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特開2018-127599ハイパーブランチ芳香族ポリアミド及び表面修飾剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-127599(P2018-127599A)
(43)【公開日】2018年8月16日
(54)【発明の名称】ハイパーブランチ芳香族ポリアミド及び表面修飾剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/48 20060101AFI20180720BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20180720BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20180720BHJP
【FI】
   C08G69/48
   C08K9/04
   C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-143172(P2017-143172)
(22)【出願日】2017年7月25日
(31)【優先権主張番号】特願2017-21746(P2017-21746)
(32)【優先日】2017年2月9日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横澤 勉
(72)【発明者】
【氏名】江原 和也
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB08
4J001DC03
4J001DC12
4J001DD02
4J001DD08
4J001EB25
4J001EE30A
4J001FA01
4J001FB01
4J001FC01
4J001GA13
4J001GB02
4J001GC04
4J001GD07
4J001GE07
4J002AA001
4J002CL001
4J002CM041
4J002DJ016
4J002FB266
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】無機微粒子の表面修飾等に利用可能なハイパーブランチ芳香族ポリアミドを提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるハイパーブランチ芳香族ポリアミド。

(式中、Xは、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、Rは、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R3は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、kは、1〜3の整数を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるハイパーブランチ芳香族ポリアミド。
【化1】
(式中、Xは、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、Rは、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R3は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、kは、1〜3の整数を表す。)
【請求項2】
下記式(2)で表される請求項1記載のハイパーブランチ芳香族ポリアミド。
【化2】
(式中、R、R1及びR2は、前記と同じ。)
【請求項3】
1及びR2が、互いに独立して、メチル基又はエチル基である請求項1又は2記載のハイパーブランチ芳香族ポリアミド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のハイパーブランチ芳香族ポリアミドを含む表面修飾剤。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載のハイパーブランチ芳香族ポリアミドで表面修飾されている無機微粒子。
【請求項6】
請求項5記載の無機微粒子と有機マトリックス樹脂とを含む有機・無機ハイブリット材料。
【請求項7】
請求項6記載の有機・無機ハイブリット材料を用いて作製されるフィルム。
【請求項8】
下記式(3)で表されるハイパーブランチ芳香族ポリアミド。
【化3】
(式中、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
【請求項9】
1及びR2が、互いに独立して、メチル基又はエチル基である請求項8記載のハイパーブランチ芳香族ポリアミド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイパーブランチ芳香族ポリアミドに関し、更に詳述すれば、無機微粒子の表面修飾等に利用可能なハイパーブランチ芳香族ポリアミドに関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料の耐熱性や、力学特性及び電気的特性を向上させるため、シリカゲルや酸化チタン等の無機微粒子を有機高分子と混ぜたハイブリッド材料(ナノコンポジット)がよく研究されている。しかし、有機材料と無機材料はそもそも性質が大きく異なるので、添加できる無機微粒子の量が限られるという問題があるうえに、添加した無機微粒子を有機材料中で分散させるのが難しいだけでなく、時間が経つと添加した無機微粒子が有機材料中で凝集してしまう等の問題がある。
【0003】
そこで、これらの問題を解決するために無機微粒子表面を有機低分子化合物や有機高分子で修飾することが行われてきている。特に、有機高分子で修飾する場合は、(1)無機表面に開始部位を導入してそこからリビング重合を行う、又は(2)リビングポリマー末端に無機物と結合できる官能基(−Si(OR)3、−PO3H、−CO2H、−SH等)を導入し、無機微粒子表面に反応させる、という2つの方法が主に行われている。
【0004】
しかし、リビング重合は付加重合と開環重合に限られるので、得られるポリマーはあまり耐熱性のない脂肪族ポリマーである。この場合、無機微粒子を有機材料に混ぜて耐熱性を上げようとしても表面修飾した脂肪族ポリマーが先に熱分解し、表面修飾しない無機微粒子を混ぜた材料と同じ問題を抱える。また、そもそも修飾した脂肪族ポリマーが耐熱性の高い縮合系芳香族ポリマーと混ざりにくいことも大きな問題となる。
【0005】
