特開2018-201341(P2018-201341A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-201341(P2018-201341A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】昆虫の降着抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/34 20110101AFI20181130BHJP
   A01N 61/00 20060101ALI20181130BHJP
   A01N 55/00 20060101ALI20181130BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   A01M29/34
   A01N61/00 D
   A01N55/00 E
   A01N25/00 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-106607(P2017-106607)
(22)【出願日】2017年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 崇子
(72)【発明者】
【氏名】小泉 亮太
(72)【発明者】
【氏名】穂積 篤
(72)【発明者】
【氏名】浦田 千尋
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA11
2B121AA13
2B121AA14
2B121BB28
2B121BB32
2B121CC21
2B121CC23
2B121EA02
2B121EA04
2B121FA13
4H011AC08
4H011BB19
4H011DA14
4H011DH07
(57)【要約】
【課題】非生物固体表面に昆虫が降着することを抑制する方法を提供する。
【解決手段】アルキル基の炭素数が8以上12以下であってアルコキシ基がメトキシ基又はエトキシ基である、アルキルトリアルコキシシラン(a)及びアルコキシ基がメトキシ基又はエトキシ基であるテトラアルコキシシラン(b)を、水混和性有機溶剤(c)、酸(d)及び水を含む媒体中で、加水分解、縮重合させて、皮膜形成性重合体を含有する処理液(S)を調製する工程I、並びに、
処理液(S)を非生物固体表面に塗布する工程II
を含む、非生物固体表面への昆虫の降着を抑制する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル基の炭素数が8以上12以下であってアルコキシ基がメトキシ基又はエトキシ基である、アルキルトリアルコキシシラン(a)及びアルコキシ基がメトキシ基又はエトキシ基であるテトラアルコキシシラン(b)を、水混和性有機溶剤(c)、酸(d)及び水を含む媒体中で、加水分解、縮重合させて、皮膜形成性重合体を含有する処理液(S)を調製する工程I、並びに、
処理液(S)を非生物固体表面に塗布する工程II
を含む、非生物固体表面への昆虫の降着を抑制する方法。
【請求項2】
水混和性有機溶剤(c)がエタノールである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程Iで、アルキルトリアルコキシシラン(a)とテトラアルコキシシラン(b)とを、アルキルトリアルコキシシラン(a)に由来するケイ素とテトラアルコキシシラン(b)に由来するケイ素の合計のモル数(MSi)と、アルキルトリアルコキシシラン(a)のアルキル基に由来する炭素のモル数(M)との比が、MSi/Mで、0.1以上10以下となるように用いる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
昆虫の体長が1mm以上20mm以下である請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
