特開2018-202389(P2018-202389A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2018-202389アルキレート製造用触媒構造体、該触媒構造体を有するアルキレート製造装置及びアルキレート製造用触媒構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-202389(P2018-202389A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】アルキレート製造用触媒構造体、該触媒構造体を有するアルキレート製造装置及びアルキレート製造用触媒構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/08 20060101AFI20181130BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20181130BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20181130BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20181130BHJP
   B01J 29/40 20060101ALI20181130BHJP
   B01J 29/65 20060101ALI20181130BHJP
   C10G 50/00 20060101ALI20181130BHJP
   C07C 9/16 20060101ALI20181130BHJP
   C07C 2/58 20060101ALI20181130BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20181130BHJP
【FI】
   B01J29/08 Z
   B01J37/02 101E
   B01J37/02 101D
   B01J37/10
   B01J29/70 Z
   B01J29/40 Z
   B01J29/65 Z
   C10G50/00
   C07C9/16
   C07C2/58
   C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-105672(P2018-105672)
(22)【出願日】2018年5月31日
(31)【優先権主張番号】特願2017-108603(P2017-108603)
(32)【優先日】2017年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 禎宏
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 將行
(72)【発明者】
【氏名】高橋 尋子
(72)【発明者】
【氏名】馬場 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】関根 可織
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BA05B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA07C
4G169BA45A
4G169BB02A
4G169BB04B
4G169BC35B
4G169CB62
4G169CC11
4G169DA05
4G169EA02X
4G169EB17X
4G169FA02
4G169FB13
4G169FB19
4G169FB20
4G169FB30
4G169FC03
4G169FC08
4G169ZA03B
4G169ZA11B
4G169ZA12B
4G169ZA13B
4G169ZA32B
4G169ZB01
4G169ZB02
4G169ZB03
4G169ZB05
4G169ZC06
4G169ZD03
4G169ZD06
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4H006AA02
4H006AC21
4H006BA07
4H006BA09
4H006BA10
4H006BA30
4H006DA15
4H039CA10
4H039CF10
4H129AA02
4H129CA02
4H129DA13
4H129KA04
4H129KB02
4H129KB05
4H129KC03Y
4H129KC07Y
4H129KC13X
4H129KC13Y
4H129KD30Y
4H129NA13
4H129NA37
(57)【要約】
【課題】環境負荷が小さく且つ安全性を向上できると共に、触媒活性の低下を抑制して、効率的なアルキレート製造処理を実現することができるアルキレート製造用触媒構造体を提供する。
【解決手段】アルキレート製造用触媒構造体は、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体と、前記担体に内在する少なくとも1つの固体酸と、を備え、前記担体が、互いに連通する通路を有し、前記固体酸が、前記担体の少なくとも前記通路に存在している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体と、
前記担体に内在する少なくとも1つの固体酸と、
を備え、
前記担体が、互いに連通する通路を有し、
前記固体酸が、前記担体の少なくとも前記通路に存在していることを特徴とする、アルキレート製造用触媒構造体。
【請求項2】
前記通路は、前記ゼオライト型化合物の骨格構造によって画定される一次元孔、二次元孔及び三次元孔のうちのいずれかと、前記一次元孔、前記二次元孔及び前記三次元孔のうちのいずれとも異なる拡径部とを有し、かつ
前記固体酸が、少なくとも前記拡径部に存在していることを特徴とする、請求項1に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
【請求項3】
前記拡径部は、前記一次元孔、前記二次元孔及び前記三次元孔のうちのいずれかを構成する複数の孔同士を連通している、請求項2に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
【請求項4】
前記固体酸は、触媒機能を有する微粒子であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
【請求項5】
前記固体酸の平均粒径が、前記通路の平均内径よりも大きく、且つ前記拡径部の内径以下であることを特徴とする、請求項4に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
【請求項6】
前記固体酸の金属元素(M)が、前記アルキレート製造用構造体に対して0.5〜2.5質量%で含有されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
【請求項7】
前記微粒子の平均粒径が、0.1nm〜50nmであることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか1項に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
【請求項8】
前記固体酸の平均粒径が、0.5nm〜14.0nmであることを特徴とする、請求項7に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
【請求項9】
前記通路の平均内径に対する前記微粒子の平均粒径の割合が、0.06〜500であることを特徴とする、請求項4〜8のいずれか1項に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
【請求項10】
前記通路の平均内径に対する前記微粒子の平均粒径の割合が、0.1〜36であることを特徴とする、請求項9に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
【請求項11】
前記通路の平均内径に対する前記微粒子の平均粒径の割合が、1.7〜4.5であることを特徴とする、請求項10に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
【請求項12】
前記通路の平均内径は、0.1nm〜1.5nmであり、
前記拡径部の内径は、0.5nm〜50nmであることを特徴とする、請求項2〜11のいずれか1項に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
【請求項13】
前記担体の外表面に保持された少なくとも1つの触媒物質を更に備えることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
