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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-10313(P2018-10313A)
(43)【公開日】2018年1月18日
(54)【発明の名称】光変調器
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20171215BHJP
【FI】
   G02F1/01 F
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-164408(P2017-164408)
(22)【出願日】2017年8月29日
(62)【分割の表示】特願2015-192597(P2015-192597)の分割
【原出願日】2015年9月30日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/(高い臨時設営性を持つ有無線両用高速光伝送技術の研究開発)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭
(72)【発明者】
【氏名】片岡 利夫
(72)【発明者】
【氏名】市川 潤一郎
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA02
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA04
2K102DA04
2K102DD03
2K102DD05
2K102EA02
2K102EA07
2K102EB30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フレキシブル回路基板を収容する筐体の凹部で発生する共振モード等の現象を抑制し、広帯域特性を改善した光変調器を提供する。
【解決手段】光変調素子を筐体内に収容した光変調器であり、外部回路基板7との間の電気線路の少なくとも一部をフレキシブル回路基板6で接続すると共に、外部回路基板上に配置される光変調器において、筐体の外側底面には、フレキシブル回路基板を接続配置する部分にフレキシブル回路基板を収容する凹部(点線Dで示す範囲)が形成され、凹部のフレキシブル回路基板に対向する面Aと、平面視した際に面Aと重なり合うフレキシブル回路基板に設けられた電気配線部分と、さらに平面視した際に面Aと重なり合う外部回路基板に設けられた電気配線部分との間でマイクロ波・ミリ波の共振モードやパラレルプレートモードが発生しないように、共振モード等抑制手段(例えば凹凸形状21)を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光変調素子を筐体内に収容した光変調器であり、外部回路基板との間の電気線路の少なくとも一部をフレキシブル回路基板で接続すると共に、該外部回路基板上に配置される光変調器において、
該筐体の外側底面には、該フレキシブル回路基板を接続配置する部分に該フレキシブル回路基板を収容する凹部が形成され、
該フレキシブル回路基板には複数の信号線が配置され、
該凹部の該フレキシブル回路基板に対向する面Aと、平面視した際に該面Aと重なり合う該フレキシブル回路基板に設けられた電気配線部分Bと、さらに平面視した際に該面Aと重なり合う該外部回路基板に設けられた電気配線部分Cとの間でマイクロ波・ミリ波の共振モードやパラレルプレートモードが発生しないように、共振モード等抑制手段を備えており、
平面視した際に該電気配線部分Bと重なり合う該外部回路基板の表面に導電体を配置しないことを特徴とする光変調器。
【請求項2】
請求項1に記載の光変調器において、該共振モード等抑制手段は、該面Aと該電気配線部分Bとの間の間隔又は誘電率の少なくとも一つが、局所的に異なるよう設定されていることを特徴とする光変調器。
【請求項3】
請求項1に記載の光変調器において、該共振モード等抑制手段は、該面Aと該電気配線部分Bとの間を電気的に接続するピラーを設けたことを特徴とする光変調器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光変調器において、該フレキシブル回路基板の両面に電気配線が形成され、両面の接地配線を互いに電気的に接続するビアが形成されていることを特徴とする光変調器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光変調器において、該面Aと該電気配線部分Bとの間の少なくとも一部の距離が25μm以下であることを特徴とする光変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器に関し、特に、光変調素子を筐体内に収容した光変調器であり、外部回路基板との間の電気線路の少なくとも一部をフレキシブル回路基板で接続すると共に、該外部回路基板上に配置される光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信分野において、光変調器を用いた送受信機が利用されている。近年、光伝送システムの小型化要求により、送受信機モジュール(トランスポンダ)内に搭載される光変調器のRFインターフェース接続についても、短尺化傾向になっている。
