特開2018-154667(P2018-154667A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧
特開2018-154667ポリマー及びその製造方法、並びに光学材料
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-154667(P2018-154667A)
(43)【公開日】2018年10月4日
(54)【発明の名称】ポリマー及びその製造方法、並びに光学材料
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/28 20060101AFI20180907BHJP
   C08F 220/56 20060101ALI20180907BHJP
【FI】
   C08F220/28
   C08F220/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-50382(P2017-50382)
(22)【出願日】2017年3月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
【住所又は居所】東京都大田区中馬込1丁目3番6号
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
【住所又は居所】大阪府吹田市山手町3丁目3番35号
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 航治
【住所又は居所】東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式会社リコー内
(72)【発明者】
【氏名】工藤 宏人
【住所又は居所】大阪府吹田市山手町3丁目3番35号 学校法人 関西大学内
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AL08P
4J100AL09R
4J100AM17Q
4J100BA02P
4J100BA12P
4J100BB03P
4J100CA05
4J100CA23
4J100DA01
4J100DA25
4J100DA52
4J100FA01
4J100FA08
4J100JA32
4J100JA33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】機械特性、刺激応答性、及び加工性を備えたポリマーの提供。
【解決手段】式(1)で表される化合物と、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド化合物と特定の(メタ)アクリレート化合物とを共重合した構造を有するポリマー。[一般式(1)]

(R〜Rは、所定の置換基;nは、1〜10の整数)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、を含む混合物が共重合した構造を有することを特徴とするポリマー。
[一般式(1)]
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、R、R、及びRは、水素原子、又は炭素数1〜2のアルキル基を表す。Xは、水素原子、及びハロゲン原子のいずれかを表す。nは、1〜10の整数である。
[一般式(2)]
【化2】
ただし、前記一般式(2)中、R及びRは、炭素数1〜2のアルキル基を表す。
[一般式(3)]
【化3】
ただし、前記一般式(3)中、Rは、水素原子、及び炭素数1〜2のアルキル基のいずれかを表す。Rは、水素原子、メトキシポリエチレングリコール、フェノキシポリエチレングリコール、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、及び4−ヒドロキシブチルのいずれかを表す。
【請求項2】
重量平均分子量が30,000以上500,000以下である請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記一般式(1)中のXが、臭素原子である請求項1から2のいずれかに記載のポリマー。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のポリマーを含むことを特徴とする光学材料。
【請求項5】
下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、を含む混合物を共重合させることを特徴とするポリマーの製造方法。
[一般式(1)]
【化4】
ただし、前記一般式(1)中、R、R、及びRは、水素原子、及び炭素数1〜2のアルキル基のいずれかを表す。Xは、水素原子、及びハロゲン原子のいずれかを表す。nは、1〜10の整数である。
[一般式(2)]
【化5】
ただし、前記一般式(2)中、R及びRは、炭素数1〜2のアルキル基を表す。
[一般式(3)]
【化6】
ただし、前記一般式(3)中、Rは、水素原子、及び炭素数1〜2のアルキル基のいずれかを表す。Rは、水素原子、メトキシポリエチレングリコール、フェノキシポリエチレングリコール、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、及び4−ヒドロキシブチルのいずれかを表す。
【請求項6】
