【課題】シロキサンガスの発生が抑制されると共に良好な耐ポンプアウト性が確保され、そして、比較的低い挟持圧力下において優れた熱伝導性を発揮し得る、熱伝導シートの提供。
【解決手段】フッ素樹脂と、窒化ホウ素粒子を含有する熱伝導性フィラーと、を含み、0.05MPa加圧下での熱抵抗値が0.90℃/W以下である、熱伝導シート。なお、フッ素樹脂は、常温常圧下で液体のフッ素樹脂を含むことが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の熱伝導シートは、例えば、発熱体に放熱体を取り付ける際に発熱体と放熱体との間に挟み込んで使用することができる。即ち、本発明の熱伝導シートは、放熱部材として、ヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体と共に放熱装置を構成することができる。
そして、本発明の熱伝導シートは、後述する所定の成分および所定の熱抵抗値を有する限りにおいて、任意の方法により製造することができる。
【0017】
(熱伝導シート)
本発明の熱伝導シートは、フッ素樹脂と、窒化ホウ素粒子を含有する熱伝導性フィラーとを含む。ここで、本発明の熱伝導シートは、任意に、窒化ホウ素粒子以外の熱伝導性フィラー(以下、「その他の熱伝導性フィラー」と略記する場合がある。)を含み得る。更に、本発明の熱伝導シートは、任意に、フッ素樹脂以外の樹脂(以下、「その他の樹脂」と略記する場合がある。)や添加剤等のその他の成分を含み得る。また、本発明の熱伝導シートは、0.05MPa加圧下での熱抵抗値が0.90℃/W以下である。
そして、本発明の熱伝導シートは、少なくともフッ素樹脂および窒化ホウ素粒子を含み、0.050MPa加圧下での熱抵抗値が上記所定の値以下と低いので、シロキサンガスの発生が抑制されており、また、例えば、リン酸エステル系難燃剤を大量に使用することにより柔軟性を確保する特許文献1に記載の熱伝導シートに比して、ポンプアウトを生じ難く、且つ、比較的低い挟持圧力下で使用した場合であっても熱伝導性に優れている。従って、本発明の熱伝導シートをヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体と組み合わせて使用した場合には、熱伝導シートが発熱体と放熱体との間に比較的低い挟持圧力にて挟み込まれている場合であっても、当該熱伝導シートを介して発熱体から効果的に熱を放散することができる。また、本発明の熱伝導シートを発熱体および放熱体などの被着体の間に挟み込んで使用した場合に、シロキサンガスの発生による電子部品の性能低下を防ぐことができ、且つ熱伝導シートのポンプアウトで被着体が汚染されることもなく、良好に、長期的に使用することができる。
【0018】
<フッ素樹脂>
フッ素樹脂は、熱伝導シートのマトリックス樹脂を構成し、熱伝導シート中で窒化ホウ素粒子などを結着する結着材としても機能する。フッ素樹脂は、高温下で分解し難く(即ち、耐熱性に優れ)、また十分な柔軟性を有するため、熱伝導シートのマトリックス樹脂として好ましい。なお、フッ素樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ここで、フッ素樹脂は、その常温常圧下における状態により分類することができる。具体的には、フッ素樹脂は、常温常圧下で液体のフッ素樹脂と、常温常圧下で固体のフッ素樹脂に分類することができる。
【0019】
<<常温常圧下で液体のフッ素樹脂>>
フッ素樹脂として、常温常圧下で液体のフッ素樹脂を用いることで、熱伝導シートの柔軟性が高まり、挟み込まれることによる加圧下での熱伝導シートの熱伝導性(特には、比較的低い挟持圧力下での熱伝導性)を更に向上させることができる。
ここで、常温常圧下で液体のフッ素樹脂は、常温常圧下で液体状のフッ素樹脂であれば、特に限定されず、熱可塑性であっても熱硬化性であってもよい。中でも、熱伝導シートの使用時に熱伝導シートと被着体との間の密着性を高めて発熱体から良好に放熱させる観点からは、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂が好ましい。
【0020】
常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロペンテン−テトラフルオロエチレン3元共重合体、パーフルオロプロペンオキサイド重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン−フッ化ビニリデン共重合体が挙げられる。
また、市販されている、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、デュポン株式会社製のバイトン(登録商標)LM、ダイキン工業株式会社製のダイエル(登録商標)G−101(ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、スリーエム株式会社製のダイニオンFC2210、信越化学工業株式会社製のSIFELシリーズが挙げられる。
【0021】
