【解決手段】一定の期間内に発生した地震について、規模、震源位置、発生日時及びその震源位置の地表面からの深さの情報を、震源情報として取得する。そして、取得した震源情報から、指定された座標範囲の震源情報を読出し、それぞれの震源情報の震源位置と深さに対応した座標位置を、3次元空間内にプロットした3次元震源分布画像を生成する。その3次元震源分布画像の表示などで、利用者に提示する。震源情報を選ぶ期間や座標位置の範囲などを選択することで、様々な条件での地震の発生状況を表示できるようになる。
前記3次元画像生成部は、前記3次元空間として、前記表示条件設定部により設定された深さの地表面と最深面との間に形成される3次元空間とし、前記3次元震源分布画像内に、地表面及び最深面を表示するようにした
請求項1に記載の震源情報可視化システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、地下に存在する断層面は、地質踏査では特定するのが困難であり、地球物理学的手法が必要であった。例えば、人工的に起こした地震波などの断層面での反射波を用いて地下断層面を特定する手法や、地図上での余震の分布から本震のすべり面を特定する手法などが知られている。反射波を用いて地下断層面を特定するためには、大規模な物理探査が必要であり、簡単に地下断層面を特定することはできないという問題があった。
【0005】
また、地図上での余震の分布から本震のすべり面を特定する場合には、規模や地質情報を用いて予め余震が発生したと想定される期間を定めて、その期間内に設定した地域で発生した地震の情報を使って、1つの地下断層面を特定することが行われる。ここで、時間的にどこまで後の地震を余震とするか、どこまでの距離の地震がすべり面の影響によるものであるか、などの条件の設定が難しいという問題があった。
例えば、本震と思われる地震から特性時間(たとえば、1週間後)までに発生した地震の情報からすべり面を特定した場合と、本震と思われる地震から特性時間の2倍(2週間後)までに発生した地震の情報からすべり面を特定した場合とでは、すべり面の位置が相違する可能性がある。従来は、解析を行う者が、解析に使用する地震情報の時間的な範囲や地域的な範囲を決めて、その条件ですべり面を求めるようにしていた。しかしながら、実際にはどの地震が本当に余震であるのかを判断することは非常に難しく、決めた条件が本当に正しいかどうかの検証は、容易にはできないという問題があった。
また、地震の発生状況によっては、複数のすべり面の影響で地震が発生することもあるが、そのような複数のすべり面が影響しているのか否かを、簡単に検証することも困難であった。
【0006】
本発明の目的は、地震の位置、規模及び発生日時の情報から、視覚的に地震発生の状況の正確な把握ができると共に、地下の断層面の適切な推定が行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の震源情報可視化システムは、地震情報収集部と、地震情報蓄積部と、地震情報検索部と、地震情報取得部と、読出し範囲設定部と、3次元画像生成部と、表示条件設定部と、提示部とを備える。
地震情報収集部は、地震情報のデータベースから、定期的に地震情報を収集する。地震情報のデータベースは、例えばインターネット上で公開されているデータベースを利用する。利用者が作成した、または指定したデータベースを追加で入力する場合も、ここで収集する。
地震情報蓄積部は、地震情報収集部が収集した地震情報を記憶する。
地震情報検索部は、地震情報取得部から指定される条件に従って、地震情報蓄積部に記憶された地震情報を検索する。
地震情報取得部は、読出し範囲設定部により指定される条件に従って、地震情報検索部に地震情報の検索を指示し、その検索結果を震源情報として取得する。
読出し範囲設定部は、地震の発生日時、地震の震源の座標位置、震源の深さ、及び地震の規模といった、地震情報取得部が取得する震源情報の取得条件を設定する。
3次元画像生成部は、地震情報取得部が取得した震源情報に含まれるそれぞれの震源の位置と深さに対応した座標位置を、3次元空間内にプロットした3次元震源分布画像を生成する。
表示条件設定部は、3次元画像生成部が生成する3次元震源分布画像の表示条件を設定する。
提示部は、3次元画像生成部が生成した3次元震源分布画像を提示する。
【0008】
また本発明の震源情報可視化方法は、以下の(a)〜(h)の処理を行う工程を含む。
(a)インターネット上で公開されている地震情報のデータベースから、定期的に地震情報を収集する地震情報収集処理および利用者指定データベースの地震情報収集処理
(b)地震情報収集処理が収集した地震情報を記憶する地震情報蓄積処理
