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特開2018-128414半導体装置および半導体装置の設計方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-128414(P2018-128414A)
(43)【公開日】2018年8月16日
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の設計方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20180720BHJP
   G01N 33/24 20060101ALI20180720BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20180720BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20180720BHJP
   H01L 21/82 20060101ALI20180720BHJP
【FI】
   G01N27/04 B
   G01N33/24 E
   H01L27/04 E
   H01L21/82 P
   H01L27/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-23082(P2017-23082)
(22)【出願日】2017年2月10日
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】草野 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】二川 雅登
【テーマコード(参考)】
2G060
5F038
5F064
【Fターム(参考)】
2G060AA14
2G060AC01
2G060AE18
2G060AF03
2G060AF06
2G060AF08
2G060AG10
2G060JA03
2G060KA06
5F038AZ07
5F038AZ08
5F038BH11
5F038CA01
5F038CA10
5F038CD18
5F038EZ16
5F038EZ20
5F064BB21
5F064BB35
5F064DD42
5F064EE32
5F064EE33
(57)【要約】
【課題】測定対象に対して配置させる場合において、半導体基板および半導体基板上の積層体へのダメージ、あるいは筐体からの剥離等の損傷を抑制するとともに、測定感度の向上が可能な半導体装置および半導体装置の設計方法を提供すること。
【解決手段】半導体基板12と、半導体基板12上に設けられるとともに、入力された測定用信号を入力信号として出力する第1の電極20−1と、半導体基板12上に設けられるとともに、第1の電極20−1から出力された入力信号が入力されかつ入力信号を出力信号として出力する第2の電極20−2と、を含み、第1の電極20−1および第2の電極20−2の各々は、各々が備える第1の辺によって対向するとともに第1の辺と鋭角をなす第2の辺を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられるとともに、入力された測定用信号を入力信号として出力する第1の電極と、
前記半導体基板上に設けられるとともに、前記第1の電極から出力された前記入力信号が入力されかつ前記入力信号を出力信号として出力する第2の電極と、を含み、
前記第1の電極および前記第2の電極の各々は、各々が備える第1の辺によって対向するとともに前記第1の辺と鋭角をなす第2の辺を備える
半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板は4つの辺を備え、前記第2の辺は前記半導体基板の前記4つの辺のいずれかと平行である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板は4つの辺を備え、前記第1の辺は前記半導体基板の4つの辺の各々と45度の角度をなす
請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体装置は、前記半導体装置を備えた筐体が土壌に埋設される際の埋設方向に対し、前記半導体装置の少なくとも1辺が鋭角をなすように前記筐体に搭載される
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられるとともに、入力された測定用信号を入力信号として出力する第1の電極と、
