【実施例】
【0069】
本発明を以下の実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって制限されないものとする。
【0070】
[実施例1]
<多重抗原ペプチド(MAP)の構造>
MAPの構造について下記のものを使用した。
【化7】
[式中、Rは、
【0071】
【化8】
である。]
【0072】
エボラウイルスの糖タンパク質由来の4種のペプチド、すなわちIKKADGSECLP(配列番号31)、IKKADGSEC(Boc−Cys−OH)LP(配列番号37)、FPRCRYVHK(配列番号6)及びFPRC(Boc−Cys−OH)RYVHK(配列番号38)を選択し、MAP作製のための抗原ペプチドとして使用した。
【0073】
<エボラ1MAP4の合成>
1.略語表
・NH2−SAL−Trt(2−Cl)− Resin: Rink−Bernatowitz−amide Barlos Resin(渡辺化学工業株式会社)
・Fmoc−Lys(Fmoc)−OH:N−α,N−ε−Bis(9−fluorenylmethoxycarbonyl)−L−lysine(渡辺化学工業株式会社)
・Boc−Pra−OH:N−Boc−L−propargylglycine(東京化成工業株式会社)
・N
3−PEG−COOH:11−Azido−3,6,9−trioxaundecanoic Acid(東京化成工業株式会社)
・Fmoc−Pro−TrtA−PEG− Resin: N−α−(9−Fluorenylmethoxycarbonyl)−L−proline tritylcarboxamidomethyl polyethyleneglycol resin (渡辺化学工業株式会社)
・Fmoc−Ala−OH: N−α−(9−Fluorenylmethoxycarbonyl) −L−alanine(渡辺化学工業株式会社)
・Fmoc−Cys(Trt)−OH: N−α−(9−Fluorenylmethoxycarbonyl)−S−trityl−L−cysteine(渡辺化学工業株式会社)
・Fmoc−Asp(OtBu)−OH: N−α−(9−Fluorenylmethoxycarbonyl)−L−aspartic acid β−t−butyl ester(渡辺化学工業株式会社)
・Fmoc−Glu(OtBu)−OH: N−α−(9−Fluorenylmethoxycarbonyl)−L−glutamic acid γ−t−butyl ester(渡辺化学工業株式会社)
・Fmoc−Gly−OH: N−α−(9−Fluorenylmethoxycarbonyl)−glycine(渡辺化学工業株式会社)
・Fmoc−Ile−OH: N−α−(9−Fluorenylmethoxycarbonyl)−L−isoleucine(渡辺化学工業株式会社)
・Fmoc−Lys(Boc)−OH: N−α−(9−Fluorenylmethoxycarbonyl)−N−ε−(t−butoxycarbonyl)−L−lysine(渡辺化学工業株式会社)
・Fmoc−Ile−OH: N−α−(9−Fluorenylmethoxycarbonyl)−L−leucine(渡辺化学工業株式会社)
・Fmoc−Pro−OH: N−α−(9−Fluorenylmethoxycarbonyl)−L−proline(渡辺化学工業株式会社)
・Fmoc−Ser(tBu)−OH: N−α−(9−Fluorenylmethoxycarbonyl)−O−(t−butyl)−L−serine(渡辺化学工業株式会社)
・Boc−Cys(Npys)−OH: N−α−(t−Butoxycarbonyl)−S−(3−nitro−2−pyridinesulfenyl)−L−cysteine (国産化学)
・HATU:O−(7−aza−1H−benzotriazol−1−yl)−N,N,N’,N’−tetramethyluronium hexafluorophosphate(Genscript)
・DIEA: N,N−Diisopropylethylamine(和光純薬・ペプチド合成用)
・DMF: N,N−Dimethylformamide(関東化学・ペプチド合成用)
・TFA: 2,2,2−Trifluoroacetic acid(和光純薬)
