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特開2018-123082化合物、パターン形成用基板、光分解性カップリング剤、パターン形成方法及びトランジスタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-123082(P2018-123082A)
(43)【公開日】2018年8月9日
(54)【発明の名称】化合物、パターン形成用基板、光分解性カップリング剤、パターン形成方法及びトランジスタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20180713BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20180713BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20180713BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20180713BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20180713BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20180713BHJP
   H01L 29/49 20060101ALI20180713BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20180713BHJP
【FI】
   C07F7/18 XCSP
   H01L29/78 617V
   H01L29/78 616K
   H01L21/288 Z
   H01L21/28 A
   H01L21/288 E
   H01L29/58 G
   H01L29/50 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-16229(P2017-16229)
(22)【出願日】2017年1月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(72)【発明者】
【氏名】山口 和夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 倫子
(72)【発明者】
【氏名】川上 雄介
【テーマコード(参考)】
4H049
4M104
5F110
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP03
4H049VP04
4H049VQ59
4H049VQ79
4H049VR23
4H049VR41
4H049VU22
4H049VW02
4M104AA09
4M104AA10
4M104BB04
4M104BB05
4M104BB07
4M104BB08
4M104BB09
4M104BB36
4M104DD22
4M104DD51
4M104DD53
4M104FF13
4M104GG09
5F110CC01
5F110CC03
5F110CC05
5F110CC07
5F110EE01
5F110EE02
5F110EE04
5F110EE42
5F110EE47
5F110FF01
5F110FF27
5F110GG05
5F110GG42
5F110HK01
5F110HK02
5F110HK04
5F110HK32
5F110HK41
(57)【要約】
【課題】光照射の前後で接触角差が大きく、感度がより優れた、カップリング剤として有用な化合物、該化合物を用いたパターン形成用基板、該化合物を用いた光分解性カップリング剤、及びパターン形成方法の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物。[式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基、式(R2−1)で表される基、式(R2−2)で表される基から選択されるいずれか1つの基であり、Rは式(R2−1)又は(R2−2)で表される基であり、n1は0〜5の整数、n2は1〜5の自然数である。]
[化1]

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】
[式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基、下記式(R2−1)で表される基、下記式(R2−2)で表される基から選択されるいずれか1つの基であり、Rは下記式(R2−1)又は(R2−2)で表される基であり、n1は0〜5の整数、n2は1〜5の自然数である。]
【化2】
[式中、R21、R22は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、nは自然数である。波線は結合手を意味する。]
【請求項2】
前記R21又はR22は、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基のいずれかである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物で化学修飾された表面を有するパターン形成用基板。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の化合物からなる光分解性カップリング剤。
【請求項5】
対象物の被処理面にパターンを形成するパターン形成方法であって、
対象物の被処理面の少なくとも一部をアミノ化し、アミノ化面を形成する工程と、
請求項1又は2に記載の化合物を用いて、前記アミノ化面を化学修飾する工程と、
化学修飾された前記被処理面に所定パターンの光を照射して、親水領域及び撥水領域からなる潜像を生成させる工程と、
前記親水領域又は撥水領域にパターン形成材料を配置させる工程と、
を備えるパターン形成方法。
【請求項6】
前記所定パターンは電子デバイス用の回路パターンに対応している請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記パターン形成材料は、導電材料、半導体材料、又は絶縁材料を含む請求項5又は6に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記導電材料は、導電性微粒子分散液からなる請求項7に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記半導体材料は、有機半導体材料分散液からなる請求項7に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
対象物の被処理面にパターンを形成するパターン形成方法であって、
対象物の被処理面の少なくとも一部をアミノ化し、アミノ化面を形成する工程と、
請求項1又は2に記載の化合物を用いて、前記アミノ化面を化学修飾する工程と、
化学修飾された前記被処理面に所定パターンの光を照射して、親水領域及び撥水領域からなる潜像を生成させる工程と、
前記親水領域に無電解めっき用触媒を配置し、無電解めっきを行う工程と、
を備えるパターン形成方法。
【請求項11】
前記対象物は可撓性を有する基板である請求項5〜10のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記対象物は樹脂材料からなる請求項5〜11のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
前記光は波長が200nm〜450nmの範囲に含まれる光を含む請求項5〜12のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
ゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極と、を有するトランジスタの製造方法であって、
前記ゲート電極、前記ソース電極、前記ドレイン電極のうち少なくとも1つの電極を、請求項5〜13のいずれか一項に記載のパターン形成方法で形成する工程を含むトランジスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、パターン形成用基板、光分解性カップリング剤、パターン形成方法及びトランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子、集積回路、有機ELディスプレイ用デバイス等の微細デバイス等の製造において、基板上に、表面特性の異なるパターンを形成し、その表面特性の違いを利用して微細デバイスを作成する方法が提案されている。
基板上の表面特性の違いを利用したパターン形成方法としては、たとえば、基板上に親水領域と撥水領域とを形成し、機能性材料の水溶液を親水領域に塗布する方法がある。この方法は、親水領域でのみ機能性材料の水溶液が濡れ広がるため、機能性材料の薄膜パターンが形成できる。
