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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-73990(P2017-73990A)
(43)【公開日】2017年4月20日
(54)【発明の名称】植物育成促進装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/02 20060101AFI20170331BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20170331BHJP
   A01G 9/18 20060101ALI20170331BHJP
   F01N 3/08 20060101ALN20170331BHJP
   F01N 3/20 20060101ALN20170331BHJP
【FI】
   A01G7/02
   A01G7/00 601Z
   A01G7/00 603
   A01G9/18
   F01N3/08 B
   F01N3/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-202019(P2015-202019)
(22)【出願日】2015年10月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤峰 智也
(72)【発明者】
【氏名】荒木 敏成
(72)【発明者】
【氏名】碇 真里耶
(72)【発明者】
【氏名】高橋 美佐
【テーマコード(参考)】
2B022
2B029
3G091
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022DA13
2B022DA14
2B022DA15
2B022DA19
2B029JA05
2B029JA10
3G091AA06
3G091AA19
3G091AB02
3G091AB05
3G091CA12
3G091CA17
3G091CB07
3G091DC03
3G091FB05
(57)【要約】
【課題】効率よく植物を育成する。
【解決手段】植物育成促進装置100は、燃焼排ガスの供給源110から供給された燃焼排ガスを脱硝する脱硝触媒を含んで構成され、二酸化炭素および窒素酸化物を含む混合ガスを生成する脱硝装置130と、脱硝装置130によって生成された混合ガスを植物の栽培地(温室10)に供給する供給手段120と、供給手段120によって供給される混合ガスの単位流量あたりの窒素酸化物の量を増加または減少させるように、脱硝装置130を制御する窒素酸化物制御部166とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼排ガスの供給源から供給された燃焼排ガスを脱硝する脱硝触媒を含んで構成され、二酸化炭素および窒素酸化物を含む混合ガスを生成する脱硝装置と、
前記脱硝装置によって生成された前記混合ガスを植物の栽培地に供給する供給手段と、
前記供給手段によって供給される前記混合ガスの単位流量あたりの窒素酸化物の量を増加または減少させるように、前記脱硝装置を制御する窒素酸化物制御部と、
を備えたことを特徴とする植物育成促進装置。
【請求項2】
前記脱硝装置は、
前記脱硝触媒としての選択還元触媒と、
還元剤および該還元剤の前駆物質のいずれか一方または双方を前記選択還元触媒に導入する還元剤導入部と、
を含んで構成され、
前記窒素酸化物制御部は、前記還元剤導入部が導入する、還元剤および該還元剤の前駆物質のいずれか一方または双方の導入量を調整することを特徴とする請求項1に記載の植物育成促進装置。
【請求項3】
前記燃焼排ガスの供給源から供給された前記燃焼排ガスを、前記脱硝触媒を通過させて前記栽培地に送出する脱硝流路と、
前記燃焼排ガスの供給源から供給された前記燃焼排ガスを、前記脱硝触媒を迂回させて前記栽培地に送出するバイパス流路と、
を含んで構成され、
前記窒素酸化物制御部は、前記脱硝流路を通過させる燃焼排ガスと、前記バイパス流路を通過させる燃焼排ガスとの割合を調整することを特徴とする請求項1に記載の植物育成促進装置。
【請求項4】
前記燃焼排ガスの供給源は、
エンジンと、
前記エンジンによって発電する発電機と、
を含んで構成され、
前記栽培地の雰囲気中の二酸化炭素の濃度が、所定の二酸化炭素目標値に維持されるように、前記エンジンへの燃料の供給量を制御する二酸化炭素制御部を備え、
前記窒素酸化物制御部は、前記栽培地の雰囲気中の窒素酸化物の濃度が、所定の窒素酸化物目標値に維持されるように、フィードバック制御を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の植物育成促進装置。
【請求項5】
前記窒素酸化物制御部は、前記エンジンによる窒素酸化物の生成量を増加または減少させるように、該エンジンの空気比を制御することを特徴とする請求項4に記載の植物育成促進装置。
【請求項6】
前記栽培地の雰囲気中の二酸化炭素の濃度が、所定の二酸化炭素目標値に維持されるように、前記燃焼排ガスの供給源から前記脱硝装置へ供給される燃焼排ガスの供給量を制御する二酸化炭素制御部を備え、
前記窒素酸化物制御部は、前記栽培地の雰囲気中の窒素酸化物の濃度が、所定の窒素酸化物目標値に維持されるように、フィードバック制御を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の植物育成促進装置。
【請求項7】
作業者による操作入力に応じて、複数の運転モードから1の運転モードを選択する運転モード選択部を備え、
前記複数の運転モードには、少なくとも、
前記二酸化炭素目標値が第1二酸化炭素目標値に設定され、前記窒素酸化物目標値が第1窒素酸化物目標値に設定される運転モードと、
前記二酸化炭素目標値が前記第1二酸化炭素目標値未満の第2二酸化炭素目標値に設定され、前記窒素酸化物目標値が前記第1窒素酸化物目標値に設定される運転モードと、