前記半導体基板上に設けられるとともに、前記第1の電極から出力された前記入力信号が入力されかつ前記入力信号を出力信号として出力する第2の電極と、を含み、
前記第1の電極および前記第2の電極の各々は、予め定められた角度で交差する前記半導体基板の2辺の各々と平行な第1の辺および第2の辺、並びに前記第1の辺および前記第2の辺の各々と平行な第3の辺および第4の辺を備える
半導体装置。
【請求項6】
半導体装置を搭載したセンサの土壌への埋設方向を決定するステップと、
前記埋設方向と平行な第1の辺、および前記埋設方向に対して鋭角をなす第2の辺を備えたセンサ電極をレイアウトするステップと、
を含む半導体装置の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の一例として、測定対象である土壌の電気伝導度(Electrical Conductivity:EC)から土壌中の水分量を測定するセンサ(以下、「ECセンサ」)が知られている。ECセンサは、土壌に接触させた二つの電極間に交流信号を印加し、例えば二つの電極間のインピーダンスの変化と位相の変化から土壌中の水分量を測定する。
【0003】
ECセンサとしての機能を備えた半導体装置の従来技術として、特許文献1には、溶液と当接してpH値を測定するpH測定部と、pH測定部の直上部位の電気伝導度を検出する電気伝導度測定部(ECセンサに相当)と、pH測定部近傍の温度を検出する温度測定部とを備え、測定されたpH値、電気伝導度および温度に基づき、溶液のpH値を検出するpH検出装置であって、pH測定部、電気伝導度測定部および温度測定部を同一の半導体基板上に配置させたpH検出装置が開示されている。
【0004】
特許文献1では、ECセンサの電極対を、pH測定部を両側から挟む位置に配置している。このことにより、特許文献1に係るpH検出装置では、pH測定部上の溶液が電気伝導度測定部の電極対に確実に接することになるので、電気伝導度測定部の出力から、pH測定部が液滴に当接しているか否かを特定することができ、その結果pH検出装置の測定精度が向上するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−39523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、半導体装置の半導体基板、あるいは半導体基板上に形成される半導体の積層体は極めて脆弱である。このため、例えばECセンサを土壌中に埋設する際に、半導体基板に割れ、欠け等を生じる可能性がある。また、半導体基板上に形成される積層体が破損した場合には、ECセンサの機能を十分に果たさなくなる恐れがある。さらに、半導体自体が筐体から剥離するという不具合を生じる場合もある。そのため、ECセンサとしての半導体装置においては、電気伝導度の測定に際し直接土壌に接する電極(以下、「センサ電極」)に対する配慮が重要である。特許文献1に係るpH検出装置ではかかる点について特に検討されていないので、測定対象へ接触させて配置する際に破損を生ずる可能性がある。
【0007】
一方、センサ電極の形状、大きさ等はECセンサの測定感度を決定付ける要因となり得る。従って、ECセンサの電極について検討する際には測定感度の維持、向上についても併せて検討する必要がある。
【0008】
さらに、センサ電極の検討に際しては、電気二重層の問題にも配慮する必要がある。電気二重層とは、一般に固体に挟まれた液体からなる系において、固体と液体の界面に形成される正負の電荷の層をいう。ECセンサにおいても液体の電気伝導度を測定する際には、程度の差はあっても、電極と測定対象としての液体との界面に電気二重層が形成される。この電気二重層はコンデンサとして機能するため、液体の電気伝導度測定において、測定周波数等に影響を与え、測定精度の低下をもたらす場合もある。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、測定対象に対して配置させる場合において、半導体基板および半導体基板上の積層体へのダメージ、あるいは筐体からの剥離等の損傷を抑制するとともに、測定感度の向上が可能な半導体装置および半導体装置の設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に設けられるとともに、入力された測定用信号を入力信号として出力する第1の電極と、前記半導体基板上に設けられるとともに、前記第1の電極から出力された前記入力信号が入力されかつ前記入力信号を出力信号として出力する第2の電極と、を含み、前記第1の電極および前記第2の電極の各々は、各々が備える第1の辺によって対向するとともに前記第1の辺と鋭角をなす第2の辺を備えるものである。
【0011】
