【課題】酸化ケイ素及び窒化ケイ素層又は膜から選択される、複数のケイ素含有層を含む装置が本明細書に開示されている。また、例えば、3D垂直NANDフラッシュメモリースタックとして用いられる、装置を形成する方法が開示されている。
【解決手段】1つの具体的な態様又は装置において、酸化ケイ素層は、わずかな圧縮応力及び良好な熱安定性を有する。装置のこの態様又は他の態様において、窒化ケイ素層は、約800℃までの熱処理後に、わずかな引張応力及び300MPa未満の応力変化を有する。装置のこの態様又は他の態様において、窒化ケイ素層は、熱H
該窒素含有源が、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、窒素、窒素プラズマ、窒素/水素、窒素/ヘリウム、窒素/アルゴンプラズマ、アンモニアプラズマ、アンモニア/ヘリウムプラズマ、アンモニア/アルゴンプラズマ、アンモニア/窒素プラズマ、NF3、NF3プラズマ、及びこれらの混合物、からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
該酸化ケイ素層が、800℃までの熱処理後に、実質的にゼロの収縮又は約3%以下若しくは2%以下若しくは1%以下の収縮及び約50MPaの応力変化を有する、請求項1に記載の装置。
積層されたケイ素含有膜の数が、酸化ケイ素及び窒化ケイ素を交互に含み、酸化ケイ素層の層の数が約48〜約128層の範囲であり、窒化ケイ素層の数が約48〜約128層であり;各酸化ケイ素層が同一の厚さを有し各窒化ケイ素層が同一の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
該窒素含有源が、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、窒素、窒素プラズマ、窒素/水素、窒素/ヘリウム、窒素/アルゴンプラズマ、アンモニアプラズマ、アンモニア/ヘリウムプラズマ、アンモニア/アルゴンプラズマ、アンモニア/窒素プラズマ、NF3、NF3プラズマ、及びこれらの混合物、からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
該酸化ケイ素層が、800℃までの熱処理後に、実質的にゼロの収縮又は約3%以下若しくは2%以下若しくは1%以下の収縮及び約50MPaの応力変化を有する、請求項16に記載の装置。
積層されたケイ素含有膜の数が、酸化ケイ素及び窒化ケイ素を交互に含み、酸化ケイ素層の層の数が約48〜約128層の範囲であり、窒化ケイ素層の数が約48〜約128層であり;各酸化ケイ素層が同一の厚さを有し各窒化ケイ素層が同一の厚さを有する、請求項16に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
例えば、3D VNANDフラッシュメモリーデバイスなどの、複数の酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素層又は膜を含む、装置又は多層構造が、電子産業における多くの異なる用途に用いられている。一つの具体的な実施形態において、これらの多層構造は、(i)以下の特徴:高密度(例えば、X線反射率により測定した場合に2.3g/cm
3より大きい密度)、応力ツールにより測定した場合に50MPa〜300MPaの引張応力、約700℃以上の1又は複数の温度で実施される熱処理に供した後の3%未満の膜収縮及び/又は300MPa未満の応力ドリフト、約50nm/min以上の堆積速度、及びこれらの組み合わせ、のうち少なくとも1又は複数を示す、ケイ素窒素層又は膜;及び(ii)以下の特徴:約1.9グラム毎立方センチメートル(g/cm
3又はg/cc)以上の密度、4x10
22原子/cm
3以下の水素含量、−100MPa以下の応力、4.5以下の比誘電率、8MV/cm以上で10
-9A/cm
2以下の漏洩電流、8MV/cm以上の膜絶縁破壊電界、及びこれらの組み合わせ、のうち少なくとも1又は複数を示す、酸化ケイ素層又は膜、を含む。この実施形態又は他の実施形態において、本明細書に記載の装置における窒化ケイ素膜は、約700℃〜約1,200℃又は約700℃〜約1000℃の範囲の1又は複数の温度での高温熱処理又はアニーリングに供した後、以下の特性のうち1又は複数において、実質的に3%以下、2%以下、又は1%以下の変化を示す。一つの具体的な実施形態において、酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜は、単一の前駆体により形成される。この実施形態又は他の実施形態において、窒化ケイ素膜は熱H
3PO
4において酸化ケイ素膜より高いウェットエッチング選択性を示す。すなわち、窒化ケイ素膜は、約120〜約200℃、又は約140〜約170℃、又は約160〜約165℃の範囲の温度で、熱H
3PO
4において、ケイ素及び酸素含有膜よりもはるかに速くエッチングする。
【0023】
シラン(SiH
4)などの従来の前駆体を用いる方法のほかに、単一の前駆体を用いて、酸化ケイ素層と窒化ケイ素層の交互二重層構造を含む多層膜を堆積する方法は、本技術分野においてこれまで存在しなかった。酸化ケイ素層と窒化ケイ素層を有する構造を堆積するために単一の前駆体を用いる方法を採用することにおける挑戦のうちの1つは、高品質のケイ素及び酸素含有膜が、わずかに圧縮応力(例えば、約−300〜約−100メガパスカル(MPa)の範囲の)を有する傾向があることである。多層構造の応力の蓄積及びスタックのひび割れを防止するために、窒化ケイ素膜は、酸化ケイ素層の圧縮応力を相殺する相補的な引張応力(例えば約50〜300MPaの範囲の)を有するべきである。しかしながら、大半のオルガノケイ素前駆体及びシラン系窒化ケイ素膜について、結果として得られる膜品質は低下し、以下の問題のうち1又は複数を示す可能性がある:低密度(例えば、2.2g/cm
3以下)、熱アニーリング後の非常に大きな収縮(例えば、5%より大きい、又は10%より大きい)、700MPa〜1GPaまでの応力増加、及びこれらの組み合わせ。少なくとも1つの酸化ケイ素層及び少なくとも1つの窒化ケイ素層を含む多層構造が3D VNANDデバイスに用いられる実施形態について、製造プロセスは典型的には、約700℃以上の温度で実施される1又は複数のエピ処理工程を含む。これらの実施形態について、少なくとも1つのケイ素及び窒化物含有膜は、約700℃〜約1,000℃の範囲の1又は複数の温度での熱処理に耐えるべきである。この温度範囲は、適切な前駆体の数を大幅に限定する。
【0024】
