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特開2019-132486ループ型ヒートパイプ、ループ型ヒートパイプの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-132486(P2019-132486A)
(43)【公開日】2019年8月8日
(54)【発明の名称】ループ型ヒートパイプ、ループ型ヒートパイプの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20190712BHJP
   F28D 15/04 20060101ALI20190712BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20190712BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20190712BHJP
【FI】
   F28D15/02 101K
   F28D15/02 102H
   F28D15/04 E
   F28D15/02 106Z
   H01L23/46 B
   H05K7/20 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-14058(P2018-14058)
(22)【出願日】2018年1月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木曽 貴彦
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322DB08
5F136CC12
5F136CC13
5F136FA01
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA33
5F136FA75
(57)【要約】
【課題】作動流体の流路を確保すること。
【解決手段】ループ型ヒートパイプ10は、蒸発器11と、蒸気管12と、凝縮器13と、液管14と、注入部15とを有している。蒸気管12には、折り曲げ位置に、薄肉部22が形成されている。蒸気管12において、薄肉部22(凹部23)が形成された部分を外側とするように、折り曲げ位置BPにてループ型ヒートパイプ10を折り曲げる。注入部15から圧縮空気を注入し、ループ型ヒートパイプ10の内部に内圧を加える。ループ型ヒートパイプ10の内部に加わる内圧により、薄肉部22が蒸気管12の外側に膨らむ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の最外金属層と、前記一対の最外金属層の間に積層された複数の中間金属層からなり、
作動流体を気化させる蒸発器と、
作動流体を液化する凝縮器と、
気化した作動流体を前記凝縮器に流入させる蒸気管と、
液化した作動流体を前記蒸発器に流入させる液管と、
前記作動流体を注入する注入部と、
を有し、
前記蒸気管は、前記作動流体の流路の壁部材の一部である前記一対の最外金属層の一方に薄肉部を有することを特徴とする、
ループ型ヒートパイプ。
【請求項2】
前記蒸気管は、前記薄肉部を外側として折り曲げられていることを特徴とする、請求項1に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項3】
前記薄肉部は、前記最外金属層の流路側の凹部により形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項4】
前記凹部は、前記流路の幅で一様に窪んだ形状であることを特徴とする、請求項3に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項5】
前記凹部は、前記作動流体の流れる方向に沿って延び互いに平行なストライプ状であることを特徴とする、請求項3に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項6】
前記液管には前記複数の中間金属層により形成される多孔質体が設けられ、
前記蒸気管と前記液管は、それぞれの曲げ線が一致するように折り曲げられていることを特徴とする、
請求項2に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項7】
作動流体を気化させる蒸発器と、作動流体を液化する凝縮器と、気化した作動流体を前記凝縮器に流入させる蒸気管と、液化した作動流体を前記蒸発器に流入させる液管と、前記作動流体を注入する注入部と、を有するループ型ヒートパイプの製造方法であって、
