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特開2018-80901ループ型ヒートパイプ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-80901(P2018-80901A)
(43)【公開日】2018年5月24日
(54)【発明の名称】ループ型ヒートパイプ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20180420BHJP
【FI】
   F28D15/02 101L
   F28D15/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-225476(P2016-225476)
(22)【出願日】2016年11月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】倉嶋 信幸
(72)【発明者】
【氏名】町田 洋弘
(57)【要約】
【課題】蒸気管及び凝縮器において結露の促進を抑制することが可能なループ型ヒートパイプを提供する。
【解決手段】本ループ型ヒートパイプは、作動流体を気化させる蒸発器と、前記作動流体を液化する凝縮器と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループを形成する蒸気管と、を有し、前記凝縮器及び前記蒸気管は、両外側に位置する最外金属層と、前記最外金属層の間に設けられ、前記最外金属層の一部を露出する開口と、前記開口を挟んで離間した壁部と、前記最外金属層及び前記壁部により画定され、前記開口により形成される流路を有する中間金属層と、を備え、前記中間金属層の前記壁部には、前記流路から離間して設けられた排水管、及び前記排水管と前記流路とを繋ぐ誘い込み管、が設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を気化させる蒸発器と、
前記作動流体を液化する凝縮器と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループを形成する蒸気管と、を有し、
前記凝縮器及び前記蒸気管は、両外側に位置する最外金属層と、前記最外金属層の間に設けられ、前記最外金属層の一部を露出する開口と、前記開口を挟んで離間した壁部と、前記最外金属層及び前記壁部により画定され、前記開口により形成される流路を有する中間金属層と、を備え、
前記中間金属層の前記壁部には、前記流路から離間して設けられた排水管、及び前記排水管と前記流路とを繋ぐ誘い込み管、が設けられているループ型ヒートパイプ。
【請求項2】
前記中間金属層は、前記排水管のみが形成された金属層と、前記誘い込み管のみが形成された積層体からなり、前記誘い込み管の一端が前記排水管と連通し、前記誘い込み管の他端が前記流路と連通している請求項1に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項3】
前記積層体が複数積層された請求項2に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項4】
前記中間金属層の前記壁部は、第1壁部と、前記開口を挟んで前記第1壁部の反対側にある第2壁部からなり、
前記排水管は、前記第1壁部に形成された第1排水管と、前記第2壁部に形成された第2排水管からなり、
前記誘い込み管は、前記第1壁部に形成された第1誘い込み管と、前記第2壁部に形成された第2誘い込み管からなる請求項1乃至3の何れか一項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項5】
前記中間金属層は、前記第1壁部及び前記第2壁部の間に仕切り部と、
前記最外金属層及び前記第1壁部、前記仕切り部により画定される第1流路と、前記最外金属層及び前記第2壁部、前記仕切り部により画定される第2流路と、を更に有し、
前記仕切り部には、前記第1流路及び前記第2流路から離間して設けられた第3排水管、及び前記第3排水管と前記第1流路及び前記第2流路とを繋ぐ第3誘い込み管、が設けられている請求項4に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項6】
前記壁部は、一方の前記最外金属層側から窪む複数の第1の有底孔と、他方の前記最外金属層側から窪む第2の有底孔と、隣接する前記第1の有底孔と前記第2の有底孔とが部分的に連通して形成された細孔と、を備え、
複数の前記第1の有底孔と、複数の前記第2の有底孔と、前記細孔とにより前記排水管が形成されている請求項1乃至5の何れか一項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項7】
前記誘い込み管と前記排水管とのなす角は、前記流路に蒸気が流れる方向に向かって鋭角とされている請求項1乃至6の何れか一項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項8】
作動流体を気化させる蒸発器と、
前記作動流体を液化する凝縮器と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループを形成する蒸気管と、を有し、
前記凝縮器及び前記蒸気管は、両外側に位置する最外金属層と、前記最外金属層の間に設けられ、
前記最外金属層の一部を露出する開口と、前記開口を挟んで離間した壁部と、前記最外金属層及び前記壁部により画定され、前記開口により形成される流路を有する中間金属層と、を備えたループ型ヒートパイプの製造方法であって、
前記中間金属層を形成する工程は、
金属シートを加工して、前記金属シートに開口及び前記開口を挟んで離間した壁部を形成する工程と、
前記金属シートをハーフエッチングして、前記壁部に前記開口から離間して設けられた排水管、及び前記排水管と前記開口とを繋ぐ誘い込み管、を形成する工程と、を含むループ型ヒートパイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ループ型ヒートパイプ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載されるCPU(Central Processing Unit)等の発熱部品を冷却するデバイスとして、ヒートパイプが知られている。ヒートパイプは、作動流体の相変化を利用して熱を輸送するデバイスである。
