【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【解決手段】パラジウム錯体及び/又はパラジウム塩、並びに酸素ガスの存在下、1級又は2級アミン誘導体とジエン誘導体を反応させてアミノ基を有する含窒素有機化合物を生成する第1工程、並びにロジウム錯体及び/又はロジウム塩の存在下、上記の含窒素有機化合物とヒドロシラン誘導体を反応させて含窒素含ケイ素有機化合物を生成する第2工程を含む方法により、アミノ基とシリル基の両方を有する含窒素含ケイ素有機化合物を効率良く製造する方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、アミノ基とシリル基の両方を有する含窒素含ケイ素有機化合物を効率良く製造することができる含窒素含ケイ素有機化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、共役したジエンを、パラジウム錯体と酸素ガスの存在下でアミノ化し、さらにロジウム錯体の存在下でヒドロシリル化することによって、アミノ基とシリル基の両方を有する含窒素含ケイ素有機化合物を効率良く製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は以下の通りである。
<1> アミノ基とシリル基の両方を有する含窒素含ケイ素有機化合物の製造方法であっ
て、
パラジウム錯体及び/又はパラジウム塩、並びに酸素ガスの存在下、下記式(A)で表されるアミンと下記式(B)で表されるジエンを反応させてアミノ基を有する含窒素有機化合物を生成する第1工程、並びに
ロジウム錯体及び/又はロジウム塩の存在下、前記含窒素有機化合物と下記式(C)で表されるヒドロシランを反応させて前記含窒素含ケイ素有機化合物を生成する第2工程を含む、含窒素含ケイ素有機化合物の製造方法。
【化1】
(式(A)中、R
1は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R
2は水素原子、又は炭素原子
数1〜20の炭化水素基を表す。但し、R
2が炭化水素基である場合、R
1とR
2の炭化水
素基が連結して環状構造を形成していてもよい。)
【化2】
(式(B)中、R
3はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1〜20の炭化水素基
を表す。但し、2つのR
3が共に炭化水素基である場合、2つの炭化水素基が連結して環
状構造を形成していてもよい。)
【化3】
(式(C)中、R
4はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1〜20の炭化水素基
を表す。)
<2> 前記第1工程が、下記式(D)で表されるジシランの存在下で行われる工程であ
る、<1>に記載の含窒素含ケイ素有機化合物の製造方法。
【化4】
(式(D)中、R
5はそれぞれ独立して炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)
<3> パラジウム錯体及び/又はパラジウム塩、並びに酸素ガスの存在下、下記式(A
)で表されるアミンと下記式(B)で表されるジエンを反応させて下記式(I−1)で表される含窒素有機化合物を生成する反応工程1を含む含窒素有機化合物の製造方法。
【化5】
(式(A)中、R
1は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R
2は水素原子、又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。但し、R
2が炭化水素基である場合、R
1とR
2の炭化水
素基が連結して環状構造を形成していてもよい。)
【化6】
(式(B)中、R
3はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1〜20の炭化水素基
を表す。但し、2つのR
3が共に炭化水素基である場合、2つの炭化水素基が連結して環
状構造を形成していてもよい。)
【化7】
(式(I−1)中、R
1は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R
2は水素原子、又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R
3はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1〜
20の炭化水素基を表す。但し、R
2が炭化水素基である場合、R
1とR
2の炭化水素基が
連結して環状構造を形成していてもよく、2つのR
3が共に炭化水素基である場合、R
3の2つの炭化水素基が連結して環状構造を形成していてもよい。)
<4> 前記反応工程1が、下記式(D)で表されるジシランの存在下で行われる工程で
ある、<3>に記載の含窒素有機化合物の製造方法。
【化8】
(式(D)中、R
5はそれぞれ独立して炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)
<5> アミノ基とシリル基の両方を有する含窒素含ケイ素有機化合物の製造方法であっ
て、
ロジウム錯体及び/又はロジウム塩の存在下、下記式(I−1)で表される含窒素有機化合物と下記式(C)で表されるヒドロシランを反応させて前記含窒素含ケイ素有機化合物を生成する反応工程2を含む、含窒素含ケイ素有機化合物の製造方法。