が含まれることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の植物育成促進装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の育成を促進する植物育成促進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、野菜、果物等の農作物、花卉、観葉植物等の園芸用植物等の植物を温室内で栽培する際に、温室内に二酸化炭素を供給して植物の光合成を促進している。温室に供給する二酸化炭素として、燃焼によって生じた排気ガスが広く利用されており、例えば、特許文献1には、火力発電設備で生じた排気ガスから、植物の育成を阻害すると考えられていた窒素酸化物(NO)を除去して温室に供給する構成が記載されている。
【0003】
このように、従来、窒素酸化物は、植物の育成を阻害すると考えられていたが、近年の研究により、植物の栽培雰囲気を10ppb〜200ppbの窒素酸化物の雰囲気とすることにより、植物の育成を促進できることが分かってきた(例えば、非特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4489536号公報
【特許文献2】特開2012−235748号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Plant Signaling & Behavior 9, e28563; March; 2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に記載されているように、所定の濃度範囲の窒素酸化物の雰囲気は、植物の育成を促進できるため、窒素酸化物を利用して、さらに効率よく植物を育成する技術の開発が希求されている。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、効率よく植物を育成することができる植物育成促進装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の植物育成促進装置は、燃焼排ガスの供給源から供給された燃焼排ガスを脱硝する脱硝触媒を含んで構成され、二酸化炭素および窒素酸化物を含む混合ガスを生成する脱硝装置と、前記脱硝装置によって生成された前記混合ガスを植物の栽培地に供給する供給手段と、前記供給手段によって供給される前記混合ガスの単位流量あたりの窒素酸化物の量を増加または減少させるように、前記脱硝装置を制御する窒素酸化物制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、前記脱硝装置は、前記脱硝触媒としての選択還元触媒と、還元剤および該還元剤の前駆物質のいずれか一方または双方を前記選択還元触媒に導入する還元剤導入部と、を含んで構成され、前記窒素酸化物制御部は、前記還元剤導入部が導入する、還元剤および該還元剤の前駆物質のいずれか一方または双方の導入量を調整するとしてもよい。
【0010】
また、前記燃焼排ガスの供給源から供給された前記燃焼排ガスを、前記脱硝触媒を通過させて前記栽培地に送出する脱硝流路と、前記燃焼排ガスの供給源から供給された前記燃焼排ガスを、前記脱硝触媒を迂回させて前記栽培地に送出するバイパス流路と、を含んで構成され、前記窒素酸化物制御部は、前記脱硝流路を通過させる燃焼排ガスと、前記バイパス流路を通過させる燃焼排ガスとの割合を調整するとしてもよい。
【0011】
また、前記燃焼排ガスの供給源は、エンジンと、前記エンジンによって発電する発電機と、を含んで構成され、前記栽培地の雰囲気中の二酸化炭素の濃度が、所定の二酸化炭素目標値に維持されるように、前記エンジンへの燃料の供給量を制御する二酸化炭素制御部を備え、前記窒素酸化物制御部は、前記栽培地の雰囲気中の窒素酸化物の濃度が、所定の窒素酸化物目標値に維持されるように、フィードバック制御を行うとしてもよい。
【0012】
また、前記窒素酸化物制御部は、前記エンジンによる窒素酸化物の生成量を増加または減少させるように、該エンジンの空気比を制御するとしてもよい。
【0013】
また、前記栽培地の雰囲気中の二酸化炭素の濃度が、所定の二酸化炭素目標値に維持されるように、前記燃焼排ガスの供給源から前記脱硝装置へ供給される燃焼排ガスの供給量を制御する二酸化炭素制御部を備え、前記窒素酸化物制御部は、前記栽培地の雰囲気中の窒素酸化物の濃度が、所定の窒素酸化物目標値に維持されるように、フィードバック制御を行うとしてもよい。
【0014】
また、作業者による操作入力に応じて、複数の運転モードから1の運転モードを選択する運転モード選択部を備え、前記複数の運転モードには、少なくとも、前記二酸化炭素目標値が第1二酸化炭素目標値に設定され、前記窒素酸化物目標値が第1窒素酸化物目標値に設定される運転モードと、前記二酸化炭素目標値が前記第1二酸化炭素目標値未満の第2二酸化炭素目標値に設定され、前記窒素酸化物目標値が前記第1窒素酸化物目標値に設定される運転モードと、が含まれるとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、効率よく植物を育成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態にかかる植物育成促進装置を説明する図である。
図2】第1実施形態にかかる脱硝装置を説明する図である
図3】植物栽培方法の処理の流れを説明するフローチャートである。
図4】第1運転モード処理の流れを説明するフローチャートである。
図5】第2運転モード処理の流れを説明するフローチャートである。
図6】第3運転モード処理の流れを説明するフローチャートである。
図7】第2実施形態にかかる植物育成促進装置を説明する図である。
図8】第3実施形態にかかる脱硝装置および中央制御部を説明する図である。
図9】第4実施形態にかかる植物育成促進装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
(第1実施形態:植物育成促進装置100)