昆虫がハエ目又はチョウ目である請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非生物固体表面への昆虫の降着を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の昆虫は、人や動物に病原体を媒介して感染症や、皮膚の炎症を引き起こす原因になる。特に、蚊は、デング熱、黄熱病、脳炎、マラリアなど人に深刻な疾病を媒介しているため、衛生学的に非常に有害な昆虫である。昆虫を排除する方法としては、一般に殺虫剤の使用や小昆虫が好む疑似餌を備えた特殊な容器や粘着剤による捕集方法が知られている。しかしながら、殺虫剤は昆虫を直接見出してスプレー等で噴霧するか又は香取線香のように揮散する殺虫剤の近くに寄らないと効果を発揮し辛く、闇雲に使用すると匂いの問題や使用量が多すぎると人体への影響が懸念される。また前記のような捕集方法に関しては、長時間の設置を考慮した場合に効果的であるが、これもまた昆虫が捕集剤に近づかないと意味を持たないことから、短時間の設置では効率的ではない。
【0003】
従来、蚊を忌避する為に、香料等の芳香性化合物を使う方法が良く知られている。一方、物理的に蚊の付着や侵入を防ぐ方法として、特定の忌避剤を塗布した積層フィルム(特許文献1)や殺虫剤を混練した繊維(特許文献2)等も知られている。しかし、忌避剤を塗布・混練するだけでは、長期に渡って忌避性能を安定かつ安全に発揮する事が難しい。この様な方法に対して、微細な凹凸構造をもつ表面上で昆虫類を滑落させる方法等が考案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−122978号公報
【特許文献2】特開平2008−106232号公報
【特許文献3】特開2013−99269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、昆虫に対する殺虫剤や捕集器の使用を補助する為、更には昆虫が屋外から室内に入り辛くする為に、非生物固体表面に昆虫が降着することを抑制する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、非生物固体表面への昆虫の降着を抑制する方法、特にはガラスやプラスチック、繊維等の非生物固体表面に蚊やハエなどの昆虫が降着することを抑制する方法に関する。
本発明は、昆虫が非固体表面に降着することを抑制することで、昆虫が空間にいる確率が増え、その結果として殺虫剤の効果的な使用や捕集剤による捕集確率を増加させることができること、更には網戸、蚊帳やテント等への昆虫の降着を抑制することで昆虫が閉鎖空間に侵入し難くなる可能性がある事を見出したものである。
【0007】
本発明は、アルキル基の炭素数が8以上12以下であってアルコキシ基がメトキシ基又はエトキシ基である、アルキルトリアルコキシシラン(a)及びアルコキシ基がメトキシ基又はエトキシ基であるテトラアルコキシシラン(b)を、水混和性有機溶剤(c)、酸(d)及び水を含む媒体中で、加水分解、縮重合させて、皮膜形成性重合体を含有する処理液(S)を調製する工程I、並びに、
処理液(S)を非生物固体表面に塗布する工程II
を含む、非生物固体表面への昆虫の降着を抑制する方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、蚊やハエ等の昆虫の非生物固体表面への降着を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<工程I>
工程Iでは、アルキル基の炭素数が8以上12以下であってアルコキシ基がメトキシ基又はエトキシ基である、アルキルトリアルコキシシラン(a)〔以下、アルキルトリアルコキシシラン(a)という〕及びアルコキシ基がメトキシ基又はエトキシ基であるテトラアルコキシシラン(b)〔以下、テトラアルコキシシラン(b)という〕を、水混和性有機溶剤(c)、酸(d)及び水を含む媒体〔以下、含水反応媒体という〕中で、加水分解、縮重合させて、皮膜形成性重合体を含有する処理液(S)〔以下、処理液(S)という〕を調製する。
【0010】
アルキルトリアルコキシシラン(a)としては、アルキル(炭素数8以上12以下)トリメトキシシラン、及びアルキル(炭素数8以上12以下)トリエトキシシランから選ばれる化合物が挙げられる。より詳細には、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、及びドデシルトリエトキシシランから選ばれる化合物が挙げられる。
【0011】
テトラアルコキシシラン(b)としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランから選ばれる化合物が挙げられる。
【0012】
