特開2019-131814(P2019-131814A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-131814(P2019-131814A)
(43)【公開日】2019年8月8日
(54)【発明の名称】研磨用組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20190712BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20190712BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20190712BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20190712BHJP
【FI】
   C09K3/14 550D
   B24B37/00 H
   H01L21/304 622D
   C09K3/14 550Z
   C09G1/02
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-42277(P2019-42277)
(22)【出願日】2019年3月8日
(62)【分割の表示】特願2012-227406(P2012-227406)の分割
【原出願日】2012年10月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森 嘉男
(72)【発明者】
【氏名】今尾 智宏
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 修平
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158ED10
3C158ED11
3C158ED12
3C158ED26
3C158ED28
5F057AA21
5F057AA28
5F057BA11
5F057BB03
5F057CA11
5F057CA18
5F057EA01
5F057EA07
5F057EA21
5F057EA29
5F057EA37
5F057EB10
(57)【要約】
【課題】金属成分の混入を抑制することの容易な研磨用組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の研磨用組成物の製造方法は、原料として酸化ケイ素、塩基性化合物、水溶性高分子としてヒドロキシエチルセルロース、及び水を混合する工程(造粒工程を除く)を有する。前記工程では、前記原料としての水の接する部位の一部又は全部に非金属材料を用いた設備を用い、前記設備は、金属材料を用いて構成される本体と、その本体に積層される積層部とを有する構成部材を含み、前記積層部が前記水の接する部位を構成し、前記設備は、酸化ケイ素、塩基性化合物、及び水を含む第1混合物を得る第1混合容器と、水溶性高分子、塩基性化合物、及び水を含む第2混合物を得る第2混合容器と、第1混合物と第2混合物とを混合する主混合容器を備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料として酸化ケイ素、塩基性化合物、水溶性高分子としてヒドロキシエチルセルロース、及び水を混合する工程(造粒工程を除く)を有する研磨用組成物の製造方法であって、
前記工程では、前記原料としての水の接する部位の一部又は全部に非金属材料を用いた設備を用い、
前記設備は、金属材料を用いて構成される本体と、その本体に積層される積層部とを有する構成部材を含み、前記積層部が前記水の接する部位を構成し、
前記設備は、酸化ケイ素、塩基性化合物、及び水を含む第1混合物を得る第1混合容器と、水溶性高分子、塩基性化合物、及び水を含む第2混合物を得る第2混合容器と、第1混合物と第2混合物とを混合する主混合容器を備えることを特徴とする研磨用組成物の製造方法。
【請求項2】
前記積層部が同一の非金属材料を用いて構成される請求項1に記載の研磨用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨用組成物は、例えば、砥粒、塩基性化合物、水等を混合することで製造される。得られた研磨用組成物は、例えばシリコン基板を研磨対象物とした研磨に用いられる。研磨には、定盤を備えた研磨装置が用いられる(例えば、特許文献1参照)。研磨装置では、研磨対象物への金属成分の混入を抑制するために、研磨用組成物と接触する接液部をフッ素系樹脂でコーティングした構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−086144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
