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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-154789(P2018-154789A)
(43)【公開日】2018年10月4日
(54)【発明の名称】研磨用組成物及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20180907BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20180907BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20180907BHJP
【FI】
   C09K3/14 550Z
   C09K3/14 550D
   C09G1/02
   B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-54336(P2017-54336)
(22)【出願日】2017年3月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(72)【発明者】
【氏名】中村 康行
【テーマコード(参考)】
3C158
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AC04
3C158CA01
3C158CA04
3C158CB01
3C158CB03
3C158DA02
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED10
3C158ED24
3C158ED26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムを研磨する用途においてより好適に使用可能な研磨用組成物を提供する。
【解決手段】コロイダルシリカと、エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩またはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩と、水とを含む、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム基板用研磨用組成物であって、組成物に占めるコロイダルシリカの含有量の割合が10〜35質量%であり、エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩またはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩におけるカルボキシル基中の水素原子のカリウム原子による中和率が60〜100モル%であり、これら含有物中のエチレンジアミン四酢酸のカリウム塩または前記ジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩の含有量の割合が0.2〜4.0質量%であり、かつpHが7〜12である、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム基板用研磨用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイダルシリカと、
エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩またはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩と、
水と
を含む、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム基板用研磨用組成物であって、
前記エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩またはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩におけるカルボキシル基中の水素原子のカリウム原子による中和率が60〜100モル%であり、前記コロイダルシリカ、前記エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩または前記ジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩、及び水の含有量の合計に占める前記コロイダルシリカの含有量の割合が10〜35質量%であり、前記コロイダルシリカ、前記エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩または前記ジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩、及び水の含有量の合計に占める前記エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩または前記ジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩の含有量の割合が0.2〜4.0質量%であり、かつpHが7〜12である、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム基板用研磨用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のタンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム基板用研磨用組成物を用いて、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム基板表面を研磨する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムの研磨対象物を研磨する用途に用いられる研磨用組成物、及びそうした研磨用組成物を用いてタンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムの研磨対象物を研磨する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビの中間周波数フィルターや共振器等のエレクトロニクス部品材料として、圧電体における圧電効果により発生する弾性表面波を利用した弾性表面波デバイスを構成する圧電体ウェーハの需要が増大してきている。このような圧電体ウェーハ材料としては、圧電性、焦電性、電気光学効果に優れたタンタル酸リチウム材料やニオブ酸リチウム材料等の硬脆材料が、広く採用されている。
