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特開2018-109612位置測定装置および位置測定装置を作動する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-109612(P2018-109612A)
(43)【公開日】2018年7月12日
(54)【発明の名称】位置測定装置および位置測定装置を作動する方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20180615BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20180615BHJP
   F16D 66/02 20060101ALI20180615BHJP
   F16D 55/28 20060101ALI20180615BHJP
【FI】
   G01D5/244 Z
   G01B21/00 C
   F16D66/02 F
   F16D55/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-230152(P2017-230152)
(22)【出願日】2017年11月30日
(31)【優先権主張番号】10 2016 224 012.9
(32)【優先日】2016年12月2日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】エーリヒ・シュトラッサー
【テーマコード(参考)】
2F069
2F077
3J058
【Fターム(参考)】
2F069AA02
2F069BB40
2F069DD27
2F069GG04
2F069GG06
2F069GG07
2F069GG12
2F077AA44
2F077CC02
2F077NN02
2F077NN04
2F077NN14
2F077NN16
2F077NN17
2F077NN19
2F077NN24
2F077NN27
2F077PP01
2F077PP05
2F077PP19
2F077QQ05
2F077QQ17
2F077TT33
2F077TT52
2F077TT58
2F077UU20
3J058AA43
3J058AA53
3J058AA57
3J058AA69
3J058AA78
3J058AA79
3J058AA88
3J058BA41
3J058BA60
3J058BA62
3J058DB02
3J058DB05
3J058FA42
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡易にモータシャフトの軸線方向における機械部品の位置を測定可能な位置測定装置を提供する。
【解決手段】測定目盛13を備え、シャフト100に回動不能に結合可能な目盛担体12と、測定目盛13の走査によって走査信号A,Bを生成するための走査ユニット15と、走査信号A,Bをシャフトのデジタル角度値αに加工するための評価電子装置20と、後続電子装置80と通信するためのインターフェイスユニット30とを含む。走査ユニット15が、シャフト100の軸線方向Zに移動可能に支承された機械部品50に取付け可能であり、走査信号A,Bは、シャフト100の軸線方向Zにおける機械部品50の位置の関数である。評価電子装置20によって、走査信号A,Bから機械部品50のこの位置のための基準が検出可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置測定装置であって、
測定目盛(13,113)を備え、シャフト(100)に回動不能に結合可能な目盛担体(12,112)と、
前記測定目盛(13,113)の走査によって走査信号(A,B)を生成するための走査ユニット(15,115)と、
前記走査信号(A,B)をシャフトのデジタル角度値(α)に加工するための評価電子装置(20)と、
後続電子装置(80)と通信するためのインターフェイスユニット(30)とを含む位置測定装置において、
前記走査ユニット(15,115)が、前記シャフト(100)の軸線方向(Z)に移動可能に支承された機械部品(50,210)に取付け可能であり、前記走査信号(A,B)が、シャフト(100)の軸線方向における前記機械部品(50,210)の位置の関数であり、評価電子装置(20)によって、走査信号(A,B)から前記機械部品(50,210)のこの位置のための基準が検出可能である位置測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置測定装置において、
前記目盛担体(12)がディスク状であり、前記測定目盛(13)が、前記シャフト(100)の回転軸線(110)を中心として半径方向に測定目盛平面(V)に配置されており、前記測定目盛平面(V)が前記シャフト(100)の前記回転軸線(110)に対して垂直に配置されており、