【請求項14】
前記担体に内在する前記少なくとも1つの固体酸の含有量が、前記担体の外表面に保持された前記少なくとも1つの触媒物質の含有量よりも大きいことを特徴とする、請求項13に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
【請求項15】
前記ゼオライト型化合物は、ケイ酸塩化合物であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のアルキレート製造用触媒構造体を有するアルキレート製造装置。
【請求項17】
ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体を得るための前駆体材料(A)に金属含有溶液が含浸された前駆体材料(B)を焼成する焼成工程と、
前記前駆体材料(B)を焼成して得られた前駆体材料(C)を水熱処理する水熱処理工程と、
を有することを特徴とするアルキレート製造用触媒構造体の製造方法。
【請求項18】
前記焼成工程の前に、非イオン性界面活性剤を、前記前駆体材料(A)に対して50〜500質量%添加することを特徴とする、請求項17に記載のアルキレート製造用触媒構造体の製造方法。
【請求項19】
前記焼成工程の前に、前記前駆体材料(A)に前記金属含有溶液を複数回に分けて添加することで、前記前駆体材料(A)に前記金属含有溶液を含浸させることを特徴とする、請求項17又は18に記載のアルキレート製造用触媒構造体の製造方法。
【請求項20】
前記焼成工程の前に前記前駆体材料(A)に前記金属含有溶液を含浸させる際に、前記前駆体材料(A)に添加する前記金属含有溶液の添加量を、前記前駆体材料(A)に添加する前記金属含有溶液中に含まれる金属元素(M)に対する、前記前駆体材料(A)を構成するケイ素(Si)の比(原子数比Si/M)に換算して、10〜1000となるように調整することを特徴とする、請求項17〜19のいずれか1項に記載のアルキレート製造用触媒構造体の製造方法。
【請求項21】
前記水熱処理工程において、前記前駆体材料(C)と構造規定剤とを混合することを特徴とする、請求項17に記載のアルキレート製造用触媒構造体の製造方法。
【請求項22】
前記水熱処理工程が塩基性雰囲気下で行われることを特徴とする、請求項17に記載のアルキレート製造用触媒構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキレート製造用触媒構造体、該触媒構造体を有するアルキレート製造装置及びアルキレート製造用触媒構造体の製造方法に関し、特に、石油改質の流動接触分解で副生されるオレフィン留分をアルキル化するために用いられるアルキレート製造用触媒構造体、該触媒構造体を有するアルキレート製造装置及びアルキレート製造用触媒構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油コンビナートの製油所では、原油から、ナフサと呼ばれる石油化学原料や、重油、軽油、灯油、ガソリン、LPガス等の各種燃料が製造されている。原油は、上記の石油化学原料や各種燃料の他、様々な不純物が混ざり合った混合物であるため、原油に含まれる各成分を蒸留、分離する工程が必要となる。
【0003】
そこで石油精製プロセスでは、各成分の沸点差を利用し、常圧蒸留装置における塔内の棚段で原油を加熱して成分毎に分離し、分離後の各物質を濃縮している。これにより、LPガス、ナフサ等の低沸点物質が常圧蒸留装置の上部棚段で取り出されると共に、重油等の高沸点物質が常圧蒸留装置の底部から取り出される。そして、分離、濃縮された各物質に脱硫等の二次処理を施すことにより、各種燃料製品が製造される。
【0004】
上記二次処理の1つである流動接触分解(FCC:fluid catalytic cracking)は、減圧軽油、常圧残油などの高沸点炭化水素を約500〜550℃の反応温度で固体酸触媒により分解し、高オクタン価ガソリンを製造する工程である。このFCCで副生されるプロピレン(C)、ブテン(C)などの低級オレフィンとイソブタン(CH(CH)とを原料として、高オクタン価のアルキレートであるイソヘプタン(C16)、イソオクタン(C18)などを製造するアルキル化処理が行われている。アルキレートは、硫黄分、芳香族分、オレフィン分を含まず、高オクタン価であるため、理想的なガソリン基材である。アルキル化処理では、液相接触反応を進行させるために、例えば硫酸及びフッ化水素が触媒として用いられている(非特許文献1)。例えば、酸触媒、アルカン及びオレフィンを含む流体系を、イソパラフィン及びオレフィンを反応させる温度及び圧力の条件下、並流でメッシュ等を含む分散体と接触させて、アルキレート生成物を製造する方法が開示されている(特許文献1)。
【0005】
一方、熱分解プロセスによるアルキル化処理として、結晶性リン酸アルミニウム類、SiO/Alのモル比が10を超える結晶性アルミノシリケート類、及びメタロシリケート類からなる群から選択されたいずれかを固体酸触媒として用い、エタン/エチレン混合ガスと、メタノール及び/又はジメチルエーテルを含むガスとを、触媒存在下で反応させてプロピレンを製造する方法が開示されている(特許文献2)。
【0006】
また、下記の要件(1)〜(6)を満たすゼオライト含有成型体触媒を用い、少なくとも1種の炭素数4〜12のオレフィンを20質量%以上含有する炭化水素原料を、上記ゼオライト含有成型体触媒と接触させて、エチレン及びプロピレンを製造する方法が開示されている(特許文献3)。
(1)該ゼオライトが、5〜6.5Åの細孔径を有する中間細孔径ゼオライトである。
(2)該ゼオライトが実質的にプロトンを含まない。
(3)該ゼオライトが周期律表第IB族に属する金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する。
(4)該ゼオライト含有成型体触媒がシリカをバインダーとするものである。
(5)該ゼオライト含有成型体触媒の圧潰強度が2.5N/mm以上である。
(6)該ゼオライト含有成型体触媒のH交換型でのナトリウム含有量が500ppm以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2005−539106号公報
【特許文献2】特許第4604508号公報
【特許文献3】特許第4879574号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】藤川 貴志,「石油精製触媒の現状と将来展望」,工業材料,日刊工業新聞社,平成29年1月1日,第65巻,第1号,第24頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1のような技術では、触媒として使用される硫酸及びフッ化水素の毒性が強く、また、アルキル化処理に伴って硫酸及びフッ化水素の排液処理が必要であることから、安全性や環境面を考慮した新たな触媒が求められている。
【0010】
また、オレフィンは反応性が高く、触媒表面で炭素質の析出(コーキング)が生じ易いことから、触媒活性を回復させるために、加熱によって触媒に付着したコークスを除去している。しかしながら、上記特許文献2,3のような技術では、コークス除去処理の際、コークスの燃焼によって水蒸気が発生し、水蒸気存在化でゼオライトを加熱すると、ゼオライト骨格内のAl元素(活性点)が脱離し、触媒の永久的劣化が生じるという問題がある。また、コーキングに因る劣化の抑制やエチレン、プロピレンの収率向上を目的として金属酸化物を担体に含有させた場合、上記コークス除去処理の際に、熱の影響によって触媒粒子が担体内で移動し、金属酸化物同士の凝集(シンタリング)が発生し易く、触媒としての有効表面積が大幅減少し、触媒活性の低下を招く。
【0011】
更に、近年、固体超強酸(硫酸化ジルコニア)などの固体触媒を利用した研究が進められているが、従来の固体触媒では、ソフトコークスの生成により触媒活性の劣化が急激に進行するため、アルキル化処理等で使用可能な固体触媒の工業化は困難と考えられる。また、ゼオライトを固体酸触媒として用いた場合、ゼオライトの触媒機能が経時により失活することが知られている。この原因として、反応中に生成する水蒸気等によって骨格構造中のアルミニウム元素が脱離すること、反応に伴って析出するコークがアルミニウム元素に付着すること等が挙げられる。
【0012】
