【解決手段】 このシステムは、人の在席を検知する在席検知システムであり、座席上にかかる力の変化を測定する測定手段の測定結果から複数の極値を検出する検出手段と、検出された複数の極値のうち、時間的に隣り合う極大値間および極小値間の差分値を計算し、計算した差分値のうちの最大差分値と最小差分値の差を判定値として算出する計算手段と、算出された判定値に基づき、在席か不在かを判定する判定手段とを含む。
前記座席上にかかる力の変化を測定する測定手段と、前記座席を有する移動体を制御するための制御手段とをさらに含む、請求項2〜5のいずれか1項に記載の在席検知システム。
前記判定手段は、前記計算手段により計算された前記判定値が第1の閾値以上になるまで不在と判定し、前記判定値が前記第1の閾値以上になった場合に在席と判定する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の在席検知システム。
前記判定手段は、在席と判定した後、在席か不在かを判定する処理を停止し、前記計算手段により計算された前記判定値が第2の閾値以上になった場合に、在席か不在かを判定する処理を再開する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の在席検知システム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、人の在席を検知する在席検知システムの第1の構成例を示した図である。在席検知システムは、人が座るための座席10の座面10aに設置され、座面10aにかかる力の変化を測定する測定手段としてのセンサ11を備える。センサ11は、座面10a上に露出して設置されていてもよいし、座面10aのシートカバー等の下に設置されていてもよい。
【0010】
在席検知システムは、センサ11と接続され、センサ11からの信号に基づき、人の在席を検知する在席検知装置を備える。
図1に示す例では、在席検知装置は、入力部12と、記憶部13と、情報処理部14とを含んで構成されている。入力部12は、センサ11から出力された信号を入力し、記憶部13は、入力部12により入力された信号を、センサ11の測定結果として記憶する。情報処理部14は、記憶部13に記憶された測定結果に基づき、座席10に人が在席しているか、不在かを判定する。
【0011】
入力部12は、入出力I/FやネットワークI/Fを含み、ケーブル等によりセンサ11と接続される。なお、センサ11が無線通信可能な装置である場合、入力部12は、無線通信部とし、センサ11との間で無線通信を行い、センサ11からの信号を入力してもよい。入力部12は、センサ11から出力された信号を測定結果(測定データ)として一定の時間間隔で取得する。
【0012】
記憶部13は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等とされ、入力部12が一定の時間間隔で取得した測定データを記憶する。情報処理部14は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等の記憶装置を含み、記憶装置に記憶されたプログラムを実行し、記憶部13に記憶された測定データを使用して座席10に人が在席しているか、不在かを判定する。
【0013】
在席検知システムは、オフィス、映画館、演劇場等の振動が生じない静的な場所における在席を検知することも可能であるが、自家用車やバス、鉄道、旅客機等のエンジンの稼働により振動を生じる移動体内においても在席を検知することができる。
図1では、在席検知装置がセンサ11を含まない構成として説明したが、在席検知装置がセンサ11を含むものであってもよい。
【0014】
センサ11としては、
図2(a)に示す圧電センサを用いることができる。圧電センサは、圧電素子20と、圧電素子20を挟む2枚の電極21、22とから構成され、圧電素子20を押し縮める方向に力が加わると、負の電圧が発生し、圧電素子20を引き伸ばす方向に力が加わると、正の電圧が発生するという特性を有する。すなわち、人が圧電センサを設置した座面10aに着席すると、圧電素子20が押し縮められるため、負の電圧が発生する。一方、人が離席すると、押し縮められた圧電素子20が元に戻ろうとして引き伸ばされるため、正の電圧が発生する。