【0003】
上記のタンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム材料は、硬くて脆いものであるところから、研磨材として粒子が粗く且つ硬い性質を有するアルミナや、ダイヤモンド等の硬質研磨材を採用すると、研磨速度は上がるものの、研磨表面にピットやスクラッチが生じたり、ウェーハ表面内部に加工歪みが残ったり、また表面精度が極めて悪くなる等といった問題があった。また、化学的にも安定な材料であるところから、メカノケミカル作用による研磨効果が極めて低く、有効な研磨促進剤も見出されていないのが現状である。
【0004】
このような硬脆材料の研磨特性を改善するために、特許文献1では、研磨材と、ウロン酸、アルドン酸、アルダル酸等のアルドースの酸化によって得られる酸及びそれの塩のうちの少なくともいずれか一方であるアルドース誘導体と、水とを含有する研磨用組成物を提案している。
【0005】
また、特許文献2では、研磨材として、ベースとなるコロイダルシリカと、ベース研磨材と異なる粒子径のコロイダルシリカと、キレート性化合物を含有する研磨用組成物が提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1および2に開示されている研磨用組成物は、タンタル酸リチウム材料およびニオブ酸リチウム材料の硬脆材料に対して、高精度でかつ高研磨速度で研磨するという要求を十分に満足するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−150482号公報
【特許文献2】特開2007−321159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムを研磨する用途においてより好適に使用可能な研磨用組成物を提供すること、及びそうした研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する研磨方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の一実施態様は、以下の成分(a)、(b)および(c)を含有するタンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム用研磨用組成物を提供する。
(a):コロイダルシリカ
(b):エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩またはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩であり、カルボキシル基の水素原子のカリウム原子による中和率が60〜100モル%である化合物
(c):水
【0010】
本発明の他の実施形態は、上記実施形態の研磨用組成物において、(a)、(b)および(c)の合計に占める(a)の割合が10〜35質量%であり、(a)、(b)および(c)の合計に占める(b)の割合が0.2〜4.0質量%であり、pHが7〜12である、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム用研磨用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム基板を研磨する用途においてより好適に使用可能な研磨用組成物が提供される。また本発明によれば、そうした研磨用組成物を用いてタンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム基板を研磨する研磨方法も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
本発明の一実施態様は、以下の成分(a)コロイダルシリカ、(b)エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩またはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩であり、カルボキシル基の水素原子のカリウム原子による中和率が60〜100モル%である化合物、(c)水、を含有するタンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム用研磨用組成物を提供する。以下、それぞれの含有物について説明する。
【0013】
<コロイダルシリカ>
コロイダルシリカの平均粒子径は特定されるものではない。しかしながら、一般に、平均粒子径が15nmよりも小さいコロイダルシリカ、さらに言えば25nmよりも小さいコロイダルシリカは、研磨対象物を研磨する能力があまり高くない。従って、研磨速度の向上のためには、コロイダルシリカの平均粒子径は、好ましくは15nm以上、より好ましくは25nm以上である。一方、平均粒子径が100nmよりも大きいコロイダルシリカ、さらに言えば80nmよりも大きいコロイダルシリカは、製造にコストがかかる。従って、コスト低減のためには、コロイダルシリカの平均粒子径は、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下である。なお、コロイダルシリカの平均粒子径は、例えば、日機装社製の型式「UPA−UT151」を用いた動的光散乱法により、平均二次粒子径をあらわす体積平均粒子径(体積基準の算術平均;Mv)として測定することができる。