【化9】
(式(I−1)中、R
1は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R
2は水素原子、又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R
3はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1〜
20の炭化水素基を表す。但し、R
2が炭化水素基である場合、R
1とR
2の炭化水素基が
連結して環状構造を形成していてもよく、2つのR
3が共に炭化水素基である場合、R
3の2つの炭化水素基が連結して環状構造を形成していてもよい。)
【化10】
(式(C)中、R
4はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1〜20の炭化水素基
を表す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アミノ基とシリル基の両方を有する含窒素含ケイ素有機化合物を効率良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0010】
<含窒素含ケイ素有機化合物の製造方法1>
本発明の一態様である含窒素含ケイ素有機化合物の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略す場合がある。)は、アミノ基とシリル基の両方を有する含窒素含ケイ素有機化合物を製造する方法である。そして、パラジウム錯体及び/又はパラジウム塩、並びに酸素ガスの存在下、下記式(A)で表されるアミンと下記式(B)で表されるジエンを反応させてアミノ基を有する含窒素有機化合物を生成する第1工程(以下、「第1工程」と略す場合がある。)、並びにロジウム錯体及び/又はロジウム塩の存在下、前記含窒素有機化合物と下記式(C)で表されるヒドロシランを反応させて前記含窒素含ケイ素有機化合物を生成する第2工程(以下、「第2工程」と略す場合がある。)を含むことを特徴とする。
【化11】
(式(A)中、R
1は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R
2は水素原子、又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。但し、R
2が炭化水素基である場合、R
1とR
2の炭化水
素基が連結して環状構造を形成していてもよい。)
【化12】
(式(B)中、R
3はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1〜20の炭化水素基
を表す。但し、2つのR
3が共に炭化水素基である場合、2つの炭化水素基が連結して環
状構造を形成していてもよい。)
【化13】
(式(C)中、R
4はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1〜20の炭化水素基
を表す。)
本発明者らは、共役したジエンを、パラジウム錯体と酸素ガスの存在下でアミノ化し、さらにロジウム錯体の存在下でヒドロシリル化することによって、アミノ基とシリル基の両方を有する含窒素含ケイ素有機化合物を効率良く製造することができることを見出したのである。本発明の製造方法におけるアミノ化は、主に酸化的アミノ化反応によって進行しているものと考えられ、その反応機構は、いわゆるAza−waker酸化によって進行しているものと考えられる(下記式参照)。
【化14】
かかるアミノ化反応によって得られる含窒素有機化合物は、ロジウム錯体を利用することによって容易にヒドロシリル化することができるため、アミノ化(第1工程)とヒドロシリル化(第2工程)を組み合わせることによって、含窒素含ケイ素有機化合物を効率良
く製造することができるのである。
なお、本発明において「含窒素含ケイ素有機化合物」とは、アミノ基として窒素原子を、シリル基としてケイ素原子を同一分子内に含んでいる有機化合物を意味し、その他の構造は式(A)で表されるアミン等に基づくものであり、特に限定されないものとする。
また、同様に「含窒素有機化合物」は、アミノ基として窒素原子を含んでいる有機化合物であり、その他の構造は特に限定されないものとする。
以下、「第1工程」、「第2工程」等について詳細に説明する。
【0011】
(第1工程)
第1工程は、パラジウム錯体及び/又はパラジウム塩、並びに酸素ガスの存在下、式(A)で表されるアミンと式(B)で表されるジエンを反応させてアミノ基を有する含窒素有機化合物を生成する工程であるが、第1工程において使用する式(A)で表されるアミンの具体的種類は、特に限定されず、製造目的である含窒素含ケイ素有機化合物に応じて適宜選択されるべきである。
【化15】
式(A)中のR
1は、「炭素原子数1〜20の炭化水素基」を、R
2は「水素原子」、又は「炭素原子数1〜20の炭化水素基」を表しているが、「炭化水素基」は、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよく、飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基等の何れであってもよいものとする。また、R
2が炭化水素基である場合、R
1とR
2の炭化水素基が
連結して環状構造を形成していてもよいが、その環状構造の炭素原子数は20以下となるものとする。