【0015】
圧電センサの出力信号は、
図2(b)に示すように、時間に対する電圧の変化として表される。
図2に示す例は、発生する電圧の極性が、上面の電極21を正とした場合の例を示しており、下面の電極22を正とする場合は、逆の極性を示す。圧電センサは、圧電素子20にかかる力の変化を検知し、電圧を発生させるものであるため、例えばセンサ上に物体を置いている状態等の一定の力が継続して加わっている場合、電圧は発生しない。
【0016】
図2(a)では、圧電素子20を押すとき、および離すときの力の変化が最も大きい点でピークを有し、そのピークにおいて極値をとる。
【0017】
図3を参照して、人が着座し、離席する際のセンサ11から出力される信号について、
図4を参照して、座席10上に物が置かれ、取り除かれる際のセンサ11から出力される信号について説明する。以下、センサ11を
図2に示した圧電センサとして説明する。座面10aに設置したセンサ11上に人が着座した場合は、
図3に示すように、センサ11の圧電素子20が押し縮められ、負の電圧が信号として発生し、離席すると、センサ11の圧電素子20の押し縮みが戻ることで正の電圧が信号として発生する。また、着席中に人が静止した場合は、人体の心拍活動や呼吸活動により座面10aと接触する体表面上に微小な振動が発生する。このため、体動に同期した信号が発生する。
【0018】
一方、座面10aに物が置かれた場合は、
図4に示すように、センサ11の圧電素子20が押し縮められ、負の電圧が信号として発生し、取り除かれると、センサ11の圧電素子20の押し縮みが戻ることで正の電圧が信号として発生する。このため、人の着席および離席と同様の波形となる。しかしながら、座面10a上に物が置かれた状態が継続している間は、人体のように微小な振動が発生しないので、信号は発生しない。
【0019】
図3および
図4では、単に座席10に人が着席および離席し、物が置かれ、取り除かれるときの信号波形を示した。座席10がエンジンにより駆動する車両や旅客機等の移動体である場合、エンジンによる振動(エンジン振動)を伴う。すると、
図5に示すように、人が不在のときでも、物が置かれた状態が継続している間でも、正および負の電圧が信号として発生し、信号が発生の有無だけで在席検知を行うことは困難である。
【0020】
しかしながら、
図5を詳細に参照すると、人の在席時には信号が振幅(ピーク)の大きい波形とピークの小さい波形が混在しているのに対し、人の不在時や物が置かれた状態の場合は信号が同程度のピークを有する波形が連続しているのが分かる。このことから、大小のピークを有する波形か、同程度のピークを有する波形が連続しているかにより、人の在席と、人の不在または物が置かれた状態とを区別し、区別の結果に基づき、人の有無を判定することができる。
【0021】
図6を参照して、座席10上の人の有無を判断するための判定値の算出手順について説明する。
図6(a)は、センサ11からの出力信号とその出力信号の一部を拡大した脈動波形を示した図である。センサ11は、エンジン振動や人の在席により、正負のピークが交互に連続する信号を出力する。入力部12は、出力された信号を一定の時間間隔で取得し、記憶部13は、取得された信号を測定データとして記憶する。記憶部13は、現時点から過去一定期間の波形のデータを記憶し、過去一定期間より前のデータは削除する。
【0022】
図6(b)は、一定の時間間隔で取得した信号の脈動波形の極値を検出し、その極値としての極大値および極小値を示した図である。情報処理部14は、記憶部13に記憶された波形のデータを参照し、この波形から極値を検出する。極値は、脈動波形のピークの電圧値で、極大値は、正のピークの電圧値であり、極小値は、負のピークの電圧値である。極値は、例えば波形を近似する関数を求め、関数を微分して導関数を求め、導関数が0となるときの電圧値として検出することができる。この方法は一例であるので、これに限られるものではない。
【0023】