【0003】
図1は、モジュールを構成する外部回路基板7上に光変調器を配置した様子を示している。短尺化を実現する手段として、従来のプッシュオンタイプの同軸コネクタ等の同軸コネクタによるケーブル接続から、図1に示すように、フレキシブル回路基板(FPC)6やリードピン4を用いた面実装(SMT:Surface Mount Technology)インターフェースを利用することが行われている。フレキシブル回路基板を用いた光変調器については、特許文献1に開示されている。
【0004】
図1は、光変調器を外部回路基板上に配置した状態の断面図を示している。光変調器1は、光変調素子2を金属製筐体10内に収容し、気密封止されている。符号11は、筐体の蓋部分である。筐体内に収容された光変調素子2と外部回路基板7とは、フレキシブル回路基板6、筐体の貫通孔(金属筐体の上面と底面を結ぶ垂直方向)に配置されるリードピン4を介して電気的に接続されている。また、フレキシブル回路基板6とリードピン4とは、直接接続される。リードピン4と光変調素子2との間は、中継基板3を介して金線等でワイヤーボンディング(50,5)されている。
【0005】
フレキシブル回路基板6は、ポリイミドなどを使用した基板の片面又は両面に、Au,Cu等の導電材料で信号線路(信号電極)や接地線路(接地電極)が形成されている。片側の面に広い幅の接地電極、もう一方の面に短冊上の信号電極を形成したマイクロストリップ型線路が広く用いられる。信号線路も信号電極だけでなく、コプレーナ型線路のように信号電極を挟むように接地電極を配置する場合もある。フレキシブル回路基板6の可撓性が低下するが、複層の接地電極面を有するストリップ型線路やグラウンデットコプレーナー型線路も用いられる。
【0006】
フレキシブル回路基板6を光変調器1に実装する際には、フレキシブル回路基板6が光変調器1の底面から突出しないように、図1の点線Dで示すように、筐体の外部底面には、凹部(ザグリ部)が形成されている。
【0007】
しかしながら、フレキシブル回路基板6と凹部を形成する底面(FPC6に対向する面A)との間は、リードピン4の形状により両者を完全に密着させて取り付けることは困難である。例えば、リードピン4が、信号線と接地電極が同軸状に配置されている構成をしており、接地電極部分の先端が筐体の下面から突出している場合は、突出している高さ分だけ、FPC6と凹部の底面Aとは離間することとなる。このため、両者間には隙間S1が発生する。より詳細には、FPC6に設けられた信号電極や接地電極などの電気配線部分Bと底面Aとの間に、隙間S1が発生する。
【0008】
また、FPC6と外部回路基板7との間にも、隙間S2が発生する。より詳細には、FPC6に設けられた信号電極や接地電極などの電気配線部分Bと、外部回路基板7に設けられた電気配線部分Cとの間に、隙間S2が発生する。この原因の一つとして、リードピン4をFPC6の下面側で半田固定する場合には、リードピン4の先端がFPC6の下面から突出することとなる。この突出したリードピン4が外部回路基板7に接触するのを防止するため、意図的に隙間S2が発生するよう凹部の深さが調整されている。
【0009】
このような隙間S1又はS2は、空気層である必要は無ない。例えば、FPC6の表面(又は両面)に絶縁性の保護膜を設ける場合や、外部回路基板の表面に絶縁性の保護膜を設ける場合には、必然的に保護膜の厚さの隙間(この場合は、隙間に保護膜の材料が充填されている状態)が発生する。
【0010】
隙間S1又はS2がFPC6の接地電極面と並行の場合は、図2で説明するようなパラレルプレートモード(図2(a)及び(b))が発生する原因となる。図2は、FPC6の上面側に筐体10を配置し、下面側に外部回路基板7(接地電極等の導電性面)を配置している状態を示している。FPC6では、可撓性のある絶縁基板60の上面に信号電極61を、下面に接地電極62を各々配置するマイクロストリップ線路を構成している。
【0011】
図2(a)は、ストリップライン型の信号線路における信号の電界を、点線矢印を用いて模式的に示している。図2(b)は、信号線路から漏れた一部の電界がFPC6の接地電極面と外部回路基板7との間にパラレルプレートモードを発生させている様子を模式的に示したものであり、図中の点線矢印は電界の方向を示している。パラレルプレートモードは、FPC6の接地電極62(電気線路部B)と凹部の底面Aとの間にも発生する。接地電極62が、外部回路基板7、凹部の底面Aのいずれの側に配置されている場合でも、互いに並行であればパラレルプレートモードが発生する。接地電極62の幅が狭く、外部回路基板7と凹部の底面Aとが対抗する面積の比率が大きい場合には、外部回路基板7と凹部の底面Aの間にパラレルプレートモードが発生する。
【0012】
