【実施例】
【0031】
以下、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。実施例及び比較例で用いた各試薬及び各測定装置は以下のとおりである。
[試薬]
DMF:ジメチルホルムアミド
DMAP:N,N−ジメチル−4−アミノピリジン
EDCI:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
THF:テトラヒドロフラン
[GPC]
装置:Shodex GPC-101(昭和電工(株)製)
カラム:Shodex KF-804l 2本(昭和電工(株)製)
カラム温度:40℃
溶媒:THF 1mL/分
検出器:UV(254nm)、RI
検量線:標準ポリスチレン
[
1H−NMR]
装置:JEOL ECA-500 and ECA-600
[TG−DTA]
装置:Seiko Instruments Inc. TG/DTA 6200
【0032】
[実施例1]ハイパーブランチ芳香族ポリアミド1の合成−1
(1)化合物1の合成
【化10】
【0033】
50mLナスフラスコに、4−ビニル安息香酸を2.5016g(16.9mmol)及びフェノール1.7142g(18.2mmol)を加えた。別途用意した30mLナスフラスコに、乾燥DMF15mL及びDMAP2.3020g(18.8mmol)を加え、前記50mLナスフラスコに加えた。0℃で20分間攪拌し、EDCI4.2065g(21.9mmol)を加え、再び0℃で16時間攪拌した。その後、室温で22時間攪拌し、水を加えて反応を停止し、ジエチルエーテルで3回抽出した後、有機相を1mol/L塩酸で1回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、更に飽和塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄した。その後、無水硫酸マグネシウムで乾燥してろ過し、減圧下で溶媒を留去して、化合物1を白色固体として得た(粗収量3.168g、粗収率95%)。TG−DTA測定の結果、化合物1の融点は、94.7−97.9℃であった。
1H−NMR測定の結果を以下に示す。
1H-NMR (600MHz, CDCl
3) δ 8.16 (d, J=8.2Hz, 2H), 7.53 (d, J=8.2 Hz, 2H), 7.43 (t, J=7.9Hz, 2H), 7.27 (t, J=7.6Hz, 1H), 7.22 (d J=8.2Hz, 2H), 6.79 (dd, J=17.9 and 11.0Hz, 1H), 5.91 (d, J=17.5Hz, 1H), 5.43 (d, J=11.0 Hz, 1H).
【0034】
(2)化合物2の合成
【化11】
【0035】
1Lナスフラスコに5−アミノイソフタル酸水和物20.0081g(110mmol)、乾燥エタノール350mLを加え、0℃でアルゴン置換して30分間攪拌し、塩化チオニル1.4mL(19.3mmol)を加え、アルゴン置換して80℃で9時間還流した。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で反応を停止し、酢酸エチルで3回抽出した後、水で3回洗浄した。その後、無水硫酸マグネシウムで乾燥してろ過し、減圧下で溶媒を留去して、化合物2を白色固体として得た(粗収量23.8129g、粗収率91%)。TG−DTA測定の結果、化合物2の融点は、117.4−121.5℃であった。
1H−NMR測定の結果を以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ 8.06 (s, 1H), 7.52 (s, 2H), 4.38 (q, J = 7.1 Hz 4H), 3.91 (br s, 2H), 1.40 (t, J = 7.2 Hz, 6H).
【0036】
(3)化合物3の合成
【化12】
【0037】
500mLナスフラスコに化合物2 10.1266g(42.7mmol)、アセトニトリル20mL(383mmol)、乾燥エタノール120mLを加え、5%パラジウム炭素10.35gを加え、アルゴン置換して2日間攪拌し、水素雰囲気下で10日間攪拌した。5%パラジウム炭素5.00gを加え、水素雰囲気下で6日間攪拌し、更に5%パラジウム炭素3.09gを加え、水素雰囲気下で7日間攪拌した。5%パラジウム炭素3.01gを加え、水素雰囲気下で16日間攪拌した。塩化メチレンを加えてからセライトを用いてろ過し、減圧下で溶媒を留去し、薄茶色固体を得た(粗収量8.5389g、粗収率75%)。粗生成物を再結晶(良溶媒:塩化メチレン、貧溶媒:ヘキサン)し、化合物3を白色固体として得た(収量5.0679g、収率45%)。
1H−NMR測定の結果を以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ 7.99 (s, 1H), 7.43 (s, 2H), 4.38 (quint, J = 7.1 Hz, 4H), 3.24 (quint, J = 7.3 Hz, 2H), 1.40 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 1.28 (t, J = 7.2 Hz, 3H).