図6(c)は、検出した極値のうち、時間的に隣り合う極大値間の差分値を計算する方法を示した図である。脈動波形は、正負のピークが交互に連続しているため、時間的に隣り合う極大値とは、ある正のピークの電圧値(第1の電圧値)と、該正のピークの直前もしくは直後にある負のピークのさらに1つ前もしくは1つ後にある正のピークの電圧値(第2の電圧値)とを示す。極大値間の差分値は、第1の電圧値と第2の電圧値との差として求められる値である。
【0024】
図6(d)は、検出した極値のうち、時間的に隣り合う極小値間の差分値を計算する方法を示した図である。時間的に隣り合う極小値とは、ある負のピークの電圧値(第3の電圧値)と、該負のピークの直前もしくは直後にある正のピークのさらに1つ前もしくは1つ後にある負のピークの電圧値(第4の電圧値)とを示す。極小値間の差分値は、第3の電圧値と第4の電圧値との差として求められる値である。このようにして、全ての隣り合う極大値間および極小値間の差分値を計算する。
【0025】
図6(e)は、計算された差分値から、在席を判定するために使用する判定値を算出する方法を示した図である。計算された差分値から最大差分値と最小差分値を抽出する。そして、
図6(f)に示すように、抽出した最大差分値と最小差分値との差を判定値として算出する。脈動波形においてピークが大きい波形と小さい波形が混在している場合、判定値が大きい値となる。
【0026】
図7は、エンジン振動下で不在時、または座席10に物が置かれている状態の極大値間および極小値間の差分値を計算する方法を示した図である。また、
図8は、エンジン非稼働状態で不在時の極大値間および極小値間の差分値を計算する方法を示した図である。いずれも、同程度のピークを有する波形が連続しているため、極大値間の差分値も、極小値間の差分値も小さい値となる。このため、最大差分値と最小差分値とを抽出し、抽出した最大差分値と最小差分値の差を判定値として算出しても、算出した判定値は小さい値となる。
【0027】
なお、エンジン振動下で不在時と座席10に物が置かれている状態では、同程度のピークを有する波形が連続するものとなるが、座面10aに置いた物がエンジン振動に共振することで、エンジン振動の周期と同期して振動するため、
図9に示すように、ピークが大きい波形となる。また、物の質量に依存する共振周波数とエンジン振動の周波数が近ければ近いほど、ピークが大きい波形となる。
【0028】
大小の波形が混在している場合、人が在席していることを示すため、判定値が大きい値かどうかにより、座席10に人が在席しているかどうかを判定することができる。判定値が大きい値かどうかは、
図9に示すように、閾値EPthを設け、閾値EPth以上であるかどうかにより判定することができる。
【0029】
なお、判定値に基づく判定は、過去一定期間の判定値に基づき、在席か否かを判定してもよい。例えば、判定値が一定時間継続して閾値EPth未満である場合に不在と判定する方法や、過去一定期間内の判定値のうち、閾値EPth以上となった判定値が一定の割合以上ある場合に在席と判定する方法を用いることができる。
【0030】
図10は、過去に1000点のデータに対して判定値を計算する場合の計算量と、同様のデータに対して従来の高速フーリエ変換(FFT)による周波数解析を行う場合の計算量を示した図である。
図10に示す結果から、判定値を用いた手法が、従来のFFTを用いた手法に比べて計算量が少ないことが分かる。このため、判定値を用いた手法では、低スペックのマシンを使用してもFFTを用いた手法と同程度の速度で判定を行うことができるため、結果としてシステムのコストを抑制することができる。
【0031】
図11は、上記の処理を実現するための情報処理部14の構成を示した図である。情報処理部14は、極値検出部30と、計算部31と、判定部32とを少なくとも含む。極値検出部30は、記憶部13に記憶された、座席上にかかる力の変化を測定するセンサ11の測定結果から複数の極値を検出する。極値は、極大値と極小値の両方を含む。
【0032】
計算部31は、極値検出部30により検出された複数の極値のうち、時間的に隣り合う極大値間および極小値間の差分値を計算する。そして、計算部31は、計算した差分値のうちの最大の差分値と最小の差分値を抽出し、抽出した最大差分値と最小差分値の差を算出し、算出した差の値を判定値として出力する。
