(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-31889(P2018-31889A)
(43)【公開日】2018年3月1日
(54)【発明の名称】光変調器、及び光送信装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/01 20060101AFI20180202BHJP
G02F 1/035 20060101ALI20180202BHJP
【FI】
G02F1/01 F
G02F1/035
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-163980(P2016-163980)
(22)【出願日】2016年8月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅又 徹
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA22
2K102BA03
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA00
2K102DA04
2K102DB05
2K102DC08
2K102DD05
2K102EA03
2K102EA08
2K102EA09
2K102EA21
2K102EB11
2K102EB16
2K102EB20
2K102EB30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高周波信号入力用のリードピンと光変調素子の電極との間を中継する中継基板を備える光変調器において、リードピンと中継基板との間の電気的接続部から生ずる放射ノイズが変調動作に与える影響を効果的に抑制する。
【解決手段】複数の信号電極112a等を備える光変調素子と、高周波信号を入力するための複数のリードピン116a等と、リードピンのそれぞれと、対応する信号電極のそれぞれとの間の電気的接続を中継する導体パターン202a等が形成された中継基板118と、を備え、中継基板は、リードピンを伝搬した高周波信号の伝搬方向を屈曲させて導体パターンへ導くように配されており、中継基板は、当該中継基板の光変調器側エッジ212における複数の導体パターンの間の間隙の幅が、リードピン側エッジ210における複数の導体パターンの間の間隙の幅より小さく、好適には50%より小さくなるように構成されている。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号電極を備える光変調素子と、
高周波信号を入力するための複数のリードピンと、
前記リードピンと前記信号電極とを電気的に接続する導体パターンが形成された中継基板と
を備える光変調器であって、
当該中継基板の光変調器側エッジにおける前記複数の導体パターンの間の間隙の幅(d)のうち少なくとも一つは、リードピン側エッジにおける前記複数の導体パターンの間の間隙の幅(L)のうち少なくとも一つの幅より小さくなるように構成されている、
光変調器。
【請求項2】
前記中継基板は、当該中継基板の前記光変調器側エッジにおける前記複数の導体パターンの間の間隙の幅dが、前記リードピン側エッジにおける前記複数の導体パターンの間の間隙の幅Lの50%より小さい、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記中継基板は、当該中継基板の前記光変調器側エッジにおける前記導体パターンの配置範囲の中心線が、当該中継基板の前記リードピン側エッジにおける前記導体パターンの配置範囲の中心線と一致するように構成されている、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項4】
前記中継基板は、
当該中継基板の前記リードピン側エッジにおける前記導体パターンの配置範囲に対応する前記光変調器側エッジの範囲内に、当該中継基板の前記光変調器側エッジにおける前記導体パターンの配置範囲が含まれ、且つ、前記光変調器側エッジにおける前記配置範囲の一の端部に対応する前記リードピン側エッジの位置に、前記リードピン側エッジにおける前記配置範囲の一の端部が配されている、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項5】
前記中継基板は、当該中継基板の前記リードピン側エッジにおける前記導体パターンの配置範囲に対応する前記光変調器側エッジの範囲の外に、当該中継基板の前記光変調器側エッジにおける前記導体パターンの配置範囲の一部が設けられている。
請求項1に記載の光変調器。
【請求項6】
前記中継基板は、当該中継基板の前記リードピン側エッジにおける前記導体パターンの配置範囲に対応する前記光変調器側エッジの範囲の外に、当該中継基板の前記光変調器側エッジにおける前記導体パターンの配置範囲の全部が設けられている、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項7】