(c)地震情報取得処理から指定される条件に従って、地震情報蓄積処理により記憶された地震情報を検索する地震情報検索処理
(d)読出し範囲設定処理により指定される条件に従って、地震情報検索処理に地震情報の検索を指示し、その検索結果を震源情報として取得する地震情報取得処理
(e)地震の発生日時、地震の震源の座標位置、震源の深さ、及び地震の規模といった、地震情報取得処理が取得する震源情報の取得条件を設定する読出し範囲設定処理
(f)地震情報取得処理により取得した震源情報に含まれるそれぞれの震源の位置と深さに対応した座標位置を、3次元空間内にプロットした3次元震源分布画像を生成する3次元画像生成処理
(g)3次元画像生成処理により生成する3次元震源分布画像の表示条件を設定する表示条件設定処理
(h)3次元画像生成処理により生成した3次元震源分布画像を提示する提示処理
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、本震とその本震の前後に発生した地震を3次元空間内にプロットした3次元震源分布画像が得られ、地震発生位置の付近の地下での地震の発生状況を3次元震源分布画像から的確に評価することができる。例えば、3次元震源分布画像内での本震と余震のプロット位置から、本震を発生した地下断層面を的確かつ簡単に推定できるようになる。また、画像内に表示する震源情報の発生期間や座標位置の範囲などの条件を変更することで、異なった条件での地震の発生状況を簡単に表示できるため、様々な条件での地震の評価が簡単にできるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、本例と称する)を、添付図面を参照して説明する。
[1.システム構成例]
図1は、本例の震源情報可視化システム100の機能的な構成を示す機能ブロック図である。
震源情報可視化システム100は、サーバー装置110とクライアント装置120とで構成される。サーバー装置110は、地震情報収集部111を備え、ネットワークNを経由して、定期的に、例えば1日1回、地震情報データベース10にアクセスして、最新の地震情報を取得する地震情報収集処理を行う。定期的に最新情報を取得するのは一例であり、一括してデータを収集してもよい。
地震情報データベース10としては、例えば気象庁が過去の地震情報を蓄積して、インターネット上で公開しているデータベースを利用する。また、地震情報収集部111は、利用者指定の特定のデータベースを使用したり、あるいは利用者自身が入力したデータセットをデータベースとして用意して、利用してもよい。
【0012】
地震情報収集部111は、取得した地震情報を、地震情報蓄積部112に記憶する地震情報蓄積処理を行う。ここで地震情報収集部111が地震情報データベース10より取得(収集)する地震情報には、地震が発生した日時、地震の震源の座標位置、震源の深さ、及び地震の規模(マグニチュード)の情報が含まれる。なお、震源の深さは、例えば平均海水面(標高0m)からの深さを示す。
地震情報収集部111は、取得したそれぞれの地震情報を、地震情報蓄積部112に記憶する。本例の震源情報可視化システム100では、この地震情報蓄積部112に記憶された地震情報で示される震源を表示して利用者に提示する処理が行われる。
【0013】
クライアント装置120の地震情報取得部121は、地震情報検索部113に対し、利用者により読出し範囲設定部122に入力された条件に合致する地震情報の取得を要求する。読出し範囲設定部122に入力される条件としては、例えば後述する設定画面(
図4)で示されるような、地震が発生した日付(又は時間)の範囲、震源位置の緯度及び経度の範囲、震源の深さの範囲、地震の規模の範囲などがある。
【0014】
地震情報検索部113は、地震情報蓄積部112に蓄積された地震情報のうち、指定された条件に合致する地震情報を検索して抽出する地震情報検索処理を行い、地震情報取得部121に返却する。地震情報取得部121は、前項にて指定された地震情報の検索条件に従って地震情報検索部113により抽出された地震情報を取得する地震情報取得処理を行う。
【0015】
地震情報取得部121が地震情報検索部113より取得した地震情報は、3次元画像生成部123に渡される。さらに、3次元画像生成部123は、その仮想的に生成された3次元空間の内部に、地震情報取得部121より渡された地震情報の各震源位置をプロットした3次元震源分布画像を生成する。震源位置をプロットする3次元空間は、震源の深さの範囲の条件で設定した地表面及び最深面を、上面及び下面とした3次元空間であり、3次元震源分布画像では、この地表面と最深面が表示される。このとき、地表面には、該当する緯度及び経度の範囲内の地図又は地形が表示される。