【0003】
ヒートパイプの一例として、発熱部品の熱により作動流体を気化させる蒸発器と、気化した作動流体を冷却して液化する凝縮器とを備え、蒸発器と凝縮器とがループ状の流路を形成する液管と蒸気管で接続されたループ型ヒートパイプが挙げられる。ループ型ヒートパイプでは、作動流体はループ状の流路を一方向に流れる。
【0004】
又、ループ型ヒートパイプの液管内には、多孔質体が設けられており、多孔質体に生じる毛細管力で液管内の作動流体を蒸発器に誘導し、蒸発器から液管に蒸気が逆流することを抑制している。多孔質体には多数の細孔が形成されている。各細孔は、貫通孔が形成された金属層同士を、貫通孔が部分的に重複するように積層することにより形成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2015/087451号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のループ型ヒートパイプにおいて、蒸発器で熱を受けた水は蒸気となり蒸気管を移動するが、蒸気の一部は熱源から離れるに従って結露して水滴となる。
【0007】
結露した水滴は、熱を移動することができない。又、結露した水滴が蒸気管や凝縮器に存在すると、蒸気の移動を低下させるだけでなく蒸気が触れることで結露を促進してしまう問題がある。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、蒸気管及び凝縮器において結露の促進を抑制することが可能なループ型ヒートパイプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本ループ型ヒートパイプは、作動流体を気化させる蒸発器と、前記作動流体を液化する凝縮器と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループを形成する蒸気管と、を有し、前記凝縮器及び前記蒸気管は、両外側に位置する最外金属層と、前記最外金属層の間に設けられ、前記最外金属層の一部を露出する開口と、前記開口を挟んで離間した壁部と、前記最外金属層及び前記壁部により画定され、前記開口により形成される流路を有する中間金属層と、を備え、前記中間金属層の前記壁部には、前記流路から離間して設けられた排水管、及び前記排水管と前記流路とを繋ぐ誘い込み管、が設けられていることを要件とする。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、蒸気管及び凝縮器において結露の促進を抑制することが可能なループ型ヒートパイプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプを例示する平面模式図である。
図2】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸発器及びその周囲の断面図である。
図3】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸気管の構造を例示する断面図である。
図4】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸気管の構造を例示する部分斜視図である。
図5】比較例に係るループ型ヒートパイプの蒸気管の構造を例示する断面図である。
図6】第1の実施の形態に係る蒸気管に誘い込み管及び排水管を設ける効果について説明する断面図である。
図7】第1の実施の形態に係る蒸気管に誘い込み管及び排水管を設ける効果について説明する部分斜視図である。
図8】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図(その1)である。
図9】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図(その2)である。
図10】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図(その3)である。
図11】第2の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸気管の構造を例示する断面図である。
図12】第2の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸気管の構造を例示する部分斜視図である。
図13】第2の実施の形態に係る蒸気管に誘い込み管及び排水管を設ける効果について説明する断面図である。
図14】第3の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸気管の構造を例示する断面図(その1)である。
図15】第3の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸気管の構造を例示する断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0013】
〈第1の実施の形態〉
[第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの構造]
まず、第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの構造について説明する。図1は、第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプを例示する平面模式図である。
【0014】
図1を参照するに、ループ型ヒートパイプ1は、蒸発器10と、凝縮器20と、蒸気管30と、液管40とを有する。ループ型ヒートパイプ1は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等のモバイル型の電子機器2に収容することができる。
【0015】
ループ型ヒートパイプ1において、蒸発器10は、作動流体Cを気化させて蒸気Cvを生成する機能を有する。凝縮器20は、作動流体Cの蒸気Cvを液化させる機能を有する。蒸発器10と凝縮器20は、蒸気管30及び液管40により接続されており、蒸気管30及び液管40によって作動流体C又は蒸気Cvが流れるループである流路50が形成されている。