研磨用組成物を製造する製造過程において、研磨用組成物に金属成分が混入されるおそれがある。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、金属成分の混入を抑制することの容易な研磨用組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様では、原料として酸化ケイ素、塩基性化合物、水溶性高分子としてヒドロキシエチルセルロース、及び水を混合する工程(造粒工程を除く)を有する研磨用組成物の製造方法であって、前記工程では、前記原料としての水の接する部位の一部又は全部に非金属材料を用いた設備を用い、前記設備は、金属材料を用いて構成される本体と、その本体に積層される積層部とを有する構成部材を含み、前記積層部が前記水の接する部位を構成し、前記設備は、酸化ケイ素、塩基性化合物、及び水を含む第1混合物を得る第1混合容器と、水溶性高分子、塩基性化合物、及び水を含む第2混合物を得る第2混合容器と、第1混合物と第2混合物とを混合する主混合容器を備えることを特徴とする。
【0006】
この製造方法によれば、原料を混合する工程において、例えば、原料としての水の接する部位の一部に非金属材料を用いた設備を用いることにより、原料としての水と金属材料との接触が部分的に回避される。前記設備において、水と接する部位の全面積に対する、非金属材料を用いて構成した部位の占有面積は、5%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上、一層好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
【0007】
上記研磨用組成物の製造方法では、前記積層部が同一の非金属材料を用いて構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属成分の混入を抑制することが容易となる効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
研磨用組成物の製造方法は、原料を混合する工程を有する。この工程では、原料としての水の接する部位の全部に非金属材料を用いた設備を用いる。本実施形態における設備は、第1混合物を得るための第1混合容器、第2混合物を得るための第2混合容器、及び第1混合物と第2混合物とを混合する主混合容器を備える。第1混合容器と主混合容器とは第1配管部により連結されている。第2混合容器と主混合容器とは第2配管部により連結されている。
【0010】
第1混合容器は、第1混合物を収容する容器と、撹拌機又は分散機とを備えている。容器は、金属材料を用いて構成される本体と、その本体の内面に積層されるとともに非金属材料を用いて構成される積層部とを有する。本実施形態では、第1混合容器の内面の全体が、積層部によって構成されている。撹拌機又は分散機としては、例えば、翼式撹拌機、超音波分散機、及びホモミキサーが挙げられる。撹拌機又は分散機は、金属材料を用いて構成される本体と、本体に積層されるとともに非金属材料を用いて構成される積層部とを有する。
【0011】
第1混合容器の有する積層部は、第1混合物が接する部位を構成している。すなわち、第1混合容器内で調製される第1混合物は、本体に接することなく、積層部のみに接する。
【0012】
本体を構成する金属材料としては、特に限定されないが、例えば、耐食性に優れるとともにコスト的に有利であるという観点からステンレス鋼が好適に用いられる。
積層部を構成する非金属材料としては、例えば、樹脂材料及びセラミックスが挙げられる。樹脂材料としては、例えば、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、及びポリイソブチレン樹脂が挙げられる。
【0013】
オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、及びポリエチレン系樹脂が挙げられる。塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、及びポリ塩化ビニリデン系樹脂が挙げられる。フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、及びエチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)が挙げられる。セラミックスとしては、例えば、六方晶窒化ホウ素が挙げられる。
【0014】
非金属材料の中でも、撥水性に優れるという観点から、フッ素系樹脂が好ましい。
第2混合容器及び主混合容器についても、第1混合容器と同様に本体及び積層部を有する。第2混合容器の有する積層部は、第2混合物と接する部位を構成するとともに、主混合容器の有する積層部は、第1混合物及び第2混合物、並びに第1混合物と第2混合物との混合物と接する部位を構成する。
【0015】
第1配管部は、筒状の管体と、第1混合容器から主混合容器に第1混合物を移送させるポンプとを備える。管体は、金属材料を用いて構成される本体と、その内面に積層されるとともに非金属材料を用いて構成される積層部とを有する。ポンプは、ケーシングとケーシング内に収容される回転体とを備える。ケーシング及び回転体は、金属材料を用いて構成される本体と、本体に積層されるとともに非金属材料を用いて構成される積層部とを有する。第1配管部の有する積層部は、第1混合物と接する部位を構成する。すなわち、第1配管部の有する積層部は、第1混合物を通じる流路を形成する。