なお、表示モードの設定によっては、3次元震源分布画像を表示する際に、距離や深さなどの値、緯度値、経度値を表示するようにしてもよい(後述する
図6,
図7参照)。
また、ここでは上面を地表面と称するが、後述する設定画面は、深さの表示範囲として、上面を標高0m以外の面としたときに、画像内に表示される地表面が標高0m以外の面となる場合もある。
【0016】
3次元画像生成部123が3次元震源分布画像を生成する際には、3次元震源分布画像をどのアングルから見た画像とするか等の表示条件が、表示条件設定部124から指示される。この表示アングルなどの指示は、例えばコンピューター装置の場合にはマウスなどの操作に基づいて行われ、タブレット端末やスマートフォンなどのタッチパネルを備えた装置の場合には、画像を表示した画面上のタッチ操作などに基づいて行われる。
震源位置を示す印の表示形態についても、表示条件設定部124からの指示で設定される。本例の場合には、3次元画像生成部123が3次元空間の内部に震源位置をプロットする場合、例えばそれぞれの震源を球体(円形)の印で示す。この場合、円形の球体の印のサイズや表示色が、表示条件設定部124で設定した条件により決まる。例えば、地震のマグニチュードが大きいほど、大きい球体の印とする。あるいは、地震が発生した日付や期間ごとに異なる色の球体の印とする。あるいはまた、震源位置の深さによって、異なる色の球体の印とする。
【0017】
さらに、3次元震源分布画像を作成する際には、3次元空間の内部の震源の位置から求まる近似平面を表示することもできる。ここでの近似平面とは、3次元空間に配置した各震源の座標位置からの距離が最小となる平面である。すなわち、それぞれの震源の座標位置が、3軸x,y,z上の点列(x
0,y
0,z
0)、(x
1,y
1,z
1)、・・・、(x
n,y
n,z
n)で示されるとき、その点列(x
0,y
0,z
0)、(x
1,y
1,z
1)、・・・、(x
n,y
n,z
n)を最小二乗近似する平面z=ax+by+c(ここで、a,b,cは係数)が近似平面となる。
【0018】
この近似平面を求める処理をより詳細に説明すると、点列(x
0,y
0,z
0),(x
1,y
1,z
1),・・・,(x
n,y
n,z
n)について、点(x
i,y
i,z
i)と平面z=ax+by+cのz方向の距離d
iの2乗和Q=Σd
i2=Σ(ax
i+by
i+c-z
i)
2を最小にする係数(a,b,c)を決定し代入した平面zが、近似平面である。
この近似平面を求めることは、地震により発生したすべり面(断層面)を推定することに相当する。これらの表示を行う条件についても、設定画面から利用者が設定することが可能である。
さらにまた、3次元震源分布画像内の特定の震源位置の印(球体)が、利用者による画面のクリックなどで選択されたときには、その座標位置の震源についての詳細情報(マグニチュードの値、発生日時、緯度、経度、深さなど)を文字や数字で直接表示することができる。
これらの表示形態の具体な例については、
図6以降の表示例で後述する。
【0019】
3次元画像生成部123が生成した3次元震源分布画像は、表示部125により表示される。この表示部125により、利用者に3次元震源分布画像が提示される。また、3次元画像生成部123が生成した3次元震源分布画像は、出力部126から外部に出力するようにしてもよい。例えば、震源情報可視化システム100に外部の端末からのアクセスで3次元震源分布画像の作成指示がある場合には、出力部126が、外部の端末に対して3次元震源分布画像を送信して、外部の端末の利用者に3次元震源分布画像を提示する。また、出力部126として、プリンターを用意し、3次元震源分布画像の印刷物を出力するようにしてもよい。
【0020】
[2.震源情報可視化システムのハードウェア構成例]
図2は、本例の震源情報可視化システム100に適用されるコンピューター装置のハードウェア構成例を示す。
図1に示す震源情報可視化システム100のサーバー装置110及びクライアント装置120は、それぞれコンピューター装置Cにより構成される。クライアント装置120を構成するコンピューター装置としては、スマートフォンやタブレット端末などの、様々な形態の情報処理装置が含まれる。
【0021】
図2に示すコンピューター装置Cは、バスラインC4にそれぞれ接続されたCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)C1、ROM(Read Only Memory)C2、及びRAM(Random Access Memory)C3を備える。さらに、コンピューター装置Cは、不揮発性ストレージC5、入出力部C6、及びディスプレイC7を備える。