これらの問題を解決するには、耐熱性に優れた縮合系芳香族高分子で無微粒子表面を修飾すればよい。しかし、縮合系芳香族高分子は重縮合でしか得られないため、リビング重合の特性を生かした前記(1)及び(2)のアプローチは不可能であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc. 122, pp. 8313-8314 (2000)
【非特許文献2】Angew. Chem. Int. Ed., 48 (32) 5942-5945 (2009)
【非特許文献3】Macromolecules, 43 (7) 3206-3214 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、無機微粒子の表面修飾等に利用可能なハイパーブランチ芳香族ポリアミドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、これまで開発してきた重縮合のリビング重合である連鎖縮合重合(CGCP)による芳香族ポリアミド重合法(非特許文献1、2、3参照)において、不飽和結合を有する開始剤を用いて得られた不飽和末端を利用することで、無機物表面と反応する−Si(OR)3等が導入できる結果、無機微粒子表面の修飾剤として利用可能なハイパーブランチ芳香族ポリアミドが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記ハイパーブランチ芳香族ポリアミド及び表面修飾剤を提供する。
1. 下記式(1)で表されるハイパーブランチ芳香族ポリアミド。
【化1】
(式中、Xは、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、Rは、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R3は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、kは、1〜3の整数を表す。)
2. 下記式(2)で表される1のハイパーブランチ芳香族ポリアミド。
【化2】
(式中、R、R1及びR2は、前記と同じ。)
3.R1及びR2が、互いに独立して、メチル基又はエチル基である1又は2のハイパーブランチ芳香族ポリアミド。
4.1〜3のいずれかのハイパーブランチ芳香族ポリアミドを含む表面修飾剤。
5.1〜3のいずれかのハイパーブランチ芳香族ポリアミドで表面修飾されている無機微粒子。
6.5の無機微粒子と有機マトリックス樹脂とを含む有機・無機ハイブリット材料。
7.6の有機・無機ハイブリット材料を用いて作製されるフィルム。
8. 下記式(3)で表されるハイパーブランチ芳香族ポリアミド。
【化3】
(式中、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
9.R1及びR2が、互いに独立して、メチル基又はエチル基である8のハイパーブランチ芳香族ポリアミド。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無機微粒子表面の修飾剤として利用可能なハイパーブランチ芳香族ポリアミドを提供できる。このハイパーブランチ芳香族ポリアミドを用いてシリカや窒化ホウ素等の無機微粒子表面を修飾し、ポリイミド等の耐熱性高分子に混合して更に耐熱性と力学特性とを上げた有機・無機ハイブリッド材料の開発が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のハイパーブランチ芳香族ポリアミドは、下記式(1)で表されるものである。
【化4】
【0012】
式(1)中、Xは、炭素数1〜10のアルキレン基を表す。Rは、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基を表す。R3は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。kは、1〜3の整数を表す。
【0013】
炭素数1〜10のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、メチルプロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等が挙げられるが、中でも、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基がより好ましく、トリメチレン基がより一層好ましい。
【0014】
炭素数1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチル−n−ブチル基、2−メチル−n−ブチル基、3−メチル−n−ブチル基、1,1−ジメチル−n−プロピル基、1,2−ジメチル−n−プロピル基、2,2−ジメチル−n−プロピル基、1−エチル−n−プロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチル−n−ペンチル基、2−メチル−n−ペンチル基、3−メチル−n−ペンチル基、4−メチル−n−ペンチル基、1,1−ジメチル−n−ブチル基、1,2−ジメチル−n−ブチル基、1,3−ジメチル−n−ブチル基、2,2−ジメチル−n−ブチル基、2,3−ジメチル−n−ブチル基、3,3−ジメチル−n−ブチル基、1−エチル−n−ブチル基、2−エチル−n−ブチル基、1,1,2−トリメチル−n−プロピル基、1,2,2−トリメチル−n−プロピル基、1−エチル−1−メチル−n−プロピル基、1−エチル−2−メチル−n−プロピル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0015】
炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、o−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基等が挙げられる。これらの中でも、R、R1、R2としては、メチル基、エチル基が好ましい。また、R3としては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基等がより好ましい。
【0016】
kは、1〜3の整数を表すが、2又は3が好ましく、3がより好ましい。
【0017】
式(1)で表されるハイパーブランチ芳香族ポリアミドとしては、下記式(2)で表されるものが好ましい。
【0018】
【化5】
(式(2)中、R、R1及びR2は、前記と同じ。)
【0019】
本発明のハイパーブランチ芳香族ポリアミドの数平均分子量は、1,000〜200,000が好ましく、1,000〜40,000がより好ましい。なお、本発明において数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算測定値である。