また、本発明に係る他の態様の半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に設けられるとともに、入力された測定用信号を入力信号として出力する第1の電極と、前記半導体基板上に設けられるとともに、前記第1の電極から出力された前記入力信号が入力されかつ前記入力信号を出力信号として出力する第2の電極と、を含み、前記第1の電極および前記第2の電極の各々は、予め定められた角度で交差する前記半導体基板の2辺の各々と平行な第1の辺および第2の辺、並びに前記第1の辺および前記第2の辺の各々と平行な第3の辺および第4の辺を備えるものである
【0012】
一方、本発明に係る半導体装置の設計方法は、半導体装置を搭載したセンサの土壌への埋設方向を決定するステップと、前記埋設方向と平行な第1の辺、および前記埋設方向に対して鋭角をなす第2の辺を備えたセンサ電極をレイアウトするステップと、を含むものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、測定対象に対して配置させる場合において、半導体基板および半導体基板上の積層体へのダメージ、あるいは筐体からの剥離等の損傷を抑制するとともに、測定感度の向上が可能な半導体装置および半導体装置の設計方法が提供される、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は本実施の形態に係るECセンサの概観図、(b)は本実施の形態に係る半導体装置の平面図、(c)は断面図である。
図2】(a)は本実施の形態に係るECセンサの作用を説明する概観図、(b)は本実施の形態に係る半導体装置の作用を説明する断面図、(c)は平面図である。
図3】実施の形態に係る半導体装置の変形例を示す平面図である。
図4】実施の形態に係る半導体装置のバリエーションを示す平面図である。
図5】(a)、(c)〜(e)は実施の形態に係る半導体装置のEC電極の構成の一例を示す平面図、(b)は、本実施の形態に係るEC電極の作用を説明する断面図である。
図6】本実施の形態に係るEC電極の効果を説明するグラフである。
図7】(a)は比較例に係るECセンサの概観図、(b)は比較例に係る半導体装置の平面図、(c)は断面図である。
図8】(a)は比較例に係るECセンサの作用を説明する概観図、(b)は比較例に係る半導体装置の作用を説明する断面図、(c)は平面図である。
図9】(a)および(b)は、比較例に係るECセンサのセンサ電極剥離を説明する図、(c)および(d)は保護層欠損を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1ないし図6を参照して、本実施の形態に係る半導体装置および半導体装置の設計方法について説明する。なお、以下では、電気伝導度の測定対象として土壌を例示し説明する。
【0017】
まず図1を参照し、本実施の形態に係るECセンサ、ECセンサチップとしての半導体装置、および半導体装置の設計方法について説明する。図1(a)は本実施の形態に係るECセンサ1の概観図、図1(b)は本実施の形態に係る半導体装置10の平面図、図1(c)は図1(b)に示すA−A線で切断した半導体装置10の断面図である。
【0018】
図1(a)に示すように、ECセンサ1は、筐体2および半導体装置10を備えている。半導体装置10は筐体内に配置された実装基板(図示省略)に搭載されるとともに、筐体2の一部に設けられた窓(開口部)から露出するように配置されている。そして、ECセンサ1を用いた土壌の電気伝導度の測定に際しては、半導体装置10を含む筐体2の一部を土壌中に埋設させる。
【0019】
図1(b)に示すように、半導体装置10は、1対のセンサ電極20−1、20−2(以下、総称する場合は「センサ電極20」)、pHセンサ22、および温度センサ24を備えている。
【0020】
センサ電極20は電気伝導度を測定するための電極であり、測定に際しては1対のセンサ電極20−1、20−2の各々を土壌の異なる部分と接触させ、センサ電極20−1、20−2を介して土壌の例えばインピーダンスを測定する。本実施の形態では1対のセンサ電極20の各々は略直角三角形の形状をなし、半導体装置10の基板12の相対する頂点に、互いが対向する辺を有するように配置されている。
【0021】
pHセンサ22は、センサ電極20の接した土壌の近傍のpHを測定する部位である。また、温度センサ24はセンサ電極20の接した土壌の近傍の温度を測定する部位である。本実施の形態では、pHセンサ22および温度センサ24を2組用い、2組のpHセンサ22および温度センサ24の各々を基板12の他の相対する頂点の位置に配置している。一方、2組のpHセンサ22および温度センサ24の各々は、センサ電極20−1とセンサ電極20−2との間の領域には配置されていない。なお、pHセンサ22および温度センサ24を2組用いるのは、主として、測定精度をより高めるためである。
