(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-40183(P2018-40183A)
(43)【公開日】2018年3月15日
(54)【発明の名称】電着工法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/11 20060101AFI20180216BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20180216BHJP
【FI】
E02D3/11
E02D3/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-175596(P2016-175596)
(22)【出願日】2016年9月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】山本 誠
(72)【発明者】
【氏名】審良 善和
(72)【発明者】
【氏名】武若 耕司
(72)【発明者】
【氏名】山口 明伸
【テーマコード(参考)】
2D040
2D043
【Fターム(参考)】
2D040AA06
2D040AB01
2D040BD01
2D040CA10
2D043CA13
2D043CA20
2D043EA10
2D043EB06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】構造物と地盤との間に形成される空間の埋め込みを容易に行うことができる電着工法を提供する。
【解決手段】金属材料1aを備える構造物1と前記金属材料に電気的に接続される電極3が埋設された地盤2との間に形成された空間が電解質溶液又は該電解質溶液で湿潤した湿潤土で満たされた状態で、前記金属材料と前記電極との間に直流電流を流す通電工程を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料を備える構造物と前記金属材料に電気的に接続される電極が埋設された地盤との間に形成された空間が電解質溶液又は該電解質溶液で湿潤した湿潤土で満たされた状態で、前記金属材料と前記電極との間に直流電流を流す通電工程を備えることを特徴とする電着工法。
【請求項2】
前記電極と前記地盤との間に形成される空間を電解質溶液又は該電解質溶液で湿潤した湿潤土で満たし、電極を陽極とすると共に金属材料を陰極として通電工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の電着工法。
【請求項3】
前記電解質溶液として温泉水を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の電着工法。
【請求項4】
前記電解質溶液又は湿潤土を前記空間に供給する電解質供給工程を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電着工法。
【請求項5】
前記空間内で温泉の噴気ガスと水とを接触させて電解質溶液を形成することで、前記空間に電解質溶液又は湿潤土を満たすことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の電着工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物と地盤との間に形成される空間を埋め込むための電着工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤中に構造物が埋設される場合がある。例えば、橋を建造する場合、鉄筋コンクリートで形成されたコンクリート構造物(杭)が橋脚の一部として地盤に埋設される。このようなコンクリート構造物は、例えば、地盤を掘削して形成した縦穴の内面にコンクリートを吹き付けて補強した後、該縦穴内に鉄筋を配置すると共にコンクリートを打設して硬化させることで形成することができる。
【0003】
上記のように、地盤中に構造物が埋設されている場合、地盤及び/又は構造物の経時的な変化によって、地盤と構造物との間に空間(以下、構造物地盤間空間とも記す)が生じる場合がある。例えば、上記のようなコンクリート構造物の収縮によって、地盤(具体的には、コンクリートで補強された縦穴の内面)とコンクリート構造物との間に構造物地盤間空間が形成される場合がある。また、地盤中のコンクリート構造物の表面にひび割れが生じた場合、該ひび割れの内面と地盤(具体的には、コンクリートで補強された縦穴の内面)との間に構造物地盤間空間が形成される場合がある。