基板上に親水領域と撥水領域とを形成させることができる材料として、例えば、特許文献1には、光照射の前後で接触角を変化させることができる含フッ素化合物が記載されている。しかしながら、環境残留性の観点から、フッ素を含有しない材料が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4997765号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0005】
【化1】
[式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基、下記式(R2−1)又は(R2−2)で表される基であり、Rは下記式(R2−1)又は(R2−2)で表される基であり、n1は0〜5の整数、n2は1〜5の自然数である。]
【0006】
【化2】
[式中、R21、R22は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、nは自然数である。波線は結合手を意味する。]
【0007】
本発明の第2の態様は、前記本発明の第1の態様の化合物で化学修飾された表面を有するパターン形成用基板である。
本発明の第3の態様は、前記本発明の第1の態様の化合物からなる光分解性カップリング剤である。
本発明の第4の態様は、対象物の被処理面にパターンを形成するパターン形成方法であって、対象物の被処理面の少なくとも一部をアミノ化し、アミノ化面を形成する工程と、前記本発明の第1の態様の化合物を用いて、前記アミノ化面を化学修飾する工程と、化学修飾された前記被処理面に所定パターンの光を照射して、親水領域及び撥水領域からなる潜像を生成させる工程と、前記親水領域又は撥水領域にパターン形成材料を配置させる工程と、を備えるパターン形成方法である。
本発明の第5の態様は、対象物の被処理面にパターンを形成するパターン形成方法であって、対象物の被処理面の少なくとも一部をアミノ化し、アミノ化面を形成する工程と、前記本発明の第1の態様の化合物を用いて、前記アミノ化面を化学修飾する工程と、化学修飾された前記被処理面に所定パターンの光を照射して、親水領域及び撥水領域からなる潜像を生成させる工程と、前記親水領域に無電解めっき用触媒を配置し、無電解めっきを行う工程と、を備えるパターン形成方法である。
本発明の第6の態様は、ゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極と、を有するトランジスタの製造方法であって、前記ゲート電極、前記ソース電極、前記ドレイン電極のうち少なくとも1つの電極を、前記第4の態様又は前記第5の態様のパターン形成方法で形成する工程を含むトランジスタの製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】基板処理装置の全体構成を示す模式図である。
図2】パターン形成方法の概略工程を示す図である。
図3】トランジスタの製造方法の概略工程の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<化合物>
本発明の第1の実施形態は、下記一般式(1)で表される化合物である。本実施形態の化合物は、シロキサン系の撥水基を有する。本実施形態の化合物を用いて基板等の対象物表面を修飾すると、対象物表面を撥水性に改質できる。また、修飾後に光照射すると、撥水性基が脱離し、親水基が生成し、対象物表面を親水性に改質できる。
本実施形態の化合物は、従来撥水性に改質するため用いられてきたフッ素系の化合物に代替が可能であり、さらに、シロキサン系の撥水基に特有の撥液性や離形性を発揮できると考えられる。
【0010】
【化3】
[式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基、下記式(R2−1)で表される基、下記式(R2−2)で表される基から選択されるいずれか1つの基であり、Rは下記式(R2−1)又は(R2−2)で表される基であり、n1は0〜5の整数、n2は1〜5の自然数である。]
【0011】
【化4】
[式中、R21、R22は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、nは自然数である。波線は結合手を意味する。]
【0012】
{R
一般式(1)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基、下記式(R2−1)で表される基、下記式(R2−2)で表される基から選択されるいずれか1つの基である。
の炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基が挙げられ、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0013】
{n1、n2}
一般式(1)中、n1は0〜5の整数であり、後述する2置換型の場合にはn1は1〜5の自然数が好ましく、2〜4がより好ましく、3が特に好ましい。1置換型の場合には0が好ましい。n2は1〜5の自然数であり、2〜4が好ましく、3がより好ましい。
【0014】
{式(R2−1)又は(R2−2)で表される基}
一般式(1)中、R、Rで表される基として下記式(R2−1)又は(R2−2)で表される基が挙げられる。
【0015】
【化5】
[式中、R21、R22は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、nは自然数である。波線は結合手を意味する。]
【0016】
式(R2−1)又は(R2−2)中、R21、R22は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基である。炭素数1〜5のアルキル基としては、前記Rで記載した基が挙げられ、なかでもメチル基、イソプロピル基、又はtert−ブチル基が好ましい。式(R2−2)中のnは自然数であり、1〜200が好ましく、1〜150が好ましく、1〜120がより好ましい。
【0017】
以下において、R、Rで表される基として式(R2−1)で表される基を有する場合を「分岐型」、R、Rで表される基として式(R2−2)で表される基を有する場合を「直鎖型」、と記載して説明する場合がある。また、Rがアルキル基である場合を「1置換型」、Rが式(R2−1)又は(R2−2)で表される基である場合を「2置換型」と記載して説明する場合がある。
【0018】
本実施形態の一般式(1)で表される化合物には、R、Rに導入する基を調整することにより、1置換分岐型、1置換鎖状型、2置換分岐型、2置換鎖状型の化合物が含まれる。表面処理剤又はカップリング剤として用いた場合の対象物表面の水の接触角をより向上できる観点から、分岐型が好ましく、鎖状型がより好ましく、2置換鎖状型が特に好ましい。
【0019】
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を記載する。
【0020】
【化6】
【0021】
【化7】
【0022】
≪化合物の製造方法≫
本実施形態の一般式(1)で表される化合物は、下記の方法により製造することができる。
以下の製造方法の説明において、R、R21、R22に関する説明は前記同様である。
【0023】
[製造方法1]
下記式で表される中間体化合物14に、シロキサン化合物を反応させることにより、1置換鎖状型の一般式(1)で表される化合物を得ることができる。中間体化合物14は、後述する実施例に記載の方法により製造してもよく、例えばH.Nakayama et al.,Colloids Surf.B,2010,76,88−97に記載されている方法により合成してもよい。
【0024】
【化8】
[式中、R、R21は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基である。]
【0025】
[製造方法2]
1置換直鎖型の一般式(1)で表される化合物は、下記の方法により製造することもできる。具体的には、下記式で表される中間体化合物13に、シロキサン化合物を反応させ、中間体化合物15を得る。
【0026】
【化9】
[式中、R、R22は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基である。]
【0027】
得られた中間体化合物15に、スクインイミジルカーボネートを反応させ、一般式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0028】
【化10】
[式中、R、R22は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基である。]
【0029】
[製造方法3]
2置換型の一般式(1)で表される化合物は、下記の方法により製造することができる。具体的には、下記式で表される中間体化合物25に、各シロキサン化合物をそれぞれ反応させ、一般式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0030】
【化11】
[式中、R、R21は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基である。]
【0031】
【化12】
[式中、R、R22は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基である。]