R
1の炭化水素基の炭素原子数は、通常20以下、好ましくは15以下、より好ましく
は10以下であり、R
1が芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以上である。
R
1としては、メチル基(−CH
3,−Me)、エチル基(−C
2H
5,−Et)、n−プロピル基(−
nC
3H
7,−
nPr)、i−プロピル基(−
iC
3H
7,−
iPr)、n−ブチル基(−
nC
4H
9,−
nBu)、t−ブチル基(−
tC
4H
9,−
tBu)、n−ペンチル基(−
nC
5H
11)、n−ヘキシル基(−
nC
6H
13,−
nHex)、シクロヘキシル基(−
cC
6H
11,−Cy)、フェニル基(−C
6H
5,−Ph)等が挙げられる。この中でも、フェニル
基等が特に好ましい。
R
2が炭化水素基である場合の炭素原子数は、通常20以下、好ましくは15以下、よ
り好ましくは10以下であり、R
2が芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以
上である。
R
2としては、水素原子、メチル基(−CH
3,−Me)、エチル基(−C
2H
5,−Et)、n−プロピル基(−
nC
3H
7,−
nPr)、i−プロピル基(−
iC
3H
7,−
iPr)、n−ブチル基(−
nC
4H
9,−
nBu)、t−ブチル基(−
tC
4H
9,−
tBu)、n−ペンチル基(−
nC
5H
11)、n−ヘキシル基(−
nC
6H
13,−
nHex)、シクロヘキシル基
(−
cC
6H
11,−Cy)、フェニル基(−C
6H
5,−Ph)等が挙げられる。この中でも、メチル基、エチル基等が特に好ましい。
式(A)で表されるアミンとしては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化16】
【0012】
第1工程において使用する式(B)で表されるジエンの具体的種類は、特に限定されず、製造目的である含窒素含ケイ素有機化合物に応じて適宜選択されるべきである。
【化17】
式(B)中のR
3は、それぞれ独立して「水素原子」、又は「炭素原子数1〜20の炭
化水素基」を表しているが、「炭化水素基」は、R
1の場合と同義である。また、2つの
R
3が共に炭化水素基である場合、2つの炭化水素基が連結して環状構造を形成していて
もよいが、その環状構造の炭素原子数は20以下となるものとする。
R
3が炭化水素基である場合の炭素原子数は、通常20以下、好ましくは15以下、よ
り好ましくは10以下であり、R
3が芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以
上である。
R
3としては、水素原子、メチル基(−CH
3,−Me)、エチル基(−C
2H
5,−Et)、n−プロピル基(−
nC
3H
7,−
nPr)、i−プロピル基(−
iC
3H
7,−
iPr)、n−ブチル基(−
nC
4H
9,−
nBu)、t−ブチル基(−
tC
4H
9,−
tBu)、n−ペンチル基(−
nC
5H
11)、n−ヘキシル基(−
nC
6H
13,−
nHex)、シクロヘキシル基
(−
cC
6H
11,−Cy)、フェニル基(−C
6H
5,−Ph)等が挙げられる。この中でも、メチル基、エチル基等が特に好ましい。
式(B)で表されるジエンとしては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化18】
【0013】
第1工程における式(B)で表されるジエンの使用量(仕込量)は、式(A)で表されるアミンに対して物質量換算で、通常0.5倍以上であり、通常20倍以下、好ましくは10倍以下、より好ましくは8倍以下である。上記範囲内であると、より効率良く含窒素有機化合物を生成することができる。
【0014】
第1工程において使用するパラジウム錯体及びパラジウム塩(以下、「パラジウム錯体等」と略す場合がある。)の具体的種類等は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
パラジウムの酸化数は、通常0、+1、+2、+4、+6であるが、0、+2であることが好ましい。
配位子若しくは対イオン、又はこれらになり得る化合物としては、酢酸、2,4,6−トリメチル安息香酸(TMBA)、トリフルオロ酢酸(TFA)、ベンゾニトリル(PhCN)、ジベンジリデンアセトン(dba)、アセチルアセトン(acac)、トリフェニルホスフィン(PPh
3)、塩化物アニオン(Cl
-)、臭化物アニオン(Br
-)等が
挙げられる。
なお、第1工程において、パラジウム錯体等を反応器に直接投入するほか、パラジウム元素を含む前駆体と配位子若しくは対イオンとなり得る化合物を添加剤として投入して、反応器内で目的のパラジウム錯体等を形成させてもよい。例えば、酢酸パラジウム(II)と2,4,6−トリメチル安息香酸(TMBA)を反応させることによって、2,4,6−トリメチル安息香酸パラジウム(II)(Pd(TMBA)
2)を形成することが挙
げられる。
パラジウム元素を含んだ前駆体の種類としては、塩化パラジウム(II)(PdCl
2
)、臭化パラジウム(II)(PdBr
2)、酢酸パラジウム(II)(Pd(CH
3CO
2)
2)、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)(Pd(CF
3CO