図2(a)に示すように、信号電極61と接地電極62との間には疑似TEMモードが発生している。隙間S2には、図2(b)に示すように、接地電極62と外部回路基板7との間でパラレルプレートモードが発生している。このようなパラレルプレートモードが発生すると光変調器に印加する変調信号の広帯域特性が劣化する。しかも、パラレルプレートモードには、カットオフ周波数が無く、隙間S2の間隔(接地電極62と外部回路基板7とのギャップ)をいくら狭くしても発生する特徴がある。当然、間隔S1についても、筐体11の凹部(ザグリ部)の上面AとFPC6と間隔を狭くしてもパラレルプレートモードが発生する。例えば、マイクロ波帯やミリ波帯では、空洞共振が成立しないような距離である25μm程度に狭めても上面Aと接地電極62との間や、図2では示していないが、絶縁基板60の上面に接地電極を設ける場合には、当該接地電極と上面Aとの間で、パラレルプレートモードが発生する。
【0013】
また、隙間S1やS2では空間に放出されたマイクロ波・ミリ波が隙間S1やS2の間隔に応じた空洞共振モードも発生し、特定の周波数で変調信号の劣化(ディップ)する。配線距離を短くし、実装のしやすさの確保のためには隙間S1やS2をより狭くすることが必要であり、この場合には、パラレルプレートモードが発生し易くなる。
【0014】
DP−BPSK光変調器、DQPSK光変調器やDP−QPSK光変調器などのように、FPC6に複数の信号線が配置されている広帯域光変調器の場合には、パラレルプレートモードを介した信号線の間におけるクロストークが深刻な問題である。信号線からの漏れ電力がカットオフ周波数のないパラレルプレートモードを介して他の信号線に伝わることに起因するクロストークであるため、極めて広い周波数にわたって顕われる。
【0015】
特定周波数の場合、スタブやチョーク回路によりクロストークの低減が可能である。しかし、信号帯域がMHz帯からミリ波帯におよぶ広帯域変調器の場合には有効策ではない。別の手段として、配線基板内におけるクロストーク、たとえば隣接する複数のマイクロストリップ型線路間のクロストークは、線路の間にビアを配置、あるいは、線路の間の誘電体基板に溝を入れるなどの手段により、低減が可能である。しかし、パラレルプレートモードは、配線基板の接地電極面と他の接地電極面との間に基板内にビアや溝などの形成とは無関係に発生する。また信号線から漏れた電力は隣接する信号線のみならず、他の信号線にも達してクロストークが引き起こされる。マイクロストリップ形線路のみならず、他の形状の線路においても同様である。
【0016】
本発明では、マイクロ波・ミリ波の空洞共振モードやパラレルプレートモードなどの現象を、「共振モード等」と表現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2014−165289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、フレキシブル回路基板を収容する筐体の凹部で発生する共振モード等の現象を抑制し、広帯域特性を改善した光変調器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明の光変調器は、次のような技術的特徴を備えている。
(1) 光変調素子を筐体内に収容した光変調器であり、外部回路基板との間の電気線路の少なくとも一部をフレキシブル回路基板で接続すると共に、該外部回路基板上に配置される光変調器において、該筐体の外側底面には、該フレキシブル回路基板を接続配置する部分に該フレキシブル回路基板を収容する凹部が形成され、該フレキシブル回路基板には複数の信号線が配置され、該凹部の該フレキシブル回路基板に対向する面Aと、平面視した際に該面Aと重なり合う該フレキシブル回路基板に設けられた電気配線部分Bと、さらに平面視した際に該面Aと重なり合う該外部回路基板に設けられた電気配線部分Cとの間でマイクロ波・ミリ波の共振モードやパラレルプレートモードが発生しないように、共振モード等抑制手段を備えており、平面視した際に該電気配線部分Bと重なり合う該外部回路基板の表面に導電体を配置しないことを特徴とする。
【0020】
(2) 上記(1)に記載の光変調器において、該共振モード等抑制手段は、該面Aと該電気配線部分Bとの間の間隔又は誘電率の少なくとも一つが、局所的に異なるよう設定されていることを特徴とする。
【0021】
(3) 上記(1)に記載の光変調器において、該共振モード等抑制手段は、該面Aと該電気配線部分Bとの間を電気的に接続するピラーの少なくともいずれかを設けたことを特徴とする。
【0022】
(4) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光変調器において、該フレキシブル回路基板の両面に電気配線が形成され、両面の接地配線を互いに電気的に接続するビアが形成されていることを特徴とする。
【0023】
