【解決手段】本発明の振動波モータ10の駆動装置40Aは、駆動信号の入力により振動する電気機械変換素子13と、前記電気機械変換素子13の前記振動により駆動面が振動する振動体12と、前記駆動面に加圧接触され、前記駆動面の前記振動により相対移動する移動体15と、互いに位相が異なる2つの駆動信号を生成する移相部43と、備え、前記移相部43は、前記移動体15の相対移動により駆動される被駆動体12の位置が、停止位置に対して所定の距離となったことを検知したとき、前記駆動信号の位相差を、プラスマイナスに交互に変化させる交互回転制御を行なうこと、を特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明にかかる電子カメラ1の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の電子カメラ1を説明する図である。
電子カメラ1は、静止画及び動画撮影が可能なカメラであって、撮像光学系であるレンズ鏡筒20と、撮像素子30と、AFE(Analog front end)回路60と、画像処理部70と、音声検出部80と、操作部材90と、CPU100と、バッファメモリ110と、記録インターフェース120と、メモリ130と、モニタ140とから構成され、外部機器のPC150との接続が可能となっている。
【0010】
レンズ鏡筒20は、複数の光学レンズ群Lにより構成され、被写体像を撮像素子30の受光面に結像させる。
図1では、複数の光学レンズ群Lを簡略化して、単レンズとして図示している。この光学レンズ群Lのうちの、後述するAF用の第3レンズ群L3(
図2に図示)は、振動波モータ10により駆動される。
【0011】
撮像素子30は、受光面に受光素子が二次元的に配列されたCMOSイメージセンサなどによって構成される。撮像素子30は、レンズ鏡筒20を通過した光束による被写体像を光電変換してアナログ画像信号を生成する。
【0012】
アナログ画像信号は、AFE回路60に入力される。AFE回路60は、アナログ画像信号に対するゲイン調整(ISO感度に応じた信号増幅)を行う。具体的には、CPU100からの感度設定指示に応じて、撮像感度を所定範囲内で変更する。AFE回路60は、さらに、内蔵するA/D変換回路によってアナログ処理後の画像信号をデジタルデータに変換する。そのデジタルデータは、画像処理部70に入力される。
【0013】
画像処理部70は、デジタル画像データに対して、各種の画像処理を行う。
バッファメモリ110は、画像処理部70による画像処理の前工程や後工程での画像データを一時的に記録する。
【0014】
音声検出部80は、マイクと信号増幅部とから構成され、主に動画撮影時に被写体方向からの音声を検出して取り込み、そのデータをCPU100へ伝達する。
【0015】
操作部材90は、モードダイヤル、十字キー、決定ボタンやレリーズボタンを示し、各操作に応じた操作信号をCPU100へ送出する。静止画撮影や動画撮影の設定は、該操作部材90により設定される。
【0016】
CPU100は、不図示のROMに格納されたプログラムを実行することによって電子カメラ1が行う動作を統括的に制御する。例えば、AF(オートフォーカス)動作制御、AE(自動露出)動作制御、オートホワイトバランス制御などを行う。
【0017】
記録インターフェース120は、不図示のコネクタを有し、該コネクタにメモリカード121等の記録媒体が接続され、接続された記録媒体に対して、データの書き込みや、記録媒体からのデータの読み込みを行う。
【0018】
メモリ130は、画像処理した一連の画像データを記録する。本実施形態の電子カメラ1においては、動画に対応した画像を取り込む。
モニタ140は、液晶パネルによって構成され、CPU100からの指示に応じて、操作メニュー、静止画像及び動画などを表示する。
【0019】
次に、レンズ鏡筒20について説明する。
図2は、本発明の一実施形態のレンズ鏡筒20を説明する図である。
図3は、本発明の一実施形態の振動波モータ10の振動子11を説明する図である。
レンズ鏡筒20は、レンズ鏡筒20の外周部を覆う外側固定筒31と、外側固定筒31よりも内周側に位置する内側固定筒32と、を備え、さらに外側固定筒31と内側固定筒32との間に振動波モータ10を備える。
【0020】
内側固定筒32には、被写体側から第1レンズ群L1、第2レンズ群L2、AF環34に保持されたAFレンズである第3レンズ群L3、第4レンズ群L4が配置されている。第1レンズ群L1、第2レンズ群L2及び第4レンズ群L4は、内側固定筒32に固定されている。第3レンズ群L3は、AF環34が移動することにより内側固定筒32に対して移動可能に構成される。
【0021】
図2に示すように、振動波モータ10は、振動子11、移動子15、加圧部材18等を備え、振動子11側を固定とし、移動子15を回転駆動する形態となっている。
