【解決手段】セメントと、水と、細骨材とを混合し、硬化させて複数の供試硬化物を形成し、形成された供試硬化物のうちの複数を擦り磨き、擦り磨いた後に、擦り磨かれた供試硬化物を平面状に並べ、並べられた供試硬化物の表面のすべり抵抗を測定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された方法では、通常の自動車タイヤと同じ大きさのタイヤを用いてコンクリートの表面を摩耗させているため、試験装置が大掛かりとなり、また、作業スペースも必要となるため、簡便とはいい難い。また、タイヤによって摩耗されるのに十分な大きさの供試体を製造する必要があるため、この点でも、簡便とはいい難い。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、コンクリートのすべり抵抗を簡便に測定することが可能なコンクリートのすべり抵抗試験方法、これを用いた細骨材の選定方法、及び、これを用いたコンクリートの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコンクリートのすべり抵抗試験方法は、
コンクリートのすべり抵抗を試験する方法であって、
セメントと、水と、細骨材とを混合し、硬化させて複数の供試硬化物を形成し、
形成された前記供試硬化物のうちの複数を擦り磨き、
擦り磨いた後に、擦り磨かれた前記供試硬化物を平面状に並べ、並べられた前記供試硬化物の表面のすべり抵抗を測定する方法である。
【0008】
かかる構成によれば、セメントと水と細骨材とを混合し、硬化させて、互いに同じ組成の複数の供試硬化物を形成し、形成された供試硬化物のうちの複数を擦り磨いた後、擦り磨かれた供試硬化物を平面状に並べ、並べられた供試硬化物の表面のすべり抵抗を測定することができる。
このように、複数の供試硬化物を形成することによって、一体の比較的大きな供試硬化物を形成しなくても済むため、その分、簡便となる。
また、供試硬化物を擦り磨くことによって、コンクリートと共に細骨材が除去されることになるが、このように細骨材が除去された状態ですべり抵抗を測定することによって、コンクリートが車両等の重量物が通過することによって得られる表面状態を疑似的に再現し、そのうえで、すべり抵抗を測定することができるため、より適切に実状に近いすべり抵抗を測定することが可能となる。
従って、コンクリートのすべり抵抗を簡便に測定することが可能となる。
【0009】
上記構成のコンクリートのすべり抵抗試験方法においては、
さらに、擦り磨く前に、前記供試硬化物のうちの擦り磨かれていない複数の前記供試硬化物を平面状に並べ、並べられた前記供試硬化物の表面のすべり抵抗を測定し、
擦り磨き前後での前記すべり抵抗の測定結果を比較してもよい。
【0010】
かかる構成によれば、擦り磨き前後でのすべり抵抗の測定結果を比較することによって、より適切にコンクリートのすべり抵抗を評価することが可能となる。
【0011】
本発明に係る細骨材の選定方法は、
セメントと、水と、細骨材とを混合して作製されるコンクリートの製造に用いられる細骨材の選定方法であって、
前記セメントと、前記水と、前記細骨材とを用いて前記コンクリートのすべり抵抗試験方法を行うことによって、前記供試硬化物の表面のすべり抵抗を測定し、
測定されたすべり抵抗が基準値よりも高いとき、前記供試硬化物に用いた細骨材を、前記コンクリートの製造に用いられる細骨材として選定する方法である。
【0012】
ここで、前述した特許文献1に示すような方法ですべり抵抗を評価すると、粗骨材の影響を大きく受ける可能性があり、細骨材を適切に評価できるとはいい難い。よって、細骨材を適切に評価する方法が望まれている。
この点につき、かかる構成によれば、上記したすべり抵抗試験方法によって供試硬化物のすべり抵抗を測定し、測定されたすべり抵抗が基準値よりも高いとき、その供試硬化物に用いた細骨材を、コンクリートの製造に用いられる細骨材として適切に選定することが可能となる。
これによれば、すべり抵抗を十分に発揮させ得る細骨材を適切に選定することが可能となる。
【0013】
本発明に係るコンクリートの製造方法は、
コンクリートの製造方法であって、
前記細骨材の選定方法を行って選定された細骨材と、セメントと、水と、粗骨材とを用いてコンクリートを製造する方法である。
【0014】
かかる構成によれば、上記細骨材の選定方法で選定された細骨材を用いてコンクリートを製造することが可能となる。