【0032】
<パターン形成用基板>
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態の化合物を用いて化学修飾された表面を有するパターン形成用基板である。
本実施形態のパターン形成用基板は、表面が第1の実施形態の化合物を用いて修飾されている。このため、マスク等を介して選択的に露光することにより、パターン形成用基板上に露光部には親水性領域が、未露光部には撥水性領域が形成される。
親水性領域と撥水性領域とが形成された基板上に、パターン形成材料を塗布することにより、露光部に形成された親水性領域に選択的にパターン形成材料を塗布することができ、金属配線等を形成することができる。
【0033】
基材としては、特に限定されず、ガラス、石英ガラス、シリコンウェハ、プラスチック板、金属板等が好ましく挙げられる。また、これらの基板上に、金属薄膜が形成された基板を用いてもよい。
【0034】
基材の形状としては、特に限定されず、平面、曲面、または部分的に曲面を有する平面が好ましく、平面がより好ましい。また基材の面積も特に限定されず、従来の塗布方法が適用できる限りの大きさの面を有する基材を採用できる。また、第1の実施形態の化合物を用いて化学修飾された表面は平面上の基材の片面に形成するのが好ましい。
【0035】
基板の表面を修飾する際は、基板表面を前処理しておくことが好ましい。前処理方法としては、ピラニア溶液での前処理や、UV−オゾンクリーナーによる前処理が好ましい。
【0036】
<光分解性カップリング剤>
本発明の第3の実施形態は、第1の実施形態の化合物からなる光分解性カップリング剤である。
本実施形態の光分解性カップリング剤は、撥液基を備えた光分解性基と、この光分解性基に官能基を介して連結された付着基とを備え、撥液基がシロキサン構造を有するものであり、また、官能基が光分解後にアミノ基を残基となるものである。そのため、本実施形態の光分解性カップリング剤は、光照射前後での接触角の差を大きく確保することができる。
【0037】
<パターン形成方法>
本発明の第4の実施形態は、対象物の被処理面にパターンを形成するパターン形成方法であって、対象物の被処理面をアミノ化し、アミノ化面を製造する工程と、第1の実施形態の化合物を用いて、前記アミノ化面を化学修飾する工程と、化学修飾された前記被処理面に所定パターンの光を照射して、親水領域及び撥水領域からなる潜像を生成させる工程と、前記親水領域又は撥水領域にパターン形成材料を配置させる工程と、を備えるパターン形成方法である。
【0038】
[アミノ化工程]
本実施形態のパターン形成方法は、まず、対象物の被処理面をアミノ化し、アミノ化面を製造する。本工程は下記に示すように水酸基を持つ基板に、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等を作用させることにより、アミノ基を持つ基板を製造する。
【0039】
【化13】
【0040】
[化学修飾工程]
本工程は、対象物の被処理面にパターンを形成するパターン形成方法において、第1の実施形態の化合物を用いて、アミノ化された前記被処理面を化学修飾する工程である。
【0041】
対象物としては、特に限定されず、例えば、金属、結晶質材料(例えば単結晶質、多結晶質および部分結晶質材料)、非晶質材料、導体、半導体、絶縁体、光学素子、塗装基板、繊維、ガラス、セラミックス、ゼオライト、プラスチック、熱硬化性および熱可塑性材料(例えば、場合によってドープされた:ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスチレン、セルロースポリマー、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、樹脂、ポリエステル、ポリフェニレンなど)、フィルム、薄膜、箔、が挙げられる。
【0042】
本実施形態のパターン形成方法においては、可撓性の基板の上に電子デバイス用の回路パターンを形成することが好ましい。
【0043】
本実施形態において、対象物となる可撓性の基板としては、例えば樹脂フィルムやステンレス鋼などの箔(フォイル)を用いることができる。例えば、樹脂フィルムは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、などの材料を用いることができる。
【0044】
ここで可撓性とは、基板に自重程度の力を加えても線断したり破断したりすることはなく、該基板を撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、上記可撓性は、該基板の材質、大きさ、厚さ、又は温度などの環境、等に応じて変わる。なお、基板としては、1枚の帯状の基板を用いても構わないが、複数の単位基板を接続して帯状に形成される構成としても構わない。
【0045】
本工程において、対象物の被処理面の表面全体、または特定の領域内を第1の実施形態の化合物を用いて化学修飾することが好ましい。
【0046】
対象物の被処理面を化学修飾する方法としては、前記一般式(1)中の、カーボネート基が、基板と結合する方法であれば特に限定されず、浸漬法、化学処理法等の公知の方法を用いることができる。
【0047】
本工程における化学修飾の一例を示す。
本工程における化学修飾は、例えば下記に示すように前工程で製造したアミノ基を持つ基板に、前記一般式(1)で表される化合物を反応させることにより行うことができる。
【0048】
【化14】
[式中、R、R21は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基である。nは1〜5に自然数である。]
【0049】
[潜像生成工程]
本工程は、化学修飾された被処理面を露光し、親水領域及び撥水領域からなる潜像を生成させる工程である。
【0050】
露光時に照射する光は紫外線が好ましい。照射する光は、200nm〜450nmの範囲に含まれる波長を有する光を含むことが好ましく、320nm〜450nmの範囲に含まれる波長を有する光を含むことがより好ましい。また、波長が365nmの光を含む光を照射することも好ましい。これらの波長を有する光は、光分解性基を効率よく分解することができる。光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ナトリウムランプ;窒素等の気体レーザー、有機色素溶液の液体レーザー、無機単結晶に希土類イオンを含有させた固体レーザー等が挙げられる。
また、単色光が得られるレーザー以外の光源としては、広帯域の線スペクトル、連続スペクトルをバンドパスフィルター、カットオフフィルター等の光学フィルターを使用して取出した特定波長の光を使用してもよい。一度に大きな面積を照射することができることから、光源としては高圧水銀ランプまたは超高圧水銀ランプが好ましい。
本実施形態のパターン形成方法においては、上記の範囲で任意に光を照射することができるが、特に回路パターンに対応した分布の光エネルギーを照射することが好ましい。
【0051】
本工程において、化学修飾された被処理面に所定パターンの光を照射することにより、撥水性能を有する基が解離し、親水性能を有する残基(アミノ基)が生じるため、光照射後においては、親水領域及び撥水領域からなる潜像を生成させることができる。
【0052】
本工程においては、可撓性基板の表面に、親撥水の違いによる回路パターンの潜像を生成させることが好ましい。
【0053】
下記に化学修飾された被処理面に、所定パターンの光を照射することにより、下記に示すように撥水性能を有する基を解離させ、親水性能を有する残基(アミノ基)を生じさせる。
【0054】
【化15】
[式中、R、R21は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基である。nは1〜5に自然数である。]
【0055】
[パターン形成材料を配置させる工程]
本工程は、前記工程で生成した親水領域又は撥水領域にパターン形成材料を配置させる工程である。
【0056】
パターン形成材料としては、金、銀、銅やこれらの合金などの粒子を所定の溶媒に分散させた配線材料(金属溶液)、又は、上記した金属を含む前駆体溶液、絶縁体(樹脂)、半導体、有機EL発光材などを所定の溶媒に分散させた電子材料、レジスト液などが挙げられる。
【0057】
本実施形態のパターン形成方法においては、パターン形成材料は、導電材料、半導体材料、又は絶縁材料であることが好ましい。
【0058】
導電材料としては、導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液からなるパターン形成材料が挙げられる。導電性微粒子として、例えば、金、銀、銅、パラジウム、ニッケル及びITOのうちのいずれかを含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。
【0059】
これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。
【0060】
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法(インクジェット法)への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0061】
