【解決手段】可撓性を有する少なくとも1層のポリイミド層を含むポリイミドフィルム基材と、前記ポリイミドフィルム基材の上に形成された有機基含有シリカ膜とを備えた有機EL素子用積層体であって、
可撓性を有する少なくとも1層のポリイミド層を含むポリイミドフィルム基材と、前記ポリイミドフィルム基材の上に形成された有機基含有シリカ膜とを備えた有機EL素子用積層体であって、
前記ポリイミドフィルム基材の弾性率が3〜10GPaであり、かつ20〜300℃における線膨張係数が、0〜30ppm/℃であり、
前記有機基含有シリカ膜が、
式:(SiO2)x−(SiO3/2R)1-x
(式中R:メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、ベンジル基、エポキシ基、メルカプト基であり、xは0≦X<1である)
で表わすことができ、厚みが2〜5μm及び表面粗さRaが5nm以下であることを特徴とする、有機EL素子用積層体。
前記ポリイミドフィルム基材が、第1ポリイミド層及び第2ポリイミド層を含む少なくとも2層のポリイミド層から構成されており、前記有機基含有シリカ膜と接する第1ポリイミド層の弾性率が1〜5GPa、その下にある第2ポリイミド層の弾性率が4〜10GPaであり、かつ第1に比べ第2ポリイミド層の弾性率が高いことを特徴とする請求項1記載の有機EL素子用積層体。
前記有機基含有シリカ膜と接するポリイミド層のガラス転移温度が300℃〜450℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機EL素子用積層体。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ、有機EL照明などのデバイス用基板にはガラス基板が用いられているが、可撓性や耐久性の観点からガラス基板に替えてポリイミドフィルムをこれらのデバイス用基板として用いることが検討されている。
【0003】
しかしながら、ポリイミドフィルムは一般にガラスと比較して寸法安定性、耐熱性、耐湿性に劣り、特に、ガスバリア性等に劣るため、種々の検討がなされている。これらのポリイミドフィルム基板は、基材表面がガラス基板にできるだけ近い平滑性を有することが要求される。
【0004】
特開2003−260750号公報(特許文献1)には、基材フィルム上に、層状無機化合物及びガスバリア性樹脂を含有するオーバーコート層を有するガスバリア性フィルムが記載されているが、このガスバリア性フィルムは耐熱性が劣っている。
【0005】
特開2006−255918号公報(特許文献2)には、高分子を含むフィルムの少なくとも一方の側に無機化合物を含む層が形成された、高耐熱性の光学用フィルム積層体が記載されている。しかし、このフィルムの製造時の硬化温度は280℃であり、さらに高い加工時の高温には耐えることができない。
【0006】
次に、基材として用いられるポリイミドフィルムには耐熱性が求められている。耐熱性が求められる理由は、ポリイミドフィルム上に皮膜を形成した部材は、熱処理工程、例えば有機ELディスプレイに用いられる場合には、300℃〜350℃の温度の雰囲気の中に曝される機会があるからである。
【0007】
例えば、WO2013/191180(特許文献3)には、ポリイミドフィルムからなる支持基材上にガスバリア層を備えた表示装置が記載されている。ここで用いられるガスバリア層は、CVD法で成膜された50nmのシリコン膜であり、非常に薄くガスバリア層としての機能は十分ではない。特に、ポリイミドフィルムはそれ自体がガスを生成する場合があるので、ガスバリア性を担保すべく、さらに厚いガスバリア層が求められている。
【0008】
また、特開2012−254621号公報(特許文献4)には、ガスバリア性に優れ、ガスバリア層の密着性が良く、クラックやピンホール、反りが無いガスバリア層を有するガスバリア性積層ポリイミドフィルムが記載されている。ここで用いられているガスバリア層の膜厚は2〜20μmであり、ガラスペーストを塗布して作製されている。通常、このガスバリア層に上に電子素子が形成されるので、ガスバリア層の表面はできるだけ平坦であることが求められるが。ガスバリア層の膜厚が大きくなると、一般的に、表面を平坦にすることが困難になる。ガスバリア性を担保するためには、ガスバリア層の膜厚を厚くすることを要するが、同時に表面粗さ(Ra)を小さくすることが求められる。厚膜なガスバリア層と小さい表面粗さ(Ra)の両方の要件を満たすガスバリア層を有する、ポリイミド積層体が求められている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明で用いることができるポリイミドフィルムは、一般的に下記一般式(1)で表され、ジアミン成分と酸二無水物成分とを実質的に等モル使用し、有機極性溶媒中で重合する公知の方法によって製造することができる。
