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特開2018-142802半導体装置及びデータ復調回路の基準電圧生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-142802(P2018-142802A)
(43)【公開日】2018年9月13日
(54)【発明の名称】半導体装置及びデータ復調回路の基準電圧生成方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/06 20060101AFI20180817BHJP
【FI】
   H04L27/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-35062(P2017-35062)
(22)【出願日】2017年2月27日
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079119
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 元彦
(74)【代理人】
【識別番号】100147728
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 信司
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 征一郎
(57)【要約】
【目的】受信信号の振幅が小さい場合であっても精度良くデータ信号の復調を行うことができる半導体装置及びデータ復調回路の基準電圧生成方法を提供することを目的とする。
【構成】受信信号を包絡線検波して検波信号を得る包絡線検波部と、検波信号に基づき基準電圧を生成する基準電圧生成部と、検波信号の値と基準電圧の大きさとを比較し、比較結果に基づいてデータ信号を生成するコンパレータと、を含み、基準電圧生成部は、出力ノードを有し、検波信号から所定のオフセット値を差し引いたオフセット検波信号と出力ノードの電圧との差分に応じた電圧を基準電圧として出力ノードに出力するオペアンプと、オフセット検波信号の値が基準電圧より高い場合には、オフセット検波信号の値が基準電圧以下となる場合よりもオペアンプの動作電流を大きくする動作電流調整回路と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを変調した変調信号を含む受信信号を受け、前記変調信号を復調してデータ信号を生成する半導体装置であって、
前記受信信号を包絡線検波して検波信号を得る包絡線検波部と、
前記検波信号に基づき基準電圧を生成する基準電圧生成部と、
前記検波信号の値と前記基準電圧の大きさとを比較し、比較結果に基づいて前記データ信号を生成するコンパレータと、を含み、
前記基準電圧生成部は、
出力ノードを有し、前記検波信号から所定のオフセット値を差し引いたオフセット検波信号と前記出力ノードの電圧との差分に応じた電圧を前記基準電圧として前記出力ノードに出力するオペアンプと、
前記オフセット検波信号の値が前記基準電圧より高い場合には、前記オフセット検波信号の値が前記基準電圧以下となる場合よりも前記オペアンプの動作電流を大きくする動作電流調整回路と、を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記オペアンプは、所定の固定電流値を有する電流を基本動作電流として生成する動作電流生成部を含み、
前記動作電流調整回路は、前記オフセット検波信号の値が前記基準電圧より高い場合に、前記オフセット検波信号の値と前記基準電圧との差分に対応した電流値を有する調整電流を前記基本動作電流に加えることにより前記動作電流を大きくすることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記オペアンプは、
前記基本動作電流、又は前記基本動作電流に前記調整電流を加えた電流が流れる動作電流ノードと、
前記動作電流ノードに流れる電流を、前記検波信号の値に対応した電流値を有する第1の電流と前記出力ノードの電圧に対応した電流値を有する第2の電流とに分け、前記第1の電流を第1のノードに流すと共に前記第2の電流を第2のノードに流す差動対と、を含み、