なお、常温常圧下で液体のフッ素樹脂の粘度は、特には限定されないが、混練性、流動性、架橋反応性が良好で、成形性にも優れる観点からは、温度80℃における粘度(粘度係数)が、500P以上20000P以下であることが好ましく、1000P以上10000P以下であることがより好ましい。
なお、本発明において、「粘度(粘度係数)」は、本明細書の実施例に記載の方法に従い、E型粘度計を用いて温度80℃にて測定することができる。
【0022】
因みに、常温常圧下で液体のフッ素樹脂の分子量は、一般に、後述する常温常圧下で固体のフッ素樹脂の分子量に比べて小さい。従って、例えば、熱伝導シート中に常温常圧下で液体のフッ素樹脂と常温常圧下で固体のフッ素樹脂とが含まれる場合は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて得られる異なる二つのピークのうち、低分子量側のピークが常温常圧下で液体のフッ素樹脂を、高分子量側のピークが常温常圧下で固体のフッ素樹脂を指すことが通常である。
【0023】
<<常温常圧下で固体のフッ素樹脂>>
フッ素樹脂として、常温常圧下で固体のフッ素樹脂を用いることで、熱伝導シートの耐ポンプアウト性を更に高めると共に、熱伝導シートの耐絶縁破壊性を確保することができる。
ここで、常温常圧下で固体のフッ素樹脂は、常温常圧下で固体状のフッ素樹脂であれば、特に限定されず、熱可塑性であっても熱硬化性であってもよい。中でも、熱伝導シートの使用時における熱伝導シートの耐ポンプアウト性を更に高めつつ、熱伝導シートと被着体との良好な密着性を確保する観点からは、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂が好ましい。
【0024】
常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデン系フッ素樹脂、テトラフルオロエチレン−プロピレン系フッ素樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル系フッ素樹脂等、フッ素含有モノマーを重合して得られるエラストマーなどが挙げられる。より具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン−クロロフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソール共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレンのアクリル変性物、ポリテトラフルオロエチレンのエステル変性物、ポリテトラフルオロエチレンのエポキシ変性物およびポリテトラフルオロエチレンのシラン変性物などが挙げられる。これらの中でも、加工性の観点から、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が好ましい。
【0025】
また、市販されている、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、ダイキン工業株式会社製のダイエル(登録商標)G−912、G−700シリーズ、ダイエルG−550シリーズ/G−600シリーズ、ダイエルG−310;ALKEMA社製のKYNAR(登録商標)シリーズ、KYNAR FLEX(登録商標)シリーズ;、スリーエム社製のダイニオンFC2211、FPO3600ULV;などが挙げられる。
【0026】
なお、常温常圧下で固体のフッ素樹脂のムーニー粘度(ML
1+4、100℃)は、3.5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以上であることが更に好ましく、120以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、70以下であることが更に好ましく、50以下であることが一層好ましく、30以下であることが特に好ましい。常温常圧下で固体のフッ素樹脂のムーニー粘度が10以上であれば、熱伝導シートの耐ポンプアウト性を更に向上させることができる。一方、常温常圧下で固体のフッ素樹脂のムーニー粘度が120以下であれば、熱伝導シートの柔軟性を高めて、挟み込まれることによる加圧下での熱伝導シートの熱伝導性(特には、比較的低い挟持圧力下での熱伝導性)を更に向上させることができる。
なお、本発明において、「ムーニー粘度(ML
1+4、100℃)」は、本明細書の実施例に記載の方法に従い、JIS K6300に準拠して温度100℃で測定することができる。
【0027】
<<フッ素樹脂中に占める常温常圧下で液体のフッ素樹脂の割合>>