【0021】
一般式(1)において、Ar
1は芳香族環を1個以上有する4価の有機基であり、Ar
2は芳香族環を1個以上有する2価の有機基である。そして、Ar1は酸二無水物の残基ということができ、Ar
2はジアミンの残基ということができる。
【0022】
酸二無水物としては、例えば、O(CO)
2−Ar
1−(CO)
2Oによって表される芳香族酸二無水物が挙げられる。好ましいAr
1としては、次に示す4価の有機基が例示される。
【0024】
酸二無水物は単独で又は2種以上混合して用いることができる。これらの中でも、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)から選ばれるものを使用することが好ましい。
【0025】
ジアミンとしては、例えば、H
2N−Ar
2−NH
2によって表される芳香族ジアミンが挙げられる。好ましいAr
2としては次に示す2価の有機基が例示される。
【0027】
これらのジアミンの中でも、ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(以下m−TB)、パラフェニレンジアミン(p−PDA)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)が好適なものとして例示される。
【0028】
重合に用いる溶媒については、例えばジメチルアセトアミド、n−メチルピロリジノン、2−ブタノン、ジグライム、キシレン等を挙げることができ、これらについては1種若しくは2種以上を併用して使用することもできる。また、重合して得られたポリアミド酸(ポリイミド前駆体)の樹脂粘度については、500cps〜35000cpsの範囲とするのが好ましい。
【0029】
ポリイミドフィルムの製法として、ポリイミドフィルムの原料であるポリアミド酸樹脂溶液を、金属ロールなどのベース基板上に流延塗布し、ベース基板上で加熱乾燥することにより自己支持性を有するゲルフィルムとした後、ベース基板より剥離して、テンター等で保持しながら更に高温で加熱してポリイミドフィルムを得る方法が生産性に優れ、工業的に最も広く行なわれている。しかしながら、この方法では、ベース基板からゲルフィルムを剥離する際にフィルムにかかる応力や、熱処理時のテンターでの張力により、フィルムが延伸され、搬送方向と幅方向の膨張係数の差が大きくなる。このため、本発明のポリイミドフィルムの製造方法としてはあまり好ましくない。
【0030】
本発明におけるポリイミドフィルムを製造する方法は、例えば、ポリアミド酸の樹脂溶液を銅箔などの任意のベース基板上にアプリケーターを用いて流延塗布し、予備乾燥した後、更に、溶剤除去、イミド化のために熱処理し、イミド化時に使用したベース基板を剥離又はエッチング等により除去する方法が好ましい。原料である樹脂溶液をベース基板に流延塗布する際、ポリアミド酸樹脂溶液の粘度は500cps〜35000cpsの範囲とすることが好ましい。また、樹脂溶液の塗布面となるベース基板の表面に対して適宜表面処理を施した後に、塗工を行ってもよい。上記において、乾燥条件は150℃以下で2〜30分、また、イミド化のための熱処理は130〜360℃程度の温度で2〜30分程度行うことが適当である。
【0031】
上記のポリイミドフィルムの製法において、面内方向の搬送方向(Machine Direction:以下、MD方向)と幅方向(Transverse Direction:以下、TD方向)の膨張係数の差を5ppm以下とする。このためには、熱処理時のフィルム温度の面内ばらつきを小さくすることがよい。熱処理時のフィルム温度の面内ばらつきは、好ましくは6℃以下、さらに好ましくは2℃以下である。
【0032】
フィルムの温度の面内ばらつきを小さくするためには、所定の温度に到達後、十分に時間をおき、炉内温度が均一となった強制対流式のオーブンにより、ポリアミド酸樹脂とベース基板が積層した状態で熱処理するのがよい。また、加熱時にポリアミド酸樹脂とベース基板の積層物が、直接、炉の内面や棚板に接触すると局所的な温度むらが発生することがあるため、極力、接触しないように設置することが好ましい。さらに、熱処理前にポリアミド酸樹脂とベース基板の積層物を予熱してもよい。
【0033】
ベース基板の厚みが大きいと、熱容量が大きくなり、さらに、ベース基板側からポリアミド酸樹脂の加熱が十分に行なわれないため、フィルム面内の温度ばらつきの原因となり好ましくない。フィルム基材の厚みは、好ましくは3mm以下、さらに好ましくは0.8mm以下である。また、温度のばらつきを小さくするために、ベース基板に熱伝導率が高い金属を使うのもよい。
【0034】
