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特開2019-133371形状最適化結果表示方法及びその装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-133371(P2019-133371A)
(43)【公開日】2019年8月8日
(54)【発明の名称】形状最適化結果表示方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20190712BHJP
【FI】
   G06F17/50 610A
   G06F17/50 612C
   G06F17/50 604A
   G06F17/50 602A
   G06F17/50 612G
   G06F17/50 620Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-14417(P2018-14417)
(22)【出願日】2018年1月31日
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 秀徳
(72)【発明者】
【氏名】阿部 崇志
(72)【発明者】
【氏名】小倉 和也
(72)【発明者】
【氏名】坂本 宏紀
【テーマコード(参考)】
5B046
【Fターム(参考)】
5B046AA07
5B046JA08
(57)【要約】
【課題】最適化解析の目的とした特性に与える影響を視覚的に把握可能に表示する形状最適化結果表示方法及びその装置を提供する。
【解決手段】構造最適化装置10により、構造物の最適化解析を行い、構造最適化装置10による最適化解析により得られた最適化形状の目的関数に関する感度解析を感度解析装置20により行い、感度解析装置20により感度解析した感度である、形状変更すると最適化解析の目的とした特性に影響を与える部分度合いに応じ、前記特性を任意の量変化した後の最適化形状を特性変化後形状演算装置30により演算し、特性変化前後の最適化形状を表示器40により異なる外形線の線種によって表示することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の最適化解析を行う構造最適化装置と、
前記構造最適化装置による最適化解析により得られた最適化形状の目的関数に関する感度解析を行う感度解析装置と、
前記感度解析装置により感度解析した感度である、形状変更すると最適化解析の目的とした特性に影響を与える部分度合いに応じ、前記特性を任意の量変化した後の最適化形状を演算する特性変化後形状演算装置と、
前記構造最適化装置により得られた特性変化前の前記最適化形状と共に前記特性変化後形状演算装置により演算された特性変化後の前記最適化形状とを異なる外形線の線種によって表示する表示器とを備えることを特徴とする形状最適化結果表示装置。
【請求項2】
前記任意の量の変化は、任意の量の増加、任意の量の減少、又は任意の量の増加及び減少であることを特徴とする
請求項1記載の形状最適化結果表示装置。
【請求項3】
前記任意の変化を入力するための入力装置を備えることを特徴とする
請求項1記載の形状最適化結果表示装置。
【請求項4】
構造最適化装置により、構造物の最適化解析を行い、
前記構造最適化装置による最適化解析により得られた最適化形状の目的関数に関する感度解析を感度解析装置により行い、
前記感度解析装置により感度解析した感度である、形状変更すると最適化解析の目的とした特性に影響を与える部分度合いに応じ、前記特性を任意の量変化した後の最適化形状を特性変化後形状演算装置により演算し、
前記構造最適化装置により得られた特性変化前の前記最適化形状を表示器により表示する際に、前記特性変化後形状演算装置により演算された特性変化後の前記最適化形状を異なる外形線の線種によって表示することを特徴とする形状最適化結果表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状最適化結果表示方法及びその装置に関する。詳しくは、最適化解析を行った結果を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の様々な性能(特性とも言う。以下では特性という。)を向上させるために、コンピュータ支援設計と呼ばれるCAE(Computer Aided Engineering)解析を利用して、構造物の最適化解析(構造最適化解析)が行われている。
例えば、特許文献1には、CAEにおける構造最適化方法および構造最適化装置が開示されている。
特許文献2には、トポロジー最適化は又は領域形状最適化と有限要素法を組み合わせたオートテンショナのブラケット形状設計方法が開示されている。