そして、フッ素樹脂中に占める常温常圧下で液体のフッ素樹脂の割合(すなわち、常温常圧下で液体のフッ素樹脂と、常温常圧下で固体のフッ素樹脂の合計量中に占める、常温常圧下で液体のフッ素樹脂の量の割合)は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが特に好ましく、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが更に好ましく、75質量%以下であることが特に好ましい。フッ素樹脂中に占める常温常圧下で液体のフッ素樹脂の割合が10質量%以上であれば、熱伝導シートの柔軟性が高まり、挟み込まれることによる加圧下での熱伝導シートの熱伝導性(特には、比較的低い挟持圧力下での熱伝導性)を更に向上させることができる。一方、フッ素樹脂中に占める常温常圧下で液体のフッ素樹脂の割合が90質量%以下であれば、熱伝導シートの耐絶縁破壊性を高めると共に、耐ポンプアウト性を更に向上させることができる。
【0028】
<熱伝導性フィラー>
熱伝導フィラーは、熱伝導シートの熱伝導性確保に寄与し得る成分である。そして、本発明の熱伝導シートは、熱伝導性フィラーとして、窒化ホウ素粒子を含むことが必要であり、任意に、その他の熱伝導性フィラーを含み得る。
【0029】
<<窒化ホウ素粒子>>
窒化ホウ素粒子は、高い熱伝導性を有するため、挟み込まれることによる加圧下での熱伝導シートの熱伝導性(特には、比較的低い挟持圧力下での熱伝導性)を十分に向上させることができる。
ここで、本発明の熱伝導シートに含まれる窒化ホウ素粒子は、その結晶構造により、例えば、六方晶窒化ホウ素粒子(h−BN)、立方晶窒化ホウ素粒子(c−BN)、ウルツ鉱窒化ホウ素粒子(w−BN)、菱面体晶窒化ホウ素粒子(r−BN)、乱層構造窒化ホウ素粒子(t−BN)に分類することができる。これらの中でも、熱伝導シートに優れた熱伝導性を付与する観点からは、六方晶窒化ホウ素粒子(h−BN)が好ましい。
なお、窒化ホウ素粒子としては、単一の結晶構造のみからなる窒化ホウ素粒子を単独で使用してもよいし、互いに異なる結晶構造を有する2種以上の窒化ホウ素粒子を併用してもよい。換言すると、本発明の熱伝導シートに含まれる窒化ホウ素粒子は、単一の結晶構造で構成されていてもよいし、2種以上の結晶構造で構成されていてもよい。例えば、本発明の熱伝導シートには、窒化ホウ素粒子として、六方晶窒化ホウ素粒子のみが含まれていてもよいし、六方晶窒化ホウ素粒子と立方晶窒化ホウ素粒子が含まれていてもよい。
【0030】
また、熱伝導シート中の窒化ホウ素粒子の形状としては、特に限定されないが、例えば、板状、板状の窒化ホウ素粒子が凝集してなる球塊状、不定形凝集状、粉砕により形成される顆粒状が挙げられ、板状が好ましい。
【0031】
<<その他の熱伝導性フィラー>>
その他の熱伝導性フィラーとしては、熱伝導性を有するフィラーであれば特に限定されない。例えば、アルミナ粒子、酸化亜鉛粒子、窒化アルミニウム粒子、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子、酸化マグネシウム粒子、並びに、粒子状炭素材料および繊維状炭素材料などの炭素材料が挙げられる。ここで、粒子状炭素材料および繊維状炭素材料などの炭素材料としては、例えば特開2017−43655号公報に記載のものが挙げられる。
なお、その他の熱伝導性フィラーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
<<含有割合>>
そして、熱伝導シート中の熱伝導性フィラーの含有割合は、30体積%以上であることが好ましく、35体積%以上であることがより好ましく、45体積%以上であることが更に好ましく、75体積%以下であることが好ましく、65体積%以下であることがより好ましく、55体積%以下であることが更に好ましい。熱伝導性フィラーの含有割合が30体積%以上であれば、挟み込まれることによる加圧下での熱伝導シートの熱伝導性(特には、比較的低い挟持圧力下での熱伝導性)を十分に確保することができる。加えて、熱伝導シートの耐ポンプアウト性を更に向上させることができる。一方、熱伝導性フィラーの含有割合が75体積%以下であれば、熱伝導シートを成形する際の成形性を確保することができる。
【0033】
なお、熱伝導性フィラーとしては、上述したように、粒子状炭素材料および繊維状炭素材料などの炭素材料を使用することもできる。しかしながら、熱伝導シートに電気絶縁性を付与する観点からは、熱伝導シート中の炭素材料の含有割合は、5体積%以下であることが好ましく、3体積%以下であることがより好ましく、1体積%以下であることが更に好ましく、0.1体積%以下であることが特に好ましく、0体積%であることが最も好ましい。
【0034】
<その他の成分>
本発明の熱伝導シートは、上述したフッ素樹脂および熱伝導性フィラーに加え、任意に、その他の樹脂および添加剤などを含んでいてもよい。
【0035】
<<その他の樹脂>>