振動子11について説明する。
図3に示すように、振動子11は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する圧電素子や電歪素子等を例とした電気−機械変換素子(以下、圧電体13と称する)と、圧電体13を接合した弾性体12とから構成されている。振動子11には進行波が発生するようにされているが、本実施形態では一例として8波の進行波が発生される。
【0022】
弾性体12は、共振先鋭度が大きな金属材料から成り、形状は、円環形状である。弾性体12における圧電体13が接合される反対面は、溝が切られた櫛歯部12aとなっており、突起部分(溝がない箇所)の先端面が駆動面となり移動子15に加圧接触される。振動波モータ10は、圧電体13の励振により駆動面に発生する駆動力を用いて移動子15を駆動することによって第3レンズ群L3を駆動する。溝を切る理由は、進行波の中立面をできる限り圧電体13側に近づけ、これにより駆動面の進行波の振幅を増幅させるためである。溝の切っていない部分を本実施形態ではベース部12bと呼ぶ。
【0023】
ベース部12bの櫛歯部12aとは反対面に圧電体13が接合されている。弾性体12の駆動面には潤滑性の表面処理がなされている。圧電体13は、円周方向に沿って2つの相(A相、B相)に分かれており、各相においては、1/2波長毎に分極が交互となった要素が並べられていて、A相とB相との間には1/4波長分間隔が空くようにしてある。
【0024】
圧電体13は、一般的には通称PZTと呼ばれるチタン酸ジルコン酸鉛といった材料から構成されているが、近年では環境問題から鉛フリーの材料であるニオブ酸カリウムナトリウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸ナトリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマスナトリウム、チタン酸ビスマスカリウム等から構成されることもある。
【0025】
図2に示すように、圧電体13の下には、不織布16、加圧板17、加圧部材18が配置されている。不織布16は、フェルトを例としたものであり、圧電体13の下に配置されていて、振動子11の振動を加圧板17や加圧部材18に伝えないようにしてある。
【0026】
加圧板17は、加圧部材18の加圧を受けるようにされている。加圧部材18は、皿バネにより構成され、加圧板17の下に配置されていて、加圧力を発生させるものである。本実施形態では、加圧部材18を皿バネとしたが、皿バネでなくともコイルバネやウェーブバネでも良い。加圧部材18は、押さえ環19が固定部材14に固定されることで、保持される。
【0027】
移動子15は、アルミニウム等の軽金属からなり、摺動面の表面15aには耐摩耗性向上のための摺動材料等の表面処理がなされている(
図3参照)。
【0028】
移動子15の上には、移動子15の縦方向の振動を吸収するために、ゴム等により形成された振動吸収部材23が配置され、その上には、出力伝達部材24が配置されている。
【0029】
出力伝達部材24は、固定部材14に設けられたベアリング25により、加圧方向と径方向とを規制し、これにより、移動子15の加圧方向と径方向とが規制されるようにされている。
【0030】
出力伝達部材24は、突起部24aがあり、そこからカム環36に接続されたフォーク35が嵌合している。カム環36は、出力伝達部材24の回転とともに回転される。
【0031】
カム環36には、周方向に対して斜めにキー溝37が切られている。また、AF環34の外周側には、固定ピン38が設けられている。固定ピン38は、キー溝37に嵌合していて、カム環36が回転駆動することにより、AF環34は光軸直進方向に駆動され、所望の位置に停止できるようになっている。
【0032】
固定部材14には、押さえ環19がネジにより取り付けられている。押さえ環19を固定部材14に取り付けることで、出力伝達部材24から移動子15、振動子11、加圧部材18までを一つのモータユニットとして構成できる。
【0033】
次に、振動波モータ10を駆動する駆動装置40Aについて説明する。
図4は、振動波モータ10の駆動装置40Aを説明するブロック図である。駆動装置40Aは、基板40(
図2参照)に設けられている。
駆動装置40Aは、
図4に示すように、振動波モータ10に接続されており、振動波モータ10に設けられた位置検出部45から振動波モータ10の回転速度情報を受信するとともに、振動波モータ10の制御も行う。
【0034】
駆動装置40Aは、駆動制御部41と、発振部42と、移相部43と、増幅部44とを備える。
駆動制御部41は、レンズ鏡筒20内又はカメラ1本体のCPU100からの駆動指令を基に振動波モータ10の駆動を制御する。駆動制御部41には、振動波モータ10の位置を検出する位置検出部45から、制御情報として振動波モータ10の回転情報が入力されるようになっている。