前記蒸気管を、一方に薄肉部を有する一対の最外金属層と、前記一対の最外金属層の間に配設した複数の中間金属層とを積層して形成し、
薄肉部が形成された位置において、前記薄肉部を外側として折り曲げ、
前記注入部から圧縮空気を注入して前記薄肉部に内圧を加えて前記薄肉部を外側に膨らませ、
前記注入部から前記作動流体を注入した後、前記注入部を気密封止することを特徴とする、
ループ型ヒートパイプの製造方法。
【請求項8】
前記液管に前記複数の中間金属層を積層して多孔質体を形成し、
前記蒸気管と前記液管を、それぞれの曲げ線が一致するように折り曲げることを特徴とする、
請求項7に記載のループ型ヒートパイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ループ型ヒートパイプ、ループ型ヒートパイプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器に搭載される半導体デバイス(例えば、CPU等)の発熱部品を冷却するデバイスとして、作動流体の相変化を利用したヒートパイプが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/087451号
【特許文献2】特開2002−22381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子機器によっては、発熱部と放熱部とが同一平面上にない場合がある。このような電子機器に用いるヒートパイプには、曲げ加工が必要となる。しかしながら、曲げ加工によって、作動流体の流路が狭くなったり閉塞されたりする。従って、作動流体の流路が確保できなくなり、作動流体の流れが阻害され、ヒートパイプとして機能しなくなる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、ループ型ヒートパイプは、一対の最外金属層と、前記一対の最外金属層の間に積層された複数の中間金属層からなり、作動流体を気化させる蒸発器と、作動流体を液化する凝縮器と、気化した作動流体を前記凝縮器に流入させる蒸気管と、液化した作動流体を前記蒸発器に流入させる液管と、前記作動流体を注入する注入部と、を有し、前記蒸気管は、前記作動流体の流路の壁部材の一部である前記一対の最外金属層の一方に薄肉部を有する。
【0006】
また、本発明の一観点によるループ型ヒートパイプの製造方法は、作動流体を気化させる蒸発器と、作動流体を液化する凝縮器と、気化した作動流体を前記凝縮器に流入させる蒸気管と、液化した作動流体を前記蒸発器に流入させる液管と、前記作動流体を注入する注入部と、を有するループ型ヒートパイプの製造方法であって、前記蒸気管を、一方に薄肉部を有する一対の最外金属層と、前記一対の最外金属層の間に配設した複数の中間金属層とを積層して形成し、薄肉部が形成された位置において、前記薄肉部を外側として折り曲げ、前記注入部から圧縮空気を注入して前記薄肉部に内圧を加えて前記薄肉部を外側に膨らませ、前記注入部から前記作動流体を注入した後、前記注入部を気密封止する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一観点によれば、作動流体の流路を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ループ型ヒートパイプの概略平面図。
図2】(a)は蒸気管を示す図1の2−2線断面図、(b)は薄肉部(凹部)を形成した金属層の一部平面図。
図3】蒸気管を示す図1の3−3線断面図。
図4】液管の概略断面図。
図5】(a)は1層目の金属層の概略平面図、(b)は2〜5層目の金属層の概略平面図、(c)は6層目の金属層の概略平面図。
図6】(a)は実施形態の蒸気管を示す概略断面図、(b)は比較例の蒸気管の概略断面図。
図7】電子機器の概略断面図。
図8】(a)は変形例のループ型ヒートパイプの概略平面図、(b)は液管の概略断面図、(c)は曲げ加工したループ型ヒートパイプを示す概略側面図。
図9】(a)は変形例のループ型ヒートパイプの概略平面図、(b)は液管の概略断面図、(c)は曲げ加工したループ型ヒートパイプを示す概略側面図。
図10】(a)は変形例の薄肉部を示す金属層の一部平面図、(b)は液管の概略断面図。
図11】(a)は変形例の薄肉部を示す金属層の一部平面図、(b)は液管の概略断面図。
図12】(a)は変形例の薄肉部を示す金属層の一部平面図、(b)は液管の概略断面図。
