カタクリ(Erythronium)属に属する植物がカタクリ(Erythronium japonicum Decne.
)である、請求項1または2に記載の腫瘍壊死因子α産生抑制剤。
請求項1〜3のいずれか1項に記載の腫瘍壊死因子α産生抑制剤を含有する、腫瘍壊死因子αの過剰産生に起因する疾患または腫瘍壊死因子αの過剰産生が関連する疾患の予防または改善用食品。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のTNFα産生抑制剤は、カタクリ(Erythronium)属に属する植物の葉部の抽出物を含有する。
【0013】
本発明で用いるカタクリ(Erythronium)属に属する植物は、ユリ科(Liliaceae)に属する多年草であり、カタクリ(Erythronium japonicum Decne.)、Erythronium americanum Ker-Gawl.、キバナカタクリ(Erythronium grandiflorum Pursh.)、Erythronium caucasicum Woronow、Erythronium oregonum Applegate、Erythronium sibiricum (Fisch. et C.A.Mey.) Krylov等が挙げられる。
特に、カタクリ(Erythronium japonicum Decne.)は、日本全国に広く分布し、その鱗茎は古くから良質なデンプン源として利用され、また、地上部は山菜として食されており、食経験の豊かな植物であるため、好ましく用いられる。本発明においては、カタクリ(Erythronium)属に属する植物の葉部を用いる。
【0014】
カタクリ(Erythronium)属に属する植物の葉部は水洗し、そのまま、または細切、乾燥、粉砕等を行うことにより、スラリー状、細粒状、顆粒状または粉末状として抽出に供する。
抽出溶媒としては、水や、低級アルコール(たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等)、多価アルコール(たとえば、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセリン等)等の極性を有する有機溶媒を用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の目的には、水および低級アルコールが好ましく用いられ、水と低級アルコールとの混合溶媒がより好ましく用いられる。低級アルコールとしては、メタノールおよびエタノールが好ましい。
また、水と低級アルコールとの混合割合(水:低級アルコール)は、これらの体積比にて50:50〜10:90であることが好ましく、30:70〜20:80であることがより好ましい。
抽出溶媒は、カタクリ(Erythronium)属に属する植物の葉部100g(乾燥重量)に対し、通常200mL〜3,000mL、好ましくは500mL〜2,000mLを用いる。
【0015】
抽出は、上記抽出溶媒にカタクリ(Erythronium)属に属する植物の葉部を浸漬し、そのまま静置し、もしくは撹拌して行うことができる。また、ビーズ式破砕装置等により、カタクリ(Erythronium)属に属する植物の葉部を抽出溶媒中で破砕し、またはカタクリ(Erythronium)属に属する植物の葉部を抽出溶媒中でホモジネートして行ってもよい。
抽出温度および時間は、カタクリ(Erythronium)属に属する植物の葉部の前処理の方法、抽出溶媒の種類、抽出方法等に応じて、適宜決定することができる。たとえば、低級アルコールを含む抽出溶媒に浸漬して抽出する場合、抽出は通常20℃〜30℃で1日間〜14日間行い、25℃〜30℃で2日間〜7日間行うことが好ましい。
抽出後、定法に従い、たとえばろ過、遠心分離等により、抽出液を回収する。
【0016】
本発明においては、カタクリ(Erythronium)属に属する植物の葉部の抽出物としては、上記溶媒による抽出液をそのまま用いてもよく、該抽出液を希釈もしくは濃縮し、または乾燥して用いてもよく、粗精製または精製して用いてもよい。前記抽出物の粗精製および精製は常法に従って行えばよく、たとえば「ダイヤイオンHP」(三菱化学株式会社製)等のイオン交換樹脂、「Sep−Pak C−18」(ウォーターズ社製)等の吸着剤による吸着および溶出、クロマトグラフィー等を適宜組み合わせて実施することができる。
【0017】