前記中継基板の前記光変調器側エッジにおける前記複数の導体パターンの配置範囲の幅が、前記リードピン側エッジにおける前記複数の導体パターンの配置範囲の幅の50%以下である、
請求項1に記載の発明。
【請求項8】
前記複数のリードピンは、等間隔又は不等間隔に配されている、
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の光変調器と、
当該光変調器に変調動作を行わせるための電気信号を出力する電子回路と、
を備える、
光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器に関し、特に、筐体に設けられた高周波信号入力用のリードピンと光変調素子の電極との間を中継する中継基板を備える光変調器及び当該光変調器を用いた光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速/大容量光ファイバ通信システムにおいては、導波路型の光変調素子を組み込んだ光変調器が多く用いられている。中でも、電気光学効果を有するLiNbO
3(以下、LNともいう)を基板に用いた光変調素子は、光の損失が少なく且つ広帯域な光変調特性を実現し得ることから、高速/大容量光ファイバ通信システムに広く用いられている。
【0003】
このLN基板を用いた光変調素子では、マッハツェンダ型光導波路と、当該光導波路に変調信号である高周波信号を印加するためのRF電極と、当該導波路における変調特性を良好に保つため種々の調整を行うためのバイアス電極と、が設けられている。そして、光変調素子に設けられたこれらの電極は、当該光変調素子を収容する光変調器の筐体に設けられたリードピンやコネクタを介して、光変調器に変調動作を行わせるための電子回路が搭載された回路基板に接続される。
【0004】
光ファイバ通信システムにおける変調方式は、近年の伝送容量の増大化の流れを受け、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)やDP−QPSK(Dual Polarization - Quadrature Phase Shift Keying)等、多値変調や、多値変調に偏波多重を取り入れた伝送フォーマットが主流となっており、基幹光伝送ネットワークにおいて用いられているが、メトロネットワークにも導入されつつある。
【0005】
QPSK変調を行う光変調器(QPSK光変調器)やDP−QPSK変調を行う光変調器(DP−QPSK光変調器)は、所謂ネスト型と呼ばれる入れ子構造になった複数のマハツェンダ型光導波路を備えるとともに、複数の高周波信号電極及び複数のバイアス電極を備えることから(例えば、特許文献1参照)、光変調器の筐体のサイズが大型化する傾向がある。しかし昨今では、これとは逆に当該変調器に対する小型化の要求が高まっている。
【0006】
この小型化の要求に対応する一つの策として、従来、RF電極のインタフェースとして光変調器の筐体に設けられていたプッシュオン型の同軸コネクタを、バイアス電極用のインタフェースと同様のリードピン、及びこれらのリードピンと電気的に接続されるFPC(フレキシブル配線板(FPC:Flexible Printed Circuits)とに置き換えることで外部の回路基板との電気的接続を可能とした光変調器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
例えば、DP−QPSK光変調器では、それぞれにRF電極を有する4つのマッハツェンダ型光導波路で構成される光変調素子が用いられる。この場合、光変調器の筐体に4つのプッシュオン型同軸コネクタを設けたのでは筐体の大型化は避けられないが、同軸コネクタに代えてリードピンとFPCとを用いれば、小型化が可能となる。
【0008】
また、光変調器の筐体のリードピンと、当該光変調器に変調動作を行わせるための電子回路(駆動回路)が搭載された回路基板と、の間が、上記FPCを介して接続されるので、従来用いていた同軸ケーブルの余長処理を行う必要が無くなり、光送信装置内における光変調器の実装スペースを縮小することができる。
【0009】
このような、筐体に高周波電気信号入力用のリードピンを備える光変調器では、一般に、当該リードピンと筐体内に収容された光変調素子の電極との間が、当該筐体内に配された中継基板を介して接続される(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
図8A、8B、8Cは、そのような従来の光変調器の構成の一例を示す図である。ここで、
図8Aは、回路基板830上に搭載された従来の光変調器800を示す平面図、
図8Bは当該従来の光変調器800の側面図、
図8Cは、当該従来の本光変調器800の底面図である。本光変調器800は、光変調素子802と、光変調素子802を収容する筐体804と、フレキシブル配線板(FPC)806と、光変調素子802に光を入射するための光ファイバ808と、光変調素子802から出力される光を筐体804の外部へ導く光ファイバ810と、を備える。
【0011】