ベース基板上にポリアミド酸の樹脂溶液を塗布し、熱処理が完了した後に、ベース基板から、形成されたポリイミドフィルムを除去する上記のポリイミドフィルムの製法において、ベース基板をエッチングにより除去する場合、エッチングによりポリイミドフィルムからベース基板が除去された後、流水による洗浄、エアーナイフによる表面水滴の除去、オーブン加熱による乾燥が通常行なわれる。これらの工程中でポリイミドフィルムに対し発生する応力により、ポリイミドフィルムが延伸される場合がある。
【0035】
ベース基板除去のためのエッチングにともなう一連のプロセスでのポリイミドフィルムの延伸を防止するためには、ポリイミドフィルム上に応力緩和層を形成した後に、ポリイミドフィルムと応力緩和層が積層された状態で、ベース基板をエッチングし、プロセス中に発生する応力をポリイミドフィルムと応力緩和層に分散させる方法もよい。応力緩和層を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、応力緩和層として適度な線膨張係数を有する樹脂フィルムや金属箔を、粘着剤による張り合わせ、塗布等の方法によって形成することができる。
【0036】
ベース基板上にポリアミド酸の樹脂溶液を塗布し、熱処理が完了した後に、ベース基板からポリイミドフィルムを除去する上記のポリイミドフィルムの製法において、ベース基板を剥離により除去する場合、剥離する際にポリイミドフィルムに応力がかかり面方向に延伸される場合がある。
【0037】
ベース基板からポリイミドフィルムを剥離する際の延伸を防止するためには、ポリイミドフィルム上に応力緩和層を形成した後に、ポリイミドフィルムと応力緩和層が積層された状態でベース基板から剥離し、剥離に必要な応力を、ポリイミドフィルムと応力緩和層に分散させる方法もよい。
【0038】
また、ベース基板からのポリイミドフィルムの剥離を容易にし、延伸を防止するため、ポリイミドフィルムを他の基体に固定し、ポリイミドフィルムの面方向への延伸を防止した状態で剥離を行った後、ポリイミドフィルムを基体から分離する方法でもよい。ポリイミドフィルムを基体に固定する方法は、基体内部から基体表面に繋がる細孔を有する基体を使用し、基体内部を減圧にし、真空を利用して基体表面にポリイミドフィルムを固定した状態でポリイミドフィルムをベース基板から剥離後、基体内部の減圧を解き、基体からポリイミドフィルムを分離する方法でもよい。上記の基体は樹脂でもよく、ステンレスなどの金属であってもよい。基体のポリイミドフィルム側の表面は曲面であってもよい。
【0039】
上記ポリイミドフィルム基材の製造時に用いたベース基板を、残しておくこともできる。この場合、ベース基板を残したままポリイミドフィルム基材の上に有機基含有シリカ膜形成用塗布液を塗布し、乾燥し、300℃〜450℃で加熱処理して、有機基含有シリカ膜を形成して、有機EL素子用積層体を製造する。この後、ベース基板を剥離してもよく、さらにベース基材を残したまま、出荷してもよい。ポリイミドフィルム基材の厚みが薄い場合は、ベース基材を残したままであると搬送時の取り扱いが容易になる。
【0040】
また、本発明において、ポリイミドフィルム基材の好ましい厚さは0.5μm〜200μmの範囲であり、より好ましくは0.5μm〜50μmの範囲、特に好ましくは20μm〜30μmの範囲である。ポリイミドフィルム基材の厚みが0.5μmに満たないと、アプリケーターでの制御が困難であって厚みが不均一となりやすく、反対に200μmを超えると、ポリイミドフィルムのフレキシブル性が低下する為好ましくない。ポリイミドフィルム基材の厚みが薄くなるとフレキシブル性が高くなるが、ポリイミドフィルムの剛性が低くなるので反りやすくなる傾向にある。
【0041】
本発明においてポリイミドフィルム基材から成る積層体は、ポリイミドフィルム基材上にガスバリア層として、有機基含有シリカ膜を有して成っている。有機基含有シリカ膜の膜厚は2〜5μmであり、さらに望ましくは3〜4μmである。膜厚が2μmより薄い場合は、ガスバリア性を確保できないことがある。膜厚が5μmを超えると膜にクラックが入ることがある。本発明の積層体においては、ガスバリア層表面がガラス基板にできるだけ近い平滑性(Raが5nm以下)を有することが要求される。
【0042】
本発明の積層体では、ガスバリア層である有機基含有シリカ膜は、ポリイミドフィルム上にオルガノアルコキシシランの加水分解・縮合物を塗布し、加熱処理を行って、形成される。
「オルガノアルコキシシラン」なる語は、本明細書中においては、三つのアルコキシ基がケイ素原子に(Si−O結合によって)直接結合したアルコキシ基を有し、一つの有機基が、有機基がケイ素原子に(Si−C)結合によって直接結合しかつSi−O−Si結合を有さない化合物であるトリアルコキシシラン、もしくは、四つのアルコキシ基がケイ素原子に(Si−O結合によって)直接結合したアルコキシ基を有しかつSi−O−Si結合を有さない化合物であるテトラアルコキシシランを意味する。