【0022】
CPU C1は、本例の震源情報可視化システム100が備える各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM C2から読み出して実行する。RAM C3には、演算処理の途中に発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれる。本例の場合、CPU C1がROM C2に記憶されているプログラムを読み出すことで、3次元震源分布画像の生成処理が実行される。
【0023】
不揮発性ストレージC5としては、例えば、HDD(Hard disk drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリ等が用いられる。この不揮発性ストレージC5には、OS(Operating System)、各種のパラメータの他に、コンピューター装置Cを震源情報可視化システム100として機能させるためのプログラムが記録されている。
【0024】
入出力部C6は、例えばネットワークに接続するためのインターフェイス装置などが用いられ、各種のデータを外部との間で送受信することが可能である。本例の場合、入出力部C6は、3次元震源分布画像のデータを外部の端末に送信する。あるいは、プリンターに印刷用の画像データを出力するようにしてもよい。
ディスプレイC7は、コンピューター装置Cにより実行した処理結果を表示する。ここでは、CPU C1の制御で作成された3次元震源分布画像がディスプレイC7に表示される。
【0025】
[3.3次元震源分布画像を作成する処理例]
図3は、本例の震源情報可視化システム100が3次元震源分布画像を作成する際の処理の流れを示すフローチャートである。
まず、震源情報可視化システム100の読出し範囲設定部122が、3次元震源分布画像を作成する際に使用する地震情報を読出す条件として、表示日時範囲を設定する(ステップS11)。
次に、読出し範囲設定部122は、3次元震源分布画像として震源を表示する範囲(座標位置)を設定する読み出し範囲設定処理を行う(ステップS12)。
【0026】
さらに、読出し範囲設定部122は、震源の深さの表示範囲の設定を行うとともに(ステップS13)、地震のマグニチュードの表示範囲の設定を行う(ステップS14)。これらのステップS11〜S14での表示条件設定処理は、設定画面上での利用者による入力に基づいて行われる。
そして、表示条件設定部124は、表示色閾値の設定(ステップS15)、及びグラデーションの設定(ステップS16)を、それぞれ設定画面上での利用者による入力に基づいて行う。
次に、3次元画像生成部123は、読出し範囲設定部122により設定された条件の地震情報を地震情報蓄積部112から読出す。そして、表示条件設定部124は、設定された条件を表示形態とする指示を3次元画像生成部123に対して行う。なお、ステップS11からステップS16の処理については、上述した順序に限らない。つまり、いずれの順序で処理してもよく、
図3のフローチャートに示す順序はあくまでも一例を示したに過ぎない。
【0027】
ステップS15における表示色閾値の設定は、マグニチュードの表示色を変更する閾値を設定するものである。この表示色閾値を設定する際には、設定した閾値以上のマグニチュードの地震について、他の地震と区別した特別な色(例えば目立つ色)で表示する処理が行われる。例えば、この表示色閾値の機能を使って、本震よりも若干低いマグニチュードを表示色閾値に設定することで、3次元震源分布画像で、本震だけを特別な色で表示することができる。
【0028】
また、ステップS16におけるグラデーションの設定は、複数の地震を色分け表示する条件を設定するものである。例えば、マグニチュードによる色分け、日付による色分け、及び深さによる色分けの3つのモードが用意され、設定画面において利用者により表示されるモードの設定が行われる。
【0029】
次に、表示条件設定部124は、震源位置の近似平面を表示する設定がなされているか否かを判断する(ステップS17)。このステップS17で、近似平面を表示する設定がなされている場合には(ステップS17のYES)、表示条件設定部124は、3次元震源分布画像として近似平面を表示する設定を行う(ステップS18)。なお、この近似平面は、震源位置の集合を最もよく説明した平面であり、3次元空間の内部にプロットした各震源位置からの距離が最小となるように設定した平面である。また、このステップS17からステップ18の処理については、前述のステップS11からステップS16の各処理の間のどこかにおいて行われてもよく、
図3のフローチャートに示す順序はあくまでも一例を示したに過ぎない。
【0030】