前記評価電子装置(20)において前記測定目盛(13)と前記走査ユニット(15)との間の走査間隔(D)が検出可能であり、該走査間隔(D)が、前記シャフト(100)の軸線方向(Z)における前記機械部品(50,220)の位置のための基準であり、
通常モードでは、前記走査間隔(D)が第1範囲(ΔD1)内で変更可能であり、
前記機械部品(50,210)の位置を測定するための間隔測定モードでは、前記走査間隔(D)が、第1範囲(ΔD1)よりも大きく、第1範囲(ΔD1)を含む第2範囲(ΔD2)内で変更可能である位置測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の位置測定装置において、
目盛担体が円筒状であり、前記測定目盛(113)がシリンダの周面に設けられており、前記走査ユニット(115)の走査要素(114)が前記測定目盛(113)から前記走査間隔(D)だけ離間して配置されている位置測定装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の位置測定装置において、
前記評価電子装置(20)の内部にメモリユニット(22)が配置されており、該メモリユニット内に、前記機械部品(50,210)の位置のために検出された基準が保存可能である位置測定装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の位置測定装置において、
前記機械部品(50,210)の位置の測定が、後続電子装置(80)によるコマンドによって開始可能であり、該コマンドが、インターフェイスユニット(30)を介して前記評価電子装置(20)に伝送可能である位置測定装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の位置測定装置において、
前記評価電子装置(20)が、前記機械部品(50,210)の位置の飛躍的な変化を検出し、これに続いて測定を開始するように構成されている位置測定装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の位置測定装置において、
前記機械部品(50)が、前記モータブレーキのアーマチャプレート(210)である位置測定装置。
【請求項8】
位置測定装置を作動する方法であって、
測定目盛(13,113)を備え、シャフト(100)に回動不能に結合可能な目盛担体(12,112)と、
前記測定目盛(13,113)の走査によって走査信号(A,B)を生成するための走査ユニット(15,115)と、
走査信号(A,B)をシャフトのデジタル角度値(α)に加工するための評価電子装置(20)と、
後続電子装置(80)と通信するためのインターフェイスユニット(30)とを含む位置測定装置を作動する方法において、
前記シャフト(100)の軸線方向(Z)に移動可能に支承された機械部品(50,210)に前記走査ユニット(15,115)を取り付け、前記走査信号(A,B)を前記シャフト(100)の軸線方向(Z)における前記機械部品(50,210)の位置の関数とし、前記評価電子装置(20)において前記走査信号(A,B)から前記機械部品(50,210)の前記位置のための基準を検出することを特徴とする位置測定装置を作動する方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において
前記目盛担体(12)をディスク状にし、前記測定目盛(13)を、前記シャフト(100)の回転軸線(110)を中心として半径方向に測定目盛平面(V)に配置し、測定目盛平面(V)を前記シャフト(100)の回転軸線(110)に対して垂直に配置し、
前記評価電子装置(20)において前記測定目盛(13)と前記走査ユニット(15)との間の走査間隔(D)を検出し、該走査間隔(D)を前記シャフト(100)の軸線方向(Z)における前記機械部品(50,115)の位置のための基準にし、
通常モードで、第1範囲(ΔD1)内で前記走査間隔(D)を変更可能にし、
前記機械部品(50,210)の位置を測定するための間隔測定モードで、第1範囲ΔD1よりも大きく、第1範囲ΔD1を含む第2範囲(ΔD2)内で前記走査間隔(D)を変更する方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法において、
目盛担体を円筒状にし、前記測定目盛(113)をシリンダの周面に設け、前記走査ユニット(115)の走査要素(114)を前記測定目盛(113)から走査間隔(D)だけ離間して配置する方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法において、