半導体材料としては、分散媒に分散又は溶解させた分散液からなる有機半導体材料を用いることができる。有機半導体材料としては、その骨格が共役二重結合から構成されるπ電子共役系の低分子材料または高分子材料が望ましい。代表的には、ペンタセン等のアセン類、ベンゾチエノベンゾチオフェン等のチエノアセン類等の可溶性の低分子材料、ポリチオフェン、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリチオフェン誘導体等の可溶性の高分子材料が挙げられる。また、熱処理により上述の半導体に変化する可溶性の前駆体材料を用いてもよく、例えば、ペンタセン前駆体としてスルフィニルアセトアミドペンタセン等が挙げられる。なお、有機半導体材料に限られず、無機半導体材料を用いてもよい。
【0062】
絶縁材料としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)、ポリシラザン系SOGや、シリケート系SOG(Spin on Glass)、アルコキシシリケート系SOG、シロキサンポリマーに代表されるSi−CH結合を有するSiO等を分散媒に分散又は溶解させた分散液からなる絶縁材料が挙げられる。
【0063】
本工程において、パターン形成材料を配置させる方法としては、液滴吐出法、インクジェット法、スピンコート法、ロールコート法、スロットコート法、ディップコート法等を適用することができる。
【0064】
以下、図面を参照して、本実施形態のパターン形成方法を説明する。
本実施形態のパターン形成方法において、いわゆるロール・ツー・ロールプロセスに対応する可撓性の基板を用いる場合には、図1に示すような、ロール・ツー・ロール装置である基板処理装置100を用いてパターンを形成してもよい。図1に基板処理装置100の構成を示す。
【0065】
図1に示すように、基板処理装置100は、帯状の基板(例えば、帯状のフィルム部材)Sを供給する基板供給部2と、基板Sの表面(被処理面)Saに対して処理を行う基板処理部3と、基板Sを回収する基板回収部4と、第1の実施形態の化合物の塗布部6と、露光部7と、マスク8と、パターン材料塗布部9と、これらの各部を制御する制御部CONTと、を有している。基板処理部3は、基板供給部2から基板Sが送り出されてから、基板回収部4によって基板Sが回収されるまでの間に、基板Sの表面に各種処理を実行できる。
この基板処理装置100は、基板S上に例えば有機EL素子、液晶表示素子等の表示素子(電子デバイス)を形成する場合に好適に用いることができる。
【0066】
なお、図1は、所望のパターン光を生成するためにフォトマスクを用いる方式を図示したものであるが、本実施形態は、フォトマスクを用いないマスクレス露光方式にも好適に適用することができる。フォトマスクを用いずにパターン光を生成するマスクレス露光方式としては、DMD等の空間光変調素子を用いる方法、レーザービームプリンターのようにスポット光を走査する方式等が挙げられる。
【0067】
本実施形態のパターン形成方法においては、図1に示すようにXYZ座標系を設定し、以下では適宜このXYZ座標系を用いて説明を行う。XYZ座標系は、例えば、水平面に沿ってX軸及びY軸が設定され、鉛直方向に沿って上向きにZ軸が設定される。また、基板処理装置100は、全体としてX軸に沿って、そのマイナス側(−側)からプラス側(+側)へ基板Sを搬送する。その際、帯状の基板Sの幅方向(短尺方向)は、Y軸方向に設定される。
【0068】
基板処理装置100において処理対象となる基板Sとしては、例えば樹脂フィルムやステンレス鋼などの箔(フォイル)を用いることができる。例えば、樹脂フィルムは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、などの材料を用いることができる。
【0069】
基板Sは、例えば200℃程度の熱を受けても寸法が変わらないように熱膨張係数が小さい方が好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合して熱膨張係数を小さくすることができる。無機フィラーの例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素などが挙げられる。また、基板Sはフロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単体、或いはその極薄ガラスに上記樹脂フィルムやアルミ箔を貼り合わせた積層体であっても良い。
【0070】
基板Sの幅方向(短尺方向)の寸法は例えば1m〜2m程度に形成されており、長さ方向(長尺方向)の寸法は例えば10m以上に形成されている。勿論、この寸法は一例に過ぎず、これに限られることは無い。例えば基板SのY方向の寸法が50cm以下であっても構わないし、2m以上であっても構わない。また、基板SのX方向の寸法が10m以下であっても構わない。
【0071】
基板Sは、可撓性を有するように形成されていることが好ましい。ここで可撓性とは、基板に自重程度の力を加えても線断したり破断したりすることはなく、該基板を撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、上記可撓性は、該基板の材質、大きさ、厚さ、又は温度などの環境、等に応じて変わる。なお、基板Sとしては、1枚の帯状の基板を用いても構わないが、複数の単位基板を接続して帯状に形成される構成としても構わない。
【0072】
基板供給部2は、例えばロール状に巻かれた基板Sを基板処理部3へ送り出して供給する。この場合、基板供給部2には、基板Sを巻きつける軸部や当該軸部を回転させる回転駆動装置などが設けられる。この他、例えばロール状に巻かれた状態の基板Sを覆うカバー部などが設けられた構成であっても構わない。なお、基板供給部2は、ロール状に巻かれた基板Sを送り出す機構に限定されず、帯状の基板Sをその長さ方向に順次送り出す機構(例えばニップ式の駆動ローラ等)を含むものであればよい。
【0073】
基板回収部4は、基板処理装置100を通過した基板Sを例えばロール状に巻きとって回収する。基板回収部4には、基板供給部2と同様に、基板Sを巻きつけるための軸部や当該軸部を回転させる回転駆動源、回収した基板Sを覆うカバー部などが設けられている。なお、基板処理部3において基板Sがパネル状に切断される場合などには例えば基板Sを重ねた状態に回収するなど、ロール状に巻いた状態とは異なる状態で基板Sを回収する構成であっても構わない。
【0074】
基板処理部3は、基板供給部2から供給される基板Sを基板回収部4へ搬送すると共に、搬送の過程で基板Sの被処理面Saに対して第1の実施形態の化合物を用いた化学修飾をする工程、化学修飾された被処理面に所定パターンの光を照射する工程、及びパターン形成材料を配置させる工程を行う。基板処理部3は、基板Sの被処理面Saに対して第1の実施形態の化合物を塗布する化合物塗布部6と、光を照射する露光部7と、マスク8と、パターン材料塗布部9と、加工処理の形態に対応した条件で基板Sを送る駆動ローラR等を含む搬送装置20とを有している。
【0075】
化合物塗布部6と、パターン材料塗布部9は、液滴塗布装置(例えば、液滴吐出型塗布装置、インクジェット型塗布装置、スピンコート型塗布装置、ロールコート型塗布装置、スロットコート型塗布装置など)が挙げられる。
【0076】
これらの各装置は、基板Sの搬送経路に沿って適宜設けられ、フレキシブル・ディスプレイのパネル等が、所謂ロール・ツー・ロール方式で生産可能となっている。本実施形態では、露光部7が設けられるものとし、その前後の工程(感光層形成工程、感光層現像工程等)を担う装置も必要に応じてインライン化して設けられる。
【0077】
<無電解めっきによる配線パターン形成方法>
本発明の第5の実施形態、対象物の被処理面にパターンを形成するパターン形成方法であって、対象物対象物の被処理面の少なくとも一部をアミノ化し、アミノ化面を形成する工程と、第1の実施形態の化合物を用いて、前記アミノ化面を化学修飾する工程と、化学修飾された前記被処理面に所定パターンの光を照射して、親水領域及び撥水領域からなる潜像を生成させる工程と、前記親水領域に無電解めっき用触媒を配置し、無電解めっきを行う工程と、を備えるパターン形成方法である。
本実施形態によれば、例えば、次のような方法によって無電解めっきによる配線パターンを形成することができる。以下、図2を用いて説明する。
【0078】
(第1の工程)
まず、図2(a)に示すように、基板11の表面をアミノ化した後、第1の実施形態の化合物を塗布して化合物層12を形成する。
【0079】
塗布方法としては、物理的気相成長法(PVD)や化学的気相成長法(CVD)、液相成長法等、一般的な成膜技術の何れを用いてもよい。中でも、特に液相成長法が好ましく、液相成長法としては例えば、塗布法(スピンコート、ディップコート、ダイコート、スプレーコート、ロールコート、刷毛塗り)、印刷法(フレキソ印刷、スクリーン印刷)等が挙げられる。また、SAM膜、LB膜としてもよい。
【0080】
なお、本工程においては、例えば熱や減圧等によって溶剤を乾燥させる処理を加えてもよい。