【0020】
本発明のハイパーブランチ芳香族ポリアミドは、下記式(3)で表されるハイパーブランチ芳香族ポリアミドを原料として得ることができる。
【0021】
【化6】
(式中、R1及びR2は、前記と同じ。)
【0022】
式(3)で表されるハイパーブランチ芳香族ポリアミドは、例えば、下記式(4)で表される化合物と式(5)で表される化合物とを重合させる方法により得ることができる(非特許文献2等を参照)。なお、式(4)及び式(5)で表される化合物は、公知の方法により得られる。
【化7】
(式中、R4は、フェニル基、炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
【化8】
(式中、R1及びR2は、前記と同じ。)
【0023】
なお、前記式(4)において、炭素数1〜10のアルキル基の具体例としては、前記で例示したものと同様のものを挙げることができる。
【0024】
また、下記式(6)で表される化合物に前記式(5)で表される化合物を重合する方法によっても得ることができる(非特許文献2等を参照)。なお、式(6)で表される化合物は、公知の方法、例えば、ビニル安息香酸クロリドと式(5)で表される化合物とを反応させることにより得られる。
【化9】
(式中、R1及びR2は、前記と同じ。)
【0025】
式(3)で表されるビニル基を有するハイパーブランチ芳香族ポリアミドと、アルコキシシリル基含有チオール化合物とを、ラジカル付加反応させて、式(1)で表される芳香族ポリアミドが得られる。この場合、式(3)で表されるハイパーブランチ芳香族ポリアミドと、アルコキシシリル基含有チオール化合物との反応比率は、特に限定されないが、反応効率等を考慮すると、式(3)のハイパーブランチ芳香族ポリアミド1molに対し、チオール化合物を1〜100mol程度とすることができるが、5〜50molが好ましく、10〜30molがより好ましい。
【0026】
アルコキシシリル基含有チオール化合物の具体例としては、3−(トリメトキシシリル)プロパンチオール、3−(トリエトキシシリル)プロパンチオール等が挙げられる。
【0027】
重合開始剤としては、熱又は還元性物質等によって分解してラジカル種を発生するものであれば、特に限定はなく、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等の過酸化物等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
前記反応は、有機溶媒中で行うこともできる。使用可能な溶媒としては、ハイパーブランチ芳香族ポリアミドが溶解し、重合反応を妨げないものであれば任意であり、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アニソール等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類等が挙げられる。これらのうち、ニトリル類が好ましく、特にアセトニトリルが好適である。
【0029】
反応温度は、50〜150℃程度が好ましく、60〜100℃程度がより好ましい。反応時間は、通常1〜120時間程度である。反応終了後は、定法に従って後処理をし、必要に応じて再沈殿等の精製を施して目的物を得ることができる。
【0030】
本発明のハイパーブランチ芳香族ポリアミドは、その末端にアルコキシシリル基を有しているため、このアルコキシシリル基を利用して無機微粒子の表面や、無機基板の表面等を修飾することができる。ハイパーブランチ芳香族ポリアミドは、耐熱性に優れているため、本発明のハイパーブランチ芳香族ポリアミドを無機材料の表面処理剤として用いるとともに、有機マトリックスとしてもポリイミドやポリアミド等の耐熱性に優れた樹脂を用いることで、耐熱性及び力学特性に優れた有機・無機ハイブリット材料の開発が期待できる。
【実施例】
【0031】
以下、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。実施例及び比較例で用いた各試薬及び各測定装置は以下のとおりである。
[試薬]
DMF:ジメチルホルムアミド
DMAP:N,N−ジメチル−4−アミノピリジン
EDCI:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
THF:テトラヒドロフラン
[GPC]
装置:Shodex GPC-101(昭和電工(株)製)
カラム:Shodex KF-804l 2本(昭和電工(株)製)
カラム温度:40℃
溶媒:THF 1mL/分
検出器:UV(254nm)、RI
検量線:標準ポリスチレン
1H−NMR]
装置:JEOL ECA-500 and ECA-600
[TG−DTA]
装置:Seiko Instruments Inc. TG/DTA 6200
【0032】
[実施例1]ハイパーブランチ芳香族ポリアミド1の合成−1
(1)化合物1の合成
【化10】
【0033】
50mLナスフラスコに、4−ビニル安息香酸を2.5016g(16.9mmol)及びフェノール1.7142g(18.2mmol)を加えた。別途用意した30mLナスフラスコに、乾燥DMF15mL及びDMAP2.3020g(18.8mmol)を加え、前記50mLナスフラスコに加えた。0℃で20分間攪拌し、EDCI4.2065g(21.9mmol)を加え、再び0℃で16時間攪拌した。その後、室温で22時間攪拌し、水を加えて反応を停止し、ジエチルエーテルで3回抽出した後、有機相を1mol/L塩酸で1回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、更に飽和塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄した。その後、無水硫酸マグネシウムで乾燥してろ過し、減圧下で溶媒を留去して、化合物1を白色固体として得た(粗収量3.168g、粗収率95%)。TG−DTA測定の結果、化合物1の融点は、94.7−97.9℃であった。1H−NMR測定の結果を以下に示す。
1H-NMR (600MHz, CDCl3) δ 8.16 (d, J=8.2Hz, 2H), 7.53 (d, J=8.2 Hz, 2H), 7.43 (t, J=7.9Hz, 2H), 7.27 (t, J=7.6Hz, 1H), 7.22 (d J=8.2Hz, 2H), 6.79 (dd, J=17.9 and 11.0Hz, 1H), 5.91 (d, J=17.5Hz, 1H), 5.43 (d, J=11.0 Hz, 1H).