これによって、得られるコンクリートがすべり抵抗を十分に発揮し得るものとなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コンクリートのすべり抵抗を簡便に測定することが可能なコンクリートのすべり抵抗試験方法、これを用いた細骨材の選定方法、及び、これを用いたコンクリートの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のコンクリートのすべり抵抗試験方法、細骨材の選定方法、及び、コンクリートの製造方法の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
本実施形態のコンクリートのすべり抵抗試験方法は、
コンクリートのすべり抵抗を試験する方法であって、
セメントと、水と、細骨材とを混合し、硬化させて複数の供試硬化物を形成し、
形成された前記供試硬化物のうちの複数を擦り磨き、
擦り磨いた後に、擦り磨かれた前記供試硬化物を平面状に並べ、並べられた前記供試硬化物の表面のすべり抵抗を測定する方法である。
【0019】
前記セメントとしては、従来公知のセメントが挙げられる。かかるセメントとしては、例えば、JIS R 5210(2009)に記載のポルトランドセメントが挙げられる。また、セメントの種類は、適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
【0020】
前記細骨材は、JIS A 0203(2014)に規定の、10mm網ふるいを全部通過し、5mm網ふるいを質量で85質量%以上通過する骨材である。
かかる細骨材としては、従来公知の、コンクリートに使用される細骨材が挙げられる。かかる細骨材としては、例えば、JIS A 5005(2009)コンクリート用砕石及び砕砂、JIS A 5308(2014)の附属書Aレディーミクストコンクリート用骨材、JIS A 5011(−1(2013)、−2(2016)、−3(2016)、−4(2013))コンクリート用スラグ骨材に記載される細骨材が挙げられる。
【0021】
前記コンクリートは、セメント、細骨材及び水に加えて、粗骨材を混合して硬化させることによって得られるものであれば、特に限定されない。
かかるコンクリートは、セメント、細骨材、粗骨材、及び水の他、混和材、混和剤等をさらに混合し、硬化させることによって得られるものであってもよい。
【0022】
前記粗骨材としては、前述したJIS A 5005、JIS A 5011、JIS A 5308の附属書A、及び、JIS A 5021(2016)コンクリート用再生骨材Hに記載される粗骨材が挙げられる。
前記粗骨材としては、従来公知の、コンクリートに使用される粗骨材が挙げられる。かかる粗骨材としては、例えば、道路用砕石の7号〜3号砕石が挙げられる。
【0023】
本実施形態のすべり抵抗試験方法においては、上記コンクリートの成分のうち、セメント、水、及び細骨材を用いる。セメント、水、及び細骨材の配合量は、特に限定されるものではなく、コンクリートが形成される際に用いられる配合量に適宜設定し得る。
具体的には、例えば、セメント及び水の配合量は、水セメント比(W/C、質量比)が10〜65%となるように設定し得る。
細骨材の配合量は、セメントと細骨材との質量比(C:S)が、1:0〜1:4となるように設定し得る。
本実施形態のすべり抵抗試験方法においては、セメント、細骨材、水に加えて、さらに粗骨材を配合してもよく、この場合には、粗骨材の配合量は、コンクリート1m
3当たり500〜2000kgとなるように設定し得る。
【0024】
本実施形態のすべり抵抗試験方法では、上記コンクリートの成分のうち、セメントと、水と、細骨材とを混合し、硬化させて複数の供試硬化物を形成する。
具体的には、例えば、セメントと、水と、細骨材とを混合して混合物を作製し、該混合物を、複数の区画に仕切られた型枠に打設し、小分けして硬化させて、前記混合物が分けられてなる複数の供試硬化物を形成する。形成する供試硬化物の数量は、特に限定されず、適宜設定し得る。
型枠としては、特に限定されないが、例えば、15mm×15mm×15mm程度の角状の凹部が13列×6行程度並べられた樹脂製の型枠等を採用し得る。また、前記型枠を用いて形成される供試硬化物の数量は、後述する振り子式スキッドレジスタンステスタを実施できる最小面積が得られるように設定されればよい。かかる観点を考慮すれば、例えば、15mm×15mm×15mm程度の供試硬化物を用いる場合には、その数量を、54個以上に設定し得る。
このようにして、同じ組成を有し、互いに同じ大きさの複数の供試硬化物が得られる。
【0025】