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の光変調器において、該面Aと該電気配線部分Bとの間の少なくとも一部の距離が25μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、光変調素子を筐体内に収容した光変調器であり、外部回路基板との間の電気線路の少なくとも一部をフレキシブル回路基板で接続すると共に、該外部回路基板上に配置される光変調器において、該筐体の外側底面には、該フレキシブル回路基板を接続配置する部分に該フレキシブル回路基板を収容する凹部が形成され、該凹部の該フレキシブル回路基板に対向する面Aと、平面視した際に該面Aと重なり合う該フレキシブル回路基板に設けられた電気配線部分Bと、さらに平面視した際に該面Aと重なり合う該外部回路基板に設けられた電気配線部分Cとの間でマイクロ波・ミリ波の共振モードやパラレルプレートモードが発生しないように、共振モード等抑制手段を備えているため、共振モード等の現象が抑制され、広帯域特性を改善した光変調器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】FPCを備えた光変調器の一例を示す断面図である。
図2】(a)疑似TEMモード、(b)パラレルプレートモードを説明する図である。
図3】本発明の光変調器に係る第1の実施例を説明する図である。
図4】本発明の光変調器に係る第2の実施例を説明する図である。
図5】本発明の光変調器に係る第3の実施例を説明する図である。
図6】本発明の光変調器に係る第4の実施例を説明する図である。
図7】本発明の光変調器に係る第5の実施例を説明する図である。
図8】本発明の光変調器に係る第6の実施例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の光変調器について、好適例を用いて詳細に説明する。
本発明の光変調器は、図1に示すように、光変調素子2を筐体(10,11)内に収容した光変調器1であり、外部回路基板7との間の電気線路の少なくとも一部をフレキシブル回路基板6で接続すると共に、該外部回路基板上に配置される光変調器において、該筐体10の外側底面には、該フレキシブル回路基板を接続配置する部分に該フレキシブル回路基板を収容する凹部が形成され、該凹部の該フレキシブル回路基板に対向する面Aと、平面視した際に該面Aと重なり合う該フレキシブル回路基板に設けられた電気配線部分Bと、さらに平面視した際に該面Aと重なり合う該外部回路基板に設けられた電気配線部分Cとの間でマイクロ波・ミリ波の共振モードやパラレルプレートモードが発生しないように、図3乃至7に示すような共振モード等抑制手段を備えていることを特徴とする。
【0027】
本発明の光変調器では、光変調素子2には、LiNbO基板(LN基板)などの電気光学効果を有する基板に光導波路や変調電極を形成した光変調素子が利用可能である。また、これに限らず半導体変調素子なども利用可能である。特に25GHz以上の高周波信号を印加する光変調素子は、本発明に好適に利用できる。
【0028】
図1では、リードピン4から、中継基板3を介して光変調素子2に電気的接続を行うよう構成されているが、リードピン4から直接、光変調素子2に電気的接続を行うことも可能である。また、リードピン4と中継基板との接続は、金等のワイヤー50で接続するだけでなく、中継基板に設けた信号配線と半田接続することも可能である。
【0029】
リードピンは、信号電極と接地電極の各々電極に対応してリードピンを使用することも可能であるが、図1に示すように、信号電極のリードピンを取り囲むように、接地電極用の導電性スリーブ(円筒電極)を配置することも可能である。当然、リードピンとスリーブとの間には、ガラス等の絶縁材料が充填されている。このようなリードピンとスリーブとの組み合わせを採用することで、リードピンで接続される部分のインピーダンスを安定的に所定の値に設定することが可能となる。
【0030】
本発明の光変調器に使用されるフレキシブル回路基板6は、ポリイミドをベース基材(基板)に使用し、ベース基材上にAu、Cu等により電気線路が形成されている。電気配線の電極の厚みは、20μm以上、より好ましくは25μm以上であり、少なくとも、信号電極が形成された面には、信号電極と併せて接地配線も同等の厚みで形成される。マイクロストリップ(MS)線路の接地電極や、G−CPW線路(一方の面上にコプレーナ型線路を形成し、他方の面上に接地電極を設けたもの)の接地電極については、20μm未満でも、十分に接地電極としての機能を果たすため、電極を厚く形成することは必須ではない。
【0031】
本発明に係る共振モード等抑制手段について、詳細に説明する。共振モード等抑制手段としては、次の4つの方法を適宜組み合わせて実施することが可能である。
(1)空洞サイズの調整方法:使用する帯域に合わせて、隙間を構成する空間の誘電率や反射面間の距離の調整。隙間に遮蔽反射面を挿入することも可能。なお、この方法は、パラレルプレートモードには効果が薄い。
(2)空洞の不均一化:FPCを、凹部内面Aや外部回路基板の表面に対して傾ける。FPCを撓ませたり、波形に形成する。凹部の内壁面を、FPCや外部回路基板の表面に対して傾ける。該内壁面を、波形、凹凸形状、段差形状に形成する。
(3)反射・吸収の機能を付与:凹部の内壁面の粗化。隙間や内壁面又は外部回路基板表面に非金属材料や高誘電率材料を配置。