【0043】
本発明の積層体に用いる有機基含有シリカ膜を形成する方法としては、ゾルゲル法を用いる。液相法であるゾルゲル法は、表面粗さ(Ra)が非常に小さく、厚い膜を生成することができるが、塗布後、300℃〜450℃での焼成が必要である。焼成では、オルガノアルコキシシランの加水分解で生じたSi−OH基同士の脱水縮合が進行しSi−O−Siネットワークが形成する。脱水縮合に伴い有機基含有シリカ膜は収縮するため収縮歪により有機基含有シリカ膜にクラックが発生する場合がある。また、有機EL素子形成プロセスの昇降温プロセスにおいて、残留した収縮歪にポリイミドフィルムと有機基含有シリカ膜の膨脹係数差を起因とした歪が加わり有機基含有シリカ膜にクラックが発生する場合がある。本発明の積層体では、ポリイミドフィルム基材のガラス転移温度をコントロールすることによりこの問題を解決した。
【0044】
有機基含有シリカ膜と接するポリイミド層のガラス転移温度を300〜450℃とし、焼成温度をガラス転移温度より高くすると、焼成時に有機基含有シリカ膜と接しているポリイミド層が軟化した状態となるため有機基含有シリカ膜の収縮歪を開放することができる。収縮歪を開放できるため、有機基含有シリカ膜に発生するクラックを低減することが可能となる。
【0045】
本発明の積層体に用いられる、有機基含有シリカ膜形成用塗布液は、式:RSi(OR’)
3とSi(OR’)
4(式中Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、ベンジル基、エポキシ基、又はメルカプト基から選ばれる有機基であり、R’は、炭素数1〜6のアルキル基である)との加水分解・縮合物である。ガラス基板にできるだけ近い平滑性を得るためには、ポリイミドフィルム基材上に塗布した直後の液面が水平になることが必要であり、この加水分解・縮合物は10〜50mPa・sと液体として十分低い粘度を有することが好ましい。
【0046】
有機基Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、ベンジル基、エポキシ基、又はメルカプト基から選ばれる。有機基含有シリカ膜は有機基の含有により無機シリカ膜に比べ柔軟性を有しており耐クラック性が高い。製膜時の収縮歪に耐えられるため、無機シリカ膜に比べ厚膜を形成することができる。さらに、本発明の有機基含有シリカ膜は300℃以上の高温に晒されても前記膜中の有機基の熱分解が起こりにくく、膜の柔軟性の劣化が抑えられるため、有機EL素子作製プロセスにおけるクラックの発生を低減することができる。中でも前記膜中のメチル基、フェニル基は熱分解が起こりにくく、有機EL素子作製プロセス中のクラック発生の低減が可能なため好ましい。特に好ましい、有機基は、疎水性が高く耐水蒸気バリア性が期待できるフェニル基である。
【0047】
有機基含有シリカ系被膜はいわゆるゾルゲル法により作製する。作製方法について説明する。有機基Rを有するトリアルコキシシランから選ばれる少なくとも1種以上のオルガノアルコキシシランと、有機基Rを有しないテトラアルコキシシランから選ばれる少なくとも1種以上のオルガノアルコキシシランを有機溶媒中で混合し加水分解する。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、MEK、MIBKなどを、単独、或いは複数種混合して用いることができる。加水分解に使う水は全アルコキシ基に対して0.3モル〜3モル倍であることが望ましい。加水分解時には、シリコン以外の金属アルコキシド触媒、有機酸、無機酸を用いてもよい。さらに加水分解後、還流や濃縮を行いで加水分解・重縮合の進行具合を調整しても良い。作製した塗布液をステンレス箔上に塗布するには、スピンコート、ディップコート、ロールコートなどの方法がある。塗布後、80〜150℃程度で0.5〜5分乾燥後、300〜450℃で窒素中0.1〜10時間熱処理をすることで有機基含有シリカ系被膜を得ることができる。
【0048】
本発明の有機基含有シリカ膜の形成に用いることができる有機基Rを有するトリアルコキシシランは、有機基Rがメチル基のトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシランが挙げられる。有機基Rがエチル基のトリアルコキシシランとしては、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシランが挙げられる。有機基Rがフェニル基のトリアルコキシシランとしては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシランが挙げられる。