1又は複数のケイ素含有膜又は層を形成するのに用いられる方法は、本明細書中で堆積プロセスと呼ばれる。本明細書に開示の方法に適切な堆積プロセスの例には、化学気相堆積(CVD)、周期的CVD(CCVD)、MOCVD(有機金属CVD)、熱化学気相堆積、プラズマ化学気相堆積(「PECVD」)、高密度PECVD、光子アシスト型CVD、プラズマ−光子アシスト型(「PPECVD」)、クライオジェニック化学気相堆積、化学アシスト型気相堆積、熱フィラメント化学気相堆積、液体ポリマー前駆体のCVD、超臨界流体からの堆積、及び低エネルギーCVD(LECVD)、が含まれるが、これらに限定されない。ある実施形態において、膜は、原子層堆積(ALD)、プラズマALD(PEALD)又はプラズマ周期的CVD(PECCVD)プロセスを介して堆積される。本明細書において用いられる、用語「化学気相堆積プロセス」は、基板が1又は複数の揮発性の前駆体に暴露され、前駆体が基板表面の上で反応及び/又は分解して所望の堆積を生じる、任意のプロセスを指す。本明細書において用いられる、用語「原子層堆積プロセス」は、材料の膜を変化している組成の基板の上へ堆積する、自己限定的な(例えば、各反応サイクルにおいて堆積される膜材料の量が一定である)、連続的な界面化学法を指す。本明細書で用いられる前駆体、試薬及び源は、時折「ガス状」として説明されることがあるが、前駆体はまた、不活性ガスと共に又は不活性ガスなしに、直接気化、バブリング又は昇華を介して反応器内へ輸送される、液体又は固体であることが可能である、ということが理解される。いくつかの場合には、気化された前駆体はプラズマ発生器を通り抜けることができる。一つの実施形態において、1又は複数の膜は、ALDプロセスを用いて堆積される。別の実施形態において、1又は複数の膜は、CCVDプロセスを用いて堆積される。さらなる実施形態において、1又は複数の膜は、熱CVDプロセスを用いて堆積される。本明細書において用いられる用語「反応器」には、限定はされないが、反応チャンバー又は堆積チャンバーが含まれる。
【0025】
酸化ケイ素及び窒化ケイ素層などのケイ素含有層を含む構造は、式I〜IIIを有する化合物から選択される少なくとも1つのケイ素前駆体を用いて堆積される
【化3】
(式中、Rはそれぞれ独立して、水素、直鎖又は分岐C
2〜C
10アルキル基;直鎖又は分岐C
2〜C
12アルケニル基;直鎖又は分岐C
2〜C
12アルキニル基;C
4〜C
10環状アルキル基;及びC
6〜C
10アリール基から選択され;R
1はそれぞれ独立して、直鎖又は分岐C
1〜C
10アルキル基;直鎖又は分岐C
3〜C
12アルケニル基;直鎖又は分岐C
3〜C
12アルキニル基;C
4〜C
10環状アルキル基;及びC
6〜C
10アリール基から選択される)。式I〜IIIを有する典型的なケイ素含有前駆体には、以下の化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【化4】
【0026】
ある実施形態において、本明細書に開示の方法は、反応器への導入の前及び/又は導入の間に前駆体を分離する、ALD又はCCVD法を用いることにより、前駆体の予備反応を回避する。これに関連して、ALD又はCCVDプロセスなどの堆積技術は、膜を堆積するのに用いられる。一つの実施形態において、膜は、ALDプロセスを介して、基板表面を選択的に1又は複数のケイ素含有前駆体、酸素源、窒素含有源、又は他の前駆体又は試薬に暴露することにより、堆積される。膜成長は、表面反応の自己限定的な制御、各前駆体又は試薬のパルス幅、及び堆積温度によって進行する。しかしながら、いったん基板の表面が飽和すると、膜成長は停止する。
【0027】
酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜から選択されるケイ素含有層を含む多層構造を基板の少なくとも1つの表面の上に堆積する方法であって、
基板の該少なくとも1つの表面を提供する提供工程;
式I〜IIIを有する化合物から選択される少なくとも1つのケイ素含有前駆体を用いる少なくとも1つを導入する導入工程
【化5】
(式中、Rはそれぞれ独立して、水素、直鎖又は分岐C
2〜C
10アルキル基;直鎖又は分岐C
3〜C
12アルケニル基;直鎖又は分岐C
3〜C
12アルキニル基;C
4〜C
10環状アルキル基;及びC
6〜C
10アリール基から選択され;R
1はそれぞれ独立して、直鎖又は分岐C
1〜C
10アルキル基;直鎖又は分岐C
3〜C
12アルケニル基;直鎖又は分岐C
3〜C
12アルキニル基;C
4〜C
10環状アルキル基;及びC
6〜C
10アリール基から選択される);
酸素含有源及び窒素含有源から選択される源を該反応チャンバー内へ導入する導入工程;及び
気相堆積プロセスを介して該ケイ素含有層を該基板の該少なくとも1つの表面の上に堆積する堆積工程、を含む方法。
【0028】
一つの具体的な実施形態において、堆積工程は、周囲温度〜1000℃、又は約400℃〜約1000℃、又は約400℃〜約600℃、450℃〜約600℃、又は約450℃〜約550℃の範囲の1又は複数の温度で実施される。この実施形態又は他の実施形態において、基板は半導体基板を含む。酸素含有源は、水(H
2O)、酸素(O
2)、酸素プラズマ、オゾン(O
3)、NO、N
2O、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO
2)、N
2Oプラズマ、一酸化炭素(CO)プラズマ、二酸化炭素(CO
2)プラズマ、及びこれらの組み合わせからなる群より選択することができる。窒素含有源は、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、窒素、窒素プラズマ、窒素/水素、窒素/ヘリウム、窒素/アルゴンプラズマ、アンモニアプラズマ、アンモニア/ヘリウムプラズマ、アンモニア/アルゴンプラズマ、アンモニア/窒素プラズマ、NF
3、NF
3プラズマ、及びこれらの混合物からなる群より選択することができる。
【0029】
別の実施形態において、少なくとも1つの窒化ケイ素膜を基板の少なくとも1つの表面の上に堆積する方法が提供され、この方法は、
基板の該少なくとも1つの表面を提供する提供工程;
式I〜IIIを有する化合物から選択される少なくとも1つのケイ素含有前駆体を用いる少なくとも1つを導入する導入工程
【化6】
(式中、Rはそれぞれ独立して、水素、直鎖又は分岐C
2〜C
10アルキル基;直鎖又は分岐C
2〜C
12アルケニル基;直鎖又は分岐C
2〜C
12アルキニル基;C
4〜C
10環状アルキル基;及びC
6〜C
10アリール基から選択され;R
1はそれぞれ独立して、直鎖又は分岐C
1〜C
10アルキル基;直鎖又は分岐C
3〜C