本発明のTNFα産生抑制剤は、上記カタクリ(Erythronium)属に属する植物の葉部の抽出物に、必要に応じて、製剤の分野で用いられる一般的な添加剤を加えて、製剤の分野で周知の製剤化手段、たとえば第十七改正日本薬局方製剤総則[3]製剤各条に記載された方法等により調製することができ、溶液状、懸濁液状、乳液状等の液状;ゲル状、ペースト状、クリーム状等の半固形状;粉末状、顆粒状、タブレット状、カプセル状等の固形状等の形態とすることができる。
【0018】
上記添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、被覆剤、基剤、溶剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、安定化剤、粘稠剤、pH調整剤、抗酸化剤、防腐剤、保存剤、矯味剤、甘味剤、香料、着色剤等が挙げられる。
【0019】
賦形剤としては、無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、デンプン(トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン等)、糖類(ブドウ糖、乳糖、白糖等)、糖アルコール(ソルビトール、マルチトール、マンニトール等)等が挙げられる。
【0020】
結合剤としては、ゼラチン、カゼインナトリウム、デンプンおよび加工デンプン(トウモロコシデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン等)、セルロースおよびその誘導体(結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)等が挙げられる。
【0021】
崩壊剤としては、ポビドン、クロスポビドン、セルロースおよびその誘導体(結晶セルロース、メチルセルロース等)等が挙げられる。
【0022】
滑沢剤としては、タルク、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0023】
被覆剤としては、メタクリル酸共重合体(メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体等)、メタクリレート共重合体(アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体等)等が挙げられる。
【0024】
基剤としては、炭化水素(流動パラフィン等)、ポリエチレングリコール(マクロゴール400、マクロゴール1500等)等が挙げられる。
【0025】
溶剤としては、精製水、一価アルコール(エタノール等)、多価アルコール(プロピレングリコール、グリセリン等)等が挙げられる。
【0026】
乳化剤としては、非イオン性界面活性剤(ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等)、陰イオン性界面活性剤(アルキル硫酸ナトリウム、N−アシルグルタミン酸塩等)、精製大豆レシチン等が挙げられる。
【0027】
分散剤としては、アラビアゴム、アルギン酸プロピレングリコール、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等)、陰イオン性界面活性剤(アルキル硫酸ナトリウム等)等が挙げられる。
【0028】
懸濁化剤としては、アルギン酸ナトリウム、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等)等が挙げられる。
【0029】
安定化剤としては、アジピン酸、エチレンジアミン四酢酸塩(カルシウム二ナトリウム塩、二ナトリウム塩等)、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン等が挙げられる。
【0030】
粘稠剤としては、水溶性高分子(ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー等)、多糖類(アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、トラガント等)等が挙げられる。
【0031】
pH調整剤としては、塩酸、リン酸、酢酸、クエン酸、乳酸、水酸化ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0032】
抗酸化剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸、没食子酸プロピル等が挙げられる。
【0033】
防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル(パラオキシ安息香酸メチル等)等が挙げられる。