【0022】
一方、断面でみると、半導体装置10は図1(c)に示すように、基板12、基板12上に形成された絶縁層14、絶縁層14上に形成されたセンサ電極用配線16、センサ電極用配線16上に形成されたセンサ電極20(図1(c)ではセンサ電極20−1が見えている)、絶縁層14上に形成されセンサ電極用配線16の一部を覆う表面保護膜18を含んで構成されている。センサ電極用配線16は、センサ電極20と、センサ電極20を外部(交流信号源、電流計等の測定系)と接続するためのパッド(図示省略)との間等を接続するための配線層である。
【0023】
本実施の形態に係る半導体装置10では、基板12として例えばシリコン(Si)が用いられる。また、絶縁層14としては、例えばSiによる基板12を熱酸化して形成したシリコン酸化膜(SiO膜)が用いられる。
【0024】
一方、本実施の形態に係る半導体装置10では、センサ電極用配線16として例えばアルミニウム(Al)、あるいはAlCu(アルミニウム・銅)、AlSiCu(アルミニウム・シリコン・銅)が用いられ、センサ電極20としては例えば白金(Pt)が用いられる。また、絶縁層14とセンサ電極用配線16との間にはバリアメタル(密着層)26−1が、センサ電極用配線16とセンサ電極20との間にはバリアメタル26−2が、各々設けられる場合もある。バリアメタル26−1、26−2としては、例えばチタン(Ti)膜、あるいは窒素チタン(TiN)膜が用いられる。
【0025】
ここで、図7ないし図9を参照して、比較例に係るECセンサを用いた場合の測定に際するECセンサの破損について説明する。
【0026】
図7(a)は比較例に係るECセンサ100の概観図、図7(b)は比較例に係る半導体装置110の平面図、図7(c)は図7(b)に示すB−B線で切断した半導体装置110の断面図である。
【0027】
図7(a)に示すように、ECセンサ100は筐体102、半導体装置110を備え、外観は本実施の形態にかかるECセンサ1と同様である。
【0028】
一方、比較例に係る半導体装置110は半導体装置10とは異なり、図7(b)に示すように、基板112の相対する2辺に平行に配置された長方形のセンサ電極120の対を備えている。
【0029】
図7(c)に示すように、半導体装置110の断面構造は半導体装置10と同様である。すなわち、基板112、基板112上に形成された絶縁層114、絶縁層114上に形成されたセンサ電極用配線116、センサ電極用配線116上に形成されたセンサ電極120、絶縁層114上に形成されセンサ電極用配線116の一部を覆う表面保護膜118を含んで構成されている。
【0030】
次に、図8を参照して、ECセンサ100および半導体装置110の、土壌の電気伝導度を測定する際の作用について説明する。図8(a)に示すように、土壌の電気伝導度の測定に際し、ECセンサ100は白抜き矢印で示す方向D1に向けて土壌に差し込まれる。埋設領域SAは、ECセンサ100の差し込みに際し、埋設される部分を示している。この状態において、センサ電極120を土壌に接触させ、土壌中の例えば水分量が測定される。
【0031】
一方、ECセンサに100の埋設に伴い、図8(b)に示すように、半導体装置110も方向D1に向けて土壌中に進入するので、相対的に方向D2から土壌が押し寄せる。この状態を平面方向から見ると図8(c)のようになる。すなわち、基板112の、ECセンサ100の差し込み方向D1と直交する方向の1辺である領域A1、およびセンサ電極120の各々の方向D1と直交する方向の辺である領域A2が押し寄せる土壌Sと対向する。半導体装置110の基板112、センサ電極120、表面保護膜118、つまり半導体装置110の積層体は方向D2と垂直な段差面を有するため、押し寄せる土壌Sに押し付けられ損傷を受ける可能性がある。
【0032】
図9を参照し、上記の半導体装置110の損傷についてより詳細に説明する。以下、比較例に係る半導体装置110で発生し得る損傷モードのうち、センサチップ剥離、センサ電極剥離、および保護層欠損の3つの損傷モードを例示して説明する。
【0033】
センサチップ剥離とは、半導体装置110の端面が土壌Sに押し付けられることにより、半導体装置110自体が筐体102内に配置された実装基板から剥離する損傷である。センサチップ剥離により、半導体装置110と実装基板の配線との間の電気的接続に不具合を生じ、また筐体102からの半導体装置110の脱落を生じる場合もある。
