【課題】本発明が解決しようとする課題は、加熱によって膨張可能で、かつ、加熱膨張後にも優れた接着力を有しており、更に、実質的に密閉された空間で前記接着テープを高温下に長期放置しても引火する危険のない接着テープを提供することである。
【解決手段】本発明は、実質的に密閉された空間で使用される接着テープであり、前記接着テープが熱膨張性接着剤層(A)を有し、前記熱膨張性接着剤層(A)が、接着剤組成物(a)及び熱膨張性カプセルを含有し、前記熱膨張性カプセルの含有量が前記接着剤組成物(a)の全固形成分100質量部に対し3〜100質量部である接着テープである。
実質的に密閉された空間で使用される接着テープであり、前記接着テープが熱膨張性接着剤層(A)を有し、前記熱膨張性接着剤層(A)が、接着剤組成物(a)及び熱膨張性カプセルを含有し、前記熱膨張性カプセルの含有量が前記接着剤組成物(a)の全固形成分100質量部に対し3〜100質量部である接着テープ。
被着体(C1)が有する空隙、または、被着体(C1)と被着体(C2)との間の空隙が、請求項1〜6のいずれか1項に記載の接着テープの膨張物を介して接着または充填された物品。
被着体(C1)を構成する部位(c1−1)に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の接着テープの熱膨張性接着剤層(A)を貼付する工程[1]、前記熱膨張性接着剤層(A)を50℃〜120℃の温度で加熱する工程[2]、前記加熱によって前記熱膨張性接着剤層(A)が膨張し、熱膨張性接着剤層(A1)が形成される工程[3]、及び、前記接着テープを構成する熱膨張性接着剤層(A1)または接着剤層(B)が、前記被着体(C1)を構成する他の部位(c1−2)または他の被着体(C2)に貼付される工程[4]を有することを特徴とする、被着体(C1)が有する空隙、または、被着体(C1)と被着体(C2)との間の空隙が請求項1〜6のいずれか1項に記載の接着テープの膨張物を介して接着または充填された物品の製造方法。
前記工程[4]が、前記熱膨張性接着剤層(A)を膨張させることによって生じる力によって、前記熱膨張性接着剤層(A1)または接着剤層(B)と、前記被着体(C1)を構成する他の部位(c1−2)または他の被着体(C2)とが圧着される工程を含む請求項8または9に記載の物品の製造方法。
被着体(C1)を構成する部位(c1−1)に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の接着テープの熱膨張性接着剤層(A)を貼付する工程[1]、前記熱膨張性接着剤層(A)を加熱する工程[2]、前記加熱によって前記熱膨張性接着剤層(A)が膨張し、熱膨張性接着剤層(A1)が形成される工程[3]、及び、前記接着テープを構成する接着剤層(B)が、前記被着体(C1)を構成する他の部位(c1−2)または他の被着体(C2)に貼付される工程[4]を有することを特徴とする、被着体(C1)が有する空隙、または、被着体(C1)と被着体(C2)との間の空隙の充填方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本接着テープは、実質的に密閉された空間で使用される接着テープであり、前記接着テープが熱膨張性接着剤層(A)を有し、前記熱膨張性接着剤層(A)が、接着剤組成物(a)及び熱膨張性カプセルを含有し、前記熱膨張性カプセルの含有量が前記接着剤組成物(a)の全固形成分100質量部に対し3〜100質量部であることを特徴とする接着テープである。
【0012】
本発明の接着テープとしては、単層または2層以上の前記熱膨張性接着剤層(A)によって構成される接着テープ、前記熱膨張性接着剤層(A)とそれ以外の膨張性接着剤層(例えば光膨張性の接着剤層や熱硬化性の膨張性接着剤層)とによって構成される接着テープ、前記熱膨張性接着剤層(A)と膨張しにくい接着剤層(例えば後述する接着剤層(B)等)とによって構成される接着テープ等が挙げられる。
【0013】
なかでも、前記接着テープとしては、前記熱膨張性接着剤層(A)とそれ以外の接着剤層とによって構成される接着テープを使用することが、例えば、被着体(C1)が有する空隙、または、被着体(C1)と被着体(C2)との間の空隙を、前記接着テープの膨張物によって充填しかつ強固に接着するうえで好ましい。
【0014】
前記熱膨張性接着剤層(A)とそれ以外の接着剤層とによって構成される接着テープとしては、具体的には、前記熱膨張性接着剤層(A)の少なくとも一方の面に、後述する接着剤層(B)を有するものを使用することが好ましい。前記接着テープとしては、前記熱膨張性接着剤層(A)を前記膨張前に予め被着体に貼付することが、前記膨張後の前記熱膨張性接着剤層(A1)と前記被着体との優れた密着性を維持するうえで好ましい。
【0015】
前記熱膨張性接着剤層(A)は、例えば加熱によって膨張しうる層である。前記熱膨張性接着剤層(A)としては、熱膨張性接着剤層(A)の厚さ方向の膨張率〔加熱後の前記放置後の熱膨張性接着剤層(A)の厚さ/前記放置前の熱膨張性接着剤層(A)の厚さ〕×100が150%以上となるものを使用する。前記膨張率は、200%以上であることが好ましく、250%〜1000%であることがより好ましい。かかる接着テープであれば、例えば、被着体(C1)が有する空隙、または、被着体(C1)と被着体(C2)との間の空隙の高さ(厚さ)が大きい場合であっても、前記接着テープを膨張させることで、前記空隙内で他方の被着体を好適に固定したり、前記空隙内を前記接着テープで充填したりすることができる。また、前記接着テープであれば、被着体の表面が粗面の場合であっても、前記粗面に他方の被着体を好適に固定することができる。