図13】(a)は変形例の薄肉部を示す金属層の一部平面図、(b)は液管の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各形態を説明する。
なお、添付図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、または別の図面中のものと異なる場合がある。また、平面図や断面図では、理解を容易にするためにハッチングを付しているが、一部の構成要素についてはハッチングを省略している場合がある。
【0010】
図1に示すように、ループ型ヒートパイプ10は、蒸発器11と、蒸気管12と、凝縮器13と、液管14と、注入部15とを有している。蒸発器11と凝縮器13は、蒸気管12と液管14とにより接続されている。蒸発器11は、作動流体Cを気化させて蒸気Cvを生成する機能を有している。凝縮器13は、作動流体Cの蒸気を液化する機能を有している。液化した作動流体Cは、液管14を介して蒸発器11に送られる。蒸気管12及び液管14は、作動流体C又は蒸気Cvを流すループ状の流路21を形成する。本実施形態において、液管14の長さと蒸気管12の長さは、例えば互いに同じである。なお、液管14の長さと蒸気管12の長さは、異なっていてもよい。例えば、液管14の長さに比べて蒸気管12の長さが短くてもよい。
【0011】
蒸発器11は、図7に示す発熱部品111に密着して固定される。蒸発器11内の作動流体Cは、発熱部品111にて発生した熱により気化し、蒸気Cvが生成される。なお、蒸発器11と発熱部品111との間に、熱伝導部材(TIM:Thermal Interface Material)が介在されてもよい。熱伝導部材は、発熱部品111と蒸発器11の間の接触熱抵抗を低減し、発熱部品111から蒸発器11への熱伝導をスムーズにする。蒸発器11にて発生した蒸気Cvは、蒸気管12を介して凝縮器13へと導かれる。
【0012】
凝縮器13は、放熱用に面積を大きくした放熱プレート13pと、放熱プレート13pの内部において蛇行した流路13rとを有している。蒸気管12を介して導かれた蒸気Cvは、凝縮器13において液化する。凝縮器13で液化した作動流体Cは、液管14を介して蒸発器11へと導かれる。
【0013】
このループ型ヒートパイプ10は、図7に示す発熱部品111で発生した熱を凝縮器13に移動し、その凝縮器13において放熱する。これにより、ループ型ヒートパイプ10は、発熱部品111を冷却する。
【0014】
作動流体Cとしては、蒸気圧が高く、蒸発潜熱が大きい流体を使用するのが好ましい。このような作動流体Cを用いることで、蒸発潜熱によって発熱部品を効率的に冷却できる。作動流体Cとしては、例えば、アンモニア、水、フロン、アルコール、アセトン、等を用いることができる。
【0015】
注入部15は、作動流体Cをループ型ヒートパイプ10の内部へと注入するための入口である。本実施形態において、注入部15は液管14に接続されている。注入部15は、作動流体Cを注入後に気密封止される。なお、注入部15は、凝縮器13や蒸気管12や蒸発器11に接続されてもよい。この場合、注入された作動流体Cは、注入箇所から液管14内に移動する。
【0016】
本実施形態において、注入部15は、液管14に連結する未封止部15aと、未封止部15aに連結する封止部15bとを有している。未封止部15aは、封止前の形状、つまり作動流体Cを液管14内に注入する際の形状がおおよそ保たれている。封止部15bは、作動流体Cを液管14内に注入する際には未封止部15aと同様の形状であり、作動流体Cを液管14内に注入した後、潰されて扁平化されている。封止部15bの扁平化により、液管14内に注入した作動流体Cが外部に漏れないように気密封止することができる。
【0017】
また、注入部15は、ループ型ヒートパイプ10の内部へ圧縮空気を注入するために利用される。圧縮空気は、ループ型ヒートパイプ10の内部に圧力を加える、つまり流路21に内圧を加えるために、ループ型ヒートパイプ10の内部の流路21に供給される。ループ型ヒートパイプ10の内部に圧力を加えることにより、折り曲げ加工後における流路21を確保する。この流路21の確保について説明する。
【0018】
ループ型ヒートパイプ10は、例えば、複数の金属層を積層した構造とすることができる。金属層は、例えば、熱伝導性に優れた銅層であって、固相接合等により互いに直接接合されている。金属層の各々の厚さは、例えば、50μm〜200μm程度とすることができる。なお、金属層は、銅層に限定されず、ステンレス層やアルミニウム層、マグネシウム合金層等から形成してもよい。又、金属層の積層数は特に限定されない。なお、積層した金属層のうちの一部の金属層について、他の金属層と異なる材料が用いられてもよい。