前記動作電流調整回路は、
前記第1のノードの電圧に対応した電流を第3のノードに供給する第1のトランジスタと、
前記第2のノードの電圧に対応した電流を第4のノードに供給する第2のトランジスタと、
前記第4のノードに流れる電流の電流値に対応した第1のミラー電流を生成する第1の電流ミラー回路と、
前記第3のノードに流れる電流から前記第1のミラー電流を差し引いた電流の電流値に対応した第2のミラー電流を前記調整電流として生成する第2の電流ミラー回路と、を含むことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記基準電圧生成部は、一端に前記出力ノードが接続されており他端に接地電位が印加されているキャパシタを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の半導体装置。
【請求項5】
データを変調した変調信号を含む受信信号を包絡線検波して得た検波信号の値及び基準電圧の大きさを比較し、比較結果に基づいて前記データ信号を生成するデータ復調回路における前記基準電圧の生成方法であって、
前記検波信号から所定のオフセット値を差し引いたオフセット検波信号と、出力ノードの電圧との差分に応じた電圧を前記基準電圧として前記出力ノードに出力するオペアンプの動作電流を、前記オフセット検波信号の値が前記基準電圧より高い場合には、前記オフセット検波信号の値が前記基準電圧以下となる場合よりも大きくすることを特徴とするデータ復調回路の基準電圧生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信信号を復調してデータ信号を得る半導体装置及びデータ復調回路の基準電圧生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データ通信用復調回路として、受信信号の包絡線を検波した検波信号のピーク値に基づいて基準電圧を生成し、検波信号の電圧値が基準電圧よりも大きいか否かにより、2値のデータ信号を復調するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかるデータ通信用復調回路によれば、受信信号のレベルが低くなっても、そのレベル低下に追従して基準電圧のレベルも低下するので、受信信号のレベルに拘わらずデータ信号の復調が為される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−204762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなデータ通信用復調回路では、受信信号として情報データを担う変調信号を受けている期間と、当該変調信号を受けていない期間とがある。変調信号を受けていない期間中は、検波信号のレベルが例えば正側のピーク値に固定される。この際、変調信号を受けていない期間中においても、基準電圧を受信信号の振幅の範囲内に設定、つまり基準電圧を上記した正側のピーク値よりも低くする為には、当該基準電圧に対して、その電圧値を所定値だけ低下させるオフセットを掛ける必要がある。
【0005】
そして、データ通信用復調回路が、データを担う変調信号を含む受信信号を受けると、当該変調信号に基づいて生成される基準電圧の電圧値は、検波信号の振幅の中心付近まで下降する。この際、基準電圧の電圧値は必ずしも一定値とはならない。例えば、基準電圧は、検波信号が正側のピーク値にある期間中は検波信号の振幅の中心に対して正側に電圧シフトし、検波信号が負側のピーク値にある期間中は負側に電圧シフトする。この電圧シフト量は、受信信号の振幅には依存せず略一定である。
【0006】
