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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-73988(P2017-73988A)
(43)【公開日】2017年4月20日
(54)【発明の名称】植物育成促進装置および植物栽培方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20170331BHJP
   A01G 7/02 20060101ALI20170331BHJP
   A01G 9/18 20060101ALI20170331BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20170331BHJP
【FI】
   A01G7/00 604Z
   A01G7/00 601Z
   A01G7/02
   A01G9/18
   B01D53/04 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-202017(P2015-202017)
(22)【出願日】2015年10月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤峰 智也
(72)【発明者】
【氏名】荒木 敏成
(72)【発明者】
【氏名】碇 真里耶
(72)【発明者】
【氏名】高橋 美佐
【テーマコード(参考)】
2B022
2B029
4D012
【Fターム(参考)】
2B022DA12
2B022DA15
2B022DA19
2B029JA06
2B029JA10
4D012BA02
4D012CA03
4D012CA15
4D012CB16
4D012CD05
4D012CE01
4D012CF05
4D012CJ10
(57)【要約】
【課題】低コストで窒素酸化物を供給する。
【解決手段】植物の育成を促進する植物育成促進装置150は、少なくとも窒素酸化物を含む混合ガスに接触すると窒素酸化物を吸着する窒素酸化物吸着剤152と、窒素酸化物を吸着した窒素酸化物吸着剤152から窒素酸化物を脱着させて、植物の栽培地(温室140)に供給する窒素酸化物供給手段220と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の育成を促進する植物育成促進装置であって、
少なくとも窒素酸化物を含む混合ガスに接触すると窒素酸化物を吸着する窒素酸化物吸着剤と、
窒素酸化物を吸着した前記窒素酸化物吸着剤から窒素酸化物を脱着させて、植物の栽培地に供給する窒素酸化物供給手段と、
を備えたことを特徴とする植物育成促進装置。
【請求項2】
前記窒素酸化物供給手段は、前記栽培地の雰囲気中の窒素酸化物の濃度を目標値に維持することを特徴とする請求項1に記載の植物育成促進装置。
【請求項3】
少なくとも二酸化炭素を含む混合ガスに接触すると二酸化炭素を吸着する二酸化炭素吸着剤と、
二酸化炭素を吸着した前記二酸化炭素吸着剤から二酸化炭素を脱着させて、前記栽培地に供給する二酸化炭素供給手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の植物育成促進装置。
【請求項4】
前記二酸化炭素供給手段は、前記栽培地の雰囲気中の二酸化炭素の濃度を目標値に維持することを特徴とする請求項3に記載の植物育成促進装置。
【請求項5】
前記窒素酸化物供給手段または前記二酸化炭素供給手段は、前記窒素酸化物吸着剤または前記二酸化炭素吸着剤を所定の温度に加熱することにより、窒素酸化物または二酸化炭素を脱着させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の植物育成促進装置。
【請求項6】
窒素酸化物を吸着した窒素酸化物吸着剤から窒素酸化物を脱着させて、植物の栽培地に供給する工程を含むことを特徴とする植物栽培方法。
【請求項7】
少なくとも窒素酸化物を含む混合ガスの発生源において、前記窒素酸化物吸着剤に該混合ガスを接触させる工程と、
前記接触させる工程を遂行することによって、窒素酸化物を吸着した前記窒素酸化物吸着剤を前記栽培地に移送する工程と、
を含み、
前記移送する工程を遂行した後に、前記供給する工程を遂行することを特徴とする請求項6に記載の植物栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の育成を促進する植物育成促進装置および植物栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、野菜、果物等の農作物、花卉、観葉植物等の園芸用植物等の植物を温室内で栽培する際に、温室内に二酸化炭素を供給して植物の光合成を促進している。温室に供給する二酸化炭素として、燃焼によって生じた排気ガスが広く利用されており、例えば、特許文献1には、火力発電設備で生じた排気ガスから、植物の育成を阻害すると考えられていた窒素酸化物(NO)を除去して温室に供給する構成が記載されている。
