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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-100958(P2018-100958A)
(43)【公開日】2018年6月28日
(54)【発明の名称】光学式エンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/38 20060101AFI20180601BHJP
【FI】
   G01D5/38 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-225613(P2017-225613)
(22)【出願日】2017年11月24日
(31)【優先権主張番号】16205387.0
(32)【優先日】2016年12月20日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】ゴットハルト・レッパーディンガー
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103CA01
2F103CA03
2F103CA04
2F103CA08
2F103DA01
2F103DA08
2F103DA12
2F103EA02
2F103EA04
2F103EA05
2F103EA15
2F103EB06
2F103EB32
(57)【要約】
【課題】本発明は、2つの物体の相対位置を測定するための光学式エンコーダに関する。
【解決手段】この場合、複数の明るい領域と複数の暗い領域とを有するバーニアパターンが、測定目盛10と光学パターンMとの相互作用によって検出装置上に生成される。当該測定目盛は、位相回折格子である。当該バーニアパターンの明るい複数の領域の強度が、幾何学的なビーム光学機器と波動光学機器との相互作用によって最大にされているように、当該位相回折格子が、当該照射する光学パターンMに対して構成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定方向(X)に互いに可動な2つの物体の相対位置を測定するための、1つの測定目盛(10,100)とこの測定目盛(10,100)に対して測定方向(X)に相対的に可動な1つの走査装置(2)とを有する光学式エンコーダであって、光学パターン周期(P)を呈し、測定方向(X)に交互する複数の明るい領域と複数の暗い領域とを有する光学パターン(M)を前記測定目盛(10,100)上に投影させるように、前記走査装置(2)が構成されていて、前記測定目盛(10,100)が、測定目盛周期(P)を有し、前記光学パターン(M)と前記測定目盛(10,100)との協働によって、1つの検出装置(21)によって走査される前記複数の明るい領域と前記複数の暗い領域とを有するバーニアパターン(V)が生成されるように、この測定目盛周期(P)は、前記光学パターン周期(P)とは僅かに異なる当該光学式エンコーダにおいて、
前記測定目盛(10,100)は、位相回折格子であり、この位相回折格子のストリップとギャップとの比が、1:1とは異なり、0次の回折次数が抑制されるように、前記位相回折格子のストリップ(S)とギャップ(L)との間の位相差が規定されていて、
当該照射する光学パターン(M)の1つの明るい領域の0次の回折次数が抑制される位置(P0)で、より高い少なくとも1つの回折次数が回折され、前記検出装置(21)上の前記バーニアパターン(V)の前記複数の明るい領域のうちの1つの明るい領域に当たるように、前記エンコーダが構成されていることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項2】
測定目盛周期(P)の前記ストリップ(S)の幅がそれぞれ、前記ギャップ(L)の幅よりも大きく、前記ストリップ(S)の幅が、前記光学パターン(M)の1つの明るい領域の幅よりも大きいこと、又は
測定目盛周期(P)の前記ギャップ(L)の幅がそれぞれ、前記ストリップ(S)の幅よりも大きく、前記ギャップ(L)の幅が、前記光学パターン(M)の1つの明るい領域の幅よりも大きい請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項3】
測定目盛周期(P)の前記ストリップ(S)の幅がそれぞれ、この測定目盛周期(P)の前記ギャップ(L)の幅よりも大きく、この測定目盛周期(P)のこのギャップ(L)の幅(B)は、前記光学パターン周期(P)の50%であること、又は
前記ギャップ(L)の幅がそれぞれ、前記位相回折格子のストリップ(S)の幅よりも大きく、前記ストリップ(S)の幅(B)は、前記光学パターン周期(P)の50%である請求項1又は2に記載の光学式エンコーダ。