【0033】
判定部32は、計算部31が出力した判定値に基づき、記憶部13に記憶された測定結果を参照し、各時刻における在席、不在を判定する。判定部32は、閾値EPthを用い、判定値が閾値EPth以上であるか否かを判定し、閾値EPth以上である場合、人が在席していると判定し、閾値EPth未満である場合、不在と判定する。ここでは、情報処理部14が、極値検出部30、計算部31、判定部32を備える1つのユニットとしての構成を例示したが、これに限られるものではなく、それぞれが分離され、別個のユニットとして構成されていてもよい。
【0034】
図12は、エンジン稼働状態での在席検知処理の流れを示したフローチャートである。在席検知処理は、ステップ1200から開始し、ステップ1205で、入力部12が、座面10aに設置したセンサ11からの測定データを一定の時間間隔、例えば1ms毎に取得する。ここでは、1ms毎としているが、0.5ms毎や2ms毎等であってもよい。ステップ1210では、取得した測定データを記憶部13の所定の記憶領域Mに記憶する。
【0035】
ステップ1215では、情報処理部14が、記憶領域Mに記憶されているデータが一定の個数(n個)以上であるかを確認する。データの個数は、判定値の算出において過去のデータをどこまで使用するかに応じて事前に設定することができ、例えば1000個とすることができる。データ個数が多い場合、在席判定の精度が向上するが、応答性が低下する。反対に、データ個数が少ない場合、在席判定の精度は低下するが、応答性が向上する。n個未満である場合、ステップ1205へ戻る。
【0036】
n個以上である場合、ステップ1220へ進み、記憶領域Mに記憶されているデータ個数がn個になるように、記憶領域Mの先頭、つまり古いデータからデータを削除する。このため、在席検知装置は、記憶部13内のデータを削除する等の所定の処理を行う処理部を備えることができる。削除してデータ個数がn個になったところで、ステップ1225において、極値検出部30が、n個のデータから極値を検出する。
【0037】
ステップ1230では、計算部31が、検出された極値のうち、時間的に隣り合う極大値間および極小値間の差分値を計算する。そして、ステップ1235で、計算部31が、計算された差分値のうち、最大差分値と最小差分値を抽出し、抽出した最大差分値と最小差分値の差を算出する。計算部31は、算出した差を判定値として出力する。
【0038】
ステップ1240では、判定部32が、判定値と閾値EPthとを比較し、判定値が閾値EPth以上であるかを判定する。閾値EPth以上である場合、ステップ1245へ進み、在席と判定する。一方、閾値EPth未満である場合、ステップ1250へ進み、不在と判定する。これらの判定が終了したところで、ステップ1255へ進み、在席検知処理を終了する。
【0039】
在席検知システムは、
図1に示した在席検知のみを行うものであってもよいが、在席検知結果に基づき、座席を備える移動体1を制御する等の追加の機能を有するものであってもよい。
図13は、人の在席を検知する在席検知システムの第2の構成例を示した図である。
図12に示す例では、在席検知装置が、入力部12、記憶部13、情報処理部14に加えて、情報取得部15、指示部16を備えている。入力部12、記憶部13、情報処理部14については既に説明したので、ここでは情報取得部15、指示部16についてのみ説明する。
【0040】
情報取得部15は、移動体1に搭載されるエンジンの稼働状態、アクセルやサイドブレーキの状態、車内温度等の移動体1に関する情報(移動体情報)を取得する。移動体1は、エンジンのON/OFF、アクセル、サイドブレーキ、車内温度を調整するエア・コンディショナー等を制御するための制御ユニット(制御部)を搭載しており、情報取得部15は、制御部と通信を行い、移動体情報を取得することができる。
【0041】
指示部16は、ブレーキをかける、ホーンを鳴らす、ライトを点灯させる、室内温度を上げる、室内温度を下げる等の制御を行うように制御部に対して指示する。指示部16は、情報取得部15が取得した移動体情報を参照し、判定部32の判定結果に基づき、制御部に対して指示する。