【0081】
(第2の工程)
次に、図2(b)に示すように、所定のパターンの露光領域を有するフォトマスク13を用意する。露光方法としては、フォトマスクを用いる手段に限られず、レンズやミラーなどの光学系を用いたプロジェクション露光、空間光変調素子、レーザービームなどを用いたマスクレス露光等の手段を用いることができる。なお、フォトマスク13は、化合物層12と接触するように設けてもよいし、非接触となるように設けてもよい。
【0082】
(第3の工程)
その後、図2(c)に示すように、フォトマスク13を介して化合物層12にUV光を照射する。これにより、フォトマスク13の露光領域において化合物層12が露光され、親水領域14が形成される。
【0083】
なお、UV光は感光性基の構造により最適な量子効率が発揮される波長を照射することができる。例えば、365nmのi線が挙げられる。また、その露光量や露光時間は、必ずしも完全に脱保護が進行する必要はなく、一部のアミノ基が発生する程度でよい。その際、後述のめっき工程において、脱保護の進行具合に応じた条件(めっき浴の活性等)を適宜変更することができる。
【0084】
(第4の工程)
次に、図2(d)に示すように、表面に無電解めっき用触媒を付与し、触媒層15を形成する。無電解めっき用触媒は、無電解めっき用のめっき液に含まれる金属イオンを還元する触媒であり、銀やパラジウムが挙げられる。
【0085】
親水領域14の表面にはアミノ基が露出しているが、アミノ基は、上述の無電解めっき用触媒を捕捉・還元することが可能である。そのため、親水領域14上のみに無電解用めっき用触媒が補足され、触媒層15が形成される。また、無電解めっき用触媒はアミノ基が担持可能なものを用いることができる。
【0086】
(第5の工程)
図2(e)に示すように、無電解めっき処理を行い、めっき層16を形成する。なお、めっき層16の材料としては、ニッケル−リン(NiP)や、銅(Cu)が挙げられる。
【0087】
本工程では、基板11を無電解めっき浴に浸漬して触媒表面に金属イオンを還元し、めっき層16を析出させる。その際、親水領域14表面には十分な量の触媒を担持する触媒層15が形成されているため、親水領域14上にのみ選択的にめっき層16を析出させることができる。還元が不十分な場合には、次亜リン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤溶液に浸漬してアミン上の金属イオンを積極的に還元してもよい。
【0088】
以上の工程により、第1の実施形態の化合物を用いて所定の基板に配線パターンを形成することが可能である。
【0089】
<トランジスタの製造方法>
さらに、第5の工程で得られためっき層16をゲート電極とするトランジスタの製造方法について図3を用いて説明する。
【0090】
(第6の工程)
図3(a)に示すように、上述した無電解めっきパターン形成方法により形成した無電解めっきパターンのめっき層16を、公知の方法により覆って化合物層12上に絶縁体層17を形成する。絶縁体層17は、例えば、紫外線硬化型のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、シリコーン樹脂等の1つ以上の樹脂を有機溶媒に溶解させた塗布液を用い、当該塗布液を塗布することにより形成してもよい。絶縁体層17を形成する領域に対応して開口部が設けられたマスクを介して塗膜に紫外線を照射することで、絶縁体層17を所望のパターンに形成することが可能である。
【0091】
(第7の工程)
図3(b)に示すように、上述した無電解めっきパターン形成方法の第1〜第3の工程と同様にして、ソース電極及びドレイン電極が形成される部分に親水領域14を形成する。
【0092】
(第8の工程)
図3(c)に示すように、上述した無電解めっきパターン形成方法の第4及び第5の工程と同様にして、親水領域14上に無電解めっき用触媒を担持させ、触媒層15を形成した後、無電解めっきを行うことによりめっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)を形成する。なお、めっき層18及び19の材料としてもニッケル−リン(NiP)や、銅(Cu)が挙げられるが、めっき層16(ゲート電極)と異なる材料で形成してもよい。
【0093】
(第9の工程)
図3(d)に示すように、めっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)の間に半導体層21を形成する。半導体層21は、例えば、TIPSペンタセン(6,13−Bis(triisopropylsilylethynyl)pentacene)のような有機溶媒に可溶な有機半導体材料を当該有機溶媒に溶解させた溶液を作製し、めっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)の間に塗布、乾燥させることにより形成してもよい。なお、半導体層21を形成する前に、めっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)の間の化合物層12を露光して親水化してもよい。トランジスタのチャネルに対応する部分を親水化することで、当該親水化部分に上記溶液が好適に塗布され、半導体層21を選択的に形成しやすくなる。また、半導体層21は、上記溶液にPS(ポリスチレン)やPMMA(ポリメタクリル酸メチル)などの絶縁性ポリマーを1種類以上添加し、当該絶縁性ポリマーを含む溶液を塗布、乾燥することにより形成してもよい。このようにして半導体層21を形成すると、半導体層21の下方(絶縁体層17側)に絶縁性ポリマーが集中して形成される。有機半導体と絶縁体層との界面にアミノ基などの極性基が存在する場合、トランジスタ特性の低下を生じる傾向にあるが、上述の絶縁性ポリマーを介して有機半導体を設ける構成とすることにより、トランジスタ特性の低下を抑制することができる。以上のようにして、トランジスタを製造することが可能である。
【0094】
上記のような方法によれば、UV露光工程において別途化学的なレジスト等を設ける必要がなく、フォトマスクのみによる簡素な工程とすることができる。従って当然ながら、レジスト層を除去する工程についても必要としない。また、アミノ基の触媒還元能により、通常必要となる触媒の活性化処理工程も省略することができ、大幅な低コスト化と時間短縮を実現しながら、高精細なパターニングが可能となる。また、ディップコート法を用いることができるため、ロール・ツー・ロール工程でも非常に相性良く利用することができる。
【0095】
なお、トランジスタの構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。図2図3の態様では、ボトムコンタクト・ボトムゲート型のトランジスタの製造方法について説明したが、トップコンタクト・ボトムゲート型、トップコンタクト・トップゲート型、ボトムコンタクト・トップゲート型のトランジスタも同様にして製造してもよい。なお、図2図3の態様では、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の全てを第1の実施形態の化合物を用いて形成する方法について説明したが、ゲート電極のみを第1の実施形態の化合物を用いて形成してもよいし、ソース電極及びドレイン電極のみを第1の実施形態の化合物を用いて形成してもよい。
【実施例】
【0096】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0097】
<化合物1aの合成>
≪工程1;1−(4−アリルオキシ−3−メトキシフェニル)エタノンの合成≫
300mLナスフラスコに、4−ヒドロキシ−3−メトキシアセトフェノン(5.00g,30.1mmol)を入れてアセトン(50mL)に溶解し、炭酸カリウム(6.24g,45.1mmol)を加え、室温で5分間撹拌した後、臭化アリル(5.46g,45.1mmol)を添加し、室温で24時間撹拌した。濃縮後、酢酸エチル(50mL×2)と純水(50mL)を加えて抽出、有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液(50mL×3)、飽和食塩水(50mL×2)で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、淡黄色オイル(中間体化合物11;1−(4−allyloxy−3−methoxyphenyl)ethanone)6.09g(29.5mmol,98%)を得た。
【0098】
得られた中間体化合物11の同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3/ TMS, 400 MHz): δ 2.57 (3H, s), 3.94 (3H, s), 4.69 (2H, dt, J = 5.4, 1.5 Hz), 5.33 (1H, dq, J = 11, 1.3 Hz), 5.43 (1H, dq, J = 17, 1.5 Hz), 6.09 (1H, ddt, J = 17, 11, 5.4 Hz), 6.89 (1H, d, J = 9.0 Hz), 7.52−7.56 (2H, m).