【0014】
また、研磨用組成物中のコロイダルシリカの含有量が10質量%よりも少ない場合、研磨用組成物があまり高い研磨能力を有さない虞がある。従って、研磨速度の向上のためには、研磨用組成物中のコロイダルシリカの含有量は10質量%以上である。一方、研磨用組成物中のコロイダルシリカの含有量が35質量%よりも多い場合、研磨用組成物の分散安定性が低下し経時的にゲル化するおそれがある。従って、研磨用組成物の分散安定性の低下防止のためには、研磨用組成物中のコロイダルシリカの含有量は、35質量%以下である。研磨用組成物中のコロイダルシリカの含有量は好ましくは、15〜30質量%であり、より好ましくは15〜25質量%である。
【0015】
本発明の一実施形態の研磨用組成物は、エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩またはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩を含み、このとき、カルボキシル基の水素原子のカリウム原子による中和率が60〜100モル%であることを要件とする。エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩またはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩は、市販のものを使用してもよいし、エチレンジアミン四酢酸またはジエチレントリアミン五酢酸と、カリウムまたは水酸化カリウムを個別に配合して調製してもよい。コロイダルシリカに対して、エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩またはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩を研磨促進剤として添加されることによって、研磨の際の研磨抵抗が適度に緩和されること等により、研磨速度が有利に向上せしめられると共に、そのような研磨速度が長期間に亘って維持され、優れた研磨寿命が実現されるのである。
【0016】
エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩またはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩のカルボキシル基の水素原子のカリウム原子による中和率は60〜100モル%であり、好ましくは60〜90モル%である。エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩またはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩のカルボキシル基の水素原子のカリウム原子による中和率が60モル%未満である場合は研磨用組成物が経時的に著しく粘度が増加したりゲル化する傾向があり、あるいは100モル%を超えると、研磨用組成物のpHが高くなり研磨用組成物中の研磨材が溶解するなどの問題が生じる傾向にある。
【0017】
エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩またはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩の含有量は、0.2〜4.0質量%の割合で添加され、好ましくは、0.3〜3.0質量%の配合割合が良く、より好ましくは、0.4〜2.5質量%の配合割合が良く、これにより、より一層優れた研磨効率が得られることとなる。この配合割合が、0.2質量%より少ない場合には、研磨速度の向上は発現されない傾向にあり、4.0質量%より多い場合には、経時的に著しく粘度が増加したりゲル化する傾向にあるからである。
【0018】
本実施形態の研磨用組成物に配合される水は、研磨用組成物中の水以外の成分を分散又は溶解する媒質としての役割を担う。水は、工業用水、水道水、蒸留水、又はそれらをフィルター濾過したものであってもよく、不純物をできるだけ含有しないことが好ましい。
【0019】
研磨用組成物のpHが7よりも低い場合、さらに言えば8よりも低い場合には、研磨用組成物の分散安定性が低下し、経時的に著しく粘度が増加したりゲル化する傾向にある。従って、研磨用組成物の分散安定性の低下防止のためには、研磨用組成物のpHは7以上、好ましくは8以上である。一方、研磨用組成物のpHが12よりも高い場合、さらに言えば11よりも高い場合には、研磨用組成物中の研磨材が溶解する傾向にある。従って、研磨材の溶解の発生防止のためには、研磨用組成物のpHは12以下、好ましくは11以下である。
【0020】
研磨用組成物のpHの調整には、研磨用組成物に配合する研磨材や配合剤に応じて、各種のpH調整剤を適宜配合することができる。
【0021】
本発明の他の実施形態は、上記実施態様のタンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム基板用研磨用組成物を用いて、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム基板表面を研磨する方法を提供する。この際、例えば、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム基板である研磨対象物に研磨パッド等の研磨部材を接触させて、その接触部分に上記実施態様の研磨用組成物を供給しながら研磨対象物及び研磨部材のいずれか一方を他方に対して摺動させる。
