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特開2017-59770半導体装置および半導体装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-59770(P2017-59770A)
(43)【公開日】2017年3月23日
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/331 20060101AFI20170303BHJP
   H01L 29/732 20060101ALI20170303BHJP
   H01L 21/8249 20060101ALI20170303BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20170303BHJP
【FI】
   H01L29/72 P
   H01L27/06 321B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-185720(P2015-185720)
(22)【出願日】2015年9月18日
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
【テーマコード(参考)】
5F003
5F048
【Fターム(参考)】
5F003BA27
5F003BA29
5F003BB02
5F003BB90
5F003BE02
5F003BE90
5F003BJ15
5F003BP11
5F048AC05
5F048BE02
5F048BG13
5F048CA01
5F048CA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】結晶欠陥の発生を抑制しつつ不純物プロファイルの変更を伴うことなく高hFE特性を実現することができる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置100は、N型の半導体基板10の表面に形成されたP型のPウェル12を含んで構成されるコレクタと、Pウェル12内に設けられたN型のNウェル14を含んで構成されるベースと、Nウェル14に形成された凹部14Aの表面に設けられたP型を有するエミッタ31と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電型を有する第1のウェルを含んで構成されるコレクタと、
前記第1のウェル内に設けられた前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する第2のウェルを含んで構成されるベースと、
前記第2のウェルに形成された凹部の表面に設けられた前記第1の導電型を有するエミッタと、
を含む半導体装置。
【請求項2】
第1の導電型を有する第1のウェルを含んで構成されるコレクタと、
前記第1のウェル内に設けられた前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する複数の第2のウェルを含んで構成されるベースと、
前記複数の第2のウェルの各々に形成された凹部の各々の表面に設けられた前記第1の導電型を有するエミッタと、
を含む半導体装置。
【請求項3】
前記第2のウェルは、表面からの深さ位置が深くなる程、不純物濃度が低下する濃度分布を有する
請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1のウェルに設けられたMOSFETおよび前記第2のウェルに設けられたMOSFETの少なくとも一方を更に含む
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体基板に第1の導電型を有する第1のウェルを形成する工程と、
前記第1のウェル内に前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する第2のウェルを形成する工程と、
前記第2のウェルの内側領域を含む前記半導体基板の表面の所定位置に絶縁体からなる素子分離部を形成する工程と、
前記第2のウェルの内側領域に形成された前記素子分離部を除去することにより、前記第2のウェルの内側領域に凹部を形成する工程と、
前記凹部の表面に前記第1の導電型を有するエミッタを形成する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1のウェルの表面に、前記第1のウェルの不純物濃度よりも高い不純物濃度の第1の導電型を有するコレクタコンタクト部を形成する工程と、
前記第2のウェルの表面に、前記第2のウェルの不純物濃度よりも高い不純物濃度の第2の導電型を有するベースコンタクト部を形成する工程と、
を更に含む
請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
半導体基板に第1の導電型を有する第1のウェルを形成する工程と、
前記第1のウェル内に前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する複数の第2のウェルを形成する工程と、