【0016】
第2配管部についても、第1配管部と同様に本体及び積層部を有する。第2配管部の有する積層部は、第2混合物と接する部位を構成する。すなわち、第2配管部の有する積層部は、第2混合物を通じる流路を形成する。
【0017】
設備の有する積層部は、同一の非金属材料を用いて構成されることが好ましい。設備の有する積層部の厚みは、例えば0.1mm以上、5mm以下の範囲であることが好ましい。
【0018】
設備の有する積層部は、コーティングにより形成される。コーティングは、塗装及び溶射を含む。塗装方法としては、例えば、ディッピング、スプレーガン、刷毛塗り、及びローラー塗りが挙げられる。塗装としては、焼き付け塗装を採用することもできる。溶射としては、ガス式溶射及び電気式溶射のいずれであってもよい。
【0019】
原料を混合する工程では、第1混合容器で第1混合物が調製される。本実施形態の第1混合物は、研磨用組成物の原料として、砥粒及び水を含む。砥粒の材料としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び酸化チタンが挙げられる。
【0020】
水は、砥粒の分散媒として用いられる。水は、例えば、遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下とされることが好ましい。例えば、イオン交換樹脂を用いる不純物イオンの除去、フィルターによる異物の除去、蒸留等の操作によって水の純度を高めることができる。具体的には、例えば、イオン交換水、純水、超純水、又は蒸留水を用いることが好ましい。なお、研磨用組成物の製造方法において、第1混合物以外の原料として研磨用組成物に含有される水についても同様の品質の水が用いられることが好ましい。
【0021】
原料を混合する工程では、第2混合容器で第2混合物が調製される。本実施形態の第2混合物は、研磨用組成物の原料として、塩基性化合物及び水を含む。
塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、水酸化第四級アンモニウム又はその塩、アンモニア、及びアミンが挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウムが挙げられる。水酸化第四級アンモニウム又はその塩としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、及び水酸化テトラブチルアンモニウムが挙げられる。アミンとしては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、及びグアニジンが挙げられる。
【0022】
原料を混合する工程では、第1混合容器内の第1混合物を主混合容器に供給し、第2混合容器内の第2混合物を主混合容器に供給する。主混合容器に対する第1混合物及び第2混合物の供給する順序は、特に限定されない。供給された第1混合物及び第2混合物は、主混合容器内で混合される。主混合容器内では、第1混合物と第2混合物との混合物が調製される。
【0023】
研磨用組成物の製造方法は、研磨用組成物中の異物を削減して、より品質の高い研磨用組成物を得るという観点から、第1混合物と第2混合物との混合物をろ過するろ過工程を有することが好ましい。ろ過工程を実施するろ過器と、主混合容器とはろ過器用配管部により連結されることが好ましい。ろ過器用配管部にはポンプが設けられることで、主混合容器からろ過器に混合物は移送されるように構成される。ろ過器としては、フィルターがケーシング内に収容された周知のろ過器を用いることができる。ろ過器用配管部及びろ過器において、第1混合物と第2混合物との混合物が接する部位は、上述したように積層部によって構成されることが好ましい。なお、フィルターの材質及び構造は特に限定されるものではない。フィルターの材質としては、例えば、セルロース、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)、及びガラスが挙げられる。フィルターの材質としては、細かい目開きでの精密なろ過を実施する観点から、PTFE、ポリカーボネート、又はポリアミドが好ましく、ポリアミドが最も好ましい。フィルターの構造としては、例えばデプス、プリーツ、及びメンブレンが挙げられる。
【0024】
得られた研磨用組成物は、容器に充填されて保管又は運搬される。研磨用組成物は、使用時に必要に応じて水や塩基性の水溶液で希釈される。
研磨用組成物を用いた研磨には、例えば、片面研磨装置や両面研磨装置を用いることができる。研磨に用いられる研磨パッドは、その材質、硬度や厚み等の物性等について特に限定されない。研磨パッドとしては、例えば、ポリウレタンタイプ、不織布タイプ、及びスウェードタイプのいずれのタイプのものを使用してもよい。また、研磨パッドは、砥粒を含むものであっても、砥粒を含まないものであってもよい。
【0025】