【0049】
有機基Rがベンジル基のトリアルコキシシランとしては、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリプロポキシランが挙げられる。有機基Rがエポキシ基のトリアルコキシシランとしては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。有機機Rがメルカプト基のトリアルコキシシランとしては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
この中で有機基Rがフェニル基であるフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシランが、特に好ましい。
【0050】
有機基Rを有しないテトラアルコキシシラン化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランが挙げられる。
【0051】
特にフェニルトリメトキシシラン、もしくはフェニルトリエトキシシランを有機溶媒中で、酸触媒を用い、加水分解重縮合後、有機溶媒を留去しつつ150℃〜190℃減圧下にて縮合を進行させることで得たオルガノアルコキシシランの縮合物を溶媒に分散し得た、有機基含有シリカ膜形成用塗布液は、ポリイミドフィルム基板に塗布、乾燥し得た膜が、焼成の工程で一旦軟化することで有機基含有シリカ膜の表面平滑性が非常に高くなるため特に好ましい。
【0052】
本発明においてポリイミドフィルム基材は、20〜300℃における線膨張係数が0〜30ppm/℃であり、この範囲で、有機EL素子製造工程中における有機基含有シリカ膜のクラック発生を低減するために、搬送方向と幅方向の膨張係数の差を5ppm以下とする。有機基含有シリカ膜との線膨張係数の差が10ppm/℃以下であることが好ましい。上述した一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミドは、弾性率が3GPa〜10GPa程度であって比較的硬い性質を有するので、それよりも弾性率の低いポリイミド層を有機基含有シリカ膜と接するように追加して塗布して、応力緩和の役割を果たすようにしてもよい。
【0053】
複数のポリイミド層を用いる場合、上記の有機基含有シリカ膜と接するポリイミド層は、ポリイミドフィルムのなかで厚みが最も大きな比率を占めるポリイミド層(主たるポリイミド層)より低弾性率を示すことが好ましい。有機基含有シリカ膜と接するポリイミド層が低線膨張係数を有する主たるポリイミド層の延伸を防止する応力緩和層として機能するため、有機基含有シリカ膜の焼成時の収縮や、有機基含有シリカ膜とポリイミド層の膨脹係数差に起因する反りを小さくすることができる。
【0054】
ここで、有機基含有シリカ膜と接するポリイミド層の弾性率は主たるポリイミド層の弾性率よりも低いことが好ましく、好ましい弾性率は1〜5Gpa、より好ましくは1〜3Gpaである。このような弾性率を示すポリイミド層は、広く知られたポリイミドによって形成することができるが、一般にそれらのポリイミドのCTEは比較的高くなってしまうことから、有機基含有シリカ膜と接するポリイミド層の厚みは0.5μm〜30μmにするのがよく、好ましくは0.5μm〜10μmにするのがよい。すなわち、ポリイミドフィルムを複数のポリイミド層から形成する場合、好適には、ポリイミドフィルムのなかで厚みが最も大きな比率を占めるポリイミド層(主たるポリイミド層)を形成し、これよりも低い弾性率を示すポリイミド層を有機基含有シリカ膜側に配して、有機基含有シリカ膜と接するポリイミド層が、当該ポリイミド層と隣接する他のポリイミド層に比べて弾性率が低くなるようにする。ポリイミド層を複数で構成する場合の主たるポリイミド層の厚みと低弾性率を示すポリイミド層との厚み比(低弾性率を示すポリイミド層/主たるポリイミド層)は0.01〜0.35が好ましく、より好ましくは0.01〜0.1である。また、主たるポリイミド層の弾性率は、有機基含有シリカ膜と接するポリイミド層が比較的CTEが高いことにより発生するカールを低減のために、剛性が高いポリイミドを用いることが好ましく、弾性率が4〜10Gpaのポリイミドを用いることが好ましい。
【0055】
有機基含有シリカ膜とポリイミドフィルム基材とのCTEの差が大きいと、その後の例えば、有機EL素子の製造工程中にカールが発生したり、寸法安定性が悪化したり、クラックの発生が起こるおそれがある。また、一般に大面積フィルムを製造した場合に反りが問題になるが、本発明のポリイミドフィルムであれば、有機基含有シリカ膜とのCTEの差が小さいため、これらのような不具合の問題が解消される。本発明の積層体の有機基含有シリカ膜は、5〜20ppm/℃の範囲のCTEを有するのが好ましい。