【0099】
【化16】
【0100】
≪工程2;1−(4−アリルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エタノンの合成≫
50mLナスフラスコに、上記中間体化合物11 (497mg,2.41mmol)を入れて酢酸(3mL)に溶解し、氷浴上で発煙硝酸(1mL,24.1mmol)をゆっくり滴下し、0°Cで30分間撹拌した。冷水(10mL)を加えて酢酸エチル(10mL×3)で抽出、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)、飽和食塩水(10mL×2)で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル=4:1→2:1)、黄白色固体(中間体化合物12;1−(4−allyloxy−5−methoxy−2−nitrophenyl)ethanone)345mg(1.37mmol,57%)を得た。
【0101】
得られた中間体化合物12の同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3/ TMS, 400 MHz): δ 2.50 (3H, s), 3.98 (3H, s), 4.71 (2H, dt, J = 5.5, 1.4 Hz), 5.39 (1H, dq, J = 11, 1.3 Hz), 5.48 (1H, dq, J = 17, 1.3 Hz), 6.07 (1H, ddt, J = 17, 11, 5.4 Hz), 6.76 (1H, s), 7.62 (1H, s).
【0102】
【化17】
【0103】
≪工程3;1−(4−アリルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エタノールの合成≫
50mLナスフラスコに、上記工程で得られた中間体化合物12 (1.41g,5.61mmol)、テトラヒドロフラン(10 mL)、メタノール(10mL)を入れ、氷浴上で水素化ホウ素ナトリウム(637mg,16.8mmol)を少しずつ添加した。0℃で20分間撹拌し、さらに室温で40分間撹拌した。濃縮後、クロロホルム(10mL×3)と純水(30mL)を加えて抽出、有機層を飽和食塩水(20mL×3)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、黄白色固体(中間体化合物13;1−(4−allyloxy−5−methoxy−2−nitrophenyl)ethanol)1.40g(5.54mmol,99%)を得た。
【0104】
得られた中間体化合物13の同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3/ TMS, 400 MHz): δ 1.56 (3H, d, J = 6.3 Hz), 2.29 (1H, d, J = 3.7 Hz), 4.00 (3H, s), 4.67 (2H, dt, J = 5.5, 1.4 Hz), 5.36 (1H, dq, J = 11, 1.3 Hz), 5.46 (1H, dq, J = 17, 1.5 Hz), 5.57 (1H, qd, J = 6.3, 3.7 Hz), 6.07 (1H, ddt, J = 17, 11, 5.4 Hz), 7.31 (1H, s), 7.59 (1H, s).
【0105】
【化18】
【0106】
≪工程4;1−(4−アリルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エチルN−スクシンイミジルカーボネートの合成≫
200mL二口ナスフラスコに、中間体化合物13(2.50g,9.85mmol)を入れてドライアセトニトリル(35mL)に溶解し、ジ(N−スクシンイミジル)カーボネート(6.36g,24.8mmol)、トリエチルアミン(4.05g,40.1mmol)を加え、窒素雰囲気下、室温で17時間撹拌した。濃縮後、クロロホルム(150mL,60mL×2)、純水(200mL)と2N塩酸(10mL)を加えて抽出、有機層を飽和食塩水(100 mL×3)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)、黄白色固体(中間体化合物14;1−(4−allyloxy−5−methoxy−2−nitrophenyl)ethyl N−succinimidyl carbonate)2.97g(7.54 mmol,77%)を得た。
【0107】
得られた中間体化合物14の同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3/ TMS, 400 MHz): δ 1.76 (3H, d, J = 6.4 Hz), 2.80 (4H, s), 4.06 (3H, s), 4.67 (2H, dt, J = 5.5, 1.4 Hz), 5.37 (1H, dq, J = 11, 1.3 Hz), 5.47 (1H, dq, J = 17, 1.5 Hz), 6.07 (1H, ddt, J = 17, 11, 5.4 Hz), 6.51 (1H, q, J = 6.4 Hz), 7.08 (1H, s), 7.65 (1H, s).
【0108】
【化19】
【0109】
本実施例においては、中間体化合物14を上記の方法により合成したが、例えばH. Nakayama et al., Colloids Surf. B, 2010, 76, 88−97に記載されている方法により合成した中間体化合物14を用いてもよい。
【0110】
≪工程5;1−(5−メトキシ−2−ニトロ−4−(3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロポキシ)フェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネートの合成≫
30mL二口ナスフラスコに、中間体化合物14 (300mg, 0.761mmol)を入れてドライテトラヒドロフラン(6mL)に溶解し、トリス(トリメチルシロキシ)シラン(677mg,2.28mmol)、カーステッド触媒(5滴)を加え、窒素雰囲気下、室温で20時間撹拌した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル:テトラメトキシシラン=60:20:1→50:50:1)、黄色粘体(化合物1a;1−(5−methoxy−2−nitro−4−(3−tris(trimethylsiloxy)silylpropoxy)phenyl)ethyl N−succinimidyl carbonate)281mg(0.407mmol,53%)を得た。
【0111】
得られた化合物1aの同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3/ TMS, 400 MHz): δ 0.10 (27H, s), 0.55−0.60 (2H, m), 1.76 (3H, d, J = 6.5 Hz), 1.85−1.94 (2H, m), 2.80 (4H, s), 3.98−4.03 (2H, m), 4.04 (3H, s), 6.51 (1H, q, J = 6.4 Hz), 7.07 (1H, s), 7.62 (1H, s).
【0112】
【化20】
【0113】
<化合物1bの合成>
≪中間体化合物13の合成≫
上記<化合物1aの合成>≪工程1〜3≫と同様の方法により、中間体化合物13を合成した。
【0114】
≪中間体化合物15;1−(4−(3−(1,1,3,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサニル)プロポキシ)−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エタノールの合成≫
100mL二口ナスフラスコに、中間体化合物13(512mg,2.02mmol)を入れてドライテトラヒドロフラン(10mL)に溶解し、1,1,3,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン (1.36g,6.09mmol)、カーステッド触媒(5滴)を加え、窒素雰囲気下、室温で18時間撹拌した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル=15:1,1%テトラメトキシシラン)、黄色粘体(中間体化合物15;1−(4−(3−(1,1,3,3,5,5,5−heptamethyltrisiloxanyl)propoxy)−5−methoxy−2−nitrophenyl)ethanol)627mg(1.02mmol,50%)を得た。
【0115】
得られた中間体化合物15の同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3/ TMS, 400 MHz): δ0.03 (6H, s), 0.08 (9H, s), 0.12 (6H, s), 0.63−0.68 (2H, m), 1.56 (3H, d, J = 6.2 Hz), 1.86−1.95 (2H, m), 2.28 (1H, d, J = 3.7 Hz), 3.99 (3H, s), 4.02 (2H, t, J = 7.2 Hz), 5.52−5.60 (1H, m), 7.29 (1H, s), 7.56 (1H, s).
