【実施例】
【0036】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0037】
<合成例1:N−保護基(メトキシベンジル基)ジアミン(i)の合成>
50mLナスフラスコに3,4’−ジアミノジフェニルエーテル4.0034g(19.98mmol)を加えた後、4−メトキシベンズアルデヒド12mL(100mmol)を更に加えた。これを70℃で10分間撹拌した。次いで、乾燥エタノール30mLを加えて固体をろ過し、エタノールで3回洗浄した。その後、デシケーター中、減圧下で乾燥して、粗生成物として白色固体のイミン体8.3564g(粗収率96%)を得た。
【0038】
次に、200mLナスフラスコにこのイミン体3.01g(6.6mmol)と乾燥THF60mLを加えた後、0℃で20分間撹拌した。その後、メタノール30mLを加え、水素化ホウ素ナトリウム764.2mg(27.0mmol)を更に加えて、0℃で21時間撹拌した。これに塩化メチレンを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。続いて、ろ過を行って、減圧下で溶媒を留去した後、減圧下で乾燥して、粗生成物として黄色粘性液体3.0092g(粗収率104%)を得た。これをトルエン:ヘキサン=1:3(体積比)の混合溶媒で再結晶させ、白色結晶であるジアミン(i)2.3394g(収率80.4%)を得た。
【0039】
得られたジアミン(i)の
1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR(600MHz,CDCI
3) δ7.30(d,J=8.2Hz,2H),7.24(d,J=7.9Hz,2H),7.04(t,J=8.0Hz,1H),6.89−6.85(m−3H),6.60(d,J=6.0Hz,1H),6.28(dd.J=2.5and6.0Hz,1H),6.25(dd,J=2.5and6.5Hz,1H),6.20(s1H),4.23(s,2H),4.18(s,2H),3.80(s,3H),3.80(s,3H).
【0040】
<合成例2:N−保護基(オクチルオキシベンジル基)ジアミン(ii)の合成>
100mLナスフラスコに3,4’−ジアミノジフェニルエーテル2.003g(10.01mmol)を加えた後、4−n−オクチルオキシベンズアルデヒド12.0mL(50mmol)を更に加えた。これを70℃で10分間撹拌した。次いで、乾燥エタノール30mLを加えて固体をろ過し、ヘキサンで3回洗浄した。その後、デシケーター中、減圧下で乾燥して、粗生成物として白色固体のイミン体5.8379g(粗収率92%)を得た。
【0041】
次に、200mLナスフラスコにこのイミン体4.956g(7.831mmol)と乾燥THF120mLを加えた後、0℃で20分間撹拌した。その後、乾燥メタノール61mLを加え、水素化ホウ素ナトリウム1.286g(34.00mmol)を更に加えて、0℃で21時間撹拌した。これに塩化メチレンを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。続いて、ろ過を行って、減圧下で溶媒を留去した後、減圧下で乾燥し、粗生成物として黄色固体3.251g(粗収率65%)を得た。これをヘキサンで再結晶させ、黄色固体であるジアミン(ii)1.950g(収率39%)を得た。
【0042】
得られたジアミン(ii)の
1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR(600MHz,CDCI
3) δ7.28(d,J=8.2Hz,2H),7.23(d,J=8.2Hz,2H),7.04(t,J=8.0Hz,1H),6.89−6.82(m,6H),6.60(d,J=8.5Hz,2H),6.28(d,J=8.2Hz,1H),6.24(d,J=7.9Hz,1H),6.22(s.1H),1.78−1.77(m,4H),1.45−1.42(m,4H),1.34−1.25(m,16H),0.89−0.87(m,6H).