ステップS17で近似平面を表示する設定がなされていない場合(ステップS17のNO)、及びステップS18での近似平面の設定が行われた場合には、地震情報取得部121が設定された条件で地震情報の検索指示を地震情報検索部113に対して行い、地震情報検索部113は指示された条件に基づいて地震情報蓄積部112より地震情報を検索する(ステップS19)。そして、その検索された地震情報を使って、3次元画像生成部123は、3次元空間の内部にそれぞれの地震情報をプロットする3次元画像生成処理を行う(ステップS20)。また、3次元画像生成部123は、表示条件設定部124から指示されたアングルで3次元空間の内部に地震情報がプロットされた3次元震源分布画像の描画処理を行う(ステップS21)。なお、3次元画像生成部123が3次元震源分布画像を描画する際には、必要により距離,深さ,緯度,経度などの数値を画像中に付加する。また、いずれかの震源の詳細表示を行う指示がある場合には、3次元画像生成部123は、該当する震源の詳細情報(マグニチュードの値、発生日時、緯度、経度、深さなど)を文字や数字で加える。
このようにして描画された3次元震源分布画像は、表示部125に表示されるとともに、出力部126からプリントなどの出力処理が行われ、利用者に提示される。
【0031】
[4.設定画面の例]
図4は、3次元震源分布画像を生成する際の各項目の設定画面の例である。
この設定画面は、表示部125に表示される画面であり、画面内の各設定項目の入力は、利用者の操作により行われる。
図4に示す設定画面には、上から順に、日付の範囲の入力箇所、緯度の範囲の入力箇所、経度の範囲の入力箇所、深さの範囲の入力箇所、マグニチュードの入力箇所、表示色閾値の値の入力箇所、近似平面の表示の有無の入力箇所、及びグラデーションのモードの選択箇所が設けられている。
【0032】
日付の範囲の入力箇所は、3次元震源分布画像内にプロットされる地震の発生日の範囲を指示する。
図4では、2016年4月14日から2016年4月20日を範囲として設定した例を示す。
緯度及び経度の範囲の入力箇所は、3次元震源分布画像内にプロットされ地震の緯度及び経度の範囲を指示する。
図4では、緯度(北緯)として31°から35°の範囲、経度(東経)として129°から133°の範囲を設定した例を示す。
【0033】
深さの範囲の入力箇所は、3次元震源分布画像内にプロットされる地震の地表面から最深面までの範囲を指示する。
図4では、地表面0kmから最深面20kmまでの範囲を設定した例を示す。
マグニチュードの範囲の入力箇所は、三次元空間の内部にプロットされる地震のマグニチュードの範囲を指示する。
図4では、マグニチュードの範囲の指示を行わない例を示し、この場合には、地震情報として得られた全てのマグニチュードの地震が表示される。
【0034】
表示色閾値の値の入力箇所には、閾値を超えたときに特定の色(表示形態)で表示する際の、その閾値のマグニチュードの値が入力される。
図4では、マグニチュード6以上を設定した例を示す。
図6以降の表示例では、閾値を超えた地震の印は、網掛け表示としてある。
近似平面の表示の有無の入力箇所は、近似平面を表示する指示があるとき、チェック有りになり、近似平面を表示する指示がないときには、チェック無しになる。
グラデーションのモードの選択箇所は、日付による色分けモード、マグニチュードによる色分けモード、深さによる色分けモードのいずれか1つのモードでの表示が選択される。
図4では、日付による色分けモードを設定した例を示している。
図4には示さないが、設定画面において、距離,深さ,緯度,経度などの数値の表示を行うか否かの選択や、地図の表示を行うか否かの選択、地図の種類の選択、緯度経度深さのスケールを合わせるか否かの選択等を行うようにしてもよい。
【0035】
[5.3次元震源分布画像の表示形態の設定例]
3次元画像生成部123は、表示条件設定部124からの指示に基づいて、3次元空間を見るアングルを任意の方向に設定することにより、3次元震源分布画像を生成することができる。
図5A,B,Cは、それぞれ別のアングルで3次元空間を見た場合の例を示す。なお、
図5では、3次元空間の表示形態を示し、震源を示す印はプロットされていない。
図5Aは、3次元空間の地表面P1を真上から見たアングルである。地表面P1には、該当する範囲の地図mが表示されている。また、南Sと北Nの方向を示すラインと、東Eと西Wの方向を示すラインが、地表面P1内に表示される。なお、
図5Aでは、地表面P1は最深面と重なっている。
【0036】
この
