(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-137440(P2018-137440A)
(43)【公開日】2018年8月30日
(54)【発明の名称】基板回路装置及びプリント配線基板
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20180803BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20180803BHJP
【FI】
H01L23/12 E
H05K1/02 P
H05K1/02 N
H01L23/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-27561(P2018-27561)
(22)【出願日】2018年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2017-30537(P2017-30537)
(32)【優先日】2017年2月21日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079119
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 元彦
(74)【代理人】
【識別番号】100147728
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 信司
(72)【発明者】
【氏名】戸田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】新井 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 学
(72)【発明者】
【氏名】長友 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】上野 徹
(72)【発明者】
【氏名】丸子 亜登
(72)【発明者】
【氏名】小川 浩史
(72)【発明者】
【氏名】大森 鉄男
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA02
5E338AA03
5E338BB75
5E338CC01
5E338CC04
5E338CC06
5E338CD40
5E338EE13
(57)【要約】
【課題】
外部から照射されるノイズの影響を低減することができる基板回路装置を提供する。
【解決手段】
基板回路装置は、プリント配線基板と、該基板の表面側に載置され且つ少なくとも1つのグランド端子を有するICチップと、該基板に配設されてICチップのグランド端子にグランド電位を供給する配線パターンと、を有する。配線パターンはプリント配線基板の裏面上に配設される。基板回路装置は、配線パターンに接続され且つプリント配線基板を貫通した少なくとも1つのビアを、プリント配線基板の表面におけるICチップの搭載領域内に存在する位置に有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線基板と前記プリント配線基板の表面側に載置され且つ少なくとも1つのグランド端子及び電源端子を有するICチップと、前記プリント配線基板上に載置されて前記ICチップのグランド端子及び電源端子にそれぞれグランド電位及び電源電位を供給するグランド配線パターン及び電源配線パターンと、を有する基板回路装置であって、
前記グランド配線パターンは、前記プリント配線基板の裏面上に載置され、
前記グランド配線パターンに接続されかつ前記プリント配線基板を貫通した少なくとも1つのビアが前記プリント配線基板の表面における前記ICチップの載置範囲内に存在することを特徴とする基板回路装置。
【請求項2】
一端が前記電源端子に接続され他端がグランドビアに接続されたバイパスコンデンサを、前記プリント配線基板の表面側に有することを特徴とする請求項1に記載の基板回路装置。
【請求項3】
前記電源配線パターンは、前記電源端子に接続された前記バイパスコンデンサの前記一端に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の基板回路装置。
【請求項4】
プリント配線基板と前記プリント配線基板の表面側に載置され且つ少なくとも1つのグランド端子及び電源端子を有するICチップと、前記プリント配線基板上に載置されて前記ICチップのグランド端子及び電源端子にそれぞれグランド電位及び電源電位を供給するグランド配線パターン及び電源配線パターンと、を有する基板回路装置であって、
