【解決手段】本発明の発電システムは、堆肥原料の発酵熱を排気として回収可能な排気回収手段と、前記排気回収手段によって回収された排気中の熱を回収可能な熱回収手段と、前記熱回収手段によって回収された回収熱を利用して発電可能な発電手段と、前記熱回収手段と前記発電手段との間に設けられ、前記回収熱を調整して当該発電手段に所定の熱を供給可能な熱供給手段と、を備える。
前記熱供給手段は、前記排気の温度変化に伴う前記回収熱の変動を吸収し、前記発電手段による発電に必要な前記所定の熱を安定供給することを特徴とする請求項1に記載の発電システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は本発明の実施の形態の発電システム100を示すブロック構成図である。本発明の実施の形態の発電システム100は、堆肥発酵槽10と、排気回収部20と、熱回収部30と、バッファタンク40と、発電部50と、脱臭部60とを有する。なお、本発明の発電システム100は、堆肥原料Tの堆肥化工程において発生する排気Hを外気で希釈せずに直接回収可能な吸引通気式や密閉型の堆肥化施設への適用を推奨する。ここでは、吸引通気式の堆肥化施設を例に説明する。
【0012】
本実施の形態の堆肥発酵槽10は、吸引通気式堆肥化施設に設けられる。堆肥発酵槽10の内部には堆肥原料Tが堆積され、切り返しと後述の排気回収部20による強制通気とにより堆肥化が行われる。堆肥発酵槽10では、堆肥原料Tの堆肥化によって発酵熱が発生する。なお、熱回収後の堆肥化物は、通常の堆肥化物と同様に肥料や土壌改良等の資材として利用できる。
【0013】
本実施の形態の排気回収部20は、ブロワなどの通気装置によって堆肥発酵槽10の底面(堆肥原料T底部)から空気を吸引することで堆肥原料Tの表面から内部へと空気を供給し、堆肥化工程において発生した発酵熱を排気Hとして回収する。このとき回収される排気Hは、高温(60〜70℃)、高湿度(約100%RH)であって、排気Hが持つ熱量の大部分を蒸発潜熱量が占める。
【0014】
本実施の形態の熱回収部30には潜熱回収型熱交換器が用いられる。例えば、プレートフィン型熱交換器が用いられる。熱回収部30は、排気H(60〜70℃)と熱媒体31(ここでは、水)との熱交換を行い、排気Hは自身が持つ熱量によって低温の熱媒体31Lを高温の熱媒体31Hに温度変化させる。ここで、熱回収部30に取り込まれる排気Hは脱臭処理が行われていないので、熱回収部30は、排気H中に含まれるアンモニア腐食に強い耐腐食性材質で構成される。また、熱回収部30には、熱交換過程で発生する結露水Haを排出可能な排出口32が設けられている。なお、熱交換後(熱回収後)の排気Hbはアンモニアなどの悪臭原因物質を含んでいるので、後述の脱臭部60において適正に処理を行う必要がある。また、結露水Haは通常処理を要するほどの悪臭原因物質を含まないが、規定基準を超える場合には適切に処理を行う。
【0015】
本実施の形態のバッファタンク40は、断熱が施された貯留タンクである。バッファタンク40は、所定時間以内(1時間程度以内)の排気Hの温度変化、すなわち蒸発潜熱量(回収熱量)の変動に対応可能な容量に設定される。具体的には、バッファタンク40の容量は、1時間当りの熱媒体31の流量より大きくなるように設定される。例えば、流量が30〜50L/分である場合には、4m
3程度の容量のバッファタンク40が望ましい。そして、熱回収部30とバッファタンク40との間で熱媒体31を常時循環させることで、排気Hからの回収熱量の変動に対応可能となる。回収熱量の変動要因には、外気温度等の気候条件、排気回収部20の通気装置の運転プログラムや堆肥原料Tの状態変化等が挙げられる。バッファタンク40は、1時間程度の回収熱量の変動(すなわち熱媒体31Hの温度変化)を吸収し、熱媒体31Hの温度に急な変化があっても後段の発電部50に安定した温度の熱媒体41Hを供給できるようにする調整機能を有している。
【0016】
本実施の形態の発電部50は、バッファタンク40から送られる高温の熱媒体41Hによって沸点が低い媒体を液体から蒸気に状態変化させ、発生した蒸気によってタービンを駆動させる熱源利用発電(バイナリ発電)を行う。発電部50には、100℃以下の熱源を使用可能なバイナリ発電システムが適用される。バイナリ発電に使用され温度が低下した熱媒体41Lは、バッファタンク40を介して熱回収部30に送られる。
