【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成26年度、独立行政法人科学技術振興機構、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【解決手段】第1表面および第2表面を有し、第1表面と第2表面とを連通させる細孔を有する多孔質な被検体を保持するホルダと、第1表面で細孔と連通するとともに、ガス供給口およびガス排出口を具備する第1チャンバと、ガス供給口に混合ガスのサンプルを供給するガス供給部と、第2表面で細孔と連通するとともに、細孔を通過して混合ガスから分離された透過ガスが導入される第2チャンバと、第2チャンバから第1経路を介して導入される透過ガスの組成を測定する測定部と、を具備する、細孔径評価装置。
更に、前記細孔を通過せずに前記第1チャンバに残留する非透過ガスを採集し、前記非透過ガスの組成を測定する工程、を有する、請求項10または11に記載の細孔径評価方法。
前記透過ガスの組成から前記透過ガスに含まれる2種以上のガス成分の透過率を算出し、前記透過率にNormalized Knudsen−based Permeance法を適用して、前記被検体の細孔径に関する情報をin−situで取得する、請求項15に記載の細孔径評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る細孔径評価装置は、第1表面および第2表面を有し、第1表面と第2表面とを連通させる細孔を有する多孔質な被検体を保持するホルダと、第1表面で上記細孔と連通するとともに、ガス供給口およびガス排出口を具備する第1チャンバと、ガス供給口に混合ガスのサンプルを供給するガス供給部と、第2表面で上記細孔と連通するとともに、上記細孔を通過して混合ガスから分離された透過ガスが導入される第2チャンバと、第2チャンバから第1経路を介して導入される透過ガスの組成を測定する測定部とを具備する。透過ガスの組成を含む測定結果を、例えば備え付けの計算機で解析することにより、被検体の細孔径に関する情報を取得することができる。
【0015】
また、本発明の実施形態に係る細孔径評価方法は、(i)第1表面および第2表面を有し、第1表面と第2表面とを連通させる細孔を有する多孔質な被検体をホルダに保持する工程と、(ii)第1表面で上記細孔と連通する第1チャンバに、混合ガスのサンプルを供給する工程と、(iii)上記細孔を通過して混合ガスから分離された透過ガスを、第2表面で上記細孔と連通する第2チャンバから採集する工程と、(iv)採集された透過ガスの組成を測定する工程とを具備する。ここで、透過ガスを採集する工程は、第2チャンバから測定部に透過ガスを移動させる工程を全般的に包含する。
【0016】
上記装置および方法は、多孔質材料により混合ガスから分離された透過ガスの組成を測定する点に大きな特徴を有する。通常、細孔径の評価を行う場合、純ガスをプローブとして用い、透過ガスの流量および/または圧力から細孔径を推定することが一般的である。2種以上のガス成分を含む混合ガスを用いると、透過ガスの流量および/または圧力を測定しても細孔径を推定することが困難となるためである。
【0017】
一方、供給ガスとして混合ガスを用いる場合でも、透過ガスの組成に着眼すれば、細孔径を推定することが可能である。また、透過ガスの組成に着眼する場合、2種以上のガス成分を含む混合ガスをプローブとして用いることが可能であり、細孔径評価に要する手間と時間を大幅に削減することができる。更に、混合ガスを用いることで、各ガス成分の濃度を低く設定することが可能となり、各ガス成分の状態を理想気体に近づけることができる。以上より、迅速かつ正確に、多孔質材料のサブナノメートルサイズの細孔径に関する情報を得ることができる。なお、第1チャンバ内の圧力は、例えば10〜900kPa程度に制御すればよく、90〜300kPa程度に制御することが望ましい。
【0018】