前記ICチップは複数の電源端子を有し、前記バイパスコンデンサの前記他端の各々が1つの共通のグランドビアに接続され、前記共通のグランドビアは前記バイパスコンデンサの各他端同士を結ぶ直線と交差又は接することを特徴とする基板回路装置。
【請求項5】
プリント配線基板と前記プリント配線基板の表面側に載置され且つ少なくとも1つのグランド端子及び電源端子を有するICチップと、前記プリント配線基板上に載置されて前記ICチップのグランド端子及び電源端子にそれぞれグランド電位及び電源電位を供給するグランド配線パターン及び電源配線パターンと、を有する基板回路装置であって、
前記ICチップは複数の電源端子を有し、前記バイパスコンデンサの前記他端の各々が1つの共通のグランドビアに接続され、
前記共通のグランドビアの中心軸と前記バイパスコンデンサの各他端とを含む2つの平面が成す前記ICチップを臨む角度が所定角度以上であることを特徴とする基板回路装置。
【請求項6】
ICチップが搭載される第1の領域と該第1の領域に隣接する第2の領域とを備えた第1の層を有するプリント配線基板であって、
前記プリント配線基板の前記第1の層の前記第1の領域と前記第2の領域に跨って設けられた第1の配線と、
前記プリント配線基板の前記第1の層の前記第2の領域に設けられた第2の配線と、
前記プリント配線基板の前記第1の層を貫通して前記第1の領域の前記第1の配線に接続された第1のビアと、
前記プリント配線基板の前記第1の層を貫通して前記第2の配線に接続された第2のビアと、
前記第1の配線及び前記第2の配線とは前記第1の基板に対して反対側に設けられ、前記第1のビア及び前記第2のビアを介して該第1の配線及び該第2の配線と電気的に接続されるグランド層と、
を有することを特徴とするプリント配線基板。
【請求項7】
請求項6に記載のプリント配線基板において、
前記プリント配線基板の前記第2の領域に設けられ、前記第2のビアに接続される第3の配線と、
をさらに設けたことを特徴とするプリント配線基板。
【請求項8】
ICチップが搭載される第1の領域と該第1の領域に隣接する第2の領域とを備えた第1の層を有するプリント配線基板であって、
前記プリント配線基板の前記第1の層の前記第2の領域に設けられ、電源電位が供給される第1の配線と、
前記プリント配線基板の前記第1の層の前記第2の領域に設けられ、前記第1の配線と離間して配置された第2の配線と、
前記プリント配線基板の前記第1の層の前記第2の領域に設けられ、前記第1の配線及び前記第2の配線と離間して配置された第3の配線と、
前記プリント配線基板の前記第1の層を貫通して前記第1の配線に接続された第1のビアと、
前記プリント配線基板の前記第1の層を貫通して前記第2の配線及び前記第3の配線に接続された第2のビアと、
前記第1の配線、前記第2の配線、及び前記第3の配線とは前記第1の基板に対して反対側に設けられ、前記第1のビア及び前記第2のビアを介して該第1の配線、該第2の配線及び該第3の配線と電気的に接続されるグランド層と、
を有することを特徴とするプリント配線基板。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載のプリント配線基板において、
前記第2の配線と、前記第1の配線と、前記第3の配線と、がこの順に前記第1の領域の外周に位置する前記第2の領域上に配置されていることを特徴とするプリント配線基板。
【請求項10】
請求項7乃至請求項9に記載のプリント配線基板において、
前記プリント配線基板の前記第1の層は、前記第1の配線と前記第2のビアと前記第3の配線と前記第2の配線とによって囲まれる第1の配線不存在領域を備えたことを特徴とするプリント配線基板。
【請求項11】
請求項7乃至請求項10のいずれか1項に記載のプリント配線基板において、
前記プリント配線基板の前記第1の層は、前記第1の配線及び前記第3の配線とが該表面上に形成された他の配線パターンから独立する第2の配線不在領域を備えたことを特徴とするプリント配線基板。
【請求項12】
請求項6乃至請求項11のいずれか1項に記載のプリント配線基板と、
前記プリント配線基板の前記第1の領域に載置され、前記第1の配線に接続されるグランド端子と、前記第2の配線に接続される電源端子と、を有するICチップと、