また、保存剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビトール、パラオキシ安息香酸エステル(パラオキシ安息香酸メチル等)、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0034】
矯味剤としては、アスコルビン酸、エリスリトール、5’−グアニル酸二ナトリウム、クエン酸、L−グルタミン酸ナトリウム、酒石酸、DL−リンゴ酸等が挙げられる。
また、甘味剤としては、アスパルテーム、カンゾウエキス、サッカリン等が挙げられる。
【0035】
香料としては、オレンジエッセンス、l−メントール、d−ボルネオール、バニリン、リナロール等が挙げられる。
【0036】
着色剤としては、タール色素(食用赤色2号、食用青色1号、食用黄色4号等)、無機顔料(ベンガラ、黄色三二酸化鉄、酸化チタン等)、天然色素(アナトー色素、ウコン色素、カロテノイド等)等が挙げられる。
【0037】
上記した添加剤は、必要に応じて、1種または2種以上を用いることができる。
【0038】
上記したカタクリ(Erythronium)属に属する植物の葉部の抽出物は、後述するように、優れたTNFα産生抑制作用を示し、また、食経験のある植物由来であって、有効なTNFα産生抑制作用を示す濃度で細胞毒性を示さず、安全性が高い。
従って、上記したカタクリ(Erythronium)属に属する植物の葉部の抽出物を含有する本発明のTNFα産生抑制剤は、TNFαの過剰産生に起因する疾患の予防または治療もしくは改善において、有効成分として安全に使用することができる。
また、上記したカタクリ(Erythronium)属に属する植物の葉部の抽出物は、抽出溶媒による抽出操作により簡便に得ることができるため、本発明のTNFα産生抑制剤は、非常に低コストで提供することができる。
【0039】
本発明のTNFα産生抑制剤におけるカタクリ(Erythronium)属に属する植物の葉部の抽出物の含有量は、抽出物の調製方法(抽出溶媒の種類、抽出温度、抽出方法等)や、TNFα産生抑制剤の剤形等に応じて適宜決定されるが、固形分の乾燥重量にして、通常0.1重量%〜20重量%であり、好ましくは1重量%〜15重量%であり、より好ましくは5重量%〜12.5重量%である。
なお、上記「固形分」とは、カタクリ(Erythronium)属に属する植物の葉部の抽出物より、抽出溶媒を留去して得られる固形分をいう。
【0040】
本発明はまた、本発明のTNFα産生抑制剤を含有する医薬品(以下、「本発明の医薬品」とも称する)を提供する。
【0041】
本発明の医薬品は、上記した本発明のTNFα産生抑制剤に、必要に応じて、上記した添加剤を加え、製剤の分野で周知の製剤化手段、たとえば第十七改正日本薬局方製剤総則[3]製剤各条に記載された方法等により調製することができ、錠剤、被覆錠剤、チュアブル錠、丸剤、(マイクロ)カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、エリキシル剤、リモナーゼ剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、経口ゼリー剤等の経口製剤;溶液状、懸濁液状、乳液状等の注射剤、用時溶解または懸濁して用いる固形状の注射剤、輸液剤、持続性注射剤等の注射用製剤;外用散剤等の外用固形剤、リニメント剤、ローション剤(液剤、乳濁液剤、懸濁液剤等)等の外用液剤、外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤等のスプレー剤、油脂性軟膏剤、水溶性軟膏剤等の軟膏剤、水中油型または油中水型のクリーム剤、水性ゲル剤、油性ゲル剤等のゲル剤、テープ剤、パップ剤等の貼付剤等の外用製剤等の剤形とすることができる。
【0042】
本発明の医薬品は、TNFαの過剰産生に起因する疾患、たとえば、関節リウマチ、乾癬等のTh−17細胞性慢性疾患や、主としてIV型アレルギー反応により生じるアレルギー性疾患、たとえばアレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎等の予防または治療用医薬品として、好適に用いることができる。
ここで、「Th−17細胞性慢性疾患」とは、インターロイキン(IL)−17産生能を有するヘルパーT細胞のサブセットの一つであるTh−17細胞が、病態形成に関与する慢性疾患をいう。また、「IV型アレルギー反応」は、感作されたT細胞と抗原との反応により生じる遅延型のアレルギー反応である。
さらに、本発明の医薬品は、TNFαの過剰産生が関連する疾患、たとえば、糖尿病、高脂血症、敗血症性ショック、DIC、骨粗鬆症等の予防または治療にも、用いられ得る。
【0043】