工程Iでは、製膜性の観点から、アルキルトリアルコキシシラン(a)とテトラアルコキシシラン(b)とを、アルキルトリアルコキシシラン(a)に由来するケイ素とテトラアルコキシシラン(b)に由来するケイ素原子の合計のモル数(MSi)と、アルキルトリアルコキシシラン(a)のアルキル基に由来する炭素原子のモル数(M)との比が、MSi/Mで、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.7以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは2以下となるように用いる。
【0013】
工程Iでは、皮膜形成性重合体を得るための単量体として、アルキルトリアルコキシシラン(a)とテトラアルコキシシラン(b)以外の化合物も用いることができる。例えば、ビニルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシ−4−(3−トリエトキシシリルプロポキシ)−ジフェニルケトン等の有機シラン、水酸基、アルデヒド基、塩化アルキル基、アミノ基、イミノ基、ニトロ基、メルカプト基、エポキシ基、カルボニル基、メタクリロキシ基、アジド基、ジアゾ基、ベンゾフェニル基等の官能基を有する有機シランを、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0014】
本発明では、皮膜形成性重合体を得るための単量体中、アルキルトリアルコキシシラン(a)とテトラアルコキシシラン(b)の合計が、50モル%以上、更に80モル%以上、そして、100モル%以下であることが好ましく、100モル%であることがより好ましい。
【0015】
工程Iで用いる含水反応媒体は、水混和性有機溶剤(c)、酸(d)及び水を含有する。
水混和性有機溶剤(c)は、アルキルトリアルコキシシラン(a)とテトラアルコキシシラン(b)の縮重合物質を溶解させることができることと、処理液(S)の非生物固体表面への塗布時に、速やかに揮発するものであることが望ましい。水混和性有機溶剤(c)は、蒸気圧が水より高いものが好ましい。水混和性有機溶剤(c)としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びテトラヒドロフランから選ばれる水混和性有機溶剤が挙げられる。水混和性有機溶剤(c)はエタノールが好ましい。
【0016】
含水反応媒体中の水の量としては、含水反応媒体に含まれる全ての反応性官能基を加水分解させてSi−OH基を生成させるために、モル比で官能基数以上の水が含まれていることが望ましい。すなわち、含水反応媒体中の水のモル分率が、含水反応媒体中のアルキルトリアルコキシシラン(a)とテトラアルコキシシラン(b)に基づく全アルコキシ基のモル分率より多いことが好ましい。
【0017】
工程Iで用いる、含水反応媒体は、水混和性有機溶剤(c)を、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更により好ましくは70質量%以上、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更により好ましくは90質量%以下含有する。
また、工程Iで用いる、含水反応媒体は、水を、好ましくは2質量%以上、5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更により好ましくは30質量%以下含有する。
ここで、本発明では、酸(d)の量は、水の量に算入するものとする。例えば、酸(d)を水と混合して用いる場合は、当該混合物の量を水の量とする。
【0018】
工程Iで用いる含水反応媒体は、酸(d)を含有する。また、処理液(S)は、酸(d)を含むことが好ましい。
酸(d)は、アルキルトリアルコキシシラン(a)とテトラアルコキシシラン(b)の反応性官能基の加水分解を促進させる触媒として機能するものが望ましい。
また、当該酸(d)により、含水反応媒体、更に処理液(S)のpHを制御することで、アルキルトリアルコキシシラン(a)とテトラアルコキシシラン(b)の縮重合物質を安定化することが望ましいため、酸(d)は25℃でpH1以上3以下の酸性水溶液として使用をすることが好ましい。
酸(d)としては、塩酸、リン酸、酢酸、硝酸、硫酸から選ばれる酸が挙げられる。
【0019】