上記装置および方法では、ガスをプローブとして用いることから、例えば1.0nm未満の領域の細孔径に関する詳細な知見を得ることが可能であり、PALSやナノパームポロメトリーでは測定が困難な0.5nm未満の領域の細孔径であっても測定が可能である。
【0019】
上記装置は、供給ガスである混合ガスを、ガス供給口に供給せずに、上記測定部に導入する第2経路を有してもよい。すなわち、上記方法では、透過ガスの組成だけでなく、混合ガスの組成を測定してもよい。これにより、多孔質材料を透過させる前の混合ガスの正確な組成を取得することができるため、各ガス成分の透過率をより正確に測定することができる。
【0020】
なお、2種以上の純ガスを所定の流量でそれぞれ合流部に供給し、合流させて混合ガスを調製する場合には、混合ガスの組成を供給時の流量から推定可能である。ただし、混合ガスおよび透過ガスの組成をそれぞれガスクロマトグラフィーのような測定装置を用いて測定し、その測定結果を用いて透過率を算出することがより望ましい。
【0021】
同様に、上記装置は、上記細孔を通過せずにガス排出口から排出される非透過ガスを上記測定部に導入する第3経路を有してもよい。すなわち、上記方法では、透過ガスの組成だけでなく、非透過ガスの組成を測定してもよい。非透過ガスの正確な組成をパラメータに加えることで、各ガス成分の透過率を更に正確に算出することができる。
【0022】
被検体の形状は、特に限定されず、例えば平板状、筒状、カップ状などであればよい。強度が高く、取り扱いが容易である点では、筒状が好ましい。被検体が、例えば、第1チャンバ内に収容された筒状体であるとき、筒状体の外表面を第1表面とし、筒状体の内表面を第2表面とすることで、内表面で囲まれた中空部が第2チャンバの少なくとも一部として機能する。なお、筒状体の外表面を第2表面とし、筒状体の内表面を第1表面とすることも可能である。この場合、内表面で囲まれた中空部は、第1チャンバの少なくとも一部として機能することになる。
【0023】
供給ガスである混合ガスの組成、圧力および流量の少なくとも1つを調節することで、様々な条件で、ガスの透過率を測定することが可能になる。よって、ガス供給部は、混合ガスの組成、圧力および流量の少なくとも1つを制御する第1制御部を具備することが望ましい。このような制御部をガス供給部に設けることで、細孔径評価装置の操作が容易となる。混合ガスの組成、圧力および/または流量は、どのような機構で制御してもよい。第1制御部としては、例えば各ガス成分の供給源であるガスボンベに取り付けられた調圧弁および/またはマスフローコントローラ(MFC)を用いることができる。
【0024】
透過率の測定は、複数の温度で行うことが望ましい。よって、上記装置は、第1チャンバ内の混合ガスの温度を制御する第2制御部を具備することが好ましい。第2制御部としては、例えば第1チャンバに取り付けられたヒータを用いることができる。
【0025】
透過率の測定においては、第1チャンバ内の圧力を所定圧力に維持することが望ましい。よって、上記装置は、第1チャンバ内の圧力を制御する第3制御部を具備することが望ましい。例えば、非透過ガスを測定部に導入する第3経路に、背圧弁を設けることにより、第1チャンバ内の圧力を所定圧力に正確に合わせることが可能である。この場合、第3経路に設けた背圧弁が第3制御部として機能する。
【0026】
透過率の測定においては、第2チャンバ内の圧力を制御できることが望ましい。例えば、第2チャンバ内の圧力を低くすることで、透過率の小さいガス成分の透過が促進される。よって、上記装置は、第2チャンバ内の圧力を制御する第4制御部を具備することが望ましい。第4制御部としても背圧弁を用いることができる。
【0027】
第2チャンバ内にスウィープガスを流通させることにより、混合ガスからの透過ガスの分離を促進してもよい。よって、上記装置は、第2チャンバにスウィープガスを導入するスウィープガス導入部を具備してもよい。スウィープガスとしては、混合ガスの構成成分以外のガスを用いればよいが、アルゴンなどの希ガスを用いることが好ましい。
【0028】