前記複数の第2のウェルの各々の内側領域を含む前記半導体基板の表面の所定位置に絶縁体からなる素子分離部を形成する工程と、
前記複数の第2のウェルの各々の内側領域に形成された前記素子分離部の各々を除去することにより、前記複数の第2のウェルの各々の内側領域にそれぞれ凹部を形成する工程と、
前記凹部の各々の表面に前記第1の導電型を有するエミッタを形成する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1のウェル内に、前記複数の第2のウェルに接する前記第2の導電型を有する半導体領域を形成する工程と、
前記半導体領域の表面に前記半導体領域の不純物濃度よりも高い不純物濃度の第2の導電型を有するベースコンタクト部を形成する工程と、
前記第1のウェルの表面に、前記第1のウェルの不純物濃度よりも高い不純物濃度の第1の導電型を有するコレクタコンタクト部を形成する工程と、
を更に含む
請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)プロセスを用いて半導体基板にMOSFET(MOS Field Effect Transistor)とBJT(Bipolar junction transistor、バイポーラジャンクショントランジスタ)とを混載した半導体装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、CMOS部における第1の導電型を有するソース・ドレイン領域をエミッタ領域、第2の導電型を有する第1のウェル領域をベース領域、第1の導電型を有する第2のウェル領域又は第1の導電型を有する半導体基板をコレクタ領域としてそれぞれ形成される縦型バイポーラトランジスタであって、第1のウェル領域上にあってエミッタ領域を規定するように設けられた分離構造を具備したものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−236084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1は、CMOSプロセスを用いて形成されるPNP型のBJTを含む半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【0006】
半導体装置100Xは、N型の半導体基板10の表面に形成されたP型のPウェル12と、Pウェル12の内側に形成されたN型のNウェル14をと、含む所謂WELL in WELL構造を有する。Pウェル12の表面には、Pウェル12の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有するP型のコレクタコンタクト部32が設けられている。コレクタコンタクト部32には、コレクタ電極42が接続されている。Nウェル14の表面には、Nウェル14の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有するN型のベースコンタクト部33が設けられている。ベースコンタクト部33には、ベース電極43が接続されている。また、Nウェル14の表面には、P型のエミッタ31が設けられている。エミッタ31には、エミッタ電極41が接続されている。
【0007】
エミッタ31とベースコンタクト部33との間の領域、ベースコンタクト部33とコレクタコンタクト部32との間の領域およびコレクタコンタクト部32の外側の領域には、それぞれ公知のSTI(Shallow Trench Isolation)プロセスを用いて形成される素子分離部20が設けられている。
【0008】
このように、半導体装置100Xは、Pウェル12をコレクタ、Nウェル14をベース、Nウェル14の表面に設けられたP型半導体領域をエミッタとして含むBJTを有する。また、半導体装置100Xは、Pウェル12に設けられたNチャネルMOSFET(図示せず)およびNウェル14に設けられたPチャネルMOSFET(図示せず)の少なくとも一方を含み得る。コレクタコンタクト部32およびエミッタ31は、PチャネルMOSFETのソース・ドレイン領域を形成するための不純物注入工程において形成され、ベースコンタクト部33は、NチャネルMOSFETのソース・ドレイン領域を形成するための不純物注入工程において形成される。
【0009】
上記の構成を有する半導体装置100Xは、以下の2つの問題を有する。
【0010】
1つ目の問題は、Nウェル14内に形成された素子分離部20によってNウェル14に加えられる応力に起因してNウェル14内に結晶欠陥Dが発生するおそれがある。結晶欠陥DがBJTのコレクタを構成するPウェル12に達すると、キャリアのトラップが起こり、BJTにおいて出力電流(コレクタ電流)の低下やhFE(直流電流増幅率)のバラツキ増大といった問題が生じるおそれがある。ここで、hFEは、エミッタ接地におけるベース電流に対するコレクタ電流の比率であり、一般的には、ベース幅Wが小さい程大きくなり、また、ベース領域の濃度が低い程大きくなることが知られている。結晶欠陥Dの発生を抑制する方法としては、結晶欠陥Dの発生を誘発する素子分離部20を形成する際のトレンチの角度を制御する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、開発期間が長期化するという問題がある。他の方法として、結晶欠陥が生じた箇所を修復するための熱処理工程を追加する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、工程追加によるコストの増大を招くという問題がある。