本発明の目的は、環境負荷が小さく且つ安全性を向上できると共に、触媒活性の低下を抑制して、効率的なアルキル化処理を実現することができるアルキレート製造用触媒構造体、該触媒構造体を有するアルキレート製造装置及びアルキレート製造用触媒構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、アルキレート製造用触媒構造体が、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体と、前記担体に内在する少なくとも1つの固体酸と、を備え、前記担体が、互いに連通する通路を有し、前記固体酸が、前記担体の少なくとも前記通路に保持存在していることによって、アルキレートを生成する際に、固体酸の機能低下を抑制し、長寿命化を実現できる触媒構造体が得られることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1]ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体と、
前記担体に内在する少なくとも1つの固体酸と、
を備え、
前記担体が、互いに連通する通路を有し、
前記固体酸が、前記担体の少なくとも前記通路に存在していることを特徴とする、アルキレート製造用触媒構造体。
[2]前記通路は、前記ゼオライト型化合物の骨格構造によって画定される一次元孔、二次元孔及び三次元孔のうちのいずれかと、前記一次元孔、前記二次元孔及び前記三次元孔のうちのいずれとも異なる拡径部とを有し、かつ
前記固体酸が、少なくとも前記拡径部に存在していることを特徴とする、上記[1]に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
[3]前記拡径部は、前記一次元孔、前記二次元孔及び前記三次元孔のうちのいずれかを構成する複数の孔同士を連通している、上記[2]に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
[4]前記固体酸は、触媒機能を有する微粒子であることを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
[5]前記固体酸の平均粒径が、前記通路の平均内径よりも大きく、且つ前記拡径部の内径以下であることを特徴とする、上記[4]に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
[6]前記固体酸の金属元素(M)が、前記アルキレート製造用構造体に対して0.5〜2.5質量%で含有されていることを特徴とする、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のアルキレート製造用触媒構造体。
[7]前記微粒子の平均粒径が、0.1nm〜50nmであることを特徴とする、上記[4]〜[6]のいずれかに記載のアルキレート製造用触媒構造体。
[8]前記固体酸の平均粒径が、0.5nm〜14.0nmであることを特徴とする、上記[7]に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
[9]前記通路の平均内径に対する前記微粒子の平均粒径の割合が、0.06〜500であることを特徴とする、上記[4]〜[8]のいずれかに記載のアルキレート製造用触媒構造体。
[10]前記通路の平均内径に対する前記微粒子の平均粒径の割合が、0.1〜36であることを特徴とする、上記[9]に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
[11]前記通路の平均内径に対する前記微粒子の平均粒径の割合が、1.7〜4.5であることを特徴とする、上記[10]に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
[12]前記通路の平均内径は、0.1nm〜1.5nmであり、
前記拡径部の内径は、0.5nm〜50nmであることを特徴とする、上記[2]〜[11]のいずれかに記載のアルキレート製造用触媒構造体。
[13]前記担体の外表面に保持された少なくとも1つの触媒物質を更に備えることを特徴とする、上記[1]〜[12]のいずれかに記載のアルキレート製造用触媒構造体。
[14]前記担体に内在する前記少なくとも1つの固体酸の含有量が、前記担体の外表面に保持された前記少なくとも1つの触媒物質の含有量よりも大きいことを特徴とする、上記[13]に記載のアルキレート製造用触媒構造体。
[15]前記ゼオライト型化合物は、ケイ酸塩化合物であることを特徴とする、上記[1]〜[14]のいずれかに記載のアルキレート製造用触媒構造体。
[16]上記[1]〜[15]のいずれかに記載のアルキレート製造用触媒構造体を有するアルキレート製造装置。
[17]ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体を得るための前駆体材料(A)に金属含有溶液が含浸された前駆体材料(B)を焼成する焼成工程と、
前記前駆体材料(B)を焼成して得られた前駆体材料(C)を水熱処理する水熱処理工程と、
を有することを特徴とするアルキレート製造用触媒構造体の製造方法。
[18]前記焼成工程の前に、非イオン性界面活性剤を、前記前駆体材料(A)に対して50〜500質量%添加することを特徴とする、上記[17]に記載のアルキレート製造用触媒構造体の製造方法。
[19]前記焼成工程の前に、前記前駆体材料(A)に前記金属含有溶液を複数回に分けて添加することで、前記前駆体材料(A)に前記金属含有溶液を含浸させることを特徴とする、上記[17]又は[18]に記載のアルキレート製造用触媒構造体の製造方法。
[20]前記焼成工程の前に前記前駆体材料(A)に前記金属含有溶液を含浸させる際に、前記前駆体材料(A)に添加する前記金属含有溶液の添加量を、前記前駆体材料(A)に添加する前記金属含有溶液中に含まれる金属元素(M)に対する、前記前駆体材料(A)を構成するケイ素(Si)の比(原子数比Si/M)に換算して、10〜1000となるように調整することを特徴とする、上記[17]〜[19]のいずれかに記載のアルキレート製造用触媒構造体の製造方法。
[21]前記水熱処理工程において、前記前駆体材料(C)と構造規定剤とを混合することを特徴とする、上記[17]に記載のアルキレート製造用触媒構造体の製造方法。
[22]前記水熱処理工程が塩基性雰囲気下で行われることを特徴とする、上記[17]に記載のアルキレート製造用触媒構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、環境負荷が小さく安全性を向上できると共に、触媒活性の低下を抑制して、効率的なアルキル化処理を実現することができるアルキレート製造用触媒構造体、該触媒構造体を備えるアルキレート製造装置及びアルキレート製造用触媒構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係るアルキレート製造用触媒構造体の内部構造が分かるように概略的に示したものであって、図1(a)は斜視図(一部を横断面で示す。)、図1(b)は部分拡大断面図である。
図2図2は、図1の触媒構造体の機能の一例を説明するための部分拡大断面図であり、図2(a)は篩機能、図2(b)は触媒機能を説明する図である。
図3図3は、図1の触媒構造体の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、図1の触媒構造体の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[触媒構造体の構成]
図1は、本発明の実施形態に係るアルキレート製造用触媒構造体の構成を概略的に示す図であり、(a)は斜視図(一部を横断面で示す。)、(b)は部分拡大断面図である。なお、図1における触媒構造体は、その一例を示すものであり、本発明に係る各構成の形状、寸法等は、図1のものに限られないものとする。
【0018】
図1(a)に示されるように、アルキレート製造用触媒構造体1(以下、単に触媒構造体という)は、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体10と、該担体10に内在する、少なくとも1つの固体酸20とを備える。
【0019】
固体酸20は、単独で、または担体10と協働することで、一又は複数の機能を発揮する物質である。また、上記機能の具体例としては、触媒機能、発光(または蛍光)機能、吸光機能、識別機能等が挙げられる。固体酸20は、例えば触媒機能を有する触媒物質であり、微粒子であることが好ましい。なお、固体酸20が触媒物質であるとき、担体10は、触媒物質を担持する担体である。触媒構造体1において、複数の固体酸20,20,・・・は、担体10の多孔質構造の内部に包接されている。
【0020】
担体10は、多孔質構造であり、図1(b)に示すように、好適には複数の孔11a,11a,・・・が形成されることにより、互いに連通する通路11を有する。ここで固体酸20は、担体10の少なくとも通路11に存在しており、好ましくは担体10の少なくとも通路11に保持されている。
【0021】