【0042】
指示部16は、例えば、判定部32の在席検知結果が不在であり、かつ情報取得部15が取得した移動体情報の1つであるサイドブレーキ情報がOFFであった場合、ブレーキをかけるように指示し、誤発進を防止する。また、指示部16は、ホーンを鳴らす、あるいはライトを点灯させる、またはその両方を実行するように指示し、車外の乗車者に対し、サイドブレーキのかけ忘れを知らせることもできる。
【0043】
指示部16は、移動体情報の1つであるアクセル情報が、アクセルが踏まれていることを示す情報である場合、在席検知結果が不在であっても、移動体1の走行を停止しないように指示することができる。これにより、乗車者が移動体を走行させている際に判定部32が誤って不在と判定した場合でも、走行を継続させ、乗車者の安全を確保することができる。
【0044】
ここでは、在席検知システムが制御部を備えないものとして説明したが、制御部を含めたものを在席検知システムとしてもよい。在席検知システムが制御部を含む場合、指示部16からの指示を受けることなく、制御部が判定結果に基づき判断し、ホーンを鳴らす等の制御を行うことができる。したがって、在席検知システムが制御部を含む場合、在席検知システムは、指示部16を備えていなくてもよい。
【0045】
ここで、
図14を参照して、移動体1が備える制御部40について簡単に説明しておく。制御部40は、複数のECU(Electronic Control Unit)と呼ばれる車両制御用コンピュータから構成され、複数のECUがCAN(Controller Area Network)と呼ばれる車載ネットワークを構成し、互いに通信を行うことができるようになっている。
【0046】
複数のECUとしては、車体制御用ECU41、エンジン情報収集用ECU42、温度情報収集用ECU43、ブレーキ情報収集用ECU44、アクセル情報収集用ECU45等が存在する。エンジン情報収集用ECU42には、エンジン情報を取得するためのエンジン情報取得センサ46が接続される。エンジン情報としては、エンジンの回転数等を挙げることができる。温度情報収集用ECU43には、車内の温度を測定するための温度情報取得センサ47が接続される。
【0047】
ブレーキ情報収集用ECU44には、サイドブレーキのON/OFF等の情報を取得するためのブレーキ情報取得センサ48が接続される。アクセル情報収集用ECU45には、アクセルが踏まれているか、どの程度踏まれているかという情報を取得するためのアクセル情報取得センサ49が接続される。
【0048】
車体制御用ECU41は、エンジン情報収集用ECU42、温度情報収集用ECU43、ブレーキ情報収集用ECU44、アクセル情報収集用ECU45と接続され、各ECUが取得した情報を在席検知システムに提供する。なお、在席検知システムが制御部40を備える場合、車体制御用ECU41は、情報取得部15からの取得要求を受けて、各ECUに対して各情報の収集を指示し、各ECUから取得した各情報を情報取得部15に送信する。
【0049】
図15を参照して、
図13に示した在席検知システムにより実行される誤発進防止制御について説明する。ステップ1500から制御を開始し、ステップ1505では、指示部16が、運転席の在席検知結果が不在であるかを確認する。在席している場合、誤発進するおそれがないため、ステップ1525へ進み、誤発進防止制御を終了する。不在である場合は、ステップ1510へ進み、情報取得部15が、制御部40からサイドブレーキ情報を取得する。
【0050】
ステップ1515では、指示部16が、サイドブレーキ情報を参照し、サイドブレーキの状態がOFFかどうかを確認する。状態がONで、サイドブレーキがかかっている場合は、誤発進するおそれがないため、ステップ1525へ進み、この制御を終了する。状態がOFFである場合、ステップ1520へ進み、指示部16は、制御部40に対して、サイドブレーキをかけるように指示する。制御部40がサイドブレーキをかけたことを受けて、ステップ1525へ進み、誤発進防止制御を終了する。なお、この制御は、ステップ1525で制御を終了してから一定の期間が経過した後に再度実施することができる。