【0011】
2つ目の問題は、BJTのベースを構成するNウェル14は、イオン注入およびその後の熱処理によって形成されるため、Nウェル14の不純物濃度は、その深さ位置が深くなる程、低くなる。すなわち、Nウェル14の不純物濃度は、Nウェル14の表面側(エミッタ31側)で高く、底面側(コレクタ側)で低くなる。半導体装置100Xの構造によれば、エミッタ−ベース接合部は、不純物濃度が高いNウェル14の表層部に形成されるため、ベース幅Wも大きくなり、高hFE特性を実現することが困難である。
【0012】
高hFE特性を実現させるために、エミッタ31を、高い不純物濃度を維持しながらNウェル14のより深い位置まで分布させることが考えられる。しかしながらこの場合、NチャネルMOSFETのソース・ドレイン領域を形成するためのイオン注入条件とは異なる条件で、エミッタ31を形成することが必要となり、エミッタ31を形成するための専用の工程が必要となり、コストの増大を招く。また、エミッタ31を形成するための専用のイオン注入装置が必要となる。
【0013】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、結晶欠陥の発生を抑制しつつ不純物プロファイルの変更を伴うことなく高hFE特性を実現することができる半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の観点に係る半導体装置は、第1の導電型を有する第1のウェルを含んで構成されるコレクタと、第1のウェル内に設けられた前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する第2のウェルを含んで構成されるベースと、第2のウェルに形成された凹部の表面に設けられた前記第1の導電型を有するエミッタと、を含む。
【0015】
本発明の第2の観点に係る半導体装置は、第1の導電型を有する第1のウェルを含んで構成されるコレクタと、前記第1のウェル内に設けられた前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する複数の第2のウェルを含んで構成されるベースと、前記複数の第2のウェルの各々に形成された凹部の各々の表面に設けられた前記第1の導電型を有するエミッタと、を含む。
【0016】
本発明の第3の観点に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板に第1の導電型を有する第1のウェルを形成する工程と、前記第1のウェル内に前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する第2のウェルを形成する工程と、前記第2のウェルの内側領域を含む前記半導体基板の表面の所定位置に絶縁体からなる素子分離部を形成する工程と、前記第2のウェルの内側領域に形成された前記素子分離部を除去することにより、前記第2のウェルの内側領域に凹部を形成する工程と、前記凹部の表面に前記第1の導電型を有するエミッタを形成する工程と、を含む。
【0017】
本発明の第4の観点に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板に第1の導電型を有する第1のウェルを形成する工程と、前記第1のウェル内に前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する複数の第2のウェルを形成する工程と、前記複数の第2のウェルの各々の内側領域を含む前記半導体基板の表面の所定位置に絶縁体からなる素子分離部を形成する工程と、前記複数の第2のウェルの各々の内側領域に形成された前記素子分離部の各々を除去することにより、前記複数の第2のウェルの各々の内側領域にそれぞれ凹部を形成する工程と、前記凹部の各々の表面に前記第1の導電型を有するエミッタを形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、結晶欠陥の発生を抑制しつつ不純物プロファイルの変更を伴うことなく高hFE特性を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】BJTを含む半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
図3A】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図3B】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図3C】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図4A】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図4B】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図4C】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