【0003】
このように、従来、窒素酸化物は、植物の育成を阻害すると考えられていたが、近年の研究により、植物の栽培雰囲気を10ppb〜200ppbの窒素酸化物の雰囲気とすることにより、植物の育成を促進できることが分かってきた(例えば、非特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4489536号公報
【特許文献2】特開2012−235748号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Plant Signaling & Behavior 9, e28563; March; 2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の技術では、二酸化窒素(NO)が充填されたボンベから温室にNOを供給しているが、ボンベは、高価であるため実用的ではない。したがって、植物の栽培地に、低コストで窒素酸化物を供給できる技術の開発が希求されている。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、低コストで窒素酸化物を供給することができる植物育成促進装置および植物栽培方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の植物育成促進装置は、植物の育成を促進する植物育成促進装置であって、少なくとも窒素酸化物を含む混合ガスに接触すると窒素酸化物を吸着する窒素酸化物吸着剤と、窒素酸化物を吸着した前記窒素酸化物吸着剤から窒素酸化物を脱着させて、植物の栽培地に供給する窒素酸化物供給手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、前記窒素酸化物供給手段は、前記栽培地の雰囲気中の窒素酸化物の濃度を目標値に維持するとしてもよい。
【0010】
また、少なくとも二酸化炭素を含む混合ガスに接触すると二酸化炭素を吸着する二酸化炭素吸着剤と、二酸化炭素を吸着した前記二酸化炭素吸着剤から二酸化炭素を脱着させて、前記栽培地に供給する二酸化炭素供給手段と、を備えるとしてもよい。
【0011】
また、前記二酸化炭素供給手段は、前記栽培地の雰囲気中の二酸化炭素の濃度を目標値に維持するとしてもよい。
【0012】
また、前記窒素酸化物供給手段または前記二酸化炭素供給手段は、前記窒素酸化物吸着剤または前記二酸化炭素吸着剤を所定の温度に加熱することにより、窒素酸化物または二酸化炭素を脱着させるとしてもよい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の植物栽培方法は、窒素酸化物を吸着した窒素酸化物吸着剤から窒素酸化物を脱着させて、植物の栽培地に供給する工程を含むことを特徴とする。
【0014】
また、少なくとも窒素酸化物を含む混合ガスの発生源において、前記窒素酸化物吸着剤に該混合ガスを接触させる工程と、前記接触させる工程を遂行することによって、窒素酸化物を吸着した前記窒素酸化物吸着剤を前記栽培地に移送する工程と、を含み、前記移送する工程を遂行した後に、前記供給する工程を遂行するとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低コストで窒素酸化物を供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】植物栽培システムを説明する図である。
図2】吸着手段の具体的な構成例を説明する図である。
図3】植物育成促進装置の具体的な構成例を説明する図である。
図4】植物栽培方法の処理の流れを説明するフローチャートである。
図5】供給工程の処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
(植物栽培システム100)
図1は、植物栽培システム100を説明する図である。図1に示すように、本実施形態にかかる植物栽培システム100は、混合ガス発生源110と、吸着手段120と、移送手段130と、温室140と、植物育成促進装置150とを含んで構成される。図1中、ガスの流れを実線の矢印で、吸着剤の流れを白抜き矢印で示す。
【0019】
本実施形態の植物栽培システム100では、吸着手段120が、混合ガス発生源110で生じた混合ガスに窒素酸化物吸着剤152を接触させて、窒素酸化物を窒素酸化物吸着剤152に吸着させるとともに、混合ガスに二酸化炭素吸着剤154を接触させて、二酸化炭素(CO)を二酸化炭素吸着剤154に吸着させる。そして、移送手段130が、窒素酸化物を吸着した窒素酸化物吸着剤152およびCOを吸着した二酸化炭素吸着剤154を植物育成促進装置150に移送し、植物育成促進装置150が窒素酸化物吸着剤152から窒素酸化物を脱着させるとともに、二酸化炭素吸着剤154からCOを脱着させて、植物10の栽培地である温室140に供給する。なお、ここでは、窒素酸化物として二酸化窒素(NO)を例に挙げて説明する。