透過ガスの組成から、被検体の細孔径に関する情報を取得することが可能である。例えば、透過ガスの組成から透過ガスに含まれる2種以上のガス成分の透過率を算出することができる。得られた透過率にNKP法を適用すれば、被検体の細孔径に関する情報を取得することができる。このような情報の取得はin−situで行うことが望ましい。なお、上記情報の取得に必要な計算は、細孔径評価装置に備え付けの計算機もしくはコンピュータで行えばよい。
【0029】
次に、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る細孔径測定装置について説明する。
図1は、細孔径測定装置の要部において、ガスAとガスBを含む混合ガスの一部が多孔質材料である被検体の膜を透過する現象を概念的に示している。ここでは、混合ガスが2種のガス成分を含む場合を示すが、混合ガスが3種以上のガス成分を含む場合も同様である。
【0030】
ガスAとガスBを含む混合ガスである供給ガス(FG:Feed gas)は、第1チャンバ10の内部に供給され、その一部が被検体(膜)30を透過し、第2チャンバ20の内部に移動する。被検体30は、第1表面31および第2表面32を有し、かつ第1表面31と第2表面32とを連通させる細孔33を有する。よって、外観上は、被検体30により、第1チャンバ10と第2チャンバ20とが隔絶されているが、微視的に見ると、第1チャンバ10と第2チャンバ20とは細孔33により連通している。
【0031】
ガスAの動的分子径がガスBのそれより小さく、被検体30がガスAを透過させるがガスBを透過させない小さな細孔を有する場合、ガスAの透過率はガスBの透過率より大きくなる。このように、透過ガス(PG:Permeategas)および非透過ガス(RG:Retentategas)の組成は、いずれもガスAおよびガスBが透過し得るサイズの細孔径分布を反映している。
【0032】
図2は、本発明の一実施形態に係る細孔径評価装置の一例の構成を示すブロック図である。ここでは、一例として、筒状の被検体30を具備し、被検体30を内部に収容する筒状の第1チャンバ10を具備する細孔径評価装置100について説明する。図示例の場合、第1チャンバ10の内部には、筒状の被検体30を固定するための一対のホルダ34が備えられている。
図3Aは、ホルダに保持された被検体30の構成を示す一部断面図である。
【0033】
なお、被検体の形状は、筒状に限られず、どのような形状でもよい。第1チャンバの形状も限定されず、被検体の形状に適合させればよい。例えば、
図3Bに示すように、平板状の被検体30と、第1チャンバ10と、第2チャンバ20と、を具備する装置を用いてもよい。この場合、平板状の被検体30は、各チャンバの開口を塞ぐように、第1チャンバおよび/または第2チャンバに設けられたホルダ34に保持すればよい。
【0034】
第1チャンバ10は、ガス供給口11およびガス排出口12を具備する。ガス供給口11には、混合ガス(供給ガスFG)のサンプルがガス供給部40から供給される。
【0035】
図3Aに示すような筒状体の被検体30の場合、その外表面が、第1チャンバ10と連通する第1表面31を形成している。混合ガスの一部は、第1表面31から細孔33に入り、細孔33を通過して、被検体30の内表面である第2表面32から中空部である第2チャンバ20に透過ガス(PG)として拡散する。
【0036】
透過ガスは、第2チャンバ20から、被検体30の一方の端部に連通するように接続された第1経路13を通って、透過ガスの組成を測定する測定部50へと導入される。被検体30の他方の端部は、マスフローコントローラー(MFC)65を介して、スウィープガス供給部60と連通しており、スウィープガスを被検体30の中空部(第2チャンバ20)に流通させることができるようになっている。スウィープガスとともに透過ガスを測定部50に導入することで、透過ガスが少ない場合でも組成の測定が容易になる。
【0037】