【0034】
(2)化合物2の合成
【化11】
【0035】
1Lナスフラスコに5−アミノイソフタル酸水和物20.0081g(110mmol)、乾燥エタノール350mLを加え、0℃でアルゴン置換して30分間攪拌し、塩化チオニル1.4mL(19.3mmol)を加え、アルゴン置換して80℃で9時間還流した。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で反応を停止し、酢酸エチルで3回抽出した後、水で3回洗浄した。その後、無水硫酸マグネシウムで乾燥してろ過し、減圧下で溶媒を留去して、化合物2を白色固体として得た(粗収量23.8129g、粗収率91%)。TG−DTA測定の結果、化合物2の融点は、117.4−121.5℃であった。1H−NMR測定の結果を以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ 8.06 (s, 1H), 7.52 (s, 2H), 4.38 (q, J = 7.1 Hz 4H), 3.91 (br s, 2H), 1.40 (t, J = 7.2 Hz, 6H).
【0036】
(3)化合物3の合成
【化12】
【0037】
500mLナスフラスコに化合物2 10.1266g(42.7mmol)、アセトニトリル20mL(383mmol)、乾燥エタノール120mLを加え、5%パラジウム炭素10.35gを加え、アルゴン置換して2日間攪拌し、水素雰囲気下で10日間攪拌した。5%パラジウム炭素5.00gを加え、水素雰囲気下で6日間攪拌し、更に5%パラジウム炭素3.09gを加え、水素雰囲気下で7日間攪拌した。5%パラジウム炭素3.01gを加え、水素雰囲気下で16日間攪拌した。塩化メチレンを加えてからセライトを用いてろ過し、減圧下で溶媒を留去し、薄茶色固体を得た(粗収量8.5389g、粗収率75%)。粗生成物を再結晶(良溶媒:塩化メチレン、貧溶媒:ヘキサン)し、化合物3を白色固体として得た(収量5.0679g、収率45%)。1H−NMR測定の結果を以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.99 (s, 1H), 7.43 (s, 2H), 4.38 (quint, J = 7.1 Hz, 4H), 3.24 (quint, J = 7.3 Hz, 2H), 1.40 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 1.28 (t, J = 7.2 Hz, 3H).
【0038】
(4)ハイパーブランチ芳香族ポリアミド1の合成
【化13】
【0039】
200mLナスフラスコに塩化リチウム2.0970g(49.5mmol)を加え、ヒートガンで加熱乾燥し、アルゴンで置換して室温に戻した。窒素気流下で、1mol/L LiHMDS THF溶液8.2mL(8.20mmol)を加え、−35℃で30分間攪拌した。このナスフラスコに、乾燥THF10mLに溶解させた化合物1 0.1510g(0.762mmol)を加えた後に窒素気流下で乾燥THF44mLに溶解させた化合物3 1.9806g(7.47mmol)を1時間かけて滴下し加えた。−35℃で2時間攪拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、塩化メチレンで3回抽出した後、有機相を水で3回洗浄した。その後、無水硫酸マグネシウムで乾燥してろ過し、減圧下で溶媒を留去して、ハイパーブランチ芳香族ポリアミド1を黄色粘性液体として得た(収量1.8635g、収率87%)。GPC測定の結果、Mn=2,700、Mw/Mn=1.27であった。1H−NMR及びIR測定の結果を以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ 8.46 (s, 1H), 7.88 (s, 2H), 7.26 (d, J = 5.8 Hz, 2H), 7.21 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 6.60 (dd, J = 17.5 and 10.7 Hz, 1H), 5.71 (d, J = 17.5 Hz, 1H), 5.26 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 4.37 (q, J = 7.2 Hz 4H), 4.02 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 1.38 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 1.23 (t, J = 7.0 Hz, 3H); IR (KBr) 3413, 3261, 3088, 2981, 2926, 2860, 1836, 1708, 1635, 1598, 1510, 1458, 1239, 1138, 1078, 1053, 1027, 322, 855, 858, 774, 754, 732, 685, 592, 498, 474, 441 cm-1.