本発明の医薬品は、特に皮膚に適用される外用製剤、すなわち皮膚外用剤として、好適に提供することができ、尋常性乾癬、膿疱性乾癬、滴状乾癬等のTh−17細胞性慢性皮膚疾患、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎等の主としてIV型アレルギー反応により生じるアレルギー性皮膚疾患の予防または治療用として、好適に用いることができる。
【0044】
本発明の医薬品における本発明のTNFα産生抑制剤の含有量は、本発明の医薬品の剤形や投与経路等に応じて適宜設定されるが、有効成分として含有されるカタクリ(Erythronium)属に属する植物の葉部の抽出物の固形分の乾燥重量にして、通常0.0005重量%〜5重量%であり、好ましくは0.001重量%〜2重量%であり、より好ましくは0.005重量%〜1重量%である。
本発明の医薬品の投与量および投与期間は、本発明の医薬品が投与される患者の性別、年齢、体重、症状およびその重篤度、本発明の医薬品の剤形、投与経路等に応じて、適宜決定される。
【0045】
また、本発明の医薬品においては、本発明の特徴を損なわない範囲で、TNFαの過剰産生に起因する疾患の治療に用いられる薬物を併用することができる。
かかる薬物としては、たとえば乾癬治療薬として用いられるビタミンA誘導体(レチノイド、エトレチナート等)、免疫抑制剤(シクロスポリン、メトトレキサート等)、アレルギー性疾患の治療に用いられる非ステロイド性抗炎症薬(スプロフェン、ブフェキサマク、ベンダザック、ウフェナマート等)等が挙げられる。
【0046】
さらに本発明は、本発明のTNFα産生抑制剤を含有する医薬部外品、特に皮膚外用医薬部外品(以下、本明細書において「本発明の医薬部外品」ともいう)または化粧品(以下、本明細書において「本発明の化粧品」ともいう)を提供する。
ここで、「医薬部外品」とは、医薬品よりは人体等に対する効果が緩和であるが、何らかの改善効果を有するものをいい、特に皮膚に外用される医薬部外品を「皮膚外用医薬部外品」という。いわゆる薬用化粧品は、皮膚外用医薬部外品に含まれる。
また、「化粧品」とは、身体を清潔にしたり、見た目を美しくしたりする目的で、皮膚等に適用されるもので、作用の緩和なものをいう。
本発明の医薬部外品または化粧品は、上記した本発明の皮膚外用剤に準じて製造することができ、化粧水、美容液、乳液、クリーム、洗顔料、パック、身体用洗浄料等の形態で提供され得る。
本発明の医薬部外品または化粧品は、尋常性乾癬、膿疱性乾癬、滴状乾癬等のTh−17細胞性慢性皮膚疾患等による皮膚症状の予防または改善用として、あるいは、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎等の主としてIV型アレルギー反応により生じるアレルギー性皮膚疾患による皮膚症状の予防または改善用として、好適に用いられる。
【0047】
本発明の医薬部外品または化粧品には、本発明の特徴を損なわない範囲で、多価アルコール(グリセリン、1,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール等)、アミノ酸またはその塩(アラニン、セリン、プロリン、DL−ピロリドンカルボン酸ナトリウム等)、タンパク質(ホエイ、水溶性コラーゲン、加水分解エラスチン等)、核酸(デオキシリボ核酸ナトリウム等)、ムコ多糖(コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等)、ヘパリン類似物質、植物抽出物(アシタバ抽出物、キュウリ抽出物、シラカバ抽出物等)等の保湿剤;アズレン類(アズレン、グアイアズレン、グアイアズレンスルホン酸エチル、グアイアズレンスルホン酸ナトリウム等)、アラントインおよびその誘導体(アラントイン、アスコルビン酸アラントイン、アラントイングリチルレチン酸等)、ビタミン((アスコルビル/トコフェリル)リン酸カリウム、パンテノール等)、植物抽出物(カミツレ抽出物、カンゾウ抽出物、キダチアロエ抽出物等)、グリチルリチン酸およびその塩(グリチルリチン酸、グリチルリチン酸アンモニウム、グリチルリチン酸二カリウム等)、グリチルレチン酸およびその誘導体(グリチルレチン酸、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸ピリドキシン、サクシニルグリチルレチン酸二ナトリウム等)等の抗炎症・肌荒れ防止剤等を含有させることができる。
【0048】
本発明の医薬部外品または化粧品における本発明のTNFα産生抑制剤の含有量は、上記本発明の医薬品における含有量に準じて定められる。