【0019】
このループ型ヒートパイプ10は、図1に示す2点鎖線にて示す位置にて、折り曲げられる。この折り曲げ位置は、本実施形態のループ型ヒートパイプ10において、液管14と蒸気管12との途中にそれぞれ設定されている。
【0020】
図1に示すように、蒸気管12には、折り曲げ位置に、薄肉部22が形成されている。
図2(a)及び図3は、ループ型ヒートパイプ10の液管14の断面図である。図2(a)は、図1の2−2線断面図、図3は、図1の3−3線断面図である。
【0021】
図2(a)及び図3に示すように、蒸気管12は、例えば、最外金属層41、中間金属層42〜45、最外金属層46が順次積層された構造とすることができる。なお、最外金属層と中間金属層とを区別する必要がない場合には、両者の総称として単に金属層と称する場合がある。なお、図2(a)及び図3では、各金属層41〜46を判り易くするため、実線にて区別するとともに、異なるハッチングを付している。例えば金属層41〜46を拡散接合により一体化した場合、各金属層41〜46の界面は消失していることがあり、境界は明確ではないことがある。
【0022】
最外金属層41,46は、蒸気管12を構成する金属層の積層構造の両外側(上下方向両外側)に位置し、中間金属層42〜45は、最外金属層41と最外金属層46とに挟まれている。つまり、蒸気管12を含むループ型ヒートパイプ10は、一対の最外金属層41,46と、一対の最外金属層41,46の間に積層された中間金属層42〜45から構成される。最外金属層41は、孔や溝が形成されていないべた状とされている。中間金属層42〜45は、蒸気管12の管壁12aを形成する壁部42a,43a,44a,45aを有している。
【0023】
図2(a)及び図2(b)に示すように、最外金属層46には、薄肉部22が形成されている。薄肉部22は、蒸気管12の内部の面、つまり最外金属層46の上面から窪む凹部23により形成されている。本実施形態において、図2(a)に示すように、凹部23は、中間金属層42〜45の壁部42a〜45aより内側に形成されている。従って、薄肉部22は、平面視(図2(a)において上下方向から視ること)において、中間金属層42〜45の壁部42a〜45aと重ならないように形成されている。図2(b)において、破線より外側(図2(b)において左右方向の外側)に、図2(a)に示す壁部42a〜45aが配置される。従って、凹部23は、図2(a)に示す中間金属層42〜45の壁部42a〜45aよりも内側にのみ形成されている。
【0024】
また、図3において、薄肉部22(凹部23)は、図1に示す蒸気Cvが流れる方向(図3において左右方向)に沿って所定の範囲L1となるように形成されている。そして、蒸気Cvが流れる方向において、薄肉部22(凹部23)の中央に、上述の折り曲げ位置BPが設定される。薄肉部22(凹部23)が形成される範囲L1は、例えば、このループ型ヒートパイプ10に対する折り曲げ加工において折り曲げられる範囲(折り曲げ位置におけるループ型ヒートパイプ10の半径)に応じて設定される。例えば、折り曲げ部において、内側の半径を2.5mmとすることができる。そして、薄肉部22(凹部23)が形成される範囲L1は、例えば5〜10mmとすることができる。
【0025】
図1に示すように、液管14には、多孔質体25が設けられている。多孔質体25は、液管14に沿って蒸発器11の近傍まで延びている。
図4は、図1の4−4線断面図である。図4に示すように、例えば、液管14の多孔質体25は、6層の金属層41〜46のうち、最上層の金属層41と最下層の金属層46を除く4層の金属層42〜45により形成される。なお、図4において、多孔質体25を形成する金属層42〜45の部分には、梨地のハッチングを付している。なお、図4では、図2(a)及び図3と同様に、各金属層41〜46を実線にて区別するように示している。上述のように、例えば、各金属層41〜46を拡散接合により一体化した場合、各金属層41〜46の界面は消失しており、境界は明確ではない。
【0026】
中間金属層42〜45の壁部42b〜45bは、液管14の管壁14aを構成する。また、中間金属層42〜45は、壁部42b,43b,44b,45bの内側に配置される多孔質部42c,43c,44c,45cを有している。積層された多孔質部42c,43c,44c,45cには、複数の貫通孔42X,43X,44X,45Xが形成されている。複数の貫通孔42X〜45Xは、例えば円形状に形成されている。そして、各貫通孔42X〜45Xは、上下方向に接する金属層42〜45の貫通孔42X〜45Xと一部が重なるように形成されている。複数の貫通孔42X〜45Xは、それらの間に作動流体Cが流れる微細な流路24bを形成する。この流路24bにより、毛細管力が生じ作動流体Cが液管14内を流れ易くなる。
