【実施例】
【0042】
以下において、本発明を下記の実施例によって詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0043】
実施例1: チーズ風味素材の製造(酸による乳酸菌の破砕)
(1) 破砕する乳酸菌の準備
脱脂粉乳10%および酵母エキス0.1%の培地200gを調製し、95℃で60分間、加熱殺菌した。
ついで、この培地に、0.4gの中温乳酸菌スターター(凍結品)を無菌的に添加し、27℃で18時間、保持した。
【0044】
なおここで使用した乳酸菌スターターは、Lactococcus lactis subsp. lactis (ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス)、Lactococcus lactis subsp. cremoris(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス)、Lactobacillus paracasei(ラクトバチルス・パラカゼイ)、およびLactobacillus helveticus(ラクトバチルス・ヘルベティカス)の4種の乳酸菌を含むものであった。
【0045】
(2a) 乳酸菌の破砕(酸破砕)
前記(1)で得られた保持後の培養培地に、クエン酸を添加し、その培地のpH3.3とし、37℃で1時間、保持した。
次いで、ここに水酸化ナトリウムを添加し、pH5.0に調整した。これを破砕済み乳酸菌液(酸による菌体破砕物)とした。このとき、酸による菌体破砕の前後で生菌数を測定したところ、菌の生存率は37.5%であった。
【0046】
(3a)乳原料の調製(乳原料/チーズ)
ゴーダチーズ1009gに水372gを加え、よく懸濁させた後、ここに、糸状菌由来のプロテアーゼを5.4g添加し、36℃で4時間、撹拌した。
その後、63℃で30分間、加熱殺菌し、次いで36℃に冷却した。
これを乳原料(前処理済みチーズ)とした。
【0047】
(4a) 酵素処理および乳酸菌発酵
前記(3a)で得られた乳原料に、以下のもの:
(i) 前記(2a)で得られた破砕済み乳酸菌液(酸による菌体破砕物)170g、
(ii) 塩化ナトリウム16.9g、および
(iii) 糸状菌由来プロテアーゼ2種を合計7.6gと、糸状菌由来ペプチダーゼを2.3gと、酵母由来リパーゼを0.04gと、糸状菌由来リパーゼを0.17g、
を添加し、36℃で3日間撹拌保持した。
【0048】
次いで、得られた懸濁液1400gを回収し、65℃に加熱して、カゼインナトリウム塩96gと、キサンタンガム3.2gと、水70gとを添加した後、85℃に加温して、殺菌した。
得られた液をホモジナイザーで15MPaで、5分間、処理し、均質化を行った。
その後、容器に充填して冷却し、これを、チーズ風味素材1(実施例1)とした。
【0049】
実施例2〜4: チーズ風味素材の製造(塩、アルカリ、および機械的破砕による乳酸菌の破砕)
実施例1の(2a)の酸破砕処理の代わりに、後述する塩破砕処理(2b)、アルカリ破砕処理(2c)または機械的破砕処理(2d)を行った以外は、実施例1と同様にして、それぞれ、チーズ風味素材2(実施例2、塩破砕)、チーズ風味素材3(実施例3、アルカリ破砕)、およびチーズ風味素材4(実施例4、機械的破砕)の各サンプルを調製した。
【0050】
(2b) 乳酸菌の破砕(塩破砕)
実施例1の(1)で得られた保持後の培養培地を60g調製し、そこに塩化ナトリウムを12g添加し、37℃で1時間、保持した。
これを破砕済み乳酸菌液(塩による菌体破砕物)とした。このとき、塩による菌体破砕の前後で生菌数を測定したところ、菌の生存率は41.7%であった。
【0051】
(2c) 乳酸菌の破砕(アルカリ破砕)
実施例1の(1)で得られた保持後の培養培地を200g調製し、そこに水酸化ナトリウム溶液(25w/v%)をpH10.0となるように添加し、37℃で、1時間、保持した。
