【解決手段】エッチング液組成物は、第二鉄イオン0.1〜10質量%、塩化物イオン0.1〜10質量%、ギ酸イオン0.01〜5質量%、下記一般式(1)で表される化合物及び炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐状アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物0.01〜10質量%、下記一般式(2)で表される化合物、ホスホン酸化合物及びその塩、アミノカルボン酸化合物及びその塩、2価以上のカルボン酸化合物及びその塩、並びに2価以上のカルボン酸化合物が脱水してなる一無水物及び二無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物0.01〜10質量%;並びに水を含有する。
銅系層と、ニッケル及びクロムのうちの少なくとも一方を含有する金属系層とを含む積層体を一括でエッチングするために用いられる請求項1〜3のいずれか1項に記載のエッチング液組成物。
請求項1〜4のいずれか1項に記載のエッチング液組成物を用いて、銅、ニッケル、及びクロムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する層をエッチングする工程を有するエッチング方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。本発明の一実施形態のエッチング液組成物(以下、単に「エッチング液組成物」とも記す。)は、銅、ニッケル、及びクロムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する層(以下、「被エッチング材」とも記す。)をエッチングするためのものである。このエッチング液組成物は、後述する(A)〜(E)成分をそれぞれ後述する特定濃度で含有するとともに水を含有する。そのため、そのエッチング液組成物によって、銅系層と、ニッケル及びクロムのうちの少なくとも一方を含有する金属系層とを含む積層体を一括でエッチングした場合であっても、細り幅が少なく、所望の幅を有する細線を形成することができる。また、その際に、直線性が良好であるとともに大きな欠けの発生が抑制された細線を形成することができる。
【0018】
本明細書における「エッチング」とは、化学薬品などの腐食作用を利用した塑形又は表面加工の技法を意味する。エッチング液組成物の具体的な用途としては、例えば、除去剤、表面平滑化剤、表面粗化剤、パターン形成用薬剤、基体に微量付着した成分の洗浄液などを挙げることができる。エッチング液組成物は、銅、ニッケル、及びクロムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する層の除去速度が速いことから除去剤として好適に用いることができる。また、3次元構造を有する微細な形状のパターンの形成に用いると、矩形などの所望の形状のパターンを得ることができるため、パターン形成用薬剤としても好適に用いることができる。
【0019】
本明細書における「銅系層」は、銅(純銅)層、及び銅を主成分とする合金(銅合金)層を含む総称である。銅合金層は、銅を50質量%以上(好ましくは60質量%以上)含有する合金層である。銅合金層は、例えば、亜鉛、鉛、錫、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、及びマンガンなどの1又は2以上の銅以外の金属を含有することができる。
【0020】
本明細書における「ニッケル及びクロムのうちの少なくとも一方を含有する金属系層」は、上述の銅系層以外の金属層で、ニッケル及びクロムのうちの少なくとも一方を含有するものであれば特に限定されない。この金属系層としては、例えば、ニッケル層、クロム層、並びにニッケル及びクロムのうちの少なくとも一方を含有する合金層などを挙げることができる。この合金層に含まれ得るニッケル及びクロム以外の金属としては、例えば、銅、鉄、銀、白金、金、アルミニウム、チタン、モリブデン、コバルト、タングステン、及びパラジウムなどを挙げることができる。
【0021】
エッチング液組成物は、(A)第二鉄イオン(以下、「(A)成分」とも記す。)を含有する。エッチング液組成物中に第二鉄イオンを供給(生成)することができる化合物を用いることにより、エッチング液組成物に第二鉄イオンを含有させることができる。エッチング液組成物中に第二鉄イオンを供給することができる化合物としては、例えば、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、ヨウ化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、及び酢酸鉄(III)などを挙げることができる。これらの化合物は、無水物であってもよく、水和物であってもよい。また、エッチング液組成物中に第二鉄イオンを供給することができる化合物は、1種が単独で用いられもよく、2種以上が併用されてもよい。(A)成分を供給することができる化合物のなかでも、塩化鉄(III)を用いることが好ましい。