研磨対象物としては、例えば、シリコン基板、ステンレス等の金属、酸化シリコン基板、プラスチック基板、ガラス基板、及び石英基板が挙げられる。特に、半導体用基板では、金属成分による汚染を低減することが求められる。このため、半導体用基板を得るための研磨に用いられる研磨用組成物には、金属成分の含有量を極力低減することが求められる。こうした観点から、本実施形態で製造された研磨用組成物は、半導体用基板を得るための研磨に用いられることが好適である。
【0026】
次に、研磨用組成物の製造方法の作用について説明する。
研磨用組成物の製造方法は、研磨用組成物の原料を混合する工程を有している。こうした工程を実施する設備では、原料としての水と設備とが接触する時間が比較的長い。このため、原料としての水の接触する部位が金属材料を用いて構成されている場合、金属材料から金属成分が溶出し易く、溶出した金属成分は研磨用組成物に混入し易くなる。この点、本実施形態の製造方法では、第1混合物、第2混合物、及び第1混合物と第2混合物との混合物が接する部位、すなわち原料としての水が接する部位が、非金属材料を用いて構成されている。このため、研磨用組成物の原料を混合する工程において、原料としての水と金属材料との接触が回避される。
【0027】
以上詳述した本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)研磨用組成物の原料を混合する工程では、原料としての水の接する部位の全部に非金属材料を用いて構成した設備を用いる。このため、研磨用組成物に対する金属成分の混入を抑制することが容易となる。
【0028】
(2)本実施形態で用いる設備は、金属材料を用いて構成される本体と、その本体に積層される積層部とを有する構成部材(第1混合容器、第2混合容器、主混合容器、第1配管部及び第2配管部)を用いて構成されている。こうした積層部を有する構成部材により、原料としての水の接触する部位が構成されている。この場合、構成部材の有する本体を金属材料から形成することができるため、構成部材の耐久性や耐衝撃性を高めることが容易となる。
【0029】
(3)積層部は、同一の非金属材料から構成されることが好ましい。この場合、例えば、塗装又は溶射により、積層部を容易に形成することができる。
(変更例)
前記実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0030】
・前記設備の有する構成部材において、積層部の少なくとも一部を省略し、積層部を有しない部位を非金属材料に変更されてもよい。例えば、第1混合容器の有する容器に、容器の外部から第1混合物を視認可能とする窓部材が設けられ、その窓部材に第1混合物が接するように構成されてもよい。窓部材を構成する非金属材料としては、例えば、可視光の透過性(透明性)を有する樹脂材料を用いることができる。このような窓部材は、第1混合容器以外の設備において、原料としての水の接する部位に設けることもできる。可視光の透過性(透明性)を有する樹脂材料としては、例えば、透明ポリプロピレン系樹脂、及び透明ポリ塩化ビニル系樹脂が挙げられる。
【0031】
・前記設備において、原料としての水の接する部位の少なくとも一部は、非金属材料単体を用いた構成部材によって構成されてもよい。前記設備において、例えば、上記の可視光の透過性(透明性)を有する樹脂材料からなる管体を用いることは、通液状態を視認することができるという観点から好ましい。
【0032】
・前記設備において、原料としての水の接する部位以外の部位は、金属材料を用いて構成されてもよいし、非金属材料を用いて構成されてもよい。
・前記設備は、3つ以上の混合容器を備える設備や第1配管部、第2配管部及びろ過器用配管部以外の配管部を有する設備に変更されてもよい。このように設備を変更した場合においても、原料としての水の接する部位の全体が、非金属材料を用いて構成されていることが好ましい。
【0033】
・前記設備は、第1混合容器、第2混合容器及び主混合容器を備えているが、第1混合容器及び第2混合容器の少なくとも一方は省略されてもよい。これに伴って、第1配管部及び第2配管部の少なくとも一方も省略される。例えば、第1混合容器及び第2混合容器のいずれも省略された場合、主混合容器に、複数種の原料を直接投入し、その主混合容器内で水を含む混合物を得る設備とされる。
【0034】
・前記第1混合容器及び第2混合容器のいずれか一方は、撹拌機又は分散機を有しない容器に変更されてもよい。こうした容器を用いて、例えば、前記製造方法を使用時の研磨用組成物を製造する製造方法に変更して実施することができる。この製造方法は、研磨用組成物の原料を混合する工程として、水を含む混合物と水とを混合することで、混合物を水で希釈する工程を有する。この工程において、例えば、第1混合容器には、水を含む混合物が収容される。この混合物は、第1混合容器内で更に混合されることでより均一な状態とされる。一方、撹拌機又は分散機を有しない第2容器には水が収容される。そして、水を含む混合物と水とは主混合容器に供給される。主混合容器では水を含む混合物と水とが混合された混合物が得られる。得られた混合物は、必要に応じて、ろ過された後に、使用時の研磨用組成物とされる。
【0035】