【0022】
本実施形態は、以下の利点を有する。
本実施形態に係る研磨用組成物は、研磨用組成物の研磨能力の向上に寄与するエチレンジアミン四酢酸のカリウム塩またはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩を含有している。そのため、本実施形態に係る研磨用組成物は、従来の研磨用組成物と比べて高い研磨能力を有しており、タンタル酸リチウム基板及びニオブ酸リチウム基板を迅速に研磨することができる。
【0023】
また、エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩またはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩のカルボキシル基の水素原子のカリウム原子による中和率が60〜100モル%とすることにより、研磨用組成物の分散安定性の向上にも寄与するので、本実施形態に係る研磨用組成物は、従来の研磨用組成物と比べて高い分散安定性を有する。すなわち、研磨材を高濃度に含有する場合であっても、研磨用組成物中の研磨材がゲル化又は固化するおそれが少ない。
【0024】
中和率は、研磨用組成物中のエチレンジアミン四酢酸またはジエチレントリアミン五酢酸のカルボキシル基と中和塩を形成する塩基性物質のモル数を、エチレンジアミン四酢酸またはジエチレントリアミン五酢酸のカルボキシル基のモル数で除して算出する。または、研磨用組成物中のエチレンジアミン四酢酸またはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム原子のモル当量をエチレンジアミン四酢酸またはジエチレントリアミン五酢酸のカルボキシル基のモル当量で除して算出してもよい。
【0025】
前記実施形態は以下のように変更されてもよい。前記実施形態に係る研磨用組成物は、アルミナ、フュームドシリカ、非晶質シリカパウダー、セリア又は二酸化マンガンをコロイダルシリカの代わりにあるいはコロイダルシリカに加えて研磨材として含有してもよい。ただし、研磨速度の向上のためには、研磨用組成物は、研磨材として少なくともコロイダルシリカ又はセリアを含有していることが好ましい。
【0026】
前記実施形態に係る研磨用組成物は、pH調整剤、防カビ剤、界面活性剤等をさらに含有してもよい。pH調整剤は、硫酸や塩酸、硝酸、炭酸などの無機酸、又は酢酸やシュウ酸などの有機酸であってもよいし、無機酸又は有機酸の塩であってもよい。あるいはpH調整剤は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウムなどのアルカリ化合物であってもよい。防カビ剤は窒素及び硫黄を含有する有機系防カビ剤であることが好ましい。研磨用組成物中の防カビ剤の含有量は、好ましくは0.001〜1.0質量%、より好ましくは0.01〜0.1質量%である。界面活性剤は、例えば、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤のいずれであってもよい。界面活性剤は、研磨用組成物中の研磨材の分散性を向上させる作用を有する。
【0027】
前記実施形態に係る研磨用組成物は、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム基板以外の研磨対象物を研磨する用途に用いられてもよい。例えば、前記実施形態に係る研磨用組成物は、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム基板以外の酸化物基板を研磨する用途において使用されてもよいし、酸化物基板以外の酸化物を研磨する用途において使用されてもよい。あるいは、磁気ディスク用のガラス基板を研磨する用途において使用されてもよい。
【0028】
前記実施形態に係る研磨用組成物は原液を水で希釈することによって調製されてもよい。
【実施例】
【0029】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
<研磨用組成物の調製および物性の測定>
200mL容量樹脂製カップに水を84.2g、エチレンジアミン四酢酸の三カリウム塩を0.80g、平均粒径D50が69nmのコロイダルシリカを15.0gとなるように入れ、室温で30分間撹拌し、実施例1の研磨用組成物を得た。当該研磨用組成物のpHを測定したところ8.8であった。また、中和率は、エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩中のカリウム原子のモル当量をエチレンジアミン四酢酸のカルボキシル基のモル当量で除して算出することにより、以下の通り算出された。
中和率(%)=3/4×100=75
【0030】
<粘度の測定>
調製された実施例1の研磨用組成物の25℃における粘度は1mPa・sであった。当該研磨用組成物を25℃で3か月間静置した後の、25℃での粘度は1mPa・sであった。表1において、25℃での粘度が300mPa・s以下であるものを「○」、25℃での粘度が300mP・sを超える、またはゲル化した場合を「×」として本実施例の経時変化の評価を示した。結果を表1に示した。
【0031】
【表1】
【0032】
<研磨レートの測定>
上記の研磨用組成物の調製と同様の方法で研磨用組成物を10kg調製し、以下に示す機器および条件で研磨試験を行い、十分に洗浄を行った後、被研磨物の面積と研磨前後での重量変化から研磨レートを算出した。
研磨機:両面研磨機(スピードファム社製DSM 12B−8PV 4MH)
研磨パッド:ポリウレタン製研磨パッド(ニッタ・ハース(株)製SUBA 800)
研磨対象物:直径3インチ、厚さ0.5mmのタンタル酸リチウムウェハ((株)山寿セラミックス製)、9枚/バッチ
研磨圧力:39kPa