このような構成により、担体10内での固体酸20の移動が規制され、固体酸20、20同士の凝集が有効に防止されている。その結果、固体酸20としての有効表面積の減少を効果的に抑制することができ、固体酸20の機能は長期にわたって持続する。すなわち、触媒構造体1によれば、固体酸20の凝集による機能の低下を抑制でき、触媒構造体1としての長寿命化を図ることができる。また、触媒構造体1の長寿命化により、触媒構造体1の交換頻度を低減でき、使用済みの触媒構造体1の廃棄量を大幅に低減することができ、省資源化を図ることができる。
【0022】
通常、触媒構造体を、流体(例えば、重質油や、NO等の改質ガスなど)の中で用いる場合、流体から外力を受ける可能性がある。この場合、固体酸が、担体10の外表面に付着されているだけであると、流体からの外力の影響で担体10の外表面から離脱しやすいという問題がある。これに対し、触媒構造体1では、固体酸20は担体10の少なくとも通路11に保持されているため、流体による外力の影響を受けたとしても、担体10から固体酸20が離脱しにくい。すなわち、触媒構造体1が流体内にある場合、流体は担体10の孔11aから、通路11内に流入するため、通路11内を流れる流体の速さは、流路抵抗(摩擦力)により、担体10の外表面を流れる流体の速さに比べて、遅くなると考えられる。このような流路抵抗の影響により、通路11内に保持された固体酸20が流体から受ける圧力は、担体10の外部において固体酸が流体から受ける圧力に比べて低くなる。そのため、担体11に内在する固体酸20が離脱することを効果的に抑制でき、固体酸20の機能を長期的に安定して維持することが可能となる。なお、上記のような流路抵抗は、担体10の通路11が、曲がりや分岐を複数有し、担体10の内部がより複雑で三次元的な立体構造となっているほど、大きくなると考えられる。
【0023】
また、通路11は、ゼオライト型化合物の骨格構造によって画定される一次元孔、二次元孔及び三次元孔のうちのいずれかと、上記一次元孔、上記二次元孔及び上記三次元孔のうちのいずれとも異なる拡径部12とを有しているのが好ましい。このとき、固体酸20は、少なくとも拡径部12に存在していることが好ましく、少なくとも拡径部12に包接されていることがより好ましい。ここでいう一次元孔とは、一次元チャンネルを形成しているトンネル型またはケージ型の孔、もしくは複数の一次元チャンネルを形成しているトンネル型またはケージ型の複数の孔(複数の一次元チャンネル)を指す。また、二次元孔とは、複数の一次元チャンネルが二次元的に連結された二次元チャンネルを指し、三次元孔とは、複数の一次元チャンネルが三次元的に連結された三次元チャンネルを指す。
これにより、固体酸20の担体10内での移動がさらに規制され、固体酸20の離脱や、固体酸20、20同士の凝集をさらに有効に防止することができる。包接とは、固体酸20が担体10に内包されている状態を指す。このとき固体酸20と担体10とは、必ずしも直接的に互いが接触している必要はなく、固体酸20と担体10との間に他の物質(例えば、界面活性剤等)が介在した状態で、固体酸20が担体10に間接的に保持されていてもよい。
【0024】
図1(b)では固体酸20が拡径部12に包接されている場合を示しているが、この構成だけには限定されず、固体酸20は、その一部が拡径部12の外側にはみ出した状態で通路11に存在していてもよい。また、固体酸20は、拡径部12以外の通路11の部分(例えば通路11の内壁部分)に部分的に埋設され、または固着等によって保持されていてもよい。
また、拡径部12は、上記一次元孔、上記二次元孔及び上記三次元孔のうちのいずれかを構成する複数の孔11a,11a同士を連通しているのが好ましい。これにより、担体10の内部に、一次元孔、二次元孔又は三次元孔とは異なる別途の通路が設けられるので、固体酸20の機能をより発揮させることができる。
【0025】
また、通路11は、担体10の内部に、分岐部または合流部を含んで三次元的に形成されており、拡径部12は、通路11の上記分岐部または合流部に設けられるのが好ましい。
【0026】
担体10に形成された通路11の平均内径Dは、上記一次元孔、二次元孔及び三次元孔のうちのいずれかを構成する孔11aの短径及び長径の平均値から算出され、例えば0.1〜1.5nmであり、好ましくは0.5〜0.8nmである。
また、拡径部12の内径Dは、例えば0.5〜50nmであり、好ましくは1.1〜40nm、より好ましくは1.1〜3.3nmである。拡径部12の内径Dは、例えば後述する前駆体材料(A)の細孔径、及び包接される固体酸20の平均粒径Dに依存する。拡径部12の内径Dは、固体酸20を包接し得る大きさである。
【0027】
担体10は、ゼオライト型化合物で構成される。ゼオライト型化合物としては、例えば、ゼオライト(アルミノケイ酸塩)、陽イオン交換ゼオライト、シリカライト等のケイ酸塩化合物、アルミノホウ酸塩、アルミノヒ酸塩、ゲルマニウム酸塩等のゼオライト類縁化合物、リン酸モリブデン等のリン酸塩系ゼオライト類似物質などが挙げられる。中でも、ゼオライト型化合物はケイ酸塩化合物であることが好ましい。
【0028】
ゼオライト型化合物の骨格構造は、FAU型(Y型またはX型)、MTW型、MFI型(ZSM−5)、FER型(フェリエライト)、LTA型(A型)、MWW型(MCM−22)、MOR型(モルデナイト)、LTL型(L型)、BEA型(ベータ型)などの中から選択され、好ましくはMFI型であり、より好ましくはZSM−5である。ゼオライト型化合物には、各骨格構造に応じた孔径を有する孔が複数形成されており、例えばMFI型の最大孔径は0.636nm(6.36Å)、平均孔径0.560nm(5.60Å)である。
【0029】
以下、固体酸20について詳しく説明する。
固体酸20が微粒子であるとき、微粒子は一次粒子の状態で通路11に保持されている場合と、一次粒子が凝集して形成された二次粒子の状態で通路11に保持されている場合とがある。いずれの場合においても、微粒子の平均粒径Dは、好ましくは通路11の平均内径Dよりも大きく、且つ拡径部12の内径D以下である(D<D≦D)。このような固体酸20は、通路11内では、好適には拡径部12に包接されており、担体10内での固体酸20の移動が規制される。よって、固体酸20が流体から外力を受けた場合であっても、担体10内での固体酸20の移動が抑制され、担体10の通路11に分散配置された拡径部12、12、・・のそれぞれに包接された固体酸20、20、・・同士が接触するのを有効に防止することができる。
【0030】
固体酸20が微粒子である場合には、微粒子の平均粒径Dは、一次粒子および二次粒子のいずれの場合も、好ましくは0.1〜50nmであり、より好ましくは1.0nm以上30nm未満であり、さらに好ましくは0.5nm〜14.0nm、特に好ましくは1.0〜3.3nmである。また、通路11の平均内径Dに対する固体酸20の平均粒径Dの割合(D/D)は、好ましくは0.06〜500であり、より好ましくは0.1〜36であり、更に好ましくは1.1〜36であり、特に好ましくは1.7〜4.5である。
また、固体酸20が微粒子である場合、微粒子の金属元素(M)は、触媒構造体1に対して0.5〜2.5質量%で含有されているのが好ましく、触媒構造体1に対して0.5〜1.5質量%で含有されているのがより好ましい。例えば、金属元素(M)がZnである場合、Zn元素の含有量(質量%)は、{(Zn元素の質量)/(触媒構造体1の全元素の質量)}×100で表される。
【0031】
固体酸20としては、具体的に、金属酸化物及びその水和物、硫化物、金属塩、複合酸化物、並びにヘテロポリ酸が挙げられる。金属酸化物としては、酸化鉄(FeOx)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、三酸化セレン(SeO)、二酸化セレン(SeO)、三酸化テルル(TeO)、二酸化テルル(TeO)、二酸化スズ(SnO)、酸化マンガン(Mn)、酸化テクネチウム(Tc)及び酸化レニウム(Re)が挙げられる。また、硫化物としては、硫化カドミウム(CdS)及び硫化亜鉛(ZnS)が挙げられる。また、金属塩としては、硫酸マグネシウム(MgSO)、硫酸鉄(FeSO)、及び塩化アルミニウム(AlCl)が挙げられる。また、複合酸化物としては、SiO−TiO、SiO−MgO及びTiO―ZrOが挙げられる。さらに、ヘテロポリ酸としては、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸及びケイモリブデン酸が挙げられる。これらの固体酸20は、1種のみを用いてもよく、複数の種類を組み合わせて用いてもよい。なお、固体酸20は、担体10を構成するゼオライト型化合物とは区別されるものである。固体酸20には、例えば、ゼオライトは含まれない。