また、本発明の医薬部外品または化粧品の適用量および適用期間は、本発明の医薬部外品等が適用される対象者の性別、年齢、皮膚症状等に応じて適宜決定されるが、Th−17細胞性慢性皮膚疾患やアレルギー性皮膚疾患による皮膚症状を予防し、皮膚を健康な状態に維持する目的には、長期間にわたり、日常的なスキンケアにおいて継続して用いることが好ましい。
【0049】
さらに本発明は、本発明のTNFα産生抑制剤を含有し、TNFαの過剰産生に起因する疾患またはTNFαの過剰産生が関連する疾患の予防または改善用として有用な食品(以下本明細書において、「本発明の食品」ともいう)を提供する。
【0050】
本発明の食品は、本発明のTNFα産生抑制剤に、必要に応じて、食品の製造に際して一般的に用いられる食品添加物を加え、通常の食品製造技術により製造することができ、液状、懸濁液状、乳状等の液状食品;ゲル状、クリーム状、ペースト状等の半固形状食品;粉末状、顆粒状、シート状、カプセル状、タブレット状等の固形状食品等、種々の形態で提供することができる。
【0051】
さらに、本発明の食品は、本発明のTNFα産生抑制剤を各種食品原材料に加え、必要に応じて一般的に用いられる食品添加物を加えて製造することができ、清涼飲料水(果汁飲料、スポーツ飲料、コーヒー飲料、茶系飲料等)、乳製品(乳酸菌飲料、発酵乳、バター、チーズ、ヨーグルト、加工乳、脱脂乳等)、畜肉製品(ハム、ソーセージ、ハンバーグ等)、魚肉練り製品(蒲鉾、竹輪、さつま揚げ等)、卵製品(だし巻き、卵豆腐等)、菓子(クッキー、ゼリー、チューイングガム、キャンディ、スナック菓子、冷菓等)、パン、麺類、漬物、干物、佃煮、スープ、調味料等、種々の形態で提供することができる。
また、本発明の食品は、瓶詰め食品、缶詰食品、レトルトパウチ食品としても提供することができる。
【0052】
上記食品添加物としては、製造用剤(かんすい、結着剤等)、増粘安定剤(キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム等)、ゲル化剤(ゼラチン、寒天、カラギーナン等)、ガムベース(酢酸ビニル樹脂、ジェルトン、チクル等)、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、サポニン、レシチン等)、保存料(安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ε−ポリリシン等)、酸化防止剤(アスコルビン酸、エリソルビン酸、カテキン等)、光沢剤(セラック、パラフィンワックス、ミツロウ等)、防かび剤(チアベンタゾール、フルジオキソニル等)、膨張剤(炭酸水素ナトリウム、グルコノδ−ラクトン、ミョウバン等)、甘味料(アスパルテーム、アセスルファムカリウム、カンゾウ抽出物等)、苦味料(カフェイン、ナリンジン、ニガヨモギ抽出物等)、酸味料(クエン酸、酒石酸、乳酸等)、調味料(L−グルタミン酸ナトリウム、5’−イノシン酸二ナトリウム等)、着色料(アナトー色素、ウコン色素、クチナシ色素等)、香料(アセト酢酸エチル、アニスアルデヒド等の合成香料、オレンジ、ラベンダー等の天然香料)等が挙げられる。
本発明において、上記食品添加物は、1種または2種以上を用いることができる。
【0053】
さらに、本発明のTNFα産生抑制剤を、一般的に食事やデザートに供される各種食品に添加して、本発明の食品とすることができる。
たとえば、本発明のTNFα産生抑制剤は、茶系飲料、果汁飲料、スポーツ飲料等の清涼飲料水;牛乳、ヨーグルト等の乳製品;ゼリー、アイスクリーム等の菓子等に添加することができる。
【0054】
本発明の食品は、本発明のTNFα産生抑制剤を含有し、TNFαの過剰産生に起因する疾患あるいはTNFαの過剰産生が関連する疾患の予防または改善用として有用である。
TNFαの過剰産生に起因する疾患としては、たとえば、関節リウマチ、乾癬等のTh−17細胞性慢性疾患や、主としてIV型アレルギー反応により生じるアレルギー性疾患、たとえばアレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎等が挙げられる。
また、TNFαの過剰産生が関連する疾患としては、たとえば、糖尿病、高脂血症、敗血症性ショック、DIC、骨粗鬆症等が挙げられるが、本発明の食品は、糖尿病、高脂血症、骨粗鬆症等の慢性疾患の予防または改善用途に好適に用いられる。
【0055】
従って、本発明の食品は、TNFαの過剰産生に起因する疾患またはTNFαの過剰産生が関連する疾患の予防または改善用の特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の保健機能食品、病者用食品等の特別用途食品、健康補助食品、ダイエタリーサプリメント等としても提供され得る。