【0051】
次に、
図16を参照して、
図13に示した在席検知システムにより実行される移動体1の室内温度制御について説明する。ステップ1600から制御を開始し、ステップ1605では、指示部16が、車内の全ての座席についての在席検知結果が不在であるかを確認する。1人でも在席している場合、乗車者が自身で室内の温度調整を行うことができるので、ステップ1625へ進み、室内温度制御を終了する。不在である場合は、ステップ1610へ進み、情報取得部15が、室内温度情報を取得する。
【0052】
ステップ1615では、指示部16が、室内温度情報を参照し、室内温度が予め設定された最低温度TLowより低いか、あるいは最高温度THighより高いかを確認する。室内温度がTLow以上THigh以下である場合、温度制御を行う必要がないとして、ステップ1625へ進み、室内温度制御を終了する。室内温度がTLowより低い場合、あるいは室内温度がTHighより高い場合は、温度制御を行う必要があるため、ステップ1620へ進み、指示部16は、制御部40に対して、室内温度を上げる、あるいは下げるように指示する。
【0053】
制御部40が室内の温度調整を行い、室内温度がTLow以上THigh以下の範囲内の温度になったことを受けて、ステップ1625へ進み、室内温度制御を終了する。この制御も、誤発進防止制御と同様、ステップ1625で制御を終了してから一定の期間が経過した後に再度実施することができる。車内温度の調整は、安全性に直接影響を与えるものではないため、必要に応じて実施することができる。
【0054】
図17は、人の在席を検知する在席検知システムの第3の構成例を示した図である。
図17に示す例では、在席検知装置が、入力部12、記憶部13、情報処理部14、情報取得部15、指示部16に加えて、生体情報検出部17を備えている。入力部12、記憶部13、情報処理部14、情報取得部15、指示部16については既に説明したので、ここでは生体情報検出部17についてのみ説明する。
【0055】
生体情報検出部17は、乗車者を判別するための生体情報を検出する。この例では、乗車者が幼児であるか、幼児以外であるかを判別し、乗車者が幼児のみである場合に、夏場や冬場の車内置き去り防止のために、移動体1の外部に通知するものとして説明する。
【0056】
生体情報としては、幼児か否かを判別することができる情報であればいかなる情報であってもよいが、例えば脈拍数を挙げることができる。脈拍数は、成人になるにつれて変化し、成人では60〜90回/分程度であるのに対し、乳幼児では100〜140回/分、幼児では80〜110回/分で成人に比べて多い。このことから、例えば100回/分を基準値とし、100回/分以上である場合に幼児と判定し、100回/分未満である場合に幼児以外と判定することができる。
【0057】
生体情報検出部17は、在席検知結果が在席である場合に、記憶部13に記憶された大小のピークを有する波形のデータを用い、一定期間内の大きな振幅の波形の数から脈拍数を算出することができる。情報処理部14は、生体情報検出部17により算出された脈拍数に基づき、乗車者を判別する判別部を備え、乗車者が幼児であるかどうかを判別することができる。
【0058】
指示部16は、在席検知結果が在席で、情報取得部15が取得した車内温度情報が一定の温度範囲外を示し、車内にいるのが幼児のみの場合に、制御部40に対して、ホーンを鳴らす、あるいはライトを点灯させる、またはその両方を実行するように指示する。これにより、車外の人に対して通知を行い、幼児の置き去りによる死亡事故を防止することができる。なお、判別部は、在席と判定された全ての座席において、生体情報検出部17が算出した脈拍数が一定期間継続して100回/分以上であった場合に、車内にいるのは幼児のみと判別する。
【0059】
車外の人に対して通知する方法としては、上記のホーンを鳴らす、ライトを点灯させることのほか、車体に設置したディスプレイに文字を表示させる方法や、フロントガラス等の窓に対して情報を投影する方法等を挙げることができる。また、幼児が乗車する際は、チャイルドシートやベビーシートが使用される場合があるが、チャイルドシート等の座面にセンサ11を取り付けることで、幼児についても在席検知を行うことができる。