【0004】
このような構造物地盤間空間は、地盤とコンクリートとの摩擦力が低下し、構造物の地盤地下や地震時の耐力の低下の要因となる虞があるため、何らかの方法で埋め込むことが要求されている。このような空間を埋め込む方法としては、セメント系の注入材や樹脂系の注入材を斯かる空間に注入して硬化させる方法が提案されている(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−086326号公報
【特許文献2】特開2015−063669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようなセメント系の注入材は、構造物が埋まっている地盤の温度によっては、構造物地盤間空間の所望する深さ位置にまで注入することが困難となる。例えば、温泉地では、地盤の温度が比較的高温であるため、構造物地盤間空間が地表から地盤の深さ方向に形成されている場合、構造物地盤間空間に地表側から注入材を注入すると、注入材が所望する深さ位置に達する前に地盤温度の影響によって硬化してしまう虞がある。また、温泉地では、コンクリート構造物自体の温度も比較的高温になっているため、コンクリート構造物の表面に形成されたひび割れの所望する深さ位置に達する前にコンクリート構造物の温度の影響によって注入材が硬化してしまう虞がある。
【0007】
また、上記のような樹脂系の注入材は、構造物の表面に存在する水分の影響によって構造物に対する付着力が低下することが知られている。例えば、温泉地では、構造物地盤間空間に温泉の噴気ガスや温泉水が充満している場合があるため、構造物地盤間空間に樹脂系の注入材を注入して硬化体を形成しても構造物に対する良好な付着力を得ることができない虞がある。
【0008】
更に、構造物地盤間空間の位置によっては、上記のような注入材を地表側から直接注入することが困難になる場合がある。例えば、構造物地盤間空間が地表に解放していない場合(具体的には、構造物にひび割れが形成されることによって構造物地盤間空間が形成されている場合)には、斯かる空間に地表側から注入材を注入することが困難となる。
【0009】
そこで、本発明は、構造物と地盤との間に形成される空間の埋め込みを容易に行うことができる電着工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電着工法は、金属材料を備える構造物と前記金属材料に電気的に接続される電極が埋設された地盤との間に形成された空間が電解質溶液又は該電解質溶液で湿潤した湿潤土で満たされた状態で、前記金属材料と前記電極との間に直流電流を流す通電工程を備えることを特徴とする。
【0011】
斯かる構成によれば、金属材料を備える構造物と前記金属材料に電気的に接続される電極が埋設された地盤との間に形成された空間(以下、構造物地盤間空間とも記す)が電解質溶液又は該電解質溶液で湿潤した湿潤土で満たされた状態で、前記金属材料と前記電極との間に直流電流を流す通電工程を行うことで、構造物地盤間空間を形成する構造物の表面又は地盤の表面に電解質溶液中の電解質に起因する析出物を析出させることができる。これにより、通電工程を継続して行うことで、析出物によって構造物地盤間空間が埋め込まれるため、構造物地盤間空間の埋め込みを容易に行うことができる。
【0012】
前記電極と前記地盤との間に形成される空間を電解質溶液又は該電解質溶液で湿潤した湿潤土で満たし、電極を陽極とすると共に金属材料を陰極として通電工程を行うことが好ましい。
【0013】
斯かる構成によれば、前記電極と前記地盤との間に形成される空間(以下、電極地盤間空間とも記す)を電解質溶液又は該電解質溶液で湿潤した湿潤土で満たし、電極を陽極とすると共に金属材料を陰極として通電工程を行うことで、地盤が電解質を透過可能な性状である場合(例えば、電解質溶液で地盤が湿潤している場合)、通電工程を行うことで電極地盤間空間に満たされた電解質溶液中の電解質が地盤中を透過して、構造物地盤間空間を形成する構造物の表面に析出する。このため、構造物地盤間空間に満たされた電解質溶液中の電解質に起因する析出物に加え、電極地盤間空間に満たされた電解質溶液中の電解質に起因する析出物によっても構造物地盤間空間が埋め込まれるため、構造物地盤間空間の埋め込みをより効率的に行うことができる。
【0014】
前記電解質溶液として温泉水を用いることが好ましい。
【0015】