工程(1)の処理液(S)を調製する上で、含水反応媒体と混和されるアルキルトリアルコキシシラン(a)とテトラアルコキシシラン(b)は、合計で、含水反応媒体、アルキルトリアルコキシシラン(a)及びテトラアルコキシシラン(b)の合計に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40重量%以下、更により好ましくは35重量%以下の割合で配合される。
【0020】
また、処理液(S)を調製する上で、水混和性有機溶剤(c)は、含水反応媒体、アルキルトリアルコキシシラン(a)及びテトラアルコキシシラン(b)の合計に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更により好ましくは50質量%以上、そして、好ましくは94質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更により好ましくは80質量%以下の割合で配合される。
また、処理液(S)を調製する上で、水は、含水反応媒体、アルキルトリアルコキシシラン(a)及びテトラアルコキシシラン(b)の合計に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更により好ましくは5質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更により好ましくは15質量%以下の割合で配合される。
【0021】
酸(d)は、水に添加して酸性水溶液として用いることが好ましく、該酸性水溶液中の酸の割合は好ましくは0.001M以上、より好ましくは0.005M以上であり、そして好ましくは0.1M以下、より好ましくは0.05M以下である。当該濃度の酸性水溶液を前記した水の配合量で用いることが好ましい。また処理液(S)のアルコキシシラン化合物による縮合物質の安定性の観点からも、酸を配合することが好ましく、含水反応媒体としての酸性水溶液の使用以外に、縮重合反応中ないし反応終了後にさらに酸を添加してもよい。
【0022】
また、工程Iでは、含水反応媒体の温度は、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上、そして、好ましくは35℃以下、より好ましくは30℃以下である。すなわち、工程Iでは、アルキルトリアルコキシシラン(a)とテトラアルコキシシラン(b)とを、この温度で、加水分解、縮重合させることが好ましい。
【0023】
また、工程Iで、アルキルトリアルコキシシラン(a)とテトラアルコキシシラン(b)とを、加水分解及び縮重合させる時間は、合計で、好ましくは12時間以上、より好ましくは24時間以上、そして、好ましくは4320時間以下、より好ましくは2160時間以下である。
【0024】
工程Iは、例えば、アルキルトリアルコキシシラン(a)とテトラアルコキシシラン(b)とを、水、水混和性有機溶剤(c)、及び酸(d)を含む含水反応媒体に添加し、20℃以上30℃以下で、24時間以上2160時間以下、反応させることで実施できる。これにより、アルキルトリアルコキシシラン(a)とテトラアルコキシシラン(b)に基づく皮膜形成性重合体を含有する処理液(S)が得られる。通常、反応終了後の含水反応媒体は、そのまま処理液(S)として用いられる。
【0025】
<工程II>
工程IIは、工程Iで調製した処理液(S)を非生物固体表面に塗布する工程である。
非生物固体表面は、動植物などの生物の生体表面ではないことを意味する。
非生物固体表面としては、金属、プラスチック、セラミックス、ガラス、木材、紙、繊維等の固体材料からなる物品の表面が挙げられる。一般家庭の使用の場合、例えば、壁、窓、ドア、網戸など、昆虫の飛来しやすい箇所にある物品が挙げられる。
非生物固体表面の形状は、板状、凹凸状、粉末状、チューブ状、ポーラス状、繊維状等、任意な形状であってよい。
また、処理液(S)を塗布する前に、非生物固体表面を洗浄する、例えば、プラズマやUV等で固体表面を洗浄し、洗浄化することも可能である
【0026】
処理液(S)を非生物固体表面に塗布する方法は、含水反応媒体の揮発を促進する方法であれば特に制限はなく、例えば、スピンコーティング法、ディップコーティング法、ローラーコーティング法、バーコ−ティング法、インクジェットコーティング法、グラビアコーティング法、スプレー法が好適な例として挙げられる。
【0027】