【0016】
なお、前記膨張率は、前記接着テープを100℃の環境下に30分間放置した場合において、前記放置前(膨張前)の熱膨張性接着剤層(A)の厚さに対する、前記放置によって熱膨張性接着剤層(A)が膨張して形成された熱膨張性接着剤層(A1)の厚さの割合を指す。
【0017】
膨張前の前記熱膨張性接着剤層(A)の厚さは、10μm〜250μmの範囲であることが好ましく、20μm〜200μmの範囲であることがより好ましく、30μm〜150μmの範囲であることが、より一層優れた接着強度を得るうえでさらに好ましい。
【0018】
一方、前記熱膨張性接着剤層(A)が膨張することによって形成された熱膨張性接着剤層(A1)の厚さは、15μm〜2500μmの範囲であることが好ましく、20μm〜1500μmの範囲であることが、より一層優れた接着力を得るうえで好ましい。また、前記熱膨張性接着剤層(A1)は、多孔構造を有するものであることが好ましい。
【0019】
また、前記接着テープとしては、前記接着テープの総厚さに対して、前記熱膨張性接着剤層(A)の厚さが10%以上であるものを使用することが好ましく、30%以上であるものを使用することが、前記空隙内に他方の被着体を好適に固定したり、前記空隙内を前記接着テープで充填したりしやすいためより好ましい。
【0020】
前記熱膨張性接着剤層(A)は、接着剤組成物(a)を含有する。前記熱膨張性接着剤層(A)は、接着剤組成物(a)を、例えば離型ライナーや粘着テープの支持体に塗工し乾燥等することによって製造することができる。
【0021】
前記接着剤組成物(a)としては、公知の接着剤構成用樹脂を用いることができる。前記接着剤構成用樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びそれらの混合物を使用することができ、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂、アクリルニトリル樹脂、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン樹脂等のビニル樹脂等を、単独または2以上組み合わせ使用することができる。
【0022】
前記接着剤組成物(a)に熱可塑性樹脂を使用する場合は、前記接着剤組成物(a)の全固形成分100質量部に対し、熱可塑成分を50質量部以上含むことが好ましく、75質量部以上含んでいることがさらに好ましく、90質量部以上含んでいるものがより好ましい。
【0023】
前記熱可塑性樹脂としては、加熱によって容易に膨張可能なものを使用することができる。前記熱可塑性樹脂としては、1Hz及び23℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G
23が1.0×10
3〜5.0×10
7Paの範囲であるものを使用することが好ましく、かつ、1Hz及び70℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G
70が1.0×10
2〜1.0×10
7Paの範囲であるものを使用することが好ましく、かつ、1Hz及び120℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G
120が1.0×10
2〜1.0×10
6Paの範囲であるものを使用することが、加熱前であっても被着体から前記接着テープの剥がれや位置ズレを防止でき、かつ、前記空隙を十分に充填可能なレベルにまで膨張可能な接着テープを得るうえで特に好ましい。
【0024】
前記熱膨張性接着剤層(A)を膨張させる前の状態の接着テープは、加熱前であっても被着体から前記接着テープの剥がれや位置ズレを防止でき、かつ、膨張後に常温環境下で収縮等を抑制するうえで1Hz及び23℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G
23が好ましくは1.0×10
3〜5.0×10
7Pa、より好ましくは5.0×10
3〜1.0×10
7Pa、特に好ましくは5.0×10
3〜5.0×10
6Paである熱可塑性樹脂を含有するものを使用することができる。
【0025】
また、前記熱可塑性樹脂としては、上記範囲内の1Hz及び23℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G
23を有するとともに、70℃〜120℃の範囲における1Hzでの動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率が1.0×10
2Pa〜1.0×10
7Paの範囲であるものを使用することが、粘着テープの平面方向(流れ方向や幅方向)への膨張を抑制し、その厚さ方向に膨張させるうえで好ましい。
【0026】
前記熱可塑性樹脂としては、1Hz及び70℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G
70が好ましくは1.0×10
2〜1.0×10
7Pa、より好ましくは5.0×10
2〜5.0×10
6Pa、特に好ましくは5.0×10
2〜1.0×10
6Paのものを使用することができる。
【0027】
また、前記熱可塑性樹脂としては、1Hz及び70℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G