を備えたことを特徴とする基板回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路(ICチップと称する)を搭載する基板回路装置が知られている。例えば、特許文献1には、ICチップの電源、グランド端子から発生するコモンモードノイズに起因するEMI(ElectroMagnetic Interference)を低減することを目的とした基板回路装置が提案されている。当該基板回路装置においては、ICチップの電源端子とグランド端子とを、それぞれコンデンサを介して導電パターンに接続して、当該導体パターンを、グランドプレーン及び電源プレーンに接続されていないプレーン導体にフィルタを介して接続している。これによって、相対的にアンテナとなるプリント配線板のグランド及び電源に流れるコモンモードノイズが低減されることが、特許文献1に記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、電源層とグランド層とに各々形成された回路パターンから発生する不要電磁放射を抑制することを目的としたプリント配線板が提案されている。この不要電磁放射は特許文献1のEMIと同様のものである。ICチップ等の電子部品を搭載していない状態の当該プリント配線板自体の共振周波数fとほぼ同一の共振周波数を有するバイパスコンデンサを、当該プリント配線板の電源層とグランド層との間に接続することによって、不要な電磁放射が抑制されることが、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−027140
【特許文献2】特開2001−203434
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている基板回路装置のプリント配線板の表面において、外部から電磁誘導を受け得る電源線−グランド線ループが存在している。よって、当該ループが外部からのノイズ(電磁波、EMS(ElectroMagnetic Susceptibility)等)の電磁誘導作用を受けると、これにより起電流が発生し、ICチップの電源電圧が変動する問題がある。電子機器に搭載されるICチップやLSI(Large Scale Integration)チップの設計においても電磁誘導作用低減のための各種工夫が施されているが、従来の基板回路装置におけるノイズ耐性の確保は不十分である。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、外部ノイズの混入を低減することができる基板回路装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の基板回路装置は、プリント配線基板とプリント配線基板の表面側に載置され且つ少なくとも1つのグランド端子及び電源端子を有するICチップと、プリント配線基板上に載置されてICチップのグランド端子及び電源端子にそれぞれグランド電位及び電源電位を供給するグランド配線パターン及び電源配線パターンと、を有する基板回路装置であって、グランド配線パターンは、プリント配線基板の裏面上に載置され、グランド配線パターンに接続され且つプリント配線基板を貫通した少なくとも1つのビアがプリント配線基板の表面におけるICチップの搭載範囲内に存在することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の基板回路装置の一部を示す概略平面図
【
図2】実施例2の基板回路装置の一部を示す概略平面図
【
図3】実施例2の基板回路装置の一部の変形例を示す概略平面図
【
図4】実施例2の基板回路装置の比較例を示す部分平面図
【
図5】実施例2の基板回路装置のプリント配線基板の部分平面図
【
図6】実施例2の基板回路装置のプリント配線基板の概略図
【
図7】実施例2の基板回路装置の変形例のプリント配線基板の概略図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明による実施例の基板回路装置について詳細に説明する。なお、実施例において、実質的に同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本実施例の基板回路装置10の一部を示す概略平面図である。基板回路装置10は、ICチップ20と当該ICチップ20が搭載されるプリント配線基板11とにより構成されている。なお、