尚、本明細書において、微粒子を構成する(材質としての)「金属酸化物」は、1種の金属元素(M)を含む酸化物と、2種以上の金属元素(M)を含む複合酸化物とを含む意味であり、1種以上の金属元素(M)を含む酸化物の総称である。
【0032】
また、固体酸20を構成する金属元素(M)に対する、担体10を構成するケイ素(Si)の割合(原子数比Si/M)は、10〜1000であることが好ましく、50〜200であるのがより好ましい。上記割合が1000より大きいと、活性が低く、固体酸としての作用が十分に得られない可能性がある。一方、上記割合が10よりも小さいと、固体酸20の割合が大きくなりすぎて、担体10の強度が低下する傾向がある。なお、ここでいう固体酸20は、担体10の内部に存在し、または担持された固体酸をいい、担体10の外表面に付着した固体酸を含まない。
【0033】
[触媒構造体の機能]
触媒構造体1は、上記のとおり、多孔質構造の担体10と、担体に内在する少なくとも1つの固体酸20とを備える。触媒構造体1は、担体に内在する固体酸20が流体と接触することにより、固体酸20の機能に応じた機能を発揮する。具体的に、触媒構造体1の外表面10aに接触した流体は、外表面10aに形成された孔11aから担体10内部に流入して通路11内に誘導され、通路11内を通って移動し、他の孔11aを通じて触媒構造体1の外部へ出る。流体が通路11内を通って移動する経路において、通路11に保持された固体酸20と接触することによって、固体酸20の機能に応じた反応(触媒反応)が生じる。また、触媒構造体1は、担体が多孔質構造であることにより、分子篩能を有する。触媒構造体1は、例えばFCCで副生されるオレフィン留分に含まれる所定分子を透過する分子篩能を有する。
【0034】
まず、触媒構造体1の分子篩能について、図2(a)を用いて、流体がベンゼン、プロピレン及びメシチレンを含む液体である場合を例として説明する。図2(a)に示すように、孔11aの孔径以下、言い換えれば、通路11の内径以下の大きさを有する分子で構成される化合物(例えば、ベンゼン、プロピレン)は、担体10内に浸入することができる。一方、孔11aの孔径を超える大きさを有する分子で構成される化合物(例えば、メシチレン)は、担体10内へ浸入することができない。このように、流体が複数種類の化合物を含んでいる場合に、担体10内に浸入することができない化合物の反応は規制され、担体10内に浸入することができる化合物を反応させることができる。
【0035】
反応によって担体10内で生成した化合物のうち、孔11aの孔径以下の大きさを有する分子で構成される化合物のみが孔11aを通じて担体10の外部へ出ることができ、反応生成物として得られる。一方、孔11aから担体10の外部へ出ることができない化合物は、担体10の外部へ出ることができる大きさの分子で構成される化合物に変換させれば、担体10の外部へ出すことができる。このように、触媒構造体1を用いることにより、特定の反応生成物を選択的に得ることができる。
【0036】
触媒構造体1では、図2(b)に示すように、好適には通路11の拡径部12に固体酸20が包接されている。固体酸20が微粒子であるとき、固体酸20の平均粒径Dが、通路11の平均内径Dよりも大きく、拡径部12の内径Dよりも小さい場合には(D<D<D)、固体酸20と拡径部12との間に小通路13が形成される。そこで、図2(b)中の矢印に示すように、小通路13に浸入した流体が固体酸20と接触する。各固体酸20は、拡径部12に包接されているため、担体10内での移動が制限されている。これにより、担体10内における固体酸20同士の凝集が防止される。その結果、固体酸20と流体との大きな接触面積を安定して維持することができる。
【0037】
次に、固体酸20が触媒機能を有する場合について説明する。通路11に浸入した分子が固体酸20に接触すると、アルキル化反応によって分子が反応し、アルキレートが製造される。例えば、固体酸20を触媒とし、プロピレン(C)、ブテン(C)などのオレフィン系炭化水素と、イソブタン(CH(CH)などのパラフィン系炭化水素とを原料として、アルキル化反応(アルキレーション)により、高オクタン価のアルキレートであるイソヘプタン(C16)、イソオクタン(C18)などが生成される。このように固体酸触媒を包接した触媒構造体によるアルキル化処理を行うことにより、従来のアルキル化処理で使用される硫酸及びフッ化水素を用いることなくアルキレートを製造することができる。
【0038】
また、触媒構造体1の触媒活性を回復させるために、加熱によって該アルキレート製造用触媒構造体1に付着したコークスを除去する場合、担体10の骨格内の金属元素、例えばゼオライト骨格内のAl元素(活性点)が脱離し難く、また、固体酸20の触媒機能は当該加熱による影響を受け難い。更に、固体酸20が担体10の拡径部12に包接されているため、コークス除去処理の際に熱の影響を受けても、固体酸20が担体10内で移動し難く、金属酸化物同士の凝集(シンタリング)の発生が抑制される。
【0039】
[触媒構造体の製造方法]
図3は、図1の触媒構造体1の製造方法を示すフローチャートである。以下、担体に内在する固体酸が金属酸化物微粒子である場合を例に、触媒構造体の製造方法の一例を説明する。
【0040】
(ステップS1:準備工程)
図3に示すように、先ず、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体を得るための前駆体材料(A)を準備する。前駆体材料(A)は、好ましくは規則性メソ細孔物質であり、触媒構造体の担体を構成するゼオライト型化合物の種類(組成)に応じて適宜選択できる。
【0041】
ここで、触媒構造体の担体を構成するゼオライト型化合物がケイ酸塩化合物である場合には、規則性メソ細孔物質は、細孔径1〜50nmの細孔が1次元、2次元または3次元に均一な大きさかつ規則的に発達したSi−O骨格からなる化合物であることが好ましい。このような規則性メソ細孔物質は、合成条件によって様々な合成物として得られるが、合成物の具体例としては、例えばSBA−1、SBA−15、SBA−16、KIT−6、FSM−16、MCM−41等が挙げられ、中でもMCM−41が好ましい。なお、SBA−1の細孔径は10〜30nm、SBA−15の細孔径は6〜10nm、SBA−16の細孔径は6nm、KIT−6の細孔径は9nm、FSM−16の細孔径は3〜5nm、MCM−41の細孔径は1〜10nmである。また、このような規則性メソ細孔物質としては、例えばメソポーラスシリカ、メソポーラスアルミノシリケート、メソポーラスメタロシリケート等が挙げられる。
【0042】
前駆体材料(A)は、市販品および合成品のいずれであってもよい。前駆体材料(A)を合成する場合には、公知の規則性メソ細孔物質の合成方法により行うことができる。例えば、前駆体材料(A)の構成元素を含有する原料と、前駆体材料(A)の構造を規定するための鋳型剤とを含む混合溶液を調製し、必要に応じてpHを調整して、水熱処理(水熱合成)を行う。その後、水熱処理により得られた沈殿物(生成物)を回収(例えば、ろ別)し、必要に応じて洗浄および乾燥し、さらに焼成することで、粉末状の規則性メソ細孔物質である前駆体材料(A)が得られる。ここで、混合溶液の溶媒としては、例えば水、またはアルコール等の有機溶媒、若しくはこれらの混合溶媒等を用いることができる。また、原料は、担体の種類に応じて選択されるが、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)等のシリカ剤、フュームドシリカ、石英砂等が挙げられる。また、鋳型剤としては、各種界面活性剤、ブロックコポリマー等を用いることができ、規則性メソ細孔物質の合成物の種類に応じて選択することが好ましく、例えばMCM−41を作製する場合にはヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド等の界面活性剤が好適である。水熱処理は、例えば、密閉容器内で、80〜800℃、5時間〜240時間、0〜2000kPaの処理条件で行うことができる。焼成処理は、例えば、空気中で、350〜850℃、2〜30時間の処理条件で行うことができる。
【0043】
(ステップS2:含浸工程)
次に、準備した前駆体材料(A)に、金属含有溶液を含浸させ、前駆体材料(B)を得る。
【0044】
金属含有溶液は、触媒構造体の金属酸化物微粒子を構成する金属元素(M)に対応する金属成分(例えば、金属イオン)を含有する溶液であればよく、例えば、溶媒に、金属元素(M)を含有する金属塩を溶解させることにより調製できる。このような金属塩としては、例えば、塩化物、水酸化物、酸化物、硫酸塩、硝酸塩等の金属塩が挙げられ、中でも硝酸塩が好ましい。溶媒としては、例えば水、またはアルコール等の有機溶媒、若しくはこれらの混合溶媒等を用いることができる。