前記評価電子装置(20)の内部にメモリユニット(20)を配置し、該メモリユニットに前記機械部品(50,210)の位置を保存する方法。
【請求項12】
請求項8から11までのいずれか一項に記載の方法において、
前記後続電子装置(80)によるコマンドによって前記機械部品(50,210)の位置の測定を開始し、前記インターフェイスユニット(30)を介して前記コマンドを前記評価電子装置(20)に伝送する方法。
【請求項13】
請求項8から12までのいずれか一項に記載の方法において、
前記評価電子装置(20)によって、前記機械部品(50,210)の位置の飛躍的な変化を検出し、これに続いて前記機械部品(50,210)の位置の測定を開始する方法。
【請求項14】
請求項8から13までのいずれか一項に記載の方法において、
前記シャフト(100)の回転速度が低い場合、特に前記シャフト(100)が停止している場合に前記間隔測定モードを実施する方法。
【請求項15】
電動モータのためのブレーキシステムであって、
電動モータのシャフト(100)に回動不能に固定されたブレーキディスク(250)と、
前記シャフト(100)の軸線方向に移動可能に支承されたアーマチャプレート(210)と、
ブレーキを作動するために前記アーマチャプレート(210)を軸線方向に移動可能であり、摩擦を生成するために前記アーマチャプレート(210)の面を前記ブレーキディスク(250)の面に押圧可能にする第1の力を生成するための力生成手段と、
ブレーキを解除するために前記ブレーキディスク(250)から前記アーマチャプレート(210)を分離可能にする第2の力を生成するための力生成手段と、
摩擦が生成される面の間に配置された少なくとも1つのブレーキパッド(280)と
を備えるブレーキシステムにおいて、
前記シャフト(100)に、請求項1から7までのいずれか一項に記載の位置測定装置(10)の測定目盛(13)を備える目盛担体(12)が配置されており、
前記アーマチャプレート(210)に、請求項1から7までのいずれか一項に記載の位置測定装置(10)の走査要素(14)を備える走査ユニット(15)が配置されており、
位置測定装置が、請求項8から14までのいずれか一項に記載の方法を実施するために適していることを特徴とする電動モータのためのブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の位置測定装置、および請求項8の前提部分に記載のこのような位置測定装置を作動する方法に関する。さらに本発明は、請求項15に記載の電動モータのためのブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
位置測定装置は、特に自動化技術においては、線形および回転運動を監視するために極めて頻繁に必要とされる。線形運動を監視するためには、いわゆる「長さ測定器」が使用され、これに対して回転運動を測定するためには、いわゆる「回転センサ」または「角度測定器」が使用される。
【0003】
回転運動は一般に電動モータによって生成され、電動モータはモータシャフトを駆動し、モータシャフトは、必要に応じてクラッチおよびギアを介して技術設備の機械部品を移動させる。正確な位置決めプロセスを実施することができるように、電動モータは調整回路で作動され、ここにはサーボ駆動装置も含まれる。調整のために必要とされる位置値を連続的に測定するためには、シャフトの角度位置および/または回転数が位置測定装置(回転センサまたは角度測定器)によって監視される。
【0004】
欧州特許出願公開第1126248号明細書は、このために適した位置測定装置を記載している。この位置測定装置は、シャフトに回動不能に結合可能な目盛担体に設けられた測定目盛を含み、この測定目盛は、測定目盛平面においてシャフトの回転軸線に対して垂直方向に回転する。測定目盛を走査するためには、作動時に走査ユニットが測定目盛に向かい合って配置されており、走査ユニットは、走査平面において測定目盛平面に対して平行に配置されている。平面と平面との間隔は走査間隔として定められる。走査間隔は、最適な作動状態を達成するために、位置測定装置を組み立てる場合にできるだけ正確に設定される。
【0005】