・TIPS: Triisopropylsilane(渡辺化学工業株式会社)
・Thioanisole(渡辺化学工業株式会社)
・m−Cresol(東京化成)
・DCM: Dichloromethane(関東化学)
・ACN: acetonitrile(関東化学・HPLC用)
・α−CHCA:α−Cyano−4−hydroxycinnamic Acid
・分取カラム:YMC−Pack Pro C18, 20mm(I.D.) X 250mm(Length), 粒子径5μm, 細孔径12μm(YMC)
・分析カラム:YMC−Pack Pro C18, 4.6mm(I.D.) X 250mm(Length), 粒子径5μm, 細孔径12μm(YMC)
・MALDI−TOF MASS: Matrix Assisted Laser Desorption Ionization Time Of Flight Mass Spectrometry
・D.W.: distilled water
・硫酸銅五水和物(関東化学)
・アスコルビン酸(関東化学)
【0074】
2.MAPコアの合成
MAP4を例としてMAPコアの合成法を以下に記載する。
MAPコア合成は通常のFmoc固相合成法を用い、全ての工程を手動にて行った。具体的にはNH2−SAL−Trt(2−Cl)− Resin 1mmol分を固相担体として以下の手順で合成した。
【0075】
【表1】
【0076】
合成終了後、固相0.1mmolに対しD.W.(ml):TIPS(ml):TFA(ml)の比が1.5:1.5:30となるように加え、1.5時間撹拌し、切出と脱保護を行った。切出後は、ろ過により溶液を回収しこれを減圧濃縮後、少量の水を加え凍結乾燥した。凍結乾燥後、0.1%TFAとACNを溶出液に用いた逆相HPLCにて以下の条件で精製を行った。
【0077】
精製条件:
・溶出液A: 0.1%TFA, 溶出液B: 0.1%TFA ACN
・平衡化:溶出液A 100%, 10mL/min, 10min
・溶出:溶出液A 100%→溶出液A 70%/溶出液B 30%, 10mL/min, 30minリニアグラジエント
【0078】
精製物はMALDI−TOF MASSを用いた質量分析(下記の条件)にて目的物の確認を行った。
【0079】
質量分析条件:
・マトリックス溶液:10mg/mL α−CHCA in 0.1%TFA 50%CAN水溶液
・サンプル:HPLC溶出液もしくは0.1%TFA 50%ACN水溶液(概ね1mg/mL ペプチド)
・マトリックス溶液とサンプルを1:1で混合しプレート上で混晶を形成した
【0080】
3.抗原ペプチド合成
抗原ペプチド合成もMAPコア合成と同様にFmoc固相合成法を用いて行った。
具体的にはFmoc−Pro−TrtA−PEG− Resin 0.4mmol分を固相担体として用い、最初にレジンをDMFで膨潤し、20%ピペリジンでFmoc基を脱保護した。以降は以下の手順で合成した。
【0081】
抗原ペプチドの配列はN
3−IKKADGSECLP−OHでありC末端からN末端に向かいペプチドを伸長した。
【0082】
【表2】
【0083】
合成終了後、固相1mmolに対しチオアニソール(ml):m−クレゾール(ml):TIPS(ml):TFA(ml)=3.6:1:0.6:25を加え1.5時間撹拌し切出と脱保護を行った。切出後は、ろ過により溶液を回収しこれを減圧濃縮し、さらにエーテルを加え沈殿を回収し未精製ペプチドを得た。未精製ペプチドは0.1%TFAとACNを溶出液に用いた逆相HPLCにて以下の条件で精製を行った。
【0084】
精製条件:
・溶出液A: 0.1%TFA, 溶出液B: 0.1%TFA ACN
・平衡化:溶出液A 90%/溶出液B 10%, 10mL/min, 10min
・溶出:溶出液A 90%/溶出液B 10%→溶出液A 50%/溶出液B 50%, 10mL/min, 30minリニアグラジエント
【0085】
HPLC 分析条件:
・溶出液A: 0.1%TFA, 溶出液B: 0.1%TFA ACN
・平衡化:溶出液A 95%/溶出液B 5%, 10mL/min, 10min
・溶出:溶出液A 90%/溶出液B 10%→溶出液A 40%/溶出液B 60%, 10mL/min, 30minリニアグラジエント
