(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-198380(P2018-198380A)
(43)【公開日】2018年12月13日
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 15/08 20060101AFI20181116BHJP
H01Q 15/14 20060101ALI20181116BHJP
【FI】
H01Q15/08
H01Q15/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-102327(P2017-102327)
(22)【出願日】2017年5月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098372
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 保人
(72)【発明者】
【氏名】及川 和夫
(72)【発明者】
【氏名】南谷 康次郎
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA06
5J020BB01
5J020BC02
5J020BC04
5J020BC06
5J020BC13
5J020CA04
(57)【要約】
【課題】送受信方向の長さが短くなり、薄型化を図ることができるようにする。
【解決手段】電波を送信又は受信するための給電部1と、所定の指向性を得るために、給電部1の前側の送信又は受信する電波の略1/2波長の距離に配置され、かつ給電部1の前面より大きな面積を持つ誘電体2と、給電部1を配置するための給電開口4を有し誘電体1と略平行となるように配置された反射板3とを含んでなる。給電部1から放射された電波が誘電体−反射板間で反射を繰り返すことで、大きな誘電体2の広い放出面から電波を放射でき、薄型の装置が得られる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送信又は受信するための給電部と、
所定の指向性を得るために、上記給電部の前側の送信又は受信する電波の略n/2波長(n:正の整数)の距離に配置され、かつ上記給電部の前面より大きな面積を持つ誘電体と、
上記給電部を配置するための給電開口を有し、上記誘電体の給電部側の面と略平行となるように配置された反射板と、を含んでなるアンテナ装置。
【請求項2】
上記誘電体は、凸レンズ状、凹レンズ状又はフレネルレンズ状の形状からなることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
上記誘電体は、その反射板側の面を略平面としたことを特徴とする請求項1又は2記載のアンテナ装置。
【請求項4】
上記反射板の周囲に、90度或いは90度より大きな角度で形成され、この反射板と上記誘電体の間を繋ぐ壁を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナ装置、特にマイクロ波・ミリ波の電波を送信又は受信するアンテナ装置の指向性を変更するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電波の指向性を変更する技術として、誘電体を用いた凸レンズや凹レンズ等の形状の電波レンズが用いられており、この電波レンズによって所望の指向性に調整することが行われる。即ち、誘電体に入る電波は、その誘電率により内部での伝搬速度が遅くなるため、光学レンズと同様に誘電体の形状を変えることで、光学上の凸レンズや凹レンズに相当するものを作成することができる。
【0003】
図7に、従来のアンテナ装置が示されており、
図7の符号1は、パッチアンテナ等からなる給電部、10は凸状の誘電体レンズである。一般的に、誘電体レンズ10は、光学的レンズと同様に送受信電波の波長よりも大きな焦点距離を有し、例えば指向性を鋭くするための凸状の誘電体レンズ10では、レンズ径を給電部1(又はアンテナ開口)より大きくし、この給電部1から放射され広がった電波を誘電体レンズ10に入射し、このレンズ10を通過した後の波面がレンズ径全面で平行になるようにした場合に最も指向性が鋭くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−110503号公報
【特許文献2】特開平9−321533号公報
【特許文献3】特開2002−9542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のアンテナ装置では、上述のように、給電部1からの電波が誘電体レンズ10の全面に入射するように、この誘電体レンズ10を送受信電波の波長よりも大きな焦点距離だけ給電部1から離して配置する必要があり、送受信方向の長さが長くなり、装置も大きく(厚く)なるという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、送受信方向の長さが短くなり、薄型化を図ることができるアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明に係るアンテナ装置は、電波を送信又は受信するための給電部と、所定の指向性を得るために、上記給電部の前側の送信又は受信する電波の略n/2波長(n:正の整数)の距離に配置され、かつ上記給電部の前面より大きな面積を持つ誘電体と、上記給電部を配置するための給電開口を有し、上記誘電体の給電部側の面と略平行となるように配置された反射板と、を含んでなることを特徴とする。
請求項2の発明の上記誘電体は、凸レンズ状、凹レンズ状又はフレネルレンズ状の形状からなることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明の上記誘電体は、その反射板側の面を略平面としたことを特徴とする。