特許文献3には、トポロジー最適化は又は領域形状最適化と有限要素法を組み合わせた転動体を有する機械構造物の形状設計方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−297118号公報
【特許文献2】特開2006−350720号公報
【特許文献3】特開2006−330917号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「正規化ガウス関数ネットワークを用いたトポロジー最適化による埋込磁石同期モータの回転子形状最適化」電気学会論文誌D(産業応用部門誌) Vol.135(2015) No.3 P291-298
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のパラメータ最適化や構造最適化・トポロジー最適化等の構造最適化解析を行った結果では、パラメータ最適化を除きものづくり技術の都合上製造できない形状(ガタガタである、細かすぎる等)が生じてしまう場合がほとんどであった。
それを回避するための方法も研究されているが、まだ完成されていない。
現状では最適化解析を行った結果を元に、開発・設計者が手動で製造可能な形状に変更をかけているが、形状を変更すると最適化解析の目的としていた特性に予期せぬ影響を与えてしまい、最適化解析の効果が損なわれる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の請求項1に係る形状最適化結果表示装置は、構造物の最適化解析を行う構造最適化装置と、前記構造最適化装置による最適化解析により得られた最適化形状の目的関数に関する感度解析を行う感度解析装置と、前記感度解析装置により感度解析した感度である、形状変更すると最適化解析の目的とした特性に影響を与える部分度合いに応じ、前記特性を任意の量変化した後の最適化形状を演算する特性変化後形状演算装置と、前記構造最適化装置により得られた特性変化前の前記最適化形状と共に前記特性変化後形状演算装置により演算された特性変化後の前記最適化形状とを異なる外形線の線種によって表示する表示器とを備えることを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決する本発明の請求項2に係る形状最適化結果表示装置は、前記任意の量の変化は、任意の量の増加、任意の量の減少、又は任意の量の増加及び減少であることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する本発明の請求項3に係る形状最適化結果表示装置は、前記任意の変化を入力するための入力装置を備えることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する本発明の請求項4に係る形状最適化結果表示方法は、構造最適化装置により、構造物の最適化解析を行い、前記構造最適化装置による最適化解析により得られた最適化形状の目的関数に関する感度解析を感度解析装置により行い、前記感度解析装置により感度解析した感度である、形状変更すると最適化解析の目的とした特性に影響を与える部分度合いに応じ、前記特性を任意の量変化した後の最適化形状を特性変化後形状演算装置により演算し、前記構造最適化装置により得られた特性変化前の前記最適化形状を表示器により表示する際に、前記特性変化後形状演算装置により演算された特性変化後の前記最適化形状を異なる外形線の線種によって表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、最適化解析を行った結果を表示する際に、形状の最適化解析の目的とした特性に影響を与える部分度合いである感度(寄与度とも言う)に応じ、特性を任意の量変化させた後の最適化形状を異なる外形線の線種によって表示する。このため、特性向上のために形状を修正する事や、影響を最小限にとどめる様に形状を修正する事、製造可能な形状とするために目的とした特性を諦める等の取捨選択が可能となる。更に、増やせる領域が1方向でない場合、例えば、板の厚みを増やす場合に、表面側を増やすのか、裏面側を増やすのか等どの方向に増やしたら良いのかを異なる外形線の線種によって表示することが可能となる。従って、外形線の線種によって、特性変化前後で最適化形状の程度が大きくなる傾向にあることを直感的に理解することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例に係る形状最適化結果表示装置のブロック図である。
図2】本発明の一実施例に係る形状最適化結果表示方法のフローチャートである。
図3】本発明の一実施例に係る表示形態を示す説明図である。