図1は、第1実施形態にかかる植物育成促進装置100を説明する図である。図1に示すように、本実施形態にかかる植物育成促進装置100は、燃焼排ガスの供給源110と、供給手段120と、脱硝装置130と、第1濃度計測ユニット140と、第2濃度計測ユニット150と、中央制御部160とを含んで構成され、供給源110から供給された燃焼排ガスを脱硝して、植物12の栽培地である温室10に供給する。図1中、ガスの流れを実線の矢印で示し、信号の流れを破線の矢印で示す。なお、ここでは、窒素酸化物として二酸化窒素(NO)を例に挙げて説明する。
【0019】
供給源110は、所謂トリジェネレーションシステムであり、エンジン112と、発電機114と、燃料供給部116と、空気供給部118とを含んで構成される。エンジン112は、例えば、ガスエンジンであり、発電機114を駆動して発電させる。発電機114によって生成された電力は、温室10内の照明に利用される。また、エンジン112において生じた熱は、温室10内の熱源として利用される。
【0020】
燃料供給部116は、例えば、遮断弁で構成され、不図示の都市ガスパイプラインが燃料供給部116に接続されており、エンジン112へ都市ガスを供給する。なお、燃料供給部116とエンジン112との間には、流量調整弁116aが設けられている。
【0021】
空気供給部118は、例えば、ブロワで構成され、エンジン112へ空気を供給する。なお、空気供給部118とエンジン112との間には、流量調整弁118aが設けられている。
【0022】
供給手段120は、例えば、ブロワで構成され、エンジン112から排気された燃焼排ガスを、脱硝装置130を介して温室10に供給する。つまり、供給手段120は、脱硝装置130において脱硝された燃焼排ガス(二酸化炭素および窒素酸化物を含む混合ガス、以下、「混合ガス」と称する)を温室10に供給する。
【0023】
脱硝装置130は、燃焼排ガスの供給源110から供給された燃焼排ガスを脱硝する。図2は、第1実施形態にかかる脱硝装置130を説明する図である。図2中、ガスの流れを実線の矢印で示し、信号の流れを破線の矢印で示す。
【0024】
図2に示すように、本実施形態にかかる脱硝装置130は、選択還元触媒(SCR)132と、還元剤導入部134と、酸化装置136とを含んで構成される。
【0025】
選択還元触媒132は、還元剤の存在下で、窒素酸化物を脱硝(還元)する脱硝触媒である。ここで、還元剤は、例えば、アンモニアである。
【0026】
還元剤導入部134は、例えば、ポンプで構成され、還元剤および還元剤の前駆物質のいずれか一方または双方を選択還元触媒132に導入する。ここで、還元剤の前駆物質は、例えば、尿素である。本実施形態では、還元剤導入部134が尿素を選択還元触媒132に導入する構成を例に挙げて説明する。また、還元剤導入部134と選択還元触媒132との間には、導入量調整弁134aが設けられている。
【0027】
なお、選択還元触媒132の脱硝率は、選択還元触媒132における還元剤の量に基づく。つまり、還元剤導入部134によって選択還元触媒132に導入される尿素量に応じて、選択還元触媒132の脱硝率が決定されることとなる。具体的に説明すると、相対的に尿素量が多いと脱硝率は高くなり、相対的に尿素量が少ないと脱硝率が低くなる。
【0028】
酸化装置136は、選択還元触媒132が脱硝した燃焼排ガス中に含まれる一酸化窒素(NO)をNOに酸化する。
【0029】
図1に戻って説明すると、第1濃度計測ユニット140は、温室10内に配される1または複数の計測プローブ142と、計測プローブ142から入力された信号に基づいて、温室10内の雰囲気中(栽培地の雰囲気中)の窒素酸化物の濃度を計測する第1濃度計測部144とを含んで構成される。本実施形態において、第1濃度計測ユニット140は、窒素酸化物としてNOの濃度を計測する。第1濃度計測ユニット140による窒素酸化物の計測は、既存の技術であるため、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0030】
第2濃度計測ユニット150は、温室10内に配される1または複数の計測プローブ152と、計測プローブ152から入力された信号に基づいて、温室10内の雰囲気中(栽培地の雰囲気中)のCOの濃度を計測する第2濃度計測部154とを含んで構成される。第2濃度計測ユニット150によるCOの計測は、既存の技術であるため、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0031】
中央制御部160は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して、植物育成促進装置100全体を管理および制御する。本実施形態において、中央制御部160は、燃費が最適である空気比(空燃比)となるように、流量調整弁118aの開度を調整する。ここで、空気比は、燃焼用の空気量/理論空気量(燃料を完全に燃焼させるために必要な最低の空気量)である。また、中央制御部160は、運転モード選択部162、二酸化炭素制御部164、窒素酸化物制御部166として機能する。
【0032】
運転モード選択部162は、作業者による操作入力に応じて、3つの運転モードから1の運転モードを選択する。二酸化炭素制御部164は、運転モード選択部162によって選択された運転モードに設定された条件にしたがって、エンジン112への燃料の供給量を制御(フィードバック制御)する。窒素酸化物制御部166は、運転モード選択部162によって選択された運転モードに設定された条件にしたがって、温室10に供給される混合ガスの単位流量あたりのNOの生成量を増加または減少させるように、還元剤導入部134が導入する尿素の導入量を調整(フィードバック制御)する。以下、3つの運転モードそれぞれについて説明する。
【0033】
(第1運転モード)
第1運転モードは、温室10内のCOの濃度を第1二酸化炭素目標値とする運転モードである。なお、第1二酸化炭素目標値は、植物12の種類に応じて決定される、当該植物12の育成を大気環境より優位に促進する値であり、例えば、400ppm〜2000ppmの範囲内の予め定められた値である。