【0027】
図1に示すように、蒸発器11には、多孔質体26が設けられている。この多孔質体26の構成は、例えば、液管14の多孔質体25と同様とすることができる。
次に、本実施形態のループ型ヒートパイプ10の製造方法について説明する。
【0028】
図5(a),図5(b),図5(c)は、ループ型ヒートパイプ10に使用する金属層の平面図である。図5(a)は、ループ型ヒートパイプ10の最上層に用いる金属層、つまり図2(a),図3図4に示す最外金属層41に使用する金属層91の平面図である。図5(b)は、最上層と最下層とを除く金属層、つまり図2(a),図3図4に示す中間金属層42〜45に使用する金属層92の平面図である。図5(c)は、ループ型ヒートパイプ10の最下層に用いる金属層、つまり図2(a),図3図4に示す最外金属層46に使用する金属層93の平面図である。
【0029】
図5(a)〜図5(c)に示す金属層91〜93は、例えば厚さが100μmの銅層を、例えばウエットエッチングにより所定の形状にパターニングすることで作成される。
図5(b)に示す金属層92には、蒸発器11、凝縮器13、蒸気管12、液管14の流路21に対応する開口部92Xが形成される。また、液管14に対応する部分の金属層92の多孔質部92a,92bには、上述の多孔質体25,26を構成する貫通孔42X,43X,44X,45X(図4参照)が設けられる。図5(c)に示す金属層93には、蒸気管12に対応する部分の金属層93に薄肉部22(凹部23)が形成される。薄肉部22(凹部23)は、例えば金属層93をウエットエッチングして形成することができる。
【0030】
次いで、図5(a)に示す金属層91を最上層に配置し、図5(b)に示す金属層92を配置し、図5(c)に示す金属層93を最下層に配置する。そして、金属層91,92,93を所定温度(例えば、約900℃)に加熱しながら積層した金属層91(41),92(42〜45),93(46)をプレスすることにより、拡散接合にて金属層91(41),92(42〜45),93(46)を接合する。
【0031】
次に、接合した金属層41〜46からなるループ型ヒートパイプ10を折り曲げ加工する。
図6(b)に示すように、蒸気管12において、薄肉部22(凹部23)が形成された金属層46を外側とするように、図1に示す折り曲げ位置BPにてループ型ヒートパイプ10を折り曲げる。このとき、液管14及び蒸気管12は、折り曲げ位置BPにてそれぞれの折り曲げ線が一致するように折り曲げられる。この折り曲げ加工により、外側の金属層46が折り曲げの際の引っ張り応力によって蒸気管12の内側に撓み、蒸気管12の流路12b(流路21)が狭くなる。なお、液管14も折り曲げ加工によって蒸気管12と同様に折り曲げられる。しかし、図4に示すように、液管14は内部に多孔質体25を有しており、この多孔質体25が支柱の役割を果たし液管14が潰れにくくなるため、折り曲げの影響を受け難い。
【0032】
また、蒸気管12に対して薄肉部22(凹部23)を部分的に形成したことで、薄肉部22以外の部分の最外金属層46の厚さを保つことができるため、内圧をかける際に、薄肉部22以外の最外金属層46での変形を抑制できる。そして、最外金属層46における凹部23は、中間金属層42〜45の壁部42a〜45aより内側のみに形成されているため、蒸気管12の内部を流れる作動流体Cの気密性が保たれ、液漏れが発生することはない。
【0033】
次に、図1に示す注入部15から圧縮空気を注入し、ループ型ヒートパイプ10の内部に内圧を加える。内圧としては、例えば0.7〜1MPaとすることができ、本実施形態では例えば1MPaである。図6(a)に示すように、ループ型ヒートパイプ10の内部に加わる内圧により、薄肉部22が蒸気管12の外側に膨らむ。この薄肉部22の膨らみにより、蒸気管12の流路21が確保できるため、蒸気Cvが流れ易くなる。
【0034】
例えば、折り曲げ加工において、内圧を加えながら加工を行う場合、より大きな内圧を加える必要がある。これに対し、本実施形態のループ型ヒートパイプ10では、薄肉部22(凹部23)を形成することにより、低い内圧にて薄肉部22を膨らませて流路21を確保できる。
【0035】
その後、図示しない真空ポンプを用いてループ型ヒートパイプ10の内部から排気し、図示しない注入口から作動流体C(例えば水)を液管14に注入し、注入口を封止する。