【請求項4】
前記ストリップと前記ギャップとの比又は前記ギャップと前記ストリップとの比は、1:3である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学式エンコーダ。
【請求項5】
前記位相回折格子の前記位相差は、λ/2である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学式エンコーダ。
【請求項6】
前記走査装置(2)は、1つの送信器(23,24)と1つの回折格子(22)とを有し、前記送信器(23,24)は、コリメートされた光ビーム束を生成するように構成されていて、前記コリメートされた光ビーム束は、前記回折格子(22)へ向けられていて、前記コリメートされた光ビーム束は、前記回折格子(22)との相互作用によって前記光学パターン(M)を生成する請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学式エンコーダ。
【請求項7】
前記光学パターン(M)を生成するための前記回折格子(22)の前記ストリップと前記ギャップとの比は、1:1である請求項6に記載の光学式エンコーダ。
【請求項8】
前記光学パターン(M)を生成するための前記回折格子(22)は、振幅回折格子又は位相回折格子である請求項6又は7に記載の光学式エンコーダ。
【請求項9】
前記検出装置(21)は、前記バーニアパターン(V)を走査し、360°/Kだけ互いに位相シフトしているK個の走査信号を生成するために複数の検出素子(211,212,213,214,215)を有し、隣接した複数の検出素子(211,212,213,214,215)の中心間隔(X)に対して、
=P/Kが成立し、このとき、
1/P=|1/P−1/P
=バーニア周期
=測定目盛周期
=光学パターン周期
である請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学式エンコーダ。
【請求項10】
前記検出装置(21)の複数の第K番目の検出素子(211,215)がそれぞれ、結果として合成された走査信号を生成するために互いに結合されている請求項9に記載の光学式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の上位概念の特徴による光学式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第1028309号明細書が、このような種類の光学式エンコーダを開示する。バーニアストリップパターンが、周期的な光学パターンと周期的な測定目盛との相互作用によって、後続する検出面内に発生する。このため、当該周期的な光学パターンの周期が、−以下では、測定目盛周期と呼ばれる−当該測定目盛の目盛周期とは僅かに異なる。これから発生する−以下では、バーニア周期と呼ばれる−当該バーニアストリップパターンの周期が、当該光学パターン周期よりも大きく、当該測定目盛周期よりも大きい。当該測定目盛は、振幅回折格子として構成されていて、この測定目盛のストリップとギャップとの比は、1:1である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1028309号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、バーニアストリップパターンが改良されたSN比によって生成される光学式エンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この課題は、請求項1に記載の特徴を有する光学式エンコーダによって解決される。
【0006】
測定方向に互いに可動な2つの物体の相対位置を測定するためのこの光学式エンコーダは、1つの測定目盛と、この測定目盛に対して測定方向に相対的に可動な1つの走査装置とを有する。光学パターン周期を呈し、測定方向に交互する複数の明るい領域と複数の暗い領域とを有する光学パターンを前記測定目盛上に投影させるように、前記走査装置が構成されている。この場合、前記測定目盛が、測定目盛周期を有し、前記光学パターンと前記測定目盛との協働によって、1つの検出装置によって走査される前記複数の明るい領域と前記複数の暗い領域とを有するバーニアパターンが生成されるように、この測定目盛周期は、前記光学パターン周期とは僅かに異なる。この場合、前記測定目盛は、位相回折格子であり、この位相回折格子のストリップとギャップとの比が、1:1とは異なり、0次の回折次数が抑制されるように、前記位相回折格子のストリップとギャップとの間の位相差が規定されている。さらに、当該照射する光学パターンの1つの明るい領域の0次の回折次数が抑制される位置で、より高い少なくとも1つの回折次数が回折され、前記検出装置上の前記バーニアパターンの前記複数の明るい領域のうちの1つの明るい領域に当たるように、前記エンコーダが構成されている。