次いで、ここにクエン酸を添加し、pH5.0に調整した。これを破砕済み乳酸菌液(アルカリによる菌体破砕物)とした。このとき、アルカリによる菌体破砕の前後で生菌数を測定したところ、菌の生存率は37.5%であった。
【0052】
(2d) 乳酸菌の破砕(機械的破砕(ホモ破砕))
実施例1の(1)で得られた保持後の培養培地を200g調製し、ホモジナイザー(Niro Soavi社製 PANDA2K)を用いて、1200barで均質化した。
これを破砕済み乳酸菌液(機械的破砕による菌体破砕物)とした。このとき、機械的破砕による菌体破砕の前後で生菌数を測定したところ、菌の生存率は25.0%であった。
【0053】
実施例5および6: チーズ風味素材の製造(乳原料としてそれぞれ、生クリーム、バターを使用)
乳原料として、実施例1(3a)で調製した「チーズ」を使用する代わりに、後述する(3b)で調製した「生クリーム」、または(3c)で調製した「バター」を使用し、かつ、実施例1の「(4a)酵素処理および乳酸菌発酵」を実施する代わりに、後述する「(4b) 酵素処理および乳酸菌発酵」を実施した以外は、実施例1と同様にして、それぞれ、チーズ風味素材5(実施例5、乳原料/生クリーム)、チーズ風味素材6(実施例6、乳原料/バター)の各サンプルを調製した。
【0054】
(3b)乳原料の調製(乳原料/生クリーム)
脱脂粉乳400gに水600gを加え、よく懸濁させた後、ここに、脂肪分47%の生クリームを570g添加し、よく撹拌した。
その後、63℃で30分間、加熱殺菌し、次いで36℃に冷却した。
これを乳原料(生クリーム)とした。
【0055】
(3c)乳原料の調製(乳原料/バター)
脱脂粉乳400gに水873gを加え、よく懸濁させた後、ここに、加温溶解させた無塩バターを327g添加し、よく撹拌した。
その後、63℃で30分間、加熱殺菌し、次いで36℃に冷却した。
これを乳原料(バター)とした。
【0056】
(4b) 酵素処理および乳酸菌発酵
前記(3b)または(3c)で得られた乳原料に、以下のもの:
(i) 前記(2a)で得られた破砕済み乳酸菌液(酸による菌体破砕物)170g、
(ii) 塩化ナトリウム16.9g、および
(iii) 糸状菌由来プロテアーゼ1種を2.2gと、酵母由来リパーゼを0.04gと、糸状菌由来リパーゼを0.17g、
を添加し、36℃で3日間撹拌保持した。
【0057】
次いで、得られた懸濁液1400gを回収し、65℃に加熱し、カゼインナトリウム塩96gと、キサンタンガム3.2gを添加した後、85℃に加温して、殺菌した。
得られた液をホモジナイザーで15MPaで、5分間、処理し、均質化を行った。
その後、容器に充填して冷却し、これを、チーズ風味素材5または6(実施例5または6)とした。
【0058】
比較例: チーズ風味素材の製造(破砕なし)
実施例1の(2)の酸破砕処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、チーズ風味素材(比較例、破砕なし)のサンプルを調製した。
【0059】
評価試験
上記で得られた実施例1〜6のチーズ風味素材1〜6について、下記様な風味評価試験を実施した。
【0060】
・評価方法
牛乳200mLを鍋で加熱し、ホワイトソース(キユーピー社製、缶入り、1缶245g)を、ダマにならないよう混ぜながら少量ずつ添加した。次いで、沸騰しない温度で完全に混合し、小分けにして実施例1〜4の風味素材それぞれを3%ずつ添加し混合した。次いでこれらを冷蔵(4℃)し、評価時には室温(23℃)に戻した。
【0061】
・評価基準
評価項目として、「自然なチーズらしい風味」、「複雑な香り」、および「総合的な美味しさ」の3項目について、独立した評価者10名によって、それぞれ−3(弱い、または感じない)〜+3(強く感じる)の基準によるスコアで評価した。
【0062】
またこれら各評価項目に基づいて総合評価(A(優れている)、B(普通)、C(少し劣る))を行った。
【0063】
結果は下記表の通りであった。
【0064】
【表1】