【0056】
ガスバリア層を形成する有機基含有シリカ膜のCTEは5〜20ppm/℃に含まれる。そのため、これに隣接するポリイミドフィルムのCTEがこれに近い値でない場合には、有機基含有シリカ膜にクラックが発生してしまう。そこで、本発明のポリイミドフィルムは、線膨張係数が0〜30ppm/℃、好ましくは0〜20ppm/℃であり、かつ、有機基含有シリカ膜との線膨張係数の差が10ppm/℃以下、好ましくは0〜5ppm/℃となるようにする。
【0057】
有機基含有シリカ膜へのクラック発生を防止するために、ポリイミドフィルム基材が複数のポリイミド層から成る場合は、ポリイミドフィルム基材全体での線膨張係数が0〜30ppm/℃であることが必要である(その他のポリイミドフィルムの特性についても同様にポリイミドフィルム基材全体である)。
【0058】
本発明の積層体の表面粗さRaが5nm以下、好ましくは4nm以下であるのがよい。表面粗さRaが5nmを超えると、例えば、この積層体を有機EL素子に用いた場合、有機EL層の厚みが不均一になり、断線や発光ムラや色再現性が低下する原因となる。
【実施例】
【0059】
先ず、実施例中の各種物性の測定方法、および各特性の評価方法について以下に示す。
【0060】
「ポリイミドフィルムの弾性率の測定」
ポリイミドフィルムを、株式会社東洋精機製作所製ストログラフR−1を用いて、温度23℃、相対湿度50%の環境下で引張弾性率の値を測定した。
【0061】
「線膨張係数(CTE)」
3mm×15mmのサイズのポリイミドフィルムを、熱機械分析(TMA)装置にて5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度(20℃/分)で30℃から300℃の温度範囲で引張り試験を行い、温度に対するポリイミドフィルムの伸び量から線膨張係数(ppm/℃)を測定した。
【0062】
「ガラス転移温度の測定」
ポリイミドフィルム(10mm×22.6mm)を動的粘弾性測定装置(DMA)にて20℃から500℃まで5℃/分で昇温させたときの動的粘弾性を測定し、ガラス転移温度Tg(tanδ極大値)を求めた。
【0063】
「有機基含有シリカ膜の厚み」
有機基含有シリカ膜の膜厚を、走査型電子顕微鏡(JEOL製JSM−6500F)を用いて測定した。有機基含有シリカ膜付きポリイミドフィルムをカッターナイフで切断し、イオンコータを用い切断面に、導電膜としてPtコート層を形成後、観察し、測定した。
【0064】
「表面粗さ」
有機基含有シリカ膜表面の表面粗さを原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)、ブルカ―エイエックス社製D5000を用い、タッピングモード、測定視野サイズ5μmで測定し、以下の基準で評価した。
5nm超:「×」、
5nm以下、2nm超:「△」、
2nm以下、1nm超:「○」、
1nm以下:「◎」。
【0065】
「昇降温プロセスでの耐クラック性評価」
耐クラック性の評価として、25℃〜300℃まで10℃/分で昇温度後、300℃から25℃まで10℃/分で降温した基板について、クラックの発生状況をヤマト科学社製マイクロスコープKH−7700で観察した。10mm角の視野において、クラックの数が20個以上の場合は評価結果を「×」、10個以上〜20個未満の場合は評価結果を「△」、1個以上10個未満の場合は評価結果を「○」、クラックが無い場合は評価結果を「◎」とし評価し、1サイクル後、3サイクル後、5サイクル後、10サイクル後でのクラック発生状況を評価した。
【0066】
「カール」
大きさ120mm角サイズの有機基含有シリカ膜・ポリイミドフィルム積層体を作成し、凸面を下にして平面に置いた場合の浮いた四隅の高さを計測し、以下の基準で評価した。
カール高さが20mm超:×、
10mm超〜20mm以下:△、
5mm超〜10mm以下:○、
5mm以下:◎。
【0067】
「ガスバリア性の評価」
透湿度測定装置PERMATRAN−W3/30(モコン社製)を用い、測定温度40℃、測定湿度90%RH、測定面積5cm
2にて、有機EL向け積層体の水蒸気透過率を測定した。本測定方法における、測定限界は、0.01g/m
2/日である。測定フィルムは、ヤマト科学社製マイクロスコープKH−7700を用い、測定面積内にクラックの発生がないことを確認し、以下の基準で評価した。
水蒸気透過率が、
1.0×10
-1g/m
2/日より高い基板:×、
1.0×10
-2g/m
2/日〜1.0×10
-1g/m
2/日である基板:△、
1.0×10
-2g/m
2/日より低い基板:○、
と評価した。
【0068】
次に、実施例中の製造条件、評価結果について以下に示す。
【0069】
