基づいて所定の光強度分布のうちの第4領域分布32Dを形成するための第4基本素子50Dとをさらに備えていることが好ましい。
【0085】
また、本実施形態では、入射光束に基づいて、該入射光束の断面形状とは異なる形状の所定の光強度分布を所定面上に形成するための光束変換素子50が、所定面上に所定の光強度分布を形成するための、回折面または屈折面を備え、所定の光強度分布は、所定面における所定点を中心とする所定の輪帯領域である所定輪帯領域の少なくとも一部に分布し、所定輪帯領域を通過する光束変換素子からの光束は、所定輪帯領域の円周方向を偏光方向とする直線偏光を主成分とする偏光状態を有している。
【0086】
このような構成により、本実施形態では、開口絞りにおいて大きな光量損失が発生する従来技術とは異なり、光束変換素子としての回折光学素子50の回折作用と旋光作用とにより、光量損失を実質的に発生させることなく、周方向偏光状態の輪帯状の二次光源31を形成することができる。
【0087】
本実施形態の好ましい態様によれば、所定の光強度分布は、多極形状または輪帯状の外形を有する。また、光束変換素子は、旋光性を有する光学材料により形成されることが好ましい。
【0088】
また、本実施形態の照明光学装置は、光源からの光束に基づいて被照射面を照明する照明光学装置であって、照明光学装置の照明瞳またはその近傍に照明瞳分布を形成するために光源からの光束を変換するために上述の光束変換素子を備えている。このような構成により、本実施形態の照明光学装置では、光量損失を良好に抑えつつ、周方向偏光状態の輪帯状の照明瞳分布を形成することができる。
【0089】
ここで、光束変換素子は、特性の異なる他の光束変換素子と交換可能に構成されていることが好ましい。また、光束変換素子と被照射面との間の光路中に配置された波面分割型のオプティカルインテグレータをさらに備え、光束変換素子は、入射光束に基づいてオプティカルインテグレータの入射面に所定の光強度分布を形成することが好ましい。
【0090】
また、本実施形態の照明光学装置の好ましい態様によれば、所定面上の光強度分布と、所定輪帯領域を通過する光束変換素子からの光束の偏光状態との少なくとも何れか一方は、光源と被照射面との間の光路中に配置される光学部材による影響を考慮して設定される。また、光束変換素子からの光束の偏光状態を、被照射面に照射される光がS偏光を主成分とする偏光状態となるように設定することが好ましい。
【0091】
また、本実施形態の露光装置は、マスクを照明するための上述の照明光学装置を備え、マスクのパターンを感光性基板上に露光する。ここで、所定面上の光強度分布と、所定輪帯領域を通過する光束変換素子からの光束の偏光状態との少なくとも何れか一方は、光源と感光性基板との間の光路中に配置される光学部材による影響を考慮して設定されることが好ましい。また、光束変換素子からの光束の偏光状態を、感光性基板に照射される光がS偏光を主成分とする偏光状態となるように設定することが好ましい。
【0092】
また、本実施形態の露光方法では、上述の照明光学装置を用いてマスクを照明する照明工程と、マスクのパターンを感光性基板上に露光する露光工程とを含んでいる。ここで、所定面上の光強度分布と、所定輪帯領域を通過する光束変換素子からの光束の偏光状態との少なくとも何れか一方は、光源と感光性基板との間の光路中に配置される光学部材による影響を考慮して設定されることが好ましい。また、光束変換素子からの光束の偏光状態を、感光性基板に照射される光がS偏光を主成分とする偏光状態となるように設定することが好ましい。
【0093】
換言すれば、本実施形態の照明光学装置では、光量損失を良好に抑えつつ、周方向偏光状態の輪帯状の照明瞳分布を形成することができる。その結果、本実施形態の露光装置では、光量損失を良好に抑えつつ周方向偏光状態の輪帯状の照明瞳分布を形成することのできる照明光学装置を用いているので、適切な照明条件のもとで任意方向の微細パターンを忠実に且つ高スループットで転写することができる。
【0094】
なお、周方向偏光状態の輪帯状の照明瞳分布に基づく周方向偏光輪帯照明では、被照射面としてのウェハWに照射される光がS偏光を主成分とする偏光状態になる。ここで、S偏光とは、入射面に対して垂直な方向に偏光方向を持つ直線偏光(入射面に垂直な方向に電気ベクトルが振動している偏光)のことである。ただし、入射面とは、光が媒質の境界面(被照射面:ウェハWの表面)に達したときに、その点での境界面の法線と光の入射方向とを含む面として定義される。
【0095】
なお、上述の実施形態では、互いに同じ矩形状の断面を有する4種類の基本素子50A〜50Dをほぼ同数だけ縦横に且つ稠密にランダム配置することにより、周方向偏光輪帯照明用の回折光学素子50を構成している。しかしながら、これに限定されることなく、各基本素子の数、断面形状、種類数、配置などについて様々な変形例が可能である。
【0096】
また、上述の実施形態では、4種類の基本素子50A〜50Dからなる回折光学素子50を用いて、互いに重複することなく且つ互いに離間することなく配列された8つの円弧状領域31A〜31Dにより、光軸AXを中心とした輪帯状の二次光源31を構成している。しかしながら、これに限定されることなく、輪帯状の二次光源を構成する領域の数、形状、配置などについて様々な変形例が可能である。
【0097】
具体的には、
図18(a)に示すように、たとえば4種類の基本素子からなる回折光学素子を用いて、周方向に沿って互いに離間した8つの円弧状領域からなる周方向偏光状態の8極状の二次光源33aを形成することもできる。また、
図18(b)に示すように、たとえば4種類の基本素子からなる回折光学素子を用いて、周方向に沿って互いに離間した4つの円弧状領域からなる周方向偏光状態の4極状の二次光源33bを形成することもできる。なお、これらの8極状の二次光源または4極状の二次光源において、各領域の形状は円弧状に限定されることなく、たとえば円形状や楕円状や扇形状であってもよい。また、