【0007】
この場合、1つの測定目盛周期内の2つの領域が、当該位相回折格子のストリップとギャップとによって示されている。当該2つの領域は、要求される位相差を得るために、照射する光を異なって遅延させる。この位相差は、光を透過させる材料の経路差によって及び/又は当該材料の屈折率によって周知の方法で調整される。
【0008】
当該バーニアパターンの明るい領域の強度が、本発明によって向上される。より高い有効信号が、この信号の上昇に起因して生成される。その結果、当該エンコーダの測定精度が向上する。
【0009】
用語の光は、非可視領域内の波長を有する放射も含む。
【0010】
好ましくは、測定目盛周期の前記ストリップの幅がそれぞれ、前記ギャップの幅よりも大きく、前記ストリップの幅が、前記光学パターンの1つの明るい領域の幅よりも大きい。これにより、このストリップへ向かう光学パターンが、1つの明るい領域の中心で発生するときに、この光学パターンは、完全な透過によって又は完全な反射によって、当該バーニアパターンの当該明るい領域を生成するために完全に使用されることが保証される。
【0011】
これとは別に、測定目盛周期の前記ギャップの幅がそれぞれ、前記ストリップの幅よりも大きく、前記ギャップの幅が、前記光学パターンの1つの明るい領域の幅よりも大きい。この場合には、このギャップへ向かう光学パターンが、1つの明るい領域の中心で発生するときに、この光学パターンは、完全な透過によって又は完全な反射によって、当該バーニアパターンの当該明るい領域を生成するために完全に使用されることが保証される。
【0012】
特に、測定目盛周期の前記ストリップの幅がそれぞれ、この測定目盛周期の前記ギャップの幅よりも大きく、この測定目盛周期のこのギャップの幅は、前記光学パターン周期の50%であるか、又はこの代わりに、前記ギャップの幅がそれぞれ、前記位相回折格子のストリップの幅よりも大きく、前記ストリップの幅は、前記光学パターン周期の50%である。このため、ストリップの光学特性とギャップと、ギャップの光学特性(透過又は反射)とが、等しい光学特性である場合、0次の回折次数が、弱め合う干渉によって完全に消滅されることが保証される。
【0013】
好ましくは、前記ストリップと前記ギャップとの比又は前記ギャップと前記ストリップとの比は、1:3である。
【0014】
前記走査装置が、1つの送信器と1つの回折格子とを有するときに、当該エンコーダの特に簡単な構造が得られる。この場合、前記送信器は、コリメートされた光ビーム束を生成するように構成されていて、前記コリメートされた光ビーム束は、前記回折格子へ向けられていて、前記コリメートされた光ビーム束は、前記回折格子との協働によって前記光学パターンを生成する。
【0015】
当該回折格子は、振幅回折格子でもよい。しかし、特に、当該回折格子は、位相回折格子である。しかし、この代わりに、当該回折格子は、ハイブリッド型の振幅位相回折格子でもよい。
【0016】
位相回折格子として構成された測定目盛の位相差は、特にλ/2である。ここで、λ=照射する光学パターンの光の波長。
【0017】
特に、前記検出装置は、前記バーニアパターンを走査し、360°/Kだけ互いに位相シフトしているK個の走査信号を生成するために複数の検出素子を有し、隣接した複数の検出素子の中心間隔に対して、
=P/Kが成立し、このとき、
1/P=|1/P−1/P
=バーニア周期
=測定目盛周期
=光学パターン周期
である。
【0018】
周知の方法では、信号を増幅し、平均するため、前記検出装置の複数の第K番目の検出素子がそれぞれ、結果として合成された走査信号を生成するために互いに結合され得る。
【0019】
本発明の好適な構成は、従属請求項に記載されている対策から実現される。
【0020】
本発明のさらなる詳細及び利点を、図面に関連する実施の形態の以下の記載に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明にしたがって構成された第1の光学式エンコーダの投影図である。
図2図1によるエンコーダの走査ビーム路の基本構成及び推移を示す。
図3】当該エンコーダの場合に発生する検出面内の回折パターンを示す。
図4】本発明にしたがって構成された光学式エンコーダの第2の実施の形態である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1及び2は、本発明の第1の実施の形態を示し、図3は、この第1の実施の形態で発生する回折パターンを示す。
【0023】