【0022】
エッチング液組成物中の(A)成分(第二鉄イオン)の濃度(含有量)は、0.1〜10質量%である。(A)成分の濃度が0.1質量%未満であると、充分なエッチング速度が得られないことがある。一方、(A)成分の濃度が10質量%を超えると、エッチング速度が速くなりすぎてしまい、エッチング速度を制御することが難しくなる。(A)成分の濃度は、被エッチング材の厚みや幅によって、上記の濃度範囲内で適宜調整することができる。(A)成分の濃度は、0.2〜5質量%であることが好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましい。
【0023】
エッチング液組成物は、(B)塩化物イオン(以下、「(B)成分」とも記す。)を含有する。エッチング液組成物中に塩化物イオンを供給(生成)することができる化合物を用いることにより、エッチング液組成物に塩化物イオンを含有させることができる。エッチング液組成物中に塩化物イオンを供給することができる化合物としては、例えば、塩化鉄(III)、塩化水素、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化リチウムなどを挙げることができる。エッチング液組成物中に塩化物イオンを供給することができる化合物は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。(B)成分を供給することができる化合物のなかでも、塩化鉄(III)や塩化水素を用いることが好ましく、塩化鉄(III)及び塩化水素を組み合わせて用いることがより好ましい。
【0024】
エッチング液組成物中の(B)成分(塩化物イオン)の濃度(含有量)は、0.1〜10質量%である。(B)成分の濃度が0.1質量%未満であると、エッチング速度が遅くなりすぎてしまい、生産性が低下する。一方、(B)成分の濃度が10質量%を超えると、エッチング速度が速くなりすぎてしまい、エッチング速度を制御することが困難になるか、又は被エッチング材周辺の部材やレジストなどを劣化させてしまう場合がある。(B)成分の濃度は、被エッチング材の厚みや幅によって、上記の濃度範囲内で適宜調整することができる。(B)成分の濃度は、0.2〜8質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0025】
エッチング液組成物は、(C)ギ酸イオン(以下、「(C)成分」とも記す。)を含有する。エッチング液組成物中にギ酸イオンを供給(生成)することができる化合物を用いることにより、エッチング液組成物にギ酸イオンを含有させることができる。エッチング液組成物中にギ酸イオンを供給することができる化合物としては、例えば、ギ酸、ギ酸ナトリウム、ギ酸マグネシウム、ギ酸カリウム、ギ酸カルシウム、ギ酸マンガン、ギ酸コバルト、ギ酸ニッケル、ギ酸銅、ギ酸亜鉛、ギ酸ストロンチウム、ギ酸カドミウム、及びギ酸バリウムなどを挙げることができる。エッチング液組成物中にギ酸イオンを供給することができる化合物は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。(C)成分を供給することができる化合物のなかでも、ギ酸を用いることが好ましい。
【0026】
エッチング液組成物中の(C)成分(ギ酸イオン)の濃度(含有量)は、0.01〜5質量%である。(C)成分の濃度が0.01質量%未満であると、エッチング速度が遅くなりすぎてしまい、生産性が低下する。一方、(C)成分の濃度が5質量%を超えると、エッチング速度が速くなりすぎてしまい、エッチング速度を制御することが困難になる場合がある。(C)成分の濃度は、被エッチング材の厚みや幅によって、上記の濃度範囲内で適宜調整することができる。(C)成分の濃度は、0.05〜3質量%であることが好ましく、0.1〜2質量%であることがより好ましい。
【0027】
エッチング液組成物は、(D)下記一般式(1)で表される化合物及び炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐状アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、「(D)成分」とも記す。)を含有する。
【0029】
一般式(1)中、R
1及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1〜4の直鎖若しくは分岐状のアルキル基を表す。R
2は、炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキレン基を表す。nは1〜3の数を表す。
【0030】
一般式(1)において、R
1及びR
3で表される炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、第2ブチル基、第3ブチル基、及びイソブチル基などを挙げることができる。R
1及びR
3としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基が好ましい。
【0031】
一般式(1)において、R
2で表される炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、第2ブチレン基、第3ブチレン基、及びイソブチレン基などを挙げることができる。R
2としては、プロピレン基又はイソプロピレン基が好ましく、イソプロピレン基がさらに好ましい。
【0032】
(D)成分として用いうる一般式(1)で表される化合物としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、及びジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類を挙げることができる。
【0033】
また、(D)成分として用いうる炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐状アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、及びt−ブタノールなどのアルコール類を挙げることができる。
【0034】
上述した一般式(1)で表される化合物としては、下記一般式(1−A)で表される化合物が好ましい。下記一般式(1)中のR
1、R
3、及びnは、それぞれ、一般式(1)中のR
1、R
3、及びnと同義である。
【0036】
(D)成分として、上記一般式(1−A)で表される化合物、及び炭素原子数3若しくは4の分岐状アルコールの少なくとも一方を用いると、エッチング液組成物を用いたエッチングによって、細り幅が小さく、且つ直線性が良い細線が形成されやすいことから好ましい。また、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及びイソプロパノールの少なくとも一方を用いた場合が、上述の効果がより高まることからより好ましく、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルがさらに好ましい。
【0037】
エッチング液組成物中の(D)成分の濃度(含有量)は、0.01〜10質量%である。(D)成分の濃度が0.01質量%未満であると、(D)成分の配合効果が発現しない。一方、(D)成分の濃度を10質量%超としても、(D)成分の配合効果はそれ以上さほど向上しない。(D)成分の濃度は、被エッチング材の厚みや幅によって、上記の濃度範囲内で適宜調整することができる。(D)成分の濃度は、0.05〜8質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。
【0038】
エッチング液組成物は、(E)下記一般式(2)で表される化合物、ホスホン酸化合物及びその塩、アミノカルボン酸化合物及びその塩、2価以上のカルボン酸化合物及びその塩、並びに2価以上のカルボン酸化合物が脱水してなる一無水物及び二無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、「(E)成分」とも記す。)を含有する。
【0040】
一般式(2)中、R
4は炭素原子数2〜6のアルキレン基を表し、zは1〜5の数を表す。X
1、X
2、及びX
3は、下記一般式(3)で表される基を表し、X
4は、水素原子、又は下記一般式(3)で表される基を表す。
【0042】
一般式(3)中、R
5及びR
6は、エチレン基又はプロピレン基を表し、R
5がエチレン基である場合、R
6はプロピレン基であり、R
5がプロピレン基である場合、R
6はエチレン基である。p及びqは、一般式(2)で表される化合物の数平均分子量が200〜30,000であり且つエチレンオキサイド基の含有量が10〜80質量%となる数を表し、*は結合手を表す。エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加形態は、ランダム状及びブロック状のいずれでもよい。
【0043】
一般式(2)において、R
4で表される炭素原子数2〜6のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、及びへキシレン基などを挙げることができる。これらの基は、いずれの位置で結合していてもよく、分岐していてもよい。R
5又はR
6で表されるプロピレン基は、−CY
1H−CY
2H−(Y
1及びY
2は、一方が水素原子、他方がメチル基であることを表す。)でも、−CH
2−CH
2−CH
2−でもよい。一般式(2)で表される化合物の中でも、R
4がエチレン基であり、zが1であり、X
1〜X
4が一般式(3)で表される基であるポリオールは、入手が容易である。上記一般式(2)で表される化合物の数平均分子量は、200〜30,000であり、エッチング速度の点から200〜7,500であることが好ましい。また、上記一般式(2)で表される化合物におけるエチレンオキサイド基の含有量は、10〜80質量%であり、エッチング速度の点から10〜50質量%であることが好ましい。