図1において、基板回路装置10のプリント配線基板11は信号配線のパターンや電源配線及びグランド配線のパターン等のプリント配線を含むが、説明の便宜上、信号配線のプリント配線を省略している。また、本実施例ではプリント配線基板11がその表面にICチップの搭載面を備え、その裏面にグランド層GNDを備えて構成された単層のプリント配線基板である場合について説明する。
【0011】
ICチップ20は、第1電源端子VDD、第2電源端子VDDL及び第3電源端子VSSを有している。第1電源端子VDD及び第2電源端子VDDLはICチップ20内のFET回路のプラス電源端子であって、NチャネルFETのドレイン側の電源端子である。第3電源端子VSSはICチップ20内のFET回路のマイナス電源端子であって、片(単)電源方式ならグランド端子であって、NチャネルFETのソース側の端子でもある。また、ICチップ20は信号端子(破線で示す)等の複数の接続端子を含む。なお、本実施例ではICチップ20がQFP(Quad Flat Package)パッケージである場合について説明するが、ICチップのパッケージ形状としてはBGA(Ball Grid Array)やPGA(Pin Grid Array)など、外部接続端子がアレイ状に二次元配列されている形状であっても良い。なお、第1電源端子VDDには電源電位が供給されており、第2電源端子VDDLではICチップ内で電源電圧に基づいて生成された内部電源電位が供給される構成としてもよい。
【0012】
プリント配線基板11は表面11Fと裏面11Rとを有する単層(以下、第1の層と称する。)の基板により構成され、表面11FにはICチップ20が搭載される第1の領域R1と当該第1の領域R1に隣接する第2の領域R2とが画定されている。なお、第1の領域R1はICチップ20本体が配置される領域を示し、ICチップ20が備える端子類とプリント配線基板11とが接続される部分は第2の領域R2に含まれる。また、裏面11Rには後述するグランド層GNDが形成されるグランド領域R3と当該グランド領域R3に隣接し電源ラインVDD1が形成される切欠き領域GCLとが画定されている。
【0013】
プリント配線基板11の表面11F上の第1の領域R1にはICチップ20が搭載されている。また、第2の領域R2には配線パターン13(以下、導体13)として、配線パターン13a、13b、13c、13d、及び13e(以下、導体13a、導体13b、導体13c、導体13d、及び導体13eという。)が設けられ、バイパスコンデンサC1及びバイパスコンデンサC2が搭載されている。導体13aの一方端のパッドにはICチップ20の第1電源端子VDDが接続されており、導体13aの他方端のパッドには、バイパスコンデンサC1の電源端子側一端が接続されている。導体13bの一方端のパッドにはバイパスコンデンサC1のグランド側一端が接続されており、導体13bの他方端にはビアVIA1が接続されている。ビアVIA1はプリント配線基板11の第1の層を貫通して裏面11Rのグランド層GNDに接続されている。導体13dの一方端のパッドにはICチップ20の第2電源端子VDDLが接続されており、導体13dの他方端のパッドにはバイパスコンデンサC2の電源端子側一端に接続されている。導体13eの一方端のパッドにはバイパスコンデンサC2のグランド側一端が接続されており、導体13eの他方端にはビアVIA3が接続されている。ビアVIA3はプリント配線基板11の第1の層を貫通して裏面11Rのグランド層GNDに接続されている。導体13cにはその一方端がバイパスコンデンサC1の電源端子側一端及び導体13aに接続されており、他方端にはビアVIA2に接続されている。ビアVIA2はプリント配線基板11の第1の層を貫通して裏面11Rの電源ラインVDD1に接続されている。
【0014】
プリント配線基板11の表面11Fにはさらに導体13fが第1の領域R1と第2の領域R2とに跨って設けられている。導体13fの一方端のパッドには第2の領域R2上でICチップ20の第3電源端子VSSが接続されており、導体13fの他方端には第1の領域R1上でビアVIA4に接続されている。ビアVIA4はプリント配線基板11の第1の層を貫通して裏面11Rのグランド層GNDに接続されている。また、第2の領域R2上に設けられた導体13fは導体13a及び導体13dの間に離間して配置されており、これらの導体13a、13f、及び13dはその間に他のパターンを配置させることなくこの順番で第1の領域R1の外周に位置する第2の領域R2上に配置されている。
【0015】
