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特開2018-157706スイッチトリラクタンスモータの制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-157706(P2018-157706A)
(43)【公開日】2018年10月4日
(54)【発明の名称】スイッチトリラクタンスモータの制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/08 20160101AFI20180907BHJP
   H02P 29/20 20160101ALI20180907BHJP
【FI】
   H02P25/08
   H02P29/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-53638(P2017-53638)
(22)【出願日】2017年3月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出口 順一
(72)【発明者】
【氏名】椎名 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】吉末 監介
(72)【発明者】
【氏名】星 伸一
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐介
(72)【発明者】
【氏名】村上 陽介
(72)【発明者】
【氏名】阿部 友哉
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA20
5H501BB02
5H501BB05
5H501CC04
5H501DD09
5H501HB07
5H501HB18
5H501JJ03
5H501JJ17
5H501LL01
5H501LL22
5H501LL23
5H501LL33
5H501LL35
(57)【要約】
【課題】スイッチトリラクタンスモータの効率を悪化させることなく、振動および騒音を低減させること。
【解決手段】突極構造のステータおよびロータを有し、三相のコイルに励磁電流が流れることによって駆動するスイッチトリラクタンスモータの制御装置において、次数が、ステータ極数とロータ極数との最小公倍数、またはロータ極数とコイルの相数との倍数となる特定次数について、当該特定次数の励磁音周波数と共振周波数とが一致する場合(ステップS2:Yes)、第1巻線パターンとし、かつ三相の励磁電流について隣り合う二相の励磁区間が一部重なる電流波形となる二相励磁状態に制御する(ステップS4)。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
突極構造のステータと、突極構造のロータとを有し、三相のコイルに励磁電流が流れることによって駆動するスイッチトリラクタンスモータの制御装置において、
前記スイッチトリラクタンスモータとの接続態様に応じて、前記三相のコイルがそれぞれ同じ方向に巻かれた第1巻線パターンと、異なる磁極が前記ステータの周方向で交互に配置されたように前記三相のコイルが巻かれた第2巻線パターンと、を切り替えることが可能なスイッチング回路と、
前記スイッチング回路を切り替える制御を実施する制御部と、を備え、
次数が、ステータ極数とロータ極数との最小公倍数、または前記ロータ極数と前記コイルの相数との倍数となる特定次数について、当該特定次数の励磁音周波数と共振周波数とが一致する場合、前記制御部は、前記スイッチトリラクタンスモータが前記第1巻線パターンとなるように前記スイッチング回路を接続し、かつ隣り合う二相の励磁区間が一部重なる電流波形となる二相励磁状態に制御する
ことを特徴とするスイッチトリラクタンスモータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチトリラクタンスモータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに対向する複数の突極を各々備えたステータおよびロータと、ステータの突極に巻回されたコイルとを備え、ステータとロータのそれぞれの突極間に発生させた磁気吸引力によってロータを回転させるスイッチトリラクタンスモータが知られている。