請求項4の発明は、上記反射板の周囲に、90度或いは90度より大きな角度で形成され、この反射板と上記誘電体の間を繋ぐ壁を設けたことを特徴とする。
【0009】
以上の構成によれば、例えば給電部が配置される開口を設けた平板の反射板(金属板)を備えると共に、給電部から前側の約1/2波長の距離に、レンズ形状等の誘電体を配置することにより、給電部から放射された電波の一部は誘電体を入射して通過するが、一部は誘電体界面で反射された後に反射板で再び反射され、誘電体へ向かい、その一部が入射し、一部が再度反射されるというように、給電部から誘電体の端面へ向けて反射と入射を繰り返すことで、誘電体の各位置から電波が放射される。
【0010】
このとき、給電部(又は給電開口)から誘電体までの距離と誘電体から反射板までの距離、そして誘電体の各位置の厚さを適宜コントロールすれば、所望の指向性を得ることができ、例えば誘電体から空間に放出される電波の位相が平行となるようにすれば、焦点距離を長くし指向性を鋭くした誘電体レンズと同じ効果を薄型で実現することが可能となる。
なお、給電部には、ホーンアンテナ、パッチアンテナ、スロットアンテナ等の様々なアンテナの給電部を配置することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、誘電体と反射板との間の複数回の反射により、給電部に近接する大きな誘電体からでも必要な放射ができることから、送受信方向の長さを短くして、アンテナ装置の薄型化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る第1実施例のアンテナ装置の構成を示す断面図である。
【
図3】第1実施例のアンテナ装置を誘電体を除いて上面から見た図である。
【
図4】第1実施例のアンテナ装置において電波の伝搬と放射を示す概念図である。
【
図5】第2実施例のアンテナ装置の構成(ホーンアンテナを使用した場合)を示す断面図である。
【
図6】第3実施例のアンテナ装置の構成(板状誘電体を使用した場合)を示す断面図である。
【
図7】従来の電波レンズの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、第1実施例のアンテナ装置の概略構成が示され、
図2には、装置の分解図が示されており、第1実施例の装置は、例えばマイクロ波センサに使用される。
図1において、符号の1はパッチアンテナからなる給電部、2は給電部1からn/2(n=1,2,3…)波長、例えば約1/2波長の距離Lに置かれ、内面が平面、外面が凸レンズ状に形成された誘電体、3は給電部1を配置するための給電開口4が形成され、誘電体2との距離Lが約1/2波長とされた金属製の反射板である。この反射板3は、誘電体2の内面(給電部側面)から距離Lで配置されている方形の平板部(本体)3aと、この平板部3aの外周の縁から90度或いは90度より大きな角度(内角)を持って形成された角錐台状金属の壁体3bからなる。この壁体3bは、平板部3aと誘電体2の間を繋ぎ、誘電体2を反射板3に支持させる役目をする。なお、反射板3(3a,3b)は金属以外の材料で作製してもよい。
【0014】
図3に、アンテナ装置(誘電体を取り除いた状態)の上面図が示されており、給電開口4に配置された給電部1には、パッチアンテナのアンテナパターン5が形成されている。
【0015】
図4には、実施例における電波の伝搬状態が示されており、図示されるように、給電部1から放射された電波は、その一部が誘電体2を通過するが、他の一部は誘電体2の内面(誘電体界面)で反射された後、反射板3で再び反射され誘電体2へ向かう。次に、この反射波は、その一部が誘電体2を通過するが、他の一部は、再度誘電体2で反射される。
このような反射を繰り返すことで、電波の一部が給電部1から誘電体2の端面まで伝搬されると共に、誘電体2の各位置からも放射され、大きな誘電体2の広い放出面の全面から電波を放射できることになる。
【0016】
第1実施例では、内面(反射板側の面)が平面で外面が凸レンズ状面とされた誘電体2であるので、誘電体2から空間に放出されるときの位相が平行となり、焦点距離を長くした
図7の誘電体レンズ10と同様に絞った指向性の放射を薄型で実現することができる。
このような指向性に限らず、給電部(又は給電開口)1から誘電体2までの距離と誘電体2から反射板3までの距離、そして誘電体1の形状(面方向での厚さ等)を適宜調整することにより、傾きを持った指向性、拡散する指向性等、所望の指向性に変更・設定することが可能である。
【0017】
図5に、第2実施例のアンテナ装置が示されており、この第2実施例は、第1実施例のバッチアンテナの代わりに、ホーンアンテナ7を配置したものである。このホーンアンテナ7の先端を反射板3の開口4の面に合わせて配置することにより、第1実施例と同様の効果を得ることができる。
【0018】
図6に、第3実施例のアンテナ装置が示されており、この第3実施例は、平行平板の誘電体8を配置したものであり、この場合は、電波が拡散する指向性が得られる。
【0019】
上記実施例では、給電部(1)として、パッチアンテナ、ホーンアンテナを設けたが、スロットアンテナ等、他のアンテナを配置することができる。
また、誘電体2の形状として、平面−凸面のレンズ形状、平行平板の形状を採用したが、内面が平面、外面が凹面(平面−凹面)のレンズ形状やフレネルレンズ形状、或いは切欠き、溝、凹み、突起を有する形状等、指向性を変えるための各種の形状を適用することが可能である。
更に、反射板3は金属板で構成する他、支持体の面に貼り付けられた反射膜のようなものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
マイクロ波センサやミリ波センサ、或いは通信装置等においてマイクロ波やミリ波の送受信を行う機器等に適用できる。
【符号の説明】
【0021】
1…給電部、 2…レンズ状誘電体、
3…反射板、 4…給電開口、
5…アンテナパターン、 7…ホーンアンテナ、
8…誘電体、 10…誘電体レンズ。