【0043】
[樹脂の合成]
<実施例1:N−保護基(メトキシベンジル基)ポリアミド(I)の合成>
30mLナスフラスコを減圧下でヒートガンを用いて加熱乾燥した後、アルゴンで置換した。N−保護基(メトキシベンジル基)ジアミン(i)0.6991g(1.587mmol)とピリジン0.30mL(3.5mmol)を乾燥NMP1.4mLに溶かした溶液を、窒素気流下でフラスコに加え、0℃で10分間撹拌した。ここに、イソフタル酸クロライド0.3218g(1.585mmol)を乾燥NMP1.4mLに溶かした溶液を窒素気流下で加えて、室温で重合させた。重合開始から2日後に乾燥メタノール0.5mLを加えて反応を停止し、反応溶液を4mLのNMPで薄めて、20倍の水に滴下してポリマーを沈殿させた。沈殿物を桐山ロートでろ過して回収し、減圧下で乾燥して、下記式(I)で表される構造単位からなる白色固体のN−保護基(メトキシベンジル基)ポリアミド(I)0.8995g(粗収率94%)を得た。N−保護基(メトキシベンジル基)ポリアミド(I)のGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は13,503、分散度は1.57であった。
【化6】
【0044】
<実施例2:N−保護基(メトキシベンジル基)ポリアミド(II)の合成>
30mLナスフラスコを減圧下でヒートガンを用いて加熱乾燥した後、アルゴンで置換した。N−保護基(メトキシベンジル基)ジアミン(i)0.6996g(1.588mmol)とピリジン0.30mL(3.5mmol)の乾燥NMP1.4mLの混合溶液をフラスコに加え、0℃で10分間撹拌した。ここに、テレフタル酸クロライド0.3220g(1.586mmol)を乾燥NMP 1.4mLに溶かした溶液を窒素気流下で加えて、室温で重合させた。重合開始から2日後に乾燥メタノール0.5mLを加えて反応を停止し、反応溶液を4mLのNMPで薄めて、20倍の水に滴下してポリマーを沈殿させた。沈殿物を桐山ロートでろ過して回収し、減圧下で乾燥して、下記式(II)で表される構造単位からなる黄色固体のN−保護基(メトキシベンジル基)ポリアミド(II)0.8697g(粗収率91%)を得た。N−保護基(メトキシベンジル基)ポリアミド(II)のGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は7,066、分散度は1.36であった。
【化7】
【0045】
<実施例3:N−保護基(オクチルオキシベンジル基)ポリアミド(III)の合成>
30mLナスフラスコを減圧下でヒートガンを用いて加熱乾燥した後、アルゴンで置換した。N−保護基(オクチルオキシベンジル基)ジアミン(ii)1.0032g(1.575mmol)とピリジン0.30mL(3.45mmol)を乾燥NMP1.4mLに溶かした溶液を窒素気流下でフラスコに加え、0℃で20分間撹拌した。ここに、イソフタル酸クロライド0.3200g(1.576mmol)を乾燥NMP 1.4mLの乾燥溶液を窒素気流下で加えて、室温で重合させた。重合開始から2日後に乾燥メタノール0.5mLを加えて反応を停止し、反応溶液を4mLのNMPで薄めて、20倍の水に滴下してポリマーを沈殿させた。沈殿物を桐山ロートでろ過して回収し、減圧下で乾燥して、下記式(III)で表される構造単位からなる黄色固体のN−保護基(オクチルオキシベンジル基)ポリアミド(III)1.2079g(粗収率96%)を得た。N−保護基(オクチルオキシベンジル基)ポリアミド(III)のGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は23,246、分散度は1.56であった。
【化8】
【0046】
<実施例4:N−保護基(オクチルオキシベンジル基)ポリアミド(IV)の合成>
30mLナスフラスコを減圧下でヒートガンを用いて加熱乾燥した後、アルゴンで置換した。N−保護基(オクチルオキシベンジル基)ジアミン(ii)1.0032g(1.575mmol)とピリジン0.30mL(3.45mmol)を乾燥NMP1.4mLに溶かした溶液を窒素気流下でフラスコに加え、0℃で10分撹拌した。ここにテレフタル酸クロライド0.3200g(1.576mmol)を乾燥NMP1.4mLに溶かした溶液を窒素気流下で加えて、室温で重合させた。重合開始から2日後に乾燥メタノール0.5mLを加えて反応を停止し、反応溶液を4mLのNMPで薄めて、20倍の水に滴下してポリマーを沈殿させた。沈殿物を桐山ロートでろ過して回収し、減圧乾燥して、下記式(IV)で表される構造単位からなる黄色固体のN−保護基(オクチルオキシベンジル基)ポリアミド(IV)0.9685g(粗収率77%)を得た。N−保護基(オクチルオキシベンジル基)ポリアミド(IV)のGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は9,753、分散度は1.30であった。