2)
2)等が挙げられる
。
パラジウム錯体等としては、酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc)
2)、2,4,
6−トリメチル安息香酸パラジウム(II)(Pd(TMBA)
2)等が挙げられる。上
記のものであると、より効率良く含窒素有機化合物を生成することができる。
【0015】
第1工程におけるパラジウム錯体等の使用量(仕込量)は、式(A)で表されるアミンに対して、通常0.1mol%以上、好ましくは1mol%以上、より好ましくは5mol%以上であり、通常100mol%以下、好ましくは50mol%以下、より好ましくは20mol%以下である。上記範囲内であると、より効率良く含窒素有機化合物を生成することができる。
【0016】
第1工程は、酸素ガスの存在下で行われる工程であるが、反応器内の気相の成分(雰囲気ガス)としては、純酸素ガス、空気等が挙げられる。
酸素ガスの分圧としては、通常0.01atm以上、好ましくは0.05atm以上、より好ましくは0.1atm以上であり、通常10atm以下、好ましくは5atm以下、より好ましくは2atm以下である。
【0017】
第1工程は、パラジウム錯体等と酸素ガスのほかに、添加剤として下記式(D)で表されるジシランの存在下で行われることが好ましい。式(D)で表されるジシランが存在することによって、より効率良く含窒素有機化合物を生成することができる。式(D)で表されるジシランが反応を活性化する具体的なメカニズムは明らかとなっていないが、式(D)で表されるジシランが酸素ガスと反応して過酸(R
53Si−OO−SiR
53)が生成し、これが良好な酸化剤として作用するものと考えられる。
【化19】
(式(D)中、R
5はそれぞれ独立して炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)
式(D)中のR
5はそれぞれ独立して「炭素原子数1〜20の炭化水素基」を表してい
るが、「炭化水素基」は、R
1の場合と同義である。
R
5の炭化水素基の炭素原子数は、通常20以下、好ましくは15以下、より好ましく
は10以下であり、R
5が芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以上である。
R
5としては、メチル基(−CH
3,−Me)、エチル基(−C
2H
5,−Et)、n−プロピル基(−
nC
3H
7,−
nPr)、i−プロピル基(−
iC
3H
7,−
iPr)、n−ブチル基(−
nC
4H
9,−
nBu)、t−ブチル基(−
tC
4H
9,−
tBu)、n−ペンチル基(−
nC
5H
11)、n−ヘキシル基(−
nC
6H
13,−
nHex)、シクロヘキシル基(−
cC
6H
11,−Cy)、フェニル基(−C
6H
5,−Ph)等が挙げられる。この中でも、メチル基
、エチル基等が特に好ましい。
式(D)で表されるジシランとしては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化20】
【0018】
第1工程における式(D)で表されるジシランの使用量(仕込量)は、式(A)で表されるアミンに対して物質量換算で、通常0.3倍以上、好ましくは0.5倍以上、より好ましくは1倍以上であり、通常10倍以下、好ましくは5倍以下、より好ましくは3倍以下である。上記範囲内であると、より効率良く含窒素有機化合物を生成することができる。
【0019】
第1工程は、通常溶媒を使用することが好ましい。また、溶媒の種類は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、具体的にはヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)等のアミド系溶媒等が挙げられる。この中でもアセトニトリルが特に好ましい。
上記のものであると、より効率良く含窒素有機化合物を生成することができる。
【0020】
第1工程の反応温度は、通常30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であり、通常100℃以下、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。
第1工程の反応時間は、通常4時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましくは6時間以上であり、通常48時間以下、好ましくは36時間以下、より好ましくは24時間以下である。
上記範囲内であると、より効率良く含窒素有機化合物を生成することができる。
【0021】
第1工程は、パラジウム錯体及び/又はパラジウム塩、並びに酸素ガスの存在下、式(A)で表されるアミンと式(B)で表されるジエンを反応させてアミノ基を有する含窒素有機化合物を生成する工程であるが、第1工程において生成する含窒素有機化合物としては、下記式(I−1)〜(I−4)で表される含窒素有機化合物が挙げられる。
【化21】
(式(I−1)〜(I−4)中、R
1は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R
2は水素原子、又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R
3はそれぞれ独立して水素原子、又は炭
素原子数1〜20の炭化水素基を表す。但し、R