この光学式エンコーダは、走査装置2の位置を測定するためにいわゆる照射光で走査される1つの測定目盛10を有する。当該反射式の測定目盛10は、既知の方法でスケール1上に形成されているか又はスケール1に固定されている。測定方向Xに相対移動する2つの物体の位置を測定するため、スケール1が、これらの2つの物体のうちの一方の物体に固定され、走査装置2が、当該相対移動する両物体のうちの他方の物体に固定される。この走査装置2は、周期的な光学パターンMを測定目盛10上に投影させるように構成されている。以下では、この光学パターンMの周期を光学パターン周期Pと呼ぶ。位置に依存する走査信号の生成は、光学パターンMがバーニアパターンVを生成するために測定目盛10と協働することに基づく。このため、測定目盛10は、光学パターン周期Pとは僅かに異なる測定目盛周期Pを有する。その結果、光学パターン周期P及び測定目盛周期Pよりも著しく大きい周期Pを有するバーニアパターンVが、検出装置21上に発生する。この場合に発生する当該バーニアパターンVは、測定目盛10の目盛線に対して平行に配向されている。当該周期的な光学パターンMは、走査装置2と測定目盛10との相対移動時に位置に依存して変調される。この場合、明るい領域と暗い領域とを有する周期的なバーニアパターンVが形成される。当該バーニアパターンVは、測定目盛10と走査装置2とのそれぞれの相対位置を測定するために検出装置21によって走査される。
【0024】
バーニア周期P(発生するバーニアパターンVの周期)に対しては、
1/P=|1/P−1/P
ここで、
=測定目盛周期(測定目盛10の周期)
=光学パターン(光学パターンMの周期)
が成立する。
【0025】
光学パターンMは、様々な方法で生成され得る。最も簡単な場合では、当該エンコーダは、二重回折格子式のエンコーダ(Zweigitter−Geber)である。当該二重回折格子式のエンコーダの場合、光学パターンMが、コリメートして照射される回折格子22によって生成される。1つの光源23及び1つの光学素子24が、当該コリメートされた照射のために設けられている。当該回折格子22は、例えば、周期的に連続する非透過性の複数のストリップと透過性の複数のギャップとを有する振幅回折格子である。これらの非透過性のストリップは、非透過性の材料を透過性のキャリア上に被覆することによって形成される。この場合、当該キャリアは、特にガラスキャリアでもよい。しかし、回折格子22は、特に位相回折格子である。しかし、この代わりに、回折格子22は、ハイブリッド型の振幅位相回折格子でもよい。
【0026】
回折格子22の目盛周期が、要求される光学パターン周期Pに相当し、この回折格子22のストリップとギャップとの比は、1:1に選択されている。したがって、この回折格子22の1つのギャップの幅は、周期的な光学パターンMの1つの明るい領域の幅Bに相当し、P/2である。
【0027】
単色の又は少なくとも狭帯域の光源23によって生成された放射が、光学素子24によって平行に指向され、回折格子22の透過性のギャップを透過する。特に発光ダイオード又はその他の狭帯域の光源23が、光源23として適している。
【0028】
本発明によれば、測定目盛10は、位相回折格子であり、第1の実施の形態では反射型位相回折格子である。この場合、この位相回折格子の複数の特性が、本発明の場合のバーニアパターンの明るい領域の強度を最大にするために利用される。すなわち、
幾何放射光学:
1.反射型位相回折格子の場合の反射、及び透過型回折格子の場合の透過(直線伝播)
波動光学:
2.弱め合う干渉
3.回折
【0029】
事項1.に対して
この効果は、位相回折格子の平坦な表面上に照射するビーム束の純粋な反射に基づき、当該位相回折格子のストリップとギャップとの比が1:1とは違うことによって得られる。これにより、複数のストリップSがそれぞれ、光学パターンMの1つの明るい領域の幅Bよりも大きい1つの幅Bを有し、又は、複数のギャップLがそれぞれ、光学パターンMの1つの明るい領域の幅Bよりも大きい1つの幅Bを有することが得られる。図示された例では、当該位相回折格子のストリップSが、光学パターンMの1つの明るい領域の幅Bよりも大きい、1つの測定目盛周期P内の幅Bを有し、
>Bが成立する。
【0030】
したがって、測定目盛10は、照射する光学パターンMにとっては、その反射を場所に依存して変調させるのに有益である。すなわち、図2に示された瞬時位置P1の場合、照射する光学パターンMが、測定目盛10の左側に示された領域上に当たる。この領域の場合、光学パターンMの明るい領域に照射する全幅Bが、この測定目盛10から反射され、検出装置21上に当たる。それ故に、この検出装置21上に照射するバーニアパターンVのこの領域は、明るい領域と呼ばれ、図2に「明」で示される。
【0031】
事項2.に対して