【0034】
運転モード選択部162によって、第1運転モードが選択されると、二酸化炭素制御部164は、まず、第2濃度計測ユニット150によって計測されたCOの濃度が、第1二酸化炭素目標値(例えば、1000ppm)となるように、流量調整弁116aの開度を調整して、エンジン112に供給される燃料の供給量を制御する。
【0035】
窒素酸化物制御部166は、二酸化炭素制御部164によって決定された燃料の供給量に基づいて、選択還元触媒132における脱硝率(NO除去率)が最も高く(第1濃度計測ユニット140によって計測されたNOの濃度が後述する第1窒素酸化物目標値未満の所定の第2窒素酸化物目標値となる脱硝率)なるとともに、過剰の尿素による尿素やアンモニアの温室10へのスリップを防ぎながら、導入量調整弁134aの開度を調整する。
【0036】
これにより、温室10内を植物12の育成を促進するCO雰囲気に維持することができ、効率よく植物12を育成することが可能となる。
【0037】
(第2運転モード)
第2運転モードは、温室10内のCOの濃度を、第1二酸化炭素目標値未満の第2二酸化炭素目標値とするとともに、NOの濃度を第1窒素酸化物目標値とする運転モードである。なお、第1窒素酸化物目標値は、植物12の種類に応じて決定される、当該植物12の育成を促進する値であり、例えば、5ppb〜1000ppbの範囲内の予め定められた値である。
【0038】
具体的に説明すると、運転モード選択部162によって、第2運転モードが選択されると、二酸化炭素制御部164は、まず、第2濃度計測ユニット150によって計測されたCOの濃度が、第2二酸化炭素目標値(例えば、600ppm)となるように、流量調整弁116aの開度を調整して、エンジン112に供給される燃料の供給量を制御する。
【0039】
窒素酸化物制御部166は、第1濃度計測ユニット140によって計測されたNOの濃度が第1窒素酸化物目標値(例えば、50ppb)となるように、導入量調整弁134aの開度を調整して、選択還元触媒132への尿素の導入量を制御する。具体的に説明すると、窒素酸化物制御部166は、二酸化炭素制御部164によって決定された燃料の供給量と、目的とする脱硝率(第1濃度計測ユニット140の計測値が第1窒素酸化物目標値となる脱硝率)とに基づいて、導入量調整弁134aの開度を調整し、選択還元触媒132に導入される尿素の導入量を制御する。
【0040】
このように、第2運転モードでは、温室10の雰囲気中のCOの濃度が、第1二酸化炭素目標値未満の第2二酸化炭素目標値に維持されるように、燃料の供給量が制御され、温室10の雰囲気中のNOの濃度が、第1窒素酸化物目標値に維持されるように、脱硝率(尿素の導入量)が制御される。したがって、植物12の育成を促進する二酸化炭素濃度の下限値を第2二酸化炭素目標値に設定すれば、植物12の育成を促進するために必要な最低限のCOが確保できる燃料を燃焼させつつ、NOの濃度を第1窒素酸化物目標値に維持することが可能となる。
【0041】
これにより、第1運転モードと比較して、消費する燃料を低減しつつ、温室10内を植物12の育成を促進する雰囲気に維持することが可能となる。したがって、低コストで植物12の育成を促進することが可能となり、効率よく植物12を育成することができる。
【0042】
(第3運転モード)
第3運転モードは、温室10内のCOの濃度を第1二酸化炭素目標値とするとともに、NOの濃度を第1窒素酸化物目標値とする運転モードである。
【0043】
具体的に説明すると、運転モード選択部162によって、第3運転モードが選択されると、二酸化炭素制御部164は、まず、第2濃度計測ユニット150によって計測されたCOの濃度が第1二酸化炭素目標値となるように、流量調整弁116aの開度を調整して、エンジン112に供給される燃料の供給量を制御する。
【0044】
窒素酸化物制御部166は、第1濃度計測ユニット140によって計測されたNOの濃度が第1窒素酸化物目標値となるように、導入量調整弁134aの開度を調整して、選択還元触媒132への尿素の導入量を制御する。
【0045】
このように、第3運転モードでは、温室10の雰囲気中のCOの濃度が、第1二酸化炭素目標値に維持されるように、燃料の供給量が制御され、温室10の雰囲気中のNOの濃度が、第1窒素酸化物目標値に維持されるように、脱硝率が制御される。
【0046】
これにより、温室10内を、植物12の育成をさらに促進する雰囲気に維持することができ、効率よく植物12を育成することが可能となる。なお、第3運転モードでは、第2運転モードと比較して、単位時間あたりの燃料消費量は増加するものの、植物12の育成を促進する効果を向上させることができる。したがって、第2運転モードで育成した場合と同等に植物12が育成するまでの期間(例えば、植物12の収量が実質的に等しくなる期間)を短縮することが可能となる。また、第3運転モードでは、第2運転モードで育成した場合と同等の栽培期間である場合、植物12が育成を促進(増収)させることができる。このように、混合ガス(COおよびNO)を供給する期間を短縮することができるため、第1運転モードと比較して、消費する燃料を低減しつつ、温室10内を植物12の育成を促進する雰囲気に維持することが可能となる。
【0047】
このように、運転モード選択部152が少なくとも第2運転モードまたは第3運転モードを選択可能であることにより、燃料の消費量や尿素の消費量を低減することができる。具体的に説明すると、窒素酸化物による植物12の育成促進効果は、播種後から所定期間が経過するまでの植物12の生育の初期段階で特に発揮される。したがって、植物12の育成の初期段階において、第2運転モードを選択することにより、第1運転モード(従来の二酸化炭素施肥)と同じ栽培期間、かつ、同等の植物12の育成(同じ収量)を、燃料の消費量および尿素の消費量を低減して行うことができる。また、植物12の育成の初期段階において、第3運転モードを選択することにより、第1運転モード(従来の二酸化炭素施肥)と同じ栽培期間、かつ同量の燃料の消費量で、植物12の育成を促進(増収)することが可能となり、また、尿素の消費量を低減することができる。また、第3運転モードを選択することにより、第1運転モード(従来の二酸化炭素施肥)と同量の燃料の消費量で植物12の育成を行っても、従来と同等に植物12を育成させる栽培期間を短縮することが可能となり、また、尿素の消費量を低減することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態にかかる植物育成促進装置100によれば、温室10内を植物12の育成を促進する雰囲気に維持することができ、効率よく植物12を育成することが可能となる。