【0034】
センサ電極剥離とは、図9(a)に示すように、押し寄せる土壌Sによってセンサ電極120が圧力を受け、剥離する損傷をいう。センサ電極120が剥離すると、ECセンサ100の測定精度の低下を生じる可能性がある。また、図9(b)に示すように、本来土壌Sに接触しないセンサ電極用配線116が土壌に接触することにより腐食Gが発生する場合もある。腐食Gは長期の使用においてセンサチップの信頼性低下を招く場合もある。
【0035】
保護層欠損とは、図9(c)に示すように、押し寄せる土壌Sによって表面保護膜118の一部に欠損を生ずる損傷である。表面保護膜118の一部が欠損すると、図9(d)に示すように、本来土壌に接触しないセンサ電極用配線116が土壌Sに接触し、腐食Gを生じる場合がある。腐食Gは長期の使用においてセンサチップの信頼性低下を招く場合もある。また、表面保護膜118の欠損に伴いセンサ電極120が剥離すると、ECセンサ100の測定精度の低下を生じる。
【0036】
次に、図2を参照して、本実施の形態に係るECセンサ1、および半導体装置10の作用について説明する。
【0037】
図2(a)に示すように、ECセンサ1も半導体装置10を紙面下方に向け、方向D1に向けて土壌中に差し込まれる。図2(b)に示すように、半導体装置10でも、方向D1に向けて土壌中に進入させると、方向D2から土壌が押し寄せる。
【0038】
図2(c)は、ECセンサ1を土壌S中に差し込んだ際の、土壌Sと半導体装置10との接触の様子を示している。以下、理解の容易さから、半導体装置10の外形が正方形であるとして説明する。しかしながら、半導体装置10の外形は正方形に限定されるものではなく、他の外形、例えばひし形、多角形等であってもよい。また、センサ電極20の形状も直角三角形に限定されず、例えば頂角が鋭角あるいは鈍角の三角形であってもよい。
【0039】
本実施の形態では、半導体装置10の差し込み方向D1を、センサ電極20の対が配置されていない頂点同士を結ぶ対角線の方向としている。換言すれば、センサ電極20の対は、差し込み方向D1と略直交する対角線の両端のコーナ部に配置させる。そして、略直角三角形をなすセンサ電極20の各々は、その頂角が差し込み方向D1と略直交する対角線の両端の頂点近傍に位置するように、頂角を挟む2辺(第2の辺)が基板12の辺に沿うように(平行になるように)配置させる。従って、センサ電極20の直角を挟む2辺(第2の辺)は差し込み方向D1と鋭角をなし、センサ電極20の斜辺(第1の辺)同士は互いに対向するとともに基板12の4つの辺と45°の角度をなす。換言すると、本実施の形態に係る半導体装置10は、半導体装置10の少なくとも1辺が差し込み方向D1と鋭角をなすように筐体2に実装される。
【0040】
以上のように半導体装置10を配置させることにより、図2(c)に示すように、方向D2から押し寄せる土壌Sは、半導体装置10の頂点P1において紙面正面視45°の角度をもって左右(頂点P1を挟む2辺の方向)に振り分けられる。この土壌Sの振り分けによって土壌Sが半導体装置10に及ぼす圧力が分散され、半導体装置10自体の剥離(センサチップ剥離)が生じにくくなっている。また、土壌Sはセンサ電極20の辺に沿って進行するので、土壌Sがセンサ電極20に及ぼす圧力も緩和され、センサ電極剥離や保護層欠損の発生も抑制されている。
【0041】
また、本実施の形態に係る半導体装置10によれば、土壌Sへの差し込み方向D1と直交する方向、すなわち、測定対象である地面と水平な方向にセンサ電極20の対が配置されるので、地面に対して水平な分布を有する水分の正確な測定が可能となる。さらに、センサ電極の面積の拡大が可能となるため、センサ感度がより向上するという効果を得ることが可能となる。加えて、半導体基板12の頂点に配置させたことによってセンサ電極20とセンサ電極20との間の間隔も比較例に係る半導体装置110と比較して1.4(2の平方根)倍程度拡大することができ、チップサイズを変えることなく測定範囲を広げることができる。
【0042】
<変形例>
図3を参照して、本実施の形態に係る半導体装置の変形例について説明する。図3は、変形例に係る半導体装置10aの平面図を示している。
【0043】
半導体装置10aは、半導体装置10においてセンサ電極20をセンサ電極20aに変えたものである。センサ電極20が略直角三角形をなしていたのに対し、センサ電極20aは一定の幅の長方形がL字状に折り曲げられた形状をなしている。そして、L字状の折り曲げ点の頂点P2が、基板12の1つの頂点の位置近傍に配置されている。そのため、センサ電極20と比較して、センサ電極20a同士の距離が長くなる領域が大きくなるので、本変形例に係るセンサ電極20aはセンサ電極間の間隔を拡大したい場合に有利な構成である。センサ電極20aを有する半導体装置10aによっても、半導体装置10と同様の原理で、土壌中に埋設させて測定する際の半導体装置10aの破損を抑制することが可能となる。