【0086】
精製物はMALDI−TOF MASSを用いた質量分析(上記と同じ条件)にて目的物の確認を行った。
【0087】
精製が終了した抗原ペプチド155mg(113μmol)をDMSO 1mL に溶解し、BOC−Cys(Npys)−OH 85mg(226μmol)を加えジスルフィドを形成し 配列中のCys残基側鎖のSH基を保護した。この反応後もHPLCにて上記と同様に精製し凍結乾燥を行い抗原ペプチドとした。
【0088】
4.MAP−ペプチドの合成
MAPコアと抗原ペプチドはヒュスゲン反応を利用し結合させた。すなわち、MAPコア中のアルキンをCu
+で活性化し抗原ペプチドN末端のアジド基と反応させトリアゾールにより結合させた。具体的な工程を以下に記載する。
【0089】
(工程1)MAPコアと抗原ペプチドを0.1%TFA水溶液に溶解した。このとき混合比は、MAPコア15mg(19μmol):抗原ペプチド114mg(71μmol)とし、これらを8M尿素水溶液2mlに溶解した(ペプチド溶液)。
【0090】
(工程2)硫酸銅・5水和物水溶液とアスコルビン酸水溶液の調製を次のように行った。硫酸銅・5水和物50mg(200μmol)を1mlのD.W.に溶解した(硫酸銅水溶液)。また、アスコルビン酸 176mg (1mmol)を1mlのD.W.に溶解した(アスコルビン酸水溶液)。次に、硫酸銅水溶液とアスコルビン酸水溶液を全量混和した(Cu
+溶液)。
【0091】
(工程3)次にヒュスゲン反応を行なった。具体的には、ペプチド溶液2mlとCu
+溶液0.35mlを混和し、室温で数時間反応した。
【0092】
(工程4)反応物を0.1%TFAとACNを溶出液に用いた逆相HPLCにて抗原ペプチド付近に出たピークをすべて分取し凍結乾燥した(87mg回収)。
【0093】
(工程5)上で得た凍結乾燥物試料87mgを1/15M リン酸緩衝液(K/Na
2、pH7.2)1mLに溶解し、4%炭酸水素ナトリウム溶液でpHを中性とした。この溶液にジチオスレイトール34mg(220μmol)を加え室温で還元し、逆相HPLCにて目的物を精製した。精製条件は、上記抗原ペプチドの精製と同様である。
【0094】
(工程6)MALDI−TOF MASSを用いた質量分析(条件は上と同じ)によって目的物の確認を行った。また、HPLC分析によって純度を検定した。HPLC純度検定条件は、上記抗原ペプチドの場合と同様であった。
【0095】
5.合成結果
合成結果は以下の通りであった。
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
<エボラ2MAP4の合成>
1.略語表
・NH2−SAL−Trt(2−Cl)− Resin: Rink−Bernatowitz−amide Barlos Resin (渡辺化学工業株式会社)
・Fmoc−Lys(Fmoc)−OH:N−α,N−ε−Bis(9−fluorenylmethoxycarbonyl)−L−lysine(渡辺化学工業株式会社)
・Boc−Pra−OH:N−Boc−L−propargylglycine(東京化成工業株式会社)
・N
3−PEG−COOH:11−Azido−3,6,9−trioxaundecanoic Acid(東京化成工業株式会社)
・Fmoc−Lys(Boc)−Alko−PEG resin:N−α−(9−Fluorenylmethoxycarbonyl)−N−ε−(t−butoxycarbonyl)−L−lysine p−methoxybenzyl alcohol polyethyleneglycol resin(渡辺化学工業株式会社)
・Fmoc−Cys(Trt)−OH:N−α−(9−Fluorenylmethoxycarbonyl)−S−trityl−L−cysteine(渡辺化学工業株式会社)
・Fmoc−Phe−OH:N−α−(9−Fluorenylmethoxycarbonyl)−L−phenylalanine(渡辺化学工業株式会社)
・Fmoc−His(Trt)−OH:N−α−(9−Fluorenylmethoxycarbonyl)−N−τ−trityl−L−histidine(渡辺化学工業株式会社)