図6A】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図6B】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図6C】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図6D】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図7A】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図7B】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図7C】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与し、重複する説明は適宜省略する。
【0021】
[第1の実施形態]
図2は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置100の構成を示す断面図である。半導体装置100は、N型の半導体基板10の表面に形成されたP型のPウェル12と、Pウェル12の内側に形成されたN型のNウェル14と、を含む所謂WELL in WELL構造を有する。
【0022】
Pウェル12の表面には、Pウェル12の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有するP型のコレクタコンタクト部32が設けられている。コレクタコンタクト部32には、コレクタ電極42が接続されている。
【0023】
Nウェル14の表面には、Nウェル14の底部に向けて凹んだ凹部14Aが設けられている。本実施形態に係る半導体装置100において、P型のエミッタ31は、凹部14Aの表面(底面および側面)に沿って設けられている。エミッタ31には、エミッタ電極41が接続されている。
【0024】
Nウェル14の表面の、凹部14Aの外側には、Nウェル14の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有するN型のベースコンタクト部33が設けられている。ベースコンタクト部33には、ベース電極43が接続されている。
【0025】
ベースコンタクト部33とコレクタコンタクト部32との間の領域およびコレクタコンタクト部32の外側の領域には、それぞれ公知のSTI(Shallow Trench Isolation)プロセスを用いて形成される素子分離部20が設けられている。
【0026】
このように、半導体装置100は、Pウェル12をコレクタ、Nウェル14をベース、Nウェル14の表面に形成された凹部の表面に設けられたP型半導体領域をエミッタとして含むPNP型のBJTを有する。また、半導体装置100は、Pウェル12に設けられたNチャネルMOSFET(図示せず)およびNウェル14に設けられたPチャネルMOSFET(図示せず)の少なくとも一方を含み得る。
【0027】
以下に、半導体装置100の製造方法について説明する。図3A図3B図3C図4A図4Bおよび図4Cは、半導体装置100の製造方法を示す断面図である。半導体装置100は、既存のCMOSプロセスを用いて製造される。
【0028】
初めに、N型の半導体基板10の表面にSiO等の絶縁体からなる保護膜(図示せず)を形成した後、Pウェル12を形成するためのレジストマスク(図示せず)を形成する。次に、公知のイオン注入法を用いて、レジストマスクを介して半導体基板10の表面にボロン等のIII族元素を含む不純物を注入する。その後、半導体基板10に熱処理を施す。この熱処理により、半導体基板10に注入された不純物が活性化され、半導体基板10の表面にPウェル12が形成される。次に、半導体基板10の表面のPウェル12の内側に、Nウェル14を形成するためのレジストマスク(図示せず)を形成する。次に、公知のイオン注入法を用いて、レジストマスクを介して半導体基板10の表面にリンやヒ素等のV族元素を含む不純物を注入する。その後、半導体基板10に熱処理を施す。この熱処理により、半導体基板10に注入された不純物が活性化され、半導体基板10の表面のPウェル12の内側にNウェル14が形成される(図3A)。このようにイオン注入およびその後の熱処理によって形成されるNウェル14の不純物濃度は、その深さ位置が深くなる程、低くなる。すなわち、Nウェル14の不純物濃度は、Nウェル14の表面側で高く、底面側で低くなる。
【0029】
次に、公知のSTIプロセスを用いて、半導体基板10の表面の、Nウェル14の内側領域を含む所定位置にSiO等の絶縁体からなる素子分離部20を形成する。素子分離部20は、例えば、半導体基板10とPウェル12との界面を跨ぐ位置およびPウェル12とNウェル14との界面を跨ぐ位置にも形成される(図3B)。STIプロセスは、半導体基板10の表面にトレンチを形成する工程、該トレンチにSiO等の絶縁体を埋め込む工程、および半導体基板10の表面に堆積した余分な絶縁体を公知のCMP(Chemical Mechanical Polishing)プロセスによって除去する工程を含み得る。