【0035】
発振部42は、駆動制御部41の指令により所望の周波数の駆動信号を発生する。駆動信号は、電位ゼロを基準として、+方向及び−方向で非対称形状となっている。
移相部43は、発振部42で発生した駆動信号を位相の異なる2つの駆動信号に分ける。
増幅部44は、移相部43によって分けられた2つの駆動信号をそれぞれ所望の電圧に昇圧する。
増幅部44からの2つの駆動信号は、振動波モータ10に伝達され、この2つの駆動信号の印加により振動子11に進行波が発生し、移動子15が駆動される。
【0036】
位置検出部45は、光学式エンコーダや磁気エンコーダ等により構成され、移動子15の駆動によって駆動された被駆動体(第3レンズ群L3)の位置を直接又は間接的に検出し、検出値を電気信号として駆動制御部41に出力する。
【0037】
上記構成の駆動装置40Aは、駆動制御部41が、レンズ鏡筒20内またはカメラ1本体のCPU100からの駆動指令に基づいて、振動波モータ10の駆動を制御する。すなわち、駆動制御部41は、位置検出部45からの位置検出信号を受信すると、その値を基に、位置情報と速度情報とを得て、目標位置に位置決めされるように、駆動信号を制御する。すなわち、発振部42による周波数、移相部43による位相差、及び増幅部44による電圧を制御する。
【0038】
ここで、駆動制御部41は、主に駆動周波数を変化させることで振動波モータ10の回転速度を制御し、駆動待機時および駆動方向切り替え時における不駆動時には駆動周波数の制御に加えて位相差を制御する交互回転制御を行う。
【0039】
次に、駆動装置40Aによる振動波モータ10の駆動及び制御について説明する。
まず、駆動制御部41には、レンズ鏡筒20内又はカメラ1本体のCPU100からの目標位置が伝達される。発振部42から駆動信号が発生し、その信号は移相部43により90度位相の異なる2つの駆動信号に分割され、増幅部44により所望の電圧に増幅される。駆動制御部41は、振動波モータ10に2つの駆動信号を与える。
【0040】
2つの駆動信号は、振動波モータ10の圧電体13に印加され、圧電体13は励振され、その励振によって弾性体12には8次の曲げ振動が発生する。圧電体13はA相とB相とに分けられており、2つの駆動信号はそれぞれA相とB相に印加される。
A相から発生する8次曲げ振動とB相から発生する8次曲げ振動とは位置的な位相が1/4波長ずれるようになっており、また、A相駆動信号とB相駆動信号とは90度位相がずれているため、2つの曲げ振動は合成され、8波の進行波となる。
位相差の値+90度又は−90度は、理想的な値であり、その中間値でも進行波の形状は乱れているが、進行波は生じている。進行波の波頭には楕円運動が生じている。従って、駆動面に加圧接触された移動子15は、この楕円運動によって摩擦的に駆動される。
【0041】
移動子15により駆動された被駆動体(レンズL3)の近傍に、光学式の位置検出部45が配置されていて、そこから、電気パルスが発生し、駆動制御部41に伝達される。駆動制御部41は、この信号を基に、現在の位置と現在の速度を得ることが可能となり、これらの位置情報、速度情報及び目標位置情報を基に、発振部42の駆動周波数を制御する。
【0042】
また、AF環34を正方向に駆動する場合には、移相部43での2つの駆動信号(周波電圧信号)の位相差を+値、例えば+90度にし、AF環34を逆方向に駆動する場合には、移相部43での2つの駆動信号(周波電圧信号)の位相差を−値、例えば−90度にすれば良い。
【0043】
ここで、
図5を参照して、振動波モータ10における駆動信号の位相差および周波数と回転速度との関係を説明する。
図5(a)は、振動波モータ10の駆動信号の位相差に対する回転速度の関係の一例を示すグラフであり、
図5(b)は、振動波モータ10の駆動周波数に対する回転速度の関係の一例を示すグラフである。
図5(a)に示すように、振動波モータ10の回転速度は、2つの駆動信号の位相差が+90度では正回転の最大速度、2つの駆動信号の位相差が−90度では逆回転の最大速度となり、その中間の位相差は、中間的な速度値を示す。位相差が0度では、弾性体12の振動は定在波となって移動子15を回転駆動しなくなる(すなわち振動波モータ10の回転速度が0になる)。
また、
図5(b)に示すように、駆動周波数は、小さくすると回転速度が大きくなり、大きくすると回転速度は低下していき、0となる。これにより、例えば、2つの駆動信号の位相差を+90度に固定して、駆動周波数を変化させることで回転速度を変化させることができる。
【0044】
つぎに、駆動装置40Aの駆動制御部41による交互回転制御について説明する。