【0044】
(E)成分として用いうるホスホン酸化合物及びその塩としては、例えば、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリスメチレントリス(ホスホン酸)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、及びこれらのアルカリ金属(好ましくはナトリウム)塩などを好適に使用することができる。
【0045】
(E)成分として用いうるアミノカルボン酸化合物及びその塩の好適な具体例としては、アスパラギン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、トレオニン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、チロシン、及びシステインなどのアミノ酸、並びにこれらのアルカリ金属(好ましくはナトリウム)塩などを挙げることができる。アミノカルボン酸化合物及びその塩のより好適な具体例としては、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、1,3−プロピレンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸、2−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシン、グリコールエーテルジアミン四酢酸、N,N−ジ(カルボキシメチル)グルタミン酸、エチレンジアミンジコハク酸、テトラエチレンペンタアミン七酢酸、及びこれらのアルカリ金属(好ましくはナトリウム)塩などを挙げることができる。これらの中でも、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウムがさらに好ましい。
【0046】
(E)成分として用いうる2価以上のカルボン酸化合物及びその塩としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、並びにこれらの無水物及びアルカリ金属(好ましくはナトリウム)塩などを挙げることができる。
【0047】
(E)成分として用いうる、2価以上のカルボン酸化合物が脱水してなる一無水物及び二無水物としては、上記の2価以上のカルボン酸化合物を脱水縮合させることで得られる化合物を挙げることができる。
【0048】
上述した(E)成分は、そのうちの1種が単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。2種以上の(E)成分を併用することが好ましく、なかでも、一般式(2)で表される化合物と、アミノカルボン酸化合物又はその塩とを組み合わせて使用することがさらに好ましい。この組み合わせの(E)成分の使用により、銅系層と、ニッケル及びクロムのうちの少なくとも一方を含有する金属系層とを含む積層体を一括してエッチングする場合に、直線性が良好であり、大きな欠けが発生し難い細線を形成できる効果をさらに高めることができる。
【0049】
エッチング液組成物中の(E)成分の濃度(含有量)は、0.01〜10質量%である。(E)成分の濃度が0.01質量%未満であると、(E)成分の配合効果が発現しない。一方、(E)成分の濃度を10質量%超としても、(E)成分の配合効果はそれ以上さほど向上しない。(E)成分の濃度は、被エッチング材の厚みや幅によって、上記の濃度範囲内で適宜調整することができる。(E)成分の濃度は、0.05〜8質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。
【0050】
エッチング液組成物は、さらに水を含有する。エッチング液組成物において、水を溶媒として使用することができ、エッチング液組成物を水溶液の形態とすることができる。エッチング液組成物中の水の含有量は、前述の(A)〜(E)成分の濃度に応じて、その残部とすることが好ましい。後述する添加剤を使用する場合は、(A)〜(E)成分、及び添加剤の濃度に応じて、その残部として水を使用することが好ましい。エッチング液組成物中の水の濃度(含有量)は、55〜99質量%程度であることが好ましい。
【0051】
また、エッチング液組成物には、前述の(A)〜(E)成分のほかに、本発明の効果を阻害することのない範囲で、周知の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、還元剤、エッチング液組成物の安定化剤、各成分の可溶化剤、消泡剤、比重調整剤、粘度調整剤、濡れ性改善剤、及び酸化剤などを挙げることができる。これらの添加剤を使用する場合、エッチング液組成物中の添加剤の濃度(含有量)は、一般的に、それぞれ、0.001〜40質量%の範囲とすることができる。
【0052】