上定盤回転数:5rpm
下定盤回転数:16rpm
研磨用組成物の供給速度:3L/分(循環使用)
研磨時間:30分間
研磨レートは14.3μm/時間であった。表1において、研磨レートが13.0μm/時間を超える場合を「○」、研磨レートが13.0μm/時間以下の場合を「×」で評価した。結果を表1に示した。
【0033】
<面粗さの測定>
非接触表面形状測定機(ZYGO社製NewView5032)を用い、上記研磨試験後のタンタル酸リチウム基板の視野角289×217μmでの表面の高さの算術平均値Raを、表面粗さとして測定した。Raは0.232nmであった。表1において、表面粗さの評価について、Raが0.500nm以下の場合を「○」、Raが0.500nmを超える場合を「×」で評価した。結果を表1に示した。
【0034】
(実施例2〜9)
実施例1と同様の方法で、表1に示される、コリダルシリカの平均粒子径と配合割合、エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩またはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩の配合割合、及び水の配合割合により、実施例1〜9の研磨用組成物を調製した。実施例1と同様の方法により、エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩またはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩の中和率を算出した。また、研磨用組成物の物性(pH、粘度)及び研磨用組成物の性能(研磨レート、表面粗さ)を測定し、得られた結果及び評価を表1に示した。なおエチレンジアミン四酢酸のカリウム塩またはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩として、実施例2〜4、7および9はエチレンジアミン四酢酸の三カリウム塩を、実施例8はジエチレントリアミン五酢酸の五カリウム塩を用いた。実施例5はエチレンジアミン四酢酸の二カリウム塩を0.37gとエチレンジアミン四酢酸の三カリウム塩を0.43gとを用いエチレンジアミン四酢酸のカリウム塩の配合割合を表1に示される配合割合とし、実施例6はエチレンジアミン四酢酸の三カリウム塩を0.38gとエチレンジアミン四酢酸の四カリウム塩を0.42gとを用い、エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩の配合割合を表1に示される配合割合とした。
【0035】
(比較例1〜9)
実施例1と同様の方法で、表1に示される、コリダルシリカの平均粒子径、配合割合、エチレンジアミン四酢酸のカリウム、ナトリウムまたはアンモニウム塩、あるいはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩の配合割合、及び水の配合割合により、比較例1〜9の研磨用組成物を調製した。中和率は、エチレンジアミン四酢酸のカリウム、ナトリウムまたはアンモニウム塩あるいはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩中の、カリウム原子、ナトリウム原子またはアンモニウム分子のモル当量をカルボキシル基のモル当量で除して算出した。また、実施例1と同様の方法により、研磨用組成物の物性(pH、粘度)及び研磨用組成物の性能(研磨レート、表面粗さ)の測定し、得られた結果及び評価を表1に示した。なおエチレンジアミン四酢酸のカリウム塩またはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩の代わりに比較例1ではエチレンジアミン四酢酸の三ナトリウム塩を、比較例2はエチレンジアミン四酢酸の三アンモニウム塩を、比較例9ではエチレンジアミン四酢酸の二アンモニウム塩を用いた。
【0036】
表1に示されるように、本発明で規定する組成及びエチレンジアミン四酢酸のカリウム塩またはジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩の中和率を満たす実施例1〜9の研磨用組成物は、経時変化特性(粘度特性)が良好であり、かつ、研磨レートも高く、得られた研磨表面の表面粗さも良好であった。
【0037】
これに対して、比較例1の研磨用組成物は、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩を用いたために研磨レートが不十分であった。比較例2の研磨用組成物は、エチレンジアミン四酢酸のアンモニウム塩を用いたために研磨レートが不十分であった。比較例3の研磨用組成物は、エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩の中和率が本発明の範囲より小さいために、研磨用組成物が経時的にゲル化した。比較例4の研磨用組成物は、研磨用組成物中のコロイダルシリカの割合が本発明の範囲より小さいために、研磨レートが不十分であった。比較例5の研磨用組成物は、研磨用組成物中のコロイダルシリカの割合が本発明の範囲より大きいために、研磨用組成物が経時的にゲル化した。比較例6の研磨用組成物は、研磨用組成物中のコロイダルシリカの割合が本発明の範囲より小さいために、研磨レートが不十分であった。比較例7の研磨用組成物は、研磨用組成物中のエチレンジアミン四酢酸のカリウム塩の割合が本発明の範囲より小さいために、研磨レートが不十分であった。比較例8の研磨用組成物は、研磨用組成物中のエチレンジアミン四酢酸のカリウム塩の割合が本発明の範囲より大きいために、研磨用組成物が経時的にゲル化した。比較例9の研磨用組成物は、エチレンジアミン四酢酸のアンモニウム塩を用い、また研磨用組成物中のコロイダルシリカの割合が本発明の範囲より大きいために、研磨用組成物が経時的にゲル化した。