【0030】
次に、半導体基板10の表面に、Nウェル14の内側領域に形成された素子分離部20を露出させ、他の部分を覆うレジストマスク201を形成し、レジストマスク201を介してエッチングを行う。これにより、各領域に形成された素子分離部20のうち、Nウェル14の内側領域に形成された素子分離部20を除去し、Nウェル14の表面にNウェル14の底部に向けて凹んだ凹部14Aを形成する(図3C)。凹部14Aの底面において、Nウェル14の不純物濃度が比較的低い部分が露出する。
【0031】
次に、Nウェル14に形成された凹部14Aの表面(底面および側面)およびPウェル12の表面を露出させ且つNウェル14表面のベースコンタクト部33の形成領域を覆うレジストマスク202を形成する。その後、レジストマスク202を介してボロン等のIII族元素を含む不純物をPウェル12の表面および凹部14Aの表面にそれぞれ注入する。これにより、Pウェル12の表面に、Pウェル12の不純物濃度よりも高い不純物濃度のP型のコレクタコンタクト部32を形成し、凹部14Aの表面(底面および側面)に沿ってP型のエミッタ31を形成する(図4A)。なお、コレクタコンタクト部32およびエミッタ31を形成するための上記の不純物注入工程は、Nウェル14に形成されるPチャネルMOSFET(図示せず)のソース・ドレイン領域を形成するための不純物注入工程も兼ねている。すなわち、BJTを構成するコレクタコンタクト部32およびエミッタ31と、PチャネルMOSFETを構成するソース・ドレイン領域が、共通の不純物注入処理で同時に形成される。
【0032】
次に、Nウェル14に形成された凹部14Aの表面(底面および側面)およびPウェル12の表面を覆い且つNウェル14表面のベースコンタクト部33の形成領域を露出させるレジストマスク203を形成する。その後、レジストマスク203を介してリンまたはヒ素等のV族元素を含む不純物をNウェル14の露出部分に注入する。これにより、Nウェル14の表面に、Nウェル14の不純物濃度よりも高い不純物濃度のN型のベースコンタクト部33を形成する(図4B)。なお、ベースコンタクト部33を形成するための上記の不純物注入工程は、Pウェル12に形成されるNチャネルMOSFET(図示せず)のソース・ドレイン領域を形成するための不純物注入工程も兼ねている。すなわち、BJTを構成するベースコンタクト部33と、NチャネルMOSFETを構成するソース・ドレイン領域が、共通の不純物注入処理で同時に形成される。
【0033】
次に、半導体基板10の表面に絶縁膜(図示せず)を形成し、この絶縁膜にエミッタ31、コレクタコンタクト部32およびベースコンタクト部33にそれぞれ達するコンタクトホール(図示せず)を形成し、スパッタ法を用いて各コンタクトホールにアルミニウム等の導体を埋め込み、その後、この導体のパターニングを行う。これにより、エミッタ31に接続されたエミッタ電極41、コレクタコンタクト部32に接続されたコレクタ電極42およびベースコンタクト部33に接続されたベース電極43を形成する(図4C)。
【0034】
本実施形態に係る半導体装置100およびその製造方法によれば、Nウェル14内に形成された素子分離部20は除去されるので、Nウェル14に作用する応力が、図1の構造と比較して緩和され、Nウェル14内における結晶欠陥の発生を抑制することができる。従って、結晶欠陥に起因する、出力電流(コレクタ電流)の低下やhFEのバラツキの増大を防止することができる。
【0035】
また、半導体装置100は、Nウェル14の表面にNウェル14の底部に向けて凹んだ凹部14Aを有し、凹部14Aの表面(底面および側面)に沿ってエミッタ31が設けられている。すなわち、不純物濃度がNウェル14の最表面よりも低い凹部の底面において、エミッタ−ベース接合が形成されているので、エミッタ−ベース接合をNウェル14の最表面に形成する図1の構造と比較して高hFE特性を実現することが可能である。
【0036】
更に、凹部14Aの表面(底面および側面)に沿ってエミッタ31を設けることで、ベース幅Wを小さくすることができるので、エミッタ−ベース接合をNウェル14の最表面に形成する図1の構造と比較して高hFE特性を実現することが可能である。
【0037】
すなわち、本実施形態に係る半導体装置100およびその製造方法によれば、結晶欠陥の発生を抑制しつつ不純物プロファイルの変更を伴うことなく高hFE特性を実現することが可能となる。
【0038】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置100Aの構成を示す断面図である。半導体装置100Aは、N型の半導体基板10の表面に形成されたP型のPウェル12と、Pウェル12の内側に互いに離間して配置されたN型の複数のNウェル14と、を含む所謂WELL in WELL構造を有する。すなわち、本実施形態に係る半導体装置100Aにおいて、Nウェル14は、ラインとスペースとを繰り返すストライプ状のパターンを有する。
【0039】
Pウェル12の表面には、Pウェル12の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有するP型のコレクタコンタクト部32が設けられている。コレクタコンタクト部32には、コレクタ電極42が接続されている。