斯かる構成によれば、電解質溶液として温泉水を用いることで、電解質溶液を作製する手間を省くことができるため、構造物地盤間空間の埋め込みをより容易に行うことができる。
【0016】
前記電解質溶液又は湿潤土を前記空間に供給する電解質供給工程を更に備えることが好ましい。
【0017】
斯かる構成によれば、前記電解質溶液又は湿潤土を前記空間に供給する電解質供給工程を更に備えることで、構造物や地盤の性状に応じて任意の成分や濃度の電解質溶液を用いることが可能となる。
【0018】
前記空間内で温泉の噴気ガスと水とを接触させて電解質溶液を形成することで、前記空間に電解質溶液又は湿潤土を満たすことが好ましい。
【0019】
斯かる構成によれば、前記空間内で温泉の噴気ガスと水とを接触させて電解質溶液を形成することで、前記空間に電解質溶液又は湿潤土が満たされるため、電解質溶液又は湿潤土を作製しつつ構造物地盤間空間を電解質溶液又は湿潤土で満たすことができるため、電解質溶液を作製する手間を省くことができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、構造物と地盤との間に形成される空間の埋め込みを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電着工法の構成を示した概略図。
【
図2】同実施形態に係る電着工法の構成を示した概略図であって、構造物地盤間空間に電解質溶液が満たされた状態を示す概略図。
【
図3】他の実施形態に係る電着工法の構成を示した概略図。
【
図4】更に他の実施形態に係る電着工法の構成を示した概略図。
【
図5】更に他の実施形態に係る電着工法の構成を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について
図1,2を参照しながら説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0023】
本実施形態に係る電着工法は、
図1に示すように、構造物1と地盤2との間に形成された空間(以下、構造物地盤間空間とも記す)R1を埋め込むためのものである。前記構造物1は、金属材料1aを備えるものである。本実施形態では、構造物1は、金属材料1aが埋設されたものである。構造物1を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、地盤2を掘削して形成された縦穴2a内に形成することができる。具体的には、前記縦穴2a内にコンクリートを吹き付けて縦穴2aを崩壊から保護する保護層(具体的には、導電性を有する保護層)2bを形成する。その後、該縦穴2a内に金属材料(鉄筋)1aを配置した後、縦穴2a内にコンクリートを打設して硬化させることで金属材料1aが埋設された構造物(所謂、鉄筋コンクリート)1が形成される。
【0024】
前記構造物1と地盤2との間には、種々の理由によって構造物地盤間空間R1が形成される。例えば、構造物1及び/又は地盤2の変形(より詳しくは、構造物1の収縮等)によって、構造物地盤間空間R1が形成される。本実施形態では、構造物地盤間空間R1は、構造物1と地盤2(具体的には、地盤2が備える保護層2b)との間に地盤2の深さ方向に延びるように形成される。
【0025】
前記地盤2中には、前記構造物1内の金属材料1aと電気的に(具体的には、電源装置Eを介して)接続される電極3が埋設される。具体的には、電極3は、少なくとも一部が金属材料1aと水平方向で重なるように(より詳しくは、同一の深さ位置に)配置される。また、電極3は、少なくとも一部が構造物地盤間空間R1における埋め込みを行う位置と水平方向で重なる深さ位置に埋設される。換言すれば、水平方向において金属材料1aと電極3との間に構造物地盤間空間R1が位置するように電極3が地盤2の中に埋設される。電極3の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、棒状、又は、板状のものの他、メッシュ状に形成されたものが挙げられる。
【0026】
本実施形態に係る電着工法は、
図2に示すように、構造物地盤間空間R1に電解質溶液Lが満たされた状態で、金属材料1aと電極3との間に直流電流を流す通電工程を備える。電解質溶液Lとしては、特に限定されるものではなく、例えば、電解質として任意の成分(具体的には、CaイオンやMgイオン等)を含有するように作製されたものであってもよく、温泉水のように種々の電解質(具体的には、CaイオンやMgイオン等)を含有する天然のものであってもよい。また、電解質溶液LのpHとしては、特に限定されるものではなく、例えば、中性のものであってもよく、温泉水のように酸性のものであってもよい。