図5Aに示す状態から、表示条件設定部124が、地表面P1を水平方向(矢印θ1の方向)に回転させる指示を行うと、3次元画像生成部123はその指示に対応した回転位置の画像を描画する。また、表示条件設定部124が、東Eと西Wの方向を示すラインを軸として、その軸の周囲を矢印θ2の方向に回転させる指示を行うと、3次元画像生成部123はその指示に対応したアングルの画像を描画する。
図5B及び
図5Cは、
図5Aに示す状態から、矢印θ2の方向の回転指示を行ったアングルでの表示形態を示している。
【0037】
図5Bは、3次元空間を斜め上から見たアングルの例を示す。
この状態では、地表面P1と最深面P2とが、上下に離れてほぼ同じ形状で表示され、その地表面P1と最深面P2との間に、地震情報で示される震源位置がプロットされる。地表面P1には、南Sと北Nの方向を示すライン、東Eと西Wの方向を示すライン、及び地図mが表示される。
また、地表面P1の中心位置と最深面P2の中心位置を貫通する鉛直軸Zが表示される。
なお、
図5Bは、近似平面P3の一例を示した図である。この近似平面P3は、画像中に表示された全ての震源の座標位置からの距離が最小となる位置とした、震源の集合を最も良く表した平面であり、
図5Bに示す表示位置はあくまでも一例である。
【0038】
図5Cは、3次元空間を横から見たアングルの例を示す。
この状態では、地表面P1と最深面P2とが、相互に反転した台形形状で表示され、その地表面P1と最深面P2との間に、地震情報で示される震源位置がプロットされる。地表面P1には、南Sと北Nの方向を示すライン、東Eと西Wの方向を示すライン、鉛直軸Z、及び地図mが表示される点は、
図5Bのアングルと同じである。この
図5Cの例も、近似平面P3の一例である。
【0039】
[6.実際の3次元震源分布画像の例]
図6〜
図13は、実際の震源分布を示す3次元震源分布画像の例を示した図である。
図6〜
図13の3次元震源分布画像200a〜200hでは、ライン201は、
図5に示した東Eと西Wの方向を示すラインであり、ライン202は、
図5に示した南Sと北Nの方向を示すラインである。
【0040】
なお、
図6及び
図7は、距離,深さ,緯度,経度の値を表示させた例を示す。すなわち、
図6及び
図7に示すように、ライン201,202の中心から50kmの地点に、距離の値[50km]を表示している。また、
図6に示すように、ライン201の緯度[33°]や、ライン202の経度[131°]を表示している。さらに、
図7に示すように、深さを示すライン203に、50kmごとの深さの値を表示させてある。
図8以降ではこれらの数値表示は省略するが、同様に表示するようにしてもよい。
図6や
図7で距離や深さを50km単位で表示するようにしたのは一例であり、より細かい距離や深さを表示してもよい。
また、
図6〜
図13の例では、各画像200a〜200hの右隅に、震源を表示する日時の範囲を設定するスライダ210と、そのスライダ210内の日時の始点のノブ211及び終点のノブ212を示している。
【0041】
図6〜
図13の3次元震源分布画像200a〜200hでは、各震源の位置を球体(円形)で示し、その球体の大きさをマグニチュードの値によって、複数段階に変化させている。
なお、
図6〜
図13の3次元震源分布画像200a〜200hでは、地表面P1での地図(地形)の表示形態として、地形を薄く表示した形態としたが、より明確に地形や地図が分かる表示形態としてもよい。この地図(地形図)の表示を行う際には、既に知られた活断層マップなどから取得した断層の位置を表示するようにしてもよい。
【0042】
この
図6〜
図13に示した3次元震源分布画像200a〜200hは、九州の熊本地方で、2016年4月16日1時25分に本震が発生した地震(いわゆる平成28年熊本地震)についての、本震と余震の3次元震源分布画像である。
平成28年熊本地震の経緯について簡単に説明すると、2016年4月14日21時26分に、深さ11km,マグニチュード6.5の前震と解釈できる地震があり、その後の2016年4月16日1時25分に、深さ12km,マグニチュード7.3の本震があった。
【0043】
図6〜
図13から分かるように、最初の前震と解釈できる地震の発生から長期間に亘って余震が発生している。余震の中では、2016年4月15日0時3分にマグニチュード6.4の余震があり、他の余震はマグニチュード6.0未満であった。なお、ここでのマグニチュードの値は気象庁が発表したものである。
なお、
図6〜
図10では、日付による色分けモードを設定した状態を示し、地震が発生した日付ごとに異なる色(図面上では異なる濃さ)で、各球体の印を表示させている。
【0044】
図6の3次元震源分布画像200aは、3次元空間を真上から見たアングルの例を示し、表示日時の範囲の始点及び終点のノブ211,212は、4月14日及び4月21日の全範囲とした例である。真上から見たアングルであるため、