【0003】
非特許文献1には、スイッチトリラクタンスモータに関して、二つの巻線パターン(NNNSSS巻およびNSNSNS巻)のトルク性能を比較した結果が開示されている。そして、非特許文献1には、NNNSSS巻よりもNSNSNS巻のほうが磁気飽和しにくいため、NNNSSS巻の最大トルクよりも、NSNSNS巻の最大トルクのほうが大きくなることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】竹野元貴、外4名、「HEV用50kWSRMのヨーク部の磁気飽和を考慮したトルク性能の向上」、日本AEM学会、2011年6月、Vol.19、No.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記非特許文献1には、NSNSNS巻を採用することにより、スイッチトリラクタンスモータの最大トルクが向上することが示唆されている。しかしながら、NNNSSS巻およびNSNSNS巻のトルク効率(以下、単に「効率」という)は、スイッチトリラクタンスモータの負荷状態によって変動する。そのため、最大トルクの向上だけを考慮してNSNSNS巻を採用すると、効率悪化を招くおそれがある。
【0006】
さらに、スイッチトリラクタンスモータでは、効率だけではなく、振動と騒音を低減することも考慮されることが望まれる。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、スイッチトリラクタンスモータの効率を悪化させることなく、振動および騒音を低減させることができるスイッチトリラクタンスモータの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、突極構造のステータと、突極構造のロータとを有し、三相のコイルに励磁電流が流れることによって駆動するスイッチトリラクタンスモータの制御装置において、前記スイッチトリラクタンスモータとの接続態様に応じて、前記三相のコイルがそれぞれ同じ方向に巻かれた第1巻線パターンと、異なる磁極が前記ステータの周方向で交互に配置されたように前記三相のコイルが巻かれた第2巻線パターンと、を切り替えることが可能なスイッチング回路と、前記スイッチング回路を切り替える制御を実施する制御部と、を備え、次数が、ステータ極数とロータ極数との最小公倍数、または前記ロータ極数と前記コイルの相数との倍数となる特定次数について、当該特定次数の励磁音周波数と共振周波数とが一致する場合、前記制御部は、前記スイッチトリラクタンスモータが前記第1巻線パターンとなるように前記スイッチング回路を接続し、かつ隣り合う二相の励磁区間が一部重なる電流波形となる二相励磁状態に制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定次数にて励磁音周波数と共振周波数とが一致する場合には、第1巻線パターン(NNNSSS巻)にして隣り合う磁極が同じ場合と異なる場合とが存在するようにし、かつ隣り合う相の励磁区間同士が重なる二相励磁を実施する。二相励磁させた際の磁束の流れ方が異なるため、各相で不平衡の電流波形となり、特定次数の振動および騒音を低減できる。これにより、スイッチトリラクタンスモータの効率を悪化させることなく、振動および騒音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態のシステム構成を模式的に示す図である。
図2図2は、スイッチトリラクタンスモータの構成を模式的に示す図である。
図3図3は、スイッチング回路例を示す回路図である。
図4図4は、NNNSSS巻を説明するための図である。
図5図5は、NSNSNS巻を説明するための図である。
図6図6は、周波数分析を示す図である。
図7図7は、単相励磁の電流波形を示す図である。
図8図8は、二相励磁の電流波形を示す図である。
図9図9は、ラジアル力波形のFFT分析を示す図である。
図10図10は、切替制御フローの一例を示すフローチャートである。
図11図11は、適用車両例を示すスケルトン図である。
図12図12は、他のスイッチング回路例を示す図である。