【0038】
(4)ハイパーブランチ芳香族ポリアミド1の合成
【化13】
【0039】
200mLナスフラスコに塩化リチウム2.0970g(49.5mmol)を加え、ヒートガンで加熱乾燥し、アルゴンで置換して室温に戻した。窒素気流下で、1mol/L LiHMDS THF溶液8.2mL(8.20mmol)を加え、−35℃で30分間攪拌した。このナスフラスコに、乾燥THF10mLに溶解させた化合物1 0.1510g(0.762mmol)を加えた後に窒素気流下で乾燥THF44mLに溶解させた化合物3 1.9806g(7.47mmol)を1時間かけて滴下し加えた。−35℃で2時間攪拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、塩化メチレンで3回抽出した後、有機相を水で3回洗浄した。その後、無水硫酸マグネシウムで乾燥してろ過し、減圧下で溶媒を留去して、ハイパーブランチ芳香族ポリアミド1を黄色粘性液体として得た(収量1.8635g、収率87%)。GPC測定の結果、Mn=2,700、Mw/Mn=1.27であった。
1H−NMR及びIR測定の結果を以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ 8.46 (s, 1H), 7.88 (s, 2H), 7.26 (d, J = 5.8 Hz, 2H), 7.21 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 6.60 (dd, J = 17.5 and 10.7 Hz, 1H), 5.71 (d, J = 17.5 Hz, 1H), 5.26 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 4.37 (q, J = 7.2 Hz 4H), 4.02 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 1.38 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 1.23 (t, J = 7.0 Hz, 3H); IR (KBr) 3413, 3261, 3088, 2981, 2926, 2860, 1836, 1708, 1635, 1598, 1510, 1458, 1239, 1138, 1078, 1053, 1027, 322, 855, 858, 774, 754, 732, 685, 592, 498, 474, 441 cm
-1.
【0040】
[実施例2]ハイパーブランチ芳香族ポリアミド1の合成−2
(1)化合物4の合成
【化14】
【0041】
30mLナスフラスコに4−ビニル安息香酸2.0574g(13.9mmol)と0℃で塩化チオニル6.8mL(93.6mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。40℃で1時間攪拌した後に、過剰の塩化チオニルを減圧下で留去した後に再び乾燥塩化メチレン20mLを加えて、減圧下で留去した。乾燥塩化メチレン20mLを加え溶解させた。別途に用意した100mLナスフラスコを、減圧下、ヒートガンで加熱乾燥し、アルゴンで置換して室温に戻した。窒素気流下で乾燥塩化メチレン30mLに溶かした化合物3 3.5821g(13.5mmol)、トリエチルアミン5.6mL(40.2mmol)を加えた。先程の30mLナスフラスコの溶液を窒素気流下で20分間かけて滴下して加えて、室温で19時間攪拌した。水で反応を停止し、塩化メチレンで3回抽出した後、有機相を1mol/L塩酸で5回洗浄した。その後、無水硫酸マグネシウムで乾燥してろ過し、減圧下で溶媒を留去して、薄茶色固体を得た(粗収量4.9561g、粗収率90%)。粗生成物を吸着シリカカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、化合物4を白色固体として得た(収量4.4259g、収率83%)。
1H−NMR及びIR測定の結果を以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ 8.46 (s, 1H), 7.88 (s, 2H), 7.26 (d, J = 5.8 Hz, 2H), 7.21 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 6.60 (dd, J = 17.5 and 10.7 Hz, 1H), 5.71 (d, J = 17.5 Hz, 1H), 5.26 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 4.37 (q, J = 7.2 Hz 4H), 4.02 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 1.38 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 1.23 (t, J = 7.0 Hz, 3H); IR (KBr) 3413, 3261, 3088, 2981, 2926, 2860, 1836, 1708, 1635, 1598, 1510, 1458, 1239, 1138, 1078, 1053, 1027, 322, 855, 858, 774, 754, 732, 685, 592, 498, 474, 441 cm
-1.
【0042】
(2)ハイパーブランチ芳香族ポリアミド1の合成
【化15】
【0043】
200mLナスフラスコに塩化リチウム0.6135g(14.5mmol)を加え、減圧下でヒートガンで加熱しながらアルゴン置換を行い、窒素気流下で、1mol/L LiHMDS THF溶液3.0mL(3.00mmol)を加え、−30℃で20分間攪拌した。その後、乾燥THF 4mLに溶かした化合物4 0.1055g(0.267mmol)を得、窒素気流下で乾燥THF16mLに溶かした化合物3 0.7414g(279mmol)を2時間かけて滴下し加えた。−30℃で1.5時間攪拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、塩化メチレンで3回抽出した後、有機相を水で3回洗浄した。その後、無水硫酸マグネシウムで乾燥してろ過し、減圧下で溶媒を留去して、ハイパーブランチ芳香族ポリアミド1を黄色粘性液体として得た(粗収量0.6696g、粗収率79%)。GPC測定の結果、Mn=2,900、Mw/Mn=1.11であった。
1H−NMR及びIR測定の結果を以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ 8.46 (s, 1H), 7.88 (s, 2H), 7.26 (d, J = 5.8 Hz, 2H), 7.21 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 6.60 (dd, J = 17.5 and 10.7 Hz, 1H), 5.71 (d, J = 17.5 Hz, 1H), 5.26 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 4.37 (q, J = 7.2 Hz 4H), 4.02 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 1.38 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 1.23 (t, J = 7.0 Hz, 3H); IR (KBr) 3413, 3261, 3088, 2981, 2926, 2860, 1836, 1708, 1635, 1598, 1510, 1458, 1239, 1138, 1078, 1053, 1027, 322, 855, 858, 774, 754, 732, 685, 592, 498, 474, 441 cm
-1.