【0045】
前駆体材料(A)に金属含有溶液を含浸させる方法は、特に限定されないが、例えば、後述する焼成工程の前に、粉末状の前駆体材料(A)を撹拌しながら、金属含有溶液を複数回に分けて少量ずつ添加することが好ましい。また、前駆体材料(A)の細孔内部に金属含有溶液がより浸入し易くなる観点から、前駆体材料(A)に、金属含有溶液を添加する前に予め、添加剤として界面活性剤を添加しておくことが好ましい。このような添加剤は、前駆体材料(A)の外表面を被覆する働きがあり、その後に添加される金属含有溶液が前駆体材料(A)の外表面に付着することを抑制し、金属含有溶液が前駆体材料(A)の細孔内部により浸入し易くなると考えられる。
【0046】
このような添加剤としては、例えばポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、分子サイズが大きく前駆体材料(A)の細孔内部には浸入できないため、細孔の内部に付着することは無く、金属含有溶液が細孔内部に浸入することを妨げないと考えられる。非イオン性界面活性剤の添加方法としては、例えば、後述する焼成工程の前に、非イオン性界面活性剤を、前駆体材料(A)に対して50〜500質量%添加するのが好ましい。非イオン性界面活性剤の前駆体材料(A)に対する添加量が50質量%未満であると上記の抑制作用が発現し難く、非イオン性界面活性剤を前駆体材料(A)に対して500質量%よりも多く添加すると粘度が上がりすぎるので好ましくない。よって、非イオン性界面活性剤の前駆体材料(A)に対する添加量を上記範囲内の値とする。
【0047】
また、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量は、前駆体材料(A)に含浸させる金属含有溶液中に含まれる金属元素(M)の量(すなわち、前駆体材料(B)に内在させる金属元素(M)の量)を考慮して、適宜調整することが好ましい。例えば、後述する焼成工程の前に、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量を、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液中に含まれる金属元素(M)に対する、前駆体材料(A)を構成するケイ素(Si)の比(原子数比Si/M)に換算して、10〜1000となるように調整することが好ましく、50〜200となるように調整することがより好ましい。例えば、前駆体材料(A)に金属含有溶液を添加する前に、添加剤として界面活性剤を前駆体材料(A)に添加した場合、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量を、原子数比Si/Mに換算して50〜200とすることで、金属酸化物微粒子の金属元素(M)を、触媒構造体に対して0.5〜2.5質量%で含有させることができる。前駆体材料(B)の状態で、その細孔内部に存在する金属元素(M)の量は、金属含有溶液の金属濃度や、上記添加剤の有無、その他温度や圧力等の諸条件が同じであれば、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量に概ね比例する。また、前駆体材料(B)に内在する金属元素(M)の量は、触媒構造体の担体に内在する金属酸化物微粒子を構成する金属元素の量と比例関係にある。したがって、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量を上記範囲に制御することにより、前駆体材料(A)の細孔内部に金属含有溶液を十分に含浸させることができ、ひいては、触媒構造体の担体に内在させる金属酸化物微粒子の量を調整することができる。
【0048】
前駆体材料(A)に金属含有溶液を含浸させた後は、必要に応じて、洗浄処理を行ってもよい。洗浄溶液として、水、またはアルコール等の有機溶媒、若しくはこれらの混合溶液を用いることができる。また、前駆体材料(A)に金属含有溶液を含浸させ、必要に応じて洗浄処理を行った後、さらに乾燥処理を施すことが好ましい。乾燥処理としては、一晩程度の自然乾燥や、150℃以下の高温乾燥が挙げられる。なお、前駆体材料(A)に、金属含有溶液に含まれる水分および洗浄溶液の水分が多く残った状態で後述の焼成処理を行うと、前駆体材料(A)の規則性メソ細孔物質としての骨格構造が壊れる恐れがあるので、十分に乾燥させることが好ましい。
【0049】
(ステップS3:焼成工程)
次に、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体を得るための前駆体材料(A)に金属含有溶液が含浸された前駆体材料(B)を焼成して、前駆体材料(C)を得る。
【0050】
焼成処理は、例えば、空気中で、350〜850℃、2〜30時間の処理条件で行うことが好ましい。このような焼成処理により、規則性メソ細孔物質の孔内に含浸された金属成分が結晶成長して、孔内で金属酸化物微粒子が形成される。
【0051】
(ステップS4:水熱処理工程)
次いで、前駆体材料(C)と構造規定剤とを混合した混合溶液を調製し、前記前駆体材料(B)を焼成して得られた前駆体材料(C)を水熱処理して、触媒構造体を得る。
【0052】
構造規定剤は、触媒構造体の担体の骨格構造を規定するための鋳型剤であり、例えば界面活性剤を用いることができる。構造規定剤は、触媒構造体の担体の骨格構造に応じて選択することが好ましく、例えばテトラメチルアンモニウムブロミド(TMABr)、テトラエチルアンモニウムブロミド(TEABr)、テトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)等の界面活性剤が好適である。
【0053】
前駆体材料(C)と構造規定剤との混合は、本水熱処理工程時に行ってもよいし、水熱処理工程の前に行ってもよい。また、上記混合溶液の調製方法は、特に限定されず、前駆体材料(C)と、構造規定剤と、溶媒とを同時に混合してもよいし、溶媒に前駆体材料(C)と構造規定剤とをそれぞれ個々の溶液に分散させた状態にした後に、それぞれの分散溶液を混合してもよい。溶媒としては、例えば水、またはアルコール等の有機溶媒、若しくはこれらの混合溶媒等を用いることができる。また、混合溶液は、水熱処理を行う前に、酸または塩基を用いてpHを調整しておくことが好ましい。
【0054】
水熱処理は、公知の方法で行うことができ、例えば、密閉容器内で、80〜800℃、5時間〜240時間、0〜2000kPaの処理条件で行うことが好ましい。また、水熱処理は、塩基性雰囲気下で行われることが好ましい。ここでの反応メカニズムは必ずしも明らかではないが、前駆体材料(C)を原料として水熱処理を行うことにより、前駆体材料(C)の規則性メソ細孔物質としての骨格構造は次第に崩れるが、前駆体材料(C)の細孔内部での金属酸化物微粒子の位置は概ね維持されたまま、構造規定剤の作用により、触媒構造体の担体としての新たな骨格構造(多孔質構造)が形成される。このようにして得られた触媒構造体は、多孔質構造の担体と、担体に内在する金属酸化物微粒子を備え、さらに担体はその多孔質構造により複数の孔が互いに連通した通路を有し、金属酸化物微粒子はその少なくとも一部分が担体の通路に存在している。
また、本実施形態では、上記水熱処理工程において、前駆体材料(C)と構造規定剤とを混合した混合溶液を調製して、前駆体材料(C)を水熱処理しているが、これに限らず、前駆体材料(C)と構造規定剤とを混合すること無く、前駆体材料(C)を水熱処理してもよい。
【0055】
水熱処理後に得られる沈殿物(触媒構造体)は、回収(例えば、ろ別)後、必要に応じて洗浄処理、乾燥処理および焼成処理を施すことが好ましい。洗浄溶液としては、水、またはアルコール等の有機溶媒、若しくはこれらの混合溶液を用いることができる。乾燥処理としては、一晩程度の自然乾燥、150℃以下の高温乾燥等が挙げられる。なお、沈殿物に水分が多く残った状態で焼成処理を行うと、触媒構造体の担体としての骨格構造が壊れる恐れがあるので、十分に乾燥させることが好ましい。また、焼成処理は、例えば、空気中で、350〜850℃、2〜30時間の処理条件で行うことができる。このような焼成処理により、触媒構造体に付着していた構造規定剤が焼失する。また、触媒構造体は、使用目的に応じて、回収後の沈殿物に対して焼成処理を施すことなくそのまま用いることもできる。例えば、触媒構造体の使用する環境が、酸化性雰囲気の高温環境である場合には、使用環境に一定時間晒すことで、構造規定剤は焼失する。この場合、焼成処理を施した場合と同様の触媒構造体が得られるので、焼成処理を施す必要がない。
【0056】
[触媒構造体1の変形例]
図4は、図1の触媒構造体1の変形例を示す模式図である。