12アルケニル基;直鎖又は分岐C
3〜C
12アルキニル基;C
4〜C
10環状アルキル基;及びC
6〜C
10アリール基から選択される);
窒素含有源、又はその組み合わせを該反応チャンバー内へ導入する導入工程;及び
気相堆積プロセスを介して該窒化ケイ素膜を該基板の該少なくとも1つの表面の上に堆積する堆積工程、を含む。一つの具体的な実施形態において、堆積工程は、周囲温度〜1000℃、又は約400℃〜約1000℃、又は約400℃〜約600℃、450℃〜約600℃、又は約450℃〜約550℃の範囲の1又は複数の温度で実施される。
【0030】
複数のケイ素含有層を含む装置を形成する方法であって、該ケイ素含有層が半導体基板の少なくとも1つの表面の上の酸化ケイ素層及び窒化ケイ素層から選択され、
半導体基板の該少なくとも1つの表面を提供する提供工程;
以下の式I〜IIIを有する化合物から選択される少なくとも1つのケイ素含有前駆体を導入する導入工程:
【化7】
(式中、Rはそれぞれ独立して、水素、直鎖又は分岐C
2〜C
10アルキル基;直鎖又は分岐C
3〜C
12アルケニル基;直鎖又は分岐C
3〜C
12アルキニル基;C
4〜C
10環状アルキル基;及びC
6〜C
10アリール基から選択され;R
1はそれぞれ独立して、直鎖又は分岐C
1〜C
10アルキル基;直鎖又は分岐C
3〜C
12アルケニル基;直鎖又は分岐C
3〜C
12アルキニル基;C
4〜C
10環状アルキル基;及びC
6〜C
10アリール基から選択される);
窒素含有源、又はその組み合わせを該反応チャンバー内へ導入する導入工程;
気相堆積プロセスを介して該窒化ケイ素層を堆積する堆積工程;
シラン、ジシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリエトキシシラン(TES)、テトラメトキシシラン、トリメトキシシラン、ジ−tert−ブトキシシラン(DTBOS)、ジ−tert−ペントキシシラン(DTPOS)、ジエチルシラン、トリエチルシラン、ジエトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシラン、ジ(第三級)ブトキシメチルシラン、メチルトリアセトキシシラン、ジメチルアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ネオヘキシルトリエトキシシラン、ネオペンチルトリメトキシシラン、ジアセトキシメチルシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサン、オクタメチルテトラシクロシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1−ネオヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジメチル−1−アセトキシ−3−エトキシジシロキサン、1,2−ジメチル−1,2−ジアセトキシ−1,2−ジエトキシジシラン、1,3−ジメチル−1,3−ジエトキシジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジアセトキシジシロキサン、1,2−ジメチル−1,1,2,2−テトラアセトキシジシラン、1,2−ジメチル−1,1,2,2−テトラエトキシジシラン、1,3−ジメチル−1−アセトキシ−3−エトキシジシロキサン、1,2−ジメチル−1−アセトキシ−2−エトキシジシラン、メチルアセトキシ(第三級)ブトキシシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、テトラメチルジシラン、及びジメチルジシラン、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)及びテトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)エタン、ビス(メチルジエトキシシリル)メタン、(ジエトキシメチルシリル)(ジエトキシシリル)メタン及びこれらの組み合わせ、からなる群より選択される少なくとも1つのケイ素含有前駆体を導入する導入工程、
酸素含有源、又はその組み合わせを該反応チャンバー内へ導入する導入工程;及び
気相堆積プロセスを介して該酸化ケイ素層を堆積する堆積工程、を含む方法。一つの具体的な実施形態において、堆積工程は、周囲温度〜1000℃、又は約400℃〜約1000℃、又は約400℃〜約600℃、450℃〜約600℃、又は約450℃〜約550℃の範囲の1又は複数の温度で実施される。別の具体的な実施形態において、堆積工程は、窒化ケイ素の前に堆積される酸化ケイ素で実施される。堆積工程を繰り返して、窒化ケイ素と酸化ケイ素とが交互にある多層スタックを提供することができる。
【0031】
上記の式においてかつ明細書全体にわたり、用語「アルキル」は、2〜10又は2〜4の炭素原子を有する、直鎖、又は分岐官能基を意味する。典型的なアルキル基としては、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソ−ペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、及びネオヘキシル、が含まれるが、これらに限定されない。ある実施形態において、アルキル基は、それに付加した1又は複数の官能基(アルコキシ基、ジアルキルアミノ基又はこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない)を有してよい。他の実施態様において、アルキル基は、それに付加した1又は複数の官能基を有しない。
【0032】
上記の式においてかつ明細書全体にわたり、用語「環状アルキル」は、3〜10又は4〜10の炭素原子を有する環状官能基を意味する。典型的な環状アルキル基としては、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロオクチル基が含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
上記の式においてかつ明細書全体にわたり、用語「アリール」は、6〜10の炭素原子を有する芳香族環状官能基を意味する。典型的なアリール基としては、フェニル、ベンジル、クロロベンジル、トリル、及びo−キシリルが含まれるが、これらに限定されない。
【0034】
上記の式においてかつ明細書全体にわたり、用語「アルケニル基」は、1又は複数の炭素−炭素二重結合を有しかつ2〜10又は2〜6の炭素原子を有する基を意味する。典型的なアルケニル基としては、ビニル又はアリル基が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