【0016】
図2は、第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸発器及びその周囲の断面図である。図1及び図2に示すように、蒸発器10には、例えば4つの貫通孔10xが形成されている。蒸発器10に形成された各貫通孔10xと回路基板100に形成された各貫通孔100xにボルト150を挿入し、回路基板100の下面側からナット160で止めることにより、蒸発器10と回路基板100とが固定される。
【0017】
回路基板100には、例えば、CPU等の発熱部品120がバンプ110により実装され、発熱部品120の上面が蒸発器10の下面と密着する。蒸発器10内の作動流体Cは、発熱部品120で発生した熱により気化し、蒸気Cvが生成される。
【0018】
図1に示すように、蒸発器10に生成された蒸気Cvは、蒸気管30を通って凝縮器20に導かれ、凝縮器20において液化する。これにより、発熱部品120で発生した熱が凝縮器20に移動し、発熱部品120の温度上昇が抑制される。凝縮器20で液化した作動流体Cは、液管40を通って蒸発器10に導かれる。蒸気管30の幅Wは、例えば、8mm程度とすることができる。又、液管40の幅Wは、例えば、6mm程度とすることができる。
【0019】
作動流体Cの種類は特に限定されないが、蒸発潜熱によって発熱部品120を効率的に冷却するために、蒸気圧が高く、かつ蒸発潜熱が大きい流体を使用することが好ましい。そのような流体としては、例えば、アンモニア、水、フロン、アルコール、及びアセトンを挙げることができる。
【0020】
蒸発器10、凝縮器20、蒸気管30、及び液管40は、例えば、金属層が複数積層された構造とすることができる。金属層は、例えば、熱伝導性に優れた銅層であって、固相接合等により互いに直接接合されている。金属層の各々の厚さは、例えば、50μm〜200μm程度とすることができる。
【0021】
なお、金属層は銅層には限定されず、ステンレス層やアルミニウム層、マグネシウム合金層等から形成してもよい。又、金属層の積層数は特に限定されない。
【0022】
図3は、第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸気管の構造を例示する断面図であり、図3(b)は図1のA−A線に沿う断面を示している。又、図3(a)は、図3(b)のB−B線に沿う断面を示している。図4は、第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸気管の構造を例示する部分斜視図であり、図4(a)は図3(a)の点線部分を矢印C方向から視た部分斜視図、図4(b)は図3(b)の点線部分を矢印D方向から視た部分斜視図である。なお、図3及び図4では、金属層31〜36の積層方向をZ方向、蒸気管30(流路50)の蒸気Cvが流れる方向をX方向、X方向及びZ方向に垂直な方向をY方向としている(以降の図も同様)。
【0023】
図3及び図4に示すように、蒸気管30は、例えば、金属層31、32、33、34、35、及び36の6層が順次積層された構造とすることができる。但し、金属層の積層数は限定されず、最低3層以上の金属層を積層してあればよい。
【0024】
金属層31〜36は、例えば、熱伝導性に優れた銅層であって、固相接合等により互いに直接接合されている。金属層31〜36の各々の厚さは、例えば、50μm〜200μm程度とすることができる。なお、金属層31〜36は銅層には限定されず、ステンレス層やアルミニウム層、マグネシウム合金層等から形成してもよい。
【0025】
金属層31及び36は、金属層31〜36の積層体の両外側に位置する最外金属層であり、蒸気管30の外壁の一部を構成している。又、金属層31及び36は、孔や溝が形成されていないベタ状とされている。金属層32〜35は、最外金属層である金属層31及び36に挟まれた中間金属層45である。中間金属層45は、最低1層以上あればよい。
【0026】
金属層32は、Y方向において、所定の開口32kを挟んで略平行に離間して形成された細長状の壁部32a及び壁部32bを有している。開口32kは、例えば、金属層31、36の一部を開口内に露出するように形成されている。
【0027】
金属層33は、Y方向において、所定の開口33kを挟んで略平行に離間して形成された細長状の壁部33a及び壁部33bを有している。開口33kは、例えば、開口32kと連通し、金属層31、36の一部を開口内に露出するように形成されている。
【0028】
金属層34は、Y方向において、所定の開口34kを挟んで略平行に離間して形成された細長状の壁部34a及び壁部34bを有している。開口34kは、例えば、開口33kと連通し、金属層31、36の一部を開口内に露出するように形成されている。
【0029】
金属層35は、Y方向において、所定の開口35kを挟んで略平行に離間して形成された細長状の壁部35a及び壁部35bを有している。開口35kは、例えば、開口34kと連通し、金属層31、36の一部を開口内に露出するように形成されている。
【0030】
金属層32〜35に設けられた各々の開口32k、33k、34k、35kと金属層31及び36により、蒸気Cvが流れる流路50が形成されている。
【0031】
金属層32〜35の壁部32a〜35a及び金属層32〜35の壁部32b〜35bは、蒸気管30の外壁の一部を構成している。
【0032】
金属層33の壁部33a、33b及び金属層34の壁部34a、34bには、流路50に沿って略平行に排水管33x、33y、34x、及び34yが設けられている。排水管33x、33y、34x、及び34yは、流路50には面しておらず、流路50から離間(独立)している。
【0033】
金属層32の壁部32a、32b及び金属層35の壁部35a、35bには、排水管33x、33y、34x、及び34yと流路50とを繋ぐ誘い込み管32x、32y、35x、及び35yが設けられている。
【0034】
金属層33の壁部33aには、流路50のX方向に沿ってハーフエッチングされた凹状の排水管33xが設けられている。排水管33xは、凹状の側壁により、流路50と離間している。又、金属層33の壁部33bには、流路50のX方向に沿ってハーフエッチングされた凹状の排水管33yが設けられている。排水管33yは、凹状の側壁により、流路50と離間している。