図6は、駆動制御部41による交互回転制御時における振動波モータ10の駆動信号と振動波モータ10の駆動状態を説明する図である。それぞれ横軸を時間軸とし、
図6(a)はレンズL3の位置、
図6(b)は振動波モータ10に加える信号の周波数、
図6(c)は振動波モータ10に加える信号の位相を示したものである。
【0045】
まず、カメラCPU100より、駆動装置40Aに対してAF用の第3レンズ群L3の駆動の信号が送信されると、駆動装置40Aは、振動波モータ10の電極に駆動電圧を印加する(t1)。なお、駆動電圧の印加による突発音がないようこれ以降は通電状態が続く。
【0046】
振動波モータ10の電極に駆動電圧が印加されると、駆動装置40Aは、次に周波数の掃引を開始する(t2)。
そして、駆動装置40Aは、振動波モータ10が停止している周波数「A」から所定の駆動回転数に応じた周波数「C」に駆動周波数を移行する(t3)。それに伴い、AF用の第3レンズ群L3も移動を開始し、所定の位置に移動を始める。
【0047】
やがて、AF用の第3レンズ群L3が所定の位置に近づいて所定の距離に達すると、検出部45によって検出される(t3)。
そうすると、駆動装置40Aは、第3レンズ群L3を停止させるため、振動波モータ10の周波数を「C」から、レンズ位置が停止判定範囲の最小(もしくは最大)になる周波数「B」まで移行させる(t5)。
【0048】
この時、カメラCPU100は、この状態で停止と判断するため、従来、駆動創始40Aに対して、この時点で駆動装置40Aに電圧印加を停止するように指示し、AF駆動が終了していた。しかし、通電状態が続く場合、振動波モータ10は停止周波数「A」ではないため微小ながら駆動を継続する。
【0049】
振動波モータ10の駆動に伴い、第3レンズ群L3が微小移動を続けるため、やがて停止判定の範囲外に近づく。範囲外になると、停止判定が覆ってしまう。このため、制御部40Aは、検出部45より振動波モータ10が停止判定の範囲外に近づいた通知を受けると、位相差をプラスからマイナス(又はマイナスからプラス)に反転させて、第3レンズ群L3の移動方向を反転させる(t6)。ここで、「範囲外に近づいた」とは、例えば、停止判定する範囲にから所定の距離となった場合である。
【0050】
なお、この位相差の反転は、プラス90度からマイナス90度の範囲で行う。この時、位相差を瞬間的に切り替えると突発的な音が発生してしまうため、段階的に変化させる。なお、段階的でなくとも徐々に行ってもよい。
ただし、位相差の反転は、プラス90度からマイナス90度に限らず、90度以内の、例えばプラス60度からマイナス60度の範囲でもよい。この場合、振動波モータ10の移動が緩やかになるので、慣性力等によって振動波モータ10が停止判定の範囲外まで移動してしまうことを事前に防ぎやすい。
【0051】
反転した振動波モータ10は、微小駆動を続けるため、第3レンズ群L3もまた微小移動を続け、やがて反対側の範囲外に近づく。その際、制御部40Aは、また位相差を段階的に変化させて振動波モータ10の回転、第3レンズ群L3の移動方向を反転させる(t7)。
【0052】
このようにして、制御部40Aは、次のAF駆動の信号をカメラCPU100から受信するまで、振動波モータ10を停止させることなく、第3レンズ群L3が停止判定の範囲に留まるように駆動させる。
【0053】
やがて、次のAF駆動の信号をカメラCPU100から受信すると(t8)、駆動部40Aは、周波数を「B」から「C」に掃引させてAF駆動を開始し、同様の駆動を行う。
【0054】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
通電状態でカメラボディ側がレンズの停止判定を行う範囲で、位相差を所定範囲で段階的に変化させて停止判定が途切れない範囲でレンズを小刻みに動かす。これにより超音波モータが停止している際に発生する異音を発生させることのないモータ制御を実現される。
このため、動画撮影時において、突発音が異音として録画データに記録されることがない。
【0055】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態は、本発明を円環型の振動波モータ10に適用したものである。しかし、本発明は円環型に限るものではなく、軸出力型の振動波モータに適用しても良い。
【0056】
(2)また、振動波モータ10から被駆動部材(AF環34)への駆動力伝達構造は、本実施形態に限らず適宜変更可能なものである。
(3)本実施形態は、本発明をAFレンズである第3レンズ群L3を移動駆動する振動波モータ10に適用したものであるが、移動操作する被駆動部材はAFレンズに限らず、ズーミングレンズ等他の構成要素を移動操作するものにも適用可能である。
【0057】
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。