上記の式においてかつ明細書全体にわたり、用語「アルキニル基」は、1又は複数の炭素−炭素三重結合を有しかつ2〜10又は2〜6の炭素原子を有する基を意味する。
【0036】
ある実施形態において、基板は半導体基板を含む。明細書全体にわたり、用語「半導体基板」は、ケイ素、ゲルマニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、シリコンカーバイド、ケイ素炭窒化物、炭素ドープ酸化ケイ素、ホウ素ドープケイ素、リンドープケイ素、ホウ素ドープ酸化ケイ素、リンドープ酸化ケイ素、ホウ素ドープ窒化ケイ素、リンドープ窒化ケイ素、金属(銅、タングステン、アルミニウム、コバルト、ニッケル、タンタルなど)、金属窒化物(窒化チタン、窒化タンタルなど)、金属酸化物、III/V(GaAs、InP、GaP、及びGaNなど)、及びこれらの組み合わせ、を含む基板を意味する。
【0037】
ある実施形態において、本明細書に記載の方法を用いて堆積されるケイ素含有膜又は層は、酸素を含む酸素源、試薬又は前駆体を用いて酸素の存在下で形成され、酸化ケイ素膜を提供する。用語「酸化ケイ素」膜は、ケイ素及び酸素から構成される化学量論的な又は非化学量論的な膜を意味する。
図1は、本明細書に記載の多層装置の例を示している。
図1において、上述の方法を用いて堆積される酸化ケイ素膜(002)は、酸素を含む酸素源、試薬又は前駆体を用いて酸素の存在下で形成される。酸素源は、少なくとも1つの酸素源の形で反応器内へ導入してよく、及び/又は堆積プロセスにおいて用いられる他の前駆体中に付随的に存在してよい。適切な酸素源ガスとしては、例えば、水(H
2O)(例えば、脱イオン水、精製水、及び/又は蒸留水)、酸素(O
2)、酸素プラズマ、オゾン(O
3)、NO、N
2O、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO
2)及びこれらの組み合わせが含まれ得る。一つの具体的な実施形態において、酸素源ガスは亜酸化窒素(N
2O)を含む。この実施形態又は他の実施形態において、酸素源は、約1〜約4000平方立方センチメートル(sccm)の範囲の流速で、反応器内へ導入される。
【0038】
ある実施形態において、ケイ素含有膜はケイ素及び窒素を含み、窒化ケイ素膜を提供する。用語「窒化ケイ素」膜は、ケイ素及び窒素から構成される化学量論的な又は非化学量論的な膜を意味する。これらの実施形態において、本明細書に記載の方法を用いて堆積されたケイ素含有膜は、窒素含有源の存在下で形成される。
図1において示されているような一つの具体的な実施形態において、ケイ素含有膜003は窒化ケイ素を含み、上述の方法を用いて、窒素、窒素を含む試薬又は前駆体を用い窒素の存在下で、堆積される。窒素含有源は、少なくとも1つの窒素源の形で反応器内へ導入してよく、及び/又は堆積プロセスにおいて用いられる他の前駆体中に付随的に存在してよい。適切な窒素含有源ガスとしては、例えば、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、窒素、窒素プラズマ、窒素/水素、窒素/ヘリウム、窒素/アルゴンプラズマ、アンモニアプラズマ、アンモニア/ヘリウムプラズマ、アンモニア/アルゴンプラズマ、アンモニア/窒素プラズマ、NF
3、NF
3プラズマ、及びこれらの混合物が含まれ得る。ある実施形態において、窒素含有源は、反応器内へ約1〜約4000平方立方センチメートル(sccm)の範囲の流速で導入される、アンモニアプラズマ又は水素/窒素プラズマ源ガスを含む。窒素含有源は、約0.1〜約100秒間の範囲の時間で導入することができる。一つの具体的な実施形態において、以下の式I〜IIIを有する化合物を用いる酸化ケイ素膜についての堆積速度は、約50ナノメートル毎分(nm/min)〜約500nm/minの範囲であり、この速度は、同じ条件下でシランを用いる、同様の特性を有する酸化ケイ素の堆積速度よりも大きい。別の具体的な実施形態において、窒化ケイ素膜の堆積速度は、約50ナノメートル毎分(nm/min)〜約500nm/minの範囲であり、この速度は、同じ条件下でシランを用いる、同様の特性を有する窒化ケイ素の堆積速度よりも大きい。
【0039】
本明細書に開示の堆積方法は、1又は複数のパージガスを伴ってよい。パージガスは、未消費の反応物及び/又は反応副生成物をパージするのに用いられ、前駆体と反応しない不活性ガスである。典型的なパージガスとしては、アルゴン(Ar)、窒素(N
2)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、水素(H
2)、及びこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。ある実施形態において、Arなどのパージガスは、約10〜約2000sccmの範囲の流速で、約0.1〜1000秒間で反応器内へ供給される。これにより、未反応の材料及び反応器内に残存する可能性のある任意の副生成物をパージする。
【0040】
前駆体、酸素含有源、窒素含有源、及び/又は他の前駆体、源ガス、及び/又は試薬を供給するそれぞれの工程は、それらを供給する時間を変化させて実施して、結果として生じる膜の化学量論的な組成を変化させてよい。
【0041】
エネルギーは、ケイ素含有前駆体、酸素含有源、窒素含有源、還元剤、他の前駆体及び/又はこれらの組み合わせのうち少なくとも1つに適用され、反応を誘発しケイ素含有膜又はコーティングを基板の上に形成する。このようなエネルギーは、熱、プラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合型プラズマ、X線、eビーム、光子、リモートプラズマ法、及びこれらの組み合わせにより提供することができるが、これらに限定されない。ある実施形態において、二次RF周波数源を使用して、基板表面でプラズマ特徴を変更することができる。堆積がプラズマを伴う実施形態において、プラズマ発生プロセスは、反応器内でプラズマを直接発生する直接プラズマ発生プロセス、又は代わりにプラズマを反応器の外で発生させ反応器内へ供給するリモートプラズマ発生プロセスを含んでよい。
【0042】