シャフトの回転運動の他に、モータシャフトの軸線方向に移動する機械部品の線形運動が測定されることも多い。これは、例えばブレーキ装置の場合である。ブレーキ装置を用いて故障時に電動モータを即時に制動し、停止させることができる。この場合、シャフトの軸線方向に移動可能に支承された機械部品が、シャフトに回動不能に結合されたブレーキディスクに力によって押し付けられる。この接触によって、ブレーキ作用を誘起する摩擦が生成される。摩擦が生じる領域には、ブレーキプロセスを最適化するためにブレーキパッドが配置されている。ブレーキパッドは、ブレーキ動作によって経時的に摩耗するので、メンテナンスの際に早期に交換することができるように、ブレーキパッドの厚さを監視することが望ましい。例えば、移動可能に支承された機械部品がブレーキを作動するために進んだ距離を測定することにより、ブレーキパッドの厚さを推定することができる。このためには長さ測定装置を使用することができる。しかしながら、このような構成には多大な手間がかかり、さらにコスト高である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1126248号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、あまり手間をかけずに、モータシャフトの軸線方向における機械部品の位置を測定可能な装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1に記載の位置測定装置によって解決される。
【0009】
請求項1では、位置測定装置であって、
測定目盛を備え、シャフトに回動不能に結合可能な目盛担体と、
測定目盛の走査によって走査信号を生成するための走査ユニットと、
走査信号をシャフトのデジタル角度値に加工するための評価電子装置と、
後続電子装置と通信するためのインターフェイスユニットとを含む位置測定装置が提案される。
【0010】
走査ユニットは、シャフトの軸線方向に移動可能に支承された機械部品に取付け可能であり、走査信号は、シャフトの軸線方向における機械部品の位置の関数である。評価電子装置によって、走査信号から機械部品のこの位置のための基準が検出可能である。
【0011】
さらに本発明の課題は、あまり手間をかけずにモータシャフトの軸線方向における機械部品の位置を測定可能な方法を提案することである。
【0012】
この課題は、請求項8に記載の方法によって解決される。
【0013】
請求項8では位置測定装置を作動するための方法であって、
測定目盛を備え、シャフトに回動不能に結合可能である目盛担体と、
測定目盛の走査によって走査信号を生成するための走査ユニットと、
走査信号をシャフトのデジタル角度値に加工するための評価電子装置と、
後続電子装置と通信するためのインターフェイスユニットとを含む位置測定装置を作動するための方法が提案される。
【0014】
走査ユニットは、シャフトの軸線方向に移動可能に支承された機械部品に取り付けられ、走査信号はシャフトの軸線方向における機械部品の位置の関数である。評価電子装置では、走査信号から機械部品のこの位置のための基準が検出される。
【0015】
請求項15に記載のモータブレーキに関連して本発明による位置測定装置を使用し、対応する方法を実施することが特に好ましい。
【0016】
本発明の好ましい構成が請求項1および8に従属する請求項ならびに次の実施例の説明により明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による位置測定装置のブロック図である。
図2】モータブレーキシステムの概略断面図である。
図3】本発明による位置測定装置の代替的な実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明による位置測定装置の一実施例を示す。この位置測定装置は、測定目盛13を備える目盛担体12、走査要素14を備える走査ユニット15、評価電子装置20、およびインターフェイスユニット30を含む。
【0019】
目盛担体12はディスク状であり、測定目盛13はディスクの回転中心を中心として半径方向に配置されている。目盛担体12はシャフト100に結合可能であり、測定目盛13は測定目盛平面Vにおいてシャフト100の回転軸線110に対して垂直方向に回転する。走査ユニット15は、測定目盛平面Vに対して平行な走査平面Wに走査要素14が位置するように、目盛担体12に対して配置されている。走査要素14によって測定目盛13を走査することにより走査信号A,Bが得られ、これらの走査信号は評価電子装置20に供給される。少なくとも2つの走査信号A,Bが、回転方向の決定を可能にする位相ずれを備える。位相ずれは、一般に90°である。
【0020】
位置測定装置では、異なる物理的な走査原理、例えば、光学式、磁気式、容量式、または誘導式の走査原理が使用される。
【0021】
走査原理とは無関係に、走査信号A,Bは、一方では位置の関数であり、したがって、シャフト100が回転した場合に角度位置αの関数として変化するが、他方では走査間隔D、すなわち、測定目盛13と走査要素14との間の間隔の関数でもある。例えば、この間隔は、測定目盛平面Vと走査平面Wとの間隔に対応している。
【0022】