「ポリイミドフィルム基材の作製方法」
実施例1〜32、比較例1〜8記載のポリイミドフィルムA〜Qはポリアミド酸樹脂溶液(1)〜(6)(ポリイミド前駆体)をフィルム化することで作製した。
ポリアミド酸樹脂溶液(1)〜(6)は、窒素気流下で、セパラブルフラスコの中で撹拌しながら表1に示すジアミンを溶剤DMAcに溶解させた。次いで、この溶液に表1に示す酸無水物を加えた。酸無水物:ジアミンのモル比は0.985にした。その後、溶液を室温で5時間揖梓を続けて重合反応を行った。粘稠なポリアミド酸溶液が得られ、高重合度のポリアミド酸が生成されていることが確認された。
【0070】
フィルム化は1軸延伸、2軸延伸、キャスト法の3種類の方法で実施した。
「1軸延伸でのフィルム化」
ポリイミドフィルムA〜G,J,L,Mは、表2に示すポリアミド酸溶液を、厚さ0.1mmのPETフィルム上にアプリケーターを用いて加熱処理後の膜厚が表3に示す厚みとなるように塗布し、90℃〜130℃を5分で乾燥させた後、PETフィルムから引きはがし1軸方向のみ105%延伸して150℃から表2に示す温度まで表2に示す時間で昇温して硬化させてフィルムを得た2層品を作るときは乾燥までさせた後、有機基含有シリカ膜に接する層を塗工し乾燥させて、単層送品と同様に硬化させた。
「2軸延伸でのフィルム化」
ポリイミドフィルムHは、表2に示すポリアミド酸溶液を、厚さ0.1mmのPETフィルム上にアプリケーターを用いて加熱処理後の膜厚が約60μmとなるように塗布し、90℃〜130℃を5分で乾燥させた後、PETフィルムから引きはがし2軸方向に105%延伸して150℃から表2に示す温度まで表2に示す時間で昇温して硬化させてフィルムを得た。
「キャストでのフィルム化」
ポリイミドフィルムI、K、N、Oは表2に示すポリアミド酸溶液を、厚さ0.02mmの銅箔上にアプリケーターを用いて加熱処理後の膜厚が表3に示す厚さとなるように塗布し、90℃〜130℃を5分で乾燥させた後、150℃から表2に示す温度まで表2に示す時間で昇温して硬化させた。そのあと銅箔をエッチングして除去することでフィルムを得た。2層品を作るときは乾燥までさせた後、シリコンに接する層を塗工し乾燥させて、単層送品と同様に硬化させた。
【0071】
「ポリイミドフィルム基材の物性評価」
表3に、実施例1〜32、比較例1〜6のポリイミドフィルムの弾性率、膨脹係数、ガラス転移温度の測定結果を示す。
【0072】
<有機基含有シリカ膜用塗布液の合成>
表3に実施例1〜30、比較例1〜6でガスバリア膜として用いた有機基含有シリカ膜の有機基種類、有機比率Xの有機基含有シリカ膜を示す。有機基含有シリカ膜の有機基種は塗工液の原料である有機基Rを有するトリアルコキシシランSiR(OR’)
3の有機基Rの種類の選定、有機基含有シリカ膜の有機基比率Xは、有機基Rを有するトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランの混合比を変更することで調整した。
【0073】
実施例1〜30、比較例1〜6では、有機基含有シリカ膜形成用塗工液A〜Lを用いた。
有機基含有シリカ膜形成用塗布液A〜C、Lは300mlサイズのなす型フラスコにエタノール溶媒100gと、表4に示すテトラアルコキシシラン、有機基Rを有するトリアルコキシシランの混合液に、表4に示す酸触媒と水の混合液を2時間かけて滴化した後、ロータリーエバポレータ(アズワン製型番NA−2VGS)を用い、オイルバスを60℃に設定し、エタノールを70g留去することで、有機基含有シリカ膜用塗布液を得た。
【0074】
有機基含有シリカ膜形成用塗布液D〜Jは、エタノール溶媒100gと表4に示すテトラアルコキシシラン、有機基Rを有するトリアルコキシシランの混合液に、表2に示す酸触媒と水の混合液を2時間かけて滴化することで得た。
有機基含有シリカ膜形成用塗布液Kは、表4に示すトリアルコキシシランとエタノールの混合液に、触媒としてジブチルジラウレート錫を0.01g添加後、表2に示す酸触媒と水の混合液を、2時間かけて滴化することでオルガノアルコキシシランの加水分解液を得た。オルガノアルコキシシランの加水分解液からロータリーエバポレータを用い、オイルバスを190℃℃まで3時間かけて昇温し、溶媒を留去することで固形物を得た。得た固形物をトルエンに溶解することで有機基含有シリカ膜用塗布液Kを得た。
合成した有機基含有シリカ膜形成用塗布液の粘度は表3に示した。
【0075】
比較例7ではガラスペースト(旭硝子株式会社製ガラスペーストAP5317)を用いガスバリア膜を形成した。比較例8ではスパッタ法にてSiO
2のガスバリア膜を形成した。
【0076】
<有機基含有シリカ膜の形成>