図6の例は3次元表示ではなく平面的な表示形態になっている。すなわち、
図6に示す震源分布画像200aの表示形態は、従来から知られた、2次元の地図中に震源位置をプロットした震源分布図と同じである。平成28年熊本地震の場合、
図6に示すように、多くの余震がほぼ直線状に並び、この直線状に余震が並んだ箇所に、断層があることが推測される。
【0045】
図7に示す3次元震源分布画像200bは、3次元空間をほぼ横から見たものである。この
図7の3次元震源分布画像200bは、表示範囲として、4月14日の21時から4月15日の21時まで、つまり前震が発生してから本震が発生する直前での震源分布を示す。この期間には、マグニチュード6を超える地震が2回あり、そのマグニチュード6を超える地震の震源位置の円形の印e1,e2が、他の印とは異なる表示形態(図では網掛け状の表示形態)で示される。
また、
図7に示す3次元震源分布画像200bは、利用者によるクリックなどの操作で、1つの印e1が選択されたときの震源の詳細の表示例を示す。すなわち、印e1が選択された場合、3次元震源分布画像200bは、印e1に該当する震源の詳細(マグニチュードの値、発生日付及び時刻、緯度及び経度、深さ等)を、文字及び数字で印e1の脇に表示している。この震源の詳細表示は、画像中のいずれの震源についても可能である。また、
図7以外の他の表示(
図6、
図8−
図13に示す表示)を行った場合にも、震源の選択操作で、該当する詳細表示が行われる。
【0046】
図8に示す3次元震源分布画像200cは、
図7の3次元震源分布画像200bから表示範囲の終点(ノブ212の位置)をシフトさせて、4月14日の21時から4月17日の2時まで、つまり前震が発生してから本震が発生した直後までの震源分布を示している。
図8で新たに加わった印e3が、本震の位置を示すものである。
図8の画像200cと
図7の画像200bを比較すると分かるように、本震の直後には多数の余震が発生していることが分かる。
【0047】
図9に示す3次元震源分布画像200dは、
図8の3次元震源分布画像200cからさらに表示範囲の終点(ノブ212の位置)をシフトさせて、4月14日の21時から4月18日の2時まで、つまり前震が発生してから本震の約1日後までの震源分布を示したものである。
このように本震発生から約1日の経過で、さらに余震が増えていく状態が、
図9に示す3次元震源分布画像200dから分かる。
【0048】
図10に示す3次元震源分布画像200eは、
図9の3次元震源分布画像200dからさらに表示範囲の終点(ノブ212の位置)をシフトさせて、4月14日の21時から4月21日の0時までの約1週間の震源分布を示す。
この
図10から分かるように、マグニチュード6を超える3つの地震の印e1,e2,e3の周囲に、多数の余震が発生した状況が分かる。ここで、発生した余震の日付ごとに印の色(濃さ)が異なると共に、その印の球体の大きさが地震の規模(マグニチュード)に対応しているため、1日ごとにどの程度の余震がどの位置や深さで発生したかが評価できるようになる。
【0049】
図10に示す3次元震源分布画像200eから各地震の3次元分布を見ると、地震の発生位置として、グループGaと、グループGbの2つに分かれていることが分かる。
図10は1つのアングルから見た状態であるが、
図5に示す水平方向θ1の回転で他の方位から見ることで、2つのグループGa,Gbに分かれていることが、より明確に分かる。
地震の発生位置が、2つのグループGa,Gbに分かれているということは、この2つのグループGa,Gbが、別の断層で起きた破壊による誘発地震である可能性が高いと評価することができる。
【0050】
つまり、
図10は、2つの断層に分かれて地震が発生した状態を示しており、本震の印e3を含む断層の破壊に伴って、別の断層の破壊も生じたことが、
図10に示す3次元震源分布画像200eから明確に理解できる。従来の平面的な震源分布図を使った解析では、1つの断層が連続したものであるのか、あるいは別の2つの断層であるのか、簡単には評価できない場合が多々あった。これに対して、本例のように立体的に示した場合には、画像から簡単に地震の発生状況等を適切に評価することができる。特に、本例の場合には、
図7〜
図10に示すように、表示する震源の時間範囲を様々に変更して表示させることで、震源位置の時間的な変化を三次元的に評価することができ、断層位置などを適切に推定できるようになる。
また、各地震の発生状況から、断層破壊がどの程度の深さでどの程度生じたかについても評価できるようになる。
【0051】