前記一般式(1)中のXが、臭素原子である請求項5に記載のポリマーの製造方法。
【請求項7】
前記一般式(1)で表される化合物と、前記一般式(2)で表される化合物と、前記一般式(3)で表される化合物と、を含む混合物の重合反応が、遷移金属触媒及びアミン系配位子の存在下で行われる請求項5から6のいずれかに記載のポリマーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー及びその製造方法、並びに光学材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機能性ポリマーの分野では、用途の多様化、高度化に対応するため、より高機能な材料の開発が求められている。特に、光スイッチング材料や有機レンズ等光学材料への応用の可能性の観点から、強度等の機械特性、温度やpH変化などの外部からの刺激に対する迅速な応答性(以下、「刺激応答性」と称することもある)、及び成形等の加工性に優れた材料の開発が求められている。
【0003】
例えば、重量平均分子量の高いポリマーを用いてフィルムの機械的強度を高める技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、星形構造のポリマーにすることにより、ガラス転移点を低くする技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、刺激応答性ポリマー材料について、相互網目構造の三次元ゲル構造を構築して刺激応答性と機械特性を両立させる技術が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、機械特性、刺激応答性、及び加工性を備えたポリマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明のポリマーは、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、を含む混合物が共重合した構造を有する。
【0006】
[一般式(1)]
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、R、R、及びRは、水素原子、及び炭素数1〜2のアルキル基のいずれかを表す。Xは、水素原子、及びハロゲン原子のいずれかを表す。nは、1〜10の整数である。
【0007】
[一般式(2)]
【化2】
ただし、前記一般式(2)中、R及びRは、炭素数1〜2のアルキル基を表す。
【0008】
[一般式(3)]
【化3】
ただし、前記一般式(3)中、Rは、水素原子、及び炭素数1〜2のアルキル基のいずれかを表す。Rは、水素原子、メトキシポリエチレングリコール、フェノキシポリエチレングリコール、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、及び4−ヒドロキシブチルのいずれかを表す。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、機械特性、刺激応答性、及び加工性を備えたポリマーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(ポリマー)
本発明のポリマーは、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物とが共重合した構造を有する。即ち、本発明のポリマーは、木の幹と枝は存在せず、樹状に発達したハイパーブランチポリマーである。
【0011】
本発明のポリマーは、前記特許文献1(特許第5614746号公報)に開示されたポリマーでは、機械特性が高くなる反面、加工性に劣るという知見に基づくものである。
また、前記特許文献2(特表2013−542305号公報)に開示された星形ポリマーでは、加工性が改善されているものの、機械特性を維持することができないという知見に基づくものである。
更に、前記非特許文献1(「坂口雄太、2012、PNIPAAm系ハイドロゲルの力学的特性の向上と評価に関する研究、三重大学大学院工学研究科博士前期課程、機械工学専攻、生体システム工学研究室」)に開示された刺激応答性ポリマーでは、三次元網目構造が構築されるとその形状が固定化されるため、二次加工ができないという知見に基づくものである。
【0012】
[一般式(1)]
【化4】
ただし、前記一般式(1)中、R、R、及びRは、水素原子、及び炭素数1〜2のアルキル基のいずれかを表す。Xは、水素原子、及びハロゲン原子のいずれかを表す。nは、1〜10の整数である。
【0013】
[一般式(2)]
【化5】
ただし、前記一般式(2)中、R及びRは、炭素数1〜2のアルキル基を表す。
【0014】
[一般式(3)]
【化6】
ただし、前記一般式(3)中、Rは、水素原子、及び炭素数1〜2のアルキル基のいずれかを表す。Rは、水素原子、メトキシポリエチレングリコール、フェノキシポリエチレングリコール、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、及び4−ヒドロキシブチルのいずれかを表す。
【0015】
前記一般式(1)において、Xのハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などである。Xがハロゲン原子である場合は、ハロゲン原子に由来する高い屈折率を有するポリマーが得られる。