・Fmoc−Pro−OH:N−(9−Fluorenylmethoxycarbonyl)−L−proline(渡辺化学工業株式会社)
・Fmoc−Arg(Pbf)−OH:N−α−(9−Fluorenylmethoxycarbonyl)−N−ω−(2,2,4,6,7−pentamethyldihydrobenzofuran−5−sulfonyl)−L−arginine(渡辺化学工業株式会社)
・Fmoc−Val−OH:N−α−(9−Fluorenylmethoxycarbonyl)−L−valine(渡辺化学工業株式会社)
・Fmoc−Tyr(tBu)−OH:N−α−(9−Fluorenylmethoxycarbonyl)−O−(t−butyl)−L−tyrosine(渡辺化学工業株式会社)
・Boc−Cys(Npys)−OH: N−α−(t−Butoxycarbonyl)−S−(3−nitro−2−pyridinesulfenyl)−L−cysteine(国産化学)
・HATU:O−(7−aza−1H−benzotriazol−1−yl)−N,N,N’,N’−tetramethyluronium hexafluorophosphate(Genscript)
・DIEA: N,N−Diisopropylethylamine(和光純薬・ペプチド合成用)
・DMF: N,N−Dimethylformamide(関東化学・ペプチド合成用)
・TFA: 2,2,2−Trifluoroacetic acid(和光純薬)
・TIPS: Triisopropylsilane(渡辺化学工業株式会社)
・Thioanisole(渡辺化学工業株式会社)
・m−Cresol(東京化成)
・DCM: Dichloromethane(関東化学)
・ACN: acetonitrile(関東化学・HPLC用)
・α−CHCA:α−Cyano−4−hydroxycinnamic Acid
・分取カラム:YMC−Pack Pro C18, 20mm(I.D.) X 250mm(Length), 粒子径5μm, 細孔径12μm(YMC)
・分析カラム:YMC−Pack Pro C18, 4.6mm(I.D.) X 250mm(Length), 粒子径5μm, 細孔径12μm(YMC)
・MALDI−TOF MASS: Matrix Assisted Laser Desorption Ionization Time Of Flight Mass Spectrometry
・D.W.: distilled water
・硫酸銅五水和物(関東化学)
・アスコルビン酸(関東化学)
【0099】
2.MAPコアの合成
MAP4を例としてMAPコアの合成法を以下に記載する。
MAPコア合成は、通常のFmoc固相合成法を用い、全ての工程を手動にて行った。具体的にはNH2−SAL−Trt(2−Cl)− Resin 1mmol分を固相担体として以下の手順で合成した。
【0100】
【表5】
【0101】
合成終了後、固相0.1mmolに対しD.W.(ml):TIPS(ml):TFA(ml)の比が1.5:1.5:30となるように加え、1.5時間撹拌し、切出と脱保護を行った。切出後は、ろ過により溶液を回収しこれを減圧濃縮後、少量の水を加え凍結乾燥した。凍結乾燥後、0.1%TFAとACNを溶出液に用いた逆相HPLCにて以下の条件で精製を行った。
【0102】
精製条件:
・溶出液A: 0.1%TFA, 溶出液B: 0.1%TFA ACN
・平衡化:溶出液A 100%, 10mL/min, 10min
・溶出:溶出液A 100%→溶出液A 70%/溶出液B 30%, 10mL/min, 30minリニアグラジエント
【0103】
精製物はMALDI−TOF MASSを用いた質量分析(下記の条件)にて目的物の確認を行った。
【0104】
質量分析条件:
・マトリックス溶液:10mg/mL α−CHCA in 0.1%TFA 50%CAN水溶液
・サンプル:HPLC溶出液もしくは0.1%TFA 50%ACN水溶液(概ね1mg/mL ペプチド)
・マトリックス溶液とサンプルを1:1で混合しプレート上で混晶を形成した
【0105】
3.抗原ペプチド合成
抗原ペプチド合成もMAPコア合成と同様にFmoc固相合成法を用いて行った。