70が好ましくは1.0×10
2〜1.0×10
7Pa、より好ましくは5.0×10
2〜5.0×10
6Pa、特に好ましくは5.0×10
2〜1.0×10
6Paのものを使用することができる。
【0028】
また、前記熱可塑性樹脂の1Hz及び120℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G
120は、1.0×10
2〜1.0×10
6Paであることが好ましく、5.0×10
2〜5.0×10
6Paであることがより好ましく、5.0×10
2〜2.0×10
5Paであることがさらに好ましい。
【0029】
前記熱可塑性樹脂の前記貯蔵弾性率G
120は、前記貯蔵弾性率G
70よりも小さいことが好ましく、前記貯蔵弾性率G
70は、前記貯蔵弾性率G
23よりも小さいことが好ましい。
【0030】
なお、前記貯蔵弾性率G
23、G
70及びG
120の測定は、市販の粘弾性試験機を用い、後述する実施例に記載の方法で測定した。前記測定の試験片としては、熱膨張性接着剤層(A)に含有される熱可塑性樹脂(膨張剤を含まない)を離型ライナー上に塗工し乾燥等することによって得られたテープ同士を積層し、厚さ2mmの試験片を作成し使用した。
【0031】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば膨張前に優れた接着力を有し、膨張剤の膨張開始温度で軟化し、膨張剤が膨張し易く、膨張後であっても優れた接着力を発現できるものを使用することが好ましい。
【0032】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)等のウレタン系樹脂;ポリカーボネート(PC);ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂等の塩化ビニル系樹脂;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリトリメチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト、ポリブチレンナフタレ−ト等のポリエステル系樹脂;ナイロン(登録商標)等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン(PS)、イミド変性ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、イミド変性ABS樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合(SAN)樹脂、アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン(AES)樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、シクロオレフィン樹脂等のオレフィン系樹脂;ニトロセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂;シリコーン系樹脂;フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0033】
熱可塑性樹脂としては、これらのなかでも、特にスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマーまたはアクリル系樹脂等を使用することが好ましく、スチレン系熱可塑性エラストマーまたはアクリル系樹脂を使用することが特に好ましい。
【0034】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体(SEB)等のスチレン系AB型ジブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS))、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS))、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)等のスチレン系ABA型トリブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン(SBSB)等のスチレン系ABAB型テトラブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン−スチレン(SBSBS)等のスチレン系ABABA型ペンタブロック共重合体;これら以上のAB繰り返し単位を有するスチレン系マルチブロック共重合体;スチレン−ブタジエンラバー(SBR)等のスチレン系ランダム共重合体のエチレン性二重結合を水素添加した水素添加物;等が挙げられる。スチレン系熱可塑性エラストマーは市販品を用いてもよい。
【0035】
前記アクリル系樹脂としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを含む単量体を重合して得られるものを使用することができる。
【0036】
前記アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素原子数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、具体的には、ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等を使用することが好ましく、ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートを単独または組み合わせ使用することがより好ましい。