(4)FPCの接地電極面間を短絡するビアやブラインドビア、ピラーや、PFCの接地電極面、凹部内面Aや外部回路基板を互いに短絡するボールグリッド、抵抗スポンジなどを使用し、対向する面の間を電気的に短絡させる。
(5)FPCの接地電極に切欠きを入れ、凹部内面Aや外部回路基板に対向する接地電極の面積を少なくする。
【0032】
次に、具体的な実施例を図3乃至8を用いて説明する。
図3は、第1の実施例であり、FPC6を傾けて配置し、空洞(隙間S1,S2)の形状を不均一化したものである。FPC6を傾けて保持するため、凹部の内面に高さの異なる凸状の支持部(20,21)を設ける。当然、支持部は、図3に示すように2つに限らず、3つ以上形成してもよい。
【0033】
図4は、第2の実施例であり、凹部の内面Aに凹凸形状を形成し、空洞を不均一化したものである。また、凹部の内壁面を粗面化して、共振モードが発生しないように構成することも可能である。図4では、周期的な凹凸形状を形成しているが、共振モードの防止のためには周期的な形状にする必要はない。
【0034】
図5は、第3の実施例であり、隙間S1やS2に、誘電率材料(30,31)を部分的に配置したものである。これにより、空洞サイズが変更されるだけでなく、空洞の不均一化も併せて実現することが可能となる。その結果、共振モードだけでなくパラレルプレートモードの発生を抑制することが可能となる。
【0035】
図3乃至5に示すように、凹部の内面AとFPC6の電気配線部分(FPCの表面又は裏面に配置された配線)との間の間隔やその間の誘電率、あるいは、FPC6の電気配線部分と外部回路基板7の電気配線部分(回路基板の表面の配線)との間の間隔やその間の誘電率の少なくとも一つが、局所的に異なるよう設定することで、共振モード等を抑制することが可能となる。
【0036】
図6は、第4の実施例であり、凹部の内壁面にマイクロ波・ミリ波を吸収・減衰させるような材料(非金属材料、高誘電率材料)40を配置したものである。これにより、共振モード等の発生が抑制される。当然、外部回路基板7の表面の一部(FPC6と対向部分)に吸収又は減衰材料を配置することも可能である。
【0037】
また、FPC6と外部回路基板7との間でパラレルプレートモードが発生するのを抑制する方法として、FPC6に対向する外部回路基板7の表面には、接地電極等の電極が配置されないよう構成することも効果的である。
【0038】
図7は、第5の実施例であり、凹部の内面AとFPC6の電気配線部分(特に、FPCの表面側に形成された接地電極)とを金等の導電性材料で形成したピラー50で電気的に接続し、面間の短絡を行ったものである。FPC6の電気配線部分(特に、FPCの裏面側に形成された接地電極)と外部回路基板の電気配線部分(特に、回路基板の表面に形成された接地電極)とをピラー51で電気的に接続することも可能である。FPC6に複数の信号線が配されている場合、信号線に沿って信号線の両側にピラーを形成するとクロストーク低減効果は一層高まる。
【0039】
複数のピラーの配置間隔と抑圧量との関係は、例えば、75GHzのマイクロ波・ミリ波に対しては、隣接するピラーとの間隔を500μmとした場合には約10dBの抑圧を実現でき、ピラー間隔を100μmとした場合には約40dBの抑圧を実現することが可能である。
【0040】
また、FPC6の両面に接地電極(接地配線)を形成する場合には、両方の接地電極が対向する領域に、FPCを貫通する孔に導電性材料を配置し、両方の接地電極を導通させるビアを設けることも可能である。
【0041】
図8は、第6の実施例であり、FPC6に形成する接地電極62に切欠き(63〜65)を設け、凹部の内面Aや外部回路基板の電気配線部分Cと対向する接地電極の面積を少なくすることで、パラレルプレートモードを発生することを抑制することが可能となる。信号電極間におけるクロストークも大きく低減される。図8の符号60はFPCの絶縁基板、61は絶縁基板の表面(紙面の手前側)に形成された信号電極、62は絶縁基板の裏面(紙面の奥側)に形成された接地電極である。切欠き(63〜65)の領域が広いほど、パラレルプレートモードの発生抑制効果とクロストークの低減効果は高い。さらに、切欠きによりFPC6の可撓性が改善する。そのため、FPC6を撓ませて配線すれば、パラレルプレートモードの発生抑制効果とクロストーク低減効果は、さらに高められる。
【0042】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。示した実施例を適宜組み合わせれば、効果がさらに高まることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明によれば、フレキシブル回路基板を収容する筐体の凹部で発生する共振モード等の現象を抑制し、広帯域特性を改善した光変調器を提供することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 光変調器
2 光変調素子
3 中継基板
4 リードピン
5,50 ワイヤーボンディング
6 フレキシブル回路基板
7 外部回路基板
10 筐体
11 筐体(蓋)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8