さらに、エッチング液組成物には、前述の(A)〜(E)成分のほかに、本発明の効果を阻害することのない範囲で、エッチング液組成物の用途に応じた周知の任意成分を含有させることができる。任意成分としては、界面活性剤、有機酸、アゾール類化合物、ピリミジン類化合物、チオ尿素類化合物、アミン類化合物、アルキルピロリドン類化合物、ポリアクリルアミド類化合物、過酸化水素、及び過硫酸塩などを挙げることができる。これらの任意成分を使用する場合、エッチング液組成物中の任意成分の濃度(含有量)は、一般的に、それぞれ、0.001質量%〜10質量%の範囲とすることができる。エッチング液組成物に上述の添加剤及び任意成分を含有させる場合、そのエッチング液組成物中の添加剤及び任意成分の合計の濃度(含有量)は、0.001〜40質量%の範囲とすることが好ましい。
【0053】
界面活性剤としては、例えば、フルオロアルキルベタイン及びフルオロアルキルポリオキシエチレンエーテルなどのフッ素系両性界面活性剤が挙げられる。
【0054】
有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、スルファミン酸、ニコチン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシピバリン酸、レブリン酸、及びβ−クロロプロピオン酸などが挙げられる。
【0055】
アゾール類化合物としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、及び2−メチルベンゾイミダゾールなどのアルキルイミダゾール類;ベンゾイミダゾール、2−メチルベンゾイミダゾール、2−ウンデシルベンゾイミダゾール、2−フェニルベンゾイミダゾール、及び2−メルカプトベンゾイミダゾールなどのベンゾイミダゾール類;1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−1,2,4−トリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−アミノベンゾトリアゾール、4−アミノベンゾトリアゾール、1−ビスアミノメチルベンゾトリアゾール、1−メチル−ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、及び5−クロロベンゾトリアゾールなどのトリアゾール類;1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、5−メルカプト−1H−テトラゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、1−シクロヘキシル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、及び5,5’−ビス−1H−テトラゾールなどのテトラゾール類;並びにベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−フェニルチアゾール、2−アミノベンゾチアゾール、2−アミノ−6−ニトロベンゾチアゾール、2−アミノ−6−メトキシベンゾチアゾール、及び2−アミノ−6−クロロベンゾチアゾールなどのチアゾール類などが挙げられる。
【0056】
ピリミジン類化合物としては、例えば、ジアミノピリミジン、トリアミノピリミジン、テトラアミノピリミジン、及びメルカプトピリミジンなどが挙げられる。
【0057】
チオ尿素類化合物としては、例えば、チオ尿素、エチレンチオ尿素、チオジグリコール、及びメルカプタンなどが挙げられる。
【0058】
アミン類化合物としては、例えば、ジアミルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、トリアミルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エタノールイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミン、エタノールジイソプロパノールアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン、及びこれらの塩酸塩などが挙げられる。
【0059】
アルキルピロリドン類化合物としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、N−アミル−2−ピロリドン、N−ヘキシル−2−ピロリドン、N−ヘプチル−2−ピロリドン、及びN−オクチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0060】
ポリアクリルアミド類化合物としては、例えば、ポリアクリルアミド、及びt−ブチルアクリルアミドスルホン酸などが挙げられる。
【0061】
過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸カリウムなどが挙げられる。
【0062】