ここでは、位相回折格子のストリップS上に照射し、このストリップSから反射した部分ビーム束S1と、この位相回折格子のギャップL上に照射し、このギャップLから反射した部分ビーム束S0との弱め合う干渉が利用される。
【0032】
このため、0次の回折次数が抑制されるように、当該位相回折格子のストリップSとギャップLとの間の位相差がもたらされる。ここでは、照射する光学パターンMにとって有益な測定目盛10のストリップSとギャップLとの間の位相差は、λ/2である。この場合、λは、光学パターンMの波長である。
【0033】
光学パターンMの周期と測定目盛10の周期とが異なるので、図2に示された瞬時位置P0における光学パターンMの一部が、図2の右側に示された測定目盛10の領域上にも当たる。照射する光学パターンMの明るい領域での位相及び回折が、位置P0で影響を受ける。この領域P0は、領域P1から1つのバーニア周期Pの半分だけ測定方向Xに離間している。当該位相に関しては、弱め合う干渉が発生する。その結果、0次の回折次数が消滅する。すなわち、この場所P0では、光が、検出装置21上に当たらない。それ故に、バーニアパターンVのこの領域は、暗い領域と呼ばれ、図2に「暗」で示される。
【0034】
測定目盛10のストリップSとギャップLとが、同じ反射特性を有する限り、完全に弱め合う干渉に対しては、測定目盛周期PのストリップSの幅がそれぞれ、この測定目盛周期PのギャップLの幅よりも大きく、ギャップLの幅Bは、光学パターン周期Pの50%であるか、又は、測定目盛周期PのギャップLの幅がそれぞれ、この測定目盛周期PのストリップSの幅よりも大きく、ストリップSの幅Bは、光学パターン周期Pの50%である、ことも成立しなければならない。
【0035】
この領域内では、測定目盛10、すなわち位相回折格子のギャップとストリップとの比は、1:3である。当該位相回折格子のストリップとギャップとの比が、1:3に選択されると、同じ効果が得られる。
【0036】
事項3.に対して
ここでは、位相回折格子に照射するビーム束の回折が利用される。この場合、(事項1で上述したような)反射によって得られるバーニアパターンVの明るい領域の強度が、当該位相回折格子での回折の場所に依存する変調によって強められる。
【0037】
既に説明したように、光学パターンMの周期と測定目盛10の周期とは異なるので、図2の右側に示された領域内の光学パターンMの一部が、測定目盛10上に当たる。照射する光学パターンMの明るい領域での位相及び回折が、この測定目盛10のこの領域内で影響を受ける。
【0038】
上記回折に関しては、より高い回折次数N(N≠0)のうちの少なくとも1つの回折次数が、位置P1で−すなわちバーニアパターンVの明るい領域で−検出装置21上に当たるように、当該より高い回折次数N(N≠0)が、位置P0で測定方向Xに回折される。当該少なくとも1つのより高い回折次数Nは、バーニア周期Pのラスタ内で検出装置21上に当たる。この領域P0は、領域P1から1つのバーニア周期Pの半分だけ測定方向Xに離間している。
【0039】
エンコーダの寸法を決定する場合、複数のパラメータが、N次の回折次数の回折角度αに対して、
sinα=N*λ/P
を規定する。
【0040】
実際に意味のある小さい回折角度α(ラジアン)に対しては、
sinα=N*λ/P
が成立する。
【0041】
位置P0で回折角度αだけ回折したビーム束が、P/2だけシフトして検出装置21上に照射する必要があるので、さらに、
D*α=P/2
が成立する。
【0042】
したがって、測定目盛10と検出装置21との間の間隔Dに対して、
D=P*P/(2*N*λ)
が成立する。
【0043】
図2には、同じ次数の負の回折次数と正の回折次数とが、S2によって同じに示してある。何故なら、瞬時位置P0を始点とする正の回折次数と負の回折次数とのそれぞれに対して、同じ条件が成立するからである。
【0044】
本発明のエンコーダの機能性が、ブレッドボードに基づいて実証してある。以下のパラメータが選択された。
=20.5128μm
=20.00μm
=800μm
λ=860nm
測定目盛10のストリップとギャップとの比=3:1
【0045】
2次の回折次数N=2が、本発明にしたがって使用されなければならない場合、約5°の回折角度αが、この回折次数に対して発生する。
【0046】
これらの条件の場合、約4.5mmの値が、測定目盛10と検出装置21との間の間隔Dに対して得られる。間隔Dが変化しても、測定目盛10で回折したビームS2が、バーニアパターンVの明るい領域の強度をさらに高めることが実証されている。例えば、間隔Dは、約3mm〜6mmの値をとり得る。すなわち、±1.5mmの許容差が、間隔Dに対して許容される。
【0047】