【0044】
なお、上記各実施の形態では、センサ電極の形状としてセンサ電極20、20aを挙げ説明したが、これに限られず、図4に示すような形状としてもよい。すなわち、センサ電極20、20aの差し込み方向D1に沿う両端における角部を切り落とし、平坦部Fを設けるようにしてもよい。
【0045】
図4(a)は、センサ電極20において、差し込み方向D1に沿う両端に平坦部Fを設けた半導体装置10bを示している。また、図4(b)は、センサ電極20aにおいて、差し込み方向D1に沿う両端に平坦部Fを設けた半導体装置10cを示している。平坦部Fを設けることによって、センサ電極に電源を印加した場合の電界の集中がより緩和される。
【0046】
なお、1対のセンサ電極20は必ずしも同じ形状をなしている必要もなく、例えばセンサ電極のレイアウト等を勘案し、上記実施の形態、変形例で挙げた電極の形状を組み合わせ、別々の形状としてもよい。
【0047】
<センサ電極の構成例>
次に、図5および図6を参照して、本実施の形態に係るセンサ電極の構成例について説明する。本構成例は、センサ電極の表面積を拡大し、上述した電気二重層の問題に対応した形態である。
【0048】
まず、ECセンサ1を用いて電気伝導度を測定する場合の測定系の一例について説明する。ECセンサ1を用いた測定に際しては、図示しないパッドを介してセンサ電極20−1に交流信号源を接続し、図示しないパッドを介してセンサ電極20−2に電流計を接続する。むろん、この接続関係は逆であってもよい、すなわち、センサ電極20−2に交流信号源を接続し、センサ電極20−1に電流計を接続してもよい。電気伝導度の測定対象である液体は、センサ電極20−1および20−2に接触させて配置する。
【0049】
ECセンサ1を用いて分散系である測定対象の水分量を特定する方法は特に限定されない。一例として、電気信号の位相変化θを検出することにより水分量を特定する方法について説明する。上記測定系において、半導体装置10の出力は、水分量およびイオン濃度に比例し、イオン濃度が特定されれば、電気伝導度により土壌中の水分量を特定することができる。
【0050】
上記測定系における交流信号源、電流計は図示しない制御部の一部を構成しており、交流信号源、電流計は該制御部により制御される。測定が開始されると、制御部が交流信号源を制御し、センサ電極20−1に所定の周波数の交流信号(測定用信号)を入力信号として印加する。センサ電極20−1は、入力信号を測定対象に向けて出力する。センサ電極20−1から出力された交流信号は測定対象を経由した後、センサ電極20−2に入力される。制御部は、センサ電極20−1に入力された交流信号の位相と、センサ電極20−2から出力された交流信号の位相とを比較する。制御部は、以上の測定を交流信号源の周波数を掃引して行う。
【0051】
比較対象の具体例としては、両者の位相差(位相変化θ)を検出し比較することが挙げられる。位相変化θを検出した場合、検出した位相変化θによりイオン濃度を特定する。なお、位相変化θと、イオン濃度とは予め対応付けられている。さらに、特定されたイオン濃度を基準にして、測定された電気伝導度により土壌の水分量を特定することができる。
【0052】
上記の測定系において、例えば液体の電気伝導度を測定する場合には、センサ電極20−1と測定対象としての液体の間、およびセンサ電極20−2と液体との間に上述した電気二重層の形成が想定される。電気二重層が形成されると、絶縁体として機能する電荷の存在しない領域に起因して、センサ電極20−1と20−2との間に直列に容量が接続されたのと等価な状態になる。本来、液体の抵抗成分を測定し、電気伝導度を算出するのが上記測定系の目的であるので、この電気二重層に起因する容量は液体の電気伝導度の測定に際し測定周波数上の制約を与え、延いては測定精度に影響する。
【0053】
一方、センサ電極20−1と20−2とにより、両者を電極板とするコンデンサが形成されるが、この容量を上記の電気二重層に起因する容量も含めてCとすると、容量Cによるインピーダンスは1/Cに比例する。従って、1/Cを小さく、すなわちCを大きくすることによって、液体のインピーダンスの測定値における容量Cの影響が無視でき、抵抗成分が支配的となるようにすることができる。
【0054】