また、前記一般式(1)で表される化合物と前記一般式(2)で表される化合物と前記一般式(3)で表される化合物とを重合した後に精製処理を行うことにより、ハロゲン原子をそれぞれ水素原子に置き換えることが可能である。そのため、ハロゲン原子を含む材料が好まれない用途にも用いることができる。
【0016】
前記一般式(1)において、nを1〜10の整数とすることで、加工性と刺激応答性に優れるポリマーを得ることができる。nは、1〜5が好ましい。なお、nが1未満の化合物は存在せず、また、nが10を超える整数の場合は、ポリマーのガラス転移点が低くなりすぎて機械特性に劣ることがある。
【0017】
前記一般式(1)において、R、R及びRを水素原子、及び炭素数1〜2のアルキル基から選択されるいずれかの基とすることで、重合反応性が良好となり、重量平均分子量の高いポリマーを得ることができる。なお、R、R及びRが炭素数3以上のアルキル基の場合は、立体障害により重合反応性が低下して、分子量の大きなポリマーが得られ難いことがある。
【0018】
前記一般式(2)において、R及びRを炭素数1〜2のアルキル基にすることで、刺激応答性が良好なポリマーを得ることができる。なお、R及びRが炭素数3以上のアルキル基の場合は、疎水性作用が強くなり、良好な刺激応答性が得られない。
【0019】
前記一般式(3)において、Rを水素原子、及び炭素数1〜2のアルキル基から選択されるいずれかの基にすることで、機械特性に優れるポリマーを得ることができる。なお、Rが炭素数3以上のアルキル基の場合は、脆くなり機械特性に劣る。
【0020】
前記一般式(3)において、Rを水素原子、メトキシポリエチレングリコール、フェノキシポリエチレングリコール、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、及び4−ヒドロキシブチルのいずれかの基とすることで、得られるポリマーの柔軟性と加工性を向上させることができる。
【0021】
本発明のポリマーは、下記一般式(4)で表される構造を備えている。この構造は、前記ポリマー中で刺激応答性を示す部位を構成すると考えられる。
【0022】
[一般式(4)]
【化7】
ただし、nは自然数であり、重合度を表す。
【0023】
このように、本発明のポリマーは、刺激応答性部位を有し、高い分子量でありながら低いガラス転移点を有するハイパーブランチポリマーである。これにより、機械特性及び加工性に優れ、更に刺激応答性を示すことができる。
【0024】
前記刺激応答性としては、例えば、下限臨界溶液温度(Lower Critical Solution Temperature:LCST)特性やpH特性が挙げられる。
前記LCST特性は、ポリマーと水が共存する環境において、所定の温度以上ではポリマーと水は相溶しないが、所定の温度未満では相溶するという特性である。前記pH応答性は、ポリマーと水が共存する環境において、所定のpH以上ではポリマーと水は相溶しないが、所定のpH未満では相溶するという特性である。
【0025】
本発明のポリマーの構造は、赤外分光分析及び核磁気共鳴分光分析により確認することができる。
【0026】
<核磁気共鳴分光分析>
核磁気共鳴分光装置(例えば、日本電子株式会社製、JOEL−ECS−400K)を用いて、得られた各ポリマーについて、核磁気共鳴分光分析を行う。重合度:nについて、核磁気共鳴分光分析(=H−NMR)により各部位の水素数を測定して算出する。具体的には、開始剤由来のHの積分値総和(水素の数)と、繰り返し単位由来のHの積分値総和の比率から算出することができる。
【0027】
<赤外分光分析>
フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(例えば、日本分光株式会社製、FT/IR 4200)を用いて、得られたポリマーを同定することができる。
[0000]
また、ポリマーの屈折率及びポリマーのアッベ数は、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
また、前記ポリマーの数平均分子量、重量平均分子量、及び分子量分布は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法により算出することができる。
【0028】
前記ポリマーの重量平均分子量は、30,000以上500,000以下が好ましく、50,000以上300,000以下がより好ましく、100,000以上200,000以下が更に好ましい。
前記重量平均分子量が30,000以上500,000以下では、温度応答性が高く、かつ良好な機械特性及び加工性を示す。また、前記重量平均分子量が50,000以上300,000以下では、温度応答性が向上し、かつ機械特性及び加工性も向上する。更に、前記重量平均分子量が100,000以上200,000以下では、温度応答性が極めて高く、かつ極めて良好な機械特性、及び加工性を示す。
前記重量平均分子量が30,000未満であると、機械特性が劣ることがあり、また、重量平均分子量が500,000を超えると、加工性が劣化する場合が多い。
【0029】
(ポリマーの製造方法)
本発明のポリマーの製造方法は、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、を含む混合物を共重合させるものである。
【0030】
[一般式(1)]