その他の樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの既知の樹脂を用いることができる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。そして、熱伝導シートの柔軟性を確保すると共に、シロキサンガスなどのアウトガスの発生を十分に抑制する観点からは、フッ素樹脂とその他の樹脂の合計量中に占めるその他の樹脂の割合は、30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以下であること特に好ましく、0質量%であることが最も好ましい。換言すると、フッ素樹脂とその他の樹脂の合計量中に占めるフッ素樹脂の割合は、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、99質量%以上であること特に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0036】
<<添加剤>>
また、熱伝導シートに配合し得る添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、赤リン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤などの難燃剤;吸湿剤;シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸無水物などの接着力向上剤;ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などの濡れ性向上剤;無機イオン交換体などのイオントラップ剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
ここで、特許文献1に記載されているように、熱伝導シートにリン酸エステル系難燃剤を配合すれば、熱伝導シートの柔軟性を容易に高めることができる。そして熱伝導シートの柔軟性が高まれば、挟み込まれることによる加圧下での熱伝導シートの熱抵抗値を低減させることができると考えられる。
しかしながら、熱伝導シートに、リン酸エステル系難燃剤などの液体の添加剤を配合した場合には、当該添加剤を配合するほど、熱伝導シートの耐ポンプアウト性が著しく低下する虞がある。
これに対し、本発明の熱伝導シートは、液体の添加剤、とりわけリン酸エステル系難燃剤を配合しない場合であっても、挟み込まれることによる加圧下での熱伝導シートの熱伝導性(特には、比較的低い挟持圧力下での熱伝導性)を十分に向上させることができる。
【0038】
<熱伝導シートの形成方法>
本発明の熱伝導シートは、特に制限されることなく、例えば、国際公開第2016/185688号に記載の方法に従い、プレ熱伝導シート成形工程、積層体形成工程、スライス工程などを経て形成することができる。
【0039】
<<プレ熱伝導シート成形工程>>
プレ熱伝導シート成形工程では、フッ素樹脂と、窒化ホウ素粒子を含有する熱伝導性フィラーとを含み、任意にその他の成分を含む組成物を加圧してシート状に成形し、プレ熱伝導シートを得る。
【0040】
[組成物]
ここで、組成物は、フッ素樹脂と、窒化ホウ素粒子と、上述した任意成分(その他の熱伝導性フィラー、その他の樹脂、および添加剤など)とを混合して調製することができる。
また、上述した成分の混合は、特に限定されることなく、ニーダー、ロール、ミキサー等の既知の混合装置を用いて行うことができる。また、混合は、有機溶剤等の溶媒の存在下で行ってもよい。そして、混合時間は、例えば5分以上60分以下とすることができる。また、混合温度は、例えば5℃以上150℃以下とすることができる。
【0041】
[組成物の成形]
そして、上述のようにして調製した組成物は、任意に脱泡および解砕した後に、加圧(一次加圧)してシート状に成形することができる。
ここで、組成物は、圧力が負荷される成形方法であれば特に限定されることなく、プレス成形、圧延成形または押出し成形などの既知の成形方法を用いてシート状に成形することができる。中でも、組成物は、圧延成形によりシート状に形成することが好ましく、保護フィルムに挟んだ状態でロール間を通過させてシート状に成形することがより好ましい。なお、保護フィルムとしては、特に限定されることなく、サンドブラスト処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等を用いることができる。また、ロール温度は5℃以上150℃とすることができる。
【0042】
[プレ熱伝導シート]
そして、組成物を加圧してシート状に成形してなるプレ熱伝導シートの厚みは、特に限定されることなく、例えば0.05mm以上2mm以下とすることができる。
【0043】
<<積層体形成工程>>
積層体形成工程では、プレ熱伝導シート成形工程で得られたプレ熱伝導シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、プレ熱伝導シートを折畳または捲回して、積層体を得る。
ここで、積層体形成工程で得られる積層体において、プレ熱伝導シートの表面同士の接着力をより高めて、積層体の層間剥離を十分に抑制する場合には、プレ熱伝導シートの表面を溶剤で若干溶解させた状態で積層体形成工程を行ってもよいし、プレ熱伝導シートの表面に接着剤を塗布した状態またはプレ熱伝導シートの表面に接着層を設けた状態で積層体形成工程を行ってもよいし、プレ熱伝導シートを積層させた積層体を積層方向に更に熱プレス(二次加圧)してもよい。
