【解決手段】発光装置の製造方法は、多層配線を含む電極構造17と、電極構造17に電気的に接続された半導体層と、半導体層の成長基板と、を上面側から順に備えたウェハを準備する準備工程と、ウェハを支持基板20dに接合する接合工程と、支持基板に接合されたウェハから成長基板を除去し、半導体層を露出させる露出工程と、ウェハの半導体層側の表面に溝を形成することで半導体層を複数の発光素子部14に分離する分離工程と、複数の発光素子部の表面に、溶剤に蛍光体粒子を含有させたスラリーを塗布して塗布膜を形成し、塗布膜中の溶剤を揮発させることで、表面に凹凸を有し発光素子部の表面を覆う蛍光体層40を形成する形成工程と、を含む。
前記蛍光体層を形成する形成工程は、パルススプレー法により、溶剤に透光性の樹脂と蛍光体の粒子とを含有させたスラリーのスプレーを噴射して塗布膜を形成し、前記塗布膜中の溶剤を揮発させることで前記蛍光体層を形成する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
前記蛍光体層を形成する形成工程は、溶剤にn−ヘプタンを用い、ジメチルシリコーン樹脂と蛍光体の粒子とを含有させたスラリーのスプレーを噴射する請求項5に記載の発光装置の製造方法。
支持基板と、前記支持基板の上に設けられた電極構造と、前記電極構造の上に配列されて前記電極構造に電気的に接続された複数の発光素子部と、を含む発光素子アレイチップと、
前記発光素子アレイチップの表面を直接被覆する蛍光体層と、を備え、
前記蛍光体層は表面に凹凸を有し、前記凹凸の凸部における前記蛍光体層の厚みは、前記凹凸の凹部における前記蛍光体層の厚みの2倍以上である発光装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本実施形態の技術思想を具現化するための発光装置を例示するものであって、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定しない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。
【0011】
また、実施形態に係る発光装置において、「上」、「下」、「左」および「右」等は、状況に応じて入れ替わるものである。本明細書において、「上」、「下」等は、説明のために参照する図面において構成要素間の相対的な位置を示すものであって、特に断らない限り絶対的な位置を示すことを意図したものではない。
【0012】
(第1実施形態)
<発光装置の構成>
図1〜
図5を参照して第1実施形態に係る発光装置100の構成を説明する。なお、
図4は、
図3AのIV−IV線の断面図であるが、ここでは図示の便宜上、断面視で3個の発光素子部14が設けられている部分を模式的に示している。
発光装置100は、発光素子アレイチップ18と、発光素子アレイチップ18の表面を直接被覆する蛍光体層40と、を備えている。本実施形態では、発光素子アレイチップ18は、支持基板20dと、支持基板20dの上に設けられた電極構造17と、電極構造17の上に配列されて電極構造17に電気的に接続された複数の発光素子部14と、を有する。また、蛍光体層40は、表面に凹凸を有している。この凹凸の凸部における蛍光体層40の厚みは、凹凸の凹部における蛍光体層40の厚みの2倍以上である。以下、各構成について順次説明する。
【0013】
(基体)
本実施形態では、発光素子アレイチップ18は、2次実装基板としての基体30に実装されている。基体30としては、ガラスエポキシ、樹脂、セラミックス等の絶縁性部材で構成される基材が挙げられる。本実施形態では、基体30は、平面視矩形状に形成されている。
【0014】
基体30は、外部電源が接続される端子として、電極端子部31,32,33を備える。
電極端子部31は、配線Wを介して発光素子アレイチップ18の複数(例えば10本)の第1配線17nに接続される。
電極端子部32,33は、配線Wを介して発光素子アレイチップ18の複数(例えば10本ずつ)の第2配線17pにそれぞれ接続される。
【0015】
(発光素子アレイチップ)
<支持基板>
支持基板20dは、複数の発光素子部14を支持するための基板である。複数の発光素子部14は、電極構造17、後述する接合層60などを介して支持基板20dに貼り合わせられている。