図1の触媒構造体1は、担体10と、担体10に内在する固体酸20とを備えるが、この構成だけに限定されず、例えば、図4に示すように、触媒構造体2が、担体10の外表面10aに保持された少なくとも1つの触媒物質30を更に備えていてもよい。
【0057】
この触媒物質30は、一又は複数の機能を発揮する物質である。触媒物質30が有する機能は、固体酸20が有する機能と同一であってもよいし、異なっていてもよい。触媒物質30が有する機能の具体例は、固体酸20について説明したものと同様である。触媒物質30は触媒機能を有することが好ましく、このとき触媒物質30は、固体酸であるのが好ましい。触媒物質30が固体酸である場合に、触媒物質30は固体酸20と同一の物質であってもよいし、異なる物質であってもよい。特に、触媒物質30が固体酸である場合、触媒構造体1と比較して、触媒構造体2に保持された固体酸の含有量を増大させることができ、固体酸による触媒反応を更に促進させることができる。
【0058】
この場合、担体10に内在する固体酸20の含有量は、担体10の外表面10aに保持された触媒物質30の含有量よりも多いことが好ましい。これにより、担体10の内部に保持された固体酸20による機能が支配的となり、固体酸の機能が安定的に発揮される。
【0059】
上述したように、本実施形態によれば、担体10が、複数の孔11a,11a,・・・が互いに連通するように形成された通路11を有しており、固体酸20が担体10の通路11に存在しているので、多孔骨格構造の分子篩能によって所定の被改質物質を選択的に浸入させることができると共に、固体酸20の触媒機能によって所定の分子をアルキル化して所定化合物を得ることができる。また、固体酸20の担体10内での移動が規制され、固体酸20の脱離を防止することができるので、固体酸20同士の凝集(シンタリング)を防止することができる。また、固体酸20の触媒機能によってアルキレートを製造するため、硫酸及びフッ化水素を用いる必要が無く、環境負荷が小さく、製造時の安全性を高めることができる。
また、コークス除去処理の際に加熱された場合であっても、骨格内のAl元素(活性点)の脱離や固体酸20同士の凝集を抑制することができる。よって、加熱によるコークス除去処理を繰り返し行うことでアルキレート製造用触媒構造体1が本来有する触媒活性を維持することができ、また、コークス除去処理を繰り返し行った後でも触媒活性の低下を抑制することができる。したがって、環境負荷が小さく且つ安全性を向上できると共に、触媒活性の低下を抑制して、効率的なアルキル化処理を実現することができる。
【0060】
また、上記固体酸20の一次平均粒径Dが、通路11の平均内径Dよりも大きく、且つ拡径部12の内径D以下であるので、拡径部12の内部に固体酸20を確実に包接することができ、固体酸20同士の凝集を確実に防止することができる。また、触媒としての有効表面積を広く確保することができるので、固体酸20の触媒機能を最大化することが可能となる。
【0061】
特に、石油の有効利用として高オクタン価のガソリン基材であるアルキレートを製造する際に触媒構造体1を用いることにより、オクタン価の高いガソリンの得率を向上することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態に係るアルキレート製造用触媒構造体について述べたが、本発明は記述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0063】
例えば、上記アルキレート製造用触媒構造体を有するアルキレート製造装置が提供されてもよい。アルキレート製造装置は、例えば、アルキル化反応が行われる反応器と、該反応器にオレフィン系炭化水素を供給するオレフィン系炭化水素供給部と、パラフィン系炭化水素を供給するパラフィン系炭化水素供給部と、上記アルキル化反応によって生成されたアルキレートを排出するアルキレート排出部とを備える。このような構成を有する装置の反応器にアルキレート製造用触媒構造体を用いることができる。
すなわち、上記触媒構造体に、オレフィン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素を供給することでこれらをアルキル化することができ、例えば、触媒構造体をアルキレート製造装置に用いて、オレフィン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素を、上記アルキレート製造装置でアルキル化処理することで、上記同様の効果を奏することができる。
【実施例】
【0064】
(実施例1〜288)
[前駆体材料(A)の合成]
シリカ剤(テトラエトキシシラン(TEOS)、和光純薬工業株式会社製)と、鋳型剤としての界面活性剤とを混合した混合水溶液を作製し、適宜pH調整を行い、密閉容器内で、80〜350℃、100時間、水熱処理を行った。その後、生成した沈殿物をろ別し、水およびエタノールで洗浄し、さらに600℃、24時間、空気中で焼成して、表1〜6に示される種類および孔径の前駆体材料(A)を得た。なお、界面活性剤は、前駆体材料(A)の種類に応じて(「前駆体材料(A)の種類:界面活性剤」)以下のものを用いた。
・MCM−41:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)(和光純薬工業株式会社製)
・SBA−1:Pluronic P123(BASF社製)
【0065】
[前駆体材料(B)および(C)の作製]
次に、表1〜6に示される種類の固体酸微粒子を構成する金属元素(M)に応じて、該金属元素(M)を含有する金属塩を、水に溶解させて、金属含有水溶液を調製した。なお、金属塩は、固体酸微粒子の種類に応じて(「固体酸微粒子:金属塩」)以下のものを用いた。
・ZnOx:硝酸亜鉛六水和物(和光純薬工業株式会社製)
・AlOx:硝酸アルミニウム九水和物(和光純薬工業株式会社製)
・ZrOx:硝酸ジルコニル二水和物(和光純薬工業株式会社製)
【0066】
次に、粉末状の前駆体材料(A)に、金属含有水溶液を複数回に分けて少量ずつ添加し、室温(20℃±10℃)で12時間以上乾燥させて、前駆体材料(B)を得た。
【0067】
なお、表1〜6に示す添加剤の有無の条件が「有り」の場合は、金属含有水溶液を添加する前の前駆体材料(A)に対して、添加剤としてのポリオキシエチレン(15)オレイルエーテル(NIKKOL BO−15V、日光ケミカルズ株式会社製)の水溶液を添加する前処理を行い、その後、上記のように金属含有水溶液を添加した。なお、添加剤の有無の条件が「無し」の場合については、上記のような添加剤による前処理は行っていない。
【0068】
また、前駆体材料(A)に添加する金属含有水溶液の添加量は、該金属含有水溶液中に含まれる金属元素(M)に対する、前駆体材料(A)を構成するケイ素(Si)の比(原子数比Si/M)に換算したときの数値が、表1〜6の値になるように調整した。
【0069】
次に、上記のようにして得られた金属含有水溶液を含浸させた前駆体材料(B)を、600℃、24時間、空気中で焼成して、前駆体材料(C)を得た。
【0070】
[触媒構造体の合成]
上記のようにして得られた前駆体材料(C)と、表1〜6に示す構造規定剤とを混合して混合水溶液を作製し、密閉容器内で、80〜350℃、表1〜6に示すpHおよび時間の条件で、水熱処理を行った。その後、生成した沈殿物をろ別し、水洗し、100℃で12時間以上乾燥させ、さらに600℃、24時間、空気中で焼成して、表1〜6に示す担体と触媒物質としての固体酸微粒子とを有する触媒構造体を得た(実施例1〜288)。
【0071】
(比較例1)
比較例1では、MFI型シリカライトに平均粒径50nm以下の酸化コバルト粉末(II,III)(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製)を混合し、担体としてのシリカライトの外表面に、触媒物質として酸化コバルト微粒子を付着させた触媒構造体を得た。MFI型シリカライトは、金属を添加する工程以外は、実施例52〜57と同様の方法で合成した。
【0072】
(比較例2)
比較例2では、酸化コバルト微粒子を付着させる工程を省略したこと以外は、比較例1と同様の方法にてMFI型シリカライトを合成した。
【0073】
[評価]
実施例1〜288の触媒構造体および比較例1〜2のシリカライトについて、以下に示す条件で、各種特性評価を行った。
【0074】
[A]断面観察
実施例1〜288の触媒構造体および比較例1のシリカライトについて、粉砕法にて観察試料を作製し、透過電子顕微鏡(TEM)(TITAN G2、FEI社製)を用いて、断面観察を行った。
【0075】
その結果、上記実施例の触媒構造体では、シリカライトまたはゼオライトからなる担体の内部に触媒物質が内在し、保持されていることが確認された。一方、比較例1のシリカライトでは、固体酸微粒子が担体の外表面に付着しているのみで、担体の内部には存在していなかった。