【0035】
同様に、金属層34の壁部34aには、流路50のX方向に沿ってハーフエッチングされた凹状の排水管34xが設けられている。排水管34xは、凹状の側壁により、流路50と離間している。又、金属層34の壁部34bには、流路50のX方向に沿ってハーフエッチングされた凹状の排水管34yが設けられている。排水管34yは、凹状の側壁により、流路50と離間している。金属層34は、金属層33と同様な構成であるため、図示を省略している。
【0036】
金属層32の壁部32aには、排水管33xのX方向に沿って所定間隔毎にハーフエッチングされた凹状の誘い込み管32xが設けられている。又、金属層32の壁部32bには、排水管33yのX方向に沿って所定間隔毎にハーフエッチングされた凹状の誘い込み管32yが設けられている。
【0037】
同様に、金属層35の壁部35aには、排水管34xのX方向に沿って所定間隔毎にハーフエッチングされた凹状の誘い込み管35xが設けられている。又、金属層35の壁部35bには、排水管34yのX方向に沿って所定間隔毎にハーフエッチングされた凹状の誘い込み管35yが設けられている。金属層35は、金属層32と同様な構成であるため、図示を省略している。
【0038】
排水管33xのY方向の長さLは、例えば、0.2〜0.4mm程度とすることができる。又、排水管33xのZ方向の長さLは、例えば、0.2〜0.4mm程度とすることができる。排水管33y、34x、及び34yにおいて、排水管33xのL及びLに対応する部分の長さは、排水管33xのL及びLと同程度とすることができる。
【0039】
誘い込み管32xは、排水管33xに対して傾斜して配置されており、誘い込み管32xと排水管33xとのなす角θaは、例えば、蒸気Cvが流れる方向に向かって鋭角に45°程度とすることができる。同様に、誘い込み管32yは、排水管33yに対して傾斜して配置されており、誘い込み管32yと排水管33yとのなす角θbは、例えば、蒸気Cvが流れる方向に向かって鋭角に45°程度とすることができる。但し、角θaと角θbとは、必ずしも同一の角度でなくても構わない。誘い込み管35xと排水管34xとのなす角、及び誘い込み管35yと排水管34yとのなす角についても、角θa及びθbと同程度とすることができる。
【0040】
誘い込み管32xの傾斜方向に垂直な方向の長さLは、例えば、0.2〜0.4mm程度とすることができる。又、誘い込み管32xのZ方向の長さLは、例えば、0.2〜0.4mm程度とすることができる。誘い込み管32y、35x、及び35yにおいて、誘い込み管32xのL及びLに対応する部分の長さは、誘い込み管32xのL及びLと同程度とすることができる。
【0041】
金属層32と金属層33とを積層することで、誘い込み管32xの一端が排水管33xと連通し、誘い込み管32xの他端が流路50と連通している。又、誘い込み管32yの一端が排水管33yと連通し、誘い込み管32yの他端が流路50と連通している。同様に、金属層34と金属層35とを積層することで、誘い込み管35xの一端が排水管34xと連通し、誘い込み管35xの他端が流路50と連通している。又、誘い込み管35yの一端が排水管34yと連通し、誘い込み管35yの他端が流路50と連通している。
【0042】
このように、金属層32〜35からなる中間金属層45は、少なくとも2つの金属層(例えば、金属層32と金属層33)が積層して構成される積層体を有している。言換えれば、中間金属層45は、排水管が形成された金属層と、誘い込み管が形成された金属層が積層されてなる積層体を有している。図3(b)及び図4(b)では、2つ(金属層32と金属層33から構成される積層体と、金属層34と金属層35から構成される積層体)の積層体が積層されている。排水管及び誘い込み管を同一の金属層に設けると強度が低下するが、2つの金属層を用いて一方の金属層に排水管を形成し、他方の金属層に誘い込み管を形成することで、十分な強度を確保することができる。
【0043】
なお、図3及び図4の構造は、蒸気管30のみでなく凝縮器20にも形成されている。すなわち、図3及び図4の構造は、図1の矢印Pで示す領域の流路50部分に連続的に形成されている。
【0044】
ここで、比較例を示しながら、図3及び図4に示す構造の奏する効果について説明する。図5は、比較例に係るループ型ヒートパイプの蒸気管の構造を例示する断面図であり、図3に対応する断面を示している。
【0045】
図5に示す蒸気管30Xでは、金属層32〜35の壁部32a〜35a、32b〜35bに排水管及び誘い込み管が設けられていない点が、蒸気管30(図3及び図4参照)と相違する。
【0046】
図1において、蒸気管30に代えて蒸気管30Xが設けられており、蒸発器10で発生した蒸気Cvが蒸気管30Xを図5の矢印方向(X方向)に移動して凝縮器20及び液管40に向かう場合を考える。この場合、蒸気管30X内で蒸気Cvが結露して水滴WDとなり、水滴WDが流路50内に溜まる。水滴WDは冷えて蒸気Cvの更なる結露を助長し、蒸気管30Xを狭くして蒸気Cvの流れを悪化させる。これにより、蒸気Cvが移動し難くなり、熱移動効率が低下する。
【0047】
これに対して、図1において、蒸発器10で発生した蒸気Cvが蒸気管30を図6の矢印方向(X方向)に移動して凝縮器20及び液管40に向かう場合を考える。ここで、図6は蒸気管に誘い込み管及び排水管を設ける効果について説明する断面図であり、図7図6(a)の点線部分を矢印C方向から視た部分斜視図である。図6及び図7に示すように、蒸気管30内で蒸気Cvが結露して水滴WDが発生したとしても、水滴WDは、毛細管力により誘い込み管32x、32y、35x、及び35yから、それぞれ排水管33x、33y、34x、及び34yに吸い込まれる。そのため、蒸気管30内には水滴WDが溜まり難くなり、水滴WDが巨大化することを防止できる。その結果、水滴WDが蒸気Cvの流れを妨げないため、蒸気Cvが移動し易くなり熱移動効率を向上することが可能となり、発熱部品120に対する放熱効果を高めることができる。
【0048】