【0056】
本発明の食品における本発明のTNFα産生抑制剤の含有量は、上記本発明の医薬品における含有量に準じて定められる。
また、本発明の食品の摂取量および摂取期間は、本発明の食品を摂取させる対象者の性別、年齢、症状等に応じて適宜決定されるが、上記したTNFαの過剰産生に起因する疾患またはTNFαの過剰産生が関連する疾患の発症のリスクの高い者において、その発症を予防する目的には、長期間にわたり継続して、日常的に摂取させることが好ましい。
【0057】
なお、本発明の食品が、特に上記した保健機能食品、特別用途食品、健康補助食品等として提供される場合、本発明の食品は、1回あたりの摂取量単位で包装されまたは充填された形態とすることが好ましい。「1回あたりの摂取量単位で包装されまたは充填された形態」とは、1回あたりの摂取量ごとに袋体に包装され、またはボトルもしくは瓶等の容器に充填されているような形態をいう。1回あたりの摂取量単位で包装されまたは充填された本発明の食品には、本発明のTNFα産生抑制剤の1回あたりの摂取量が含有される。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
[実施例1、比較例1、2]TNFα産生抑制剤
カタクリ(Erythronium japonicum Decne.)の葉部を水洗し、94時間凍結乾燥した後、粒径500μm以下に粉砕して、葉部凍結乾燥粉末とした。
上記凍結乾燥粉末150mgに、80容量%メタノール水溶液を1.5mL添加し、ビーズ式破砕装置(「プリセリーズ24(Precellys 24)」、バーティンテクノロジーズ(Bertin Technologies)社製、エムエス株式会社)で5,000rpm、90秒×6回抽出処理した。次いで12,000×gにて10分間遠心分離し、上清を0.45μmのフィルター(「Polyvinylidene fluoride (PVDF) syringe Driven Filter Unit、φ4mm」、メルクミリポア社製)でろ過してろ液を回収した。ろ液を減圧濃縮して溶媒を除去し、濃縮乾固した抽出物をジメチルスルホキシド(DMSO)500μLに溶解し、実施例1のTNFα産生抑制剤とした。
また、カタクリ(Erythronium japonicum Decne.)の茎部および果実をそれぞれ水洗し、94時間凍結乾燥した後、粒径500μm以下に粉砕して、茎部凍結乾燥粉末および果実凍結乾燥粉末とし、それぞれ上記と同様に抽出処理して、比較例1、2のTNFα産生抑制剤とした。
実施例1および比較例1、2の各TNFα産生抑制剤におけるカタクリ(Erythronium japonicum Decne.)の各部の抽出物の含有量は、それぞれ出発原料とした凍結乾燥粉末量に換算して150mg/DMSO 500μL(すなわち300mg/mL)となるように調整した。
なお、実施例1および比較例1、2の各TNFα産生抑制剤中におけるカタクリ(Erythronium japonicum Decne.)の各部の抽出物の含有量としては、固形分の乾燥重量にして、それぞれ104.20mg/mL、105.44mg/mL、110.84mg/mLであった。
【0060】
[試験例1]TNFα産生抑制作用の評価
下記の通り、リポ多糖(LPS)と実施例1および比較例1、2の各TNFα産生抑制剤の共存下で、マクロファージ様細胞を培養し、LPS刺激によって誘導されるTNFαの産生に対する抑制作用を評価した。
(1)RAW264.7マウスマクロファージ細胞を、10(v/v)%の牛胎仔血清(FBS)を含有するRPMI−1640培地に懸濁し、1×10
5cells/mLの細胞懸濁液を調製した。前記細胞懸濁液を、96ウェルマイクロプレートに各ウェルあたり100μLずつ播種し(1×10
4cells/well)、CO
2インキュベーター(5%CO
2濃度)にて、37℃で24時間培養した。
(2)LPS(2ng/mL)、ならびに実施例1および比較例1、2の各TNFα産生抑制剤を、カタクリ(Erythronium japonicum Decne.)の各部の抽出物(固形分)の乾燥重量にして52.1μg/mL、104μg/mLおよび208μg/mLの3段階の各濃度で添加した上記培地(10(v/v)%のFBSを含有するRPMI−1640培地)に交換し、6時間培養した。なお、対照(control)およびLPS処理群として、LPSおよびTNFα産生抑制剤を添加しない前記培地、およびLPSのみを添加した前記培地のそれぞれに交換して、同様に培養した。各試験区とも、n=3とした。