具体的にはFmoc−Lys(Boc)−Alko−PEG− Resin 0.4mmol分を固相担体として用い、最初にレジンをDMFで膨潤し、20%ピペリジンでFmoc基を脱保護した。以降は以下の手順で合成した。抗原ペプチドの配列はN
3−PEG−FPRCRYVHK−OHでありC末端からN末端に向かいペプチドを伸長した。
【0106】
【表6】
【0107】
合成終了後、固相1mmolに対しチオアニソール(ml):m−クレゾール(ml):TIPS(ml):TFA(ml)=3.6:1:0.6:25を加え、1.5時間撹拌し、切出と脱保護を行った。切出後は、ろ過により溶液を回収し、これを減圧濃縮した。さらにエーテルを加え、沈殿を回収し、未精製ペプチドを得た。未精製ペプチドは0.1%TFAとACNを溶出液に用いた逆相HPLCにて以下の条件で精製を行った。
【0108】
精製条件:
・溶出液A: 0.1%TFA, 溶出液B: 0.1%TFA ACN
・平衡化:溶出液A 90%/溶出液B 10%, 10mL/min, 10min
・溶出:溶出液A 90%/溶出液B 10%→溶出液A 50%/溶出液B 50%, 10mL/min, 30minリニアグラジエント
【0109】
HPLC 分析条件:
・溶出液A: 0.1%TFA, 溶出液B: 0.1%TFA ACN
・平衡化:溶出液A 90%/溶出液B 90%, 10mL/min, 10min
・溶出:溶出液A 90%/溶出液B 10%→溶出液A 40%/溶出液B 60%, 10mL/min, 30minリニアグラジエント
【0110】
精製物は、MALDI−TOF MASSを用いた質量分析(上記と同じ条件)にて目的物の確認を行った。
【0111】
精製が終了した抗原ペプチド370mg(260μmol)をDMSO 2mL に溶解し、BOC−Cys(Npys)−OH 220mg(586μmol)を加えジスルフィドを形成し、 配列中のCys残基側鎖のSH基を保護した。この反応後もHPLCにて上記と同様に精製し凍結乾燥を行い抗原ペプチドとした。
【0112】
4.MAP−ペプチドの合成
MAPコアと抗原ペプチドはヒュスゲン反応を利用して結合させた。すなわち、MAPコア中のアルキンをCu
+で活性化し抗原ペプチドN末端のアジド基と反応させ、トリアゾールにより結合させた。具体的な工程を以下に記載する。
【0113】
(工程1)MAPコアと抗原ペプチドを0.1%TFA水溶液に溶解した。このとき混合比は、MAPコア40mg(51μmol):抗原ペプチド320mg(195μmol)とし、これらを8M尿素水溶液2mlに溶解した(ペプチド溶液)。
【0114】
(工程2)硫酸銅・5水和物水溶液とアスコルビン酸水溶液の調製を次のように行った。硫酸銅・5水和物250mg(500μmol)を1mlのD.W.に溶解した(硫酸銅水溶液)。また、アスコルビン酸 440mg (2.5mmol)を1mlのD.W.に溶解した(アスコルビン酸水溶液)。次に、硫酸銅水溶液とアスコルビン酸水溶液を全量混和した(Cu
+溶液)。
【0115】
(工程3)次にヒュスゲン反応を行なった。具体的には、ペプチド溶液2mlとCu
+溶液1mlを混和し、室温で数時間反応した。
【0116】
(工程4)反応物を0.1%TFAとACNを溶出液に用いた逆相HPLCにて抗原ペプチド付近に出たピークをすべて分取し凍結乾燥した(273mg回収)。
【0117】
(工程5)上で得た凍結乾燥物試料273mgを1/15M リン酸緩衝液(K/Na
2) pH7.2 1mLに溶解し、4%炭酸水素ナトリウム溶液で pHを中性とした。この溶液にジチオスレイトール68mg(440μmol)を加え室温で還元し、逆相HPLCにて目的物を精製した。精製条件は、上記抗原ペプチドの精製と同様である。
【0118】
(工程6)MALDI−TOF MASSを用いた質量分析(条件は上と同じ)によって目的物の確認を行った。また、HPLC分析によって純度を検定した。HPLC純度検定条件は、上記抗原ペプチドの場合と同様であった。
【0119】
5.合成結果
合成結果は以下の通りであった。
【0120】
【表7】
【0121】
【表8】
【0122】
[実施例2]
<エボラ1MAP4又はエボラ2MAP4投与手順>
(1)試験A