排水管33x、33y、34x、及び34yは、蒸気Cvが結露して生じた水滴WDを誘い込み管32x、32y、35x、及び35yから吸い込んで液管40に移動させる。すなわち、蒸気Cvは図6の矢印方向(X方向)に流れており、排水管33x、33y、34x、及び34yの毛細管力によって、排水管33x、33y、34x、及び34yに吸い込まれた水滴WDも矢印方向(X方向)に流れ、凝縮器20→液管40→蒸発器10へと循環する。
【0049】
なお、各々の誘い込み管と排水管とのなす角を蒸気Cvが流れる方向に向かって鋭角にすることで、誘い込み管から排水管に合流する部分での水滴WDの抵抗を低減することが可能となるため、水滴WDを排水管に吸い込みやすくすることができる。但し、各々の誘い込み管と排水管とのなす角が直角であっても一定の効果を奏する。
【0050】
又、各々の排水管を流路50に面しないように形成することで、各々の排水管を流路50に面して形成した場合よりも、排水管の毛細管力を向上することができる。
【0051】
[第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの製造方法]
次に、第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの製造方法について、蒸気管の排水管及び誘い込み管の製造工程を中心に説明する。図8図10は、第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図である。なお、図8(a)及び図8(b)並びに図9(a)及び図9(b)は、図3(a)及び図3(b)に対応する断面を示している。又、図10は、図3(b)に対応する断面を示している。
【0052】
まず、図8に示す工程では、金属シートを準備し、金属シートを加工して、金属シートを厚さ方向(Z方向)に貫通する開口32kを形成する。開口32kの形成により、開口32kを挟んで略平行に離間して形成された細長状の壁部32a及び壁部32bを形成する。開口32kは、流路50の一部をなす部分となる。開口32kは、例えば、プレス加工やエッチング加工により形成することができる。
【0053】
開口32kを形成後、壁部32aに凹状の誘い込み管32xを、壁部32bに凹状の誘い込み管32yを形成することで、金属層32が完成する。具体的には、誘い込み管32xを形成する部分を露出する開口部を備えたレジスト層(感光性のドライフィルムレジスト等)を壁部32a上に形成する。同様に、誘い込み管32yを形成する部分を露出する開口部を備えたレジスト層を壁部32b上に形成する。そして、レジスト層をマスクとして開口部内に露出する壁部32a及び壁部32bをハーフエッチングし、壁部32aに凹状の誘い込み管32xを、壁部32bに凹状の誘い込み管32yを形成する。その後、レジスト層を剥離液により剥離する。ハーフエッチングの量は、例えば、金属シートの厚さの半分程度とすることができる。金属シートの材料が銅である場合、ハーフエッチングには、例えば、塩化第二鉄溶液を用いることができる。
【0054】
又、金属シートを準備し、上記金属層32と同様に金属シートを加工して、金属シートを厚さ方向(Z方向)に貫通する開口35kを形成する。開口35kの形成により、開口35kを挟んで略平行に離間して形成された細長状の壁部35a及び壁部35bを形成する(図示なし)。そして、開口35kを形成後、上記金属層32と同様に壁部35a及び壁部35bを選択的にハーフエッチングして、壁部35aに凹状の誘い込み管35xを、壁部35bに凹状の誘い込み管35yを形成することで、金属層35が完成する(図示なし)。なお、各金属層の材料や厚さ、各誘い込み管の形状や寸法は、前述の通りである。
【0055】
次に、図9に示す工程では、金属シートを準備し、金属シートを加工して、金属シートを厚さ方向(Z方向)に貫通する開口33kを形成する。開口33kの形成により、開口33kを挟んで略平行に離間して形成された細長状の壁部33a及び壁部33bを形成する。開口33kは、流路50の一部をなす部分となる。開口33kは、金属層32に開口32kを形成する場合と同様にしてプレス加工やエッチング加工により形成することができる。
【0056】
開口33kを形成後、壁部33aに凹状の排水管33xを、壁部33bに凹状の排水管33yを形成することで、金属層33が完成する。具体的には、排水管33xを形成する部分を露出する開口部を備えたレジスト層(感光性のドライフィルムレジスト等)を壁部33a上に形成する。同様に、排水管33yを形成する部分を露出する開口部を備えたレジスト層を壁部33b上に形成する。そして、レジスト層をマスクとして開口部内に露出する壁部33a及び壁部33bをハーフエッチングし、壁部33aに凹状の排水管33xを、壁部33bに凹状の排水管33yを形成する。その後、レジスト層を剥離液により剥離する。ハーフエッチングの量は、例えば、金属シートの厚さの半分程度とすることができる。金属シートの材料が銅である場合、ハーフエッチングには、例えば、塩化第二鉄溶液を用いることができる。
【0057】
又、金属シートを準備し、上記金属層33と同様に金属シートを加工して、金属シートを厚さ方向(Z方向)に貫通する開口34kを形成する。開口34kの形成により、開口34kを挟んで略平行に離間して形成された細長状の壁部34a及び壁部34bを形成する(図示なし)。そして、開口34kを形成後、上記金属層33と同様に壁部34a及び壁部34bを選択的にハーフエッチングして、壁部34aに凹状の排水管34xを、壁部34bに凹状の排水管34yを形成することで、金属層34が完成する(図示なし)。なお、各金属層の材料や厚さ、各排水管の形状や寸法は、前述の通りである。
【0058】
次に、図10に示す工程では、孔や溝が形成されていないベタ状の金属層31及び36を準備する。そして、図10に示すように金属層31〜36を積層する。具体的には、金属層31及び金属層を最外層とする。そして、最外層の金属層31及び金属層36の間に、金属層32〜35を積層する。金属層32〜35は、誘い込み管の一端と排水管が少なくとも一部で重なり、連通するように積層される。図10では、金属層32の誘い込み管32x、32yと金属層33の排水管33x、33yが向い合い、誘い込み管32x、32yの一端と排水管33x、33yが少なくとも一部で重なるように積層される。又、金属層35の誘い込み管35x、35yと金属層34の排水管34x、34yが向い合い、誘い込み管35x、35yの一端と排水管34x、34yが少なくとも一部で重なるように積層される。