【化8】
ただし、前記一般式(1)中、R、R、及びRは、水素原子、及び炭素数1〜2のアルキル基のいずれかを表す。Xは、水素原子、及びハロゲン原子のいずれかを表す。nは、1〜10の整数である。
【0031】
[一般式(2)]
【化9】
ただし、前記一般式(2)中、R及びRは、炭素数1〜2のアルキル基を表す。
【0032】
[一般式(3)]
【化10】
ただし、前記一般式(3)中、Rは、水素原子、及び炭素数1〜2のアルキル基のいずれかを表す。Rは、水素原子、メトキシポリエチレングリコール、フェノキシポリエチレングリコール、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、及び4−ヒドロキシブチルのいずれかを表す。
【0033】
前記ポリマーは、例えば、下記構造式(1)で表される化合物と、下記構造式(2)で表される化合物と、下記構造式(3)で表される化合物とを、下記反応式(A)で示すように共重合することにより製造することができる。
【0034】
[構造式(1)]
【化11】
【0035】
[構造式(2)]
【化12】
【0036】
[構造式(3)]
【化13】
【0037】
[反応式A]
【化14】
【0038】
前記反応式(A)においては、前記構造式(1)で表される化合物と、前記構造式(2)で表される化合物と、前記構造式(3)で表される化合物とに遷移金属触媒と触媒配位子を混合して、原子移動ラジカル重合反応させることにより、本発明のハイパーブランチポリマーを製造することができる。これにより、本発明のポリマーは、前記構造式(1)で表される化合物と、前記構造式(2)で表される化合物と、前記構造式(3)で表される化合物との共重合体を構成する。
【0039】
前記遷移金属触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、原子移動ラジカル重合反応に用いられる触媒として一般に市販されているものを用いることができる。このような遷移金属触媒としては、例えば、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、オスミウム、銅等の遷移金属又はこれらの遷移金属の化合物などが挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、銅系の触媒が好ましく、臭化銅がより好ましい。
【0040】
前記触媒配位子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、原子移動ラジカル重合に用いられる配位子として一般に市販されているものを用いることができる。このような触媒配位子としては、例えば、ビピリジン、ジメチルビピリジン、トリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラエチレンジアミン等のアミン系配位子などが挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンが好ましい。
【0041】
次に、前記ポリマーの製造方法の具体例について説明する。なお、前記ポリマーの製造方法は以下で示す例に限られるものではない。
前記構造式(1)で表される化合物26.4mgと、前記構造式(2)で表される化合物678.6mgと、前記構造式(3)で表される化合物261.2mgと、臭化銅(I)0.017gとを重合管に秤取る。
この重合管を脱気処理して酸素を除去し、窒素雰囲気下、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン0.025gと水1mLを重合管に加え、0℃で15分間攪拌する。攪拌後の重合管にクロロホルムを1mL加えて希釈したものをジエチルエーテルで再沈殿処理し、ろ別した固形物を乾燥することにより、本発明のポリマーが得られる。
【0042】
本発明のポリマーは、任意の形に成形することが可能である。成形の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱や圧力を加えて可塑化させる場合、所定の金型を用いることにより、任意の形に成形することが可能である。なお、前記ポリマーは、水や各種溶媒に溶解させることが可能であるため、公知の塗工技術を適用して成形加工することもできる。
【0043】
(光学材料)
本発明の光学材料は、本発明のポリマーを含む。
本発明のポリマーは、優れた刺激応答性、機械特性、及び加工性を備えるため、種々の光学材料の用途に好適に用いることができる。例えば、前記ハイパーブランチポリマーを任意の形状に加工することにより、光スイッチング材料や調光材料等の光学材料を提供することができる。
具体的な光スイッチング材料として、光の伝播を温度で制御できる機能を有する光スイッチング素子が挙げられる。光スイッチング素子は、露光部と組み合わせることにより、温度センサーデバイスを構成することができる。
また、調光材料は、光の透過率を温度で制御できる機能を有する。即ち、前記ハイパーブランチポリマーをフィルム状に加工したのち水と共存させ、透明基板や透明フィルムで挟みこみ封止することで、所定の温度以上で白濁し、所定の温度未満で透明となる特殊なプレートを提供することができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