ケイ素含有前駆体は、様々な方法でCVD又はALD反応器などの反応チャンバーに送達してよい。一つの実施形態において、液体送達システムを利用してよい。代わりとなる実施形態において、液体送達及びフラッシュ気化プロセスの組み合わせ型ユニット(例えばShoreview、MNのMSP Corporationにより製造されるターボ気化器など)を用い、低揮発性材料が容積的に送達されるようにしてもよく、このことにより、前駆体の熱分解のない、再現性ある輸送及び堆積が導かれる。液体送達処方物において、本明細書に記載の前駆体は、未希釈の液体の形で送達されてよく、又は代わりに、それを含む溶媒処方物又は組成物で用いてよい。それ故に、ある実施形態において、前駆体処方物は、基板の上に膜を形成するのに、所与の最終使用用途において望ましく有利であり得るような、適した特性の1又は複数の溶媒成分を含んでよい。
【0043】
ある実施形態において、前駆体キャニスタから反応チャンバーを連結するガスラインは、プロセスの要求に依存する1又は複数の温度に加熱される。そして、少なくとも1つのケイ素含有前駆体のコンテナは、バブリングのために1又は複数の温度に維持される。他の実施態様において、少なくとも1つのケイ素含有前駆体を含む溶液は、直接液体注入のために1又は複数の温度に維持された気化器内へ注入される。
【0044】
記載された式I〜IIIを有する1又は複数のケイ素含有前駆体が溶媒をさらに含む組成物において用いられる実施形態について、選択された溶媒又はその混合物は、1又は複数の前駆体と反応しない。組成物中の溶媒の量は質量パーセントで、0.5質量%〜99.5%又は10質量%〜75%の範囲である。この実施形態又は他の実施形態において、溶媒は前駆体の沸点(b.p.)と同様の沸点(b.p.)を有するか、又は溶媒のb.p.と前駆体のb.p.との間の差が、40℃以下、30℃以下、又は20℃以下、又は10℃である。代わりに、沸点間の差は、以下の端点のうち任意の1又は複数からの範囲である:0、10、20、30、又は40℃。b.p.差の適切な範囲の例としては、限定はされないが、0〜40℃、20℃〜30℃、又は10℃〜30℃が含まれる。組成物中の適切な溶媒の例としては、エーテル(1,4−ジオキサン、ジブチルエーテルなど)、第三級アミン(ピリジン、1−メチルピペリジン、1−エチルピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなど)、ニトリル(ベンゾニトリルなど)、アルキル炭化水素(オクタン、ノナン、ドデカン、エチルシクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素(トルエン、メシチレンなど)、第三級アミノエーテル(ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルなど)、又はこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
一つの具体的な実施形態において、式I〜IIIを有する1又は複数のケイ素含有前駆体は、例えば、塩化物及びフッ化物、臭化物、及びヨウ化物などのハロゲン化物イオン(又はハロゲン化物)を含んでよく、このハロゲン化物イオン(又はハロゲン化物)は、500百万分率(ppm)以下、100ppm以下、50ppm以下、10ppm以下、及び5ppm以下の不純物又は0ppmである。塩化物は、式I〜IIIを有する1又は複数のケイ素含有前駆体の分解触媒として機能することに加えて、潜在的な汚染となり電子デバイスの性能に害を与えることが知られている。記載されている式I〜IIIを有する1又は複数のケイ素含有前駆体の段階的な分解は、膜堆積プロセスに直接に影響を与える可能性があり、このことは半導体製造業者が膜の仕様を満たすのを難しくする。加えて、貯蔵寿命又は安定性は式I〜IIIを有する1又は複数のケイ素含有前駆体のより大きい分解速度により悪影響を受け、これにより、1〜2年の貯蔵寿命を保証することが難しくなる。それ故に、式I〜IIIを有する1又は複数のケイ素含有前駆体の加速した分解は、これらの可燃性及び/又は自然発火性のガス状副生成物の形成に関する安全性及び性能の懸念を提起する。
【0046】
ハロゲン化物を実質的に含まない本発明に係る組成物は、(1)化学合成の間に塩化物源を低減又は排除すること、及び/又は(2)最終精製生成物が塩化物を実質的に含まないように、粗生成物から塩化物を除去する有効な精製プロセスを実施すること、により達成することができる。塩化物源は、合成の間に、クロロジシラン、ブロモジシラン、又はヨードジシランなどのハロゲン化物を含有しない試薬を用いることによって低減してよく、これによりハロゲン化物イオンを含有する副生成物の生成を回避する。加えて、結果として生じる粗生成物が塩化物不純物を実質的に含まないように、前述の試薬は、塩化物不純物を実質的に含まないものであるべきである。同様のやり方において、合成は、容認できないほど高レベルのハロゲン化物汚染を含むハロゲン化物系溶媒、触媒、又は溶媒を用いるべきではない。粗生成物を様々な精製方法によって処理し、最終生成物が塩化物などのハロゲン化物を実質的に含まないようにしてもよい。このような方法は、先行技術において十分に記載されており、蒸留、又は吸着などの精製プロセスが含まれ得るが、これらに限定されない。蒸留は一般に用いられ、沸点の差を利用することにより所望の生成物から不純物を分離する。吸着を用いて、成分の示唆吸着特性を利用し、最終生成物がハロゲン化物を実質的に含まないような分離をもたらしてもよい。例えば、市販のMgO−Al
2O
3ブレンドなどの吸着剤を用いて、塩化物などのハロゲン化物を除去することができる。
【0047】
別の実施形態において、式I〜IIIを有する1又は複数のケイ素含有前駆体を含むケイ素含有膜を堆積するための容器が本明細書に記載される。一つの具体的な実施形態において、容器は、CVD又はALDプロセスの反応器に1又は複数の前駆体を送達するのを可能にする適切なバルブ及びフィッティングを備えた、少なくとも1つの加圧可能容器(好ましくはステンレス鋼の)を含む。この実施形態又は他の実施形態において、前駆体はステンレス鋼から構成された加圧可能容器内に供され、前駆体の純度は、半導体用途の大半に適した98質量%以上又は99.5%以上である。ある実施形態において、このような容器は、前駆体と1又は複数の追加の前駆体とを必要に応じて混合するための手段を有することもできる。これらの又は他の実施形態において、1又は複数の容器の内容物は、追加の前駆体と予備混合することができる。代わりに、ケイ素含有前駆体を、別個の容器内に、又は保管の間前駆体と他の前駆体を離した状態に維持するための分離手段を有する単一の容器内に、維持することができる。
【0048】
本明細書に記載の方法において、本明細書に記載の方法の工程は、様々な順序で行ってよく、連続的に又は同時に(例えば、別の工程の少なくとも一部の間に)、及びこれらの任意の組み合わせで行ってよい、ということが理解される。前駆体及び酸素含有源又は窒素含有源ガスを供給するそれぞれの工程は、それらを供給する時間の長さを変えて実施して、結果として生じるケイ素含有膜の化学量論的な組成を変化させてよい。