図13図13は、他のスイッチング回路例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態におけるスイッチトリラクタンスモータの制御装置について具体的に説明する。
【0012】
[1.システム構成]
図1は、実施形態のシステム構成を模式的に示す図である。図1に示すように、本実施形態のシステム構成は、スイッチトリラクタンスモータ(以下「SRモータ」という)1と、インバータ2と、昇圧部3と、バッテリ4と、制御部100とを含む構成である。SRモータ1の制御装置は、少なくともインバータ2および制御部100を含む。
【0013】
SRモータ1は、インバータ2および昇圧部3を介してバッテリ4と電気的に接続され、インバータ2とは三相のコイル12を介して電気的に接続されている。そのSRモータ1は、回転子に永久磁石を使用しない電動機であり、三相のコイル12に励磁電流が流れることによって駆動する。なお、SRモータ1は、電動機としてだけではなく、発電機としても機能する。
【0014】
図2に示すように、SRモータ1は、突極構造のステータ10と、突極構造のロータ20とを備えている。ステータ10は、環状構造の内周部に突極としてのステータ歯11を複数備え、各ステータ歯11にはインバータ2に接続されたコイル12が巻回されている。ロータ20は、図示しないロータ軸と一体回転する回転子であり、ステータ10の径方向内側に配置され、環状構造の外周部には突極としてのロータ歯21を複数備えている。そして、図2に示すSRモータ1は、十八極のステータ10と、十二極のロータ20とを備える三相電動機である。
【0015】
また、三相のSRモータ1には、一対のステータ歯11およびコイル12aにより構成されるA相(U相)と、一対のステータ歯11およびコイル12bにより構成されるB相(V相)と、一対のステータ歯11およびコイル12cにより構成されるC相(W相)と、が含まれる。
【0016】
インバータ2は、三相の電流をコイル12に通電できるように複数のスイッチング素子を備えた電気回路(インバータ回路)によって構成されている。つまり、インバータ2は、インバータ回路に接続されたそれぞれのコイル12に対して、相ごとに電流を流す。
【0017】
昇圧部3は、インバータ2とバッテリ4との間に設けられており、SRモータ1に印加する電圧を昇圧するものである。昇圧部3は、例えば昇圧コンバータによって構成されている。
【0018】
制御部100は、SRモータ1を駆動制御する電子制御装置(ECU)によって構成されている。その制御部100は、CPUと、各種プログラム等のデータが格納された記憶部と、SRモータ1を駆動制御するための各種の演算を行う演算処理部とを備えている。また、制御部100には、SRモータ1の回転数を検出する回転数センサ51からレゾルバ信号が入力される。演算処理部は、そのレゾルバ信号に基づいてSRモータ1の回転数(以下「モータ回転数」という)を演算するなど、モータ制御のための演算処理を行う。そして、演算処理部における演算の結果、インバータ2を制御するための指令信号が制御部100からインバータ2に出力される。
【0019】
例えば、制御部100は、レゾルバ信号から、回転方向におけるステータ歯11とロータ歯21との相対的な位置関係に基づいて、通電対象となるコイル12の切り替えを相ごとに繰り返す制御を実行する。そして、制御部100は、この制御において、ある相のコイル12に励磁電流を流してステータ歯11を励磁させ、ステータ歯11と、そのステータ歯11の近くのロータ歯21との間に磁気吸引力を発生させることにより、ロータ20を回転させる。このように、制御部100は、インバータ2を制御することにより、SRモータ1に印加する電圧および励磁電流を制御する。
【0020】
[2.巻線パターンの切替]
さらに、インバータ2は、SRモータ1の巻線パターン(磁極配列パターン)を切り替えることが可能に構成され、SRモータ1との接続態様に応じて、SRモータ1の巻線パターンをNNNSSS巻(第1巻線パターン)とNSNSNS巻(第2巻線パターン)とに切り替えることが可能なスイッチング回路を備えている。
【0021】