光変調素子802は、例えばLN基板上に設けられた4つのマッハツェンダ型光導波路と、当該マッハツェンダ型光導波路上にそれぞれ設けられて光導波路内を伝搬する光波を変調する4つの高周波電極(RF電極)812a、812b、812c、812dと、を備えたDP―QPSK光変調器である。
【0012】
筐体804は、光変調素子802が固定されるケース814aとカバー814bとで構成されている。なお、筐体804内部における構成の理解を容易するため、
図8Aにおいては、カバー814bの一部のみを図示左方に示している。
【0013】
ケース804aには、4つのリードピン816a、816b、816c、816dが設けられている。これらのリードピン816a、816b、816c、816dは、ガラス封止部900a、900b、900c、900d(後述)で封止されており、筐体804の底面(
図8Cに示す面)から外部に延在し、FPC806上に形成されたスルーホールとハンダ等により接続されている。
【0014】
リードピン816a、816b、816c、816dの一端のそれぞれは、中継基板818を介して光変調素子802のRF電極812a、812b、812c、812dと、それぞれ電気的に接続されている。
【0015】
RF電極812a,812b、812c、812dの他端のそれぞれは、終端器820により電気的に終端されている。
【0016】
図9Aは、
図8Aに示す光変調器800のC部の部分詳細図、
図9Bは、
図8Aに示す光変調器800のDD断面矢視図である。リードピン816a、816b、816c、816dは、ガラス端子であり、ケース814aに設けられたガラス封止部900a、900b、900c、900dを介して、それぞれ筐体804内部から筐体804外部へ延在し、当該筐体804の下面(
図8Cに示す面)から突出してFPC806のスルーホールにハンダ固定されている。
【0017】
リードピン816a、816b、816c、816dは、
図9Aにおける中継基板818の図示下側(
図9Bにおける中継基板818の図示左側)の辺(リードピン側エッジ910)の近傍に配されており、当該中継基板818上に設けられた導体パターン902a、902b、902c、902dに対し、それぞれハンダ904a、904b、904c、904dにより電気的に接続されている。
【0018】
また、導体パターン902a、902b、902c、902dは、
図9Aにおける中継基板818の図示上側(
図9Bにおける中継基板818の図示右側)の辺(変調器側エッジ912)の近傍に配された、光変調素子802の図示下端部(
図9Bにおける光変調素子802の図示左端)部のRF電極812a、812b、812c、812dに対し、それぞれ例えば金ワイヤ906a、906b、906c、906dにより電気的に接続されている。
【0019】
中継基板818上に形成される導体パターン902a、902b、902c、902dは、通常、各リードピン816a、816b、816c、816dから当該各リードピン816a、816b、816c、816dに対応する各RF電極812a、812b、812c、812dまでの高周波信号の伝搬距離を最短にして、信号伝搬損失とスキュー(伝搬遅延時間差)を最小とすべく、互いに平行な直線パターンとして構成されている。したがって、光変調器800は、各リードピン816a、816b、816c、816d間の間隔と各RF電極812a、812b、812c、812d間の間隔とが同じとなるように構成されている。
【0020】
上記構成により、光変調器800では、回路基板830上に形成された導体パターン832a、832b、832c、832dからFPC806を介してリードピン816a、816b、816c、816dに入力された高周波電気信号が、中継基板818を介して変調素子802のRF電極812a、812b、812c、812dへ入力される。
【0021】
しかしながら、上記従来の光変調器の構成では、リードピン816a、816b、816c、816dを伝搬する高周波電気信号は、当該リードピン816a、816b、816c、816dから中継基板818の導体パターン902a、902b、902c、902dへ入力される際に、その伝搬方向が屈曲することとなることから、当該屈曲部分においてその一部が空間伝搬モードとなって放射され易くなる。
【0022】
すなわち、一般に、リードピン816a、816b、816c、816dは、FPC806を介した回路基板830との電気的接続を容易にするため、筐体804の下面に垂直(したがって、ケース814aの下面に垂直)に下方へ向かって延在するように配される。一方、中継基板818は、筐体804内に安定に固定され収容されるように、その表面がケース814aの下面に沿う方向に配される。このため、FPC840を介して回路基板830の導体パターン832a、832b、832c、832dから入力された高周波電気信号は、リードピン816a、816b、816c、816dから中継基板818上の導体パターン902a、902b、902c、902dへ向かってほぼ直角に屈曲するように、その伝搬方向が曲げられることとなり、当該屈曲部分においてそのパワーの一部が空間へ放射され易くなる。
【0023】