本実施形態では、形成された前記複数の供試硬化物のうちの複数を擦り磨く。
具体的には、例えば、複数の供試硬化物を収容可能な収容部と、該収容部を密閉する蓋部とを備え、収容部に供試硬化物を収容しつつ回転させることによって、供試硬化物の表面を擦り磨く。かかる擦り磨きに用いる機器としては、例えば、
図1に示すような、複数の供試硬化物を収容して密封する収容部を備え、回転することによって、収容部に収容された複数の供試硬化物を擦り磨くように構成された擦り磨き装置等が挙げられる。かかる擦り磨き装置としては、例えば、ポットミル等が挙げられる。
擦り磨きは、例えば、擦り磨き装置の収容部内に複数の供試硬化物を収容し、収容部を350rpmで4時間回転させることによって行い得る。なお、擦り磨きの際には、促進研磨として、収容部に研磨剤、鋼球、ゴム球等を投入しても良い。
【0026】
本実施形態では、上記のように複数の供試硬化物を擦り磨いた後に、擦り磨かれた複数の供試硬化物を平面状に並べ、並べられた供試硬化物の表面のすべり抵抗を測定する。擦り磨かれた複数の供試硬化物は、例えば、上面が面一になるように、且つ、互いが接触するように並べられ、並べられた上面(表面)のすべり抵抗が測定される。
【0027】
すべり抵抗の測定は、例えば、振り子式スキッドレジスタンステスタを用いたBPN(British Pundulum Number)試験を採用し得る。
かかるBPN試験は、試料面(並べられた供試硬化物の上面)に水を散布し、振り子式スキッドレジスタンステスタを用いて振り子の先端のゴムスライダーを所定の位置から振り下ろし、スライダーと供試硬化物との間の摩擦による振り子の振りの減衰を、目盛りによって読み取る方法である。
【0028】
本実施形態のすべり抵抗試験においては、
さらに、供試硬化物を擦り磨く前に、供試硬化物のうちの擦り磨かれていない複数の供試硬化物を平面状に並べ、並べられた供試硬化物の表面のすべり抵抗を測定し、擦り磨き前後でのすべり抵抗の測定結果を比較してもよい。
【0029】
具体的には、例えば、擦り磨きを行う前に、供試硬化物のうち、擦り磨きに供されない複数の供試硬化物を用い、上記と同様、これを上面が面一となるように、且つ、互いが接触するように平面状に並べ、並べられた上面に対して、前述したようにすべり抵抗を測定する。
そして、得られた結果を、上記のように擦り磨き後に測定したすべり試験の結果と比較する。擦り磨き後の方が、擦り磨き前よりもすべり試験結果が大きくなった場合、その差が大きい程、すべり抵抗が高い(すべり難い)と評価し得る。一方、擦り磨き後の方が擦り磨き前よりもすべり試験結果が小さくなった場合には、すべり易いと評価し得る。
【0030】
上記の通り、本実施形態に係るコンクリートのすべり抵抗試験方法は、
コンクリートのすべり抵抗を試験する方法であって、
セメントと、水と、細骨材とを混合し、硬化させて複数の供試硬化物を形成し、
形成された前記供試硬化物のうちの複数を擦り磨き、
擦り磨いた後に、擦り磨かれた前記供試硬化物を平面状に並べ、並べられた前記供試硬化物の表面のすべり抵抗を測定する方法である。
【0031】
かかる構成によれば、セメントと水と細骨材とを混合し、硬化させて、互いに同じ組成の複数の供試硬化物を形成し、形成された供試硬化物のうちの複数を擦り磨いた後、擦り磨かれた供試硬化物を平面状に並べ、並べられた供試硬化物の表面のすべり抵抗を測定することができる。
このように、複数の供試硬化物を形成することによって、一体の比較的大きな供試硬化物を形成しなくても済むため、その分、簡便となる。
また、供試硬化物を擦り磨くことによって、コンクリートと共に細骨材が除去されることになるが、このように細骨材が除去された状態ですべり抵抗を測定することによって、コンクリートが車両等の重量物が通過することによって得られる表面状態を疑似的に再現し、そのうえで、すべり抵抗を測定することができるため、より適切に実状に近いすべり抵抗を測定することが可能となる。
従って、コンクリートのすべり抵抗を簡便に測定することが可能となる。
【0032】
本実施形態のコンクリートのすべり抵抗試験方法においては、
さらに、擦り磨く前に、前記供試硬化物のうちの擦り磨かれていない複数の前記供試硬化物を平面状に並べ、並べられた前記供試硬化物の表面のすべり抵抗を測定し、
擦り磨き前後での前記すべり抵抗の測定結果を比較してもよい。
【0033】
かかる構成によれば、擦り磨き前後ですべり抵抗の測定結果を比較することによって、より適切にコンクリートのすべり抵抗を評価することが可能となる。
【0034】