【0059】
次に、最外層の金属層31及び金属層36の間に、金属層32〜35が積層された構造体を加圧及び加熱により固相接合を行う。これにより、隣接する金属層同士が直接接合され、蒸発器10、凝縮器20、蒸気管30、及び液管40を有するループ型ヒートパイプ1が完成する。この際、凝縮器20及び蒸気管30には、中間金属層45(金属層32〜35)に設けられた開口32k、33k、34k、35kと、開口32k、33k、34k、35kを挟んで離間された中間金属層45の壁部と、2つの最外金属層(金属層31及び36)により流路50が形成される。そして、中間金属層45において所定の排水管と所定の誘い込み管とが連通する。その後、真空ポンプ等を用いて液管40内を排気した後、図示しない注入口から液管40内に作動流体Cを注入し、その後注入口を封止する。
【0060】
ここで、固相接合とは、接合対象物同士を溶融させることなく固相(固体)状態のまま加熱して軟化させ、更に加圧して塑性変形を与えて接合する方法である。なお、固相接合によって隣接する金属層同士を良好に接合できるように、金属層31〜36の全ての材料を同一にすることが好ましい。
【0061】
又、中間金属層45を構成する金属層32〜35の積層は、排水管と誘い込み管の一端が少なくとも一部で重なり、連通するように積層されていればよく、金属層32〜35の積層の順番は特に限定されない。
【0062】
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、中間金属層に仕切り部を設け、排水管や誘い込み管の数を増やす例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0063】
図11は、第2の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸気管の構造を例示する断面図であり、図11(a)及び図11(b)は図3(a)及び図3(b)に対応する断面を示している。図12は、第2の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸気管の構造を例示する部分斜視図であり、図11(a)の点線部分を矢印E向から視た部分斜視図である。
【0064】
図11及び図12を参照するに、蒸気管30Aにおいて、金属層32のY方向における壁部32aと壁部32bとの間には、仕切り部32cが設けられている。仕切り部32cは、壁部32a及び壁部32bと所定の開口32k−1及び開口32k−2を挟んで略平行に離間して形成されている。開口32k−1及び開口32k−2は、例えば、金属層31、36の一部を開口内に露出するように形成されている。
【0065】
金属層33のY方向において、壁部33aと壁部33bとの間には、仕切り部33cが設けられている。仕切り部33cは、壁部33a及び壁部33bと所定の開口33k−1及び開口33k−2を挟んで略平行に離間して形成されている。開口33k−1及び開口33k−2は、例えば、開口32k−1及び開口32k−2と連通し、金属層31、36の一部を開口内に露出するように形成されている。
【0066】
金属層34のY方向において、壁部34aと壁部34bとの間には、仕切り部34cが設けられている。仕切り部34cは、壁部34a及び壁部34bと所定の開口34k−1及び開口34k−2を挟んで略平行に離間して形成されている。開口34k−1及び開口34k−2は、例えば、開口33k−1及び開口33k−2と連通し、金属層31、36の一部を開口内に露出するように形成されている。
【0067】
金属層35のY方向において、壁部35aと壁部35bとの間には、仕切り部35cが設けられている。仕切り部35cは、壁部35a及び壁部35bと所定の開口35k−1及び開口35k−2を挟んで略平行に離間して形成されている。開口35k−1及び開口35k−2は、例えば、開口34k−1及び開口34k−2と連通し、金属層31、36の一部を開口内に露出するように形成されている。
【0068】
金属層32〜35に設けられた各々の開口32k−1〜35k−1及び開口32k−2〜35k−2と金属層31及び36により、蒸気Cvが流れる複数の流路50a、50bが形成されている。具体的には、金属層32〜35の壁部32a、33a、34a、及び35aと、仕切り部32c、33c、34c、及び35cとに挟まれた各々の開口32k−1〜35k−1を金属層31及び36により両側から挟むことで流路50aが形成されている。又、金属層32〜35の壁部32b、33b、34b、及び35bと、仕切り部32c、33c、34c、及び35cとに挟まれた各々の開口32k−2〜35k−2を金属層31及び36により両側から挟むことで流路50bが形成されている。
【0069】
又、仕切り部32c、33c、34c、及び35cは、金属層31や金属層36を支える支柱とすることができる。金属層33の仕切り部33c及び金属層34の仕切り部34cには、流路50に沿って略平行に排水管33z及び34zが設けられている。排水管33z及び34zは、流路50には面しておらず、流路50から離間(独立)している。金属層32の仕切り部32c及び金属層35の仕切り部35cには、排水管33z及び34zと流路50とを繋ぐ誘い込み管32z及び35zが設けられている。
【0070】
金属層33の仕切り部33cには、流路50a及び50bのX方向に沿ってハーフエッチングされた凹状の排水管33zが設けられている。排水管33zは、凹状の側壁により、流路50a及び50bと離間している。
【0071】
金属層34の仕切り部34cには、流路50a及び50bのX方向に沿ってハーフエッチングされた凹状の排水管34zが設けられている。排水管34zは、凹状の側壁により、流路50a及び50bと離間している。排水管33z及び34zの形状や寸法は、排水管33x等と同程度とすることができる。金属層34は、金属層33と同様な構成であるため、図示を省略している。
【0072】
金属層32の仕切り部32cには、Y方向において、所定間隔毎にハーフエッチングされた凹状の誘い込み管32z−1及び誘い込み管32z−2が設けられている。又、金属層32の誘い込み管32z−1及び誘い込み管32z−2は、排水管33zのX方向に沿って、交互に配置されている。
【0073】