そして、当該放射された高周波信号は、中継基板818を挟んで当該屈曲部に対向する位置に配されたRF電極812a、812b、812c、812dに結合し、放射ノイズとして光変調素子802の動作に影響を与え、光変調素子802を用いて変調された光信号の伝送特性に悪影響が及ぶこととなり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2016-109941号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
上記背景より、高周波信号入力用のリードピンと光変調素子の電極との間を中継する中継基板を備える光変調器において、リードピンと中継基板との間の電気的接続部から生ずる放射ノイズが変調動作に与える影響を効果的に抑制することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の一の態様は、複数の信号電極を備える光変調素子と、高周波信号を入力するための複数のリードピンと、前記リードピンと前記信号電極とを電気的に接続する導体パターンが形成された中継基板と、を備える光変調器である。当該光変調器は、前記中継基板の光変調器側エッジにおける前記複数の導体パターンの間の間隙の幅(d)のうち少なくとも一つが、リードピン側エッジにおける前記複数の導体パターンの間の間隙の幅(L)のうち少なくとも一つの幅より小さくなるように構成されている。
本発明の他の態様によると、前記中継基板は、当該中継基板の前記光変調器側エッジにおける前記複数の導体パターンの間の間隙の幅dが、前記リードピン側エッジにおける前記複数の導体パターンの間の間隙の幅Lの50%より小さい。
本発明の他の態様によると、前記中継基板は、当該中継基板の前記光変調器側エッジにおける前記導体パターンの配置範囲の中心線が、当該中継基板の前記リードピン側エッジにおける前記導体パターンの配置範囲の中心線と一致するように構成されている。
本発明の他の態様によると、前記中継基板は、当該中継基板の前記リードピン側エッジにおける前記導体パターンの配置範囲に対応する前記光変調器側エッジの範囲内に、当該中継基板の前記光変調器側エッジにおける前記導体パターンの配置範囲が含まれ、且つ、前記光変調器側エッジにおける前記配置範囲の一の端部に対応する前記リードピン側エッジの位置に、前記リードピン側エッジにおける前記配置範囲の一の端部が配されている。
本発明の他の態様によると、前記中継基板は、当該中継基板の前記リードピン側エッジにおける前記導体パターンの配置範囲に対応する前記光変調器側エッジの範囲の外に、当該中継基板の前記光変調器側エッジにおける前記導体パターンの配置範囲の一部が設けられている。
本発明の他の態様によると、前記中継基板は、当該中継基板の前記リードピン側エッジにおける前記導体パターンの配置範囲に対応する前記光変調器側エッジの範囲の外に、当該中継基板の前記光変調器側エッジにおける前記導体パターンの配置範囲の全部が設けられている。
本発明の他の態様によると、前記中継基板の前記光変調器側エッジにおける前記複数の導体パターンの配置範囲の幅が、前記リードピン側エッジにおける前記複数の導体パターンの配置範囲の幅の50%以下である。
本発明の他の態様によると、前記複数のリードピンは、等間隔又は不等間隔に配されている。
本発明の他の態様は、上記いずれかの光変調器と、当該光変調器に変調動作を行わせるための電気信号を出力する電子回路と、を備える光送信装置である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】本発明の第1の実施形態に係る光変調器の構成を示す、当該光変調器の平面図である。
【
図1B】本発明の第1の実施形態に係る光変調器の構成を示す、当該光変調器の側面図である。
【
図1C】本発明の第1の実施形態に係る光変調器の構成を示す、当該光変調器の底面図である。
【
図3】
図2Aに示す第1の実施形態に係る光変調器の中継基板の第1の変形例を示す図である。
【
図4】
図2Aに示す第1の実施形態に係る光変調器の中継基板の第2の変形例を示す図である。
【
図5】
図2Aに示す第1の実施形態に係る光変調器の中継基板のその他の構成の第1の例を示す図である。
【
図6】
図2Aに示す第1の実施形態に係る光変調器の中継基板のその他の構成の第2の例を示す図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る光送信装置の構成を示す図である。
【
図8A】従来の光変調器の構成を示す、当該光変調器の平面図である。
【
図8B】従来の光変調器の構成を示す、当該光変調器の側面図である。
【
図8C】従来の光変調器の構成を示す、当該光変調器の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
<第1の実施形態>
図1A、1B、1Cは、本発明の第1の実施形態に係る光変調器の構成を示す図である。ここで、
図1A、1B、1Cは、それぞれ本光変調器の平面図、側面図、底面図である。
本光変調器100は、光変調素子102と、光変調素子102を収容する筐体104と、フレキシブル配線板(FPC)106と、光変調素子102に光を入射するための光ファイバ108と、光変調素子102から出力される光を筐体104の外部へ導く光ファイバ110と、を備える。