【0044】
[実施例3]ハイパーブランチ芳香族ポリアミド2の合成
(1)ハイパーブランチ芳香族ポリアミド2の合成
【化16】
【0045】
耐圧反応管に乾燥トルエン9mL、3−(トリメトキシシリル)−1−プロパンチオール0.3mL(1.60mmol)、実施例2で得たハイパーブランチ芳香族ポリアミド1 0.8005g(0.154mmol)、2,2’−アゾジイソブチロニトリル12.64mg(0.0770mmol)を加え、凍結脱気を3回行った。60℃で28時間攪拌した後、減圧下で溶媒を留去して、黄色粘性液体を得た(粗収量0.9637g、粗収率117%)。粗生成物を沈殿精製し(良溶媒:塩化メチレン、貧溶媒:ヘキサン)、ハイパーブランチ芳香族ポリアミド2を薄黄色固体として得た(収量0.6176g、収率75%)。
1H−NMR測定の結果を以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl
3) δ 8.47 (s, 1nH), 7.93-7.80 (m, 2nH), 4.39-4.25 (m, 4nH), 3.67 (s, 2nH), 3.55 (s, 9H), 2.76 (s, 2H), 2.65 (s, 2H), 2.53 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 1.88-1.65 (m, 2H), 1.39-1.20 (m, 6nH), 0.87 (s, 3nH), 0.79-0.73 (m, 2H).
【0046】
[実施例4]ハイパーブランチ芳香族ポリアミド修飾シリカゾルの作製
耐圧反応管に、実施例3で得たハイパーブランチ芳香族ポリアミド2 0.1247g(0.0584mmol)、メチルエチルケトン1.9mL及びメチルエチルケトン−シリカゾル溶液(MEK−ST−40、日産化学工業(株)製)0.5010g(シリカ含有量:0.2004g)を加えた。60℃で5時間攪拌した後、減圧下で溶媒を留去して、ハイパーブランチ芳香族ポリアミド修飾シリカゾルを褐色粘性固体として得た(粗収量0.369g)。
【0047】
[実施例5]ハイブリッドフィルムの作製
(1)ポリアミック酸(S1)の合成
p−フェニレンジアミン3.248g(30mmol)をジメチルアセトアミド88gに溶解させた。得られた溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物8.751g(30mmol)を加え、窒素雰囲気下、23℃で24時間反応させた。得られたポリアミック酸(S1)のMwは27,300、分子量分布2.6であった。
(2)シリカゾル溶液(Z1)の作製
実施例4で作製したシリカゾル0.30gをジメチルアセトアミド2.7gに溶解させ、10質量%シリカゾル溶液(Z1)を作製した。
(3)ハイブリッドフィルムの作製
上記で得られたポリアミック酸(S1)6.0gに、上記シリカゾル溶液(Z1)0.90gを添加し、23℃で3時間撹拌してワニスを調製した。その後、ガラス基板上に、このワニスをバーコータで塗布し、膜厚250μmの塗布膜を作製し、80℃で1時間、300℃で1時間焼成した。
得られたフィルムをカッターでガラス基板から剥離したところ、容易に剥離した。剥離したフィルムは、強い自己支持性が見られた。
【0048】
[比較例1]ハイブリッドフィルムの作製
(1)ゾル溶液(HZ1)の作製
メチルエチルケトン−シリカゾル溶液(MEK−ST−40、日産化学工業(株)製)50g(シリカ含有量:20g)に、ジメチルアセトアミド30gを加え、エバポレータを用いて、メチルエチルケトンの留去を行い、ゾル溶液(HZ1)を作製した。
(2)ハイブリッドフィルムの作製
上記で得られたポリアミック酸(S1)10.0gに、上記ゾル溶液(HZ1)0.3gを添加し、23℃で3時間撹拌してワニスを調製した。その後、ガラス基板上に、このワニスをバーコータで塗布し、膜厚250μmの塗布膜を作製し、80℃で1時間、300℃で1時間焼成した。
得られたフィルムは、ガラス基板に強く貼り付き、剥離することができなかった。