また、SRモータ1の制御装置は、SRモータ1の駆動中に、SRモータ1の接続態様に応じて、スイッチング回路に含まれる切替スイッチのオン/オフを切り替え、SRモータ1の巻線パターンをNNNSSS巻とNSNSNS巻の二つのパターンに切り替える制御(切替制御)を実施する。なお、接続態様とは、現在の巻線パターンのことである。
【0022】
[2−1.スイッチング回路]
図3は、スイッチング回路例を示す回路図である。なお、図3に示す破線で丸く囲まれている部分が、巻線パターン切替用のスイッチング部を表している。
【0023】
インバータ2を構成するインバータ回路は、相ごとに設けられた複数のダイオードおよびトランジスタと、一つのコンデンサCoと、を備えている。そして、スイッチング回路は、インバータ回路のうちB相(V相)の回路に含まれている。インバータ2では、各相において、それぞれのトランジスタを同時にオンまたはオフにするか、一方のトランジスタをオンにし、かつもう一方のトランジスタをオンまたはオフにすることにより、コイル12に流れる電流値を変更する。
【0024】
詳細には、インバータ2は、B相の回路において、四つのトランジスタTrb1,Trb2,Trb3,Trb4と、四つのダイオードDb1,Db2,Db3,Db4とを備えている。トランジスタTrb3およびダイオードDb3により巻線パターン切替用のスイッチング部2aが構成され、トランジスタTrb4およびダイオードDb4により巻線パターン切替用のスイッチング部2bが構成されている。また、インバータ2は、A相の回路において、二つのトランジスタTra1,Tra2と、四つのダイオードDa1,Da2,Da3,Da4とを備えている。さらに、インバータ2は、C相の回路において、二つのトランジスタTrc1,Trc2と、四つのダイオードDc1,Dc2,Dc3,Dc4とを備えている。
【0025】
そのB相の回路においてトランジスタTrb3,Trb4をオンにし、かつコイル12bの電流の制御にトランジスタTrb1,Trb2を用いることにより、SRモータ1において隣接するA相、B相、C相の磁極がそれぞれ同じになる磁極配列パターン(NNNSSS巻)を実現できる。また、B相の回路においてトランジスタTrb1,Trb2をオフにし、かつトランジスタTrb3,Trb4をコイル12bの電流の制御に用いることにより、SRモータ1において隣接するA相、B相、C相の磁極のうち、B相の磁極だけが反対となる磁極配列パターン(NSNSNS巻)を実現できる。このように、インバータ2は、巻線パターン切替用スイッチであるトランジスタTrb3,Trb4のオン/オフを切り替えることにより、SRモータ1の巻線パターンを二つの巻線パターン(NNNSSS巻およびNSNSNS巻)に切り替えることができる。
【0026】
[2−2.巻線パターン]
図4は、NNNSSS巻を説明するための図である。図4に示すように、NNNSSS巻では、隣接するA相、B相、C相の磁極がそれぞれ同じになる。すなわち、図4では右から順に、A相、B相、C相、A相、B相、C相の順に並んでいるが、それぞれの磁極は、N極、N極、N極、S極、S極、S極の順となる。このように、三相のコイル12a,12b,12cがそれぞれ同じ方向に巻かれたような巻線パターンのことを「NNNSSS巻」という。
【0027】
図5は、NSNSNS巻を説明するための図である。図5に示すように、NSNSNS巻では、隣接A相、B相、C相の磁極のうち、B相の磁極だけが反対となる。すなわち、図5では右から順に、A相、B相、C相、A相、B相、C相の順に並んでいるが、それぞれの磁極は、N極、S極、N極、S極、N極、S極の順となる。このように、三相のコイル12a,12b,12cのうちの二つ(ここではコイル12a,12c)が同じ方向に、残りの一つ(ここではコイル12b)が反対方向に巻かれ、かつ巻線方向が同じ二つのコイル12a,12cと巻線方向が反対の一つのコイル12bとが交互に配置された巻線パターンのことを「NSNSNS巻」という。つまり、NSNSNS巻とは、異なる磁極がステータ10の周方向に交互に配置されたように三相のコイル12a,12b,12cが巻かれた巻線パターンのことである。すなわち、巻線方向の異なるコイル12が突極単位(ステータ歯11ごと)でステータ10の周方向に交互に配置された巻線パターンのことをNSNSNS巻ということもできる。なお、「巻線方向が同じ二つのコイル12a,12cと巻線方向が反対の一つのコイル12bとが交互に配置された」とは、「ステータ10の周方向において、コイル12aとコイル12cの間にコイル12bが配置されている状態であること」を意味する。