【0060】
図18を参照して、
図17に示した在席検知システムにより実行される幼児の置き去り防止制御について説明する。ステップ1800から制御を開始し、ステップ1805では、指示部16が、在席検知結果が1人でも在席であるかを確認する。不在である場合、ステップ1845へ進み、置き去り防止制御を終了する。在席する場合、ステップ1810へ進み、情報取得部15が、車内温度情報を取得する。
【0061】
ステップ1815では、指示部16が、車内温度情報を参照し、車内温度が予め設定された最低温度TLowより低いか、あるいは最高温度THighより高いかを確認する。車内温度がTLow以上THigh以下の範囲内の温度である場合、温度制御を行う必要がないとして、ステップ1845へ進み、置き去り防止制御を終了する。車内温度がTLowより低い場合、あるいは車内温度がTHighより高い場合は、ステップ1820へ進み、生体情報検出部17が、在席と判定された全ての座席に設置されたセンサ11から取得したデータを用い、脈拍数を算出する。そして、ステップ1825で、生体情報検出部17が、検出した脈拍数を記憶部13に記憶する。
【0062】
ステップ1830では、指示部16が、脈拍数が一定の期間、例えばm分以上連続して記憶されたかを確認する。期間mは、乗車者が幼児と判定するために継続して脈動を検出する時間で、成人であれば運転中に5分以上継続して脈拍数が上昇したままとなることはないと考えられるため、例えば5分に設定することができる。記憶されていない場合、ステップ1820へ戻り、記憶された場合、ステップ1835へ進む。
【0063】
ステップ1835では、指示部16が、記憶された脈拍数がm分以上継続して基準値p以上であるかを確認する。脈拍数の基準値pは、乗車者を幼児と判定するための脈拍数であり、例えば100回/分とすることができる。脈拍数の全てが基準値p以上である場合、在席している全員が幼児と判定し、ステップ1840へ進み、脈拍数の1つでも基準値p未満が存在する場合、乗車者に成人がいるので、ステップ1845へ進み、置き去り防止制御を終了する。
【0064】
ステップ1840では、指示部16が、制御部40に対して、ホーンを鳴らし、ライトを点灯させるように指示する。制御部40は、指示部16からの指示を受けて、ホーンを鳴らし、ライトを点灯させる。これにより、車外の人に通知した後、ステップ1845で、置き去り防止制御を終了する。この制御も、ステップ1845で制御を終了してから一定の期間が経過した後に再度実施することができる。
【0065】
在席検知システムは、ホーンを鳴らす、ライトを点灯させる、サイドブレーキをかける、車内温度を上げる、車内温度を下げる等を、車体制御用ECU41に対して指示し、車体制御用ECU41がその指示を受けて、ホーンを鳴らす等の処理を実行する。制御部40が在席検知システムに含まれる場合、制御部40はシステム内の在席検知装置に対して各ECUが取得した情報を提供し、在席検知装置からの指示を受けて、ホーンを鳴らす等の処理を実行することができる。
【0066】
判定部32は、判定値が閾値EPth以上である場合に在席と判定するが、実際に在席していないときでも判定値が閾値EPth以上となる場合がある。例えば、不在時に移動体のドアを閉めた場合や座面10aに手が軽く触れた場合等である。このような場合に在席と判定すると、誤判定になることから、これを防止する必要がある。そこで、閾値EPthとは別に、着座判定閾値EPsを設け、判定値が着座判定閾値EPs以上になった場合にのみ在席と判定する。
【0067】
センサ11からの出力が、
図19(a)に示した波形で表される場合、
図19(b)に示すように、閾値EPthのみでは、不在時にも閾値EPthを超えている部分があるので、在席と判定されてしまう。しかしながら、閾値EPthより高い値である着座判定閾値EPsを設けることで、不在時も適切に不在と判定することができる。これは、着座時には圧電センサに大きな衝撃が与えられ、着座の瞬間の判定値が大きくなることに基づいている。
【0068】