(3)各ウェルから培養上清および培養細胞をサンプリングし、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法により培養上清中におけるTNFα量を測定し、WST−8(2-(2-methoxy-4-nitrophenyl)-3-(4-nitrophenyl)-5-(2,4-disulfophenyl)-2H-tetrazolium)法により培養細胞の細胞生存率を測定した。測定結果については、LPS処理群との有意差について、ボンフェローニの多重検定を行った。
(4)培養上清中におけるTNFα量および培養細胞の細胞生存率についての測定結果は、各試験区についてそれぞれ平均値±標準偏差にて、
図1に示した。
【0061】
図1に示されるように、実施例1および比較例1、2の各TNFα産生抑制剤は、LPSによるTNFαの産生に対し、いずれも濃度依存的に有意な(P<0.01)抑制作用を示したが、実施例1のTNFα産生抑制剤は、104μg/mLの濃度まで細胞生存率の低下は見られず、細胞毒性を示さないことが認められた。
これに対し、比較例1、2のTNFα産生抑制剤は、52.1μg/mLの濃度でも、細胞生存率の低下が見られた。
従って、本発明のTNFα産生抑制剤は、52.1μg/mL〜104μg/mL程度の低濃度で良好なTNFα産生抑制作用を示し、前記濃度では細胞毒性を示さず、安全性が高いことが示唆された。
【0062】
[試験例2]実施例1のTNFα産生抑制剤の炎症性サイトカイン遺伝子発現に及ぼす作用の評価
下記の通り、炎症誘導物質であるリポ多糖(LPS)と、実施例1のTNFα産生抑制剤の共存下でマクロファージ様細胞を培養し、LPS刺激によって誘導される3種類の炎症性サイトカイン、すなわちTNFα、インターロイキン1β(IL1β)、インターロイキン6(IL6)の各遺伝子の発現に対して、実施例1のTNFα産生抑制剤が及ぼす作用を評価した。
【0063】
(1)RAW264.7マウスマクロファージ細胞を、10(v/v)%の牛胎仔血清(FBS)を含有するRPMI−1640培地に懸濁し、1×10
5cells/mLの細胞懸濁液として、24ウェルマイクロプレートに各ウェルあたり1mLずつ播種し(1×10
5cells/well)、CO
2インキュベーター(5%CO
2濃度)にて、37℃で24時間培養した。
(2)LPS(2ng/mL)、ならびに実施例1のTNFα産生抑制剤を、カタクリ(Erythronium japonicum Decne.)の葉の抽出物(固形分)の乾燥重量にして26.0μg/mL、52.1μg/mL、104μg/mLおよび208μg/mLの4段階の各濃度で添加した上記培地(10(v/v)%のFBSを含有するRPMI−1640培地)に交換し、6時間培養した。なお、対照(control)およびLPS処理群として、LPSおよびTNFα産生抑制剤を添加しない前記培地、およびLPSのみを添加した前記培地のそれぞれに交換して、同様に培養した。各試験区とも、n=4とした。
(3)各ウェルの培養細胞から、トリゾール試薬(TRIzol Reagent)(インヴィトロージェン(Invitrogen)社製)を用いて、総RNAの抽出を行った。総RNA量は、超微量分光光度計「ナノドロップ(Nano Drop)」(サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)社製)を用いて260nmにおける吸光度により求めた。
(4)500ngの総RNAを用い、スーパースクリプト II 逆転写酵素(SuperScript II Reverse Transcriptase)(インヴィトロージェン(Invitrogen)社製)で逆転写反応させ、cDNAの合成を行った。
(5)パワーアップ SYBR グリーンマスターミックス(PowerUp SYBR Green Master Mix)(アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)社製)を用い、得られたcDNAを鋳型として、リアルタイムRT−PCR法により、TNFα、IL1β、IL6の各遺伝子からのmRNA発現量を測定した。各遺伝子について測定されたmRNA発現量を、内部標準のグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)のmRNA発現量で補正し、対照(control)における発現量を1とした場合の相対発現量を求めた。その結果を、各試験区について、それぞれ平均値±標準偏差にて、
図2〜4に示した。なお、測定結果については、各試験区とLPS処理群との間で、ボンフェローニの多重検定を行った。
【0064】
図2に示されるように、本発明の実施例1のTNFα産生抑制剤は、26.0μg/mL〜208μg/mLの濃度範囲で、LPSにより誘導されるTNFα遺伝子の発現を、濃度依存的に有意に(p<0.01)抑制した。