【0020】
以下、植物栽培システム100を構成する混合ガス発生源110、吸着手段120、移送手段130、植物育成促進装置150の具体的な構成について詳述する。
【0021】
(混合ガス発生源110)
混合ガス発生源110は、少なくともNOおよびCOを含む混合ガスの発生源であり、例えば、火力発電所、プラント等の混合ガスとして燃焼排ガスを発生する設備である。
【0022】
(吸着手段120)
吸着手段120は、混合ガス発生源110から排出された混合ガスを、窒素酸化物吸着剤152および二酸化炭素吸着剤154に接触させて、窒素酸化物吸着剤152にNOを吸着させるとともに、二酸化炭素吸着剤154にCOを吸着させる。
【0023】
なお、窒素酸化物吸着剤152は、例えば、Y型、ペンタシル型、ZMS−5型、モルデナイト型等のゼオライトで構成され、NOを選択的に吸着する。ここで、窒素酸化物吸着剤152を構成するゼオライトは、NOを選択的に吸着するように孔径および親和性が設計されている。
【0024】
また、二酸化炭素吸着剤154は、例えば、NaX型、CaA型、CaX型等のゼオライトで構成され、COを選択的に吸着する。ここで、二酸化炭素吸着剤154を構成するゼオライトは、COを選択的に吸着するように孔径および親和性が設計されている。
【0025】
図2は、吸着手段120の具体的な構成例を説明する図である。図2に示すように、吸着手段120は、第1吸着塔122aと、第2吸着塔124aと、ブロワ126とを含んで構成される。第1吸着塔122aには、窒素酸化物吸着剤152が充填されており、第2吸着塔124aには二酸化炭素吸着剤154が充填されている。ブロワ126は、混合ガス発生源110から混合ガスを吸引し、第1吸着塔122aおよび第2吸着塔124aに送出する。
【0026】
具体的に説明すると、ブロワ126の吸入口は、混合ガス発生源110の排気路に接続されており、ブロワ126の送出口は、バルブ122bを介して第1吸着塔122aの導入口に接続されるとともに、バルブ124bを介して第2吸着塔124aの導入口に接続される。また、第1吸着塔122aの排出口はバルブ122cを介して、混合ガス発生源110の排気路に接続されており、第2吸着塔124aの排出口はバルブ124cを介して、混合ガス発生源110の排気路に接続されている。
【0027】
そして、窒素酸化物吸着剤152にNOを吸着させる際には、バルブ122b、122cを開弁してブロワ126を駆動する。そうすると、混合ガスが第1吸着塔122aに供給され、第1吸着塔122aに充填された窒素酸化物吸着剤152に混合ガスが接触することとなる。そうすると、窒素酸化物吸着剤152にNOが吸着され、混合ガスからNOが取り除かれた残渣ガスは、混合ガス発生源110の排気路に排出されることとなる。
【0028】
同様に、二酸化炭素吸着剤154にCOを吸着させる際には、バルブ124b、124cを開弁してブロワ126を駆動する。そうすると、混合ガスが第2吸着塔124aに供給され、第2吸着塔124aに充填された二酸化炭素吸着剤154に混合ガスが接触することとなる。そうすると、二酸化炭素吸着剤154にCOが吸着され、混合ガスからCOが取り除かれた残渣ガスは、混合ガス発生源110の排気路に排出されることとなる。
【0029】
(移送手段130)
図1に戻って説明すると、移送手段130は、例えば、輸送車両を含んで構成され、NOを吸着した窒素酸化物吸着剤152およびCOを吸着した二酸化炭素吸着剤154を植物育成促進装置150に移送する。具体的に説明すると、作業者によって、吸着手段120を構成する第1吸着塔122aから、NOを吸着した窒素酸化物吸着剤152が取り出されて、移送容器に詰め替えられるとともに、第2吸着塔124aから、COを吸着した二酸化炭素吸着剤154が取り出されて、移送容器に詰め替えられる。そして、移送手段130は、窒素酸化物吸着剤152が充填された移送容器および二酸化炭素吸着剤154が充填された移送容器を植物育成促進装置150に移送する。
【0030】
(植物育成促進装置150)
図3は、植物育成促進装置150の具体的な構成例を説明する図である。なお、図3中、ガスの流れを実線の矢印で示し、信号の流れを破線の矢印で示す。図3に示すように、植物育成促進装置150は、第1脱着塔210と、窒素酸化物供給手段220と、第2脱着塔250と、二酸化炭素供給手段260とを含んで構成される。
【0031】
第1脱着塔210は、移送手段130によって移送された窒素酸化物吸着剤152を収容する。窒素酸化物供給手段220は、第1脱着塔210に収容された窒素酸化物吸着剤152からNOを脱着させて、温室140に供給する。具体的に説明すると、窒素酸化物供給手段220は、第1加熱手段222と、第1濃度計測ユニット224と、第1ブロワ226と、第1供給制御部230とを含んで構成される。
【0032】