【0040】
Pウェル12の表面には、複数のNウェル14に接し、Nウェル14の不純物濃度と同程度の不純物濃度を有し且つNウェル14よりも浅いN型半導体領域16を有する。すなわち、N型半導体領域16は、互いに隣接するNウェル14の間および最外周のNウェル14の外側に配置されている。N型半導体領域16は、複数のNウェル14とともに、BJTのベースを構成する。最外周のNウェル14の外側に配置されたN型半導体領域16には、N型半導体領域16およびNウェル14の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有するN型のベースコンタクト部33が設けられている。ベースコンタクト部33には、ベース電極43が接続されている。
【0041】
複数のNウェル14の各々の表面には、Nウェル14の底部に向けて凹んだ凹部14Aが設けられている。すなわち、複数の凹部14Aが、複数のNウェル14のパターンと同様、ラインとスペースとを繰り返すストライプ状のパターンを形成している。P型のエミッタ31は、凹部14Aの各々の表面(底面および側面)およびN型半導体領域16の表面に沿って設けられている。エミッタ31には、エミッタ電極41が接続されている。
【0042】
ベースコンタクト部33とコレクタコンタクト部32との間の領域およびコレクタコンタクト部32の外側の領域には、それぞれ公知のSTIプロセスを用いて形成される素子分離部20が設けられている。
【0043】
このように、半導体装置100Aは、Pウェル12をコレクタ、複数のNウェル14およびN型半導体領域16をベース、複数のNウェル14の各々に形成された凹部14Aの各々の表面に沿って設けられたP型半導体領域をエミッタとして含むPNP型のBJTを有する。また、半導体装置100Aは、Pウェル12に設けられたNチャネルMOSFET(図示せず)およびNウェル14に設けられたPチャネルMOSFET(図示せず)の少なくとも一方を含み得る。
【0044】
以下に、半導体装置100Aの製造方法について説明する。図6A図6B図6C図6D図7A図7Bおよび図7Cは、半導体装置100Aの製造方法を示す断面図である。半導体装置100Aは、既存のCMOSプロセスを用いて製造される。
【0045】
初めに、N型の半導体基板10の表面にSiO等の絶縁体からなる保護膜(図示せず)を形成した後、Pウェル12を形成するためのレジストマスク(図示せず)を形成する。次に、公知のイオン注入法を用いて、レジストマスクを介して半導体基板10の表面にボロン等のIII族元素を含む不純物を注入する。その後、半導体基板10に熱処理を施す。この熱処理により、半導体基板10に注入された不純物が活性化され、半導体基板10の表面にPウェル12が形成される。次に、半導体基板10の表面のPウェル12の内側に、互いに離間して配置された複数のNウェル14を形成するためのレジストマスク(図示せず)を形成する。次に、公知のイオン注入法を用いて、レジストマスクを介して半導体基板10の表面にリンやヒ素等のV族元素を含む不純物を注入する。その後、半導体基板10に熱処理を施す。この熱処理により、半導体基板10に注入された不純物が活性化され、Pウェル14の内側に、互いに離間して配置された複数のNウェル14が形成される。すなわち、複数のNウェル14は、ラインとスペースを繰り返すストライプ状のパターンで形成される(図6A)。このように、イオン注入およびその後の熱処理によって形成される複数のNウェル14の各々の不純物濃度は、その深さ位置が深くなる程、低くなる。すなわち、複数のNウェル14の各々の不純物濃度は、Nウェル14の表面側で高く、底面側で低くなる。
【0046】
次に、公知のSTIプロセスを用いて、半導体基板10の表面の、複数のNウェル14の各々の内側領域を含む所定位置にSiO等の絶縁体からなる素子分離部20を形成する。素子分離部20は、例えば、Pウェル12上の複数のNウェル14の外側および半導体基板10とPウェル12との界面を跨ぐ位置にも形成される(図6B)。STIプロセスは、半導体基板10の表面にトレンチを形成する工程、該トレンチにSiO等の絶縁体を埋め込む工程、および半導体基板10の表面に堆積した余分な絶縁体を公知のCMPプロセスによって除去する工程を含み得る。
【0047】
次に、Pウェル12表面の複数のNウェル14の各々の周辺領域を露出させるレジストマスク204を形成する。その後、レジストマスク204を介してリンまたはヒ素等のV族元素を含む不純物をNウェル14の露出部分に注入する。これにより、Pウェル12の表面においてNウェル14と接し、Nウェル14の不純物濃度と同程度の不純物濃度を有し且つNウェル14よりも浅いN型半導体領域16を形成する(図6C)。すなわち、N型半導体領域16は、互いに隣接するNウェル14の間および最外周のNウェル14の外側に配置される。
【0048】
次に、複数のNウェル14の各々の内側領域に形成された素子分離部20を露出させ、他の部分を覆うレジストマスク205を形成し、レジストマスク205を介してエッチングを行う。これにより、各領域に形成された素子分離部20のうち、複数のNウェル14の各々の内側領域に形成された素子分離部20を除去し、複数のNウェル14の各々の表面にNウェル14の底部に向けて凹んだ凹部14Aを形成する(図6D)。各凹部14Aの底面において、Nウェル14の不純物濃度が比較的低い部分が露出する。