図1に示される装置などの、ある実施形態において、ケイ素含有層002及び003は、式I〜IIIを有する本明細書に記載の化合物などの同一のケイ素含有前駆体を用いて堆積される。ケイ素含有層又は膜002はケイ素及び酸素を含み、酸素含有源の存在下で形成される。酸素含有源は、少なくとも1つの酸素源の形で反応器内へ導入してよく、及び/又は堆積プロセスにおいて用いられる他の前駆体中に付随的に存在してよい。ケイ素含有膜003は、ケイ素及び窒素を含み、窒素を含む窒素源、試薬又は前駆体を用いて、窒素の存在下で、上述の方法を用いて堆積される。酸化ケイ素の厚さは、層の数に応じて、1Å〜5000Å、10Å〜2000Å、50Å〜1500Å、50Å〜1000Å、50Å〜500Åの範囲であり、一方で窒化ケイ素の厚さは、1Å〜5000Å、10Å〜2000Å、50Å〜1500Å、50Å〜1000Å、50Å〜500Åの範囲である。1又は複数の酸化ケイ素膜又は層の厚さは、窒化ケイ素膜又は層の厚さと同じであってよく、又は異なっていてよい。層の厚さは、例えば、エリプソメーター、屈折計、又は他の手段により測定することができる。一つの実施形態において、酸化ケイ素層及び窒化ケイ素層の厚さ測定値の差は、厚さの+又は−パーセンテージで測定され、以下の端点のうち1又は複数からの範囲である:+/−0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、2.5、5、10、25、50及び100%。例えば、酸化ケイ素層が20ナノメートルであり、窒化ケイ素層が20.5ナノメートルである場合、厚さの差は0.025%となる。一つの具体的な実施形態において、酸化ケイ素層と窒化ケイ素層との間の厚さの差は、約±0.001%〜約±10%又は約±0.01%〜約±5%の範囲である。
【0049】
図1に示される装置などの、ある実施形態において、装置は1又は複数の後処理工程に供され、この後処理工程としては、約600℃〜約1000℃、又は約700℃〜1000℃の範囲の1又は複数の温度でのアニーリング工程の熱処理が含まれるが、これに限定されない。後処理工程は、以下のエネルギー源のうち1又は複数を用いて行うことができる:UV、赤外線、プラズマ、又は任意の他のエネルギー源。装置がアニーリングなどの後処理工程に供される実施形態において、ケイ素及び酸素含有層(例えば
図1の層002など)について、後処理工程前後の収縮のパーセンテージは、5%以下、2%以下、0.5%以下、又はゼロとなるべきであり、ケイ素及び窒素含有層(例えば
図1の層003など)について、後処理工程前後の収縮のパーセンテージは、10%以下、5%以下、3%以下、又は2%となるべきである。構造のひび割れを回避しスタック応力を低く保つため、ケイ素及び酸素含有膜002の応力増加は50MPa以下となるべきであり;ケイ素及び窒素含有膜003の応力増加は300MPa以下、好ましくは200MPa以下となるべきである。
【0050】
堆積のための反応器又は堆積チャンバーの温度は、以下の端点のうちの1つからの範囲であってよい:周囲温度又は25℃;400℃;425℃;475℃;500℃;525℃;550℃;575℃;600℃;625℃;650℃;700℃、1000℃及び任意のこれらの組み合わせ。これに関して、堆積のための反応器又は堆積チャンバーの温度は、周囲温度〜1000℃、約400℃〜約700℃、約400℃〜約600℃、約450℃〜550℃、又は本明細書に記載の温度端点の任意の組み合わせ、の範囲であってよい。
【0051】
反応器又は堆積チャンバーの圧力は、約0.01Torr〜約1000Torr、又は約0.1Torr〜約100Torrの範囲であってよい。前駆体、酸素源、窒素源、及び/又は他の前駆体、源ガス、及び/又は試薬を供給するそれぞれの工程は、それらの供給時間を変化させて実施して、結果として生じるケイ素含有膜の化学量論的な組成を変化させてよい。
【0052】
以下の例は、本明細書に記載のケイ素含有膜又はそれを含む装置を調製するための方法を説明しており、それを何らかの形で限定することは意図されていない。本明細書に記載の例及び実施形態は、作製することのできる多数の実施形態の典型的なものである。具体的に開示されているもの以外の多数の材料を作製することができる、と考えられる。プロセスの多数の他の構成もまた用いてよく、プロセスにおいて用いられる材料は、具体的に開示されているもの以外の多数の材料から選んでよい。
【実施例】
【0053】
一般堆積条件
ケイ素含有膜を、中程度の抵抗率(8〜12Ωcm)の単結晶ケイ素ウェーハ基板の上へ堆積した。ある例において、基板を予備堆積処理(プラズマ処理、熱処理、化学処理、紫外線光暴露、電子ビーム暴露、及び/又は他の処理などであるが、これらに限定されない)にさらし、膜の1又は複数の特性に影響を与えてよい。このことにより、膜堆積の前に誘電特性を保護又は強化することができる。
【0054】
例1〜9の堆積は、シラン又はTEOSプロセスキットのいずれかを用いて、Astron EXリモートプラズマ発生器を備えた200mmDXZチャンバー中で、Applied Materials Precision5000システム上で行った。PECVDチャンバーは、直接液体注入送達能力を備えていた。シランを除いて、全ての前駆体は前駆体の沸点に応じた送達温度で液体であった。典型的な液体前駆体流速は100〜800mg/minであり、プラズマ出力密度は0.75〜3.5W/cm
2であり、圧力は0.75〜10Torrであった。632nmで厚さ及び屈折率(RI)を反射率計又はエリプソメーターにより測定した。典型的な膜厚さは10〜1000nmの範囲であった。ケイ素系膜の結合特性水素含量(Si−H、C−H及びN−H)を、Nicolet透過フーリエ変換赤外分光法(FTIR)ツールにより測定し分析した。全ての密度測定は、X線反射率(XRR)を用いて行った。X線光電子分光法(XPS)及び二次イオン質量分析法(SIMS)分析を行い、膜の元素組成を決定した。ウェットエッチング速度(WER)を熱H
3PO
4(160〜165℃)において測定した。水銀プローブを、比誘電率、漏洩電流及び絶縁破壊電界を含む電気的特性測定に採用した。膜の応力をToho FLX−2320応力ツールにより測定した。膜を650〜800℃で1時間、N
2雰囲気下(O
2<10ppm)、1Torr〜大気圧でアニーリングし、次に膜収縮、応力ドリフト、WER、膜密度及び元素組成を分析した。多層構造及び界面をHitachi S−4700走査型電子顕微鏡(SEM)システムを用いて2.0nmの分解能で観察した。