【0040】
[実施例2]ハイパーブランチ芳香族ポリアミド1の合成−2
(1)化合物4の合成
【化14】
【0041】
30mLナスフラスコに4−ビニル安息香酸2.0574g(13.9mmol)と0℃で塩化チオニル6.8mL(93.6mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。40℃で1時間攪拌した後に、過剰の塩化チオニルを減圧下で留去した後に再び乾燥塩化メチレン20mLを加えて、減圧下で留去した。乾燥塩化メチレン20mLを加え溶解させた。別途に用意した100mLナスフラスコを、減圧下、ヒートガンで加熱乾燥し、アルゴンで置換して室温に戻した。窒素気流下で乾燥塩化メチレン30mLに溶かした化合物3 3.5821g(13.5mmol)、トリエチルアミン5.6mL(40.2mmol)を加えた。先程の30mLナスフラスコの溶液を窒素気流下で20分間かけて滴下して加えて、室温で19時間攪拌した。水で反応を停止し、塩化メチレンで3回抽出した後、有機相を1mol/L塩酸で5回洗浄した。その後、無水硫酸マグネシウムで乾燥してろ過し、減圧下で溶媒を留去して、薄茶色固体を得た(粗収量4.9561g、粗収率90%)。粗生成物を吸着シリカカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、化合物4を白色固体として得た(収量4.4259g、収率83%)。1H−NMR及びIR測定の結果を以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ 8.46 (s, 1H), 7.88 (s, 2H), 7.26 (d, J = 5.8 Hz, 2H), 7.21 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 6.60 (dd, J = 17.5 and 10.7 Hz, 1H), 5.71 (d, J = 17.5 Hz, 1H), 5.26 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 4.37 (q, J = 7.2 Hz 4H), 4.02 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 1.38 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 1.23 (t, J = 7.0 Hz, 3H); IR (KBr) 3413, 3261, 3088, 2981, 2926, 2860, 1836, 1708, 1635, 1598, 1510, 1458, 1239, 1138, 1078, 1053, 1027, 322, 855, 858, 774, 754, 732, 685, 592, 498, 474, 441 cm-1.
【0042】
(2)ハイパーブランチ芳香族ポリアミド1の合成
【化15】
【0043】
200mLナスフラスコに塩化リチウム0.6135g(14.5mmol)を加え、減圧下でヒートガンで加熱しながらアルゴン置換を行い、窒素気流下で、1mol/L LiHMDS THF溶液3.0mL(3.00mmol)を加え、−30℃で20分間攪拌した。その後、乾燥THF 4mLに溶かした化合物4 0.1055g(0.267mmol)を得、窒素気流下で乾燥THF16mLに溶かした化合物3 0.7414g(279mmol)を2時間かけて滴下し加えた。−30℃で1.5時間攪拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、塩化メチレンで3回抽出した後、有機相を水で3回洗浄した。その後、無水硫酸マグネシウムで乾燥してろ過し、減圧下で溶媒を留去して、ハイパーブランチ芳香族ポリアミド1を黄色粘性液体として得た(粗収量0.6696g、粗収率79%)。GPC測定の結果、Mn=2,900、Mw/Mn=1.11であった。1H−NMR及びIR測定の結果を以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ 8.46 (s, 1H), 7.88 (s, 2H), 7.26 (d, J = 5.8 Hz, 2H), 7.21 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 6.60 (dd, J = 17.5 and 10.7 Hz, 1H), 5.71 (d, J = 17.5 Hz, 1H), 5.26 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 4.37 (q, J = 7.2 Hz 4H), 4.02 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 1.38 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 1.23 (t, J = 7.0 Hz, 3H); IR (KBr) 3413, 3261, 3088, 2981, 2926, 2860, 1836, 1708, 1635, 1598, 1510, 1458, 1239, 1138, 1078, 1053, 1027, 322, 855, 858, 774, 754, 732, 685, 592, 498, 474, 441 cm-1.