2が炭化水素基である場合、R
1とR
2の
炭化水素基が連結して環状構造を形成していてもよく、2つのR
3が共に炭化水素基であ
る場合、R
3の2つの炭化水素基が連結して環状構造を形成していてもよい。)
なお、R
1、R
2、R
3は、式(A)で表されるアミン及び式(B)で表されるジエンの
ものと同義である。
【0022】
(第2工程)
第2工程は、ロジウム錯体及び/又はロジウム塩の存在下、含窒素有機化合物と式(C)で表されるヒドロシランを反応させて含窒素含ケイ素有機化合物を生成する工程であるが、第2工程において使用する式(C)で表されるヒドロシランの具体的種類は、特に限定されず、製造目的である含窒素含ケイ素有機化合物に応じて適宜選択されるべきである。
【化22】
式(C)のR
4は、それぞれ独立して「水素原子」、又は「炭素原子数1〜20の炭化
水素基」を表しているが、「炭化水素基」は、R
1の場合と同義である。
R
4が炭化水素基である場合の炭素原子数は、通常20以下、好ましくは15以下、よ
り好ましくは10以下であり、R
4が芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以
上である。
R
4としては、メチル基(−CH
3,−Me)、エチル基(−C
2H
5,−Et)、n−プロピル基(−
nC
3H
7,−
nPr)、i−プロピル基(−
iC
3H
7,−
iPr)、n−ブチル基(−
nC
4H
9,−
nBu)、t−ブチル基(−
tC
4H
9,−
tBu)、n−ペンチル基(−
nC
5H
11)、n−ヘキシル基(−
nC
6H
13,−
nHex)、シクロヘキシル基(−
cC
6H
11,−Cy)、フェニル基(−C
6H
5,−Ph)等が挙げられる。この中でも、メチル基
、フェニル基等が特に好ましい。
式(C)で表されるヒドロシランとしては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化23】
【0023】
第2工程において使用する含窒素有機化合物は、精製等によって単離したものを利用するほか、第1工程の粗生成物をそのまま利用してワンポットで行っても、第1工程の粗生成物からパラジウム錯体等や溶媒を取り除いたものを利用してもよい。このような方法であると、より効率良く含窒素含ケイ素有機化合物を製造することができる。
【0024】
第2工程における式(C)で表されるヒドロシランの使用量(仕込量)は、含窒素含ケイ素有機化合物(見込量)に対して物質量換算で、通常0.1倍以上であり、通常10倍以下、好ましくは8倍以下、より好ましくは5倍以下である。上記範囲内であると、より効率良く含窒素含ケイ素有機化合物を製造することができる。
【0025】
第2工程において使用するロジウム錯体及びロジウム塩(以下、「ロジウム錯体等」と略す場合がある。)の具体的種類等は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
ロジウムの酸化数は、通常0、+1、+2、+3、+4、+5、+6であるが、+1であることが好ましい。
配位子若しくは対イオン、又はこれらになり得る化合物としては、酢酸、トリフェニルホスフィン(PPh
3)、塩化物アニオン(Cl
-)、臭化物アニオン(Br
-)、ヨウ化
物イオン(I
-)、硝酸イオン(NO
3-)等が挙げられる。
なお、第2工程において、ロジウム錯体等を反応器に直接投入するほか、ロジウム元素を含む前駆体と配位子若しくは対イオンとなり得る化合物を添加剤として投入して、反応器内で目的のロジウム錯体等を形成させてもよい。例えば、塩化ロジウム(III)とトリフェニルホスフィン(PPh
3)を反応させることによって、クロロトリス(トリフェ
ニルホスフィン)ロジウム(I)(RhCl(PPh
3)
3)、いわゆるウィルキンソン触媒(Wilkinson’s catalyst)を形成することが挙げられる。
ロジウム元素を含んだ前駆体の種類としては、塩化ロジウム(III)(RhCl
3)
、臭化ロジウム(III)(RhBr
3)、ヨウ化ロジウム(III)(RhI
3)、硝酸ロジウム(III)(Rh(NO
3)
3)、酢酸ロジウム(II)ダイマー(Rh(CH
3
CO
2)
2)
2等が挙げられる。
ロジウム錯体等としては、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)(RhCl(PPh
3)
3)、シクロオクタジエンロジウムクロリドダイマー((Rh(CO
D)Cl)
2)等が挙げられる。上記のものであると、より効率良く含窒素含ケイ素有機
化合物を製造することができる。
【0026】
第2工程におけるロジウム錯体等の使用量(仕込量)は、式(A)に対して物質量換算で、通常0.1mol%以上、好ましくは1mol%以上、より好ましくは5mol%以上であり、通常50mol%以下、好ましくは20mol%以下、より好ましくは10mol%以下である。上記範囲内であると、より効率良く含窒素含ケイ素有機化合物を製造することができる。
【0027】
第2工程は、通常溶媒を使用することが好ましい。また、溶媒の種類は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、具体的にはヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒等が挙げられる。この中でもベンゼンが特に好ましい。