評価電子装置20は、既知の方法で、走査信号A,Bから目盛担体12、ひいてはシャフト100の角度位置α、場合によっては回転数nを検出する。さらに評価電子装置20は走査間隔Dを検出する。このために、走査信号A,Bの振幅値またはピークピーク値を評価することができるが、しかしながら、走査信号A,Bの瞬間値を使用してもよい。走査間隔Dを検出する場合に必要に応じて、例えば、シャフト100の回転数など、走査信号A,Bに影響を及ぼし得る他の係数を考慮してもよい。
【0023】
走査間隔Dは、位置値として直接に、または、例えば電圧値として間接的に示されていてもよい。例えば、冒頭で述べた欧州特許出願公開第1126248号に記載の位置測定装置が既知であり、この位置測定装置では、走査信号A,Bに基づいた走査ユニット15の励起信号が、走査信号A,Bが常に同じ信号振幅を備えるように調整される。このような調整において、例えば励起信号を設定するための操作変数または励起信号を決定する参照変数が走査間隔Dのための基準となる。図示の実施例では操作変数は励起子電流Iである。
【0024】
角度位置α、回転数n、および走査間隔Dをインターフェイスユニット30に供給することができ、このインターフェイスユニットから後続電子装置80に伝送してもよい。好ましくは、インターフェイスユニット30はデジタル式の直列インターフェイスとして構成されている。後続電子装置80は、それぞれのデータ伝送をトリガするいわゆる「マスター」であり、位置測定装置は、インターフェイスユニット30を介して対応するコマンドを受信した場合にのみデータを伝送するいわゆる「スレーブ」である。
【0025】
従来技術によれば、目盛担体12および走査ユニット15を取り付ける際に、走査間隔Dをできるだけ正確に設定し、シャフト100の回転軸線の方向における動きが防止されるように取り付けることを常に目的としている。このようにして、走査間隔Dの変化によって誘起される走査信号A,Bの信号振幅の変化が防止され、角度位置αおよび回転数nを検出するために常に最適な走査信号A,Bが供給される。例えば温度に基づいたシャフト100の長さ変化によって誘起される走査間隔Dの最小変化または目盛担体の揺動などが生じる場合があり、これにより、走査間隔Dは最大で範囲ΔD1だけ変更される。
【0026】
本発明による位置測定装置は、走査ユニット15が目盛担体12に対してシャフト100の軸線方向Zに移動可能に取付け可能であり、例えば、軸線方向Zに移動可能に支承された機械部品50(ここには概略的にのみ示す)に取付け可能となるように適切に構成されている。取付けは、走査間隔Dが第1範囲ΔD1においてのみ変更され、位置測定装置の通常モードのために走査間隔Dが正確に設定されるように行われる。第1範囲ΔD1における走査間隔Dの変化の要因には、例えば、熱膨張作用がある。しかしながら、間隔測定モードでは、第1範囲ΔD1よりも大きく、第1範囲ΔD1を含む第2範囲ΔD2における走査間隔Dの変化が許可されている。第2範囲ΔD2では、場合によっては精確さに劣るが、角度位置αがさらに検出可能である。好ましくは、間隔測定モードでは通常モードの場合よりも低いシャフト100の回転数が許可される。シャフト100が停止している場合に間隔測定モードが実施される場合には特に好ましい。
【0027】
走査ユニット15が取り付けられている機械部品50が移動した場合には、走査間隔Dの測定によって機械部品50の位置を測定することもできる。換言すれば、走査間隔Dは機械部品50の位置のための基準である。
【0028】
測定は、後続電子装置80による適宜なコマンドによって開始することができ、コマンドはインターフェイスユニット30を介して評価電子装置20に伝送される。同様に、評価電子装置20では、走査間隔Dの飛躍的な変化、特に第1範囲ΔD1を超える変化が検出され、これに続いて走査間隔Dの測定が開始されるように構成されていてもよい。このことは、監視したい機械部品50が少なくとも2つの位置の間で往復運動される場合には、特に好ましい。
【0029】
機械部品50の位置を決定するための走査間隔Dの測定は、好ましくは、等しい作動条件で行われ、例えば熱膨張などのように走査間隔Dを変更する場合もある外部の影響によって測定結果が歪曲されることはない。さらに少なくとも1つの温度センサ40が設けられていてもよく、この温度センサの測定値は評価電子装置20に供給され、評価電子装置は温度の影響を考慮することができる。他の影響値を補償するためにさらなるセンサが設けられていてもよい。
【0030】
機械部品50の位置のための基準として検出された値、すなわち、この実施例では走査間隔Dは、評価電子装置20の内部に配置されたメモリユニット22に保存することができる。しかしながら、代替的には走査間隔Dは後続電子装置80に直接に伝送することもできる。この値が長さの基準として提供されておらず、他の物理量(例えば、走査信号A,Bの信号振幅/瞬間値または励起子電流I)として提供されている場合には、評価電子装置20において長さの基準への対応した換算を行うことができる。換算は換算表に基づいていてもよく、換算表は同様にメモリユニット22に保存されていてもよい