よって、上記した基準電圧に生じる電圧シフト及び上記オフセットによると、特に、受信信号の振幅が小さい場合には、検波信号の負側のピーク値よりも基準電圧が低くなる虞があり、復調に誤りが生じるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、受信信号の振幅が小さい場合であっても精度良くデータ信号の復調を行うことができる半導体装置及びデータ復調回路の基準電圧生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る半導体装置は、データを変調した変調信号を含む受信信号を受け、前記変調信号を復調してデータ信号を生成する半導体装置であって、前記受信信号を包絡線検波して検波信号を得る包絡線検波部と、前記検波信号に基づき基準電圧を生成する基準電圧生成部と、前記検波信号の値と前記基準電圧の大きさとを比較し、比較結果に基づいて前記データ信号を生成するコンパレータと、を含み、前記基準電圧生成部は、出力ノードを有し、前記検波信号から所定のオフセット値を差し引いたオフセット検波信号と、前記出力ノードの電圧との差分に応じた電圧を前記基準電圧として前記出力ノードに出力するオペアンプと、前記オフセット検波信号の値が前記基準電圧より高い場合には、前記オフセット検波信号の値が前記基準電圧以下となる場合よりも前記オペアンプの動作電流を大きくする動作電流調整回路と、を含む。
【0009】
本発明に係るデータ復調回路の基準電圧生成方法は、データを変調した変調信号を含む受信信号を包絡線検波して得た検波信号の値及び基準電圧の大きさを比較し、比較結果に基づいて前記データ信号を取得するデータ復調回路における前記基準電圧の生成方法であって、前記検波信号から所定のオフセット値を差し引いたオフセット検波信号と、出力ノードの電圧との差分に応じた電圧を前記基準電圧として前記出力ノードに出力するオペアンプの動作電流を、前記オフセット検波信号の値が前記基準電圧より高い場合には、前記オフセット検波信号の値が前記基準電圧以下となる場合よりも大きくする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、オペアンプが、受信信号を包絡線検波して得た検波信号から所定のオフセット値を差し引いたオフセット検波信号と、出力ノードの電圧との差分に基づき基準電圧を生成する。これにより、オフセット検波信号の値が基準電圧より低い状態にある間は基準電圧の電圧値が徐々に低下し、オフセット検波信号の値が基準電圧より高い状態にある間は基準電圧の電圧値が徐々に増加する。
【0011】
ここで、本発明では、オフセット検波信号の値が基準電圧より高い場合には、低い場合に比べてオペアンプの動作電流を大きくする。かかる動作電流の調整により、基準電圧の電圧値が低下する際の時間経過に伴う変化率よりも、基準電圧の電圧値が増加する際の時間経過に伴う変化率が高くなる。
【0012】
これにより、基準電圧の電圧値の低下量が抑えられるので、受信信号の振幅に拘わらず、当該基準電圧を検波信号の振幅の範囲内に維持させることが可能となる。更に、受信信号が変調信号を含まない状態から、変調信号を含む状態へ遷移した際に、迅速に、基準電圧の中心値を安定化させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る半導体装置としてのデータ復調回路100の内部構成を示すブロック図である。
図2】データ復調回路100の内部動作の一例を示すタイムチャートである。
図3】基準電圧生成部13の構成の一例を示す回路図である。
図4】動作電流調整回路BACの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る半導体装置に含まれるデータ復調回路100の内部構成を示すブロック図である。図1に示すように、データ復調回路100は、電源部10、アンテナ11、包絡線検波部12、基準電圧生成部13、及びコンパレータ14を含む。
【0016】
電源部10は、アンテナ11が無線送信波を受信して得た高周波の受信信号Rによって発電し、直流の電源電位VDDを生成する。電源部10は、かかる電源電位VDDを、基準電圧生成部13及びコンパレータ14に供給する。尚、電源部10としては発電機能を備えていない、直流の電源電位VDDを生成するバッテリであっても良い。
【0017】
包絡線検波部12は、当該受信信号Rを包絡線検波して、図2の一点鎖線にて示すような波形を有する検波信号EVを得る。すなわち、包絡線検波部12は、図2に示すように、受信信号Rに高周波信号が含まれている間は正側のピーク電圧値Vpを有し、高周波信号が含まれていない期間中は負側のピーク電圧値Vnを有する検波信号EVを生成する。この際、検波信号EVの振幅(Vp−Vn)は、受信信号Rに含まれる高周波信号の振幅に対応した大きさを有する。
【0018】