支持基板20dの具体例としては、例えば、Si、GaAsなどからなる半導体、Cu,Ge,Niなどの金属、あるいは、Cu−Wなどの複合材料からなる導電性部材を挙げることができる。
【0016】
<発光素子部>
本実施形態では、発光素子アレイチップ18は、支持基板20d上に複数、例えば200個の発光素子部14を備えている。
発光素子部14としては、発光ダイオード(LED)を用いるのが好ましい。発光ダイオードは、任意の波長のものを選択することができる。例えば、青色、緑色の発光ダイオードとしては、ZnSeや窒化物系半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)、GaPを用いたものを用いることができる。
【0017】
発光素子部14は、支持基板20d側から順に第2半導体層、発光層および第1半導体層を備える。
図3Bに示すように、発光素子部14は、第1半導体層に電気的に接続された第1電極16nと、第2半導体層に電気的に接続された第2電極16pと、を備えている。第1電極16nと第2電極16pとは、発光素子部14の同一面側に配置されている。
【0018】
第1電極16nは、第1半導体層に対して電流を供給するための電極である。第1電極16nとしては、例えば、Ti、Al、およびAl合金から選択された少なくとも一種を用いて形成することが好ましい。第2電極16pは、第2半導体層に対して電流を供給するための電極である。第2電極16pは、第2半導体層に電流を均一に拡散させるための全面電極および反射膜としても機能するものである。第2電極16pは、例えばAgまたはAg合金を含む金属膜により形成することができる。
【0019】
発光素子部14における半導体層12の厚みは薄いことが好ましい。発光素子部14における半導体層12の厚みをより薄くすることで、発光素子部14の側面から横方向への光の伝搬が抑制される。このため、複数の発光素子部14が密集した状態であっても、発光部(つまり点灯する発光素子部)と非発光部(つまり消灯する発光素子部)との輝度差をより明確とすることができる。具体的には、発光素子部14における半導体層12の厚みは1〜10μm、発光素子部14間の間隔は3〜25μmである。
【0020】
<電極構造>
電極構造17は、
図2に示すように、複数の第1配線17nと、複数の第2配線17pと、配線間絶縁膜17bと、を備えている。電極構造17は、第1配線17nと第2配線17pが配線間絶縁膜17bを介して縦方向(半導体層の積層方向)に積層された、いわゆる多層配線構造を含む。第1配線17nは、複数の発光素子部14の第1電極16nに電気的に接続されている。第2配線17pは、複数の発光素子部14の第2電極16pに電気的に接続されている。第1配線17nや第2配線17pは、例えばAuにより形成することができる。
【0021】
図2および
図4に示すように、配線間絶縁膜17bは、第1配線17nと第2配線17pとの間や、発光素子部14の第1電極16n及び第2電極16pと第1配線17n及び第2配線17pとの間等を絶縁するために設けられている。配線間絶縁膜17bは、例えばSiO
2,ZrO
2,SiN,SiON,BN,SiC,SiOC,AlN,AlGaNなどで構成することができる。
【0022】
発光素子アレイチップ18は、パッシブマトリックス方式で駆動される。第1配線17nと第2配線17pは平面視で互いに直交して縦横に配列されている。第1配線17nと第2配線17pとが交差する箇所と、マトリクス状に配置される複数の発光素子部14とが平面視でオーバーラップするように配置される。これにより、第1配線17nと第2配線17pとの交差する箇所に配列された発光素子部14を個別に点灯させることができる。発光素子部14の一辺のサイズは、例えば150μmであり、好ましくは100μm以下である。複数の発光素子部14の第1電極16nおよび第2電極16pは、電極構造17の配線間絶縁膜17bに適宜設けられた孔を介して、第1配線17nおよび第2配線17pと、それぞれ電気的に接続されている。
【0023】
<接合層>
本実施形態では、電極構造17と支持基板20dとの間に接合層60が設けられている。接合層60を設けることにより、電極構造17側の表面が平坦化されて、支持基板20dへの貼り合わせが容易となる。接合層60は、例えばSiO
2等の絶縁膜やAl等の金属膜で形成される。
【0024】
(蛍光体層)
図4および