【0031】
メモリユニット22には、最大および/または最小の走査間隔Dのための限界値が保存されていてもよい。実際に測定された走査間隔Dと保存されている限界値とを比較することによりエラー状態を検出することができ、必要に応じて適切な状態についての報告を後続電子装置80に伝送することもできる。
【0032】
機械部品50の位置のための基準である値を検出するためには、測定目盛13は独立した目盛を含み、この目盛を走査するために走査ユニット15の内部には独立した走査要素14が設けられている。この場合、この値を検出するために使用される走査信号は、デジタル角度値αに加工するために使用される走査信号とは異なっていてもよい。
【0033】
図2は、モータの駆動側に向いていない方のシャフト100の端部に配置された電動モータのためのブレーキシステムの機能概略図を示す。ブレーキの機能、特にブレーキパッドの摩耗状態を監視するためには、図1について説明した特性を備える位置測定装置が使用される。図2には、解除された状態のブレーキが示されている。
【0034】
ブレーキを作動するためには、シャフトに対しては回動不能に固定されているが、ガイド手段によって軸線方向に移動可能に支承された機械部品に、シャフトの軸線方向に作用する第1の力を加え、これにより、シャフトと共に回転するブレーキディスクの面に機械部品の面を押し付けるという機能原理がモータブレーキの基礎をなしている。これにより、ブレーキ作用を引き起こす摩擦が生成される。ブレーキ作用を最適化し、均一な制動を保証し、特に摩擦によって引き起こされる摩耗を制御可能にするために、ブレーキ動作によって摩擦が生じるブレーキ面の間にはブレーキパッドが配置されている。ブレーキを解除するために、第2の力が再びシャフトの軸線方向に機械部品に作用し、摩擦がもはや生じないように機械部品をブレーキディスクから移動する。第1および第2の力は反対方向に作用する。これらの力は、例えばばね、電磁石、質量体などの随意の力生成手段によって生成することができる。
【0035】
この機能原理を実現するために、図2の実施例では移動可能に支承された機械部品としてアーマチャプレート210が設けられており、ガイド手段として少なくとも2つのガイドピン220が設けられている。アーマチャプレート210は、ガイドピン220によってシャフト100の軸線方向に移動可能に支承されている。ガイドピン220は、一方ではモータのケーシングブロック230に結合されており、他方では組立フレーム240に結合されており、同時にシャフト100の回転方向におけるアーマチャプレート210の回動を防止する。
【0036】
ブレーキディスク250はシャフト100に回動不能に結合されており、シャフト100と共に回転する。第1の力FBを生成するための力生成手段として、少なくとも1つの圧縮ばね260が設けられており、この圧縮ばねは、アーマチャプレート210をブレーキディスク250の方向に押圧し、電磁石270が第2の力FMを生成し、スイッチオンされた状態でアーマチャプレート210をブレーキディスク250から引き離し、ブレーキを解除する。
【0037】
ブレーキが作動された場合には第1の力FBが作用し、ブレーキディスク250は、モータのケーシングブロック230に配置されたブレーキ面の方向に弾性変形され、ブレーキ面に押し付けられ、これによりブレーキディスク250の両面に摩擦が生じ、ひいてはブレーキ作用が生じる。
【0038】
ブレーキディスク250の、摩擦が生成される面にはブレーキパッド280が配置されている。
【0039】
解除されているブレーキ(電磁石270がスイッチオンされている)と作動しているブレーキ(電磁石270がスイッチオフされている)との間で、アーマチャプレート210はシャフト100の軸線方向にブレーキ行程Hを進む。ブレーキストロークHのための重要な影響値はブレーキパッド280の厚さである。なぜなら、ブレーキパッドの厚さは摩耗(磨滅)によって経時的に減少し、これによりブレーキストロークHは延長されるからである。しかしながら、このことは、ブレーキストロークHを測定することにより、ブレーキパッド280の摩耗状態を推定できることを意味する。
【0040】
さらにブレーキシステムは、例えば図1に関連して説明した位置測定装置を含む。位置測定装置の目盛担体12は、シャフト端部でシャフト100に回動不能に結合されており、したがって、ブレーキディスク250と同様にシャフト100と共に回転する。
【0041】
しかしながら、少なくとも走査ユニット15、好ましくは評価電子装置20ならびにインターフェイスユニット30も同様に、アーマチャプレート210に取り付けられたケーシング60内に、測定目盛13と走査要素14とが向かい合うように配置されている。これにより、既知のように位置測定装置によって角度位置α、およびシャフト100が進んだ回転数nが測定可能である。