第1加熱手段222は、例えば、電気ヒータで構成され、後述する第1供給制御部230による制御指令に応じて、第1脱着塔210(窒素酸化物吸着剤152)を加熱して、窒素酸化物吸着剤152からNOを脱着させる。
【0033】
第1濃度計測ユニット224は、温室140内に配される1または複数の計測プローブ224aと、計測プローブ224aから入力された信号に基づいて、温室140内の雰囲気中(栽培地の雰囲気中)の窒素酸化物の濃度を計測する第1濃度計測部224bとを含んで構成される。本実施形態において、第1濃度計測ユニット224は、窒素酸化物としてNOの濃度を計測する。第1濃度計測ユニット224による窒素酸化物の計測は、既存の技術であるため、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0034】
第1ブロワ226は、第1バルブ226aを介して第1脱着塔210に接続されており、第1供給制御部230による制御指令に応じて、第1脱着塔210内において窒素酸化物吸着剤152から脱着されたNOを温室140に送出する。
【0035】
第1供給制御部230は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して、第1加熱手段222および第1ブロワ226を制御する。
【0036】
本実施形態において、第1供給制御部230は、第1濃度計測ユニット224によって計測されたNOの濃度が目標値(例えば、5ppb〜1000ppb)となるように、第1加熱手段222の出力をオンオフするスイッチ222aをオンオフ制御するとともに、第1ブロワ226を駆動制御する。
【0037】
そうすると、温室140内の雰囲気中のNOの濃度を目標値に維持するために必要なNOが脱着されるように、第1加熱手段222によって第1脱着塔210内の窒素酸化物吸着剤152が加熱されることとなる。そして、第1加熱手段222による加熱に応じて脱着されたNOが、第1ブロワ226によって温室140に供給されることとなる。これにより、温室140内を植物10の育成を促進する雰囲気とすることができ、効率的に植物10を育成することが可能となる。
【0038】
第2脱着塔250は、移送手段130によって移送された二酸化炭素吸着剤154を収容する。二酸化炭素供給手段260は、第2脱着塔250に収容された二酸化炭素吸着剤154からCOを脱着させて、温室140に供給する。具体的に説明すると、二酸化炭素供給手段260は、第2加熱手段262と、第2濃度計測ユニット264と、第2ブロワ266と、第2供給制御部270とを含んで構成される。
【0039】
第2加熱手段262は、例えば、電気ヒータで構成され、後述する第2供給制御部270による制御指令に応じて、第2脱着塔250(二酸化炭素吸着剤154)を加熱して、二酸化炭素吸着剤154からCOを脱着させる。
【0040】
第2濃度計測ユニット264は、温室140内に配される1または複数の計測プローブ264aと、計測プローブ264aから入力された信号に基づいて、温室140内の雰囲気中(栽培地の雰囲気中)のCOの濃度を計測する第2濃度計測部264bとを含んで構成される。第2濃度計測ユニット264によるCOの計測は、既存の技術であるため、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0041】
第2ブロワ266は、第2バルブ266aを介して第2脱着塔250に接続されており、第2供給制御部270による制御指令に応じて、第2脱着塔250内において二酸化炭素吸着剤154から脱着されたCOを温室140に送出する。
【0042】
第2供給制御部270は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して、第2加熱手段262および第2ブロワ266を制御する。
【0043】
本実施形態において、第2供給制御部270は、第2濃度計測ユニット264によって計測されたCOの濃度が目標値(例えば、400ppm〜2000ppm)となるように、第2加熱手段262の出力をオンオフするスイッチ262aをオンオフ制御するとともに、第2ブロワ266を駆動制御する。
【0044】
そうすると、温室140内の雰囲気中のCOの濃度を目標値に維持するために必要なCOが脱着されるように、第2加熱手段262によって第2脱着塔250内の二酸化炭素吸着剤154が加熱されることとなる。そして、第2加熱手段262による加熱に応じて脱着されたCOが、第2ブロワ266によって温室140に供給されることとなる。これにより、温室140内を植物10の育成を促進する雰囲気とすることができ、効率的に植物10を育成することが可能となる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態にかかる植物育成促進装置150によれば、混合ガス発生源110において廃棄される混合ガスからNOおよびCOを採取して、温室140に供給することができるため、NOおよびCOを低コストで温室140に供給することが可能となる。