[本実施形態に係るループ型ヒートパイプの実装構造]
次に、本実施形態に係るループ型ヒートパイプの実装構造について、図1図7を用いて説明する。
【0036】
図7に示すように、本実施形態のループ型ヒートパイプ10は、例えば電子機器100に用いられる。先ず、電子機器100について説明する。
電子機器100は、筐体101と、筐体101に収容された配線基板110とを有している。配線基板110は、図示しない支持部により、筐体101の内面101aから離間した位置に配設されている。配線基板110の上面には、発熱部品111が実装されている。発熱部品111は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の半導体装置、等である。
【0037】
ループ型ヒートパイプ10は、上述した折り曲げ加工により、L字状に形成されている。蒸発器11は、発熱部品111の上に配置され、発熱部品111を冷却する。ループ型ヒートパイプ10の凝縮器13は、筐体101の側板102に沿って配設され、接続部材120により側板102の内面に固定される。接続部材120として、例えばヒートシンクを用いることができる。これにより、熱を筐体101の外部へと効率よく放熱できる。なお、凝縮器13と接続部材120との間と、接続部材120と筐体101の側板102との間の少なくとも一方に熱伝導部材(TIM)を介在させてもよく、凝縮器13から筐体101への熱伝導をスムーズにできる。
【0038】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)ループ型ヒートパイプ10は、蒸発器11と、蒸気管12と、凝縮器13と、液管14と、注入部15とを有している。蒸気管12には、折り曲げ位置に、薄肉部22が形成されている。蒸気管12において、薄肉部22(凹部23)が形成された金属層46を外側とするように、折り曲げ位置BPにてループ型ヒートパイプ10を折り曲げる。注入部15から圧縮空気を注入し、ループ型ヒートパイプ10の内部に内圧を加える。ループ型ヒートパイプ10の内部に加わる内圧により、薄肉部22が蒸気管12の外側に膨らむ。このように、ループ型ヒートパイプ10では、薄肉部22(凹部23)を形成することにより、折り曲げた後に内圧を加えることで、薄肉部22を膨らませて流路21を確保できる。
【0039】
(2)液管14も折り曲げ加工によって蒸気管12と同様に折り曲げられる。しかし、図4に示すように、液管14は内部に多孔質体25を有しており、この多孔質体25が支柱の役割を果たし液管14が潰れにくくなるため、折り曲げの影響を受け難い。このため、蒸気管12に対して凹部23を形成すればよく、加工を容易にできる。
【0040】
(3)蒸気管12に対して薄肉部22(凹部23)を部分的に形成したことで、薄肉部22以外の部分の最外金属層46の厚さを保つことができるため、内圧をかける際に、薄肉部22以外の最外金属層46での変形を抑制できる。
【0041】
(4)凹部23を最外金属層46の内側となる部分に形成するとともに、中間金属層42〜45の壁部42a〜45aより内側のみに形成されているため、蒸気管12の内部を流れる作動流体Cの気密性が保たれ、液漏れの発生を防止できる。
【0042】
(変形例)
尚、上記各実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施形態では、1つの折り曲げ位置を設定したが、複数の折り曲げ位置を設定してもよい。
【0043】
図8(a)に示すループ型ヒートパイプ10aは、蒸気管12に2つの薄肉部22a,22b(凹部23a,23b)を有している。図8(b)に示すように、薄肉部22a,22b(凹部23a,23b)は、最外金属層46に形成されている。図8(c)に示すように、この薄肉部22a,22bが形成された最外金属層46を外側として、折り曲げられる。折り曲げ加工の後、上述した実施形態と同様に、注入部15から圧縮空気を注入し、ループ型ヒートパイプ10aに内圧を加えることにより、図8(b)に示す薄肉部22a,22bを外側に膨らませることで、流路21を確保できる。
【0044】
図9(a)に示すループ型ヒートパイプ10bは、蒸気管12に2つの薄肉部22a,22b(凹部23a,23b)を有している。図9(b)に示すように、薄肉部22a,(凹部23a)は、最外金属層41に形成され、薄肉部22b(凹部23b)は、最外金属層46に形成されている。図9(c)に示すように、この薄肉部22a,22bが形成された部分を外側として、折り曲げられる。折り曲げ加工の後、上述した実施形態と同様に、注入部15から圧縮空気を注入し、ループ型ヒートパイプ10bに内圧を加えることにより、図9(b)に示す薄肉部22a,22bを外側に膨らませることで、流路21を確保できる。