【0017】
本実施の形態の脱臭部60は、排気Hが熱回収部30を通過した後の排気Hbの脱臭処理を行う。
【0018】
次に、
図2を参照して、本発電システムにおける排気Hの温度変化が及ぼす発電量への影響について説明する。
図2は、本発明の実施の形態の発電システムにおける発電データを示す図である。
【0019】
図中の細点線は、堆肥原料Tの発酵熱を含む排気Hの温度を示す。
図2に示すように、排気Hの温度は、数分間隔で大きく変動する場合がある。このような排気温度の急激な低下は、排気回収部20のブロアの運転プログラム等によるもので、基本的に不可避な要因である。このほか前述したように気候変化等の影響も受けるため、平均60〜70℃の排気であっても1日の中で10℃程度温度変化が複数回(10回程度)発生する。
【0020】
図中の破線は、バッファタンク40から発電部50に供給される熱媒体41Hの温度を示す。また、図中の実線は、発電部50の発電量を示す。前述したように、本実施の形態では、熱媒体の1時間当りの流量よりも大きな容量のバッファタンク40を熱回収部30と発電部50との間に介在させることによって、数分〜数時間単位の期間での排気H(発酵熱)の温度変化があっても後段の発電部50での熱利用に影響が及ばないようにしている。
【0021】
したがって、
図2の破線に示すように、バッファタンク40から送り出される熱媒体41Hの温度は、排気Hの温度低下が発生してもその影響(熱媒体41Hの温度低下)が小さい。このため、
図2の実線に示すように、発電部50における発電量は、排気Hの温度低下が発生しても安定した発電量を保つことができる。
【0022】
このように、堆肥化工程において排気Hの温度は一時的に低下するが、熱媒体41Hの温度は排気温度低下による影響が小さく、発電量にいたってはほぼ影響がないことが見てとれる。
【0023】
(実施の形態の効果)
本発明の実施の形態の発電システムによれば、堆肥化特性に対応して堆肥発酵熱の効率的な回収・利用を行うことができる。具体的には、実際の堆肥化において不可避な堆肥原料Tの温度変化や性状変化に起因する堆肥発酵熱の回収熱量の変動に対し、バッファタンク40を介在させることで該変動の影響を最小限にした熱源を発電部50に提供することができる。バッファタンク40は、単に熱源流量を安定化する量的補填機能だけでなく、安定した発電に必要な熱源の温度や熱量といった質的補填機能を備えており、これにより堆肥化において不可避な変動特性を有する堆肥発酵熱を用いても安定した発電を提供することができる。
【0024】
また、バッファタンク40は、所定時間(1時間)当りの熱媒体31の流量よりも大きな容量を有するので、排気Hの温度変化、すなわち回収熱量の変動の影響を緩和させることができる。したがって、熱回収部30からバッファタンク40に供給される熱媒体31Hの温度に急な変化があっても後段の発電部50に安定した温度の熱媒体41Hを供給することができる。
【0025】
また、熱源となる堆肥発酵熱は排気Hとして外気で希釈されることなく回収されるので、熱回収効率が良い。また、堆肥化に不可欠な通気により堆肥発酵熱を回収することができるので、堆肥化施設そのものに大幅な変更を施す必要がない。したがって、本発電システムは、堆肥化過程や堆肥化物の品質に影響を及ぼすことなく、必要機器(熱回収部30、バッファタンク40及び発電部50)の追加で導入可能である。また、発電システムを循環する熱媒体31及び41に水を利用することができるので、ランニングコストを抑えることができる。よって、利用の促進が期待できる。
【0026】
また、排気Hの堆肥発酵熱は熱回収部30で熱交換されて発電部50へと熱源供給されるので、堆肥原料Tや排気Hに含まれるアンモニアと発電部50とが直接触れることがない。したがって、発電部50の腐食等のリスクを大幅に低減できるとともに、熱利用において直接排気を利用する場合よりも施設や作業者への悪影響を大幅に低減することができる。
【0027】