【0049】
(植物栽培方法)
続いて、植物育成促進装置100を用いた植物栽培方法について説明する。図3は、植物栽培方法の流れを説明するためのフローチャートである。植物育成促進装置100では、第1濃度計測ユニット140が常時NOの濃度を監視するとともに、第2濃度計測ユニット150が常時COの濃度を監視しており、図3のフローチャートに示す処理は、所定時間間隔の割込処理として実行される。
【0050】
(ステップS210)
中央制御部160は、運転モードが第1運転モードであるか否かを判定する。その結果、第1運転モードであると判定した場合にはステップS220に処理を移し、第1運転モードではないと判定した場合にはステップS230に処理を移す。
【0051】
(ステップS220)
中央制御部160は、第1運転モード処理を遂行して、当該植物栽培方法にかかる処理を終了する。この第1運転モード処理については、後に詳述する。
【0052】
(ステップS230)
中央制御部160は、運転モードが第2運転モードであるか否かを判定する。その結果、第2運転モードであると判定した場合にはステップS240に処理を移し、第2運転モードではないと判定した場合にはステップS250に処理を移す。
【0053】
(ステップS240)
中央制御部160は、第2運転モード処理を遂行して、当該植物栽培方法にかかる処理を終了する。この第2運転モード処理については、後に詳述する。
【0054】
(ステップS250)
中央制御部160は、第3運転モード処理を遂行して、当該植物栽培方法にかかる処理を終了する。この第3運転モード処理については、後に詳述する。
【0055】
図4は、第1運転モード処理(ステップS220)の流れを説明するフローチャートである。
【0056】
(ステップS220−1)
二酸化炭素制御部164は、第2濃度計測ユニット150が計測したCOの濃度(計測値D)が第1二酸化炭素目標値D1未満であるか否かを判定する。その結果、計測値Dが第1二酸化炭素目標値D1未満であると判定した場合には、ステップS220−3に処理を移し、計測値Dが第1二酸化炭素目標値D1未満ではないと判定した場合には、ステップS220−5に処理を移す。
【0057】
(ステップS220−3)
二酸化炭素制御部164は、流量調整弁116aの開度を大きくして、ステップS220−9に処理を移す。
【0058】
(ステップS220−5)
二酸化炭素制御部164は、計測値Dが第1二酸化炭素目標値D1を上回っているか否かを判定する。その結果、計測値Dが第1二酸化炭素目標値D1を上回っていると判定した場合には、ステップS220−7に処理を移し、計測値Dが第1二酸化炭素目標値D1を上回っていないと判定した場合には、ステップS220−9に処理を移す。
【0059】
(ステップS220−7)
二酸化炭素制御部164は、流量調整弁116aの開度を小さくして、ステップS220−9に処理を移す。
【0060】
(ステップS220−9)
窒素酸化物制御部166は、上記ステップS220−3またはステップS220−7において決定された流量調整弁116aの開度に応じた燃料の供給量に基づいて、選択還元触媒132における脱硝率が最も高くなるとともに、過剰の尿素による尿素やアンモニアの温室10へのスリップを防ぎながら、導入量調整弁134aの開度を調整する導入量制御処理を遂行して、当該第1運転モード処理を終了する。
【0061】
こうして、温室10内が植物12の育成を促進するCO雰囲気となるように、混合ガスが温室10内に供給されることとなる。
【0062】
図5は、第2運転モード処理(ステップS240)の流れを説明するフローチャートである。
【0063】
(ステップS240−1)
二酸化炭素制御部164は、計測値Dが、第2二酸化炭素目標値D2未満であるか否かを判定する。その結果、計測値Dが第2二酸化炭素目標値D2未満であると判定した場合には、ステップS240−3に処理を移し、計測値Dが第2二酸化炭素目標値D2未満ではないと判定した場合には、ステップS240−5に処理を移す。
【0064】
(ステップS240−3)
二酸化炭素制御部164は、流量調整弁116aの開度を大きくして、ステップS240−9に処理を移す。
【0065】
(ステップS240−5)
二酸化炭素制御部164は、計測値Dが第2二酸化炭素目標値D2を上回っているか否かを判定する。その結果、計測値Dが第2二酸化炭素目標値D2を上回っていると判定した場合には、ステップS240−7に処理を移し、計測値Dが第2二酸化炭素目標値D2を上回っていないと判定した場合には、ステップS240−9に処理を移す。
【0066】
(ステップS240−7)
二酸化炭素制御部164は、流量調整弁116aの開度を小さくして、ステップS240−9に処理を移す。
【0067】
(ステップS240−9)
窒素酸化物制御部166は、第1濃度計測ユニット140が計測したNOの濃度(計測値C)が第1窒素酸化物目標値C1未満であるか否かを判定する。その結果、計測値Cが第1窒素酸化物目標値C1未満であると判定した場合には、ステップS240−11に処理を移し、計測値Cが第1窒素酸化物目標値C1未満ではないと判定した場合には、ステップS240−13に処理を移す。
【0068】
(ステップS240−11)
窒素酸化物制御部166は、導入量調整弁134aの開度を小さくし、尿素の導入量を低減させて(脱硝率を低下させて)、当該第2運転モード処理を終了する。
【0069】
(ステップS240−13)