【0027】
構造物地盤間空間R1に電解質溶液Lを満たす方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、地盤2の地表側から構造物地盤間空間R1に電解質溶液Lを供給する電解質供給工程を行うことで、構造物地盤間空間R1に電解質溶液Lを満たすように構成してもよい。又は、構造物地盤間空間R1内に温泉の噴気ガスが存在している場合、構造物地盤間空間R1内に水を供給し、構造物地盤間空間R1内で噴気ガスと水とを接触させて電解質溶液L(温泉水)を形成することで、構造物地盤間空間R1に電解質溶液Lを満たすように構成されてもよい。又は、電解質溶液Lが温泉水のように地盤2から湧き出る場合には、構造物地盤間空間R1に湧き出た温泉水を電解質溶液Lとしてもよい。
【0028】
そして、上記のように構造物地盤間空間R1に電解質溶液Lが満たされた状態で、金属材料1aと電極3との間に直流電流を流すことで(通電工程)、構造物地盤間空間R1が埋め込まれる。具体的には、電極3を陽極とし、金属材料1aを陰極として直流電流を流すことで、構造物1における構造物地盤間空間R1を形成する面に、構造物地盤間空間R1内の電解質が析出して析出物が形成される。又は、電極3を陰極とし、金属材料1aを陽極として直流電流を流すことで、地盤2における構造物地盤間空間R1を形成する面(本実施形態では、保護層2bの一方の面)に、構造物地盤間空間R1内の電解質が析出して析出物が形成される。このように析出物が形成されることで、構造物地盤間空間R1の少なくとも一部が析出物によって埋め込まれた状態となる。これにより、上記のような通電工程を継続して行うことで、構造物地盤間空間R1を析出物によって埋め込むことが可能となる。
【0029】
以上のように、本発明に係る電着工法では、構造物と地盤との間に形成される空間の埋め込みを容易に行うことができる。
【0030】
即ち、金属材料1aを備える構造物1と前記金属材料1aに電気的に接続される電極3が埋設された地盤2との間に形成された空間(以下、構造物地盤間空間とも記す)R1が電解質溶液Lで満たされた状態で、前記金属材料1aと前記電極3との間に直流電流を流す通電工程を行うことで、構造物地盤間空間R1を形成する構造物1の表面又は地盤2の表面に電解質溶液L中の電解質に起因する析出物を析出させることができる。これにより、通電工程を継続して行うことで、析出物によって構造物地盤間空間R1が埋め込まれるため、構造物地盤間空間R1の埋め込みを容易に行うことができる。
【0031】
また、電解質溶液Lとして温泉水を用いることで、電解質溶液Lを作製する手間を省くことができるため、構造物地盤間空間R1の埋め込みをより容易に行うことができる。
【0032】
また、前記電解質溶液Lを構造物地盤間空間R1に供給する電解質供給工程を更に備えることで、構造物1や地盤2の性状に応じて任意の成分や濃度の電解質溶液Lを用いることが可能となる。
【0033】
また、構造物地盤間空間R1内で温泉の噴気ガスと水とを接触させて電解質溶液Lを形成することで、構造物地盤間空間R1に電解質溶液Lが満たされるため、電解質溶液Lを作製しつつ構造物地盤間空間R1を電解質溶液Lで満たすことができるため、電解質溶液Lを作製する手間を省くことができる。
【0034】
なお、本発明に係る電着工法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、他の各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0035】
例えば、上記実施形態では、構造物地盤間空間R1は、地盤2の深さ方向に延びるように形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、
図3に示すように、構造物1の表面にひび割れが形成されることで、該ひび割れの内面と地盤2との間に構造物地盤間空間R1が形成されてもよい。斯かる場合には、構造物地盤間空間R1は、地盤2の地表側に解放していないため、地表側から電解質溶液Lを供給することができないが、地盤2から染み出す温泉水によってひび割れ内の構造物地盤間空間R1を満たすことができる。そして、斯かる構造物地盤間空間R1が温泉水で満たされた状態で、通電工程を行うことで、ひび割れの内面に析出物が形成される。これにより、通電工程を継続して行うことでひび割れを析出物で埋め込むことができる。