尚、図2に示す一例では、時点t1より前の時点において受信信号Rに含まれる高周波信号は、電源部10で発電を行う為の発振信号であり、情報データを変調した変調信号とは異なる。つまり、図2では、時点t1より前の時点では変調信号を含まない受信信号Rを受け、時点t1以降に、変調信号を含む受信信号Rを受ける状態を示している。
【0019】
包絡線検波部12は、上記のように生成した検波信号EVを、基準電圧生成部13及びコンパレータ14に供給する。
【0020】
基準電圧生成部13は、検波信号EVに基づき基準電圧REFを生成し、これをコンパレータ14に供給する。
【0021】
コンパレータ14は、検波信号EVの電圧値と基準電圧REFの大きさとを比較し、その比較結果に基づいて2値の情報データを表すデータ信号DATを得る。例えばコンパレータ14は、検波信号EVの電圧値が基準電圧REFよりも高い場合には論理レベル1(又は0)を有し、検波信号EVの電圧値が基準電圧REF以下である場合には論理レベル0(又は1)を有するデータ信号DATを出力する。
【0022】
図3は、基準電圧生成部13の内部構成の一例を示す回路図である。
【0023】
図3に示すように、基準電圧生成部13は、差動回路DFR及び出力回路OPTを含むオペアンプ部と、動作電流調整回路BAC、及びキャパシタC1を有する。
【0024】
オペアンプ部の差動回路DFRは、nチャネルMOS(complementary metal oxide semiconductor)型のトランジスタM14、M15、M46及びM60と、pチャネルMOS型のトランジスタM16及びM17と、電流源G1とを含む。
【0025】
トランジスタM14のゲート端は出力ノードL0に接続されており、そのドレイン端は、トランジスタM17のゲート端及びドレイン端と、ノードL2とに接続されている。トランジスタM15のゲート端には検波信号EVが供給されており、そのドレイン端は、トランジスタM16のゲート端及びドレイン端と、ノードL1とに接続されている。トランジスタ16及び17各々のソース端には電源電位VDDが印加されている。トランジスタM14及びM15各々のソース端は、動作電流ノードLCを介してトランジスタM46のドレイン端に接続されている。
【0026】
トランジスタM46のソース端には接地電位VSSが印加されており、そのゲート端はトランジスタM60のゲート端及びドレイン端に接続されている。電流源G1は電源電位VDDに基づき所定の一定電流を生成し、これをトランジスタM60のゲート端及びドレイン端と、トランジスタM46のゲート端とに供給する。トランジスタM60のソース端には接地電位VSSが印加されている。
【0027】
出力回路OPTは、pチャネルMOS型のトランジスタM18及びM19と、nチャネルMOS型のトランジスタM53及びM54とを含む。
【0028】
トランジスタM18のゲート端はノードL2に接続されており、ソース端には電源電位VDDが印加されている。トランジスタM18のドレイン端は、トランジスタM54のゲート端及びドレイン端と、トランジスタM53のゲート端とに接続されている。トランジスタM19のゲート端はノードL1に接続されており、ソース端には電源電位VDDが印加されている。トランジスタM19のドレイン端は、トランジスタM53のドレイン端と、出力ノードL0とに接続されている。トランジスタM53及びM54各々のソース端には接地電位VSSが印加されている。
【0029】
出力ノードL0にはキャパシタC1の一端が接続されており、当該キャパシタC1の他端には接地電位VSSが印加されている。
【0030】
動作電流調整回路BACは、pチャネルMOS型のトランジスタM20及びM22と、nチャネルMOS型のトランジスタM55〜M58とを含む。
【0031】
トランジスタM20及びM22各々のソース端には電源電位VDDが印加されている。トランジスタM22のゲート端はノードL1に接続されており、そのドレイン端は、ノードL3を介してトランジスタM55及びM56各々のゲート端と、トランジスタM56及びM57各々のドレイン端とに接続されている。
【0032】
トランジスタM20のゲート端はノードL2に接続されており、そのドレイン端は、ノードL4を介してトランジスタM57のゲート端と、トランジスタM58のゲート端及びドレイン端とに接続されている。トランジスタM55のドレイン端は動作電流ノードLCに接続されている。トランジスタM55〜M58各々のソース端には接地電位VSSが印加されている。