【0029】
光変調素子102は、例えばLN基板上に設けられた4つのマッハツェンダ型光導波路と、当該マッハツェンダ型光導波路上にそれぞれ設けられて光導波路内を伝搬する光波を変調する4つの高周波電極(RF電極)112a、112b、112c、112dと、を備えたDP―QPSK光変調器である。光変調素子102から出力される2つの光は、例えばレンズ光学系(不図示)により偏波合成され、光ファイバ110を介して筐体104の外部へ導かれる。
【0030】
筐体104は、光変調素子102が固定されるケース114aとカバー114bとで構成されている。なお、筐体104内部における構成の理解を容易するため、
図1Aにおいては、カバー114bの一部のみを図示左方に示しているが、実際には、カバー114bは、箱状のケース114aの全体を覆うように配されて筐体104の内部を気密封止する。
【0031】
ケース104aには、4つのリードピン116a、116b、116c、116dが設けられている。これらのリードピン116a、116b、116c、116dは、例えばガラス端子であり、筐体104の底面(
図1Cに示す面)から外部に延在し、FPC106上に形成されたスルーホールとハンダ等により接続されている。
【0032】
リードピン116a、116b、116c、116dは、中継基板118を介して光変調素子102のRF電極112a、112b、112c、112dの一端と、それぞれ電気的に接続されている。なお、中継基板118の構成については後述する。
【0033】
RF電極112a,112b、112c、112dの他端のそれぞれは、終端器120により終端されている。
【0034】
図2Aは、
図1Aに示す光変調器100のA部の部分詳細図、
図2Bは、
図1Aに示す光変調器100のBB断面矢視図である。リードピン116a、116b、116c、116dは、ガラス端子であり、ケース104aに設けられたガラス封止部200a、200b、200c、200dを介して、それぞれ筐体104内部から筐体104外部へ延在し、当該筐体104の下面(
図1Cに示す面)から突出してFPC106のスルーホールにハンダ固定されている。
【0035】
リードピン116a、116b、116c、116dは、
図2Aにおける中継基板118の図示下側(
図2Bにおける中継基板118の図示左側)の辺(リードピン側エッジ210)の近傍に配されており、当該中継基板118上に設けられた導体パターン202a、202b、202c、202dに対し、それぞれハンダ204a、204b、20c、204dにより電気的に接続されている。
【0036】
また、導体パターン202a、202b、202c、202dは、
図2Aにおける中継基板118の図示上側(
図2Bにおける中継基板118の図示右側)の辺(変調器側エッジ212)の近傍に配された、光変調素子102の図示下端部(
図2Bにおける光変調素子102の図示左端)部のRF電極112a、112b、112c、112dに対し、それぞれ例えば金ワイヤ206a、206b、206c、206dにより電気的に接続されている。
【0037】
なお、中継基板118上に設けられる導体パターン202a、202b、202c、202dは、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路、グランデットコプレーナ線路など、高周波用の信号線路として公知の線路構造を用いて構成されるものとすることができ、当該構造に合わせて、中継基板118上にはグランドパターンも設けられ得る(不図示)。また、当該グランドパターンは、FPC106上の導体パターン(不図示)又は導電性の筐体104を介して外部のグランドラインに接続されると共に、従来技術に従い、ワイヤボンディング等により光変調素子102上のグランド用パターン(不図示)に接続される。
【0038】
上記構成により、例えば筐体104外部に設けられた駆動装置(例えば駆動回路が構成されたプリント配線板(PWB))から、FPC106を介してリードピン116a、116b、116c、116dに入力された高周波信号は、中継基板118上の導体パターン202a、202b、202c、202dを介して、それぞれ光変調素子102のRF電極112a、112b、112c、112dに入力され、光変調素子102において光変調動作が行われる。
【0039】
特に、本実施形態では、変調器側エッジ212における中継基板118上の導体パターン202a、202b、202c、202dの配置範囲214の幅が、リードピン側エッジ210における導体パターン202a、202b、202c、202dの配置範囲216の幅より狭くなるように構成されている。これにより、リードピン側エッジ210における導体パターン202a、202b、202c、202dとリードピン116a、116b、116c、116dとの接続部分から発する電磁放射ノイズのうち、変調器側エッジ212における導体パターン202a、202b、202c、202dとRF電極112a、112b、112c、112dとの接続部に結合する雑音パワーの総量を低減することができる。