【0037】
また、前記単量体としては、前記したもののほかに、アクリルニトリル、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、アクリルアミド、イタコン酸、スチレン、酢酸ビニル等を使用することができる。
【0038】
前記接着剤組成物(a)に熱硬化性樹脂を使用する場合は、前記接着剤組成物(a)の全固形成分100質量部に対し、熱硬化成分を50質量部以上含むことが好ましく、75質量部以上含んでいることがさらに好ましく、90質量部以上含んでいるものがより好ましい。
【0039】
なかでも、前記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂を使用することが、膨張後であっても耐熱性に優れた接着テープを得るうえで好ましい。
【0040】
前記エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ヒンダトイン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン/フェノールエポキシ樹脂、脂環式アミンエポキシ樹脂、脂肪族アミンエポキシ樹脂、及び、CTBN変性(カルボキシターミネーティッドブタジエンニトリル変性)やハロゲン変性されたエポキシ樹脂等を、単独または2以上組み合わせ使用することができる。
【0041】
前記熱膨張性接着剤層(A)は熱膨張性カプセルを含有する。当該熱膨張性カプセルとしては、例えば炭化水素系溶剤をマイクロカプセル化したものを使用することができる。前記熱膨張性カプセルとしては、前記熱可塑性樹脂の軟化点前後の温度で気体を発生し膨張し得るものを使用することが好ましい。前記熱膨張性カプセルの膨張開始温度は、50℃〜150℃が好ましく、60℃〜145℃が好ましく、70℃〜140℃であることが好ましい。
前記熱膨張カプセルの市販品としては、例えばエクスパンセル(日本フィライト株式会社製)、マツモトマイクロスフェアー(松本油脂製薬株式会社製)、マイクロスフェアー(株式会社クレハ製)等が挙げられる。
【0042】
前記熱膨張性カプセルとしては、前記したなかでも炭化水素系溶剤をマイクロカプセル化した熱膨張性カプセルを使用することが、例えば熱等の影響による熱膨張性接着剤層(A)の劣化等を防止するうえでより好ましい。前記した膨張剤性カプセルしては単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0043】
前記熱膨張性カプセルの含有量は、前記熱膨張性接着剤層(A)の全固形成分100質量部に対して、3質量部〜100質量部の範囲であることが好ましく、3質量部〜50質量部の範囲であることがより好ましく、5質量部〜30質量部の範囲であることが被着体が有する空隙を充填等するのに十分に膨張することができ、かつ、密閉された空間で前記接着テープを熱膨張性カプセルの膨張開始温度以上の環境下に長期放置し、引火性ガスが滞留した場合に発火原があっても引火しないためさらに好ましい。
【0044】
前記接着剤組成物(a)としては、加熱膨張前に優れた接着力を有することから、熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0045】
前記接着剤組成物(a)としては、前記したもののほかに必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤等を含有するものを使用することができる。
【0046】
前記接着剤組成物(a)としては、前記したもののほかに必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤等を含有するものを使用することができる。
【0047】
前記硬化剤としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ビフェニルフェノール樹脂等の種々の多価フェノール樹脂、種々のフェノールと、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒドとの縮合反応で得られる多価フェノール樹脂、および重質油またはピッチ、フェノールおよびホルムアルデヒド化合物を重縮合させて得られた変性フェノール樹脂等の各種のフェノール樹脂、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、メチルナジック酸等の酸無水物、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド等のアミン等を使用することができる。
【0048】
前記硬化促進剤としては、例えば2−メチルイミダゾール、2−メチル−4−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン等の3級アミン;トリブチルポスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン等を、単独または2以上組み合わせ使用することができる。
【0049】
また、本発明の接着テープとしては、前記したとおり、接着剤層(B)を有するものを使用することが好ましい。
【0050】
前記接着テープを構成する接着剤層(B)としては、粘着性または接着性を有する層を形成可能な接着剤組成物(b)を用いて形成することができる。