【0042】
図1に示すように、この装置では、測定目盛13が測定目盛平面Vに設けられており、これに対して平行に走査ユニット15、特に走査要素14が走査平面Wに設けられている。
【0043】
この装置では、ブレーキを作動もしくは解除した場合の位置測定装置の走査間隔Dの変化が直接にブレーキのブレーキストロークHに対応している。上述のように、ブレーキストロークHはブレーキパッドの厚さの関数なので、ブレーキが作動されている場合の走査間隔Dはブレーキパッド280の厚さのための基準でもあり、したがって、ブレーキパッド280の厚さを監視するために適している。
【0044】
ブレーキパッド280の厚さを監視するためには、好ましくはブレーキの初期状態(新しいブレーキパッド280)で、ブレーキの作動時に走査間隔Dが測定され、参照変数として保存される。保存のためには、評価電子装置20の内部にメモリユニット22が設けられていてもよい。代替的には、参照変数を後続電子装置80に伝送し、そこに保存することもできる。
【0045】
ブレーキパッド280の厚さを検出するための走査間隔Dの測定は、好ましくは停止状態で、すなわち、シャフト100が停止している場合に実施される。
【0046】
これにより、走査間隔Dに影響を及ぼす他の影響値が測定結果を歪曲することが防止されるか、もしくは測定時にこれらの影響値を考慮する必要がなくなる。
【0047】
図3は、本発明による位置測定装置の代替的な実施形態を示す。図1の位置測定装置に関連して説明した構成要素には同じ符号が付した。
【0048】
上記実施例とは異なり、目盛担体112は円筒状であり、測定目盛113は円筒の周面に設けられている。走査ユニット115の走査要素114は、測定目盛113から走査間隔Dだけ離間して配置されている。この場合、走査要素114は、一か所のみに取り付けられていてもよいし、またはシリンダの周囲にわたって複数の箇所に取り付けられていてもよい。特に、誘導式の走査原理が使用される場合には、シリンダの周面を包囲するように走査要素(励磁コイルおよび受信コイル)を構成することが好ましい。
【0049】
走査ユニット115は機械部品50に取付け可能であり、この機械部品はシャフト100の軸線方向に移動可能に支承されている。通常モードで走査信号A,Bの振幅が機械部品50の移動経路に関して軸線方向Zに最大値に達するように取付けが行われる。測定目盛113の幅が走査要素114の作動範囲の幅を超えた(理想的には円筒状の目盛担体の高さに等しい)場合には、小さい範囲ΔZ1が生じ、この範囲では、軸線方向Zへの機械部品50の移動は、走査信号A,Bの振幅に影響を及ぼさない。しかしならが、機械部品50が間隔測定モードで、移動方向に応じて範囲ΔZ1に続く範囲ΔZ2もしくはΔZ2′に移動した場合には、走査信号A,Bの振幅は減少し、再び軸線方向Zにおける機械部品の位置のための基準となる。
【0050】
上記実施例と同様に、間隔測定モードは、好ましくは回転数が低い場合、特にシャフト100が停止している場合に実施される。
【0051】
この実施形態においても、走査信号A,Bに基づいた走査ユニット115の励起信号は、走査信号A,Bが常に同じ信号振幅を備えるように調整される。したがって、この場合にも、励起子信号を設定するための操作変数または操作変数を設定するための参照変数などの調整パラメータは、機械部品50の位置ための基準であってもよい。図示の実施例では操作変数は励起子電流Iである。
【0052】
したがって、測定目盛113を備える目盛担体112および走査要素114を備える走査ユニット115は、図2の測定目盛13を備える目盛担体12および走査要素14を備える走査ユニット15に代替することができる。
【0053】
本発明は、上述の実施例に制限されておらず、むしろ請求項の保護範囲で専門家が代替的に構成することができる。
【符号の説明】
【0054】
A 走査信号
D 走査間隔
D1 第1範囲Δ
D2 第2範囲Δ
FB 第1の力
FM 第2の力
n 回転数
I 励起子電流
H ブレーキストローク
W 走査平面
V 測定目盛平面
12 目盛担体
13 測定目盛
14 走査要素
15 走査ユニット
20 評価電子装置
22 メモリユニット
30 インターフェイスユニット
40 温度センサ
50 機械部品
60 ケーシング
80 後続電子装置
100 シャフト
110 回転軸線
112 目盛担体
113 測定目盛
114 走査要素
115 走査ユニット
210 アーマチャプレート
220 ガイドピン
230 ケーシングブロック
240 組立フレーム
250 ブレーキディスク
270 電磁石
280 ブレーキパッド
図1
図2
図3
【外国語明細書】
2018109612000001.pdf