【0040】
すなわち、従来技術の説明において上述したのと同様に、外部の駆動回路からリードピン116a、116b、116c、116dに入力されて
図2Bの図示上方へ伝搬した高周波信号は、中継基板118のリードピン側エッジ210における導体パターン202a、202b、202c、202dとの接続部において、その伝搬方向が導体パターン202a、202b、202c、202dに沿う図示右方向へほぼ直角に屈曲するように曲げられることとなり、当該屈曲部分においてそのパワーの一部が空間へ放射されて放射ノイズとなる。
【0041】
このような放射ノイズは、一般に、雑音源からの距離に従って減衰する立体角密度を有し、放射ノイズが電極などの導体により受信されるパワーは、当該導体の面積に比例する。一方で、放射ノイズを受信する導体の当該放射ノイズに対する感度分布は、一般に、当該導体パターンの広がり範囲内(放射ノイズ源から見た当該導体の面積内)に留まらず、当該広がり範囲を超えて裾を引く山なりの形状を有する。その結果、導体は、放射ノイズに対して実質的には当該導体の面積よりも大きな実効受信面積を有することとなる。
【0042】
本実施形態における放射ノイズ受信パワーの低減効果は、上記のような導体パターンの面積範囲を超えて裾を引く受信感度分布に起因するものである。具体的には、各導体パターンを互いに離隔して実効受信面積が重ならないように散在させた場合よりも、実効受信面積が重なるように近接して集中配置したときのほうが、複数の導体パターンが放射ノイズを受信する総実効受信面積が、小さくなることによるものと考えられる。
【0043】
このため、変調器側エッジにおいて導体パターンに受信される放射ノイズの総パワーの低減効果は、変調器側エッジにおける導体パターンの間隙d及びリードピン側エッジにおける導体パターンの間隙Lに依存し、本願発明の発明者の知見によれば、当該間隙dがLの50%より小さい範囲であれば従来の構成よりも十分な低減効果が得られる。例えば、dは1〜2mmの範囲、Lは2.5〜5mmの範囲とすることができ、本実施形態の中継基板118では、Lは2.5mm、dはLのおよそ40%である1mmとした。更に小型化を狙ってリードピン側エッジにおける導体パターンの間隙Lを更に小さくする場合も、変調器側エッジにおける導体パターンの間隙dはLの50%より小さい範囲から選定する。
【0044】
ここで、リードピン116a、116b、116c、116dから生ずる放射ノイズは、もちろん、リードピン側エッジ210から変調器側エッジ212に至るまでの区間における導体パターン202a、202b、202c、202dにも到来するが、特に変調器側エッジ212の近傍は、光変調素子102のRF電極とのインタフェース部分であって、高周波伝送線路としてのインピーダンス不整合が生じやすく放射ノイズの影響を受けやすい部分であることから、当該変調器側エッジ212における導体パターンの配置範囲214を上記のように構成することで、中継基板118全体としての放射ノイズ耐性を高めることができる。
【0045】
なお、本実施形態では、変調器側エッジ212における導体パターン202a、202b、202c、202d間の全ての間隙が同じ値dであって、リードピン側エッジ210における導体パターン202a、202b、202c、202d間の全ての間隙が同じ値Lであるものとしたが、これに限らず、光変調器側エッジ212における導体パターン間の間隙のうち少なくとも一つが、リードピン側エッジにおける導体パターン間の間隙の幅のうち少なくとも一つの幅より小さくなるように構成されていれば、上記と同様に放射ノイズに対する耐性を高めることができる。
【0046】
また、配置範囲214と配置範囲216との間の位置関係は、本実施形態においては、例えば、それら配置範囲214、216の幅方向の中心線が互いに一致する位置となっている。ただし、これに限らず、配置範囲214、216は、変調器側エッジ212における導体パターン202a、202b、202c、202dの間隙のサイズが上記の条件に従って構成されている限りにおいて、任意の位置関係となるように配置することができる。
【0047】
次に、本実施形態の変形例を、
図3、4、5、6を用いて説明する。以下に示す中継基板は、中継基板118に代えて光変調器100に用いることができる。
【0048】
〔第1の変形例〕
まず、
図1に示す光変調器100に用いられる中継基板118の第1の変形例について説明する。
【0049】
図3に示す本変形例では、
図2Aに示した中継基板118と同様にリードピン側エッジにおける導体パターンの配置範囲に対応する変調器側エッジの範囲内に(すなわち、リードピン側エッジにおける導体パターンの配置範囲を変調器側エッジに投影したしたときの、当該投影された当該配置範囲の範囲内に)、当該変調器側エッジにおける導体パターンの配置範囲が含まれるが、特に、リードピン側エッジにおける導体パターンの配置範囲の一の端部に対応する変調器側エッジにおける位置に、当該変調器側エッジにおける導体パターンの配置範囲の一の端部が配されている。
【0050】
図3は、中継基板118に代えて用いることのできる本変形例に係る中継基板300の構成を、