エボラ1MAP4又はエボラ2MAP4(「エボラ−MAP4」という)の投与量(10%マウス血清中100μg、10μg、1μg)を変えてマウス1群、2群及び3群を設定した。また、血清添加群の対照として生理食塩水中100μgのエボラ−MAP4を投与するマウス4群を設置した。マウスは、BALB/cAJc(日本クレア)マウス(8週齢、雌)であり、各群5匹からなった。
【0123】
上記1群〜4群のマウスに、初回(0日)のみα−ガラクトシルセラミド(2μg)とエボラ−MAP4を静脈内投与し、その後1日目、3日目、7日目、14日目にエボラ−MAP4のみを投与し、初回投与3日前、初回投与後1日、7日、14日、21日にイソフルラン麻酔下で眼窩採血し、血清中の抗MAP抗体の濃度を測定した。
【0124】
(2)試験B
Balb/cマウスにエボラ1MAP4を2%DMSO−1%マウス血清入り生理食塩水に溶解したものを腹腔内注射した。投与量は、Balb/cマウスあたり100μg/100μL/マウス/回投与とした。MAP投与方法は、5日間毎日1日1回連日投与し(合計5回投与)、初回投与日から7日目、14日目に投与した。α−ガラクトシルセラミド投与は、初回のみMAP4とともに腹腔内投与し、用量は2μg/マウスとした。投与前、投与後で眼窩静脈叢から採血し、血清中の抗MAP抗体の濃度を測定した。
【0125】
(3)試験C
BDF1マウスにエボラ1MAP4及びエボラ2MAP4の混合物を2%DMSO−PBSに溶解したものを腹腔内注射した。用量は、マウスあたりMAP4総量として200μg/100μL/マウス/回投与とした。MAP投与方法は、5日間毎日1日1回連日投与し(合計5回投与)、初回投与日から7日目、14日目に投与した。α−ガラクトシルセラミド投与は、初回のみMAP4とともに腹腔内投与し、用量は2μg/マウスとした。投与前、投与後で眼窩静脈叢から採血し、血清中の抗MAP抗体の濃度を測定した。
【0126】
<エボラ−MAP4のマウス血清中抗体価の測定法>
抗体MAP抗体の測定には、エボラ1又はエボラ2のペプチドに牛血清アルブミン(BSA)とFLAGを結合したものをELISAプレートに固相化し、その後100倍希釈した血清を添加し、37℃で1時間インキュベートした後、それぞれペルオキシダーゼ標識された抗IgM抗体(SouthernBiotech社)、抗IgG抗体(SouthernBiotech社)、抗IgG1抗体(SouthernBiotech社)、抗IgG2a抗体(SouthernBiotech社)、抗IgG3抗体(SouthernBiotech社)をメーカー推奨濃度で加え、ペルオキシダーゼによる基質分解後の発色をプレートリーダーを用いて測定し、血清中抗体価を測定した。
【0127】
また、エボラ1又はエボラ2のペプチドに牛血清アルブミン(BSA)とFLAGを結合したものをELISAプレートに固相化し、血清の代わりに抗FLAGモノクローナル抗体(Clone: M2マウスIgG1、シグマアルドリッチ社)を各種濃度に希釈して添加し、抗MAP抗体価測定と同様にして測定することで、抗MAP抗体価の定量化のための標準曲線とした。この標準曲線から、抗MAP抗体のおおよその血清中抗体濃度を算出した。
【0128】
<試験Aの結果>
血清中の抗MAP抗体の濃度を測定した結果を、
図2に示した。
図2から、エボラ1MAP4の静脈内投与では、100μg投与群でのみIgG上昇が認められた。
【0129】
しかし、エボラ2MAP4の静脈内投与では、IgG及びIgM上昇は認められなかった。
【0130】
<試験Bの結果>
血清中の抗MAP抗体の濃度を測定した結果を、
図3に示した。
図3から、エボラ1MAP4の腹腔内投与では、IgMが明らかに上昇したマウスが1匹、軽度上昇したマウスが2匹認められたが、IgG上昇は認められなかった。
【0131】
<試験Cの結果>
血清中の抗MAP抗体の濃度を測定した結果を、
図4(IgG価)及び
図5(IgM価)に示した。
【0132】
図4から、エボラ1MAP4及びエボラ2MAP4混合投与における、エボラ1及びエボラ2に対するIgG価を測定した結果、エボラ1には5匹中2匹で、エボラ2でも5匹中2匹でIgG上昇が認められた。測定したエボラ1−IgG濃度は、10〜20ng/mLであった。
【0133】
図5から、エボラ1及びエボラ2に対するIgM価が明らかに上昇したマウスが2匹、軽度に上昇したマウスが2匹認められた。