窒素酸化物制御部166は、計測値Cが第1窒素酸化物目標値C1を上回っているか否かを判定する。その結果、計測値Cが第1窒素酸化物目標値C1を上回っていると判定した場合には、ステップS240−15に処理を移し、計測値Cが第1窒素酸化物目標値C1を上回っていないと判定した場合には、当該第2運転モード処理を終了する。
【0070】
(ステップS240−15)
窒素酸化物制御部166は、導入量調整弁134aの開度を大きくし、尿素の導入量を増加させて(脱硝率を向上させて)、当該第2運転モード処理を終了する。
【0071】
こうして、温室10内が植物12の育成を促進する雰囲気となるように、混合ガスが温室10内に供給されることとなる。
【0072】
図6は、第3運転モード処理(ステップS250)の流れを説明するフローチャートである。
【0073】
(ステップS250−1)
二酸化炭素制御部164は、計測値Dが第1二酸化炭素目標値D1未満であるか否かを判定する。その結果、計測値Dが第1二酸化炭素目標値D1未満であると判定した場合には、ステップS250−3に処理を移し、計測値Dが第1二酸化炭素目標値D1未満ではないと判定した場合には、ステップS250−5に処理を移す。
【0074】
(ステップS250−3)
二酸化炭素制御部164は、流量調整弁116aの開度を大きくして、ステップS250−9に処理を移す。
【0075】
(ステップS250−5)
二酸化炭素制御部164は、計測値Dが第1二酸化炭素目標値D1を上回っているか否かを判定する。その結果、計測値Dが第1二酸化炭素目標値D1を上回っていると判定した場合には、ステップS250−7に処理を移し、計測値Dが第1二酸化炭素目標値D1を上回っていないと判定した場合には、ステップS250−9に処理を移す。
【0076】
(ステップS250−7)
二酸化炭素制御部164は、流量調整弁116aの開度を小さくして、ステップS250−9に処理を移す。
【0077】
(ステップS250−9)
窒素酸化物制御部166は、第1濃度計測ユニット140が計測したNOの濃度(計測値C)が第1窒素酸化物目標値C1未満であるか否かを判定する。その結果、計測値Cが第1窒素酸化物目標値C1未満であると判定した場合には、ステップS250−11に処理を移し、計測値Cが第1窒素酸化物目標値C1未満ではないと判定した場合には、ステップS250−13に処理を移す。
【0078】
(ステップS250−11)
窒素酸化物制御部166は、導入量調整弁134aの開度を小さくし、尿素の導入量を低減させて(脱硝率を低下させて)、当該第3運転モード処理を終了する。
【0079】
(ステップS250−13)
窒素酸化物制御部166は、計測値Cが第1窒素酸化物目標値C1を上回っているか否かを判定する。その結果、計測値Cが第1窒素酸化物目標値C1を上回っていると判定した場合には、ステップS250−15に処理を移し、計測値Cが第1窒素酸化物目標値C1を上回っていないと判定した場合には、当該第3運転モード処理を終了する。
【0080】
(ステップS250−15)
窒素酸化物制御部166は、導入量調整弁134aの開度を大きくし、尿素の導入量を増加させて(脱硝率を向上させて)、当該第3運転モード処理を終了する。
【0081】
こうして、温室10内が植物12の育成を促進する雰囲気となるように、混合ガスが温室10内に供給されることとなる。
【0082】
(第2実施形態:植物育成促進装置300)
図7は、第2実施形態にかかる植物育成促進装置300を説明する図である。図7に示すように、本実施形態にかかる植物育成促進装置300は、燃焼排ガスの供給源110と、供給手段120と、脱硝装置130と、第1濃度計測ユニット140と、第2濃度計測ユニット150と、中央制御部360とを含んで構成される。図7中、ガスの流れを実線の矢印で示し、信号の流れを破線の矢印で示す。なお、上記第1実施形態と実質的に等しい構成については、同一の符号を付して説明を省略し、ここでは、構成の異なる中央制御部360について詳述する。
【0083】
中央制御部360は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して、植物育成促進装置300全体を管理および制御する。本実施形態において、中央制御部360は、運転モード選択部162、二酸化炭素制御部164、窒素酸化物制御部366として機能する。
【0084】
窒素酸化物制御部366は、上記導入量調整弁134aの開度の調整に加えて、エンジン112の空気比を制御する。
【0085】
具体的に説明すると、第1運転モードにおいて、窒素酸化物制御部366は、上記導入量調整弁134aの開度の調整に加えて、NOが可能な限り生成されないような空気比(第1濃度計測ユニット140によって計測されたNOの濃度が第2窒素酸化物目標値となる空気比、例えば、理論空気量)となるように、流量調整弁118aの開度を調整する。
【0086】
また、窒素酸化物制御部366は、第2運転モードおよび第3運転モードにおいて、上記導入量調整弁134aの開度の調整に加えて、第1濃度計測ユニット140によって計測されたNOの濃度が第1窒素酸化物目標値となるように、流量調整弁118aの開度を調整して、エンジン112の空気比を制御する。具体的に説明すると、窒素酸化物制御部366は、二酸化炭素制御部164によって決定された燃料の供給量と、目的とする空気比(第1濃度計測ユニット140の計測値が第1窒素酸化物目標値となる空気比)とに基づいて、流量調整弁118aの開度を調整し、エンジン112の空気比を制御する。具体的に説明すると、窒素酸化物制御部366は、NOの濃度が第1窒素酸化物目標値未満である場合、流量調整弁118aの開度を大きくし、第1窒素酸化物目標値を上回る場合、流量調整弁118aの開度を小さくする。
【0087】
以上説明したように、本実施形態にかかる植物育成促進装置300によれば、窒素酸化物制御部366が、脱硝率の制御に加えて、エンジン112の空気比を制御することで、選択還元触媒132への尿素の導入量を低減することができる。
【0088】
(第3実施形態:植物育成促進装置400)
本実施形態にかかる植物育成促進装置400は、上記植物育成促進装置100と比較して、脱硝装置430および中央制御部460が異なる。以下、脱硝装置430および中央制御部460について詳述する。