【0044】
なお、層間剥離を効率的に抑制する観点からは、得られた積層体を積層方向に二次加圧することが好ましい。そして、二次加圧の条件としては、特に限定されず、積層方向への圧力0.05MPa以上0.5MPa以下、温度80℃以上170℃以下で10秒〜30分間とすることができる。
【0045】
<<スライス工程>>
スライス工程では、積層体形成工程で得られた積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、積層体のスライス片よりなる熱伝導シートを得る。ここで、積層体をスライスする方法としては、特に限定されることなく、例えば、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられる。中でも、熱伝導シートの厚みを均一にし易い点で、ナイフ加工法が好ましい。また、積層体をスライスする際の切断具としては、特に限定されることなく、スリットを有する平滑な盤面と、このスリット部より突出した刃部とを有するスライス部材(例えば、鋭利な刃を備えたカンナやスライサー)を用いることができる。
【0046】
なお、熱伝導シートの熱伝導性を高める観点からは、積層体をスライスする角度は、積層方向に対して30°以下であることが好ましく、積層方向に対して15°以下であることがより好ましく、積層方向に対して略0°である(即ち、積層方向に沿う方向である)ことが好ましい。
【0047】
また、積層体を容易にスライスする観点からは、スライスする際の積層体の温度は−20℃以上30℃以下とすることが好ましい。更に、同様の理由により、スライスする積層体は、積層方向とは垂直な方向に圧力を負荷しながらスライスすることが好ましく、積層方向とは垂直な方向に0.1MPa以上0.5MPa以下の圧力を負荷しながらスライスすることがより好ましい。
【0048】
<熱伝導シートの性状>
<<熱抵抗値>>
本発明の熱伝導シートは、0.05MPa加圧下での熱抵抗値が0.90℃/W以下である必要がある。そして、本発明の熱伝導シートの0.05MPa加圧下での熱抵抗値は、0.70℃/W以下であることが好ましく、0.55℃/W以下であることがより好ましく、0.40℃/W以下であることが更に好ましい。0.05MPa加圧下での熱抵抗値が0.90℃/W以下となるように、上述した所定の成分を用いて熱伝導シートを製造すれば、比較的低い挟持圧力での使用に際して、熱伝導シートが確実に優れた熱伝導性を発揮することができる。
また、本発明の熱伝導シートの0.50MPa加圧下での熱抵抗値が0.50℃/W未満であることが好ましく、0.40℃/W以下であることがより好ましく、0.30℃/W以下であることが更に好ましい。0.50MPa加圧下での熱抵抗値が0.50℃/W未満となるように、上述した所定の成分を用いて熱伝導シートを製造すれば、比較的低い挟持圧力での使用に際してのみならず、比較的高い挟持圧力での挟持圧力での使用に際しても、優れた熱伝導性を発揮することができる
なお、熱伝導シートの熱抵抗値は、例えば、フッ素樹脂中に占める常温常圧下で液体のフッ素樹脂の割合、熱伝導性フィラーの含有割合等を適宜調節することにより調製することができる。
【0049】
<<厚み>>
また、本発明の熱伝導シートは、厚みが0.50mm以下であることが好ましく、0.40mm以下であることがより好ましく、0.25mm以下であることが更に好ましく、0.05mm以上とすることができる。厚みが0.50mm以下と薄ければ、例えば、比較的低い挟持圧力で熱伝導シートを被着体間に介在させて使用した場合でも、熱伝導シートが被着体の形状により良好に追従して密着性が高まるため、熱伝導シートの熱伝導性を更に向上させることができる。一方、厚みが0.05mm以上であれば、熱伝導シートが過度に薄膜化されずに熱伝導シートの強度およびハンドリング性を確保できる。
【0050】
<<硬度>>
そして、本発明の熱伝導シートは、25℃でのアスカーC硬度が、40以上であることが好ましく、45以上であることがより好ましく、80以下であることが好ましく、70以下であることがより好ましい。硬度が40以上であれば、熱伝導シートの耐ポンプアウト性を更に高めることができる。一方、熱伝導シートの硬度が80以下であれば、柔軟性が高まるため、挟み込まれることによる加圧下での熱伝導シートの熱伝導性(特には、比較的低い挟持圧力下での熱伝導性)を更に向上させることができる。
なお、本発明において、「アスカーC硬度」は、日本ゴム協会規格(SRIS 0101)のアスカーC法に準拠し、硬度計を用いて測定することができる。
【0051】
<<耐電圧試験値>>
また、本発明の熱伝導シートは、耐電圧試験値が、1.0kV/mm以上であることが好ましく、2.0kV/mm以上であることがより好ましく、3.0kV/mm以上であることが更に好ましい。耐電圧試験値が1.0kV/mm以上であれば、熱伝導シートの絶縁破壊を十分に抑制することができる。