【0051】
前記接着剤層(B)としては、前記接着剤層(B)の厚さ方向の膨張率〔加熱後の前記放置後の接着剤層(B)の厚さ/前記放置前の接着剤層(B)の厚さ〕×100が120%以下であるものを使用することができる。前記接着剤層(B)の膨張率は、115%以下であることが好ましく、110%以下であることがより好ましい。かかる接着テープであれば、前記熱膨張性接着剤層(A)が膨張した後であっても、被着体に対する優れた接着力を維持することができる。なお、前記接着剤層(B)の膨張率は、前記接着テープを100℃の環境下に30分間放置した場合において、前記放置前の前記接着剤層(B)の厚さに対する、前記放置後の接着剤層の厚さの割合を指す。
【0052】
前記接着剤層(B)の厚さは、1μm〜150μmの範囲であることが好ましく、5μm〜100μmの範囲であることが、前記接着テープを構成する熱膨張性接着剤層(A)が膨張し、被着体(C1)が有する空隙、または、被着体(C1)と被着体(C2)との間の空隙を充填し、前記接着剤層(B)が被着体(C2)に貼付された際に優れた接着力を発現できるためより好ましい。
【0053】
前記接着剤層(B)は、前記したとおり膨張率の低いことが好ましいため、前記熱膨張性接着剤層(A)を形成する際に使用可能なものとして例示した膨張剤を実質的に含有しないものであることが好ましい。
【0054】
前記接着剤(B)としては、例えば熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の樹脂を含有し、前記膨張剤の含有量が少ないまたは含有しない接着剤組成物(b)を好適に使用することができる。
【0055】
前記接着剤組成物(b)に使用可能な樹脂としては、従来知られる樹脂を選択し使用することができる。なかでも、前記樹脂としては、本発明の接着テープの生産効率を向上させるうえで、例えば前記熱膨張性接着剤層(A)の形成に使用可能な接着剤組成物(a)として例示したものと、同様のものを使用することが好ましい。
【0056】
前記接着剤組成物(b)としては、前記接着剤塑性物(b)に加え、必要に応じて粘着付与樹脂、架橋剤、その他の添加剤等を含有するものを使用することができる。
【0057】
前記粘着付与樹脂としては、接着剤層(B)の強接着性を調整することを目的として、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、安定化ロジンエステル系粘着付与樹脂、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂、石油樹脂系粘着付与樹脂等を使用することができる。
【0058】
前記架橋剤としては、接着剤層(B)の凝集力を向上させることを目的として、公知のイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、多価金属塩系架橋剤、金属キレート系架橋剤、ケト・ヒドラジド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、シラン系架橋剤、グリシジル(アルコキシ)エポキシシラン系架橋剤等を使用することができる。
【0059】
前記添加剤としては、必要に応じて本発明の所望の効果を阻害しない範囲で、pHを調整するための塩基(アンモニア水など)や酸、発泡剤、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、ガラスやプラスチック製の繊維状、バルーン状、ビーズ状、金属粉末状の充填剤、顔料、染料等の着色剤、pH調整剤、皮膜形成補助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤等の公知のものを使用することができる。
【0060】
前記接着剤組成物(b)としては、良好な塗工作業性等を維持するうえで溶媒を含有するものを使用することができる。前記溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン等を使用することができる。また、前記接着剤組成物(b)として水系接着剤組成物を使用する場合には、前記溶媒として水、または、水を主体とする水性溶媒を使用できる。
【0061】
本発明の接着テープは、被着体(C1)が有する空隙、または、被着体(C1)と被着体(C2)との間の空間を充填する用途で使用することができる。また、被着体(C1)及び被着体(C2)の表面に凹凸があった場合、前記接着テープを被着体(C1)上に設置し、前記接着テープを加熱して膨張させ、前記被着体(C1)及び被着体(C2)の表面の凹凸によって生じていた隙間を埋めて接着する用途に使用することができる。
【0062】
また、本発明の接着テープは、前記熱膨張性接着剤層(A)を膨張させることで生じる力によって、前記膨張した接着剤層(A1)または前記接着剤層(B)と、前記被着体(C1)及び被着体(C2)とが圧着されるため、例えば、直接加圧できない物品の内部や、直接の加圧によって破壊されたり、変形したりするような脆い部材の固定に使用することができる。
【0063】
本発明の接着テープは、例えば前記接着剤組成物(a)を離型ライナーに塗布し乾燥することによって熱膨張性接着剤層(A)を形成する工程[I]を経ることによって製造することができる。
【0064】