【0089】
図8は、第3実施形態にかかる脱硝装置430および中央制御部460を説明する図である。図8中、ガスの流れを実線の矢印で示し、信号の流れを破線の矢印で示す。なお、上記第1実施形態と実質的に等しい構成については、同一の符号を付して説明を省略し、ここでは、構成の異なる脱硝装置430、中央制御部460について詳述する。
【0090】
脱硝装置430は、三元触媒432と、脱硝流路434と、バイパス流路436とを含んで構成される。
【0091】
三元触媒432は、還元剤の添加を要さず、窒素酸化物を脱硝(還元)する脱硝触媒である。脱硝流路434は、供給源110から供給された燃焼排ガスを、三元触媒432を通過させて温室10に送出する流路である。なお、脱硝流路434における三元触媒432の上流側には、流量調整弁434aが設けられている。
【0092】
バイパス流路436は、供給源110から供給された燃焼排ガスを、三元触媒432を迂回させて温室10に送出する流路である。なお、バイパス流路436には、流量調整弁436aが設けられている。
【0093】
中央制御部460は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して、植物育成促進装置400全体を管理および制御する。本実施形態において、中央制御部460は、運転モード選択部162、二酸化炭素制御部164、窒素酸化物制御部466として機能する。
【0094】
窒素酸化物制御部466は、運転モード選択部162によって選択された運転モードに設定された条件にしたがって、温室10に供給される混合ガスの単位流量あたりのNOの生成量を増加または減少させるように、脱硝流路434を通過させる燃焼排ガスと、バイパス流路436を通過させる燃焼排ガスとの割合を調整(フィードバック制御)する。
【0095】
具体的に説明すると、第1運転モードにおいて、窒素酸化物制御部466は、流量調整弁434aを開弁するとともに、流量調整弁436aを閉弁する。
【0096】
また、窒素酸化物制御部466は、第2運転モードおよび第3運転モードにおいて、第1濃度計測ユニット140によって計測されたNOの濃度が第1窒素酸化物目標値となるように、流量調整弁434aおよび流量調整弁436aの開度を調整して、脱硝流路434を通過させる燃焼排ガスと、バイパス流路436を通過させる燃焼排ガスとの割合を調整する。例えば、計測されたNOの濃度が第1窒素酸化物目標値未満である場合、流量調整弁436aの開度を大きくする。一方、計測されたNOの濃度が第1窒素酸化物目標値を上回る場合、流量調整弁434aの開度を大きくする。
【0097】
以上説明したように、本実施形態にかかる植物育成促進装置400によれば、温室10内を植物12の育成を促進する雰囲気に維持することが可能となる。
【0098】
(第4実施形態:植物育成促進装置500)
図9は、第4実施形態にかかる植物育成促進装置500を説明する図である。図9に示すように、本実施形態にかかる植物育成促進装置500は、供給手段120と、脱硝装置130と、第1濃度計測ユニット140と、第2濃度計測ユニット150と、中央制御部560とを含んで構成され、燃焼排ガスの供給源50から供給された燃焼排ガスを脱硝して、植物12の栽培地である温室10に供給する。図9中、ガスの流れを実線の矢印で示し、信号の流れを破線の矢印で示す。なお、上記第1実施形態と実質的に等しい構成については、同一の符号を付して説明を省略し、ここでは、構成の異なる中央制御部560について詳述する。
【0099】
本実施形態において、供給源50は、火力発電所、コンクリート製造設備等であり、燃焼排ガスを排出している。そして、供給手段120は、供給源50から排出された燃焼排ガスを、脱硝装置130を介して温室10に供給する。
【0100】
中央制御部560は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して、植物育成促進装置500全体を管理および制御する。本実施形態において、中央制御部560は、運転モード選択部162、二酸化炭素制御部564、窒素酸化物制御部166として機能する。
【0101】
二酸化炭素制御部564は、運転モード選択部162によって選択された運転モードに設定された条件にしたがって、供給源50から脱硝装置130への燃焼排ガスの供給量を制御するように、供給手段120の出力を調整する。
【0102】
以上説明したように、本実施形態にかかる植物育成促進装置500によれば、供給手段120を制御して、脱硝装置130への燃焼排ガスの供給量を制御するだけで、温室10内を植物12の育成を促進するCO雰囲気に維持することができ、効率よく植物12を育成することが可能となる。
【0103】
(実施例)
レタス(品種名:アノマ、トジョンマット、レッドファイヤー)、ホウレンソウ(品種名:おかめ、次郎丸草)、ハツカダイコン(品種名:コメット)、ヒロシマナ、トマト(品種名:マイクロトム)、キュウリ(品種名:はやみどり)の9種類の植物を、第1運転モードおよび第2運転モードでそれぞれ育成し、収穫後の乾燥重量を比較した。なお、第1運転モードでは、二酸化炭素目標値を1000ppmとし、NOは大気環境(3ppb)と同様として栽培を行った。また、第2運転モードでは、二酸化炭素目標範囲の下限値を600ppmとし、窒素酸化物目標値を50ppbとして栽培を行った。
【0104】
その結果、上記9種類の植物いずれにおいても、第1運転モードと第2運転モードとで栽培した結果得られたバイオマス(収穫物)の乾燥重量に有意な差が認められなかった。
【0105】