下記構造式(1)で表される化合物26.4mgと、下記構造式(2)で表される化合物678.6mgと、下記構造式(3)で表される化合物261.2mgと、臭化銅(I)0.017gと、を重合管に秤取った。
この重合管を脱気処理して酸素を除去し、窒素雰囲気下でN,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン0.025gと水1mLを重合管に加え、0℃で15分間攪拌した。攪拌後の重合管にクロロホルムを1mL加えて希釈したものをジエチルエーテルで再沈殿処理し、ろ別した固形物を乾燥し、実施例1のポリマーを得た。
【0046】
[構造式(1)]
【化15】
【0047】
[構造式(2)]
【化16】
【0048】
[構造式(3)]
【化17】
【0049】
得られたポリマーの温度応答性評価については、水溶液の温度応答性は市販の直鎖型PNIPAMよりも低い温度で吸光度が上昇しはじめ、また、測定温度範囲における最大の吸光度は、直鎖型PNIPAMよりも高く良好な温度応答性を示した。
また、フィルムの温度応答性評価としてはアッベ屈折率計にて屈折率の温度変化を評価したところ、測定温度範囲において上に凸の放物線を描き、最大の屈折率を示す温度は、直鎖型PNIPAMよりも20℃以上低く、良好な温度応答性を示した。
なお、ポリマーの屈折率及びポリマーのアッベ数は、以下の分光エリプソメトリーにより測定した。
【0050】
<可視分光エリプソメトリー>
分光エリプソメータ(株式会社堀場製作所製、1H3LNWWP)を用いて、得られたポリマーの屈折率を測定した。具体的には、ポリマーをPGMEに溶解させ、スピンコートによりシリコンウエハ上に薄膜を形成して、波長632.8nmの光源を用いて測定した。また、光源をそれぞれ、波長587.56nm、486.13nm、及び656.27nmのものに変更して測定した屈折率をそれぞれnd、nF、及びnCとし、ポリマーのアッベ数を下記数式(C)により算出した。
[数式(C)]
アッベ数=(nd−1)/(nF−nC)
【0051】
(実施例2)
実施例1において、前記構造式(1)で表される化合物26.4mgを264.0mgに変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2のポリマーを得た。
【0052】
得られたポリマーの温度応答性評価については、水溶液の温度応答性は市販の直鎖型PNIPAMよりも低い温度で吸光度が上昇しはじめ、また、測定温度範囲における最大の吸光度は、直鎖型PNIPAMよりも高く良好な温度応答性を示した。
また、フィルムの温度応答性評価としてはアッベ屈折率計にて屈折率の温度変化を評価したところ、測定温度範囲において上に凸の放物線を描き、最大の屈折率を示す温度は、直鎖型PNIPAMよりも20℃以上低く、良好な温度応答性を示した。
【0053】
(実施例3)
実施例1において、前記構造式(1)で表される化合物26.4mgの代わりに、下記構造式(5)で表される化合物30.8mgを用い、前記構造式(3)で表される化合物261.2mgの代わりに、下記構造式(6)で表される化合物(新中村化学社製、AM−90G)911.8mgを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3のポリマーを得た。
【0054】
[構造式5]
【化18】
【0055】
[構造式6]
【化19】
【0056】
得られたポリマーの温度応答性評価については、水溶液の温度応答性は市販の直鎖型PNIPAMよりも低い温度で吸光度が上昇しはじめ、また、測定温度範囲における最大の吸光度は、直鎖型PNIPAMよりも高く良好な温度応答性を示した。
また、フィルムの温度応答性評価としてはアッベ屈折率計にて屈折率の温度変化を評価したところ、測定温度範囲において上に凸の放物線を描き、最大の屈折率を示す温度は、直鎖型PNIPAMよりも20℃以上低く、良好な温度応答性を示した。
【0057】
(実施例4)
実施例1において、前記構造式(5)で表される化合物30.8mgを308.0mgに変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例4のポリマーを得た。
得られたポリマーの温度応答性評価については、水溶液の温度応答性は市販の直鎖型PNIPAMよりも低い温度で吸光度が上昇しはじめ、また、測定温度範囲における最大の吸光度は、直鎖型PNIPAMよりも高く良好な温度応答性を示した。
また、フィルムの温度応答性評価としてはアッベ屈折率計にて屈折率の温度変化を評価したところ、測定温度範囲において上に凸の放物線を描き、最大の屈折率を示す温度は、直鎖型PNIPAMよりも20℃以上低く、良好な温度応答性を示した。
【0058】
(比較例1)
実施例1において、前記構造式(3)で表される化合物261.2mgを、下記構造式(4)で表される化合物4,804mgに変えた以外は、実施例1と同様にして、比較例1のポリマーを得た。
【0059】
[構造式(4)]
【化20】
【0060】
得られたポリマーの温度応答性を評価したところ、水溶液の温度応答性は市販の直鎖型PNIPAMよりも低い温度で吸光度が上昇しはじめ、また、測定温度範囲における最大の吸光度は、直鎖型PNIPAMよりも高いが、実施例のポリマーより低い値であった。