在席検知システムの情報処理部14は、常時、在席検知処理を実行することができるが、上記の着座判定に加えて、離席も判定することができれば、その間は在席していることが明らかであるので、その間の在席検知処理を停止することができる。これにより、情報処理部14が行う処理を少なくし、システムにおける計算量を低減させることができる。
【0069】
離席時は、圧電センサに大きな衝撃が与えられるため、大きな正の電圧が発生する。このため、着座時と同様に、
図20(a)に示すような離席判定閾値VLを設けることで、離席を判定することができる。したがって、情報処理部14は、一度在席と判定した後は測定データの電圧が離席判定閾値VL以上になるまで在席検知処理を停止することができる。
【0070】
ただし、在席中に体を揺らす、座る位置をずらす等の動作においても、圧電センサに対して離席時と同様の大きな衝撃が与えられる。このため、
図20(b)に示すように、測定データの電圧が離席判定閾値VL以上になった場合に、在席検知処理を再開し、VL以上になって一定期間が経過する間のみ判定値を計算し、在席検知を行うことができる。一定期間が経過する間、判定値を計算し、在席検知を行うことで、在席中であるか、離席したかを判断することができるからである。なお、不在中は、いつ着座するかが分からないので、在席検知処理を実行する。
【0071】
座席10の座面10aは、硬い素材と柔らかい素材である場合があり、硬い素材は、着座したときの沈み込みが小さく、離席後のセンサ11の圧電素子の押し縮みが比較的早く行われる。一方、柔らかい素材は、着座したときの沈み込みが大きく、圧電素子の押し縮みが緩やかに行われる。すると、
図21(a)に示すように、センサ11が出力する電圧が緩やかに減少し、電圧が0になるまである程度の時間を要することになる。
【0072】
電圧が緩やかに減少する期間では、計算される判定値が比較的大きい値となり、電圧が0付近に収束するまで、閾値EPth未満にならない。これでは、
図21(b)に示すように、不在と判定されるまでに時間がかかってしまう。
【0073】
柔らかい素材の座面10aに設置されたセンサ11の出力には、出力の変化を緩やかにするバイアス成分が含まれている。バイアス成分は、
図22(a)に示すような電圧成分であり、これを除去することで、
図22(b)に示すような電圧が早く0付近に減少し、不在判定に要する時間を短縮することができる。このバイアス成分の除去も、上述した処理部により実行することができる。
【0074】
バイアス成分を計算する方法としては、例えば最小二乗法(回帰分析)、主成分分析、重み付き最小二乗法等を用いることができる。これらの方法は、良く知られた統計学的手法であるため、ここでは詳述しない。
【0075】
以上に説明してきたように、センサ11の出力波形から極値を検出し、隣り合う極大値間および極小値間の差分値を計算し、最大差分値と最小差分値との差を判定値として算出し、判定値が閾値以上かどうかにより在席検知を行うので、従来の周波数解析等を用いる手法に比較して、少ない計算量で在席検知を行うことができる。
【0076】
在席検知結果を用いて移動体を制御することで、誤発進の防止、車内の温度調整、幼児の車内置き去り防止のための通知等を実現することができる。また、座面に触れる等のノイズが発生しても、誤判定することなく在席検知を行うことができる。さらに、在席中の在席検知処理を軽減することができ、座面の素材に応じて適切な判定を行うことが可能となる。
【0077】
これまで本発明を、在席検知システム、在席検知装置、在席検知方法およびプログラムとして上述した実施の形態をもって説明してきた。しかしながら、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、他の実施の形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができるものである。また、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。したがって、そのプログラムが記録された記録媒体、そのプログラムを提供するプログラム提供サーバ等も提供することができるものである。