本発明の接着テープのうち、前記熱膨張性接着剤層(A)と前記接着剤層(B)とによって構成される接着テープは、前記工程[I]と、前記工程[I]とは別に、前記接着剤組成物(b)を離型ライナーに塗布し乾燥等することによって接着剤層(B)を形成する工程[II]と、前記熱膨張性接着剤層(A)の片面に前記接着剤層(B)を転写し、それらを圧着等する工程[III]とを経ることによって製造することができる。
【0065】
なお、前記熱膨張性接着剤層(A)は、前記接着テープを製造する過程で、実質的に膨張しないことが好ましい。
【0066】
また、本発明の接着テープとしては、必要に応じ、前記熱膨張性接着剤層(A)と接着剤層(B)との間に不織布層または樹脂フィルム層または金属からなる層(Z)を有するものを使用することができる。かかる接着テープは、良好な剛性を有するため、貼付作業性に優れる。
【0067】
前記層(Z)としては、例えば不織布であれば、材質としては好ましくはパルプ、レーヨン、マニラ麻、アクリロニトリル、ナイロン、ポリエステル等からなり、不織布の引張り強度を満足するために、必要に応じて抄紙工程でポリアミドを添加し、乾燥後にコーティングする1工程含浸処理や、ビスコースや、熱可塑性樹脂をバインダーとした2工程含浸処理等をしてもよい。樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルム等を用いて形成される樹脂フィルム層、金属からなる層としては、アルミニウム、銅等の金属層が挙げられる。
【0068】
前記層(Z)としては、1μm〜200μmの厚さを有するものを使用することが好ましい。
【0069】
前記層(Z)を有する接着テープは、例えば前記接着剤組成物(a)を離型ライナーに塗布し乾燥することによって熱膨張性接着剤層(A)を形成する工程[I]、前記工程[I]とは別に、前記接着剤組成物(b)を離型ライナーに塗布し乾燥等することによって接着剤層(B)を形成する工程[II]、前記熱膨張性接着剤層(A)の片面に、前記層(Z)を積層する工程[IV]、及び、前記層(Z)からなる面に、前記接着剤層(B)を転写しそれらを圧着する工程[V]を経ることによって製造することができる。
【0070】
上記方法等で得られた本発明の接着テープは、加熱により膨張でき、かつ、優れた接着力を有するため、もっぱら被着体(C1)が有する空隙、または、被着体(C1)と被着体(C2)との間の空隙が、本発明の接着テープの膨張物によって充填または接着された物品の製造場面で好適に使用することができる。
【0071】
前記物品の製造方法としては、例えば被着体(C1)を構成する部位(c1−1)に、前記接着テープの熱膨張性接着剤層(A)を貼付する工程[1]、前記熱膨張性接着剤層(A)を加熱する工程[2]、前記加熱によって前記熱膨張性接着剤層(A)が膨張し、熱膨張性接着剤層(A1)が形成される工程[3]、及び、前記接着テープを構成する熱膨張性接着剤層(A1)または接着剤層(B)が、前記被着体(C1)を構成する他の部位(c1−2)または他の被着体(C2)に貼付される工程[4]を有する物品の製造方法が挙げられる。
【0072】
前記工程[1]では、被着体(C1)を構成する部位(c1−1)に接着テープの熱膨張性接着剤層(A)を、0.1N/cm2以上の力で圧着させることが、前記接着テープの被着体(C1)を構成する部位(c1−1)への接着力が高まり、加熱前であっても接着テープと被着体(C1)とのズレを抑制できるため好ましい。
【0073】
前記被着体(C1)を構成する部位(c1−1)に前記接着テープの前記熱膨張性接着剤層(A)を圧着させる際には、必要に応じてプレス機、ローラー等の機器を使用してもよく、指でそれらを押圧してもよい。
【0074】
前記工程[2]における加熱温度は、例えば前記膨張剤が膨張する温度(膨張開始温度)に対応した温度であることが好ましく、具体的には、50〜150℃であることが好ましく、60〜145℃がより好ましく、70〜140℃であることが保管時の安定性に優れ、かつ、耐熱性の低い被着体を損傷させずに前記接着テープを十分に膨張させられ、膨張後に優れた接着力を得られるため好ましい。
【0075】
前記加熱方法としては、例えば物品をオーブンや加熱炉等の加温装置に投入し、物品全体を加熱する方法や、前記熱膨張性接着剤層(A)または前記接着テープまたは前記被着体に熱源を接触または接近させることによって、前記熱膨張性接着剤層(A)を加熱する方法が挙げられる。
【0076】
前記熱源としては、例えばハロゲンランプ、レーザー照射装置、電磁誘導加熱装置、ホットスタンプ、ホットプレート、半田コテ等を使用することができる。加熱方法は、物品の大きさによって選択することができる。
【0077】
本発明の接着テープは、前記加熱後、その厚さ方向に膨張することが好ましく、その流れ方向または幅方向に実質的に膨張しないことが好ましい。
【0078】
前記工程[2]によって前記熱膨張性接着剤層(A)は膨張し熱膨張接性着剤層(A1)を形成する(工程[3])。熱膨張性接着剤層(A1)は、前記膨張によって、おもに接着テープの厚さ方向に膨張する。
【0079】
前記工程[4]では、前記熱膨張性接着剤層(A)を膨張させることによって生じる力によって、前記接着剤層(A1)または前記接着剤層(B)と、前記被着体(C1)を構成する他の部位(c1−2)または他の被着体(C2)とが圧着される。そのため、被着体(C1)が有する空隙、または、被着体(C1)と被着体(C2)との間の空隙を充填する際に、例えばプレス機等を用いて圧力を加える必要がない。また、前記膨張によって生じる力で、接着テープと被着体とが密着されるため、被着体として表面に凹凸を有するもの(粗面を有するもの)を使用した場合であっても、接着テープと被着体との間に隙間が形成されにくい。