図5に示すように、発光装置100は、発光素子アレイチップ18の光取り出し面である上面を被覆する蛍光体層40を備える。蛍光体層40は、例えば、透光性の樹脂と蛍光体の粒子とを含有している。
透光性の樹脂の屈折率は例えば1.30〜1.50である。これにより、蛍光体粒子と透光性の樹脂との界面における光散乱が大きくなり、また空気との屈折率差が小さく光取り出しも良いため好ましい。そのような樹脂としては、例えば、フェニルシリコーン樹脂やジメチルシリコーン樹脂等を挙げることができる。
【0025】
蛍光体としては、この分野で用いられる蛍光体を適宜選択することができる。例えば、青色発光素子または紫外線発光素子で励起可能な蛍光体としては、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG:Ce)、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(LAG:Ce)、ユウロピウムおよび/またはクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム系蛍光体(例えばCaO−Al
2O
3−SiO
2:Eu)、ユウロピウムで賦活されたシリケート系蛍光体((Sr,Ba)
2SiO
4:Eu)、β サイアロン蛍光体、CASN系蛍光体(CaAlSiN
3:Eu)、SCASN系蛍光体((Sr,Ca)AlSiN
3:Eu)等の窒化物系蛍光体、KSF系蛍光体(K
2SiF
6:Mn)、硫化物系蛍光体、量子ドット蛍光体等が挙げられる。これらの蛍光体と、青色発光素子または紫外線発光素子と組み合わせることにより、所望の発光色の発光装置(例えば白色系の発光装置)を製造することができる。白色に発光可能な発光装置100とする場合、蛍光体層40に含有される蛍光体の種類、濃度によって白色となるよう調整される。樹脂を含む溶媒に添加される蛍光体の濃度は、例えば、5〜50質量%程度である。
【0026】
蛍光体層40は薄層であることが好ましく、蛍光体層40の平均的な厚みは例えば50μm以下であることが好ましい。このように薄い蛍光体層40とすることで、面内方向に対し、物理的に経路が狭くなり、また散乱が大きくなるために光は伝播しにくくなる。これにより、発光素子部14を個別に点灯させた際に、点灯している発光素子部14から隣の消灯している発光素子部14への光の伝搬を抑制して、輝度を高めることができる。蛍光体層40が含有する蛍光体粒子は、平均粒径が蛍光体層40の平均的な厚みよりも小さいことが好ましく、例えば1〜30μmである。蛍光体粒子の平均粒径は、フィッシャー・サブ・シーブ・サイザーズ・ナンバー(Fisher Sub Sieve Sizer's No.)と呼ばれる数値であり、空気透過法を用いて測定される。また、蛍光体粒子の平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影された断面観察像から求めることもできる。
このように、薄い蛍光体層40が複数の発光素子部14の上面(つまり第1半導体層側の表面)を直接被覆することにより、蛍光体層40を仕切る遮光部を設けなくても、蛍光体層40内における横方向への光の伝搬を抑制することができる。つまり、遮光部により輝度が低下することがないため、より高輝度な発光装置とすることができる。
【0027】
蛍光体層40は、表面が平坦でもよいが、
図5に示すように、表面に凹凸を有していることが好ましい。発光装置100の発光面である蛍光体層40の表面を凹凸差が大きい形状とすることで、蛍光体層40の屈折率(つまり透光性の樹脂の屈折率)と空気との屈折率差により横方向への光の伝播をさらに抑えることができる。これは、樹脂の屈折率が空気の屈折率よりも大きく、凹凸の凹の部分に存在する空気に入射する光の散乱が大きくなるからである。また、凹の部分においては、面内方向に対し物理的により経路が狭くなり、面内方向への光がより伝搬しにくくなる。つまり、蛍光体層40の表面に凹凸が存在することで、面内方向への光の伝搬がより抑えられた蛍光体層とすることができる。ここで、凹凸が大きい形状とは、凹凸の凹部における蛍光体層40の厚み以上の厚みの差を有する凹凸のことをいう。具体的には、任意の領域において、凹凸の凸部における蛍光体層40の厚みが凹凸の凹部における蛍光体層40の厚みの2倍以上である凹凸表面のことをいう。ここで、任意の領域としては、例えば発光素子アレイチップ18を構成する少なくとも1つの発光素子部14内の局所領域を挙げることができる。また、凹凸の凸部における蛍光体層40の厚みとは、例えば