【0033】
尚、上記したトランジスタM57及びM58からなる第1の電流ミラー回路の電流ミラー比、並びにトランジスタM55及びM56からなる第2の電流ミラー回路の電流ミラー比は、例えば1倍である。
【0034】
以下に、図3に示す回路の動作について説明する。
【0035】
差動回路DFR内では、電流源G1、トランジスタM46及びM60を含む動作電流生成部が、所定の固定電流値を有する電流を基本動作電流Icとして生成し、これを動作電流ノードLCに流す。この際、当該動作電流ノードLCに流れる電流が、オペアンプ部(DFR、OPT)を動作させる動作電流となる。
【0036】
また、差動回路DFR内では、トランジスタM14及びM15を含む差動対が、動作電流ノードLCに流れる電流を、検波信号EVの値に対応した電流値を有する電流Iaと、出力ノードL0の電圧に対応した電流値を有する電流Ibとに分け、電流IaをノードL1に流すと共に電流IbをノードL2に流す。
【0037】
かかる構成により、基準電圧REFと、検波信号EVの電圧値との差分に対応した第1の電圧値を有する電圧V1がノードL1に印加され、当該差分に対応した第2の電圧値を有する電圧V2がノードL2に印加される。
【0038】
尚、差動回路DFRの差動対(M14、M15)は、図2に示すオフセット電圧Vof分のオフセットが掛かるように構築されている。そこで、検波信号EVからオフセット電圧Vofを差し引いた電圧値をオフセット検波信号(EV−Vof)として、図3に示す回路の動作を説明する。
【0039】
先ず、例えば図2の時点t1より前の区間、又は時点t3〜t4の区間において示すように、基準電圧REFと、オフセット検波信号(EV−Vof)とが等しい場合、差動回路DFRのトランジスタM15及びノードL1に流れる電流Iaと、トランジスタM14及びノードL2に流れる電流Ibとが等しくなる。これにより、ノードL1の電圧V1及びノードL2のV2は互いに同一の高電圧値となり、出力回路OPTのトランジスタM18、M19、M53及びM54はオフ状態となる。その結果、図2に示すように、基準電圧REFの電圧値は現時点での電圧値に維持される。
【0040】
また、例えば図2の時点t1から時点t2の区間において示すように、基準電圧REFよりもオフセット検波信号(EV−Vof)の電圧値の方が低い場合には、トランジスタM15に流れる電流IaよりもトランジスタM14に流れる電流Ibの方が大きくなる。これにより、ノードL2の電圧V2がノードL1の電圧V1よりも低い電圧値となり、出力回路OPTのトランジスタM18がオン状態となる。すると、当該トランジスタM18は、電源電位VDDに基づく電流をトランジスタM53及びM54のゲート端に供給し、トランジスタM53及びM54各々のゲート端の電圧を増加する。これにより、トランジスタM53がオン状態となり、当該トランジスタM53は出力ノードL0から電荷を引き抜く。その結果、図2の時点t1から時点t2の区間に示すように、基準電圧REFの電圧値が徐々に低下する。
【0041】
また、例えば図2の時点t2から時点t3の区間に示すように、基準電圧REFよりもオフセット検波信号(EV−Vof)の電圧値の方が高い場合には、トランジスタM14に流れる電流IbよりもトランジスタM15に流れる電流Iaの方が大きくなる。これにより、ノードL1の電圧V1が電圧V2よりも低い電圧値となる。すると、出力回路OPTのトランジスタM19がオン状態となり、当該トランジスタM19が電源電位VDDに基づく電流を出力ノードL0に供給する。その結果、図2の時点t2から時点t3の区間に示すように、基準電圧REFの電圧値が増加する。
【0042】
このように、出力回路OPTは、ノードL1及びL2の電圧に対応した電流を出力ノードL0に供給することにより出力ノードL0に基準電圧REFを生成する。
【0043】