プリント配線基板11の表面11Fの反対側の裏面11Rにはグランド層GNDが設けられるグランド領域R3とグランド領域R3に隣接し電源ラインVDD1が設けられる切欠き領域GCLとが画定されている。グランド領域R3は裏面11R上に一部切欠き領域CGLを除いて広範な領域として設けられている。グランド領域R3は例えば矩形状の領域であって一つの角部が内側に窪んだ形状を有しており、この場合、切欠き領域GCLはこの窪んだ領域となる。言い換えれば、グランド領域R3は裏面11Rの一つの角部の近傍を避けて設けられており、裏面11Rには当該一つの角部を含んだ切欠き領域CGLが設けられている。また、切欠き領域CGLは裏面11Rの外周を含んだ裏面11Rの一部を占める領域であり、この部分を除いた領域をグランド領域R3としても良い。
【0016】
グランド層GNDは裏面11R上のグランド領域R3に一様に設けられた導電層であり、例えば信号配線のパターンに比べて大きな配線、所謂ベタ配線として形成されている。また、裏面11Rの切欠き領域CGLにはグランド層GNDとは離間して電源ラインVDD1が形成されている。
【0017】
本発明の実施例1はかかる構造を有することから、ビアVIA4がプリント配線基板11の表面11Fにおける第1の領域R1内に配置されて存在する故に、当該表面11F側からの電磁波等のノイズの侵入を防ぐことができる。プリント配線基板の裏面11Rに配置されたグランド層GNDは、グランドビアであるVIA4を介してICチップ20の第3電源端子VSSすなわちグランド端子にグランド電位を供給している。なお、グランドビアであるビアVIA1、ビアVIA3もバイパスコンデンサC1及びC2のグランド側端子にグランド電位を供給している。また、ICチップ20の下方に配置されるプリント配線基板11の表面11F側のグランドビアVIA4からグランド端子の第3電源端子VSSにまで延在するグランド配線パターンすなわち導体13fも、第1の領域R1に配置されて存在する故に、当該表面11F側からの電磁波等のノイズの侵入を防ぐことができる。また、電源ラインVDD1が裏面11Rに設けられることにより、表面11F側に設けられた場合には電源ラインは電磁波を受信するアンテナの役割を果たすことから電源電圧の変動等の異常を発生させることとなるが別層に電源ラインを設けることによってこのような悪影響を回避することができる。
【実施例2】
【0018】
図2は実施例2の基板回路装置10の一部を示す概略平面図である。
【0019】
実施例2は、
図2に示すように、実施例1の
図1に示すビアVIA1、ビアVIA3に代えて1つの共通のグランドビアVIA5(プリント配線基板11の第1の層を貫通して裏面11Rのグランド層GNDに接続されている。)とし、バイパスコンデンサC1及びC2のグランド側に接続されている導体13b及び導体13eがこのグランドビアVIA5に接続されていることを除き、実施例1と同様の構成を有している。グランドビアVIA5は、一対のバイパスコンデンサC1及びC2のグランド側一端同士を結ぶ直線(図示せず。)を横切る位置に配置され、導体13b及び導体13eのそれぞれの他方端はグランドビアVIA5に接続して配置される。また、グランドビアVIA5、導体13b、及び導体13eではICチップ20に対してグランドビアVIA5が最も離れた位置に配置されており、導体13b及び導体13eはグランドビアVIA5よりもICチップ20に近い位置に配置される。これらグランドビアVIA5、導体13b及び導体13eによりグランド線ループが形成できる。また、
図3に示すように、ICチップ20の一対のバイパスコンデンサC1及びC2の各他方端が共通のグランドビアVIA5aに接続され、グランドビアVIA5がバイパスコンデンサC1及びC2の一対の各他方端(グランド側)を結ぶ直線xx−xxと交差(グランドビアVIA5a)又は接するように(グランドビアVIA5b、VIA5c)導体13b及び導体13eを形成することによりグランド線ループを形成できる。さらに
図3の破線矢印内に示すように、共通のグランドビアVIA5dの中心軸とバイパスコンデンサC1及びC2の各他方端とを含む2つの平面y、zが成すICチップ20を臨む角度αが例えば90度以上180以下の所定角度であるように、グランド線ループを構成できる。このとき導体13b及び導体13eはグランドビアVIA5との角度αを上述の所定角度としたうえでバイパスコンデンサC1及びC2に曲線で接続するように構成しても良い。
【0020】