図5に示す局所的な蛍光体層40の高さH
Tのことをいう。さらに、凹凸の凹部における蛍光体層40の厚みとは、同様に
図5に示す局所的な蛍光体層40の高さH
Bのことをいう。
なお、蛍光体層40の厚みは、例えば蛍光体層40の任意の領域において顕微鏡による断面観察を行い、得られた画像から蛍光体層40の厚みを測定することにより求めることができる。
また、蛍光体層40が表面に凹凸を有する場合、蛍光体層40の平均的な厚みは50μm以下であることが好ましく、凸部における蛍光体層40の厚みが50μm以下であることがより好ましい。蛍光体層40の平均的な厚みは、例えば少なくとも1つの発光素子部14を含む局所領域の断面観察画像における蛍光体層40の厚みを測定することにより求めることができる。
【0028】
[発光装置の製造方法]
次に、本実施形態に係る発光装置の製造方法について
図6〜
図10Bを参照して説明する。本実施形態の発光装置100の製造方法は、ウェハ準備工程と、ウェハ接合工程と、半導体層露出工程と、半導体層分離工程と、蛍光体層形成工程と、を含み、この順に行う。また、本実施形態では、半導体層分離工程の後、かつ、蛍光体層形成工程の前に、パッド電極形成工程と、チップ個片化工程と、チップ実装工程とを行っている。なお、各部材の材質や配置等については、前記した発光装置100の説明で述べた通りであるので、ここでは適宜、説明を省略する。
【0029】
(ウェハ準備工程)
ウェハ準備工程は、多層配線を含む電極構造17と、該電極構造17に電気的に接続された半導体層12と、半導体層12の成長基板11と、を上面側から順に備えたウェハ10を準備する工程である。本実施形態では、
図6に示すように、第1配線17nと第2配線17pとが上下方向に積層された多層配線を含む電極構造17を形成したウェハ10を準備する。なお、ここでは図示の便宜上、
図4の断面図に相当する部分だけを図示している。
【0030】
ウェハ10は、サファイアなどからなる成長基板11と、半導体層12と、電極構造17と、接合層60とを備えている。電極構造17の多層配線は、当該分野で公知の方法を利用して形成することができる。例えば、第1配線17nおよび第2配線17pは、蒸着、スパッタリング、電解めっき、無電解めっき等で形成することができる。所望の電極形状への加工は、フォトリソグラフィおよび印刷等により形成されたマスクを用いて、エッチング、リフトオフ等により形成することができる。
【0031】
半導体層12は、
図7に示すように、第1半導体層12n、発光層12aおよび第2半導体層12pを成長基板11側から順に備えている。
図7は、ウェハの構造の一例であって、
図3BのVII−VII線に対応する断面図である。ここで、
図7の左から右に向かう方向は、
図3BのVII−VII線上の位置B1から一点鎖線で示すような経路を介して位置B2に向かう方向に一致している。
図7に示すように、ウェハ10は、半導体層12の、成長基板11と反対側の面に、第1半導体層12nに電気的に接続された第1電極16nと、第2半導体層12pに電気的に接続された第2電極16pと、を備えている。また、第1電極16nは第1配線17nに、第2電極16pは第2配線17pに、それぞれ電気的に接続されている。
【0032】
また、
図7に示す例では、配線間絶縁膜17bは、半導体層12の側から順に、絶縁膜17b1と、絶縁膜17b2と、絶縁膜17b3と、絶縁膜17b4と、を備えている。
絶縁膜17b1は、第2電極16p上に開口を有し、第2半導体層12pの上面を覆うように設けられている。
絶縁膜17b2は、第1半導体層12n上に開口を有し、絶縁膜17b1の上面を覆うように設けられている。
絶縁膜17b3は、第1配線17nと絶縁膜17b2を覆うように設けられている。
絶縁膜17b4は、第2配線17pと絶縁膜17b3を覆うように設けられている。この絶縁膜17b4は、後に素子分離される溝部の底にあたる部分にエッチストップ層として設けられている。各絶縁膜は、例えばSiNやSiO
2により形成される。
【0033】
(ウェハ接合工程)