ここで、動作電流調整回路BAC内では、トランジスタM22が、ノードL1の電圧V1に対応した電流I1をノードL3に供給し、トランジスタM20が、ノードL2の電圧V2に対応した電流I2をノードL4に供給する。また、動作電流調整回路BAC内において、トランジスタM57及びM58を含む第1の電流ミラー回路は、ノードL4に流れる電流I2の電流値に対応した第1のミラー電流Imを生成する。また、動作電流調整回路BAC内において、トランジスタM55及びM56を含む第2の電流ミラー回路は、ノードL3に流れる電流I1から上記した第1のミラー電流Imを差し引いた電流I3に対応した第2のミラー電流を、調整電流Idとして生成する。動作電流調整回路BACは、動作電流ノードLCに流れる基本動作電流Icに、当該調整電流Idを加えた電流を動作電流として動作電流ノードLCに流す。
【0044】
上記した構成により、オペアンプ部(DFR、OPT)は、検波信号EVからオフセット値を差し引いたオフセット検波信号(EV−Vof)と、出力ノードL0の電圧との差分に応じた電圧を基準電圧REFとして、出力ノードL0を介して出力する。
【0045】
動作電流調整回路BACは、オフセット検波信号(EV−Vof)の値が基準電圧REFより高い場合には、当該オフセット検波信号の値が基準電圧REF以下となる場合よりも、オペアンプ部(DFR、OPT)の動作電流を大きくする。つまり、動作電流調整回路BACは、差動回路DFRの動作電流生成部(G1、M46、M60)で生成された基本動作電流Icに調整電流Idを加えることにより、オペアンプ部の動作電流を大きくする。これにより、基準電圧REFの電圧値が増加する際の時間経過に伴う変化率が、低下する際の変化率よりも高くなる。
【0046】
例えば、図2の時点t1より前の区間、又は時点t3〜t4の区間において示すように、基準電圧REFとオフセット検波信号(EV−Vof)の電圧値とが等しい場合には、電圧V1及びV2は互いに同一の電圧値となる。
【0047】
よって、動作電流調整回路BACのトランジスタM22に流れる電流I1、及びトランジスタM20に流れる電流I2は同一の電流値となる。これにより、第1の電流ミラー回路(M57、M58)のM57には、電流I2と同一の電流値を有する電流I1が流れる。よって、第2の電流ミラー回路(M55、M56)が受ける電流I3の電流値はゼロとなり、それに伴い、トランジスタM55に流れる調整電流Idの電流値もゼロとなる。
【0048】
従って、図4に示すように、基準電圧REFとオフセット検波信号(EV−Vof)の電圧値とが等しい場合には、動作電流生成部(G1、M46、M60)で生成された基本動作電流Icだけが動作電流ノードLCに流れ、当該基本動作電流Icがそのままオペアンプの動作電流となる。
【0049】
また、例えば図2の時点t1から時点t2の区間に示すように、基準電圧REFよりもオフセット検波信号(EV−Vof)の電圧値の方が低い場合には、ノードL2の電圧V2がノードL1の電圧V1よりも低い電圧値となる。よって、動作電流調整回路BACのトランジスタM22に流れる電流I1は、トランジスタM20に流れる電流I2よりも小さくなる。また、トランジスタM57に流れる電流は電流I1よりも大きくなる為、第2の電流ミラー回路(M55、M56)が受ける電流I3の電流値はゼロとなる。それに伴い、トランジスタM55に流れる調整電流Idの電流値もゼロとなる。
【0050】
従って、図4に示すように、基準電圧REFよりもオフセット検波信号(EV−Vof)の電圧値の方が低い場合にも、動作電流生成部(G1、M46、M60)で生成された基本動作電流Icだけが動作電流ノードLCに流れ、当該基本動作電流Icがそのままオペアンプの動作電流となる。
【0051】
また、例えば図2の時点t2から時点t3の区間において示すように、基準電圧REFよりもオフセット検波信号(EV−Vof)の電圧値の方が高い場合には、ノードL1の電圧V1がノードL2の電圧V2よりも低い電圧値となる。よって、動作電流調整回路BACのトランジスタM22に流れる電流I1は、トランジスタM20に流れる電流I2よりも大きくなる。この際、第1の電流ミラー回路(M57、M58)では、電流I2と等しい電流値を有する第1のミラー電流ImをトランジスタM57に流すので、第2の電流ミラー回路(M55、M56)には、電流I1から、第1のミラー電流Im(Im=I2)を差し引いた電流値を有する電流I3が供給される。
【0052】
第2の電流ミラー回路(M55、M56)は、かかる電流I3に対応した電流値を有する調整電流Idを動作電流ノードLCから引き抜く。これにより、動作電流ノードLCに流れる動作電流は、基本動作電流Icに調整電流Idを加えたものとなる。この際、電流I1は差動回路DFRのトランジスタM15に流れる電流Iaに対応しており、電流Iaは検波信号EVの電圧値に対応している。