本発明の一実施形態のエッチング方法は、上述のエッチング液組成物を用いて、銅、ニッケル、及びクロムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する層をエッチングする工程を有する。このエッチング方法で用いるエッチング液組成物は、上述の通り、銅系層と、ニッケル及びクロムのうちの少なくとも一方を含有する金属系層とを含む積層体を一括でエッチングすることができる。そのため、このエッチング方法は、銅系層と、ニッケル及びクロムのうちの少なくとも一方を含有する金属系層とを含む積層体を一括でエッチングする場合に、より好適である。さらには、このエッチング方法は、銅(Cu)層と、ニッケル(Ni)層及びクロム(Cr)層のうちの少なくとも一方の金属層とを含む積層体を一括してエッチングする場合に、さらに好適である。
【0063】
積層体における銅系層及び金属系層は、それぞれ、1層であってもよく、2層以上であってもよい。また、積層体における銅系層及び金属系層の配置関係は特に限定されず、金属系層が銅系層の上層に配置されていてもよく、下層に配置されていてもよく、上層及び下層に配置されていてもよい。さらに、銅系層と金属系層が交互に積層されていてもよい。
【0064】
具体的なエッチング方法は、特に限定されず、一般的なエッチング方法を採用することができる。例えば、ディップ式、スプレー式、及びスピン式などによるエッチング方法を挙げることができる。さらに、バッチ式、フロー式、エッチャントの酸化還元電位、比重、又は酸濃度によるオートコントロール式などの一般的な方式でエッチング液組成物を用いることができる。
【0065】
例えば、ディップ式のエッチング方法によって、シリコン基板やガラス基板などの基体上に、Cu層、Ni層、及びCr層からなる積層体が成膜された基材をエッチングする場合、この基材を適切なエッチング条件にてエッチング液組成物に浸漬した後、引き上げることで、基体上のCu層、Ni層、及びCr層を一括してエッチングすることができる。
【0066】
ディップ式のエッチング方法におけるエッチング条件は特に限定されず、被エッチング材の形状や膜厚などに応じて任意に設定することができる。例えば、エッチング温度は、10〜60℃であることが好ましく、20〜40℃であることがさらに好ましい。エッチング液組成物の温度は反応熱により上昇することがあるため、必要に応じて、エッチング液組成物の温度を上記の範囲内に維持するように公知の手段によって温度制御してもよい。また、エッチング時間は、被エッチング材が完全にエッチングされるのに十分必要な時間とすればよいため特に限定されない。例えば、膜厚10〜1000nm程度の被エッチング材であれば、上記温度範囲で1分〜24時間程度エッチングを行えばよい。
【0067】
例えば、スプレー式のエッチング方法によって、シリコン基板やガラス基板などの基体上に、Cu層、Ni層、及びCr層からなる積層体が成膜された基材をエッチングする場合、この基材にエッチング液組成物を適切な条件で噴霧することにより、基体上のCu層、Ni層、及びCr層を一括してエッチングすることができる。
【0068】
スプレー式のエッチング方法におけるエッチング条件は特に限定されず、被エッチング材の形状や膜厚などに応じて任意に設定することができる。例えば、噴霧条件は、0.01〜1.0MPaの範囲から選択することができ、好ましくは0.03〜0.2MPaの範囲、より好ましくは0.05〜0.15MPaの範囲である。また、エッチング液組成物を用いてスプレー式によって細線を形成する場合、スプレー圧が0.05〜0.15MPaの範囲である場合は、得られる細線の上部幅と下部幅の差が非常に小さい細線を得ることができることから特に好ましい。また、エッチング温度は、10〜60℃であることが好ましく、20〜40℃であることがさらに好ましい。エッチング液組成物の温度は反応熱により上昇することがあるため、必要に応じて、エッチング液組成物の温度を上記の範囲内に維持するように公知の手段によって温度制御してもよい。また、エッチング時間は、被エッチング材が完全にエッチングされるに十分必要な時間とすればよいため特に限定されない。例えば、膜厚800nm程度の被エッチング材であれば、上記温度範囲で60〜600秒程度エッチングを行えばよい。
【0069】
本発明の一実施形態のエッチング方法は、エッチングを繰り返すことによるエッチング液組成物の劣化を回復させるために、エッチング液組成物に補給液を加える工程をさらに有することができる。例えば、上記のようなオートコントロール式のエッチング方法の場合、エッチング装置に補給液を予めセットしておけば、エッチング液組成物に補給液を添加することができる。補給液としては、例えば、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の少なくともいずれかの水溶液;(D)成分の水溶液などを用いることができる。これらの水溶液(補給液)中の各成分の濃度は、例えば、エッチング液組成物中の各成分の濃度の3〜20倍程度とすればよい。また、補給液には、エッチング液組成物に必須成分として又は任意成分として含有される前述の各成分を必要に応じて添加してもよい。
【0070】