金属層35の仕切り部35cには、排水管34zのY方向において、所定間隔毎にハーフエッチングされた誘い込み管35z−1及び誘い込み管35z−2が設けられている。又、金属層35の誘い込み管35z−1及び誘い込み管35z−2は、排水管34zのX方向に沿って、交互に配置されている。金属層35は、金属層32と同様な構成であるため、図示を省略している。
【0074】
仕切り部32cに設けられた誘い込み管32z−1及び誘い込み管32z−2は、排水管33zに対して傾斜して配置されている。そして、誘い込み管32z−1と排水管33zとのなす角θc及び誘い込み管32z−2と排水管33zとのなす角θdは、例えば、蒸気Cvが流れる方向に向かって鋭角に45°程度とすることができる。但し、角θcと角θdとは、必ずしも同一の角度でなくても構わない。
【0075】
同様に、仕切り部35cに設けられた誘い込み管35z−1及び誘い込み管35z−2は、排水管34zに対して傾斜して配置されている。そして、上側の誘い込み管35z−1と排水管34zとのなす角及び下側の誘い込み管35z−2と排水管34zとのなす角についても、角θc及びθdと同程度とすることができる。排水管33zの上下に設けられた誘い込み管32z−1及び誘い込み管32z−2、排水管34zの上下に設けられた誘い込み管35z−1及び誘い込み管35z−2の形状や寸法は、誘い込み管32x等と同程度とすることができる。
【0076】
金属層32と金属層33とを積層することで、誘い込み管32z−1の排水管33zの側の一端が排水管33zと連通し、誘い込み管32z−1の排水管33zとは反対側の他端が流路50aと連通している。更に、誘い込み管32z−2の排水管33zの側の一端が排水管33zと連通し、誘い込み管32z−2の排水管33zとは反対側の他端が流路50bと連通している。
【0077】
同様に、金属層34と金属層35とを積層することで、誘い込み管35z−1の排水管34zの側の一端が排水管34zと連通し、誘い込み管35z−1の排水管34zとは反対側の他端が流路50aと連通している。更に、誘い込み管35z−2の排水管34zの側の一端が排水管34zと連通し、誘い込み管35z−2の排水管34zとは反対側の他端が流路50bと連通している。
【0078】
図1において、蒸発器10で発生した蒸気Cvが蒸気管30Aを図13の矢印方向(X方向)に移動して凝縮器20及び液管40に向かう場合を考える。この場合、蒸気管30A内で蒸気Cvが結露して水滴WDが発生したとしても、水滴WDは、毛細管力により誘い込み管32x、32y、32z−1、32z−2、35x、35y、35z−1、及び35z−2から、それぞれ排水管33x、33y、33z、34x、34y、及び34zに吸い込まれる。
【0079】
蒸気管30Aでは、蒸気管30と比べて、排水管33z、34z、及び誘い込み管32z−1、32z−2、35z−1、35z−2が追加で形成されているため、排水管による毛細管力が向上し、蒸気管30A内の水滴WDをいっそう吸い込みやすくすることが可能となる。これにより、蒸気管30A内には水滴WDが溜まり難くなり、水滴WDが巨大化することをいっそう防止できる。その結果、水滴WDが蒸気Cvの流れを妨げないため、蒸気Cvが移動し易くなり熱移動効率をいっそう向上することができる。
【0080】
〈第3の実施の形態〉
第3の実施の形態では、第1の実施の形態とは排水管の形状が異なる例を示す。なお、第3の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0081】
図14は、第3の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸気管の構造を例示する断面図であり、図14(b)は図1のA−A線に沿う断面を示している。又、図14(a)は、図14(b)のC−C線に沿う断面を示している。又、図15は、図14(b)のD−D線に沿う断面を示している。
【0082】
図14及び図15を参照するに、蒸気管30Bにおいて、中間金属層45Bは、金属層32、33、及び35の3層から形成されている。金属層31、32、35、及び36の構造については、蒸気管30と同様とすることができる。
【0083】
金属層33の壁部33a、33bには、流路50に沿って略平行に排水管33Bx、33Byが設けられている。排水管33Bx及び33Byは、流路50には面しておらず、流路50から離間(独立)している。
【0084】
金属層33の壁部33aには、金属層32側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔33dと、金属層35側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔33eとが、それぞれ複数個形成されている。有底孔33d及び33eは、金属層33の壁部33aを上下面側から、ハーフエッチングすることで形成できる。
【0085】
有底孔33dと有底孔33eとは、平面視で(Z方向から視て、以降同様)X方向に交互に配置されている。X方向に交互に配置された有底孔33dと有底孔33eとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔33hを形成している。隣接する有底孔33dと有底孔33eとが細孔33hを介して連続的に接続されて排水管33Bxが形成されている。排水管33Bxは、有底孔33dと有底孔33eの側壁により、流路50と離間している。
【0086】
同様に、金属層33の壁部33bには、金属層32側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔33fと、金属層35側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔33gとが、それぞれ複数個形成されている。有底孔33f及び33gは、金属層33の壁部33bを上下面側から、ハーフエッチングすることで形成できる。
【0087】
有底孔33fと有底孔33gとは、平面視でX方向に交互に配置されている。X方向に交互に配置された有底孔33fと有底孔33gとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔33iを形成している。隣接する有底孔33fと有底孔33gとが細孔33iを介して連続的に接続されて排水管33Byが形成されている。排水管33Byは、有底孔33fと有底孔33gの側壁により、流路50と離間している。