ガス供給部40は、複数種のガス(図示例では、Gas A、Gas B、Gas C)を、それぞれ調圧弁42(42a、42b、42c)およびMFC45(45a、45b、45c)を介して合流部41に送るように構成されている。合流部41で複数種のガス成分が混合され、混合ガスが供給ガス(FG)としてガス供給口11に導入される。調圧弁42により、供給された混合ガスの圧力が制御され、MFC45により、混合ガスの流量が制御される。すなわち、調圧弁42およびMFC45は、第1制御部を構成している。なお、第1制御部により、供給される混合ガスの組成、圧力および/または流量を変更し、様々な条件でガスの透過率を測定し、測定データを解析することにより、混合ガスの濃度分極の影響を補正することが可能である。
【0038】
細孔径評価装置100は、供給ガスである混合ガスを、ガス供給口11に供給せず、測定部50に導入するための第2経路14を更に有する。これにより、合流部41で調製された混合ガスの正確な組成を測定することが可能になる。
【0039】
第1チャンバ10が具備するガス排出口12からは、細孔33を通過せずに第1チャンバ10の内部に滞留している非透過ガス(RG)が排出される。ガス排出口12から排出された非透過ガスは、第3経路15を通って測定部50に導入されるようになっている。第3経路15には、背圧弁16が設けられており、背圧弁16により第1チャンバ10内の圧力が制御される。背圧弁16で制御しながらガス排出口12から非透過ガス(RG)を排出することで、第1チャンバ10内の圧力が一定に維持され、供給ガス(FG)が混合ガスである場合でも、第1チャンバ10内の混合ガスの組成を一定に維持することが可能となる。このとき、ガス供給部40の調圧弁42は、背圧弁16の設定圧力以上の圧力で混合ガスを供給するように設定される。
【0040】
仮に第3経路15を完全に閉じた場合、ガスの透過により組成が逐次変化する混合ガスに、新しい供給ガスが追加されることになり、混合ガスの組成が安定しない。ただし、供給ガスが純ガスである場合には、供給ガスと非透過ガスの組成は常に同じであるため、第3経路15を完全に閉じてもよい。この場合、ガス供給部40の調圧弁42により、第1チャンバ10の圧力を制御すればよい。
【0041】
第1経路13、第2経路14および第3経路15は、測定部50が備えるラインセレクタ53に接続されている。ラインセレクタ53の動作により、第1経路13、第2経路14および第3経路15から1つが選ばれ、測定部50が備えるガス分析装置55と接続される。残りの2つは、マスフローメータ(MFM)を介して外部にベントされる。すなわち、上記装置では、透過ガス、混合ガスおよび非透過ガスのいずれかを任意に選択して、その組成を測定することができるようになっている。ガス分析装置55で取得された組成に関するデータは、付属のコンピュータ57に送信される。
【0042】
コンピュータ57では、透過ガス、混合ガス(供給ガス)および/または非透過ガスの組成から各ガス成分の透過率が算出される。続いて、透過率にNKP法が適用され、被検体の細孔径に関する情報がin−situで取得される。
【0043】
第1チャンバ10は、ヒータ46により温度制御が可能な恒温室47の内部に収容されている。ヒータ46は、第1チャンバ10の内部の混合ガスの温度を任意に制御する第2制御部として機能する。第1チャンバ10の温度を制御することで、被検体30の温度も同様に制御される。ヒータ46の温度は、例えばコンピュータ57により制御される。混合ガスは、例えば螺旋状の管路49を通過する間に恒温室47と同じ温度になり、その後、ガス供給口11に到達する。なお、ガスの昇温が十分に行えるのであれば、螺旋状の管路49は不要である。
【0044】
第2チャンバ20内の圧力は、第1経路13の途中に第4制御部として設けた背圧弁17により制御することが可能である。例えば透過ガスの量が少ない場合には、背圧弁17の設定圧力を低くすることで、ガスの透過が促される。透過率の低いガス成分を用いる場合でも、複数種のガス成分が混合されているため、ガス分析装置55には、例えば大気圧のガスを導入することができる。よって、透過ガスに含まれるガス成分の濃度が微量であっても、その濃度を容易に測定することができる。
【0045】