【化9】
【0047】
<比較例1:ポリアミド(V)の合成>
30mLナスフラスコに塩化リチウム0.2730g(6.393mmol)を入れ、減圧下でヒートガンを用いて加熱乾燥した後、アルゴンで置換した。3,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.5004g(2.499mmol)とピリジン0.50mL(5.8mmol)を乾燥NMP2.5mLに溶かした溶液を窒素気流下でフラスコに加え、0℃で20分間撹拌した。ここに、イソフタル酸クロライド0.5065g(2.495mmol)を乾燥NMP 2.5mLに溶かした溶液を窒素気流下で加えて、室温で重合させた。重合開始から2日後に乾燥メタノール0.5mLを加えて反応を停止し、反応溶液を4mLのNMPで薄めて、20倍の水に滴下してポリマーを沈殿させた。沈殿物を桐山ロートでろ過して回収し、減圧下で乾燥して、下記式(V)で表される構造単位からなる薄黄色固体のポリアミド(V)1.9587g(粗収率218%)を得た。ポリアミド(V)のGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は52,500、分散度は1.84であった。
【化10】
【0048】
<比較例2:ポリアミド(VI)の合成>
30mLナスフラスコに塩化リチウム0.2726g(6.392mmol)を入れ、減圧下でヒートガンを用いて加熱乾燥した後、アルゴンで置換した。3,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.5011g(2.503mmol)とピリジン0.50mL(5.8mmol)を乾燥NMP2.5mLに溶かした溶液を窒素気流下でフラスコに加え、0℃で20分間撹拌した。ここに、テレフタル酸クロライド0.5065g(2.495mmol)を乾燥NMP 2.5mLで溶かした溶液を窒素気流下で加えて、室温で重合させた。重合開始から2日後に乾燥メタノール0.5mLを加えて反応を停止し、反応溶液を4mLのNMPで薄めて、20倍の水に滴下してポリマーを沈殿させた。沈殿物を桐山ロートでろ過して回収し、減圧下で乾燥して、下記式(VI)で表される構造単位からなる薄黄色固体のポリアミド(VI)0.9929g(粗収率110%)を得た。ポリアミド(VI)のGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は25,900、分散度は2.13であった。
【化11】
【0049】
[脱保護反応の確認]
<実施例1:N−保護基(メトキシベンジル基)ポリアミド(I)の脱保護反応>
30mLナスフラスコに、実施例1のN−保護基(メトキシベンジル基)ポリアミド(I)0.0095g(0.0167mmol)とトリフルオロ酢酸(TFA)1.0mLを加えて2日間撹拌した後、その混合溶液を、炭酸水素ナトリウム水溶液中に滴下した。沈殿した固体を桐山ロートでろ過して少量の塩化メチレンと水で洗浄し、デシケーター中、減圧下で乾燥して、粗生成物として白色固体0.0105g(粗収率190%)を得た。
1HNMR(600MHz,重溶媒:ジメチルスルホオキシド)より、10.5ppm付近に脱保護によって生じるアミドのNH結合に由来するシグナルが現れていることから、脱保護反応が進行していることを確認した。
【0050】
<実施例3:N−保護基(オクチルオキシベンジル基)ポリアミド(III)の脱保護反応>
30mLナスフラスコに、実施例3のN−保護基(オクチルオキシベンジル基)ポリアミド(III)0.0105g(0.0132mmol)とトリフルオロ酢酸(TFA)1.0mLを加えて2日間撹拌した後、その混合溶液を、炭酸水素ナトリウム水溶液中に滴下した。沈殿した固体を桐山ロートでろ過して少量の塩化メチレンと水で洗浄し、デシケーター中、減圧下で乾燥して、粗生成物として白色固体0.0100g(粗収率220%)を得た。
1HNMR(600MHz,重溶媒:ジメチルスルホオキシド)より、10.5ppm付近に脱保護によって生じるアミドのNH結合に由来するシグナルが現れていることから、脱保護反応が進行していることを確認した。
【0051】
[有機溶剤への溶解性]
各実施例及び比較例で合成したN−保護基ポリアミド(I)〜(IV)及びポリアミド(V),(VI)の固体をそれぞれ表1に示す有機溶剤を加えて溶解性を評価した。目視にて固体が完全に溶解したものを「A」、溶解しなかったものを「B」として評価した。結果を表1に示す。
【表1】
【0052】
以上の結果から、N−保護基ポリアミド(I)〜(IV)は、ポリアミド(V),(VI)に比べて有機溶剤への溶解性に優れており、また、酸性条件下で脱保護反応が進行することが分かる。