ウェハ接合工程は、ウェハ10を支持基板20に接合する工程である。このとき、多層配線上には接合層60やその他の金属層があってもよい。また、表面活性化接合などの方法で直接接合されていてもよい。このウェハ接合工程では、
図8Aに示すように、接合層60と支持基板20とが対向するように、ウェハ10を支持基板20に接合する。なお、支持基板20は、本工程までに、予め準備しておくものとする。
【0034】
(半導体層露出工程)
半導体層露出工程は、支持基板20に接合されたウェハ10から成長基板11を除去し、半導体層12を露出させる工程である。なお、
図8Bは、成長基板11を剥離した後、ウェハ10を裏返した状態を示している。この半導体層露出工程は、例えばレーザリフトオフ法により、サファイアなどからなる成長基板11側からレーザー光を照射して、成長基板11と半導体層12(より詳細には第1半導体層12n)との界面を分解し、成長基板11を剥離する。なお、成長基板11の剥離は、例えばケミカルリフトオフ法などの他の方法で剥離するようにしてもよい。
【0035】
(半導体層分離工程)
半導体層分離工程は、ウェハ10の、半導体層12の成長基板11が除去された側の表面に溝13を形成することで半導体層12を複数の発光素子部14に分離する工程である。
図8Cに示すように、上面側(つまり第1半導体層側)から、発光素子部14間の境界となる領域に例えばレーザー光を照射して、半導体層12を貫通し、電極構造17まで達する溝13を形成する。平面視において、溝13は、第1配線17nと第2配線17pに平行に縦横に形成されている。
【0036】
このとき、半導体層12の厚みが例えば10μm以下程度であれば、半導体層12を一度に削って溝13を形成してもよいが、より深く削るような場合、溝を細く形成することが難しくなる。そのため、予め、研磨やエッチバック法などで半導体層12の厚みを薄くしておいてもよい。例えば全面をレーザー光で5μmほど削った後、レジストによって溝パターンを形成し残り5μmほどをエッチングするなどしてもよい。
【0037】
その後、例えば、エッチング液としてTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、KOH水溶液、エチレンジアミン・ピロカテコールなど用いたウェットエッチング、あるいはドライエッチングにより、
図9に示すように、発光素子部14における第1半導体層12nの上面を粗面化して、微細な凹凸形状を形成してもよい。
【0038】
図9は、発光素子部14の構造の一例であって、
図3AのIX−IX線に対応する断面図である。ここで、
図9の左から右に向かう方向は、
図3AのIX−IX線上の位置A1から一点鎖線で示すような経路を介して位置A2に向かう方向に一致している。
【0039】
(パッド電極形成工程)
パッド電極形成工程は、ウェハ10に形成された溝13の底面であって電極構造17の表面の一部に、第1配線17nまたは第2配線17pに電気的に接続された複数のパッド電極19を形成する工程である。このパッド電極形成工程では、例えば、ドライエッチングなどによりパッド電極19を形成する領域を被覆する配線間絶縁膜17bの一部を除去することで、
図9に示すように、第1配線17nの一部と第2配線17pの一部とを露出させる。その後、スパッタリングなどにより所定の金属材料など用いて、
図10Aに示すように、電極構造17の所定の領域にパッド電極19を形成する。
【0040】
(チップ個片化工程)
チップ個片化工程は、支持基板20に接合されたウェハ10を、複数の発光素子部14および複数のパッド電極19を含む領域毎に個片化することで複数の発光素子アレイチップ18を形成する工程である。この個片化は、例えばダイシング法、スクライブ法、レーザスクライブ法などにより行うことができる。
【0041】
(チップ実装工程)
チップ実装工程では、個片化された発光素子アレイチップ18をパッケージや基体の上に実装する。具体的には、
図10Bに示すように、基体30の上に発光素子アレイチップ18を実装し、発光素子アレイチップ18に形成されている複数のパッド電極19を、電極端子部31や電極端子部32,33(
図1参照)にワイヤボンディングする。なお、チップ個片化前に支持基板20の裏面側に接着層を形成しておいてもよい。
【0042】
(蛍光体層形成工程)