上記のものであると、より効率良く含窒素含ケイ素有機化合物を製造することができる。
【0028】
第2工程の反応温度は、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上であり、通常100℃以下、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。
第2工程の反応時間は、通常6時間以上、好ましくは8時間以上、より好ましくは12時間以上であり、通常48時間以下、好ましくは36時間以下、より好ましくは24時間以下である。
上記範囲内であると、より効率良く含窒素含ケイ素有機化合物を製造することができる。
【0029】
本発明の製造方法によって製造される含窒素含ケイ素有機化合物の具体的種類等は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、下記式(II−1)〜(II−2)で表される含窒素含ケイ素有機化合物が挙げられる。
【化24】
(式(II−1)〜(II−2)中、R
1は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R
2は水素原子、又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R
3はそれぞれ独立して水素原子、又
は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R
4はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素原子
数1〜20の炭化水素基を表す。但し、R
2が炭化水素基である場合、R
1とR
2の炭化水
素基が連結して環状構造を形成していてもよく、2つのR
3が共に炭化水素基である場合
、R
3の2つの炭化水素基が連結して環状構造を形成していてもよい。)
なお、R
1、R
2、R
3、R
4は、式(A)で表されるアミン、式(B)で表されるジエン、及び式(C)で表されるヒドロシランのものと同義である。
【0030】
<含窒素有機化合物の製造方法>
第1工程によってアミノ基を有する含窒素有機化合物が生成することを前述したが、パラジウム錯体及び/又はパラジウム塩、並びに酸素ガスの存在下、式(A)で表されるア
ミンと式(B)で表されるジエンを反応させて式(I−1)で表される含窒素有機化合物を生成する反応工程1(以下、「反応工程1」と略す場合がある。)を含む含窒素有機化合物の製造方法も本発明の一態様である。
【化25】
(式(A)中、R
1は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R
2は水素原子、又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。但し、R
2が炭化水素基である場合、R
1とR
2の炭化水
素基が連結して環状構造を形成していてもよい。)
【化26】
(式(B)中、R
3はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1〜20の炭化水素基
を表す。但し、2つのR
3が共に炭化水素基である場合、2つの炭化水素基が連結して環
状構造を形成していてもよい。)
【化27】
(式(I−1)中、R
1は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R
2は水素原子、又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R
3はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1〜
20の炭化水素基を表す。但し、R
2が炭化水素基である場合、R
1とR
2の炭化水素基が
連結して環状構造を形成していてもよく、2つのR
3が共に炭化水素基である場合、R
3の2つの炭化水素基が連結して環状構造を形成していてもよい。)
なお、式(A)で表されるアミン、式(B)で表されるジエン、及び式(I−1)で表される含窒素有機化合物等は、前述のものと同義である。また、反応工程1の反応条件は、第1工程のものと同様である。
【0031】
反応工程1は、パラジウム錯体等と酸素ガスのほかに、添加剤として下記式(D)で表されるジシランの存在下で行われることが好ましい。式(D)で表されるジシランが存在することによって、より効率良く含窒素有機化合物を生成することができる。なお、式(D)で表されるジシランの使用量は、第1工程のものと同様である。
【化28】
(式(D)中、R
5はそれぞれ独立して炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)
【0032】
<含窒素含ケイ素有機化合物の製造方法2>
第2工程によってアミノ基とシリル基の両方を有する含窒素含ケイ素有機化合物が生成することを前述したが、ロジウム錯体及び/又はロジウム塩の存在下、式(I−1)で表される含窒素有機化合物と式(C)で表されるヒドロシランを反応させて含窒素含ケイ素有機化合物を生成する反応工程2(以下、「反応工程2」と略す場合がある。)を含む含窒素含ケイ素有機化合物の製造方法も本発明の一態様である。
【化29】
(式(I−1)中、R
1は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R