【0028】
[2−3.通常の切替制御]
SRモータ1の制御装置は、通常の切替制御(通常制御)として、SRモータ1が低回転かつ低負荷側の駆動領域内で駆動する場合には、NNNSSS巻の巻線パターンに切り替え、SRモータ1が高回転かつ高負荷側の駆動領域内で駆動する場合には、NSNSNS巻の巻線パターンに切り替える制御を実施する。
【0029】
これは、各巻線パターンの効率が、SRモータ1の駆動状態(駆動領域)によって変動するためである。SRモータ1が低回転かつ低負荷(低トルク)側の駆動領域で駆動する場合、NNNSSS巻の効率はNSNSNS巻の効率よりも高くなる。一方、SRモータ1が高回転かつ高負荷(高トルク)側の駆動領域で駆動する場合には、NSNSNS巻の効率がNNNSSS巻の効率よりも高くなる。
【0030】
通常の切替制御が実施されることにより、それぞれの巻線パターンにおける効率のよい駆動領域に応じて、最適な巻線パターンに切り替えることができる。なお、通常の切替制御では、モータ回転数およびモータトルクに応じた切替マップを用いて、現在の駆動領域を判断することにより、対応する巻線パターンに切り替えることができる。
【0031】
[3.振動・騒音]
SRモータ1の制御装置は、効率を考慮した通常の切替制御に加え、振動および騒音を考慮した切替制御を実施する。
【0032】
ステータ10およびロータ20はいずれも突極構造を有するため、SRモータ1における振動および騒音の発生要因として、ステータ歯11とロータ歯21との間に発生する磁気吸引力の径方向の分力であるラジアル力が挙げられる。さらに、その突極構造を有することにより、SRモータ1では、特定の次数において騒音が大きくなってしまうおそれがある。そこで、本実施形態の制御装置では、特定の次数における振動および騒音を低減させるように構成されている。なお、ラジアル力が小さいほど、あるいはラジアル力の振幅が狭いほど、振動および騒音は小さくなる。
【0033】
特定の次数として、ステータ極数とロータ極数との最小公倍数となる次数、またはロータ極数とコイル相数の整数倍となる次数、が挙げられる。
【0034】
ステータ極数とロータ極数との最小公倍数の次数について説明すると、図2に示すSRモータ1では、ステータ極数が「18」、ロータ極数が「12」であるため、その最小公倍数である「36」の次数において騒音が大きくなってしまう。言い換れば、その36次のラジアル力を低減させることにより、振動および騒音を効果的に低減させることができる。
【0035】
ロータ極数とコイル相数との整数倍の次数について説明すると、図2に示すSRモータ1では、ロータ極数が「12」、コイル相数が「3」であるため、その整数倍である「36」や「72」の次数において騒音が大きくなってしまう。言い換れば、その36次や72次のラジアル力を低減させることにより、振動および騒音を効果的に低減させることができる。
【0036】
また、振動および騒音が大きくなってしまう要因として、特定の次数での共振が挙げられる。次数が36次の場合に生じる共振について図6を参照して説明する。図6は、周波数分析を示す図である。図6に示す周波数分析では、同一次数は、モータ回転数の上昇に比例して周波数が上昇する右上がりの線として現れる。図6に示すように、36次の周波数は、モータ回転数が変化して、共振周波数(共振成分)に近づくほど共振しやすくなる。そして、36次の周波数が共振周波数と一致する場合、最も大きな共振が生じ、特に大きな振動および騒音が発生することになる。なお、SRモータ1は回転数が可変であるため、モータ回転数の変化に伴い励磁音周波数が変化する。
【0037】
このように、SRモータ1の駆動領域には、共振周波数を含む共振領域が含まれるので、SRモータ1の制御装置は、特定の次数における共振が大きくなる場合には、振動・騒音の低減効果がより高い巻線パターンに切り替える。振動・騒音の低減効果については、各巻線パターン(NNNSSS巻、NSNSNS巻)の電流波形の違いにより説明できる。
【0038】
[4.電流波形]