【0044】
[実施例3]ハイパーブランチ芳香族ポリアミド2の合成
(1)ハイパーブランチ芳香族ポリアミド2の合成
【化16】
【0045】
耐圧反応管に乾燥トルエン9mL、3−(トリメトキシシリル)−1−プロパンチオール0.3mL(1.60mmol)、実施例2で得たハイパーブランチ芳香族ポリアミド1 0.8005g(0.154mmol)、2,2’−アゾジイソブチロニトリル12.64mg(0.0770mmol)を加え、凍結脱気を3回行った。60℃で28時間攪拌した後、減圧下で溶媒を留去して、黄色粘性液体を得た(粗収量0.9637g、粗収率117%)。粗生成物を沈殿精製し(良溶媒:塩化メチレン、貧溶媒:ヘキサン)、ハイパーブランチ芳香族ポリアミド2を薄黄色固体として得た(収量0.6176g、収率75%)。1H−NMR測定の結果を以下に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ 8.47 (s, 1nH), 7.93-7.80 (m, 2nH), 4.39-4.25 (m, 4nH), 3.67 (s, 2nH), 3.55 (s, 9H), 2.76 (s, 2H), 2.65 (s, 2H), 2.53 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 1.88-1.65 (m, 2H), 1.39-1.20 (m, 6nH), 0.87 (s, 3nH), 0.79-0.73 (m, 2H).
【0046】
[実施例4]ハイパーブランチ芳香族ポリアミド修飾シリカゾルの作製
耐圧反応管に、実施例3で得たハイパーブランチ芳香族ポリアミド2 0.1247g(0.0584mmol)、メチルエチルケトン1.9mL及びメチルエチルケトン−シリカゾル溶液(MEK−ST−40、日産化学工業(株)製)0.5010g(シリカ含有量:0.2004g)を加えた。60℃で5時間攪拌した後、減圧下で溶媒を留去して、ハイパーブランチ芳香族ポリアミド修飾シリカゾルを褐色粘性固体として得た(粗収量0.369g)。
【0047】
[実施例5]ハイブリッドフィルムの作製
(1)ポリアミック酸(S1)の合成
p−フェニレンジアミン3.248g(30mmol)をジメチルアセトアミド88gに溶解させた。得られた溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物8.751g(30mmol)を加え、窒素雰囲気下、23℃で24時間反応させた。得られたポリアミック酸(S1)のMwは27,300、分子量分布2.6であった。
(2)シリカゾル溶液(Z1)の作製
実施例4で作製したシリカゾル0.30gをジメチルアセトアミド2.7gに溶解させ、10質量%シリカゾル溶液(Z1)を作製した。
(3)ハイブリッドフィルムの作製
上記で得られたポリアミック酸(S1)6.0gに、上記シリカゾル溶液(Z1)0.90gを添加し、23℃で3時間撹拌してワニスを調製した。その後、ガラス基板上に、このワニスをバーコータで塗布し、膜厚250μmの塗布膜を作製し、80℃で1時間、300℃で1時間焼成した。
得られたフィルムをカッターでガラス基板から剥離したところ、容易に剥離した。剥離したフィルムは、強い自己支持性が見られた。
【0048】
[比較例1]ハイブリッドフィルムの作製
(1)ゾル溶液(HZ1)の作製
メチルエチルケトン−シリカゾル溶液(MEK−ST−40、日産化学工業(株)製)50g(シリカ含有量:20g)に、ジメチルアセトアミド30gを加え、エバポレータを用いて、メチルエチルケトンの留去を行い、ゾル溶液(HZ1)を作製した。
(2)ハイブリッドフィルムの作製
上記で得られたポリアミック酸(S1)10.0gに、上記ゾル溶液(HZ1)0.3gを添加し、23℃で3時間撹拌してワニスを調製した。その後、ガラス基板上に、このワニスをバーコータで塗布し、膜厚250μmの塗布膜を作製し、80℃で1時間、300℃で1時間焼成した。
得られたフィルムは、ガラス基板に強く貼り付き、剥離することができなかった。