また、混合ガス発生源110において、本来除去されるNO(窒素酸化物)と、廃棄されるCOとを部分的に回収して、温室140に供給するため、混合ガス発生源110において脱硝コストを低減することができるとともに、CO排出量を削減することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態の植物栽培システム100では、混合ガス発生源110において、窒素酸化物吸着剤152にNOを吸着させるとともに、二酸化炭素吸着剤154にCOを吸着させた後、窒素酸化物吸着剤152自体、二酸化炭素吸着剤154自体を、温室140の近傍に設けられた植物育成促進装置150に移送している。したがって、ガスの状態で混合ガス発生源110から植物育成促進装置150に移送する場合と比較して、ガスを圧縮する装置、圧縮したガスを貯留する装置等が不要となるため、低コストでNOおよびCOを移送することが可能となる。
【0047】
(植物栽培方法)
続いて、植物栽培システム100を用いた植物栽培方法について説明する。図4は、植物栽培方法の流れを説明するためのフローチャートである。図4に示すように、本実施形態にかかる植物栽培方法は、吸着工程(ステップS310)、移送工程(ステップS320)、供給工程(ステップS330)を含む。以下、各工程について詳述する。
【0048】
(吸着工程:ステップS310)
吸着手段120は、混合ガス発生源110から排気された混合ガスを窒素酸化物吸着剤152に接触させて、窒素酸化物吸着剤152にNOを吸着させるとともに、混合ガスを二酸化炭素吸着剤154に接触させて、二酸化炭素吸着剤154にCOを吸着させる。
【0049】
(移送工程:ステップS320)
移送手段130は、NOを吸着した窒素酸化物吸着剤152およびCOを吸着した二酸化炭素吸着剤154を温室140の近傍に設けられた植物育成促進装置150に移送する。
【0050】
(供給工程:ステップS330)
植物育成促進装置150は、移送された窒素酸化物吸着剤152からNOを脱着させて温室140に供給するとともに、二酸化炭素吸着剤154からCOを脱着させて温室140に供給する。
【0051】
図5は、供給工程(ステップS330)の処理の流れを説明するためのフローチャートである。植物育成促進装置150では、第1濃度計測ユニット224が常時NOの濃度を監視するとともに、第2濃度計測ユニット264が常時COの濃度を監視しており、図5のフローチャートに示す処理は、所定時間間隔の割込処理として実行される。
【0052】
(ステップS330−1)
窒素酸化物供給手段220の第1供給制御部230は、第1濃度計測ユニット224が計測したNOの濃度(計測値C)が目標値Ct未満であるか否かを判定する。その結果、計測値Cが目標値Ct未満であると判定した場合には、ステップS330−3に処理を移し、計測値Cが目標値Ct未満ではないと判定した場合には、ステップS330−5に処理を移す。
【0053】
(ステップS330−3)
第1供給制御部230は、スイッチ222aをオンにして、第1加熱手段222に電力を供給し、第1脱着塔210(窒素酸化物吸着剤152)の加熱を開始する(第1脱着開始工程)。
【0054】
(ステップS330−5)
第1供給制御部230は、計測値Cが目標値Ctを上回っているか否かを判定する。その結果、計測値Cが目標値Ctを上回っていると判定した場合には、ステップS330−7に処理を移し、計測値Cが目標値Ctを上回っていないと判定した場合には、ステップS330−9に処理を移す。
【0055】
(ステップS330―7)
第1供給制御部230は、スイッチ222aをオフにして、第1加熱手段222への電力の供給を停止し、第1脱着塔210の加熱を停止する(第1脱着停止工程)。
【0056】
(ステップS330−9)
二酸化炭素供給手段260の第2供給制御部270は、第2濃度計測ユニット264が計測したCOの濃度(計測値D)が目標値Dt未満であるか否かを判定する。その結果、計測値Dが目標値Dt未満であると判定した場合には、ステップS330−11に処理を移し、計測値Dが目標値Dt未満ではないと判定した場合には、ステップS330−13に処理を移す。
【0057】
(ステップS330−11)
第2供給制御部270は、スイッチ262aをオンにして、第2加熱手段262に電力を供給し、第2脱着塔250(二酸化炭素吸着剤154)の加熱を開始する(第2脱着開始工程)。
【0058】
(ステップS330−13)
第2供給制御部270は、計測値Dが目標値Dtを上回っているか否かを判定する。その結果、計測値Dが目標値Dtを上回っていると判定した場合には、ステップS330−15に処理を移し、計測値Dが目標値Dtを上回っていないと判定した場合には、当該供給工程S330の処理を終了する。
【0059】
(ステップS330−15)
第2供給制御部270は、スイッチ262aをオフにして、第2加熱手段262への電力の供給を停止し、第2脱着塔250の加熱を停止して(第2脱着停止工程)、当該供給工程S330の処理を終了する。
【0060】