図7図8を参照して、各巻線パターンの電流波形の違いについて説明する。図7には単相励磁の電流波形が例示され、図8には二相励磁の電流波形が例示されている。単相励磁とは、各相の励磁区間が重ならない電流波形のことをいう。二相励磁とは、隣り合う二相の励磁区間が一部重なる電流波形のことをいう。なお、図7には、NSNSNS巻の電流波形のみが図示されており、NNNSSS巻の電流波形は図示されていない。
【0039】
NSNSNS巻(第2巻線パターン)では、各相において隣り合う磁極が異なるため、バランスがとられており、各相で均等な電流波形となる。図7図8に示すように、NSNSNS巻では、単相励磁と二相励磁のどちらでも、各相で最大電流値と励磁幅がそろっている均等な電流波形となる。しかしながら、NSNSNS巻では、均等な電流波形であるがゆえに、次数がよりそろいやすくなる。そのため、36次などの特定の次数において振動および騒音(励磁音)が大きくなってしまう。
【0040】
NNNSSS巻(第1巻線パターン)では、相によって隣り合う相が、同じ相であったり、異なる相であったりするため、バランスされておらず、各相で不平衡の電流波形となる。図8に示すように、NNNSSS巻は、隣り合う相が同じであったり異なったりするため、二相励磁の際の磁束の流れ方が異なり、電流の立ち上り角や立下り角が異なり、各相の電流波形が不平衡となる。また、二相励磁では、単相励磁に比べて励磁幅(励磁区間)が広い。そのため、単相励磁では最大電流値との間で電流の変化が急峻になってしまうが、二相励磁では単相励磁よりも電流の変化が緩やかになる。つまり、振動および騒音を低減するためには、単相励磁よりも二相励磁のほうが低減効果は大きい。
【0041】
また、図8に示す例では、NNNSSS巻において、B相およびC相の最大電流値が、A相の最大電流値よりも小さくなっている。また、A相およびB相の励磁幅は、NNNSSS巻のほうがNSNSNS巻よりも広い。さらに、B相およびC相の最大電流値は、NNNSSS巻のほうがNSNSNS巻よりも小さい。
【0042】
このように、NNNSSS巻かつ二相励磁の場合には、各相の電流波形が不平衡となるため、特定の次数成分(36次の成分)を抑制できる。図9には、二相励磁での各巻線パターンにおけるラジアル力波形のFFT解析が示されている。図9に示すように、36次成分のラジアル力(振幅)について、NNNSSS巻のほうがNSNSNS巻よりも小さい。つまり、NSNSNS巻からNNNSSS巻に切り替えることにより、36次成分(ラジアル力)を低減することができる。
【0043】
[5.切替制御フロー]
ここで、図10を参照して、振動および騒音を低減するための切替制御フローについて説明する。なお、図10に示す制御フローは制御部100によって実施される。
【0044】
図10に示すように、まず、制御部100は、巻線パターンの切替制御に用いる各種情報が読み込まれる(ステップS1)。その各種情報には、現状の磁極の情報(巻線パターンの情報)、各相の電流値、電圧、モータ回転数、位相、モータ指令トルクが含まれる。なお、ステップS1では、レゾルバ信号に基づいてモータ回転数が算出され、SRモータ1の要求トルクとしてのモータトルク指令が算出されてもよい。
【0045】
また、制御部100は、SRモータ1の駆動状態が36次(特定の次数)にて共振が大きくなる状態であるか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2では、36次の励磁音周波数が共振周波数と一致するか否かが判定される。なお、ステップS2では、ステップS1で読み込まれたモータ回転数に基づいて、36次の励磁音周波数が共振領域内に含まれる駆動状態であるか否かが判定されてもよい。
【0046】
36次にて共振が大きくならない駆動状態であることによりステップS2で否定的に判定された場合(ステップS2:No)、制御部100は、上述した通常の駆動制御(通常制御)を実施する(ステップS3)。そして、この制御ルーチンは終了する。
【0047】
36次にて共振が大きくなる駆動状態であることによりステップS2で肯定的に判定された場合(ステップS2:Yes)、制御部100は、NNNSSS巻にて要求トルク(必要トルク)を出力可能か否かを判定する(ステップS4)。ステップS4では、NNNSSS巻にした場合の最大トルクが、要求トルクよりも大きいか否かが判定される。