【0080】
前記被着体(C1)及び(C2)としては、例えばガラス、アルミニウム等の金属、アクリル、ポリカーボネート等の樹脂からなるプラスチック等が挙げられる。前記被着体(C1)及び(C2)としては、同一の材質や形状からなるものを使用してもよく、異なる材質や形状のものを使用してもよい。
【0081】
前記被着体(C1)及び(C2)としては、前記熱膨張性接着剤層(A)や前記接着剤層(B)が接触する表面が粗面であってもよい。
【0082】
前記被着体(C1)および前記被着体(C2)の形状としては特に規定されないが、例えば2次元形状、3次元形状(曲面等)、表面凹凸を有する形状、嵌合する形状等を挙げられる。上記形状の組み合わせでも良い。
【0083】
本発明の接着テープは、前記熱膨張性接着剤層(A)または前記接着テープ全体に熱を与えることによって膨張させることができる。
【0084】
前記物品の製造方法としては、前記工程[1]、工程[2]及び工程[3]の順で行うことが、加熱前において優れた接着力を有し、加熱によって膨張可能で、かつ、加熱膨張後にも優れた接着力を発現するうえで好ましい。とりわけ、被着体(C1)または(C2)の表面が粗面である場合には、良好な接着力を発現するうえで効果的である。
【0085】
例えば、はじめに工程[2]を経ることによって予め加熱膨張させた接着テープを用い、表面凹凸のある被着体に貼付等しようとした場合であっても、それらの界面に微細な隙間が形成される可能性を低減することができる。
【0086】
本発明の接着テープは実質的に密閉された空間で使用されるものであるが、実質的に密閉された空間とは空間内外において気圧がつりあった状態において、当該空間内外で空気の交換が実質的に起こらないように隙間無く閉じられたものを指す。従って、当該空間の内部又は外部の気圧を上げることで空気の流入があった場合であっても、空間内外において気圧がつりあった状態において当該空間内外で空気の交換が実質的に起こらなければ、実質的に密閉された空間に該当する。従って、例えば、エアリークテスト(空気をワーク内(被検物内)に入れてワーク内の圧力を上昇させ、ワーク内外に気圧差を生じさせ、空気の漏れを検出するテスト。ワークに穴等があり漏れが生ずる場合は、ワーク内の圧力が下降するため、ワーク内にかかる圧力の変化を監視することにより漏れを検出する。)において空気の漏れの検出があったことをもって、実質的に密閉された空間ではない、とは言わない。
【0087】
前記実質的に密閉された空間で前記接着テープを使用する際は、前記接着テープの貼付面積(cm
2)を密閉された空間の容積(cm
3)で除した値が0.001〜50cm
−1であることが好ましく、0.001〜40cm
−1であることがより好ましく、0.002〜15cm
−1であることが更に好ましく、0.005〜15cm
−1であることが、接着テープで部材を固定するのに十分な面積を確保できることから十分な接着性を維持しつつ、接着テープを高温下に長期放置し、引火性ガスが滞留した場合であっても引火しないためより好ましい。
【0088】
前記物品としては、例えば自動車の可動部に搭載される小型モーターが挙げられる。前記モーターは、通常、外装部材(筒状部材)とその蓋状部材とによって構成される。前記モーターとしては、具体的には、金属製の筒状部材と、前記筒状部材に対応した形状である樹脂製の蓋状部材とが、嵌合した状態で密閉固定されたものが挙げられる。本発明の接着テープは、前記筒状部材と前記蓋状部材との間に形成される場合がある空隙を充填することができる。モーターは円筒内部のコイルの回転により静電スパークが発生することが懸念されるが、前記範囲で前記接着テープを使用する場合、引火することなく使用することができる。用途としてはモーターに限られない。
【実施例】
【0089】
(調製例1)
<接着剤組成物(a−1)の調製>
重量平均分子量30万のスチレン−ブタジエンブロック共重合体(トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物。前記混合物の全量に対する前記ジブロック共重合体の占める割合は50質量%。前記スチレン−ブタジエンブロック共重合体の全体に占めるポリスチレン単位の質量割合は30質量%、ポリブタジエン単位の質量割合は70質量%)を100質量部、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(軟化点115℃、分子量1000)65質量部を混合したものを、トルエンに溶解することによって接着剤組成物(a−1)を得た。
【0090】
(調製例2)
<接着剤組成物(a−2)の調製>
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、ブチルアクリレート44.9質量部、2−エチルヘキシルアクリレート50質量部、アクリル酸2質量部、酢酸ビニル3質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.1質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.1質量部とを酢酸エチル100質量部に溶解し、70℃で10時間重合することによって、重量平均分子量80万のアクリル系共重合体W溶液を得た。
【0091】