【0036】
また、上記実施形態では、構造物地盤間空間R1が電解質溶液Lで満たされるように構成されているが、例えば、
図4に示すように、構造物地盤間空間R1に加えて、電極3と地盤2との間に形成される空間(以下、電極地盤間空間とも記す)R2に電解質溶液Lが満たされるように構成されてもよい。具体的には、電極地盤間空間R2は、地盤2を掘削して形成された縦穴2d内に電極3が配置されることで、地盤2(縦穴2dの内面)と電極3との間に形成される。斯かる構成によれば、電極地盤間空間R2を電解質溶液Lで満たした後、電極3を陽極とすると共に金属材料1aを陰極として通電工程を行うことで、地盤2が電解質を透過可能な性状である場合(例えば、電解質溶液Lで地盤2が湿潤している場合)、通電工程を行うことで電極地盤間空間R2に満たされた電解質溶液L中の電解質が地盤2中を透過して、構造物地盤間空間R1を形成する構造物1の表面に析出する。このため、構造物地盤間空間R1に満たされた電解質溶液L中の電解質に起因する析出物に加え、電極地盤間空間R2に満たされた電解質溶液L中の電解質に起因する析出物によっても構造物地盤間空間R1が埋め込まれるため、構造物地盤間空間R1の埋め込みをより効率的に行うことができる。
【0037】
また、上記実施形態の地盤2が備える保護層2bは、
図5に示すように、金属材料2cが埋設されたものであってもよい。斯かる場合には、構造物1が備える金属材料1aと保護層2bが備える金属材料2cと地盤2に埋設された電極3とが電気的に接続される。そして、電極3を陽極とし、各金属材料1a,2cを陰極として直流電流を流す通電工程を行うことで、上記実施形態のように構造物地盤間空間R1の埋め込みを行うことができると共に、保護層2b中の金属材料2cが電食するのを防止することができる。
【0038】
また、上記のように金属材料2cが保護層2bに埋設される場合において、
図4に示すような電極地盤間空間R2を形成し、該電極地盤間空間R2に電解質溶液Lを満たして通電工程を行うことで、保護層2bの表面に形成されたひび割れが電解質溶液L(例えば、地盤から浸出した温泉水など)で満たされている場合、斯かるひび割れを析出物によって埋め込むことができる。
【0039】
また、上記実施形態では、構造物地盤間空間R1や電極地盤間空間R2(以下、構造物地盤間空間R1等とも記す)に電解質溶液Lが満たされるように構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、電解質溶液Lで湿潤した湿潤土によって構造物地盤間空間R1等が満たされるように構成されてもよい。構造物地盤間空間R1等を湿潤土で満たす方法としては、特に限定されるものではない。例えば、構造物地盤間空間R1等に湿潤土を流し込んでもよい。または、構造物地盤間空間R1等の内側に存在する砂に電解質溶液Lを吸収させて構造物地盤間空間R1等内で湿潤土を形成してもよい。または、構造物地盤間空間R1等に温泉の噴気ガスが存在している場合には、水分を比較的多く含む土を構造物地盤間空間R1等に流し込み、流し込んだ土中の水分と噴気ガスとを接触させて該土中で電解質溶液Lを形成する(即ち、構造物地盤間空間R1等内で湿潤土を形成する)ことで、構造物地盤間空間R1等に湿潤土を満たすようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、金属材料1aは、構造物1に埋設されるように構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、構造物1の表面に金属材料1aが配置されるように構成されてもよい。斯かる場合には、通電工程を行うことによって、金属材料1aの表面に析出物が形成され、該析出物によって構造物地盤間空間R1が埋め込まれることになる。
【0041】
また、上記実施形態では、地盤2は、保護層2bを備えるように構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、保護層2bを備えないように構成されてもよい。斯かる場合には、縦穴2aの内面が構造物地盤間空間R1に面するように構成される。
【符号の説明】
【0042】
1…構造物、1a…金属材料、2…地盤、2a…縦穴、2b…保護層、2c…金属材料、2d…縦穴、3…電極、E…電源装置、L…電解質溶液、R1…構造物地盤間空間、R2…電極地盤間空間