細孔径評価装置100では、透過ガスの流量を流量計で測定したり、第2チャンバ20内の圧力を圧力計で測定したりしても、被検体30の細孔径を評価することはできない。ガス分析装置55により、透過ガスの組成を分析する必要がある。ガス分析装置55としては、ガスクロマトグラフィーを用いることができる。
【0046】
以下、実施例に基づいて、細孔径評価装置について更に詳細に説明する。
《実施例1》
(i)被検体の作製
外径6mm、長さ70mmの筒状の多孔質アルミナ基材を準備した。この基材の外表面に、対向拡散CVD法により、分子篩能を有する多孔質アモルファスシリカ膜を形成し、筒状体である被検体を作製した。なお、基材自体は、サブナノメートルオーダーの細孔をほとんど有さず、分子篩能を有さない。
【0047】
次に、被検体を、
図2に示すような細孔径評価装置の筒状の第1チャンバの内部に、一対のホルダで固定した。これにより、多孔質アモルファスシリカ膜の外表面は、第1表面として機能し、基材との界面である多孔質アモルファスシリカ膜の内表面は、第2表面として機能する。
【0048】
(ii)ガス透過率の測定
第1チャンバのガス供給口に、H
2ガスおよびSF
6ガスの2種類のガス成分を含む混合ガスを供給し、各ガス成分の透過率(permeance)を測定した。ここでは、透過率の温度依存性を確認するために、50〜300℃の温度領域で、50℃刻みで測定した。
【0049】
H
2ガスおよびSF
6ガスの流量を、それぞれ800mL/minに制御し、第1チャンバのガス供給口に供給した。ガス流量は、MFC45(MODEL 3660 SERIES、Kofloc製)により制御し、流量を高精度精密膜流量計(SF−2U、HORIBA.Ltd製)で確認した。第1チャンバ内の混合ガスの圧力は0.12MPaに調整した。供給される混合ガス(FG)の圧力は、調圧弁42(Model 6600B(0.03〜0.6MPa)、Kofloc製)により制御し、第1チャンバ内の圧力は、背圧弁16(TESCOM Model No. 44−2363−24−009(0.0〜1.72 MPa)により制御した。
【0050】
被検体の中空部(第2チャンバ)には、スウィープガスとしてArガスを100mL/minの流量で供給した。第2チャンバ内の圧力は大気圧(0.1MPa)になるように制御した。
【0051】
被検体を透過した透過ガスとスウィープガスとの混合ガスの組成を、3種類の熱伝導度検出ユニットA〜C(TCD−A〜C)を搭載したMicro−GC(ジーエルサイエンス株式会社製)で分析した。ここでは、TCD−AとTCD−Cを用いた。
TCD−A:カラムMolsieve 5A(10m)、 キャリアガスAr
TCD−B:カラムMolsieve 5A(10m)、 キャリアガスHe
TCD−C:カラムPoraPLOT Q(10m)、 キャリアガスHe
【0052】
得られた結果から、各ガス成分の透過率(Permeance)を計算した。
透過率Q(mol/m
2・s・Pa)は、以下の式で表される。
Q=(V/t)/(S・P)
V/t(mol/s):ガスの透過流量
S(m
2):膜の見かけ面積(S=0.006×0.07π=0.00132m
2)
P:第1チャンバと第2チャンバの圧力差
【0053】
例えば200℃での測定では、第1経路を通るガス流量は22.44mL/minであり、Micro−GCの分析結果から得られたH
2ガス濃度は18.3%、SF
6ガス濃度は0.00587(残部はAr)であったことから、以下が導かれる。
【0054】
H
2ガスの透過流量
=22.44×18.3/(18.3+0.00587)
=22.4(mL/min)
=1.508×10
-5(mol/s)
【0055】
SF
6ガスの透過流量
=22.44×0.00587/(18.3+0.00587)
=0.00718(mL/min)
=4.827×10
-9(mol/s)
【0056】
また、各ガス成分の第1チャンバと第2チャンバの分圧差を求めたところ、H
2ガスの分圧差は53571Pa、SF