また、発電部50には、低温熱源(100℃以下)で発電可能なバイナリ発電装置を用いる。家畜ふん尿の堆肥化工程では、微生物の分解により堆肥温度が70℃程度まで上昇し、水蒸気とアンモニアを含んだ発酵排気Hが多量に発生するが、工業系の排気に比べ低温であるため、これまで発酵排気H(60〜70℃)を熱源としたバイナリ発電は難しかった。近年開発された低温熱源による発電可能なバイナリ発電装置により、60〜70℃程度の家畜堆肥発酵熱を発電の熱源とすることができ、堆肥を燃焼させてタービンを駆動させる従来方法に比して環境負荷を低減可能なエネルギの実現が可能となる。また、発電部50で得られる電力は通常の電気として使用することが可能なので、堆肥発酵熱を直接熱として利用する場合に比べて汎用性がある。
【0028】
このように、家畜廃棄物の堆肥発酵熱を用いた発電は、太陽光発電等の他の再生可能エネルギと異なり、堆肥製造中、常時・安定的に利用できるエネルギであるので、利用推進を促進させることができる。
【0029】
なお、堆肥発酵熱を発電に用いるため、堆肥原料Tを高温に維持しようとする結果、副次的に良好な堆肥化過程となるので、各種病原菌や雑草種子が死滅し、易分解性有機物が減少した高品質堆肥生産に寄与することができる。さらに、高温堆肥化過程を経ることで堆肥化物の含水率が低下するので、該堆肥化物はオガクズ等に代わる家畜敷料・ふん尿水分調整資材として用途を拡大することができる。
【0030】
なお、本発明の実施の形態の発電システムでは、堆肥発酵熱の回収熱量の変動に対し、該変動の影響が最小限になるよう調整した熱源を発電部50に供給可能な熱供給手段として、バッファタンク40を設けているが、これに限らない。堆肥原料の発酵熱を排気として回収し、回収された排気中の熱を回収し、回収された回収熱を利用して行う発電であって、安定した熱(所定の熱)を発電に供給するために回収熱を調整可能にするものであれば問題ない。例えば、熱回収部30からの熱媒体31Hをヒーターやヒートポンプによって加温調整して発電部50に安定した温度の熱媒体41Hを供給するようにしても、本発明の目的である堆肥発酵熱を用いた安定発電を達成することができる。バッファタンク40は、外部からの追加熱源やセンサによる制御なしに達成できるので、追加熱源が不要な分、システム全体としてエネルギ効率がよく、設備や管理を簡素化し、コスト低減を図ることができる点で、より効率的で有益な熱供給手段であると言える。
【0031】
(実施の形態の変形例)
続いて、
図3を参照して、前述した本発電システム100の熱媒体(水)の循環に着目してさらに効率的な発酵熱の回収・利用を可能とする循環パターンについて説明する。
図3は、本発明の実施の形態の変形例の発電システムを示すブロック構成図であり、(A)循環パターン1、(B)循環パターン2を示す図である。
【0032】
前述の実施の形態では、バッファタンク40は、熱回収部30に低温水31Lを供給し、排気Hとの熱交換により高温水31H(回収熱)を受け取る。そして、後段の発電部50に高温水41H(所定の熱)を供給するとともに、発電部50からの低温水41L(発電に使われなかった熱)を受け取っている。
【0033】
これに対し、変形例では、
図3(A)及び(B)に示すように、排気Hの流路上に熱回収部30と直列に熱回収部35が追加で設けられ、バッファタンク40は熱回収部35を介して発電部50に高温水41H(所定の熱)を供給する。なお、熱回収部35における排気Hと高温水41Hとの熱交換は、すでに熱媒体の水が高温になっており双方の温度差が小さいのでほとんど行われない。熱回収部35では排気Hとの熱交換で高温水41Hが少し加温されて高温水41H+になる。そして、高温水41H+が発電部50に供給される。したがって、熱回収部30に導入される排気は、排気回収部20によって回収された排気Hと同等である。
【0034】
さらに、
図3(A)に示す循環パターン1では、発電部50からの低温水31L(発電に使われなかった熱)はバッファタンク40を経由せずに熱回収部30が直接受け取る。したがって、循環パターン1は、熱回収部30における排気Hとの熱交換により後述する低温水31Lが加温されて高温水31H(回収熱)となる。