図5(a)は、上記実施の形態に係る半導体装置10のセンサ電極用配線16、センサ電極20、表面保護膜18の部分を模式的に示す、半導体装置10を上面から見た平面図である。図5(a)に示す電極構造30では、センサ電極用配線16、センサ電極20を積層しただけで、センサ電極用配線16はいわゆるベタ形状であり、特に容量を増加させる工夫はしていない。なお、本例では、一例として、センサ電極用配線16をAl、センサ電極20をPtとしている。
【0055】
図5(b)は、容量を増加させるための電極構成の一例を示している。本例は、電極板の表面積を広くして容量の増加を図る例である。本例では、図5(b)に示すように、製造工程においてセンサ電極用配線16に凹凸を形成する。センサ電極20はこのセンサ電極用配線16の凹凸に沿って形成されるので、図5(b)に示すように、センサ電極20の表面積を拡大することができる。
【0056】
本例において、凹凸を形成するためのセンサ電極用配線16の平面形状(パターン)に特に制限はない。図5(c)ないし図5(e)は、凹凸を形成するためのセンサ電極用配線16の平面パターンの一例を示している。なお、図5(c)ないし図5(e)では、表面保護膜18の図示を省略している。
【0057】
図5(c)は、センサ電極用配線16のパターンを梯子状パターンとした電極構造30aを示している。また、図5(d)は、センサ電極用配線16のパターンを網目状パターンとした電極構造30bを示している。さらに、図5(e)は、センサ電極用配線16のパターンをドットパターンとした電極構造30cを示している。センサ電極20の面積は、電極構造30a、30b、30cの順で大きくなっていく。特に、電極構造30cによれば、電極構造30と比較して、センサ電極20の表面積を1.5倍程度とすることができる。
【0058】
図6を参照して、本例の電極構造を用いた場合の効果について説明する。図6に示す曲線C2は、従来の電極構造(電極構造30)を用いて測定対象のインピーダンスを実測した例を示している。センサ電極間に測定対象を配置した測定系は、測定対象の抵抗成分と測定系に付随する容量成分とが直列に接続された等価回路でおおまかに表すことができる。そのため、曲線C2で表わされたインピーダンスの周波数特性は、直流に近い低周波数から周波数が大きくなるにつれて領域A2で示すように漸減し、ある周波数(図6において符号f2で示されている周波数。以下、「切替周波数」)から領域A1で示すようにほぼ一定となるような特性となる。電気伝導度を算出する場合に用いるインピーダンス(抵抗成分)は、曲線C2の領域A1のように、切替周波数f2以上の周波数領域で平坦になった部分のインピーダンスを用いる。曲線C2で示された従来の電極構造による実測例では、電気二重層の容量の影響によって、周波数f2が比較的高い周波数となっている。
【0059】
曲線C2に対し、電極の表面積を拡大した電極構造(電極構造30a、30b、30c)を用いた場合には、図6中の矢印E1で示すように、インピーダンス曲線が下方(インピーダンスの低い方向)にシフトし、例えば曲線C1のように変化する。このシフトに伴い、図6中の矢印E2で示すように、切替周波数が切替周波数f2から切替周波数f1(<f2)に変化する。この切替周波数の変化に伴い、抵抗成分を測定可能な領域A1も拡大する。
【0060】
例えば海水相当の塩分濃度の液体は電気伝導度が高い(インピーダンスが低い)ため、インピーダンスの周波数特性における切替周波数が高周波領域にシフトする。このため、低い電気伝導度の測定対象ほど測定が困難になるが、本例のように切替周波数を下げることによって、低い電気伝導度の測定対象であっても容易に測定が可能となる。
【0061】
インピーダンスの周波数特性における切替周波数が低域化することによって、以下のような効果もある。すなわち、電気伝導度の測定系に用いる上述の交流信号源の周波数を下げることができる。一般に周波数の高い信号源ほど価格が高く、また取り扱いも難しいが、測定周波数を下げることができればコスト削減、取り扱いの簡素化等の効果がある。
【符号の説明】
【0062】
1 ECセンサ
2 筐体
10、10a、10b、10c 半導体装置
12 基板
14 絶縁層
16 センサ電極用配線
18 表面保護膜
20、20−1、20−2、120 センサ電極
22 pHセンサ
24 温度センサ
26−1、26−2 バリアメタル
30、30a、30b、30c 電極構造
100 ECセンサ
102 筐体
110 半導体装置
112 基板
114 絶縁層
116 センサ電極用配線
118 表面保護膜
A1、A2 領域
D1、D2 方向
F 平坦部
G 腐食
P1、P2 頂点
S 土壌
SA 埋設領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9