以上述べたエッチング液組成物及びそれを用いたエッチング方法は、微細パターンの回路配線を形成する場合に精密なエッチングを与え得る。そのため、上述のエッチング液組成物及びエッチング方法は、プリント配線基板のほか、ファインピッチが要求されるパッケージ用基板、COF、及びTAB用途のサブトラクティブ法や、セミアディティブ法に好適に使用することもできる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
【0072】
<エッチング液組成物>
(実施例1〜5)
表1に示す化合物及び水を、エッチング液組成物中の(A)〜(E)成分が表2に示す濃度となるように混合して、実施例1〜5のエッチング液組成物を得た。なお、配合した化合物及び水の合計が100質量%となるように水を配合した。(A)成分(第二鉄イオン)の濃度は塩化鉄(III)によって調整し、(B)成分(塩化物イオン)の濃度は塩化鉄(III)及び塩化水素によって調整した。(E)成分としては、以下に示す「E−1」、「E−2」、及び「E−3」を用いた。
E−1:エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム
E−2:ADEKA社製の商品名「アデカプルロニックTR−702」(プロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドがエチレンジアミンの活性水素にブロック付加した化合物(数平均分子量3500、エチレンオキサイド含有量20質量%、一般式(2)において、R
4=エチレン基、z=1、R
5=プロピレン基、R
6=エチレン基、X
4≠水素原子))
E−3:ADEKA社製の商品名「アデカプルロニックTR−704」(プロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドがエチレンジアミンの活性水素にブロック付加した化合物(数平均分子量5000、エチレンオキサイド含有量40質量%、一般式(2)において、R
4=エチレン基、z=1、R
5=プロピレン基、R
6=エチレン基、X
4≠水素原子))
【0073】
【0074】
【0075】
(比較例1〜3)
表3に示す化合物及び水を、エッチング液組成物中の(A)〜(E)成分が表4に示す濃度となるように混合して、比較例1〜3のエッチング液組成物を得た。なお、配合した化合物及び水の合計が100質量%となるように水を配合した。(A)成分(第二鉄イオン)の濃度は塩化鉄(III)によって調整し、(B)成分(塩化物イオン)の濃度は塩化鉄(III)及び塩化水素によって調整した。
【0076】
【0077】
【0078】
<エッチング方法>
(実施例6〜10)
ガラス基体上にCu層(厚さ300nm)、Ni層(厚さ150nm)、及びCr層(厚さ150nm)をこの順に積層した基材に、ポジ型液状レジストを用いて幅30μm、開口部30μmのレジストパターンを形成した。レジストパターンを形成した基材を縦20mm×横20mmに切断してテストピースを得た。得られたテストピースに対し、実施例1〜5のエッチング液組成物を用いて、30℃、スプレー圧0.07MPa、180秒の条件でスプレー式によるパターンエッチングを行い、細線状のパターンである実施例パターンNo.1〜5を製造した。
【0079】
(比較例4〜6)
ガラス基体上にCu層(厚さ300nm)、Ni層(厚さ150nm)、及びCr層(厚さ150nm)をこの順に積層した基材に、ポジ型液状レジストを用いて幅30μm、開口部30μmのレジストパターンを形成した。レジストパターンを形成した基材を縦20mm×横20mmに切断してテストピースを得た。得られたテストピースに対し、比較例1〜3のエッチング液組成物を用いて、30℃、スプレー圧0.07MPa、180秒の条件でスプレー式によるパターンエッチングを行い、細線状のパターンである比較例パターンNo.1〜3を製造した。
【0080】
<評価>
パターン上部からレーザー顕微鏡を使用して観察することにより、レジスト開口部であった部分の積層体(Cu層、Ni層、及びCr層の積層体)が完全に除去されているかを確認した。完全に除去されているものを「+」とし、完全に除去できていないものを「−」として評価した。また、形成したパターンの形状についても評価した。パターンに蛇行が確認されたものや長さ3μm以上の欠けが観察されたものを「−」と評価し、パターンに蛇行が確認されず、長さ3μm以上の欠けも見られないものを「+」として評価した。結果を表5に示す。
【0081】
【0082】
表5に示す結果から、実施例1〜5のエッチング液組成物を用いた実施例6〜10では、レジスト開口部のCu層、Ni層、及びCr層からなる積層体を綺麗に除去することができ、細線状のパターンを形成できたことが確認された。さらに得られたパターンは直線性が良好であり、欠けの発生も見られなかったことがわかった。一方、比較例1のエッチング液組成物を用いた比較例4では、レジスト開口部のCu層、Ni層、及びCr層からなる積層体を除去することができなかった。また、比較例2及び3のエッチング液組成物を用いた比較例5及び6では、得られたパターンの直線性が低く、さらに大きな欠けが発生していたことが確認された。