【0035】
高温水31Hは、バッファタンク40に貯留された後、高温水41H(所定の熱)としてバッファタンクから送り出され、熱回収部35でさらに加温されて高温水41H+となって発電部50に供給される。ここで、排気Hの温度低下が発生した場合には、高温水31Hは通常よりも低い温度でバッファタンク40に流入することになるので、バッファタンク40の調整機能が作動し、高温水31Hはタンク内の十分な量の高温貯留水との混合によって発電に必要な温度範囲内の高温水41Hとなる。
【0036】
発電部50では熱媒体の温度差を利用したバイナリ発電が行われるので、発電部50から熱回収部30に供給される温水は、温度が下がり低温水31Lとなる。そして、低温水31Lは熱回収部30で排気Hとの熱交換により加温されて高温水31Hとなり、循環を繰り返す。なお、発電部50は、バッファタンク40に導入されて循環する原水が排気Hとの熱交換によって加温されて所定温度(63℃程度)の温水になったら稼動開始する。
【0037】
また、
図3(B)に示す循環パターン2では、熱回収部30に排気Hとの熱交換によって加温された高温水31Hはバッファタンク40に供給されたのち、バッファタンク40、熱回収部35及び発電部50を循環し、熱回収部30を循環しない。したがって、循環パターン2は、熱回収部30における排気Hとの熱交換により原水が加温されて高温水31H(回収熱)となる。
【0038】
高温水31Hは、バッファタンク40に貯留された後、高温水41H(所定の熱)としてバッファタンクから送り出され、熱回収部35でさらに加温されて高温水41H+となって発電部50に供給される。ここで、排気Hの温度低下が発生した場合には、高温水31Hは通常よりも低い温度でバッファタンク40に流入することになるので、バッファタンク40の調整機能が作動し、高温水31Hはタンク内の十分な量の高温貯留水との混合によって発電に必要な温度範囲内の高温水41Hとなる。
【0039】
発電部50では熱媒体の温度差を利用したバイナリ発電が行われるので、発電部50からバッファタンク40に供給される温水は、温度が下がり低温水41Lとなる。そして、低温水41Lはバッファタンク40に供給される。ここでは、バッファタンク40の温水が熱回収部35及び発電部50を循環する。なお、発電部50は、熱回収部30に導入されて循環する原水が排気Hとの熱交換によって加温されて所定温度(63℃程度)の温水になったら稼動開始する。
【0040】
(実施の形態の変形例の効果)
実施の形態の変形例の発電システムによれば、前述した実施の形態と基本概念が同じなので同等の効果を得ることができるとともに、バッファタンク40と発電部50との間に熱回収部35を設けることでより効率的な堆肥発酵熱の回収・利用を提供することができる。具体的には、バッファタンク40から発電部50に通じる配管が室外に設けられたり長い場合には、発電部50に必要な高温水41H(所定の熱)が当該配管を流れる間に温度低下を招くといった懸念があるが、熱回収部35を介在させることで発電部50に供給する前に加温することが可能となり、当該懸念を払拭するとともに適切な熱量を発電部50に提供することができる。
【0041】
また、発電部50への供給直前に高温水41(所定の熱)が熱回収部35で多少加温されることになるので、前述のような懸念がなければバッファタンク40から発電部50に直接供給する場合(高温水41H)よりも高温の温水(高温水41H+)を発電部50に供給できる。よって、発電部50における発電をさらに安定したものにすることができる。
【0042】
また、循環パターン1は熱回収部30及び熱回収部35を循環経路に含めているので、循環パターン2の熱回収部35のみを循環経路に含める場合よりも循環する温水温度が安定する。したがって、より効率的な堆肥発酵熱の回収・利用を提供することができる。
【0043】
なお、本発明は上述した実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0044】
例えば、上述した実施の形態では、家畜ふん尿等の畜産廃棄物の堆肥化処理を例に挙げたが、一般廃棄物処理や産業廃棄物にも適用することができる。