【0048】
NNNSSS巻では必要トルクを出力できないことによりステップS4で否定的に判定された場合(ステップS4:No)、制御部100は、上述した通常の駆動制御を実施する(ステップS3)。そして、この制御ルーチンは終了する。
【0049】
一方、NNNSSS巻にて必要トルクを出力可能であることによりステップS4で肯定的に判定された場合(ステップS4:Yes)、制御部100は、巻線パターンをNNNSSS巻に設定し、かつ二相励磁を実施する(ステップS5)。
【0050】
例えば、ステップS1で読み込まれた現在の巻線パターンがNSNSNS巻の場合には、ステップS5にてNSNSNS巻からNNNSSS巻への切替制御が実施され、かつ二相励磁状態に制御される。あるいは、ステップS1で読み込まれた現在の巻線パターンがNNNSSS巻の場合には、ステップS5では、巻線パターンの切替制御を実施せず、現在のNNNSSS巻のまま、二相励磁状態に制御される。そして、ステップS5が実施されると、この制御ルーチンは終了する。
【0051】
以上のように、SRモータ1の制御装置によれば、インバータ2がスイッチング回路を備えることにより、SRモータ1の駆動中に、コイル12の巻線パターンを切り替えることができる。従来は、インバータのハードウェア構成により、NNNSSS巻とNSNSNS巻のいずれかの巻線パターンが一意的に決定され、SRモータ1の駆動中に巻線パターンを変更することは不可能であった。一方、上述した実施形態によれば、SRモータ1の駆動状態に応じて、効率面と振動・騒音面で最適な巻線パターンに切り替えることができる。
【0052】
また、上述したSRモータ1の制御装置では、特定の次数にて共振が発生する場合が考慮されている。ステータ極数とロータ極数との最小公倍数、またはロータ極数とコイル相数との整数倍、となる次数を対象として、この特定次数の励磁音周波数と共振周波数との関係から、振動および騒音の低減効果が高い巻線パターンを選択する。加えて、隣り合う相の励磁区間同士が一部重なる二相励磁状態に制御することにより、ラジアル力をより低減させることができる。二相励磁状態では、各相の励磁区間が一部重なるため、電流の変化が緩やかになり、ラジアル力の振幅を狭くできる。これにより、振動および騒音を低減可能であるとともに、効率との両立を図ることが可能になる。
【0053】
[6.適用車両例]
上述したSRモータ1の制御部100は、各種の車両に適用することが可能である。その適用可能な車両の一例を図11に示す。図11に示す車両200は、エンジン201と、車輪202と、変速機(T/M)203と、デファレンシャルギヤ204と、駆動軸205と、走行用動力源としてのSRモータ(SRM)1と、を備えている。車両200は、四輪駆動車であり、エンジン201が左右の前輪202FL,202FRを駆動し、リヤモータであるSRモータ1が左右の後輪202RL,202RRを駆動する。
【0054】
SRモータ1は、いわゆるインホイールモータであり、左右の後輪202RL,202RRにそれぞれ一つずつ設けられている。車両200のリヤ側駆動装置では、左後輪202RLには左後SRモータ1RLが接続され、かつ右後輪202RRには右後SRモータ1RRが接続されている。後輪202RL,202RRは、互いに独立して回転可能である。
【0055】
左後輪202RLは、左後SRモータ1RLの出力トルク(モータトルク)によって駆動される。また、右後輪202RRは、右後SRモータ1RRの出力トルク(モータトルク)によって駆動される。
【0056】
左後SRモータ1RLおよび右後SRモータ1RRは、インバータ2を介してバッテリ(B)4に接続されている。また、左後SRモータ1RLおよび右後SRモータ1RRは、バッテリ4から供給される電力によって電動機として機能するとともに、左右の後輪202RL,202RRから伝達されるトルク(外力)を電力に変換する発電機として機能する。なお、インバータ2には、左後SRモータ1RL用の電気回路と、右後SRモータ1RR用の電気回路と、が含まれる。
【0057】