次に、上記本実施形態のコンクリートのすべり抵抗試験方法を用いた本実施形態の細骨材の選定方法について説明する。
【0035】
本実施形態の細骨材の選定方法は、
セメントと、水と、細骨材とを混合して作製されるコンクリートの製造に用いられる細骨材の選定方法であって、
前記セメントと、前記水と、前記細骨材とを用いて上記本実施形態のコンクリートのすべり抵抗試験方法を行うことによって、前記供試硬化物の表面のすべり抵抗を測定し、
測定されたすべり抵抗が基準値よりも高いとき、前記供試硬化物に用いた細骨材を、前記コンクリートの製造に用いられる細骨材として選定する方法である。
【0036】
具体的には、前述したコンクリートの成分のうち、セメント、水、及び細骨材の配合量を一定の配合量に設定し、セメントの種類を一定の種類に設定する一方、細骨材の種類を変更して、これらセメント、水及び細骨材を混合し、前述したように型枠に小分けして硬化させて、複数の供試硬化物を得る。
得られた供試硬化物について、前述したように、擦り磨き後に、すべり抵抗試験を行う。
この結果、すべり抵抗が基準値を超える供試硬化物に用いた細骨材を、所望のコンクリートを製造するための細骨材として選定することができる。
かかる基準値は、予め予備実験等で適宜設定し得る。また、基準値として、試験に供した他の細骨材を用いた供試硬化物のすべり抵抗の結果を採用してもよい。この場合には、例えば、試験に供した複数の細骨材のうち、最もすべり抵抗が大きい結果を示す供試硬化物に用いた細骨材を、選定し得る。
【0037】
本実施形態の細骨材の選定方法によれば、上記したすべり抵抗試験方法によって供試硬化物のすべり抵抗を測定し、測定されたすべり抵抗が基準値よりも高いとき、その供試硬化物に用いた細骨材を、コンクリートの製造に用いられる細骨材として選定することが可能となる。
これによれば、すべり抵抗を十分に発揮させ得る細骨材を選定することが可能となる。
【0038】
なお、本実施形態の細骨材の選定におけるすべり抵抗試験としては、前述と同様、さらに、擦り磨く前に、複数の供試硬化物のうちの擦り磨かれていない複数の前記供試硬化物を平面状に並べ、並べられた供試硬化物の表面のすべり抵抗を測定し、擦り磨き前後でのすべり抵抗の測定結果を比較してもよい。
【0039】
次に、上記本実施形態の細骨材の選定方法を用いた本実施形態のコンクリートの製造方法について説明する。
【0040】
本実施形態のコンクリートの製造方法は、
コンクリートの製造方法であって、
上記本実施形態の細骨材の選定方法を行って選定された細骨材と、セメントと、粗骨材と、水とを用いてコンクリートを製造する方法である。
【0041】
具体的には、上記本実施形態の細骨材の選定方法で選定された細骨材を用い、この細骨材と、セメントと、粗骨材と、水とを用い、必要に応じて混和剤や混和材等と共に混合し、硬化させることによって、コンクリートを製造する。
【0042】
本実施形態のコンクリートの製造方法によれば、上記細骨材の選定方法で選定された細骨材を用いてコンクリートを製造することが可能となる。
これによって、得られるコンクリートがすべり抵抗を十分に発揮し得るものとなる。
【0043】
以上の通り、本実施形態によれば、コンクリートのすべり抵抗を簡便に測定することが可能なコンクリートのすべり抵抗試験方法、これを用いた細骨材の選定方法、及び、これを用いたコンクリートの製造方法が提供される。
【0044】
本実施形態のコンクリートのすべり抵抗試験方法、細骨材の選定方法、及び、コンクリートの製造方法は、上記の通りであるが、本発明のコンクリートのすべり抵抗試験方法、細骨材の選定方法、及び、コンクリートの製造方法は、上記実施形態に特に限定されるものではなく、適宜設計変更が可能である。
【0045】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
(実験例1)
・使用原料及び配合
下記表1に示す材料を、表2の配合で使用した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
・供試硬化物の作製
表2に示す各配合について、普通ポルトランドセメントと、水と、細骨材とを、水セメント比(W/C)=30〜50%、セメント:細骨材の質量比(C:S)=1:3の配合で、ホバートミキサーを用いて練り混ぜることによって混合した。
具体的には、撹拌練り混ぜ機(ホバートミキサー、型式N50、HOBART社製)にセメントと水とを投入し、低速(139rpm)で30秒練り混ぜた後、細骨材を加え、高速(285rpm)で30秒練り混ぜ、その後、練り混ぜを停止し、内壁や撹拌羽根への付着物を掻き落とし、練り混ぜから180秒経過した後、再び高速で60秒間練り混ぜた後、匙で10回掻き混ぜて混練物を得た。