図11に示す3次元震源分布画像200fは、震源の印の表示形態を、深さによる色分けモードとした例である。この例は、深さが深い程、濃い色で表示させた例である。但し、表示色閾値として設定されたマグニチュードを超えた地震の印e1,e2,e3については、網掛け表示として、この3つの地震の印e1,e2,e3が、区別できようにしている。
この
図11に示す3次元震源分布画像200fから、各地震の深さを評価することができる。
【0052】
図12及び
図13に示す3次元震源分布画像200f及び200gは、近似平面P3を表示させた例である。
図12の震源分布画像200fは真上から見た平面図であり、
図13の3次元震源分布画像200gは、立体的に近似平面P3を見た図である。
この近似平面P3は、各震源の位置を近似して求めた平面であり、
図12のように真上から見た平面図の震源分布画像200fでは、近似平面P3は直線として表示される。一方、立体的に近似平面P3を見た場合には、近似平面P3の地下空間内での配置状態が分かるようになる。この近似平面P3から、地震により生じた断層の評価ができるようになる。
なお、
図12及び
図13の例は、表示範囲全体から近似平面P3を求めた例であるが、例えば
図10で説明したそれぞれのグループGa、Gbごとの地震の表示範囲を設定して、表示範囲ごとの近似平面P3を表示させる処理を行うこともできる。このように表示範囲ごとの近似平面P3を表示することにより、より実際の断層の位置に近い近似平面P3を表示させることができる。
したがって、本例によると、地震により生じた地下の断層を適切に評価できるようになる。なお、画面上で、それぞれ異なる条件で得た複数の近似平面を同時に表示するようにして、それぞれの近似平面の比較や評価ができるようにしてもよい。
【0053】
[7.変形例]
なお、
図6から
図13のそれぞれの図に示した3次元震源分布画像の表示例はあくまでも一例であり、その他の表示形態としてもよい。すなわち、
図6〜
図13の例では、各震源の位置に、マグニチュードの値に対応した球体を印として配置した画像としたが、その他の印を配置した画像としてもよい。マグニチュードの値に対応して球体の大きさを変化させる点についても一例であり、その他の表示形態で、マグニチュードなどの地震の規模が分かるようにしてもよい。
【0054】
また、ここまで説明した例では、地震情報として、震源のマグニチュードの値と座標位置と深さの値を得るようにしたが、その他の情報を取得して、3次元震源分布画像を生成する際に、その取得した情報を使った表示を行うようにしてもよい。例えば、地震波が地中を伝わる速度の情報を取得して、3次元分布画像として、震源情報と重ね合わせ表示を行うようにしてもよい。
【0055】
また、近似平面を算出する際に、各震源からの距離が最小となる平面を算出する方法は、好適な一例を示すものであり、その他の演算処理を用いて複数の震源の集合状態を表した面を算出して近似平面としてもよい。また、演算処理で求まる近似面の少なくとも一部が曲面である場合には、その曲面を近似面として表示してもよい。また、3次元空間内に配置された震源のいくつかを利用者が選択し、その選択された震源を元にひとつあるいは複数の近似平面を表示するモードを用意してもよい。
【0056】
また、
図4に示す設定画面は、ひとつの画面ですべての地震情報取得/表示条件を入力する例としたが、いくつかの条件ごとに設定画面をわけるようにしてもよい。
【0057】
また、
図1に示す震源情報可視化システム100は、サーバー装置110とクライアント装置120で構成した例とした。これに対して、1つのコンピューター装置内で地震情報の収集から3次元震源分布画像まで全ての処理を行うようにしてもよい。
図1に示すようにクライアント装置120がサーバー装置110にアクセスする場合にも、3次元震源分布画像の生成までをサーバー装置110が実行して、クライアント装置120側では、サーバー装置110から伝送される画像の表示やプリントなどを行うようにしてもよい。
【0058】
また、上述した実施の形態例では、作成した3次元震源分布画像を利用者に提示する提示部として、2次元の画像表示を行う表示部とした例を示したが、その他の形態で利用者に提示するようにしてもよい。例えば、立体画像表示が可能な表示装置を使用して、3次元震源分布画像そのものが立体的に表示されるようにしてもよい。また、表示部の代わりに、プリンターによる印刷などで3次元震源分布画像を利用者に提示してもよい。
【0059】
さらに、本発明の請求項に記載した構成や処理は、上述した実施の形態の例に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない限り、種々の改変、組み合わせ、他の実施の形態例が生じうることは、当業者にとって当然のことと理解される。