実施例1〜23、25〜30、比較例1〜6では、表3に示すポリイミドフィルムを用い、120mm角に切り出したポリイミドフィルム上にスポイトを用いて15ml、表3記載の有機基含有シリカ膜形成用塗布液を広げた後、スピンコータ(ミカサ製MS−B200)を用い、表5に示す回転数で20秒間基板を回転させた後、大気中で100℃、2分乾燥し、クリーンオーブン(光洋サーモシステム製CLH−21CD(III))を用い、窒素雰囲気中で、400℃で10分熱処理することで、有機基含有シリカ膜を形成し、有機EL用積層基板を得た。
【0077】
実施例24は、表3に示すベース基板付きポリイミドフィルムを用い、120mm角に切り出したベース基板付きポリイミドフィルム上にスポイトを用いて15ml、有機基含有シリカ膜形成用塗布液Dを広げた後、スピンコータを用い、表5に示す回転数で20秒間基板を回転させた後、大気中で100℃、2分乾燥し、クリーンオーブンを用い、窒素雰囲気中で、400℃で10分熱処理することで、ベース基板付きポリイミドフィルム上に有機基含有シリカ膜を形成させた。その後、ポリイミドフィルム界面でベース基板を剥離し、有機EL用積層基板を得た。
【0078】
実施例31、32はロール−to−ロールプロセスで積層体を形成した実施例である。ポリイミドフィルム基材ロール、ベース基板付きポリイミドフィルム基材ロールに有機基含有シリカ膜形成用塗布液D用い、有機基含有シリカ膜を形成した。
図1、2に、示す様に有機基含有シリカ膜はロール−to−ロール塗布・乾燥工程とロール−to−ロール熱処理工程とに分けて行った。ロール−to−ロール塗布・乾燥工程では、基材を巻きだした後、有機基含有シリカ用塗工液を基材に塗布後、炉長5.0m、設定温度80℃の乾燥炉を通過させ乾燥させた後に、基材を巻きとった。塗布手法としては、康井精機株式会社製のマイクログラビアを選択し、#200のグラビアロールを用い、通板速度10mpmで塗工した。ロール−to−ロール熱処理工程では、基材を巻きだし、炉長5.0m、設定温度400℃、酸素濃度1000ppm以下の窒素雰囲気の熱処理炉を通過させることで熱処理を実施した。通板速度は0.5mpmであった。
【0079】
比較例7では、表3に示すポリイミドフィルムを用い、120mm角に切り出したポリイミドフィルム上にバーコーター(No.2、テスター産業株式会社製)を用い塗布後、400℃で熱処理しガスバリア膜を形成した。
【0080】
<ポリイミドフィルム基材、有機基含有シリカ膜積層体の評価>
表3に、カール性、昇降温プロセスでの耐クラック性、ガスバリア性、表面粗さの評価結果を示す。実施例1〜32は、カール性、昇降温プロセスでの耐クラック性、ガスバリア性、表面粗さが本発明の目的とする所定の範囲内であり、良好であり、有機EL用積層基板として好ましいことが分かった。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
比較例1は、昇降温プロセスでの耐クラック性評価において、昇降温1サイクル目で有機基含有シリカ膜に多数クラックが発生したため不可と判断した。これは、ポリイミドフィルムの弾性率が高いため、昇降温において有機基含有シリカ膜にかかる応力が高くなったため、クラックが発生したと考えられる。比較例2は、ガスバリア性が低いため、不可と判断した。これは、ガスバリア層である有機基含有シリカ膜の膜厚が薄いためであると考えられる。比較例3は有機基含有シリカ膜を形成した時点で、有機基含有シリカ膜にクラックが発生したため不可と判断した。これは、有機基含有シリカ膜の膜厚が厚いため、有機基含有シリカ膜の製膜応力により、クラックが発生したと考えられる。比較例4は、昇降温1サイクル目で有機基含有シリカ膜に多数クラックが発生したため不可と判断した。これは、ポリイミドフィルムの膨脹係数が高く、有機基含有シリカ膜との膨脹係数差が大きいため発生したと考えられる。比較例5、6は、昇降温1サイクル目で有機基含有シリカ膜に多数クラックが発生したため不可と判断した。これは、有機基含有シリカ膜の有機基がアミノプロピル基であるため、300℃において、有機基含有シリカ膜の有機基が分解することで有機基含有シリカ膜が脆くなっためであると考えられる。比較例7はガスバリア層の表面が粗く不可と判断した、これはガスバリア層にガラスペーストが分散されているため、ガラス粒子の凹凸により表面平滑性が損なわれたためであると考えられる。
比較例8は、十分なガスバリア性を確保できなかったため、不可と判断した。これは、皮膜が薄くさらにスパッタで形成した皮膜であるため、ピンホール等の欠陥があったためであると考えられる。
【0087】
以上、本発明について、実施例を用いて説明してきたが、これまでの各実施例で説明した構成はあくまで一例であり、本発明は、技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。