ただし、208μg/mLの濃度では、試験例1の場合と同様に細胞毒性が認められた。
【0065】
また、
図3、4に示されるように、LPS刺激により、TNFαの産生を介して促進されるIL1β遺伝子およびIL6遺伝子の発現に対しても、本発明の実施例1のTNFα産生抑制剤は、細胞毒性の認められない26.0μg/mL〜104μg/mLの濃度範囲で、濃度依存的に有意に(p<0.05またはp<0.01)抑制することが認められた。
【0066】
試験例2の上記結果から、本発明のTNFα産生抑制剤は、TNFαに加えて、IL1βやIL6等の炎症性サイトカインの産生を、遺伝子発現レベルで抑制することが確認され、TNFαの過剰産生により生じる疾患に対し、優れた予防または治療もしくは改善効果を示す可能性が示唆された。
【0067】
[実施例2]TNFα産生抑制剤
上記実施例1と同様にカタクリ(Erythronium japonicum Decne.)の葉部の抽出物(濃縮乾固物)を調製し、エタノール500μLに溶解して、実施例2のTNFα産生抑制剤とした。実施例2のTNFα産生抑制剤におけるカタクリ(Erythronium japonicum Decne.)の葉部の抽出物の含有量は、実施例1のTNFα産生抑制剤と同様に、固形分の乾燥重量にして104.2mg/mLであった。
【0068】
次に、本発明の医薬品(経口製剤)の実施例を示す。
【0069】
[実施例3]錠剤
(1)乳糖 54.90(重量%)
(2)結晶セルロース 30.00
(3)デンプン分解物 10.00
(4)グリセリン脂肪酸エステル 5.00
(5)実施例2のTNFα産生抑制剤 0.10
製法:(1)〜(5)を混合し、混練して造粒した後、打錠機にて打錠する。
【0070】
続いて、本発明の皮膚外用剤の実施例を示す。
[実施例4]ローション剤
(1)実施例2のTNFα産生抑制剤 0.05(重量%)
(2)グリセリン 5
(3)ポリエチレングリコール1500 2
(4)ポリオキシエチレンオレイルエーテル(15E.O.) 2
(5)エタノール 15
(6)水酸化カリウム 0.03
(7)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(8)精製水 75.82
製法:(1)〜(3)および(6)を(8)に添加して溶解する。(5)に(4)および(7)を溶解して、前記溶液に加えて均一とし、ろ過する。
【0071】
[実施例5]水中油型乳剤性軟膏
(1)白色ワセリン 25.0(重量%)
(2)ステアリルアルコール 25.0
(3)グリセリン 12.0
(4)ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
(5)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(6)精製水 36.8
(7)実施例2のTNFα産生抑制剤 0.1
製法:(1)〜(4)の油相成分を混合、溶解して均一とし、75℃に加熱する。一方、(5)を(6)に溶解して75℃に加熱し、これに前記油相成分を添加して乳化し、冷却後40℃にて(7)を添加、混合する。
【0072】
[実施例6]水中油型クリーム剤
(1)精製水 全量を100重量%とする量
(2)1,3−ブタンジオール 5(重量%)
(3)グリセリン 10
(4)キサンタンガム 0.15
(5)クエン酸ナトリウム 0.1
(6)エデト酸二ナトリウム 0.01
(7)パラオキシ安息香酸メチル 0.12
(8)精製水 5
(9)実施例2のTNFα産生抑制剤 0.05
(10)ジオクチルカルボン酸 3
(11)バチルアルコール 1.8
(12)ベヘニルアルコール 1.2
(13)マイクロクリスタリンワックス 1
(14)ミツロウ 2.5
(15)キャンデリラロウ 0.8
(16)水素添加パーム油 2.5
(17)ヘキサメチルシクロトリシロキサン 25
(18)スクワラン 3
(19)精製ホホバ油 2
(20)マカデミアナッツ油 1
(21)ポリヒドロキシステアリン酸 0.2
(22)トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル 0.3
(23)香料 0.02
製法:(1)に(2)〜(7)を添加、溶解して70℃〜75℃に加熱する(水相成分)。(10)〜(22)を混合し、70℃〜75℃に加熱して均一とする(油相成分)。前記水相成分を撹拌しながら、前記油相成分を徐々に添加して乳化する。40℃まで冷却した後、(8)に溶解した(9)、および(23)を順次添加して混合し、均一とする。