なお、本発明において、「耐電圧試験値」は、本明細書の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、実施例および比較例において、常温常圧下で液体の樹脂の粘度;常温常圧下で固体の樹脂のムーニー粘度;熱伝導シート中の熱伝導性フィラーの含有割合;熱伝導シートの厚み、耐ポンプアウト性、熱抵抗値、耐絶縁破壊性、アスカーC硬度、およびシロキサンガス発生;は、それぞれ以下の方法に従って測定または評価した。
【0053】
<常温常圧下で液体の樹脂の粘度>
常温常圧下で液体の樹脂の粘度(粘度係数:P)は、温度80℃にて、E型粘度計(BROOKFIELD社製、装置名「BROOKFIELD DIGITAL VISCOMETER MODEL DV−II Pro」)を用いて測定した。
【0054】
<常温常圧下で固体の樹脂のムーニー粘度>
常温常圧下で固体の樹脂のムーニー粘度(ML
1+4,100℃)は、ムーニー粘度計(島津製作所製、製品名「MOONEY VISCOMETER SMV−202」)を用いて、JIS−K6300に従って、温度100℃で測定した。一般に、常温常圧下で固体の樹脂のムーニー粘度が低いほど、高い柔軟性を有することを示す。
【0055】
<熱伝導性フィラーの含有割合>
熱伝導シート中の熱伝導性フィラーの含有割合には、体積分率での理論値を用いた。具体的には、熱伝導シート中に含まれている樹脂、熱伝導性フィラー、および添加剤の各成分について、密度(g/cm
3)と配合量(g)とから体積(cm
3)を算出し、熱伝導シート中の熱伝導性フィラーの含有割合を体積分率(体積%)で求めた。
【0056】
<厚み>
熱伝導シートの厚みは、膜厚計(ミツトヨ製、製品名「デジマチックインジケーター ID−C112XBS」)を用いて行った。そして、熱伝導シート表面上の任意の箇所5点について測定した値の平均値(μm)を、熱伝導シートの厚みとした。
【0057】
<耐ポンプアウト性>
熱伝導シートの耐ポンプアウト性は、以下の通り評価した。
即ち、50mm角の銅板および片面が粗面になっている銅箔(粗銅箔)を2枚ずつ準備した。一方の銅板の上に粗銅箔を粗面が上になるように配置し、さらに、粗銅箔の粗面側の略中心部分に、10mm×10mm角のサイズに裁断した熱伝導シートを配置した。続けて、配置された熱伝導シートの上に他方の粗銅箔を粗面が下になるように配置し、さらに、粗銅箔の上から他方の銅板を配置することにより、熱伝導シートが粗銅箔の粗面側、更には銅板で挟まれた、銅板/粗銅箔/熱伝導シート/粗銅箔/銅板からなる積層体を、試験片として得た。次に、得られた試験片の上に500gの重りを乗せ、温度150℃の恒温槽内に置き72時間保管した。このとき、銅板および粗銅箔に挟まれた熱伝導シートにかかる圧力は0.05MPaであった。そして、72時間保管後に、試験片の銅板および粗銅箔を熱伝導シートから剥がし、目視で、2枚の粗銅箔の粗面上に広がった「しみ」の有無を確認した。「しみ」が存在する場合は、当該「しみ」の輪郭の最大径の平均値(mm)を測定した。なお、「しみ」は略同心円状に広がって形成されており、円形又は楕円形に近似することが可能であった。そして、以下の基準に従って評価した。
目視により「しみ」の存在が確認できない場合、熱伝導シートが耐ポンプアウト性に非常に優れることを示す。また、「しみ」の存在が確認できる場合は、当該「しみ」の最大径の平均値が小さいほど、熱伝導シートが耐ポンプアウト性に優れることを示す。以下の熱伝導シートの評価がAA、A又はBならば、耐ポンプアウト性が比較的良好であると言える。
AA:「しみ」の存在が確認できない
A:「しみ」の最大径の平均値が0mm超15mm未満
B:「しみ」の最大径の平均値が15mm以上25mm未満
C:「しみ」の最大径の平均値が25mm以上
【0058】
<熱抵抗値>
熱伝導シートの熱抵抗値は、樹脂材料熱抵抗試験器(株式会社日立テクノロジーアンドサービス製、製品名「C47108」)を用いて測定した。ここで、1cm角の略正方形に切り出した熱伝導シートを試料とし、試料温度50℃において、比較的低圧である0.05MPaを加えた時の熱抵抗値(℃/W)と、試料温度50℃において、比較的高圧である0.50MPaを加えた時の熱抵抗値(℃/W)をそれぞれ測定した。熱抵抗値が小さいほど熱伝導シートが熱伝導性に優れ、例えば、発熱体と放熱体との間に介在させて放熱装置とした際の放熱特性に優れていることを示す。
【0059】
<耐絶縁破壊性>
熱伝導シートの耐絶縁破壊性は、油中試験装置(多摩電測株式会社製、製品名「TJ−20S」)を用いて測定される耐電圧試験値により評価した。具体的には、3cm角の略正方形に切り出した熱伝導シートを試料とし、当該試料を23℃のシリコーン油中に浸漬した。浸漬から1分後に、昇圧速度0.6kV/秒で電圧の印加を開始し、試料に流れる電流(検知電流)が10mAとなった際の電圧(kV)を測定した。得られた電圧(kV)の値を試料である熱伝導シートの厚み(mm)で除することで、耐電圧試験値(kV/mm)を得た。耐電圧試験値が大きいほど、熱伝導シートが耐絶縁破壊性に優れることを示す。
【0060】
<アスカーC硬度>