図2Aに対応する部分詳細部により示した図である。
図3において、
図2Aに示す中継基板118と同じ構成要素については、
図2Aにおける符号と同じ符号を用いるものとし、上述した
図2Aについての説明を援用する。
【0051】
図3に示す中継基板300は、
図2Aに示す中継基板118の導体パターン202a、202b、202c、202dに代えて、これらの導体パターンとは配置の異なる導体パターン302a、302b、302c、302dを備える。そして、変調器側エッジ212におけるこれら導体パターンの配置範囲314は、当該配置範囲314の図示右側の端部が、リードピン側エッジ210における導体パターンの配置範囲216の図示右側の端部に対応する位置となるように配されている。なお、配置範囲314における導体パターン302a、302b、302c、302dの間隙のサイズは、配置範囲214における導体パターン202a、202b、202c、202dの間隙のサイズと同様である。
【0052】
これにより、本変形例に係る中継基板300では、リードピン側エッジ210の配置範囲216に対応する変調器側エッジ212の範囲の端部に、導体パターン302a、302b、302c、302dの配置範囲314の端部が配されるので、雑音源としてのリードピン116a、116b、116c、116dの位置から変調器側エッジ212における配置範囲214までの平均距離が遠くなり、当該リードピン116a、116b、116c、116dから生ずる放射ノイズのうち配置範囲314において受信される雑音の総パワーは、中継基板118における配置範囲214の場合に比べてより少なくなる。
【0053】
〔第2の変形例〕
次に、
図1に示す光変調器100に用いられる中継基板118の第2の変形例について説明する。
【0054】
図4に示す本変形例では、中継基板118とは異なり、リードピン側エッジにおける導体パターンの配置範囲に対応する変調器側エッジにおける範囲の外側に、当該変調器側エッジにおける導体パターンの配置範囲が配されている。
【0055】
図4は、中継基板118に代えて用いることのできる本変形例に係る中継基板400の構成を、
図2Aに対応する部分詳細部により示した図である。
図4において、
図2Aに示す中継基板118及びその周辺部分における構成要素と同じ構成要素については、
図2Aにおける符号と同じ符号を用いるものとし、上述した
図2Aについての説明を援用する。
【0056】
図4に示す中継基板400は、
図2Aに示す中継基板118よりも広い図示左右方向の幅を持つ。本中継基板400のリードピン側エッジ410、変調器側エッジ412、及び配置範囲416は、中継基板118のリードピン側エッジ210、変調器側エッジ212、及び配置範囲216に、それぞれ対応するものである。
【0057】
中継基板400は、中継基板118と同様の構成を有するが、導体パターン202a、202b、202c、202dに代えて、これらの導体パターンとは配置の異なる導体パターン402a、402b、402c、402dを備える。そして、変調器側エッジ412におけるこれら導体パターンの配置範囲414は、リードピン側エッジ410における導体パターンの配置範囲416に対応する変調器側エッジにおける範囲の外側の領域に設けられている。
【0058】
これにより、本変形例に係る中継基板400では、雑音源としてのリードピン116a、116b、116c、116dの位置から変調器側エッジ412における配置範囲414までの平均距離を、
図3に示す配置範囲314の場合よりも更に大きくして、配置範囲414において受信される雑音パワーを更に低減することができる。
【0059】
なお、上述した実施形態及びその変形例においては、リードピン116a、116b、116c、116dが等間隔に配されているものしたが、不等間隔で配されるものとしてもよい。この場合には、中継基板は、例えば
図5及び
図6に示すように構成することができる。
図5及び
図6に示す中継基板500、600は、リードピンの配置が異なることを除き、光変調器100と同様な構成の光変調器において用いられ得る。
【0060】
図5は、リードピン516aと516bとの間及び516cと516dとの間が共に距離d1だけ離れており、リードピン516bと516cとの間がd1と異なる距離d2だけ離れている例である。そして、導体パターン502a、502b、502c、502dが、リードピン516a、516b、516c、516dの位置に対応するように、リードピン側エッジ510の配置範囲516内に配されている。中継基板500の変調器側エッジ512に設けられる配置範囲514における導体パターン502a、502b、502c、502dの間隙のサイズは、中継基板118の変調器側エッジ212に設けられる配置範囲214における導体パターン202a、202b、202c、202dの間隙のサイズと同じであるものとすることができる。
【0061】
一方、