6ガスの分圧差は61714Paであった。以上より、以下が導かれる。
【0057】
H
2ガスの透過率Q(H
2)
=1.508×10
-5/(0.00132×53571)
=2.13×10
-7(mol/m
2・s・Pa)
【0058】
SF
6ガスの透過率Q(SF
6)
=4.827×10
-9/(0.00132×61714)
=5.93×10
-11(mol/m
2・s・Pa)
【0059】
なお、第1チャンバ内の分圧は、供給ガス(FG)におけるH
2ガスの分圧(PH
2(A))およびSF
6ガスの分圧(PSF
6(A))と、非透過ガス(RG)におけるH
2ガスの分圧(PH
2(B))およびSF
6ガスの分圧(PSF
6(B))との平均から求めた。第2チャンバ内の分圧は、透過ガス(PG)におけるH
2ガスの分圧(PH
2(C))およびSF
6ガスの分圧(PSF
6(C))から求めた。
同様の計算を各温度について行った。
実施例1で得られたガスの透過率を表1に示す。
【0061】
《比較例1》
第1チャンバのガス供給口に、H
2ガスの純ガスを供給し、透過性を測定した。第1チャンバ内の力は調圧弁42で0.3MPaに調整した。第2チャンバ内の圧力は大気圧(0.1 MPa)に調整し、透過ガスの流量を測定した。50〜300℃の温度領域で、50℃刻みで測定した。スウィープガスは用いなかった。
【0062】
次に、第1チャンバのガス供給口に、SF
6ガスの純ガスを供給し、透過性を測定した。SF
6の透過率は非常に小さいため、H
2と同様の測定ができなかった。そこで、第2チャンバの内部をポンプで引いて真空にし、第2チャンバ内の圧力の変化から透過ガスの流量を計算した。50〜300℃の温度領域で、50℃刻みで測定した。スウィープガスは用いなかった。
得られた結果から、各ガス成分の透過率を計算した。
比較例1で得られたガスの透過率を表2に示す。
【0064】
次に、表1および表2に示した透過率を、温度の逆数に対してプロットし、アレニウスプロットを作成した。結果を
図4に示す。
Q(H
2)pureおよびQ(SF
6)pureは、比較例1のデータ(表2)から導かれるプロットであり、Q(H
2)mixおよびQ(SF
6)mixは、実施例1のデータ(表1)から導かれるプロットである。
図4に示す通り、混合ガスを用いた場合と、純ガスを用いた場合のアレニウスプロットは、概ね一致するものの、相違が見られた。このような相違は、混合ガスを用いた場合には、ガスが理想気体に近づくためであると考えられる。
【0065】
次に、得られた透過率にNKP法を適用して、被検体の多孔質アモルファスシリカ膜が有する細孔径の推定を行った。計算的に求められるNKPであるfNKPは、以下の式(1)で定義される。また、ガスの透過率の測定値から求められるfNKPは、以下の式(2)で定義される。
【0068】
式(1)および式(2)中の略号は以下を表している。
d
k,i :i成分の動的分子径
d
k,H2 :H
2の動的分子径
d
p :被検体の細孔径
P
i :i成分の透過率
P
s :s成分の透過率
M
i :i成分の分子量
M
s :s成分の分子量
また、表3に主なガスの動的分子径を示す。
【0070】
上記2式から細孔径を推定することができる。まず、式(2)のfNKP値を、H
2およびSF
6のそれぞれについて計算する。次に、式(2)で求めたfNKP値と、式(1)のfNKP値との誤差(単純な数値の差)の二乗和を最小化するdp値(dpがフィッティングパラメーターである)を求める。これらの計算を、被検体である多孔質アモルファスシリカ膜の透過率の200℃の結果に適用した。結果を
図5に示す。
【0071】
純ガスおよび混合ガスのdp値は、それぞれ0.589nmおよび0.590nmであった。これらの結果から、混合ガスで多孔質な被検体の細孔径を評価する手法の有効性が示された。
【0072】
透過率の測定を開始してから、dp値を得るまでに要した時間を、混合ガスを用いた場合と、純ガスを用いた場合とで比べたところ、諸事情を勘案すると、約1/10程度に時間短縮できるという見込みが得られた。