日本ゴム協会規格(SRIS)のアスカーC法に準拠し、硬度計(高分子計器社製、商品名「ASKER CL−150LJ」を使用して温度23℃で測定した。
具体的には、幅30mm×長さ60mm×厚さ0.5mmの大きさに調製した熱伝導シートの試験片を24枚重ね合わせ、23℃で保たれた恒温室に48時間以上静置したものを試料としてアスカーC硬度を測定した。そして、指針が95〜98となるようにダンパー高さを調整し、試料とダンパーとが衝突してから20秒後の硬度を5回測定して、その平均値を試料のアスカーC硬度とした。
【0061】
<シロキサンガス発生>
熱伝導シートを任意のサイズに切断しシート片を得て、複数のシート片を合計1g測りとり、試料とした。当該試料をヘッドスペースサンプラー(株式会社JEOL製、商品名「EQ−12031HSA」)を用い、170℃で10分間加熱した。加熱により試料から発生したガスを、ガスクロマトグラフ/質量分析計(株式会社JEOL製、商品名「JMS−Q1000GC」)を用いて分析し、シロキサンガス発生の有無を確認した。そして、以下の基準に従って評価した。
A:シロキサンガスの発生が確認されなかった(すなわち、シロキサンガスの発生量が、検出限界以下であった。)
B:シロキサンガスの発生が確認された。
【0062】
(実施例1)
<組成物の調製>
常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG−101」、粘度(粘度係数):3300P)70部と、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン株式会社製、商品名「ダイニオンFC2211」、ムーニー粘度:27ML
1+4、100℃)30部と、熱伝導性フィラーとしての窒化ホウ素粒子(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製、商品名「PT−110」、体積平均粒子径:36μm、六方晶窒化ホウ素粒子)130部とを、加圧ニーダー(日本スピンドル製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合した。次に、得られた混合物を解砕機に投入して、10秒間解砕することにより、組成物を得た。
【0063】
<プレ熱伝導シートの形成>
次いで、得られた組成物50gを、サンドブラスト処理を施した厚み50μmのPETフィルム(保護フィルム)で挟み、ロール間隙550μm、ロール温度50℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度1m/分の条件にて圧延成形(一次加圧)し、厚み0.5mmのプレ熱伝導シートを得た。
【0064】
<積層体の形成>
続いて、得られたプレ熱伝導シートを縦150mm×横150mm×厚み0.5mmに裁断し、プレ熱伝導シートの厚み方向に120枚積層し、更に、温度120℃、圧力0.1MPaで3分間、積層方向にプレス(二次加圧)することにより、高さ約60mmの積層体を得た。
【0065】
<熱伝導シートの形成>
その後、二次加圧された積層体の積層側面を0.3MPaの圧力で押し付けながら、木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、商品名「超仕上げかんな盤スーパーメカS」)を用いて、積層方向に対して0度の角度で(換言すれば、積層されたプレ熱伝導シートの主面の法線方向に)スライスすることにより、縦150mm×横60mm×厚み0.15mmの熱伝導シートを得た。
そして、得られた熱伝導シートについて、上述の方法に従って、厚み、耐ポンプアウト性、熱抵抗値耐絶縁破壊性、およびアスカーC硬度を測定および評価した。結果を表1に示す。
【0066】
(実施例2)
組成物の調製において、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG−101」、粘度(粘度係数):3300P)の量を50部、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン株式会社製、商品名「ダイニオンFC2211」、ムーニー粘度:27ML
1+4、100℃)の量を50部に変更した以外は実施例1と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
(実施例3)
組成物の調製において、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG−101」、粘度(粘度係数):3300P)の量を30部、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン株式会社製、商品名「ダイニオンFC2211」、ムーニー粘度:27ML
1+4、100℃)の量を70部に変更した以外は実施例1と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
(実施例4)