【0053】
つまり、動作電流調整回路BACは、図4に示すように基準電圧REFよりもオフセット検波信号(EV−Vof)の電圧値の方が高い場合には、当該オフセット検波信号(EV−Vof)の電圧値に対応した電流値を有する調整電流Idを生成し、これを基本動作電流Icに加える。よって、この調整電流Idを加えた分だけ動作電流の電流値が増えるので、その分だけオペアンプ部(DFR、OPT)の応答速度が高くなる。
【0054】
すなわち、上記した動作電流調整によれば、オフセット検波信号(EV−Vof)の値が基準電圧REFより高い場合には、オフセット検波信号(EV−Vof)の値が基準電圧REF以下となる場合に比べてオペアンプ(DFR、OPT)の動作電流が大きくなる。これにより、基準電圧REFの電圧値の増加区間(例えば時点t2〜t3)での時間経過に伴う変化率が、基準電圧REFの電圧値の低下区間(例えば時点t1〜t2)での時間経過に伴う変化率よりも高くなる。
【0055】
よって、変調信号受信時における基準電圧REFの電圧値の低下量が抑えられるので、当該基準電圧REFを、常に検波信号EVの負側のピーク値Vnよりも高い電圧値、つまり検波信号EVの振幅の範囲内に維持させることが可能となる。更に、受信信号Rが変調信号を含まない状態(例えば図4の時点t1以前)から、変調信号を含む状態(例えば図4の時点t1以降)へ遷移した際に、迅速に、基準電圧REFの中心値を安定化することが可能となる。
【0056】
従って、データ復調回路100によれば、受信信号Rの振幅が小さい場合であっても、当該受信信号が変調信号を含まない状態から変調信号を含む状態へ遷移した直後から、精度良くデータ信号の復調を行うことが可能となる。
【0057】
尚、上記実施例では、第2の電流ミラー回路(M55、M56)の電流ミラー比を1倍としているが、その電流ミラー比は1倍に限定されない。この際、第2の電流ミラー回路(M55、M56)の電流ミラー比を変更することにより、調整電流Idを任意の大きさに設定、つまりオペアンプの応答速度を調整することが可能となる。
【0058】
また、上記実施例では、図2に示すように検波信号EVの正側のピーク値VpからオフセットVof分だけ低い電圧値を有し、検波信号EVが負側のピーク値Vnの状態にある間はその電圧値を徐々に低下させ、検波信号EVが正側のピーク値Vpの状態にある間はその電圧値を徐々に増加させた電圧を基準電圧REFとして生成している。
【0059】
しかしながら、検波信号EVの負側のピーク値VnからオフセットVof分だけ高い電圧値を有し、検波信号EVが正側のピーク値Vpの状態にある間はその電圧値を徐々に低下させ、検波信号EVが負側のピーク値Vnの状態にある間はその電圧値を徐々に低下させた電圧を基準電圧REFとして生成するようにしても良い。
【0060】
要するに、半導体装置としてのデータ復調回路100としては、以下の包絡線検波部、基準電圧生成部、及びコンパレータを含むものであれば良い。
【0061】
すなわち、包絡線検波部(12)は、受信信号(R)を包絡線検波して検波信号(EV)を得る。基準電圧生成部(13)は、検波信号(EV)に基づき基準電圧(REF)を生成する。コンパレータ(14)は、検波信号の値と基準電圧の大きさとを比較し、比較結果に基づいてデータ信号(DAT)を生成する。尚、基準電圧生成部(13)は、以下のオペアンプ及び動作電流調整回路を含む。オペアンプ(DFR、OPT)は、出力ノード(L0)を有し、検波信号(EV)から所定のオフセット値(Vof)を差し引いたオフセット検波信号(EV−Vof)と出力ノード(L0)の電圧との差分に応じた電圧を基準電圧(REF)として出力ノードに出力する。動作電流調整回路(BAC)は、オフセット検波信号(EV−Vof)の値が基準電圧(REF)より高い場合には、オフセット検波信号の値が基準電圧以下となる場合よりもオペアンプ(DFR、OPT)の動作電流を大きくする。
【符号の説明】
【0062】
12 包絡線検波部
13 基準電圧生成部
14 コンパレータ
100 データ復調回路
BAC 動作電流調整回路
DFR 差動回路
図1
図2
図3
図4