蛍光体層形成工程は、複数の発光素子部14の表面に、溶剤に蛍光体粒子を含有させたスラリーを塗布することにより、複数の発光素子部14における半導体層12の表面を一括して覆う蛍光体層40を形成する工程である。蛍光体層40は薄層であることが好ましく、蛍光体層40の平均的な厚みは例えば50μm以下であることが好ましい。このように、蛍光体層40を薄膜に形成することにより、蛍光体層40を仕切る遮光部を設けなくても、蛍光体層40内における横方向への光の伝搬を抑制することができる。つまり、蛍光体層形成工程において、遮光部の位置合わせが必要ないため、より高輝度な発光装置を簡易に形成することができる。
【0043】
蛍光体層形成工程では、溶剤に透光性の樹脂と蛍光体の粒子とを含有させたスラリーを調整し、スプレー塗布法、スピンコート法、スクリーン印刷法などの塗布法により、発光素子アレイチップ18上に塗布膜を形成する。なかでも、精度の高い膜厚で、かつ、高速に塗布膜を形成できるため、スプレー塗布法を用いることが好ましい。また、スプレーをパルス状に、すなわち間欠的に噴射させる塗布法であるパルススプレー法が、より高精度な膜厚で塗布膜を形成できるため、さらに好ましい。パルススプレー法では、噴射量を少なくすることができるため、1回のスプレー塗布による塗布量を低減して塗布膜を薄く形成することができる。その後、塗布膜中の溶剤を揮発させることにより、
図4に示すように表面に凹凸形状を有する蛍光体層40が形成される。
【0044】
蛍光体層40を形成する透光性の樹脂としては、例えば、フェニルシリコーン樹脂やジメチルシリコーン樹脂等を挙げることができる。溶剤の種類は、樹脂の種類に応じて適宜選択される。
【0045】
また、発光装置のコントラストを向上させるために、蛍光体層は、薄く高濃度な蛍光体層とすることが好ましい。ここで、高濃度とは、蛍光体と樹脂との重量比で例えば1:1〜2:1であることを意味する。なお、スラリーには、蛍光体と樹脂以外にも溶媒等が含まれている。
【0046】
また、表面に凹凸を有する蛍光体層40は、例えば以下のスプレー塗布条件によって形成することができる。
一例として、スラリーが、重量比で、蛍光体の粒子をa、バインダーとしての樹脂をb、溶剤をc、アエロジルをd、の各割合で配合したものであるものとする。なお、アエロジルは、スラリーにおいて蛍光体の粒子が沈降することを防止してスラリーの安定性を確保するための添加物である。
この場合、a:b:c:d=15:10:25:1として配合することができる。
例えば、YAG蛍光体とフェニルシリコーン樹脂を用いる場合、溶剤として炭酸ジメチルを用いて上記配合とすると、略平坦な20μmほどの蛍光体層を形成することができる。
【0047】
また、YAG蛍光体とジメチルシリコーン樹脂を用いる場合、溶剤としてn−ヘプタンを用いて上記配合とすると、蛍光体層40の表面に、高さH
Bが約10μmの部分と、高さH
Tが約40μmの部分を有する凹凸を形成することができる。
このとき、蛍光体の粒子の濃度を下げ、例えばa:b:c:d=10:10:25:1として配合すると、蛍光体層40の表面において、高さH
Bと高さH
Tとの差を小さくすることができる。
一方、蛍光体の粒子の濃度を上げ、例えばa:b:c:d=20:10:25:1として配合すると、蛍光体層40の表面において、高さH
Bと高さH
Tとの差を大きくすることができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る発光装置について、
図11Aおよび
図11Bを参照して説明する。本実施形態に係る発光装置は、
図11Aに示すように、発光素子アレイチップ18Bとして、支持基板21上に複数の発光素子部14を備えると共に、
図11Bに示す駆動回路50を有している。
【0049】
この例では、発光素子アレイチップ18Bは、3行×3列の2次元マトリクス状に配置された発光素子部14であるLEDを備えている。
第1行目の各LED(発光素子部14)は、アノード端子(第2電極16p)が第2配線17pにそれぞれ接続されており、この第2配線17pはスイッチTr1に接続されている。
第2行目の各LED(発光素子部14)は、アノード端子(第2電極16p)が第2配線17pにそれぞれ接続されており、この第2配線17pはスイッチTr2に接続されている。
第3行目の各LED(発光素子部14)は、アノード端子(第2電極16p)が第2配線17pにそれぞれ接続されており、この第2配線17pはスイッチTr3に接続されている。