【0049】
次に、複数のNウェル14の各々に形成された各凹部14Aの表面(底面および側面)およびPウェル12の表面を露出させ且つN型半導体領域16表面のベースコンタクト部33の形成領域を覆うレジストマスク206を形成する。その後、レジストマスク206を介してボロン等のIII族元素を含む不純物をPウェル12の表面および各凹部14Aの表面にそれぞれ注入する。これにより、Pウェル12の表面に、Pウェル12の不純物濃度よりも高い不純物濃度のP型のコレクタコンタクト部32を形成し、各凹部14Aの表面(底面および側面)に沿ってP型のエミッタ31を形成する(図7A)。なお、コレクタコンタクト部32およびエミッタ31を形成するための上記の不純物注入工程は、Nウェル14に形成されるPチャネルMOSFET(図示せず)のソース・ドレイン領域を形成するための不純物注入工程も兼ねている。すなわち、BJTを構成するコレクタコンタクト部32およびエミッタ31と、PチャネルMOSFETを構成するソース・ドレイン領域とが、共通の不純物注入処理で同時に形成される。
【0050】
次に、複数のNウェル14の各々に形成された各凹部14Aの表面(底面および側面)およびPウェル12の表面を覆い且つN型半導体領域16表面のベースコンタクト部33の形成領域を露出させるレジストマスク207を形成する。その後、レジストマスク207を介してリンまたはヒ素等のV族元素を含む不純物をN型半導体16表面の露出部分に注入する。これにより、N型半導体領域16の表面に、N型半導体領域16の不純物濃度よりも高い不純物濃度のN型のベースコンタクト部33を形成する(図7B)。なお、ベースコンタクト部33を形成するための上記の不純物注入工程は、Pウェル12に形成されるNチャネルMOSFET(図示せず)のソース・ドレイン領域を形成するための不純物注入工程も兼ねている。すなわち、BJTを構成するベースコンタクト部33と、NチャネルMOSFETを構成するソース・ドレイン領域とが、共通の不純物注入処理で同時に形成される。
【0051】
次に、半導体基板10の表面に絶縁膜(図示せず)を形成し、この絶縁膜にエミッタ31、コレクタコンタクト部32およびベースコンタクト部33にそれぞれ達するコンタクトホール(図示せず)を形成し、スパッタ法を用いて各コンタクトホールにアルミニウム等の金属を埋め込む。これにより、エミッタ31に接続されたエミッタ電極41、コレクタコンタクト部32に接続されたコレクタ電極42およびベースコンタクト部33に接続されたベース電極43を形成する(図7C)。
【0052】
本実施形態に係る半導体装置100Aおよびその製造方法によれば、複数のNウェル14の各々の内側に形成された素子分離部20は除去されるので、Nウェル14に作用する応力が図1の構造と比較して緩和され、Nウェル14内における結晶欠陥の発生を抑制することができる。従って、結晶欠陥に起因する、出力電流(コレクタ電流)の低下やhFE(直流電流増幅率)のバラツキの増大を防止することができる。
【0053】
また、半導体装置100Aは、複数のNウェル14の各々の表面に、Nウェル14の底部に向けて凹んだ凹部14Aを有し、各凹部14Aの表面(底面および側面)に沿ってエミッタ31が設けられている。すなわち、不純物濃度がNウェル14の最表面よりも低い凹部の底面において、エミッタ−ベース接合が形成されているので、エミッタ−ベース接合をNウェル14の最表面に形成する図1の構造と比較して高hFE特性を実現することが可能である。
【0054】
また、凹部14Aの表面(底面および側面)に沿ってエミッタ31を設けることで、ベース幅Wを小さくすることができるので、エミッタ−ベース接合をNウェル14の最表面に形成する図1の構造と比較して高hFE特性を実現することが可能である。
【0055】
すなわち、本実施形態に係る半導体装置100Aおよびその製造方法によれば、結晶欠陥の発生を抑制しつつ不純物プロファイルの変更を伴うことなく高hFE特性を実現することが可能となる。
【0056】
更に、本実施形態に係る半導体装置100Aおよびその製造方法によれば、複数のNウェル14の各々の内側に形成された各凹部14Aの表面に沿ってエミッタ31が設けられているので、第1の実施形態に係る半導体装置100と比較して、エミッタ−ベース接合面積が大きくなり、BJTにおける駆動電流を半導体装置100よりも大きくすることができる。
【0057】
なお、上記の第1および第2の実施形態においては、PNPトランジスタを形成する場合を例示したが、上記の第1および第2の本実施形に係る半導体装置の構造をNPNトランジスタに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 半導体基板
12 Pウェル
14 Nウェル
14A 凹部
16 N型半導体領域
20 素子分離部
31 エミッタ
32 コレクタコンタクト部32
33 ベースコンタクト部
41 エミッタ電極
42 コレクタ電極
100、100A 半導体装置
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C