次に、アクリル系共重合体W100質量部に対して、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂D−135(荒川化学工業株式会社製)30質量部を添加し、酢酸エチルを加えて混合することによって、不揮発分45質量の接着剤組成物(a−2)を得た。
【0092】
(調製例3)
<接着剤塑性物(a−3)の調製>
エピクロンN−680(DIC株式会社製のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂溶液、エポキシ当量215g/eq、不揮発分75質量%)21.4質量部と、「YL−7862」(三菱化学株式会社製のエポキシ樹脂、エポキシ当量3748g/eq、不揮発分50質量%)48質量部とを混合した後、メチルエチルケトン30.6質量部を混合することによって不揮発分40質量%のエポキシ樹脂組成物Yを得た。
【0093】
<接着テープの作製>
(実施例1)
上質紙の両面にポリエチレン層を有し、ポリエチレン層の片面にシリコーン系離型処理剤層を有する厚さ130μmの離型紙の表面に、接着剤組成物(a−1)100質量部に対し膨張剤としてF−36D(松本油脂製薬株式会社製、熱膨張性マイクロカプセル、初期粒子径10〜16μm、膨張開始温度70〜80℃)を5質量部混合し10分間攪拌したものを、棒状の金属アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが60μmになるように塗工し、65℃に設定した乾燥機で10分間乾燥することによって熱膨張性接着剤層(A−1)を作製した。前記熱膨張性接着剤層(A−1)を、上記とは別の離型紙に積層し、2kgのハンドローラーを用い、前記貼付物の上面を一往復させることによって、前記熱膨張性接着剤層(A−1)からなる接着テープを得た。
【0094】
(実施例2)
接着剤組成物(a−1)100質量部に対し膨張剤を20質量部混合したこと以外は実施例1と同様の方法で、熱膨張性接着剤層(A−2)からなる接着テープを得た。
【0095】
(実施例3)
接着剤組成物(a−1)100質量部に対し膨張剤を50質量部混合したこと以外は実施例1と同様の方法で、熱膨張性接着剤層(A−3)からなる接着テープを得た。
【0096】
(実施例4)
接着剤組成物(a−1)100質量部に対し膨張剤を100質量部混合したこと以外は実施例1と同様の方法で、熱膨張性接着剤層(A−4)からなる接着テープを得た。
【0097】
(実施例5)
接着剤組成物(a−1)の代わりに接着剤組成物(a−2)を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で、熱膨張性接着剤層(A−5)からなる接着テープを得た。
【0098】
(実施例6)
接着剤組成物(a−1)の代わりに接着剤組成物(a−3)を使用し、前記接着剤組成物(a−2)100質量部に対し膨張剤としてエクスパンセル051−40(日本フィライト株式会社製、熱膨張性マイクロカプセル、初期粒子径12μm、膨張開始温度110℃)を5質量部混合したこと以外は実施例1と同様の方法で、熱膨張性接着剤層(A−6)からなる接着テープを得た。
【0099】
(比較例1)
接着剤組成物(a−1)100質量部に対し膨張剤を200質量部混合したこと以外は実施例1と同様の方法で、熱膨張性接着剤層(A−7)からなる接着テープを得た。
【0100】
(比較例2)
接着剤組成物(a−1)100質量部に対し膨張剤を1質量部混合したこと以外は実施例1と同様の方法で、熱膨張性接着剤層(A−8)からなる接着テープを得た。
【0101】
[せん断接着力の測定方法]
幅15mm×長さ70mm×厚さ0.5mmの2枚の表面平滑なアルミニウム板を脱脂処理し、一方のアルミニウム板(C1)(
図1中の1)の上面(C1−1)の端部に、2本のスペーサー(
図1の3)を、12mmの間をあけて平行に並べ、接着テープ(50μm)を用いて接着した。前記スペーサーは、スペーサーと接着に用いた接着テープの総厚が、実施例1〜6及び比較例1、2で作成した各接着テープの総厚に対して60μm厚くなるように調製したものを使用した。
【0102】
次に、前記アルミニウム板(C1)の上面(C1−1)側で、かつ、前記2本のスペーサーの間に、10mm×10mmの大きさに裁断した接着テープを貼付し、2kgのハンドローラーを用いて圧着した。
次に、前記接着テープの上面に、脱脂処理した平滑な表面を有する他のアルミニウム板(C2)(幅15mm×長さ70mm×厚み0.5mm)を載置し、これらをクリップで固定した。
【0103】
上記固定したものを、100℃で30分間加熱した後、23℃環境下に30分間放置し冷却した後、クリップを外したものを試験片とした。
【0104】
前記試験片を前記2枚のアルミニウム板の端部をそれぞれチャッキングし、引張試験機を用いて180度方向に引張速度10mm/分で引張試験することによって、前記接着テープの接着力を求めた。
【0105】
[引火性の評価方法]
容積10cm3のガラス容器に実施例1〜8、比較例1,2で作成した接着テープを6cm2入れ、ガラス容器に蓋をして密閉し150℃で1時間加熱した後、25℃になるまで放冷した。その後、ガラス容器の蓋に穴を開け、ガラス容器内部で静電気スパーク発生させた。この際、引火が見られなかったものを「〇」、引火がみられたものを「×」と評価した。
【0106】
【表1】
【0107】
上記結果によると、本願発明の実施例1〜6では、良好なせん断接着力を示しつつ、引火性評価においても引火がみられなかった。一方、比較例1ではせん断接着力が劣り、比較例2では引火性評価において引火がみられる結果となった。