また、上記実施例のうち固体酸微粒子がZnOx微粒子である触媒構造体について、FIB(集束イオンビーム)加工により断面を切り出し、SEM(SU8020、日立ハイテクノロジーズ社製)、EDX(X−Max、堀場製作所製)を用いて断面元素分析を行った。その結果、担体内部からZn元素が検出された。
上記TEMとSEM/EDXによる断面観察の結果から、担体内部にZnOx微粒子が存在していることが確認された。
【0076】
[B]担体の通路の平均内径および固体酸微粒子の平均粒径
上記評価[A]で行った断面観察により撮影したTEM画像にて、担体の通路を、任意に500個選択し、それぞれの長径および短径を測定し、その平均値からそれぞれの内径を算出し(N=500)、さらに内径の平均値を求めて、担体の通路の平均内径Dとした。また、固体酸微粒子についても同様に、上記TEM画像から、固体酸微粒子を、任意に500個選択し、それぞれの粒径を測定して(N=500)、その平均値を求めて、固体酸微粒子の平均粒径Dとした。結果を表1〜6に示す。
また、触媒物質の平均粒径及び分散状態を確認するため、SAXS(小角X線散乱)を用いて分析した。SAXSによる測定は、Spring−8のビームラインBL19B2を用いて行った。得られたSAXSデータは、Guinier近似法により球形モデルでフィッティングを行い、粒径を算出した。粒径は、固体酸が酸化鉄微粒子である触媒構造体について測定した。また、比較対象として、市販品である酸化鉄微粒子(Wako社製)をSEMにて観察、測定した。
この結果、市販品では粒径約50nm〜400nmの範囲で様々なサイズの酸化鉄微粒子がランダムに存在しているのに対し、TEM画像から求めた平均粒径が1.2nm〜2.0nmの各実施例の触媒構造体では、SAXSの測定結果においても粒径が10nm以下の散乱ピークが検出された。SAXSの測定結果とSEM/EDXによる断面の測定結果から、担体内部に、粒径10nm以下の触媒物質が、粒径が揃いかつ非常に高い分散状態で存在していることが分かった。
【0077】
[C]金属含有溶液の添加量と担体内部に包接された金属量との関係
原子数比Si/M=50,100,200,1000(M=Zn、Al、Zr)の添加量で、固体酸微粒子を担体内部に包接させた触媒構造体を作製し、その後、上記添加量で作製された触媒構造体の担体内部に包接された金属量(質量%)を測定した。尚、本測定において原子数比Si/M=100,200,1000の触媒構造体は、それぞれ実施例1〜288のうちの原子数比Si/M=100,200,1000の触媒構造体と同様の方法で金属含有溶液の添加量を調整して作製し、原子数比Si/M=50の触媒構造体は、金属含有溶液の添加量を異ならせたこと以外は、原子数比Si/M=100,200,1000の触媒構造体と同様の方法で作製した。
金属量の定量は、ICP(高周波誘導結合プラズマ)単体か、或いはICPとXRF(蛍光X線分析)を組み合わせて行った。XRF(エネルギー分散型蛍光X線分析装置「SEA1200VX」、エスエスアイ・ナノテクノロジー社製)は、真空雰囲気、加速電圧15kV(Crフィルター使用)或いは加速電圧50kV(Pbフィルター使用)の条件で行った。
XRFは、金属の存在量を蛍光強度で算出する方法であり、XRF単体では定量値(質量%換算)を算出できない。そこで、Si/M=100で金属を添加した触媒構造体の金属量は、ICP分析により定量し、Si/M=50および100未満で金属を添加した触媒構造体の金属量は、XRF測定結果とICP測定結果を元に算出した。
この結果、少なくとも原子数比Si/Mが50〜1000の範囲内で、金属含有溶液の添加量の増加に伴って、構造体に包接された金属量が増大していることが確認された。
【0078】
[D]性能評価
上記実施例の触媒構造体および比較例のシリカライトについて、固体酸微粒子(触媒物質)がもつ触媒能(性能)を評価した。結果を表1〜6に示す。
【0079】
(1)触媒活性
触媒活性は、以下の条件で評価した。
【0080】
まず、触媒構造体を、反応器に20g充填し、−70〜93℃、1時間未満で、イソブタンとペンテンのアルキル化反応を行った(特表2005−539106号参照)。
【0081】
反応終了後に、回収した生成ガスおよび生成液の成分を、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)により分析した。なお、生成ガスの分析装置には、TRACE 1310GC(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、検出器:熱伝導度検出器)を用い、生成液の分析装置には、TRACE DSQ(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、検出器:質量検出器、イオン化方法:EI(イオン源温度250℃、MSトランスファーライン温度320℃、検出器:熱伝導度検出器))を用いた。
【0082】
さらに、上記分析結果に基づき、得られた生成液中に含まれるC8又はC9炭化水素の収率(mol%)を求めた。
【0083】
本実施例では、生成液中に含まれるC8又はC9炭化水素の収率が、70wt%以上である場合を触媒活性(分解能)が優れていると判定して「◎」、50wt%以上70wt%未満である場合を触媒活性が良好であると判定して「○」、30wt%以上50wt%未満である場合を触媒活性が良好ではないものの合格レベル(可)でありと判定して「△」、そして30wt%未満である場合を触媒活性が劣る(不可)と判定して「×」とした。
【0084】
(2)耐久性(寿命)
耐久性は、以下の条件で評価した。
まず、評価(1)で使用した触媒構造体を回収し、650℃で、12時間加熱して、加熱後の触媒構造体を作製した。次に、得られた加熱後の触媒構造体を用いて、評価(1)と同様の方法により、イソブタンとペンテンのアルキル化反応を行い、さらに評価(1)と同様の方法で、生成ガスおよび生成液の成分を分析した。
【0085】
得られた分析結果に基づき、評価(1)と同様の方法で、C8又はC9炭化水素の収率(mol%)を求めた。そして、加熱前の触媒構造体による上記化合物の収率(評価(1)で求めた収率)に対して、加熱後の触媒構造体による上記化合物の収率が、どの程度維持されているかを評価した。具体的には、加熱前の触媒構造体による上記化合物の収率(評価(1)で求めた収率)に対する、上記加熱後の触媒構造体による上記化合物の収率(評価(2)で求めた収率)の百分率(%)を算出した。
【0086】
本実施例では、加熱後の触媒構造体による上記化合物の収率(評価(2)で求めた収率)が、加熱前の触媒構造体による上記化合物の収率(評価(1)で求めた収率)と比較して、80%以上維持されている場合を耐久性(耐熱性)が優れていると判定して「◎」、60%以上80%未満維持されている場合を耐久性(耐熱性)が良好であると判定して「○」、40%以上60%未満維持されている場合を耐久性(耐熱性)が良好ではないものの合格レベル(可)であると判定して「△」、そして40%未満に低下している場合を耐久性(耐熱性)が劣る(不可)と判定して「×」とした。
【0087】
なお、比較例1〜2についても、評価(1)および(2)と同様の性能評価を行った。比較例2は、担体そのものであり、固体酸微粒子を有していない。そのため、上記性能評価では、触媒構造体に替えて、比較例2の担体のみを充填した。結果を表6に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
表1〜6から明らかなように、断面観察により担体の内部に固体酸微粒子が保持されていることが確認された触媒構造体(実施例1〜288)は、単に固体酸微粒子が担体の外表面に付着しているだけの触媒構造体(比較例1)または固体酸微粒子を何ら有していない担体そのもの(比較例2)と比較して、イソブタンとペンテンのアルキル化反応において優れた触媒活性を示し、触媒としての耐久性にも優れていることが分かった。
【0095】
一方、担体の外表面にのみ固体酸微粒子を付着させた比較例1のシリカライトは、固体酸微粒子を何ら有していない比較例2の担体そのものと比較して、イソブタンとペンテンのアルキル化反応における触媒活性は改善されるものの、実施例1〜288の触媒構造体に比べて、触媒としての耐久性は劣っていた。
【0096】
また、固体酸微粒子を何ら有していない比較例2の担体そのものは、イソブタンとペンテンのアルキル化反応において触媒活性は殆ど示さず、実施例1〜288の触媒構造体と比較して、触媒活性および耐久性の双方が劣っていた。
【符号の説明】
【0097】
1 触媒構造体
10 担体
10a 外表面
11 通路
11a 孔
12 拡径部
20 固体酸
30 触媒物質
平均粒径
平均内径
内径
図1
図2
図3
図4