制御部100は、左後SRモータ1RLおよび右後SRモータ1RRと、エンジン201と、を制御する。例えば、制御部100には、SRモータ用制御部(SRモータ用ECU)と、エンジン用制御部(エンジンECU)と、が含まれる。この場合、エンジンECUは、吸気制御、燃料噴射制御、点火制御等によって、エンジン201の出力トルクを目標とするトルク値に調節するエンジントルク制御を実行する。また、SRモータ用ECUは、回転数センサ51から入力される信号に基づいて、左後SRモータ1RLおよび右後SRモータ1RRについてのモータ制御を実行する。回転数センサ51には、左後SRモータ1RLの回転数を検出する左後回転数センサ51RLと、右後SRモータ1RRの回転数を検出する右後回転数センサ51RRと、が含まれる。
【0058】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0059】
例えば、上述した昇圧部3に代えて、SRモータ1に印加する電圧を降圧する降圧部(降圧コンバータ)を設けてもよい。また、上述した図3に示すスイッチング回路例や、上述した図11に示す適用車両例に限定されない。
【0060】
[7.他のスイッチング回路例]
インバータ2は、NNNSSS巻とNSNSNS巻との間の切り替えを可能にするために、複数の相にスイッチング回路を備えてもよい。
【0061】
例えば、図12に示すインバータ2Aのように、二相にスイッチング回路を有する回路であってもよい。図12に示すインバータ2Aでは、A相において、ダイオードDa3にトランジスタTra3が追加されたスイッチング部2cと、ダイオードDa4にトランジスタTra4が追加されたスイッチング部2dとを備えている。さらに、C相において、ダイオードDc3にトランジスタTrc3が追加されたスイッチング部2eと、ダイオードDc4にトランジスタTrc4が追加されたスイッチング部2fとを備えている。なお、インバータ2AのB相には、上述したスイッチング部2a,2bが設けられていない。
【0062】
さらに、図13に示すインバータ2Bのように、三相すなわち各相にスイッチング回路を有する回路であってもよい。インバータ2Bにおいて、A相およびC相の構成は図12と同様であり、B相の構成は図3と同様である。NNNSSS巻とNSNSNS巻とを切り替える際、NNNとNSNの真ん中を切り替えるのがB相であるとすると、NNNとNSNの両端を切り替えるのであれば、A相とC相にスイッチが追加されたインバータ回路を用いることができる。
【0063】
図12または図13に例示された回路によれば、SRモータ1の制御装置は、複数のスイッチング回路によってスイッチング動作を受け持つことにより、例えば巻線パターンが頻繁に切り替わることによるインバータ2A,Bの負荷を分散させることができる。
【0064】
[8.他の適用車両例]
SRモータ1の制御部100を適用可能な車両は、上述した図11に示す車両例(以下「適用例1」という)に限定されない。例えば、SRモータ1の制御部100の適用例は、適用例1とは異なり、全ての車輪202にSRモータ1が設けられた構成であってもよい(適用例2)。また、適用例1とは異なり、フロント側駆動装置が設けられていない後輪駆動車であってもよい(適用例3)。
【0065】
SRモータ1の制御部100の適用例は、適用例1〜3とは異なり、車両200の走行用動力源がインホイールモータとしてのSRモータ1のみである構成であってもよい(適用例4)。また、適用例4とは異なり、SRモータ1がインホイールモータではない構成であってもよい(適用例5)。
【0066】
SRモータ1の制御部100の適用例は、適用例5とは異なり、フロント側駆動装置として適用例1の構成が搭載されていてもよい(適用例6)。また、適用例3とは異なりリヤ側駆動装置が設けられていない、あるいは適用例4とは異なり駆動装置の配置が前後で逆である構成であってもよい(適用例7)。
【符号の説明】
【0067】
1 スイッチトリラクタンスモータ(SRモータ)
2 インバータ
3 昇圧部
4 バッテリ
10 ステータ
11 ステータ歯
12 コイル
20 ロータ
21 ロータ歯
51 回転数センサ
100 制御部
図1
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