・前記第1配管部又は第2配管部には、管体の有する流路を開閉する開閉弁等の弁体が備えられていてもよい。こうした弁体において、水を含む混合物が接する部位は、非金属材料を用いて構成されることが好ましい。
【0036】
・前記ポンプは省略されてもよい。例えば、第1混合物及び第2混合物の少なくとも一方の混合物が主混合容器へ自重で供給されるように、混合容器及び第2混合容器の少なくとも一方を配置されてもよい。
【0037】
・前記第1混合容器において、塩基性化合物が混合されてもよい。また、前記第1混合容器又は第2混合容器において、砥粒及び塩基性化合物以外の添加剤が混合されてもよい。添加剤としては、例えば、界面活性剤、水溶性高分子、キレート剤、防腐剤、防黴剤、及び防錆剤が挙げられる。
【0038】
・前記実施形態及び変更例として記載した設備において、原料としての水の接する部位の全体が、非金属材料を用いて構成されているが、前記部位の一部に非金属材料を用いてもよい。この場合であっても、原料としての水と金属材料との接触が部分的に回避されるため、研磨用組成物に対する金属成分の混入を抑制することが容易となる。
【0039】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)前記設備は、水を含む第1混合物を得る第1混合容器と、水を含む第2混合物を得る第2混合容器と、第1混合物と第2混合物とを混合する主混合容器と、第1混合容器と主混合容器とを連結する第1配管部と、第2混合容器と主混合容器とを連結する第2配管部とを備える、研磨用組成物の製造方法。
【0040】
(ロ)前記原料を混合する工程は、水を含む混合物と水とを混合することで前記混合物を希釈する工程であり、前記設備は、水を含む混合物を更に混合する混合容器と、水を収容する容器と、前記混合物と前記水とを混合する主混合容器と、前記混合容器と主混合容器とを連結する配管部と、前記容器と前記主混合容器とを連結する配管部とを備える、研磨用組成物の製造方法。
【実施例】
【0041】
次に、実施例を挙げて前記実施形態を具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1では、試験用の設備を用いて原料を混合する工程を実施した。この試験用の設備では、水を含む混合物の接する部位の全部がフッ素系樹脂(商品名:テフロン)を用いて構成されている。また、この試験用の設備では、水を含む混合物が接する部位の大部分は、ステンレス鋼(SUS304)を用いて構成される本体と、フッ素系樹脂を用いて構成される積層部とを有する構成部材を用いて構成されている。
【0042】
第1混合容器に、原料としてコロイダルシリカ、アンモニア、及び水を供給し、それら原料を混合することで第1混合物を調製した。第2混合容器に、原料としてヒドロキシエチルセルロース、アンモニア、及び水を供給し、それら原料を混合することで、第2混合物を調製した。第1混合物及び第2混合物をそれぞれ第1配管部及び第2配管部を通じて主混合容器に供給した後、第1混合物と第2混合物とを混合した。得られた混合物中における金属成分(Cr、Fe、及びNi)の含有量をICP発光分析装置“ICPS−8100”(株式会社島津製作所製)によって測定した。その結果を表1に示す。
【0043】
(参考例2)
参考例2では、試験用の設備を変更した以外は、実施例1と同様に混合物を製造した。参考例2で用いた試験用の設備では、水を含む混合物の接する部位の全部がフッ素系樹脂(商品名:テフロン)を用いて構成され、積層部が省略されている。得られた混合物中における金属成分の含有量を実施例1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0044】
(参考例3)
参考例3では、試験用の設備を変更した以外は、実施例1と同様に混合物を製造した。参考例3で用いた試験用の設備では、水を含む混合物の接する部位の全部がポリプロピレン樹脂を用いて構成され、積層部が省略されている。得られた混合物中における金属成分の含有量を実施例1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0045】
(参考例4)
参考例4では、試験用の設備を変更した以外は、実施例1と同様に混合物を製造した。参考例4で用いた試験用の設備では、水を含む混合物の接する部位の全部がポリ塩化ビニル樹脂を用いて構成され、積層部が省略されている。得られた混合物中における金属成分の含有量を実施例1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
表1に示すように、実施例1及び各参考例における金属成分の含有量は、いずれも低い水準であった。表1の“撥水性”欄では、用いた非金属材料について、優れた撥水性を有するフッ素系樹脂を“A”と記載し、フッ素系樹脂よりも撥水性に劣る非金属材料を“B”と記載した。表1の“コスト”欄では、設備の大部分をフッ素系樹脂で構成した参考例2を“B”と記載し、参考例2よりも、非金属材料の種類及び使用量の観点から、設備のコストが安価になる例を“A”と記載した。表1に示すように、実施例1及び各参考例の中でも、撥水性及びコストの観点から、実施例1が有利であることが分かる。