処理液(S)を塗布した後は、例えば、室温、大気圧下で、含水反応媒体を揮発さえることで、非生物固体表面に皮膜が形成される。この皮膜は、非生物固体表面との密着性に優れる。また、この皮膜は、通常、透明であるため、非生物固体表面の美観を損なわない。この皮膜の厚みは、例えば、10nm以上1000nm以下である。処理液(S)中のアルキルトリアルコキシシラン(a)とテトラアルコキシシラン(b)の濃度、塗布方法、処理液(S)の塗布量などにより、皮膜の厚みを制御できる。
【0028】
本発明の対象となる昆虫は、体長が好ましくは1mm以上20mm以下である。
また、本発明の対象となる昆虫としては、ハエ目又はチョウ目の昆虫が挙げられる。
昆虫は、飛翔害虫が挙げられる。飛翔害虫は、飛行しながら人間や家畜などに近づき、その皮膚から吸血する害虫、吸血はしなくても飛翔しながら病原細菌等を媒介する害虫、飛行すること自体が人間に対し不快感を与える害虫等である。
飛翔害虫としては、例えば蚊、蠅、蜂、蛾などが挙げられる。より詳細には、
(1)アカイエカ、コガタアカイエカ等のイエカ類、
(2)ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等のヤブカ類、
(3)シナハマダラカ等のハマダラカ類、
(4)ユスリカ類、
(5)イエバエ、オオイエバエ、等のイエバエ類、
(6)クロバエ類、
(7)ニクバエ類、
(8)ヒメイエバエ、タネバエ、タマネギバエ等のハナバエ類、
(9)ミバエ類、
(10)ショウジョウバエ類、
(11)チョウバエ類、
(12)アブ類、
(13)ブユ類、
(14)サシバエ類
等の双翅目害虫が挙げられる。
また、イガ、コイガ等の鱗翅目害虫等が挙げられる。
【0029】
本発明により、昆虫、例えば、飛翔害虫が降着しにくい環境が提供できる。そのため、この環境内においては、殺虫剤や捕集器が、より効果的に機能すると考えられる。
【実施例】
【0030】
(1)ヒトスジシマカの準備
ヒトスジシマカは、住化テクノサービス株式会社より購入した卵を成長させたものを使用した。プラスチックパンに水張り、卵が産み付けられている濾紙を入れた。毎日、幼虫用餌として、熱帯魚用のエサ(テトラミンベビー)を与えた。約1週間後、蛹をメッシュケージに移した。成虫用の餌として、10質量%スクロース水溶液を与えた。
(2)処理液(S)の調製
ガラス製三角フラスコ内で、エタノール279.0g、オクチルトリエトキシシラン21.9g、テトラエトキシシラン114.5g、及び0.01M−HCl44.2gを混合し、25℃で、24時間反応させて、オクチルトリエトキシシランとテトラエトキシシランとを、加水分解、縮重合させて、皮膜形成性重合体を含有する処理液(S)を調製した(工程I)。
【0031】
(3)降着アッセイ
50mm×50mmのMCナイロン板(ナック製NAC−MC)の表面に、処理液(S)を1mL滴下し、スピンコーター(共和理研製 K−359SD−1)を用いて、300rpmで10秒間、続いて1000rpmで20秒間、MCナイロン上に成膜処理を行ない(工程II)、一晩室温で乾燥した。
処理済みのMCナイロン板と未処理のMCナイロン板を2枚ずつ、計4枚を、立方体の壁面を形成するように配置し、上面と底面に透明なアクリル板を配置して箱形の容器を作製した。処理済みのMCナイロン板2枚が対向するように配置した。同様に未処理のMCナイロン板も対向するように配置した。また、処理済みのMCナイロンの処理済み面が容器の内側を向くように、前記板を配置した。
容器の中にヒトスジシマカを20匹入れ、容器を軽く叩き直後に各壁面に降着したヒトスジシマカの数を計測した。すなわち、処理済みのMCナイロン板の2枚に降着したヒトスジシマカの数(X1)と、未処理のMCナイロン板の2枚に降着したヒトスジシマカの数(X2)とを計測した。X1とX2から以下の式により各壁面における1回ごとの降着率を算出した。5回降着率を測定してその平均値を採用した。結果を表1に示した。
降着率(%)=〔(X1又はX2)/(X1+X2)〕×100
【0032】
【表1】
【0033】
表中、参考例は、未処理のMCナイロン板4枚を用いて実施例1と同様に箱形容器を作製して実施例1と同様に評価を行ったものである。参考例の未処理のMCナイロン板A、Bは、それぞれ、対向する2枚のMCナイロン板の1組である。
【0034】
参考例では、未処理のMCナイロン板における降着率の差が小さいのに対して、実施例1では、処理済のMCナイロン板と未処理のMCナイロン板の降着率の差が大きく、且つ処理済のMCナイロン板の方が、降着率が格段に小さくなっている。すなわち、本発明の方法で処理したMCナイロン板において、ヒトスジシマカの降着が著しく抑制されていることがわかる。