なお、本明細書の植物栽培方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0062】
例えば、上記実施形態において、窒素酸化物吸着剤152がNOを選択的に吸着する構成を例に挙げて説明したが、窒素酸化物吸着剤152が選択的に吸着する窒素酸化物の種類に限定はない。例えば、一酸化窒素(NO)、一酸化二窒素(NO)、三酸化二窒素(N)、四酸化二窒素(N)、五酸化二窒素(N)等のNO以外の他の1種類の窒素酸化物であってもよいし、複数種類の窒素酸化物の混合物であってもよい。
【0063】
また、上記実施形態において、窒素酸化物吸着剤152としてゼオライトを例に挙げて説明した。しかし、窒素酸化物吸着剤152は、窒素酸化物を選択的に吸着できれば、吸着剤に限定はなく、例えば、窒素酸化物吸着剤152を活性炭で構成してもよい。また、二酸化炭素吸着剤154としてゼオライトを例に挙げて説明した。しかし、二酸化炭素吸着剤154は、二酸化炭素を選択的に吸着できれば、吸着剤に限定はなく、例えば、二酸化炭素吸着剤154を活性炭で構成してもよい。
【0064】
また、上記実施形態において、窒素酸化物吸着剤152から窒素酸化物を脱着させる脱着手段や、二酸化炭素吸着剤154から二酸化炭素を脱着させる脱着手段として、吸着剤を加熱する構成を例に挙げて説明した。しかし、脱着手段は、吸着したガス(吸着ガス)を吸着剤から脱着させることができれば、構成に限定はない。例えば、圧力を変化させる(例えば、減圧させる)ことで、吸着剤から吸着ガスを脱着させてもよいし、吸着ガスより吸着剤との親和性が高いガス(例えば、水蒸気)を供給(パージ)することで、吸着剤から吸着ガスを脱着させるとしてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、NOを選択的に吸着する窒素酸化物吸着剤152を例に挙げて説明したため、第1濃度計測ユニット224がNOの濃度を計測する構成を例に挙げて説明した。しかし、第1濃度計測ユニット224は、窒素酸化物吸着剤152が選択的に吸着した窒素酸化物の濃度を測定すればよい。
【0066】
また、上記実施形態において、植物育成促進装置150が、窒素酸化物吸着剤152と窒素酸化物供給手段220、および、二酸化炭素吸着剤154と二酸化炭素供給手段260を備える構成を例に挙げて説明した。しかし、植物育成促進装置150は、少なくとも窒素酸化物吸着剤152および窒素酸化物供給手段220を備えていればよい。
【0067】
また、上記実施形態では、第1供給制御部230がオンオフ制御する際の閾値となる目標値が1つである場合を例に挙げて説明した。しかし、目標値に幅を持たせ(目標上限値と目標下限値とを設け)、第1濃度計測ユニット224が計測した窒素酸化物の濃度が目標下限値以上目標上限値未満の範囲内に維持されるように、スイッチ222aをオンオフ制御してもよい。例えば、窒素酸化物の濃度が目標下限値未満になったらスイッチ222aをオン制御し、目標上限値以上になったらオフ制御するとよい。
【0068】
また、上記実施形態では、第2供給制御部270がオンオフ制御する際の閾値となる目標値が1つである場合を例に挙げて説明した。しかし、目標値に幅を持たせ(目標上限値と目標下限値とを設け)、第2濃度計測ユニット264が計測した二酸化炭素の濃度が目標下限値以上目標上限値未満の範囲内に維持されるように、スイッチ262aをオンオフ制御してもよい。例えば、二酸化炭素の濃度が目標下限値未満になったらスイッチ262aをオン制御し、目標上限値以上になったらオフ制御するとよい。
【0069】
また、上記実施形態において、温室140外に植物育成促進装置150が設けられる構成を例に挙げて説明した。しかし、植物育成促進装置150は、温室140内に設けられるとしてもよい。
【0070】
また、上記実施形態において、窒素酸化物吸着剤152にNOを吸着させる箇所(混合ガス発生源110)から窒素酸化物吸着剤152からNOを脱着させる箇所(温室140)まで、窒素酸化物吸着剤152を移送する構成を例に挙げて説明した。しかし、混合ガス発生源110と温室140とが隣接している等両者が近距離にある場合、窒素酸化物吸着剤152を移送させずともよく、吸着と脱着を同一の容器で遂行してもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、植物育成促進装置150を温室140に適用する構成を例に挙げて説明したが、植物10の栽培地として露地(露地栽培の栽培地)に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、植物の育成を促進する植物育成促進装置および植物栽培方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
150 植物育成促進装置
152 窒素酸化物吸着剤
154 二酸化炭素吸着剤
220 窒素酸化物供給手段
260 二酸化炭素供給手段
図1
図2
図3
図4
図5