【0116】
【化21】
【0117】
≪化合物1b;1−(4−(3−(1,1,3,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサニル)プロポキシ)−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エタノール N−スクシンイミジルカーボネートの合成≫
30mL二口ナスフラスコに、中間体化合物15(618mg,1.30mmol)を入れてドライアセトニトリル(11mL)に溶解し、ジ(N−スクシンイミジル)カーボネート(860mg,3.36mmol)とトリエチルアミン(540mg,5.34mmol)を加え、窒素雰囲気下、室温で18時間撹拌した。濃縮後、クロロホルム(20mL×3)、純水(30mL)と2N塩酸(2mL)を加えて抽出、有機層を飽和食塩水(50mL×3)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル=5:1,1%テトラメトキシシラン)、黄色粘体(化合物1b;1−(4−(3−(1,1,3,3,5,5,5−heptamethyltrisiloxanyl)propoxy)−5−methoxy−2−nitrophenyl)ethyl N−succinimidyl carbonate)326mg(0.529mmol,41%)を得た。
【0118】
得られた化合物1bの同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3/ TMS, 400 MHz): δ 0.03 (6H, s), 0.09 (9H, s), 0.12 (6H, s), 0.62−0.69 (2H, m), 1.76 (3H, d, J = 6.4 Hz), 1.86−1.95 (2H, m), 2.80 (4H, s), 3.99−4.05 (2H, m), 4.04 (3H, s), 6.51 (1H, q, J = 6.4 Hz), 7.07 (1H, s), 7.63 (1H, s).
【0119】
【化22】
【0120】
<化合物2aの合成>
≪工程1;1−(4,5−(メチレンジオキシ)−2−ニトロフェニル)エタノンの合成≫
200mLナスフラスコに、3,4−(メチレンジオキシ)アセトフェノン(5.04g,30.7mmol)を入れてトリフルオロ酢酸(50mL)に溶解し、亜硝酸ナトリウム (6.30g,91.4mmol)を少しずつ添加し、20時間撹拌した。純水(100mL)を加えてジクロロメタン(100mL×3)で抽出、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)、黄色固体(中間体化合物21;1−(4,5−(methylenedioxy)−2−nitrophenyl)ethanone)2.35g(11.2mmol,36%)を得た。
【0121】
得られた中間体化合物21の同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3/ TMS, 400 MHz): δ 2.49 (3H, s), 6.18 (2H, s), 6.75 (1H, s), 7.55 (1H, s).
【0122】
【化23】
【0123】
≪工程2;1−(4,5−ジヒドロキシ−2−ニトロフェニル)エタンノンの合成≫
300mL二口ナスフラスコに、AlCl(6.55g,49.1 mmol)、ジクロロメタン (48.2mL)を入れて懸濁液とし、0℃に冷却して、ジクロロメタン(70.2mL)に溶解した中間体化合物21(3.00g,14.4mmol)を1時間かけてゆっくり滴下し、窒素雰囲気下、−10℃で2時間撹拌した。次いで、冷水(98mL)を加え、窒素雰囲気下、室温で20時間撹拌した。飽和食塩水(100mL)と2N塩酸(6mL)を加えて酢酸エチル(100mL×3)で抽出、有機層を飽和食塩水(100mL×3)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。得られた粗生成物をクロロホルムで洗浄、吸引ろ過、真空乾燥し、黄緑色固体(中間体化合物22;1−(4,5−dihydroxy−2−nitrophenyl)ethanone)1.53g 7.74 mmol,54%)を得た。
【0124】
得られた中間体化合物22の同定結果を以下に示す。
1H NMR (CD3OD/ TMS, 400 MHz): δ 2.44 (3H, s), 6.78 (1H, s), 7.49 (1H, s).
【0125】
【化24】
【0126】
≪工程3;1−(4,5−ジアリルオキシ−2−ニトロフェニル)エタノンの合成≫
100mL二口ナスフラスコに、中間体化合物22(1.03g,5.21mmol)を入れてアセトン(10mL)に溶解し、炭酸カリウム(2.88 g,20.8mmol)を加え、室温で30分間撹拌した後、臭化アリル(2.98g,24.6mmol)を加えて2.5時間還流した。濃縮後、酢酸エチル(100mL×3)と純水(100mL)を加えて抽出、有機層を飽和食塩水(100mL×2)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、淡黄色固体(中間体化合物23;1−(4,5−diallyloxy−2−nitrophenyl)ethanone)1.27g(4.59mmol,88%)を得た。
【0127】
得られた中間体化合物23の同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3/ TMS, 400 MHz): δ 2.49 (3H, s), 4.68−4.72 (4H, m), 5.35−5.40 (2H, m), 5.42−5.51 (2H, m), 6.00−6.12 (2H, m), 6.76 (1H, s), 7.62 (1H, s).
【0128】
【化25】
【0129】
≪工程4;1−(4,5−ジアリルオキシ−2−ニトロフェニル)エタノールの合成≫
200mLナスフラスコに、中間体化合物23(1.09g,3.94mmol)を入れてテトラヒドロフラン(5.0ml)に溶解し、メタノール(5.0mL)を入れ、氷浴上で水素化ホウ素ナトリウム(0.52g,13.9mmol)を添加し、0℃で1時間撹拌した。濃縮後、酢酸エチル(100mL×3)、純水(100mL)と2N塩酸(5mL)を加えて抽出、有機層を飽和食塩水(100mL×3)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。得られた粗生成物をヘキサンで洗浄、吸引ろ過、真空乾燥し、黄色固体(中間体化合物24;1−(4,5−diallyloxy−2−nitrophenyl)ethanol)0.90g(3.22mmol,82%)を得た。
【0130】
得られた中間体化合物24の同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3/ TMS, 400 MHz): δ 1.54 (3H, d, J = 6.3 Hz), 2.27 (1H, d, J = 3.6 Hz), 4.64−4.76 (4H, m), 5.32−5.38 (2H, m), 5.42−5.50 (2H, m), 5.51−5.57 (1H, m), 6.02−6.13 (2H, m), 7.30 (1H, s), 7.59 (1H, s).
【0131】
【化26】
【0132】
≪工程5;1−(4,5−ジアリルオキシ−2−ニトロフェニル)エチルN−スクシンイミジルカーボネートの合成≫
100mL二口ナスフラスコに、中間体化合物24(0.80g,2.87mmol)を入れてドライアセトニトリル(10.0mL)に溶解し、ジ(N−スクシンイミジル)カーボネート(1.25g,4.90mmol)、トリエチルアミン(0.904g,8.93mmol)を加え、窒素雰囲気下、室温で19時間撹拌した。濃縮後、酢酸エチル(100mL×3)、純水(100mL)と2N塩酸(5mL)を加えて抽出、有機層を飽和食塩水(100mL×3)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル=4:1→2:1)、黄白色固体(中間体化合物25;1−(4,5−diallyloxy−2−nitrophenyl)ethyl N−succinimidyl carbonate)0.846g(2.01mmol,70%)を得た。
【0133】
得られた中間体化合物25の同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3/ TMS, 400 MHz): δ 1.74 (3H, d, J = 6.4 Hz), 2.80 (4H, s), 4.65−4.69 (2H, m), 4.73−4.86 (2H, m), 5.33−5.41 (2H, m), 5.43−5.54 (2H, m), 6.01−6.16 (2H, m), 6.50 (1H, q, J = 6.4 Hz), 7.10 (1H, s), 7.65 (1H, s).