【0088】
誘い込み管32xの一端が有底孔33dと連通し、誘い込み管32xの他端が流路50と連通している。又、誘い込み管32yの一端が有底孔33fと連通し、誘い込み管32yの他端が流路50と連通している。同様に、誘い込み管35xの一端が有底孔33eと連通し、誘い込み管35xの他端が流路50と連通している。又、誘い込み管35yの一端が有底孔33gと連通し、誘い込み管35yの他端が流路50と連通している。
【0089】
有底孔33d及び33eは、例えば、直径が100〜300μm程度の円形とすることができるが、楕円形や多角形等の任意の形状として構わない。有底孔33d及び33eの深さは、例えば、金属層33の厚さの半分程度とすることができる。隣接する有底孔33dの間隔は、例えば、100〜400μm程度とすることができる。隣接する有底孔33eの間隔は、例えば、100〜400μm程度とすることができる。
【0090】
有底孔33d及び33eの内壁は、底面側から開口側に向かって拡幅するテーパ形状とすることができる。しかし、これに限らず、有底孔33d及び33eの内壁は、底面に対して垂直であっても構わない。細孔33hのX方向の幅Wは、例えば、10〜50μm程度とすることができる。又、細孔33hのY方向の幅Wは、例えば、50〜150μm程度とすることができる。
【0091】
有底孔33f及び33gの形状や大きさ、間隔等は、有底孔33d及び33eと同程度とすることができる。又、細孔33iの大きさは、細孔33hと同程度とすることができる。
【0092】
誘い込み管32x及び32yの傾斜方向に垂直な方向の長さLは、有底孔33dの直径と同程度であってもよいし、有底孔33dの直径よりも小さくしてもよい。又、誘い込み管32x及び32yと有底孔33d及び33fとの連通部は、図14(b)のようにずれていてもよいし、揃えていてもよい。誘い込み管35x及び35yと有底孔33e及び33gとの関係についても同様である。
【0093】
このように、排水管33Bxに有底孔33dと有底孔33eが連通した細孔33hを設けることで、排水管33Bxの毛細管力が向上するため、蒸気管30B内で発生した水滴を排水管33Bx内に吸い込みやすくすることができる。同様に、排水管33Byに有底孔33fと有底孔33gが連通した細孔33iを設けることで、排水管33Byの毛細管力が向上するため、蒸気管30B内で発生した水滴を排水管33By内に吸い込みやすくすることができる。
【0094】
又、誘い込み管32x及び35xの幅を有底孔33d及び33eの直径よりも小さくし、かつ、誘い込み管32x及び35xと有底孔33d及び33eとの連通部をずらすことにより、毛細管力が更に向上する。そのため、蒸気管30B内で発生した水滴を排水管33Bx内に吸い込みやすくすることができる。同様に、誘い込み管32y及び35yの幅を有底孔33f及び33gの直径よりも小さくし、かつ、誘い込み管32y及び35yと有底孔33f及び33gとの連通部をずらすことにより、毛細管力が更に向上する。そのため、蒸気管30B内で発生した水滴を排水管33By内に吸い込みやすくすることができる。
【0095】
なお、中間金属層45Bに第2の実施の形態と同様の仕切り部を設け、仕切り部に排水管33Bx及び33Byと同様の排水管を設け、毛細管力を更に向上せてもよい。又、中間金属層45Bを構成する金属層の積層数を増やし、排水管33Bx及び33Byと同様の排水管の数を増加させ、毛細管力を更に向上せてもよい。
【0096】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0097】
例えば、図3では、金属層32〜35の壁部32a〜35a及び壁部32b〜35bの両方に排水管及び誘い込み管が設けられている例を示したが、金属層32〜35の壁部の一方の側のみに排水管及び誘い込み管が設けられていてもよい。又、図3では、中間金属層において、排水管が形成された金属層と誘い込み管が形成された金属層が積層されてなる積層体が複数積層された例を示したが、積層体は最低1つあればよい。
【0098】
すなわち、図3において、排水管33x及び誘い込み管32x、排水管33y及び誘い込み管32y、排水管34x及び誘い込み管35x、並びに排水管34y及び誘い込み管35yを全て設ける必要はなく、最低1組以上の排水管及び誘い込み管を設ける構造とすればよい。図11についても同様である。
【0099】
又、図3において、金属層31、32、33、及び36の4層を積層した構造や、金属層31、34、35、及び36の4層を積層した構造としてもよい。この場合も、最低1組以上の排水管及び誘い込み管を設ける構造とすればよい。図11についても同様である。
【0100】
又、一枚の金属シートをハーフエッチングして、排水管及び誘い込み管を有する金属層を設ける構造としてもよい。この場合には、この金属層の両側に金属層31及び36を積層することで、3層構造の蒸気管を実現できる。但し、前述のように、排水管及び誘い込み管を同一の金属層に設けると、強度が低下するため、十分な強度が求められる仕様の場合には、図3図11のように排水管及び誘い込み管を別々の金属層に設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0101】
1 ループ型ヒートパイプ
10 蒸発器
10x 貫通孔
20 凝縮器
30、30A、30B 蒸気管
31〜36 金属層
32a、32b、33a、33b、34a、34b、35a、35b 壁部
32c、33c、34c、35c 仕切り部
33d、33e、33f、33g 有底孔
33h、33i 細孔
32k〜35k、32k−1〜35k−1、32k−2〜35k−2 開口
32x、32y、32z、32z−1、32z−2、35x、35y、35z、35z−1、35z−2、 誘い込み管
33x、33y、33z、34x、34y、34z、33Bx、33By 排水管
40 液管
45、45B 中間金属層
50、50a、50b 流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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