【0050】
得られた混練物を、
図2に示すように、15mm×15mm×15mm程度の角状の凹部が13列×6行程度並べられた樹脂製の型枠(製品名:製氷皿、ダイソー社製)に小分けして流し込んで打設し、振動台上に接触させて空気を抜いた。1日経過後(翌日)、型枠から脱型し、脱型物を7日間水中養生して、供試硬化物を複数(78個)得た。
【0051】
得られた供試硬化物(78個)と、鋼球(直径11mm、質量5g)と、水とを、質量比1:1:0.5となるようにポットミル(商品名:ステンレスポットミル SUS304、外径185mm、三商社製)内に投入し、350rpmで4時間回転させて、擦り磨きを行った。擦り磨かれた供試硬化物を
図3に示す。なお、擦り磨きの前後で、ポットミルに投入した供試硬化物の質量を測定した。
【0052】
擦り磨かれた供試硬化物を、
図4に示すように、下側が測定面となるようにして13列×6行に並べ、
図5に示すように、並べた上面をライオンシスイ115(住友大阪セメント社製)で固定して、
図6にひっくり返した状態(測定面が上側に配された状態)を示すように、測定面が平面状であり、全体として平板状の測定サンプルを形成した。
【0053】
・すべり抵抗試験
得られた各測定サンプルの測定面について、振り子式スキッドレジスタンステスタを用いたBPN(British Pundulum Number)試験を行った。
結果を
図7に示す。
【0054】
図7に示すように、擦り磨き後では、石灰砕砂以外は全体的にBPNが60以上であったが、石灰砕砂は、そのBPNが60未満であり、他の細骨材よりも低い値を示した。
【0055】
・擦り磨きによる質量減少
図8に、擦り磨き前後での質量減少量({((擦り磨き前の質量)−(擦り磨き後の質量))/(擦り磨き前の質量)}×100(%))を示す。
図8に示すように、質量減少量は、石灰砕砂が最も大きく、川砂と砂岩砕砂は同程度に小さかった。がいし粉はさらに小さく、高炉スラグが最も小さかった。よって、質量減少量が大きい程、すべり抵抗が低いことが示された。
【0056】
・擦り磨きで発生した粉(ノロ)の分析
擦り磨きで発生したノロを105℃で乾燥した後、乳鉢で粉砕した。粉砕試料をよく混合して分析試料とし、不溶残分の推定を以下の手順で行った。
【0057】
(1)細骨材として標準砂、川砂、砂岩砕砂、がいし粉を用いたサンプル
粉砕試料1gを500mLビーカーに秤量し、塩酸を250mL加え、20分間撹拌溶解した後、ろ過し、ろ過残分(不溶残分)を灰化、強熱し、質量を測定した。
塩酸に対してセメントは100%溶解する一方、細骨材は100%溶解しないと仮定して、不溶残分の質量を細骨材の質量(不溶残分の質量=細骨材の質量)とした。
【0058】
(2)細骨材として石灰砕砂、高炉スラグを用いたサンプル
粉砕試料1gをポリプロピレン(PP)容器500mLに秤量し、15%グルコン酸ナトリウム溶液を300mL加え、60℃の恒温槽内で30分間振とうして溶解した後、吸引ろ過し、ろ過残分(不溶残分)を灰化、強熱し質量を測定した。
グルコン酸ナトリウム溶液に対してセメントは100%溶解する一方、細骨材は100%溶解しないと仮定し、不溶残分の質量を細骨材の質量(不溶残分の質量=細骨材の質量)とした。
【0059】
(3)結合水の推定
上記(1)、(2)において、石灰砕砂を用いたサンプル以外については、600℃の強熱減量を測定して結合水の質量とした。一方、石灰砕砂を用いたサンプルについては、550℃を超えると炭酸カルシウムが分解するので、500℃の強熱減量を結合水の質量とした。
【0060】
上記(1)〜(3)の結果を表3に示す。また、擦り磨き後のBPN値(
図7)と共に
図9に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
表3及び
図9より、石灰砕砂を用いたサンプルでは、細骨材の質量減少量が9%近くあるのに対し、他の細骨材を用いたサンプルでは、2〜5%程度であった。
石灰砕砂のノロ中の細骨材の比率は55%以上あるのに対し、他の細骨材を用いたノロ中の細骨材の比率は30〜47%程度であった。
がいし粉、高炉スラグは細骨材の質量減少量が少なく、ノロ中の細骨材の割合も比較的少なかった。
上記の結果から、石灰砕砂は細骨材自体が擦り磨かれていることが示された。また、上記のすべり抵抗試験方法によれば、コンクリートのすべり抵抗性の高いものとし得る細骨材を選定することが可能であることがわかった。