2は水素原子、又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、R
3はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1〜
20の炭化水素基を表す。但し、R
2が炭化水素基である場合、R
1とR
2の炭化水素基が
連結して環状構造を形成していてもよく、2つのR
3が共に炭化水素基である場合、R
3の2つの炭化水素基が連結して環状構造を形成していてもよい。)
【化30】
(式(C)中、R
4はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1〜20の炭化水素基
を表す。)
なお、式(I−1)で表される含窒素有機化合物及び式(C)で表されるヒドロシラン等は、前述のものと同義である。また、反応工程2の反応条件は、第2工程のものと同様である。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0034】
<実施例1>
撹拌子を入れた30mLナスフラスコに、酢酸パラジウム(0.02245g,0.1
0mmol)、2,4,6−トリメチル安息香酸(TMBA,0.03284g,0.20mmol)を投入し、フラスコ内に酸素ガスを吹き込んでセプタムを取り付けた。その後、DMF(2mL)とヘキサメチルジシラン(0.20mL,1mmol)を加えて5分間撹拌し、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン(0.565mL,5mmol)、N−メチルアニリン(0.108mL,1mmol)の順に加えた。還流管の上部に二方コックを介して酸素ガスの入ったバルーンを取り付け、酸素ガスを還流管に流しながら、これをナスフラスコに取り付けて、バルーンを用いて系中を酸素雰囲気下とした。ナスフラスコをオイルバスに浸し、60℃に加熱して撹拌しながら16時間反応させた。
反応終了後、還流管内部を洗うようにクエンチ溶媒としてアセトン(10mL)を加えた。パスツールピペットを用いて内部基準物質のデカンを加え、ガスクロマトグラフィーで分析を行った結果、下記化合物3等が生成していることが確認された。なお、内部基準法により算出した転化率及び収率を表1に、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)によって得られた化合物3のMSスペクトルを
図1に示す。
【0035】
【化31】
【0036】
【表1】
【0037】
得られた粗生成物に対して、アセトニトリル(CH
3CN)を流し溶媒として自然ろ過
を行った後、ロータリーエバボレーターで溶媒を留去した。次にナスフラスコにセプタムを付けて、アルゴン置換を行った後、ベンゼンに溶かしたウィルキンソン触媒(Wilkinson’s catalyst)−クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)触媒とジメチル(フェニル)シラン(0.35mmol)を加えた。アルゴンバルーン付きの二方コックを還流管の上部に取り付け、アルゴンガスを流しながら、ナスフラスコを還流管の下部に取り付けた。ナスフラスコをオイルバスに浸し、75℃に加熱して撹拌しながら16時間反応させた結果、下記式で表される化合物が生成していることが確認された(E体とZ体を合わせて53%の収率)。なお、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)による下記式で表される化合物のMSスペクトルを
図2に示す。
【0038】
【化32】
【0039】
<実施例2〜4>
撹拌子を入れた30mLナスフラスコに、酢酸パラジウム(0.05mmol)、2,4,6−トリメチル安息香酸(TMBA,表2に記載の添加量)を投入し、フラスコ内に酸素ガスを吹き込んでセプタムを取り付けた。その後、DMF(2mL)とヘキサメチルジシラン(1mmol)を加えて5分間撹拌し、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン(5mmol)、N−メチルアニリン(1mmol)の順に加えた。還流管の上部に二方コックを介して酸素ガスの入ったバルーンを取り付け、酸素ガスを還流管に流しながら、これをナスフラスコに取り付けて、バルーンを用いて系中を酸素雰囲気下(1atm)とした。ナスフラスコをオイルバスに浸し、60℃に加熱して撹拌しながら16時間反応させた。内部基準法により算出したそれぞれの転化率及び収率を表2に示す。
【0040】
【化33】
【0041】
【表2】
【0042】
<実施例5>
反応温度を80℃に変更した以外、実施例3と同様の方法により反応を行った。内部基準法により算出した転化率及び収率を表3に示す。
【0043】
【化34】
【0044】
【表3】
【0045】
<実施例6〜7>
2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンの使用量を表3に記載のものに変更した以外、実施例3と同様の方法により反応を行った。内部基準法により算出した転化率及び収率を表4に示す。
【0046】
【化35】
【0047】
【表4】
【0048】
<実施例8〜11>
酢酸パラジウムの使用量と溶媒を表4に記載のものに変更した以外、実施例3と同様の方法により反応を行った。内部基準法により算出した転化率及び収率を表5に示す。
【0049】
【化36】
【0050】
【表5】