図3には、測定目盛10で回折した回折ビームの回折パターンが示されている。位置Xに対する回折次数の強度Iが描かれている。この場合、位置P0及びP1が、図2に示されている瞬時位置に相当する。さらに、図3には、位置P2が示されている。この位置P2は、位置P1からPVだけ離間した位置、すなわちバーニアパターンVの次の明るい領域の中心である。
【0048】
当該バーニアパターンの明るい領域の強度を向上させるため、偶数及び/又は奇数の回折次数(N≠0)が使用され、当該設計時に考慮され得る。
【0049】
検出装置21は、測定方向Xに互いに隣接して配置されている複数の検出素子211,213,214,215から構成される。互いに位相シフトしているK個の走査信号を生成するため、K個の検出素子211,213,214が、1つのバーニア周期P内に配置されている。
【0050】
換言すると、バーニアパターンVを走査するため、K個の検出素子を有する検出装置21が、360°/Kだけ互いに位相シフトしているK個の走査信号を生成するために配置されている。この場合、隣接した複数の検出素子の中心間隔は、X=P/Kである。このとき、
1/P=|1/P−1/P
=バーニア周期
=測定目盛周期
=光学パターン周期
【0051】
それぞれ互いに90°だけ位相シフトしている4つの走査信号が生成されなければならない場合、K=4個の検出素子211,212,213,214を1つのバーニア周期P内に配置することが必要である。
【0052】
バーニアパターンVの走査時に同位相の走査信号をそれぞれ供給する検出装置21の検出素子211,245が、互いに電気接続され、結果として走査信号を生成するために統合される。換言すると、検出装置21の複数の第K番目の検出素子211,215がそれぞれ、結果として合成された走査信号を生成するために互いに結合され得る。
【0053】
第1の実施の形態の場合、測定目盛10が、反射型位相回折格子として構成されている。図4は、本発明が透過式にも使用され得ることを示す。測定目盛100は、透過性の位相回折格子として構成されている。
【0054】
第1の実施の形態の場合に説明したのと同じ条件が、この第2の実施の形態に対して成立する。それ故に、別の符号が、当該測定目盛に対してだけ使用されてあるが、その他の符号は維持されてある。
【0055】
反射型回折格子を位相回折格子(測定目盛10)として使用する場合、バーニアパターンVの明るい領域が、当該位相回折格子の位置P1で発生し、光学パターンMの当該明るい領域が、当該位置P1で完全に戻り反射する。これに対して、透過型回折格子を位相回折格子(測定目盛100)として使用する場合、バーニアパターンVの明るい領域が、位置P1で発生し、光学パターンMの当該明るい領域が、当該位置P1で完全に透過する。
【0056】
反射型回折格子を位相回折格子(測定目盛10)として使用する場合、バーニアパターンVの暗い領域が、当該位相回折格子の位置P0で発生し、光学パターンMの当該明るい領域が、当該位置P0で、反射した部分ビーム束S0,S1の弱め合う干渉によって消滅される(図2)。これに対して、透過型回折格子を位相回折格子(測定目盛100)として使用する場合、バーニアパターンVの暗い領域が、位置P0で発生し、光学パターンMの当該明るい領域が、当該位置P0で、透過した部分ビーム束S0,S1の弱め合う干渉によって消滅される(図4)。
【0057】
反射型回折格子を位相回折格子(測定目盛10)として使用する場合、当該位相回折格子の位置P1,P2で発生するバーニアパターンVの明るい領域が、この位相回折格子の位置P0で反射によって回折される回折ビームによって強められる。これに対して、透過型回折格子を位相回折格子(測定目盛100)として使用する場合、当該位相回折格子の位置P1,P2で発生するバーニアパターンVの明るい領域が、この位相回折格子の位置P0で透過によって回折される回折ビームによって強められる。
【0058】
本発明は、直進する移動及び位置を測定するための測長装置の場合と、回転する移動及び位置を測定するための測角装置の場合とで使用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 スケール
2 走査装置
10 測定目盛
21 検出装置
22 回折格子
23 光源、送信器
24 光学素子、送信器
211 検出素子
212 検出素子
213 検出素子
214 検出素子
215 検出素子
100 測定目盛
M 光学パターン
X 測定方向
S ストリップ
L ギャップ
V バーニアパターン
D 間隔
I 強度
S0 部分ビーム束
S1 部分ビーム束
P0 瞬時位置、領域、場所
P1 瞬時位置、領域、場所
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】
2018100958000001.pdf