図19に示すように、たとえば4種類の基本素子からなる回折光学素子を用いて、周方向に沿って互いに重複した8つの円弧状領域からなる周方向偏光状態の輪帯状の二次光源33cを形成することもできる。
【0098】
また、周方向に沿って互いに離間した4つまたは8つの領域からなる周方向偏光状態の4極状または8極状の二次光源の他に、
図20(a)に示すように、周方向に沿って互いに離間した6つの領域からなる周方向偏光状態の6極状の二次光源を形成しても良い。また、
図20(b)に示すように、周方向に沿って互いに離間した複数の領域からなる周方向偏光状態の多極状の二次光源と、光軸上の領域からなる非偏光状態または直線偏光状態の中心極上の二次光源とを持つ二次光源を形成しても良い。また、周方向に沿って互いに離間した2つの領域からなる周方向偏光状態の2極状の二次光源を形成しても良い。
【0099】
また、上述の実施形態では、
図11に示すように、4種類の基本素子50A〜50Dを個別に形成し、これらの素子を組み合わせることにより回折光学素子50を構成している。しかしながら、これに限定されることなく、1つの水晶基板に対して例えばエッチング加工を施すことにより各基本素子50A〜50Dの射出側の回折面および入射側の凹凸面を形成し、回折光学素子50を一体的に構成することもできる。
【0100】
また、上述の実施形態では、水晶を用いて各基本素子50A〜50Dを(ひいては回折光学素子50を)形成している。しかしながら、これに限定されることなく、旋光性を有する他の適当な光学材料を用いて各基本素子を形成することもできる。この場合、使用波長の光に対して100度/mm以上の旋光能を有する光学材料を用いることが好ましい。すなわち、旋光能の小さい光学材料を用いると、偏光方向の所要回転角を得るために必要な厚さが大きくなり過ぎて、光量損失の原因になるので好ましくない。
【0101】
また、上述の実施形態では、輪帯状の照明瞳分布(二次光源)を形成しているが、これに限定されることなく、照明瞳またはその近傍に円形状の照明瞳分布を形成することもできる。また、輪帯形状の照明瞳分布や多極形状の照明瞳分布に加えて、たとえば光軸を含む中心領域分布を形成することにより、いわゆる中心極を伴う輪帯照明や中心極を伴う複数極照明を行うこともできる。
【0102】
また、上述の実施形態では、照明瞳またはその近傍において周方向偏光状態の照明瞳分布を形成している。しかしながら、光束変換素子としての回折光学素子よりもウェハ側の光学系(照明光学系や投影光学系)の偏光収差(リターデーション)に起因して偏光方向が変わることがある。この場合には、これらの光学系の偏光収差の影響を考慮した上で、照明瞳またはその近傍に形成される照明瞳分布を通過する光束の偏光状態を適宜設定する必要がある。
【0103】
また、上記の偏光収差に関連して、光束変換素子よりもウェハ側の光学系(照明光学系や投影光学系)中に配置された反射部材の偏光特性に起因して、反射光が偏光方向ごとに位相差を有することがある。この場合においても、反射部材の偏光特性に起因する位相差の影響を考慮した上で、照明瞳またはその近傍に形成される照明瞳分布を通過する光束の偏光状態を適宜設定する必要がある。
【0104】
また、光束変換素子よりもウェハ側の光学系(照明光学系や投影光学系)中に配置された反射部材の偏光特性に起因して、反射部材における反射率が偏光方向により変化することがある。この場合、偏光方向ごとの反射率を考慮して、照明瞳またはその近傍に形成される光強度分布にオフセットをのせること、すなわち各基本素子の数に分布を設けることが好ましい。また、光束変換素子よりもウェハ側の光学系における透過率が偏光方向により変化する場合にも、上記手法を同様に適用することができる。
【0105】
また、上述の実施形態では、回折光学素子50の光源側の面は各基本素子50A〜50Dの厚さの違いにより段差を有する凹凸状になっている。そこで、
図21に示すように、厚さの最も大きい第1基本素子50A以外の基本素子、すなわち第2基本素子50B、第3基本素子50Cおよび第4基本素子50Dの入射側に補正部材36を付設して、回折光学素子50の光源側(入射側)の面も平面状に構成することができる。この場合、旋光性を有しない光学材料を用いて補正部材36を形成することになる。
【0106】
また、上述の実施形態では、照明瞳またはその近傍に形成される照明瞳分布を通過する光束が円周方向に沿った直線偏光成分のみを有する例を示している。しかしながら、これに限定されることなく、照明瞳分布を通過する光束の偏光状態が円周方向を偏光方向とする直線偏光を主成分とする状態であれば、本発明の所要の効果を得ることができる。
【0107】
また、上述の実施形態では、入射光束に基づいて、その断面形状とは異なる形状の光強度分布を所定面上に形成するための光束変換素子として、回折作用を有する複数種類の基本素子からなる回折光学素子を用いている。しかしながら、これに限定されることなく、たとえば各基本素子の回折面と光学的にほぼ等価な屈折面を有する複数種類の基本素子、すなわち屈折作用を有する複数種類の基本素子からなる屈折光学素子を光束変換素子として用いていることもできる。
【0108】
上述の実施形態にかかる露光装置では、照明光学装置によってマスク(レチクル)を照明し(照明工程)、投影光学系を用いてマスクに形成された転写用のパターンを感光性基板に露光する(露光工程)ことにより、マイクロデバイス(半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等)を製造することができる。以下、上述の実施形態の露光装置を用いて感光性基板としてのウェハ等に所定の回路パターンを形成することによって、マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法の一例につき