また、フィルムの温度応答性は、測定温度範囲において上に凸の放物線を描き、最大の屈折率を示す温度は、直鎖型PNIPAMよりも20℃以上低いが、5℃における屈折率と40℃における屈折率の差は、実施例のポリマーより小さい値であった。
【0061】
(比較例2)
カリックス[4]レゾルシンアレーンをテトラヒドロフランに溶解し、トリエチルアミンを加えた。
次に、系内を10℃未満に冷却し温度を維持したまま、2−ブロモイソブチリルブロマイドを滴下して30分間程度攪拌した後、40℃で12時間攪拌した。反応液から析出物をろ過して取り除いた。ろ液をクロロホルムで希釈して有機層とし、これを炭酸水素ナトリウム水溶液で2回程度、塩化水素水溶液にて1回、純水にて3回洗浄した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。固形物をろ別後、減圧濃縮し、メタノールに滴下して白色固体を得、これをろ別して開始剤を得た。
【0062】
次に、開始点濃度を10×10−3mol/Lとなるように、市販のN−イソプロピルアクリルアミドと、下記構造式で表される開始剤と、臭化銅(I)を重合管に量り取った後、脱気処理を行って酸素を除去し、窒素雰囲気下でN,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンを加えた後に封管し、70℃に加熱して0.5時間重合した。重合反応物にクロロホルムを1mL加えて希釈したものをジエチルエーテルに再沈殿処理し、固形物をろ別乾燥して、下記一般式(5)で表されるポリマーを得た。
【0063】
得られたポリマーの温度応答性を評価したところ、水溶液の温度応答性は市販の直鎖型PNIPAMよりも低い温度で吸光度が上昇しはじめ、また測定温度範囲における最大の吸光度は、直鎖型PNIPAMよりも高いが、実施例のポリマーより低い値であった。また、フィルムの温度応答性は、測定温度範囲において上に凸の放物線を描き、最大の屈折率を示す温度は、直鎖型PNIPAMよりも20℃以上低いが、5℃における屈折率と40℃における屈折率の差は実施例のポリマーより小さい値であった。
【0064】
[開始剤]
【化21】
【0065】
[一般式(5)]
【化22】
ただし、nは自然数であり、重合度を表す。
【0066】
次に、得られた各ポリマーについて、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表1及び表2に示した。
【0067】
<ガラス転移温度>
各ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、TG−DSCシステムTAS−100(理学電機株式会社製)を用いて、以下の方法により測定した。
まず、ポリマー約10mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットした。室温(25℃)から昇温速度10℃/minで150℃まで加熱した後、150℃で10min間放置し、室温までポリマーを冷却して10min放置した。その後、窒素雰囲気下、150℃まで昇温速度10℃/minで加熱して示差走査熱量計(DSC)によりDSC曲線を計測した。得られたDSC曲線から、TG−DSCシステムTAS−100システム中の解析システムを用いて、ガラス転移温度(Tg)近傍の吸熱カーブの接線とベースラインとの接点からガラス転移温度(Tg)を算出した。
【0068】
<重量平均分子量の測定>
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法により、各ポリマーの重量平均分子量を測定した。
測定条件は、次のとおりである。
・装置:HLC−8220(東ソー株式会社製)
・カラム:Shodex asahipak GF−510 HQ + GF−310×2(昭和電工株式会社製)TSK G2000HXL及びG4000HXL(東ソー株式会社製)
・温度:40℃
・溶離液:20mM リチウムブロミド、20mMリン酸含有ジメチルホルムアミド溶液
・流速:0.5mL/分
・検出器:HLC−8200 内蔵RI−UV−8220 濃度0.5質量%のポリマー1mLを装置にセットし、上記の条件で測定したポリマーの分子量分布から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用してポリマーの重量平均分子量(Mw)を算出した。
【0069】
<温度応答速度の評価>
温度応答速度の評価は、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V−660DS)を用いて評価した。得られたポリマー2.0mgを蒸留水20mLに溶解させ、40℃に加温し、400nmにおける吸光度を1秒間ごとに測定した。測定開始から測定値の変化が5%以内になった時点の測定時間を飽和時間とし、下記基準からの評価点を求めた。
[評価点]
0点:飽和時間が10秒間以上
1点:飽和時間が8秒間以上10秒間未満
3点:飽和時間が7秒間
5点:飽和時間が6秒間
7点:飽和時間が5秒間
10点:飽和時間が4秒間以下
【0070】
<機械特性及び加工性の評価>
衝撃試験により、機械特性及び加工性を評価した。
衝撃試験としては、得られたポリマー200mgを、直径20mmの円盤状に圧縮成形したのち、30cmの高さからガラスプレート上へ自由落下させた。着地したポリマー成形物のうち、最も大きさの大きいものの重量を測定し、下記の数式(D)に従って重量変化率を測定した。