本実施例によっても実施例1と同様に、プリント配線基板11の表面11F上に設けられた配線パターンによって直接ICチップ20の第3電源端子VSSをグランドビアVIA5と接続させることなく他層を介して電気的に接続させることにより、当該接続していない部位からのノイズ侵入を防ぐことができる。また、ビアVIA4がプリント配線基板11の表面11Fにおける第1の領域R1内に配置されて存在する故に、当該表面11F側からの電磁波等のノイズの侵入を防ぐことができ、ICチップ20の下方に配置されるプリント配線基板11の表面11F側のグランドビアVIA4からグランド端子の第3電源端子VSSにまで延在するグランド配線パターンすなわち導体13fも、第1の領域R1に配置されて存在する故に、当該表面11F側からの電磁波等のノイズの侵入を防ぐことができる。
【0021】
さらに、第3電源端子VSSに電気的に接続された表面11F側の配線パターンを他の配線パターンから独立とすることにより、すなわち導体13bおよび導体13eはそれぞれバイパスコンデンサC1及びC2とグランドビアVIA5とを接続する以外に他の配線と接続しない構成、言い換えれば導体13b及び導体13eが配線不存在領域によって囲まれた構成とすることにより、表面11F側にICチップ20に用いられるグランド配線パターンとは異なるグランド線(図示せず)があったとしても当該グランド線パターンからのノイズ侵入を防ぐこともできる。
【0022】
プリント配線基板11は、
図2に示すようにその通電極VIAを信号線及びグランド線から離間させ且つバイパスコンデンサC1及びC2とビアVIAとを挟む配線不存在領域VCLを有するように構成できる。
【0023】
[磁界ノイズ照射試験]
具体的に、ノイズシミュレータを用いて配線不存在領域VCLの効果を確認するプリント配線基板の磁界ノイズ照射試験を行った。磁界ノイズ照射試験は、高電圧インパルスノイズを発生させる機器を用い、当該機器にループアンテナを接続して磁界を発生させ、プリント配線基板に照射させる試験であり、このときのインパルスノイズ電圧に対する耐圧を測定するものである。
【0024】
図4は、配線不存在領域VCLが無いプリント配線基板(比較例)の部分平面図である。
図5は、配線不存在領域VCLが有るプリント配線基板の部分平面図である。また、
図6は
図5のプリント配線基板の部分平面図から要部を抽出したプリント配線基板の概略図である。
【0025】
磁界ノイズ照射試験の結果、
図4の配線不存在領域VCLが無い従来型のプリント配線基板が800V程度の耐圧であったが、
図5の配線不存在領域VCLが有るプリント配線基板では2000V以上の耐圧が得られた。
【0026】
図6を参照すると、この配線不存在領域VCLは、第1電源端子VDDに接続された導体13aとバイパスコンデンサC1と導体13bとVIA5と導体13eとバイパスコンデンサC2と第2電源端子VDDLに接続された導体13dと、第3電源端子VSSに接続された導体13fとに囲まれた領域であり、プリント配線基板11の表面11F上で第1電源端子VDD及び第2電源端子VDDLと第3電源端子VSSとの接続を妨げる位置に存在している。また、もう1か所の配線不存在領域VCLはグランド層GNDに接続されているVIA5と導体13bと導体13eとがプリント配線基板11の表面11F上にて他の配線との接続を妨げる位置に存在している。なお、
図6においては、導体13fは第1の領域R1を覆いVIA4に接続する構成となっている。
【0027】
本実施例によれば、ICチップの電源端子に接続されたバイパスコンデンサの電源グランドループの一部を囲むように配線不存在領域VCLを配置しているので、電源グランドループが上記配線不存在領域VCLによって形成される開口部の外周から分離され、外部から受けるノイズの影響を抑制することができ、この結果として外部から受けるノイズの影響を低減させることができる。
【0028】
(実施例2の変形例)
図7は実施例2の変形例としての基板回路装置10の一部を示す概略平面図である。実施例2の変形例では、実施例2の
図6に示す導体13f、グランドビアVIA4に代えて導体13g、導体13h及びグランドビアVIA6を有している。導体13gはプリント配線基板11の表面11Fの第2の領域R2に設けられており、導体13gの一方端のパッドには第2の領域R2上でICチップ20の第3電源端子VSSが接続されており、導体13gの他方には第2の領域R2上でグランドビアVIA6に接続されている。導体13hはプリント配線基板11の表面11Fの第1の領域R1を覆って形成されるGND電位の所謂ベタ配線の配線パターンであり、