【0134】
【化27】
【0135】
≪工程6;1−(2−ニトロ−4,5−ビス(3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロポキシ)フェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネートの合成≫
30mL二口ナスフラスコに、中間体化合物25(0.426g,1.01mmol)を入れてドライテトラヒドロフラン (7.0mL)に溶解し、トリス(トリメチルシロキシ)シラン(1.21g,4.09mmol)、カーステッド触媒(10滴)を加え、窒素雰囲気下、室温で24時間撹拌した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル=8:1,1%テトラメトキシシラン)、黄色粘体(化合物2a;1−(2−nitro−4,5−bis(3−tris(trimethylsiloxy)silylpropoxy)phenyl)ethyl N−succinimidyl carbonate)0.11g(0.11mmol,11%)を得た。
【0136】
得られた化合物2aの同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3/ TMS, 400 MHz): δ 0.10−0.11 (54H, m), 0.54−0.65 (4H, m), 1.75 (3H, d, J = 6.4 Hz), 1.83−1.97 (4H, m), 2.80 (4H, s), 3.97−4.17 (4H, m), 6.52 (1H, q, J = 6.6 Hz), 7.05 (1H, s), 7.61 (1H, s).
【0137】
【化28】
【0138】
<化合物2bの合成>
≪中間体化合物25の合成≫
上記<化合物2aの合成>と同様の方法により、中間体化合物25を合成した。
【0139】
≪化合物2b;1−(4,5−ビス(3−(1,1,3,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサニル)プロポキシ)−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネートの合成≫
20mL二口ナスフラスコに、中間体化合物25(0.31g,0.75mmol)を入れてドライテトラヒドロフラン(6.0mL)に溶解し、1,1,3,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン(0.66g,2.98mmol)、カーステッド触媒(10滴)を加え、窒素雰囲気下、室温で2.5時間撹拌した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル=10:1,1%テトラメトキシシラン)、黄色粘体(化合物2b;1−(4,5−bis(3−(1,1,3,3,5,5,5−heptamethyltrisiloxanyl)propoxy)−2−nitrophenyl)ethyl N−succinimidyl carbonate)0.15g(0.17mmol,23%)を得た。
【0140】
得られた化合物2bの同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3/ TMS, 400 MHz): δ 0.03 (6H, s), 0.04 (6H, s), 0.08 (9H, s), 0.09 (9H, s), 0.12 (6H, s), 0.12 (6H, s), 0.63−0.73 (4H, m), 1.75 (3H, d, J = 6.4 Hz), 1.84−1.96 (4H, m), 2.80 (4H, s), 3.97−4.21 (4H, m), 6.48−6.55 (1H, m), 7.05 (1H, s), 7.61 (1H, s).
【0141】
【化29】
【0142】
<化合物2cの合成>
≪中間体化合物25の合成≫
上記<化合物2aの合成>と同様の方法により、中間体化合物25を合成した。
≪化合物2c;1−(4,5−ビス(3−(ポリジメチルシロキサニル)プロポキシ)−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネートの合成≫
20mL二口ナスフラスコに、中間体化合物25(49.8mg,0.12mmol)を入れてドライテトラヒドロフラン(3.0mL)に溶解し、ポリジメチルシロキサン(2.51g,0.31mmol)、カーステッド触媒(5滴)を加え、窒素雰囲気下、室温で16.5時間撹拌した。濃縮し、粗生成物(化合物2c、1−(4,5−bis(3−(polydimethylsiloxanyl)propoxy)−2−nitrophenyl)ethyl N−succinimidyl carbonate)3.23 gを得た。
1H NMR (CDCl3/ TMS, 400 MHz): δ 0.01−0.20 (1288H, m), 0.61−0.75 (4H, m), 0.96 (6H, t, J = 7.6 Hz), 1.25−1.41 (8H, m), 1.75 (3H, d, J = 6.4 Hz), 1.82−2.00 (4H, m), 2.79 (4H, s), 3.95−4.22 (4H, m), 6.44−6.56 (1H, m), 7.05 (1H, s), 7.61 (1H, s).
【0143】
得られた化合物2cの同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3/ TMS, 400 MHz): δ 0.01−0.20 (1288H, m), 0.61−0.75 (4H, m), 0.96 (6H, t, J = 7.6 Hz), 1.25−1.41 (8H, m), 1.75 (3H, d, J = 6.4 Hz), 1.82−2.00 (4H, m), 2.79 (4H, s), 3.95−4.22 (4H, m), 6.44−6.56 (1H, m), 7.05 (1H, s), 7.61 (1H, s).
【0144】
【化30】
【0145】
<表面修飾>
熱酸化膜付シリコンウェハ(SiO/Si基板)を純水、アセトン、メタノール、クロロホルムで各5分間超音波洗浄し、窒素気流で乾燥した後、UV−オゾンクリーナーにてUVを1時間照射して前処理した。
次に、3−アミノプロピルトリメトキシシランをドライトルエンに溶解して0.1mM溶液を調製し、上記の前処理した基板を入れ、窒素雰囲気下、室温で1時間浸漬した。基板をメタノールとクロロホルムで5分間超音波洗浄し、窒素気流で乾燥した(下記工程1)。
続いて、上記方法により得られた化合物1a、1b、2a、2bをそれぞれアセトニトリルに、2cをトルエンに溶解して1.0mM溶液を調製し、トリエチルアミン(3.0mM)を添加し、上記のアミノ化基板を入れ、窒素雰囲気下、室温で18時間浸漬した。基板をメタノールとクロロホルムでリンスし、窒素気流で乾燥した(下記工程2)。
修飾した基板に、超高圧水銀灯でフィルターを介して波長365nm、照度15J(化合物2cのみ60Jとした)の光を大気中で照射した。基板をクロロホルムで5分間超音波洗浄し、窒素気流で乾燥した(下記工程3)。
【0146】
【化31】
【0147】
【化32】
【0148】
【化33】
【0149】
<接触角測定>
接触角計(協和界面科学株式会社)を用いて液滴法・θ/2法に従って、光照射前後の水の静的接触角を測定した。また、プローブ液体に水、ジヨードメタン、1−ブロモナフタレンをそれぞれ用いて静的接触角を測定した。その結果を表1に記載する。下記表1において、「(MeO)3Si(CH2)3NH2」は上記工程1の直後を、「光照射前」は上記工程2の直後を「光照射後」は上記工程3の直後を、それぞれ意味する。
【0150】
【表1】
【0151】
上記表1に示した結果の通り、フッ素を含まないいずれの化合物も、光照射後に接触角が小さくなることが確認された。
また、シロキサン構造が分岐型の化合物1aと、直鎖型の化合物1bとを比較すると、分岐型の化合物1aのほうが光照射前後の接触角が大きかった。
また、1置換の化合物1aと、2置換の化合物2aとを比較すると、2置換の化合物2aのほうが接触角が大きかった。
さらに、2置換鎖状型の化合物2cは、光照射前はジヨードメタン、1−ブロモナフタレンに対する接触角が最も高かった。
【符号の説明】
【0152】
S…基板 CONT…制御部 Sa…被処理面 2…基板供給部 3…基板処理部 4…基板回収部 6…化合物塗布部 7…露光部 8…マスク 9…パターン材料塗布部 100…基板処理装置
図1
図2
図3