[数式(D)]
重量変化率(%)=[(落下前重量(g)−最も大きさの大きいものの重量(g))/落下前重量(g)]×100
[評価基準]
0点:所定の円盤状に圧縮成形できない
1点:重量変化率が80%以上
2点:重量変化率が75%以上80%未満
3点:重量変化率が65%以上75%未満
4点:重量変化率が65%未満
【0071】
<総合評価>
総合評価は、温度応答速度の評価点と機械特性及び加工性の評価点を合計し、下記基準で評価した。
[評価基準]
A:合計点が10点以上
B:合計点が7点以上10点未満
C:合計点が5点以上7点未満
D:合計点が5点未満
E:いずれか一方に0点がある場合
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
表1及び表2の結果からり、実施例1〜4で得られたポリマーは、いずれも低いガラス転移点を示しており、加工性が良好であり、機械的強度に優れ、かつ温度応答性に優れていた。
また、比較例1〜2の総合評価がいずれもD以下であるのに対して、実施例1〜4では総合評価がいずれもB以上となった。
このように、実施例1〜4のポリマーは、水素結合による強固な分子間及び分子内結合と、低いガラス転移点と、刺激応答性部位を同時に有しており、優れた温度応答性、機械特性及び加工性を両立している。そのため、光スイッチング素子等の光学材料に適用することができる。
また、実施例1〜4のポリマーは、いずれも高い屈折率とアッベ数を示しており、光学材料の用途に適している。
【0075】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、を含む混合物が共重合した構造を有することを特徴とするポリマーである。
[一般式(1)]
【化23】
ただし、前記一般式(1)中、R、R、及びRは、水素原子、又は炭素数1〜2のアルキル基を表す。Xは、水素原子、及びハロゲン原子のいずれかを表す。nは、1〜10の整数である。
[一般式(2)]
【化24】
ただし、前記一般式(2)中、R及びRは、炭素数1〜2のアルキル基を表す。
[一般式(3)]
【化25】
ただし、前記一般式(3)中、Rは、水素原子、及び炭素数1〜2のアルキル基のいずれかを表す。Rは、水素原子、メトキシポリエチレングリコール、フェノキシポリエチレングリコール、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、及び4−ヒドロキシブチルのいずれかを表す。
<2> 重量平均分子量が30,000以上500,000以下である前記<1>に記載のポリマーである。
<3> 重量平均分子量が50,000以上300,000以下である前記<2>に記載のポリマーである。
<4> 前記一般式(1)中のXが、臭素原子である前記<1>から<3>のいずれかに記載のポリマーである。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載のポリマーを含むことを特徴とする光学材料である。
<6> 下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、を含む混合物を共重合させることを特徴とするポリマーの製造方法である。
[一般式(1)]
【化26】
ただし、前記一般式(1)中、R、R、及びRは、水素原子、及び炭素数1〜2のアルキル基のいずれかを表す。Xは、水素原子、及びハロゲン原子のいずれかを表す。nは、1〜10の整数である。
[一般式(2)]
【化27】
ただし、前記一般式(2)中、R及びRは、炭素数1〜2のアルキル基を表す。
[一般式(3)]
【化28】
ただし、前記一般式(3)中、Rは、水素原子、及び炭素数1〜2のアルキル基のいずれかを表す。Rは、水素原子、メトキシポリエチレングリコール、フェノキシポリエチレングリコール、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、及び4−ヒドロキシブチルのいずれかを表す。
<7> 前記一般式(1)中のXが、臭素原子である前記<6>に記載のポリマーの製造方法である。
<8> 前記一般式(1)で表される化合物と、前記一般式(2)で表される化合物と、前記一般式(3)で表される化合物と、を含む混合物の重合反応が、遷移金属触媒及びアミン系配位子の存在下で行われる前記<6>から<7>のいずれかに記載のポリマーの製造方法である。
<9> 前記<1>から<4>のいずれかに記載のポリマーを含むことを特徴とする調光材料である。
<10> 前記<1>から<4>のいずれかに記載のポリマーを含むことを特徴とする光スイッチング材料である。
【0076】
前記<1>から<4>のいずれかに記載のポリマー、前記<5>に記載の光学材料、前記<6>から<8>のいずれかに記載のポリマーの製造方法、前記<9>に記載の調光材料、及び前記<10>に記載の光スイッチング材料によると、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】
【特許文献1】特許第5614746号公報
【特許文献2】特表2013−542305号公報
【非特許文献】
【0078】
【非特許文献1】坂口雄太、2012、PNIPAAm系ハイドロゲルの力学的特性の向上と評価に関する研究、三重大学大学院工学研究科博士前期課程、機械工学専攻、生体システム工学研究室