【0045】
なお、3つ以上の折り曲げ位置を設定し、3回以上の折り曲げを行うようにしてもよい。
・上記実施形態では、蒸気管12及び液管14にて折り曲げを行うようにしたが、薄肉部(凹部)を凝縮器13に設け、その薄肉部(凹部)を設けた位置にて凝縮器13を折り曲げするようにしてもよい。
【0046】
・上記実施形態に対し、薄肉部22(凹部23)の形状を適宜変更してもよい。
図10(a)及び図10(b)に示すように、ストライプ状の複数の凹部51により薄肉部52を形成してもよい。複数の凹部51は、蒸気Cvの流れる方向(図10(a)において上下方向)に沿って延びるように形成される。このように、折り曲げる部分において部分的に厚みが残るように薄肉部52を形成することで、薄肉部52の強度を保つことができる。また、作動流体Cの流れ方向に沿って凹部51をストライプ状に形成することで、作動流体Cの圧力損失を抑制できる。また、凹部51を液管の内側となる部分に形成する場合、最外金属層46における凹部51は、破線より内側、つまり図2(a)に示す中間金属層42〜45の壁部42a〜45aより内側のみに形成されているため、蒸気管の内部を流れる作動流体Cの気密性が保たれ、液漏れの発生を防止できる。
【0047】
図11(a)及び図11(b)に示すように、格子状の凹部61により薄肉部62を形成してもよい。格子状の凹部61は、蒸気Cvの流れる方向(図10(a)において上下方向)に沿って延びる溝部61aと、その溝部61aと直交する方向に延びる溝部61bとから構成される。このように、折り曲げる部分において部分的に厚みが残るように薄肉部62を形成することで、薄肉部62の強度を保つことができる。また、凹部61を液管の内側となる部分に形成する場合、最外金属層46における凹部61は、破線より内側、つまり図2(a)に示す中間金属層42〜45の壁部42a〜45aより内側のみに形成されているため、蒸気管の内部を流れる作動流体Cの気密性が保たれ、液漏れの発生を防止できる。
【0048】
図12(a)及び図12(b)に示すように、複数の凹部71により薄肉部72を形成してもよい。複数の凹部71は、例えば円形状に形成され、行列状に配列されている。なお、凹部71の形状は、例えば三角形や四角形等の多角形としてもよい。また、複数の凹部71の配列は、行列状に限定されない。このように、折り曲げる部分において部分的に厚みが残るように薄肉部72を形成することで、薄肉部72の強度を保つことができる。また、凹部71を液管の内側となる部分に形成する場合、最外金属層46における凹部71は、破線より内側、つまり図2(a)に示す中間金属層42〜45の壁部42a〜45aより内側のみに形成されているため、蒸気管の内部を流れる作動流体Cの気密性が保たれ、液漏れの発生を防止できる。
【0049】
図13(a)及び図13(b)に示すように、ストライプ状の凹部51と凹部71とを組み合わせて薄肉部82を形成してもよい。このように、折り曲げる部分において部分的に厚みが残るように薄肉部82を形成することで、薄肉部82の強度を保つことができる。また、凹部51,71を液管の内側となる部分に形成して最外金属層46に薄肉部82を形成する場合、最外金属層46における凹部51,71は、破線より内側、つまり図2(a)に示す中間金属層42〜45の壁部42a〜45aより内側のみに形成されているため、蒸気管の内部を流れる作動流体Cの気密性が保たれ、液漏れの発生を防止できる。
【0050】
・上記実施形態及び各変形例では、ループ型ヒートパイプ10の内側、即ち図2(a)及び図2(b)に示す金属層46の上面の凹部23により薄肉部22を形成したが、凹部23を金属層46の外側(例えば、図2(a)では下面側)に形成して金属層46に対して部分的に薄肉部22を形成してもよい。
【0051】
・上記実施形態及び上記変形例の一部を適宜公知の構成で置き換えても良い。また、上記実施形態及び上記変形例は、適宜その一部又は全部を他の形態、変形例と組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0052】
11 蒸発器
12 蒸気管
13 凝縮器
14 液管
15 注入部
21 流路
22 薄肉部
23 凹部
24 多孔質体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13