図5を参照するように第1の領域R1の角部から第2の領域R2へ他の配線パターンを避けて広く延在して構成されても良い。グランドビアVIA6はプリント配線基板11の第1の層の第2の領域R2を貫通して裏面11Rのグランド層GNDに接続されている。
図6に記載した導体13fとは異なり、導体13gは第1の領域R1を覆う導体13hとは離間して設けられている。
【0029】
このような構成とすることで実施例2と同様に、導体13b及び導体13eが配線不存在領域によって囲まれた構成とすることにより、表面11F側にICチップ20に用いられるグランド配線パターンとは異なるグランド線(図示せず)があったとしても当該グランド線パターンからのノイズ侵入を防ぐことができ、電源グランドループが配線不存在領域VCLによって形成される開口部の外周から分離され、外部から受けるノイズの影響を抑制することができ、この結果として外部から受けるノイズの影響を低減させることができる。また、本変形例のように導体13gと導体13hとを離間することにより、ベタ配線の導体13h(特に上述のように第2の領域R2への延在部分を備える場合)に係る導体13hの輪郭に沿って電磁誘導による起電流が発生したり他の配線パターンを経由してノイズが与えられたりするなどのおそれが低減することとなる。
【0030】
各実施例の基板回路装置によれば、電源端子からの折り返すグランド線ループの大部分を基板回路装置の表面と違う面(プリント配線基板の断面及び裏面)にて構成する事により、電磁誘導による起電流を発生しにくくしている。よって、単純に基板回路装置の表面でバイパスコンデンサを実装した場合に比べ、外部からの電磁波(ノイズ)による起電流を低減でき、LSI、ICの誤動作を防止できる。また、これらの構成によって、ICチップ20の第1電源端子VDD又は第2電源端子VDDLと、第3電源端子VSSとに対して、プリント配線基板11の表面11Fで直接電源からグランドに接続されるループを形成するのではなく、裏面11R側にまでループを拡張させて接続させる構成となるため、表面11F側から電磁波が印加されたとしても電磁誘導による起電流が発生しづらい構造となるため、ノイズによる誤作動を抑制することができる。また、第1電源端子VDDと第3電源端子VSSと第2電源端子VDDLとがこの順に並んで配置されていることから、第1電源端子VDDからバイパスコンデンサC1を経由してグランドビアVIA5に接続されるループと第2電源端子VDDLからバイパスコンデンサC2を経由してグランドビアVIA5に接続されるループとに垂直方向から電磁波が印加された場合、第3電源端子VSSからみて各ループの起電流が逆方向に流れて打ち消しあうこととなる。そのため第1電源端子VDD、第2電源端子VDDL、及び第3電源端子VSSに印加される誘起電流が低減される結果、起電流によるノイズ自体を低減させることができる。また、バイパスコンデンサ以外にも、スイッチングレギュレータの昇圧コンデンサ、リニアレギュレータの位相補償用コンデンサも同様である。さらに、水晶振動子やフィルタ等で、LSIの複数の端子間でループを作る様な配線が必要となる場合にも本発明は有用である。
【0031】
なお、各ビアの端部に接続パッドを設けておき、該接続パッドと配線を介してバイパスコンデンサと接続する形態として構成されているが、この形態に限定されるものではなく、例えば接続端子やバイパスコンデンサ等の各種面実装部品に直接接続することができるようにしてよい。
【0032】
なお、プリント配線基板においては単層のプリント配線基板として説明したが、実際にはこれに限定されず複数層の配線基板を有するプリント配線基板としても良い。この場合、裏面11RはICチップが搭載される層の裏面に構成されても良いし、他の層の表面11F側とは反対側の面に構成されても良く、表面11Fの反対側のいずれかの面に構成されていれば良い。
【符号の説明】
【0033】
10 基板回路装置
11 プリント配線基板
11F 表面
11R 裏面
20 ICチップ
13、13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13h 導体
VDD 第1電源端子
VDDL 第2電源端子
VDD1 電源ライン
VSS 第3電源端子
VIA、VIA1、VIA2、VIA3、VIA4、VIA5、VIA5a、VIA5b、VIA5c、VIA5d、VIA6 ビア
GND グランド層
C1、C2 バイパスコンデンサ
R1 第1の領域
R2 第2の領域
R3 グランド領域
GCL 切欠き領域