【0055】
ケイ素前駆体は、実験計画法(DOE)の方法論を用いてスクリーニングした。ケイ素及び酸素含有膜についての実験計画には、以下が含まれる:前駆体流量100〜800mg/min;O
2(又はN
2O)流量100sccm〜4000sccm、圧力0.75〜8torr;RF出力(13.56MHz)400〜1000W;低周波数(LF)出力0〜100W;及び150〜550℃の範囲の堆積温度。ケイ素及び窒素含有膜についての実験計画には、以下が含まれる:前駆体流量100〜800mg/min;NH
3流量100sccm〜4000sccm、圧力0.75〜8torr;RF出力(13.56MHz)400〜1000W;低周波数(LF)出力0〜100W;及び150〜550℃の範囲の堆積温度。DOEの実験は、どのプロセスパラメーターが高い密度及び良好な熱安定性を有する最適な膜を生じたかを判断するのに用いられた。
【0056】
例1:トリシリルアミン(TSA)及び亜酸化窒素(N
2O)を用いるケイ素及び酸素含有膜の堆積
多数の酸化ケイ素膜を、トリシリルアミン(TSA)を前駆体として用いて6インチ及び8インチのケイ素基板の上へ堆積し、膜密度、応力、熱安定性及びウェットエッチング速度を試験した。XPSにより膜の組成を測定したところ、膜はSiOから構成され、ケイ素及び酸素の量が膜に応じて原子パーセントで変化した、ということが示された。
【0057】
TSAにより堆積された酸化物膜について、TSAを用いて最も好ましい膜特性を示すケイ素含有膜を堆積するのに用いられたプロセス条件は、以下のとおりである:TSA流量(200〜300mg/min)、N
2O流量(2000〜4000sccm)、He(1000sccm)、圧力(4〜6torr)、RF(600〜900W)、及び温度(425℃)。表1は、TSAを用いる選択された酸化ケイ素堆積についての堆積条件を示す。
【表1】
【0058】
堆積速度は126nm/minであった。アズデポ状態の膜応力は−283MPaであった。4.20の比誘電率及び2.24g/cm
3の密度は、それが高品質酸化ケイ素膜であることを示す。XPS元素分析は、Si:O比が1:2であることを示す。漏洩及び絶縁破壊測定は、
図3において示されているように、漏洩電流が10
-9A/cm
2より低く絶縁破壊電界が8MV/cmより大きいことを示しており、これは優れた絶縁特性を意味する。酸化ケイ素膜は優れた熱安定性を示す。N
2雰囲気下、1時間の800℃アニーリングの後、膜収縮は無視できるほど小さいか、又は実質的にゼロであった。そして、応力シフトはおよそ50MPaであった。
【0059】
例2:トリシリルアミン(TSA)及び亜酸化窒素(N
2O)を用いるケイ素及び酸素含有膜の堆積
多数の酸化ケイ素膜を、トリシリルアミン(TSA)を前駆体として用いて6インチ及び8インチのケイ素基板の上へ堆積し、膜密度、応力、熱安定性及びウェットエッチング速度を試験した。膜を堆積するのに用いられたパラメーターは、下記表2に示されている。
【表2】
【0060】
堆積速度は100nm/minであった。アズデポ状態の膜応力は−313MPaであった。4.14の比誘電率及び2.36g/cm
3の密度は、それが高品質酸化ケイ素膜であることを示す。XPS元素分析は、Si:O比が1:2であることを示す。漏洩及び絶縁破壊測定は、
図3において示されているように、漏洩電流が10
-9A/cm
2より低く、絶縁破壊電界が8MV/cmより大きいことを示しており、これは優れた絶縁特性を意味する。
【0061】
酸化ケイ素膜は優れた熱安定性を示した。N
2雰囲気下、1時間の800℃アニーリングの後、膜収縮は無視できるほど小さく、応力シフトはおよそ50MPaであった。例1と例2の両方の酸化ケイ素膜はまた、160〜165℃の熱H
3PO
4において、実質的にゼロのウェットエッチング速度を示した。
【0062】
例3:トリシリルアミン(TSA)及びアンモニア(NH
3)を用いる窒化ケイ素膜の堆積
多数の窒化ケイ素膜を、トリシリルアミン(TSA)を前駆体として用いて6インチ及び8インチのケイ素基板の上へ堆積し、膜密度、応力、熱安定性及びウェットエッチング速度を試験した。XPSにより膜の組成を測定したところ、膜は窒化ケイ素から構成され、ケイ素及び窒化物の量が膜に応じて原子パーセントで変化した、ということが示された。
【0063】
TSAにより堆積された窒化物膜について、TSAを用いて最も好ましい膜特性を示すケイ素含有膜を堆積するのに用いられたプロセス条件は以下のとおりである:TSA流量(150mg/min)、NH
3流量(600〜1000sccm)、He(1000sccm)、圧力(4〜8torr)、RF(600〜900W)、及び温度(425℃)。表3は、TSAを用いる選択された窒化ケイ素堆積についての堆積条件を示す。堆積速度は298nm/minであった。
【表3】
【0064】
N
2雰囲気下、1時間の800℃熱アニーリング前後の膜厚さ及び応力を測定することにより、以下の表4に示されるように、これらの窒化ケイ素膜は高温処理に対し安定で耐久性があったことが分かった。
【表4】
【0065】
アズデポ状態の膜の応力はわずかに引張応力であり、これは酸化物層の圧縮応力と釣り合っている。アニーリング後の膜の応力は157MPaまで増加し、膜収縮は約1.4%であった。これらは両方とも窒化ケイ素膜の良好な熱安定性を確実にする。アズデポ状態の膜及びアニーリング後の膜の、160〜165℃の熱H
3PO
4におけるウェットエッチング速度はそれぞれ、〜120及び〜30nm/minであった。窒化物膜は酸化物膜よりもはるかに速くエッチングし、良好なエッチング選択性を示す。
【0066】
例4:トリシリルアミン(TSA)を用いる酸化/窒化ケイ素膜スタックの堆積
25nm酸化ケイ素膜及び25nm窒化ケイ素膜を含むスタックを、酸化ケイ素層を形成するための前駆体トリシリルアミン(TSA)+亜酸化窒素(N
2O)及び窒化ケイ素層を形成するためのTSA+アンモニア(NH
3)を用い、交互の順序で、200mmケイ素基板の上に堆積し、多層スタックを得た。単層酸化物膜の応力は−294MPaであり、単層窒化物膜の応力は231MPaであった。酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜についての堆積条件を表5に列挙する。
【表5】
【0067】
スタック応力を、8、16、32、64及び128スタック層堆積の後に測定した。表6に示されるように、応力は、スタック厚さに伴いわずかに増加した。
【表6】
【0068】