図22のフローチャートを参照して説明する。
【0109】
先ず、
図22のステップ301において、1ロットのウェハ上に金属膜が蒸着される。次のステップ302において、その1ロットのウェハ上の金属膜上にフォトレジストが塗布される。その後、ステップ303において、上述の実施形態の露光装置を用いて、マスク上のパターンの像がその投影光学系を介して、その1ロットのウェハ上の各ショット領域に順次露光転写される。その後、ステップ304において、その1ロットのウェハ上のフォトレジストの現像が行われた後、ステップ305において、その1ロットのウェハ上でレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことによって、マスク上のパターンに対応する回路パターンが、各ウェハ上の各ショット領域に形成される。その後、更に上のレイヤの回路パターンの形成等を行うことによって、半導体素子等のデバイスが製造される。上述の半導体デバイス製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する半導体デバイスをスループット良く得ることができる。
【0110】
また、上述の実施形態の露光装置では、プレート(ガラス基板)上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得ることもできる。以下、
図23のフローチャートを参照して、このときの手法の一例につき説明する。
図23において、パターン形成工程401では、上述の実施形態の露光装置を用いてマスクのパターンを感光性基板(レジストが塗布されたガラス基板等)に転写露光する、所謂光リソグラフィー工程が実行される。この光リソグラフィー工程によって、感光性基板上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レジスト剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成され、次のカラーフィルター形成工程402へ移行する。
【0111】
次に、カラーフィルター形成工程402では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列されたり、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルターの組を複数水平走査線方向に配列したカラーフィルターを形成する。そして、カラーフィルター形成工程402の後に、セル組み立て工程403が実行される。セル組み立て工程403では、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板、およびカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルター等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。
【0112】
セル組み立て工程403では、例えば、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルターとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。その後、モジュール組み立て工程404にて、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。上述の液晶表示素子の製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する液晶表示素子をスループット良く得ることができる。
【0113】
なお、上述の実施形態では、露光光としてKrFエキシマレーザ光(波長:248nm)やArFエキシマレーザ光(波長:193nm)を用いているが、これに限定されることなく、他の適当なレーザ光源、たとえば波長157nmのレーザ光を供給するF
2レーザ光源などに対して本発明を適用することもできる。さらに、上述の実施形態では、照明光学装置を備えた露光装置を例にとって本発明を説明したが、マスクやウェハ以外の被照射面を照明するための一般的な照明光学装置に本発明を適用することができることは明らかである。
【0114】
また、上述の実施形態において、投影光学系と感光性基板との間の光路中を1.1よりも大きな屈折率を有する媒体(典型的には液体)で満たす手法、所謂液浸法を適用しても良い。この場合、投影光学系と感光性基板との間の光路中に液体を満たす手法としては、国際公開番号WO99/49504号公報に開示されているような局所的に液体を満たす手法や、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる手法や、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する手法などを採用することができる。ここでは、国際公開番号WO99/49504号公報、特開平6−124873号公報および特開平10−303114号公報を参照として援用する。
【0115】
なお、液体としては、露光光に対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系や基板表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なものを用いることが好ましく、たとえばKrFエキシマレーザ光やArFエキシマレーザ光を露光光とする場合には、液体として純水、脱イオン水を用いることができる。また、露光光としてF
2レーザ光を用いる場合は、液体としてはF
2レーザ光を透過可能な例えばフッ素系オイルや過フッ化ポリエーテル(PFPE)等のフッ素系の液体を用いればよい。