図6は、リードピン616aと616bとの間、616bと616cとの間、及び616cと616dとの間が、それぞれ相異なる距離d4、d5、d6だけ離れている例である。そして、中継基板600は、導体パターン602a、602b、602c、602dが、リードピン616a、616b、616c、616dの位置に対応するように、リードピン側エッジ610の配置範囲616内に配されている。中継基板600の変調器側エッジ612に設けられる配置範囲614における導体パターン602a、602b、602c、602dの間隙のサイズは、中継基板118の変調器側エッジ212に設けられる配置範囲214における導体パターン202a、202b、202c、202dの間隙のサイズと同じであるものとすることができる。
【0062】
図5や
図6のような構成とすることにより、中継基板の変調器側エッジにおける放射ノイズのパワー分布のピークを偏在化させることができる。これによりリードピンを等間隔に配置した場合よりも、パワーレベルの低い場所を前記放射ノイズのパワー分布内に形成することができるため、放射ノイズの影響をより低減できる構成とすることができる。
【0063】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態に示した光変調器100(
図3、
図4、
図5、
図6に示す変形例又は構成例に係る中継基板を備える光変調器を含む)を搭載した光送信装置である。
【0064】
図7は、本実施形態に係る光送信装置の構成を示す図である。本光送信装置700は、光変調器702と、光変調器702に光を入射する光源704と、変調信号生成部706と、変調データ生成部708と、を有する。
【0065】
光変調器702は、
図1に示す光変調器100である(中継基板118に代えて、
図3、
図4、
図5、
図6に示す変形例又は構成例に係るいずれかの中継基板を備えていてもよい)。変調データ生成部708は、外部から与えられる送信データを受信して、当該送信データを送信するための変調データ(例えば、送信データを所定のデータフォーマットに変換又は加工したデータ)を生成し、当該生成した変調データを変調信号生成部706へ出力する。
【0066】
変調信号生成部706は、光変調器702に変調動作を行わせるための電気信号を出力する電子回路であり、変調データ生成部708が出力した変調データに基づき、光変調器702に当該変調データに従った光変調動作を行わせるための高周波信号である変調信号を生成して、光変調器100に入力する。当該変調信号は、光変調器100が備える光変調素子102の4つのRF電極112a、112b。112c、112dに対応する4つのRF信号から成る。
【0067】
当該4つのRF信号は、FPC106を介して光変調器100のリードピン116a、116b、116c、116dに入力され、中継基板118(
図3、
図4、
図5、
図6に示す変形例又は構成例に係る中継基板でもよい)を介して上記RF電極112a、112b、112c、112dにそれぞれ印加される。
【0068】
これにより、光源704から出力された光は、光変調器100により変調され、変調光となって光送信装置700から出力される。
【0069】
特に、本光送信装置700では、上述した構成を有する光変調器100を用いるので、光変調器100内部における、高周波信号(RF信号)の伝搬経路の屈曲部(すなわち、リードピン116a、116b、116c、116dから、中継基板118等に設けられた対応する導体パターンへ向かって、当該高周波信号の伝搬方向が略直角に曲げられる部分)において発生した放射ノイズが、中継基板118等に設けられた導体パターンに受信されて光変調動作に影響を与えること、及びその結果として変調後の光信号の伝送特性を悪化させることを、効果的に防止することができる。
【0070】
なお、上述した各実施形態では、LNを基板として用いた4つのRF電極を有する光変調素子を備える光変調器を示したが、本発明は、これに限らず、4つ以外の数の複数のRF電極を持つ光変調器、及び又はLN以外の材料を基板として用いる光変調器にも、同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
100、800・・・光変調器、102、802・・・光変調素子、104、804・・・筐体、106、806・・・FPC、108、110、808、810・・・光ファイバ、112a、112b、112c、112d、812a、812b、812c、812d・・・RF電極、114a、814a・・・ケース、114b、814b・・・カバー、116a、116b、116c、116d、816a、816b、816c、816d・・・リードピン、118、818・・・中継基板、120、820・・・終端器、200a、200b、200c、200d、900a、900b、900c、900d・・・ガラス封止部、202a、202b、202c、202d、902a、902b、902c、902d・・・導体パターン、204a、204b、204c、204d、904a、904b、904c、904d・・・ハンダ、206a、206b、206c、206d、906a、906b、906c、906d・・・ワイヤ、210、910・・・リードピン側エッジ、212、912・・・変調器側エッジ、214、216、914、916・・・配置範囲