図4は、128スタックの酸化ケイ素と窒化ケイ素の交互層の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示しており、酸化物層と窒化物層との間の界面が明瞭ではっきりしていることを明示している。次に、128スタックの多層構造を熱(160〜165℃)H
3PO
4浴中に90秒間浸漬した。熱H
3PO
4浴後の多層構造の画像を、500nmの分解能でSEMにより撮影した。それらの画像は
図5a及び5bに示されており、優れたエッチング選択性及び酸化物層と窒化物層との間のはっきりと分かる界面を示している。
【0069】
例5:トリシリルアミン(TSA)を用いる酸化/窒化ケイ素膜スタックの堆積及び熱アニーリング
25nm酸化ケイ素膜及び25nm窒化ケイ素膜の交互層を含む128スタック層構造を、酸化ケイ素層についてはTSA+亜酸化窒素(N
2O)及び窒化ケイ素層についてはTSA+アンモニア(NH
3)を用いて、150mmケイ素基板の上に堆積した。アズデポ状態のスタックの応力を測定した。その結果を表7に示す。表7が示しているように、この多層構造はわずかに圧縮応力を示し、応力はスタック厚さに伴いわずかに増加した。スタックを管状炉内へ入れ、N
2雰囲気下で1時間、800℃でアニーリングした。アニーリング後のスタックの応力変化はおよそ115MPaであり、表7に示されている。
【表7】
【0070】
例6:トリシリルアミン(TSA)を用いる異なる厚さの酸化/窒化ケイ素膜スタックの堆積及び熱アニーリング
20nm酸化ケイ素膜及び30nm窒化ケイ素膜の交互層を含む64スタック層構造を、酸化ケイ素層についてはTSA+亜酸化窒素(N
2O)及び窒化ケイ素層についてはTSA+アンモニア(NH
3)を用いて、150mmケイ素基板の上に堆積した。アズデポ状態のスタック及びアニーリング後のスタックの応力を測定した。その結果を表8に示す。窒化物膜は酸化物膜よりも大きい応力を有するため、より厚い窒化物層を有するこのスタックの応力は、例5の25nm酸化物/25nm窒化物を含むスタックよりも大きい。
【表8】
【0071】
例7:TEOS酸化ケイ素/TSA窒化ケイ素膜スタックの堆積及び熱アニーリング
オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を用いる20nm酸化ケイ素膜及びトリシリルアミン(TSA)を用いて堆積される30nm窒化ケイ素膜の交互層を含む64スタック層構造を堆積した。アズデポ状態のスタック及びアニーリング後のスタックの応力を測定した。その結果を表9に示す。アズデポ状態のTEOS酸化物膜は−97MPaというわずかな圧縮応力を示し、それは800℃アニーリング後に−168MPaに低下した。結果として、TEOS酸化物の応力の低下はTSA窒化物の応力の増加を相殺した。結果として、スタックの応力は大きく変化しなかった。
【表9】
【0072】
例8:シラン系窒化ケイ素膜の堆積及び熱アニーリング
シラン系窒化物を200mmケイ素ウェーハの上に堆積した。好ましい堆積条件としては、シラン流量50〜100sccm;NH
3流量100sccm〜1000sccm、N
2流量500〜2000sccm、圧力2〜4torr;RF出力(13.56MHz)200〜600W;及び400〜500℃の範囲の堆積温度、が含まれる。膜応力、密度、及び厚さ収縮を表10に列挙する。
【表10】
【0073】
窒化ケイ素膜密度は、引張応力の要求により低下した。シラン系窒化物膜は、わずかに異なる引張応力を有しながら、TSA窒化物と同様の密度を示した。しかしながら、シラン系窒化物はかなり大きい膜収縮を示した。結果として、応力変化は1GPaまで又はそれ以上になる可能性があり、このことは、シラン系窒化物が、50スタックより多いなどの、スタックの数が増加するV−NAND用途には適切でない可能性があることを示している。
【0074】
例9:窒化ケイ素とケイ素基板との間の界面での、酸化物層における窒素濃度の低減
酸化ケイ素膜を、表5の酸化物堆積条件を用いてケイ素ウェーハの上へ堆積した。酸化ケイ素膜の窒素(N)含量をダイナミックSIMSにより検出した。N含量は酸化ケイ素膜において低く、1E20原子/ccであった。しかしながら、酸化物膜とケイ素基板との間の界面で突然N濃度が増加した。ここでのN濃度は最大1E22原子/ccであり、これはエッチング速度を変化させる可能性がある。
【0075】
界面でのN濃度を低くするために、酸化ケイ素堆積レシピを2つの工程に分けた。第一の工程において、N
2Oを4000sccmで4〜5秒間流して前駆体を完全に酸化し、第二の工程において、それを2000sccmに低減した。窒素含量をダイナミックSIMSにより評価した。Nレベルは膜全体において1E20原子/ccレベルであり、界面での突然の増加は見られなかった。
【0076】
酸化/窒化ケイ素スタック構造を、表5の改変された酸化物レシピ及び窒化物レシピを用いて堆積した。各層は25〜30nmの厚さであった。N濃度のダイナミックSIMS分析により、N濃度プロファイルを
図6に示す。酸化ケイ素層において、N含量は1E20原子/ccのレベルにあり、一方で窒化ケイ素層において、N含量は4E21原子/ccのレベルにあることが分かる。酸化物層と窒化物層との間のくっきりとした界面が、N濃度プロファイルに示されている。
【0077】
例10:トリシリルアミン(TSA)を用いる300mmウェーハ上の窒化ケイ素膜堆積
TSAを用いる300ミリメートル(mm)ケイ素ウェーハの上の窒化ケイ素膜の堆積を、Applied Materials Producer SEシステムを用い、Astron EMリモートプラズマ発生器が取り付けられた300mm DXZチャンバーにおいて実施した。PECVDチャンバーは、直接液体注入送達能力を備えていた。632nmでの厚さ及び屈折率(RI)を、反射率計及びエリプソメーターにより測定した。典型的な膜厚さは100〜1000nmの範囲であった。全ての密度測定はX線反射率(XRR)を用いて遂行した。X線光電子分光法(XPS)及び二次イオン質量分析法(SIMS)分析を実施し、膜の元素組成を決定した。TSAを用いる窒化ケイ素膜の好ましい堆積条件は以下のとおりであった:TSA流量(500〜700mg/min)、NH
3流量(4000〜5000sccm)、He(4000〜5000sccm)、圧力(4〜8torr)、RF(1000〜1200W)、及び温度(40〜500℃)。
【表11】
【0078】
堆積速度は360nm/minの速さであった。アズデポ状態の膜は、わずかに引張応力0〜40MPaを示した。膜密度は高く(>2.5g/cm
3)、膜収縮は800℃1時間のアニーリングの後、〜0.9%であった。応力変化は200〜250MPaの範囲であった。