【0050】
スイッチTr1〜Tr3は、第2配線17pと電圧源Vを接続するためのスイッチで、制御回路51によりONまたはOFFされる。スイッチTr1〜Tr3としては、例えばFET(Field Effect Transistor)等の半導体スイッチング素子が利用できる。
【0051】
第1列目の各LED(発光素子部14)は、カソード端子(第1電極16n)が第1配線17nにそれぞれ接続されており、この第1配線17nはスイッチTr4に接続されている。
第2列目の各LED(発光素子部14)は、カソード端子(第1電極16n)が第1配線17nにそれぞれ接続されており、この第1配線17nはスイッチTr5に接続されている。
第3列目の各LED(発光素子部14)は、カソード端子(第1電極16n)が第1配線17nにそれぞれ接続されており、この第1配線17nはスイッチTr6に接続されている。
【0052】
スイッチTr4〜Tr6は、第1配線17nとGNDを接続するためのスイッチで、制御回路51によりONまたはOFFされる。スイッチTr4〜Tr6としては、例えばバイポーラトランジスタが利用できる。
【0053】
本実施形態においても、発光素子部14における半導体層12が直接的に薄い蛍光体層40で被覆されていることで、発光装置において点灯している発光素子部14から隣の消灯している発光素子部14の側へ漏れる光を抑制しつつ輝度を高めることができる。また、このように輝度を高めた発光装置を簡易に製造することができる。
また、本実施形態に係る発光装置は、駆動回路50によって、複数の発光素子部14を個別に駆動することができるので、ADB(配光可変ヘッドランプ)等へ好適に利用できる。
【実施例】
【0054】
本開示に係る発光装置の性能を確かめるために、以下の実験を行った。
まず、第1実施形態に係る発光装置100と同様の発光装置(以下、実施例という)を以下の条件で製造した。
【0055】
(発光装置の形状および材料)
発光素子アレイチップ18の1つの発光素子部14(一発光区画)の一辺のサイズ:150μm
発光素子部14の厚み:5μm
発光素子部14の個数:200個
発光素子部14:青色LED(GaN系半導体発光素子)
蛍光体層の厚み:10〜40μm
【0056】
(スラリーの成分)
スラリーは、重量比で、蛍光体の粒子をa、バインダーとしての樹脂をb、溶剤をc、アエロジルをd、の各割合で、以下のように配合した。
a:b:c:d=15:10:25:1
スプレーに用いたスラリー
透光性の樹脂:ジメチルシリコーン樹脂(屈折率1.41)
蛍光体:YAG系蛍光体
溶剤:n−ヘプタン
【0057】
<実験>
実施例と比較するために、蛍光体層40を形成する前の発光装置(以下、比較例1という)を製造した。また、比較例1の発光装置の上面に、蛍光体層の代わりに厚みが約70μmのYAG蛍光体板を接着した発光装置(以下、比較例2という)を製造した。
各発光装置について、発光素子アレイチップ18の1発光素子部を点灯させて残りの発光素子部を消灯させた状態で輝度分布を測定した。
【0058】
測定結果を
図12に示す。
図12のグラフにおいて、横軸は、点灯させた発光素子部の中心からの距離で表した位置[mm]を示している。縦軸は、点灯させた発光素子部の最大輝度を100としたときの相対輝度[%]を示している。矢印の範囲W1は、点灯する発光素子部14のサイズを表している。一点鎖線は比較例1、破線は比較例2、実線は実施例を示す。
【0059】
比較例1は、輝度分布が最も急峻になることを確認した。なお、比較例1で点灯させた発光素子部の中心の輝度が落ち込んでいるのは、第1電極を配置するために発光層の一部を除去しているためである。
一方、比較例2は、YAG蛍光体板の影響で光が横方向に拡散するので、輝度分布が広がった分布を呈している。
【0060】
これに対して、実施例は、
図12に矢印の範囲W2で示すように、隣接2セル目で、最大輝度の1/200の輝度値を達成できた。つまり、実施例では、点灯させた発光素子部にとって隣の隣の発光素子部において、充分暗くなっていることを確認できた。これは、実施例は、薄い蛍光体層40によって、光が散乱し、横方向への伝播を抑制した結果であると考えられる。以上、実施例は、コントラストについての性能が比較例2に比べて大きく改善でき、比較例1に近い結果を実現できることを確認した。