組成物の調製において、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂を使用せず、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG−101」、粘度(粘度係数):3300P)の量を100部に変更した以外は実施例1と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
(実施例5)
組成物の調製において、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂を使用せず、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン株式会社製、商品名「ダイニオンFC2211」、ムーニー粘度:27ML
1+4、100℃)の量を100部に変更した以外は実施例1と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
(実施例6)
熱伝導シートの形成において、シートの厚みが0.30mmとなるように調整して熱伝導シートを製造した変更した以外は実施例1と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
(実施例7)
組成物の調製において、熱伝導性フィラーとしての窒化ホウ素粒子(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製、商品名「PT−110」、体積平均粒子径:36μm、六方晶窒化ホウ素粒子)の量を70部に変更した以外は実施例1と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
(実施例8)
組成物の調製において、熱伝導性フィラーとしての窒化ホウ素粒子(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製、商品名「PT−110」、体積平均粒子径:36μm、六方晶窒化ホウ素粒子)の量を250部に変更した以外は実施例1と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
(比較例1)
以下のようにして調製した組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
<組成物の調製>
アクリル酸エステル共重合樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「HTR−811DR」、アクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、重量平均分子量:42万、ガラス転移温度:−29.4℃)32.4部と、熱伝導性フィラーとしての窒化ホウ素粒子(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製、商品名「PT−110」、体積平均粒子径:36μm、六方晶窒化ホウ素粒子)112.5部と、リン酸エステル系難燃剤(大八化学工業株式会社製、商品名「CR−741」)26.4部とを、温度120℃にて混練することによって、組成物を得た。
【0074】
(比較例2)
組成物の調製において、熱伝導性フィラーとしての窒化ホウ素粒子(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製、商品名「PT−110」、体積平均粒子径:36μm、六方晶窒化ホウ素粒子)の量を50部に変更した以外は実施例1と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
(比較例3)
組成物の調製において、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂および常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂を使用せず、2液硬化型液状シリコーン樹脂(モメンティブ社製、商品名「TSE−3062」、A液及びB液が1:1の質量比率)100部を使用した以外は、実施例1と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
表1より、フッ素樹脂と、窒化ホウ素粒子を含有する熱伝導性フィラーとを含み、0.05MPa加圧下での熱抵抗値が0.90℃/W以下である実施例1〜8の熱伝導シートは、シロキサンガスの発生が抑制されており、また、良好な耐ポンプアウト性と、比較的低い挟持圧力下での高い熱伝導性とを備えていることが分かる。
一方、樹脂としてアクリル酸エステル共重合樹脂のみを使用すると共に、リン酸エステル系難燃剤を使用した比較例1の熱伝導シートは、耐ポンプアウト性に劣ることが分かる。また、0.05MPa加圧下での熱抵抗値が所定の値を超える比較例2の熱伝導シートは、比較的低い挟持圧力下での熱伝導性に劣ることが分かる。そして、樹脂としてシリコーン樹脂のみを試料する比較例3の熱伝導シートは、加熱によりシロキサンガスが発生してしまうことが分かる。