以上のことから、レタス等のキク目(Asterales)、キク科(Asteraceae)、アキノノゲシ属(Lactica)の植物、ホウレンソウ等のナデシコ目(Caryophyllales)、ヒユ科(Amaranthaceae)、アカザ亜科(Chenopodioideae)、ホウレンソウ属(Spinacia)の植物、ハツカダイコン等のアブラナ目(Brassicales)、アブラナ科(Brassicaceae)、ダイコン属(Raphanus)の植物、ヒロシマナ等のアブラナ目(Brassicales)、アブラナ科(Brassicaceae)の植物、トマト等のナス目(Solanales)、ナス科(Solanaceae)、ナス属(Solanum)の植物、キュウリ等のウリ目(Cucurbitales)、ウリ科(Cucurbitaceae)、キュウリ属(Cucumis)の植物において、二酸化炭素の濃度を下限値に維持しても窒素酸化物の濃度を最適化することで、二酸化炭素の濃度を最適化した場合と同様の収量が得られることが確認された。
【0106】
これにより、消費する燃料を低減しつつ、効率よく植物を育成することができることが分かった。
【0107】
また、上記結果より、温室10内の雰囲気の二酸化炭素の濃度および窒素酸化物の濃度を双方とも最適化することで、さらに効率よく植物を育成できることが推測される。
【0108】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0109】
例えば、上記第1〜第3実施形態において、エンジン112が生成する窒素酸化物としてNOを例に挙げて説明したが、エンジン112が生成する窒素酸化物の種類に限定はない。例えば、一酸化窒素(NO)、一酸化二窒素(NO)、三酸化二窒素(N)、四酸化二窒素(N)、五酸化二窒素(N)等のNO以外の他の1種類の窒素酸化物であってもよいし、複数種類の窒素酸化物の混合物であってもよい。
【0110】
また、上記第1〜第3実施形態では、NOを生成するエンジン112を例に挙げて説明したため、第1濃度計測ユニット140がNOの濃度を計測する構成を例に挙げて説明した。しかし、第1濃度計測ユニット140は、エンジン112が生成した窒素酸化物の濃度を測定すればよい。また、エンジン112がNOを生成して、NOを温室10に供給する場合、酸化装置136を省略することができる。
【0111】
また、上記実施形態において、第1〜第3運転モードのいずれかの運転モードに設定される植物育成促進装置100、300、400、500を例に挙げて説明した。しかし、運転モードの数に限定はなく、植物育成促進装置は、少なくとも、第2運転モードおよび第3運転モードの双方または一方に設定できればよい。
【0112】
また、上記実施形態では、1の運転モードにおいて、二酸化炭素制御部が制御処理を遂行する際の閾値となる二酸化炭素目標値が1つである場合を例に挙げて説明した。しかし、目標値に幅を持たせ(目標上限値と目標下限値とを設け)、第2濃度計測ユニット150が計測した二酸化炭素の濃度が目標下限値以上目標上限値未満の範囲内に維持されるように、制御処理を遂行してもよい。例えば、二酸化炭素制御部164は、二酸化炭素の濃度が目標下限値未満になったら流量調整弁116aの開度を大きくし、目標上限値以上になったら開度を小さくするとよい。
【0113】
また、上記実施形態では、1の運転モードにおいて、窒素酸化物制御部が制御処理を遂行する際の閾値となる窒素酸化物目標値が1つである場合を例に挙げて説明した。しかし、目標値に幅を持たせ(目標上限値と目標下限値とを設け)、第1濃度計測ユニット140が計測した窒素酸化物の濃度が目標下限値以上目標上限値未満の範囲内に維持されるように、制御処理を遂行してもよい。例えば、窒素酸化物制御部166は、窒素酸化物の濃度が目標下限値未満になったら導入量調整弁134aの開度を小さくし、目標上限値以上になったら開度を大きくするとよい。
【0114】
また、上記第1〜第3実施形態の第1運転モードでは、第2濃度計測ユニット150が計測したCOの濃度が十分である場合(第1二酸化炭素目標値を満たしている場合)であっても、エンジン112による燃焼を停止しない構成を例に挙げて説明した。しかし、第2濃度計測ユニット150が計測したCOの濃度が、第1二酸化炭素目標値を満たしている場合、エンジン112による燃焼を停止するとしてもよい。
【0115】
また、上記第1〜第3実施形態の第2、第3運転モードでは、第2濃度計測ユニット150が計測したCOの濃度が十分であり(第1二酸化炭素目標値もしくは第2二酸化炭素目標値を満たしている場合)、かつ、第1濃度計測ユニット140が計測したNOの濃度が十分である場合(第1窒素酸化物目標値を満たしている場合)であっても、エンジン112による燃焼を停止しない構成を例に挙げて説明した。しかし、第2濃度計測ユニット150が計測したCOの濃度が、第1二酸化炭素目標値もしくは第2二酸化炭素目標値を満たし、かつ、第1濃度計測ユニット140が計測したNOの濃度が第1窒素酸化物目標値を満たしている場合、エンジン112による燃焼を停止するとしてもよい。
【0116】
また、上記第3実施形態では、脱硝装置430がバイパス流路436を備える構成を例に挙げて説明した。しかし、バイパス流路は、脱硝装置の外部に設けられていてもよい。
【0117】
また、上記第1実施形態では、トリジェネレーションシステム(供給源110)として、エンジン112と発電機114とを含んで構成される構成を例に挙げて説明した。しかし、供給源110は、燃焼排ガスを供給できれば、構成に限定はなく、ガスタービンを含んで構成されるトリジェネレーションシステムを、燃焼排ガスの供給源として採用することもできる。
【0118】
なお、本明細書の植物栽培方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、植物の育成を促進する植物育成促進装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0120】
100、300、400、500 植物育成促進装置
112 エンジン
114 発電機
120 供給手段
130、430 脱硝装置
132 選択還元触媒(脱硝触媒)
134 還元剤導入部
162 運転モード選択部
164、564 二酸化炭素制御部
166、366、466 窒素酸化物制御部
432 三元触媒(脱硝触媒)
434 脱硝流路
436 バイパス流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9