図4】ある領域においてある関数を、関数値を用いて色の濃淡及び等高線を用いて描き、その領域を格子状に分割しその関数を表現すると飛び飛びなマス形状(ガタガタな形状)で表される事を表した説明図である。
図5】ある領域においてある関数を、関数値を用いて色の濃淡及び等高線を用いて描き、その領域を格子状に分割しその関数を立体的に表した説明図である。
図6】正規化ガウス関数の説明図である。
図7】コントロールされる領域の説明図である。
図8】物性と空気の判断に使う変数φの説明図である。
図9】ガウスの基底を設計領域内に密に配置した説明図である。
図10】∇wT の方向に変化したときのφの変化dφを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、入力に対して、最適化する目的の特性にどのくらい敏感な応答があるかを調べる感度解析を行い、最適化解析を行った結果を表示する際、感度(形状変更すると最適化解析の目的とした特性に影響を与える部分度合い)に応じ、特性を任意の量変化させた後の最適化形状を異なる外形線の線種によって表示することを特徴とする。
【0013】
ここで、本発明の前提となる構造最適化についてトポロジー最適化の一例であるon/off法について、非特許文献1を参照して説明する。
先ず、on/off法の欠点である飛び飛びなマス形状(ガタガタな形状)を防ぐ方法について考える。
要素のon/off状態を設計領域内で滑らかに値が変化する関数の値に応じてon/off状態を与える。
例えば、図4及び図5に示すように、上記の様な形状の関数と設計領域の交わる部分の形状は図中左側部分の様になる。図4において、同心円の中心部は関数値が0を越える領域であり、同心円の周辺部は関数値が0を下回る領域である。図5は、図4を立体的に示したものである。
【0014】
空間的に滑らかに値が変化する関数として、正規化ガウス関数ネットワーク(Normalized Gaussian Network:以下、NGnetと言う)を用いる。
NGnetとは、図6に示すように、空間的に滑らかに変化する正規化ガウス関数の重ね合わせにより出力を与える関数近似器の一種である。出力が空間的に滑らかであるため、それによって定まる形状も同様に空間高周波成分が少なくなる。
また、NGnetの出力はガウス関数の結合重みを変えることで容易に変化させることができ、GAなどの進化計算手法とも整合性が良い。入力xに対するNGnetの出力Y(x)は以下の数1により求められる。
【0015】
【数1】
【0016】
各セルのon/off状態はNGnetの出力により、以下の様に定める。即ち、NGnetの出力Y(x)を用いてセル(要素)eのon/off状態を以下の数2、数3の様に与える。
【0017】
【数2】
【0018】
【数3】
【0019】
数2から明らかなように、NGnetにより様々な材料分布を表現することができる。
NGnetの出力を定めるパラメータの1つである結合重みwiを変化させて、図7に示すように、領域のサイズをコントロールする。
NGnetを用いて形状を表現したモデルに適用可能な感度分布の作成方法(以下、設計ガイド法)について説明する。
ここで、図8に示すように、物性と空気の判断に使う変数をφと置く。
すると、要素の重心xにおけるNGnetの出力φ(x)は以下の数4のように定義できる。
【0020】
【数4】
【0021】
x : 要素の重心座標,n : ガウス基底の数,φ : NGnetの出力,
i : 結合重み,Gi: ガウス基底
このガウスの基底を設計領域内に密に配置し、各NGnetを変化させることで全体の形状を変化させる(図9参照)。
このように結合重みwを変化させることで形状をコントロールし、結合重みwの値を最適化することでトポロジー最適化を行う。
次に、感度に応じて、特性変化後の形状を可視化する方法について説明する。
設計ガイド法について、特性T(w)を増加、または減少させた場合の形状の変化方向を求めることを考える。
w空間におけるwの変化によるTの変化dTは以下の数5のように定義できる。
【0022】
【数5】
【0023】
wφ は以下の数6のように書ける。
【0024】
【数6】
【0025】
次に∇wT の方向に変化したときのφの変化を考える。
wT の方向に変化したときのφの変化dφは以下の数7の様に書ける(図10参照)。
【0026】
【数7】
【0027】
wT の方向に変化したときのw空間内での特性の変化方向における特性の変化δTは以下の数8のように書ける。
【0028】
【数8】
【0029】
例えば、特性の5%を許容した感度方向への変化を考える場合、以下の数9のようになるようなεを決定すれば良い。
【0030】
【数9】
【0031】
すると、以下の数10に示す出力関数を用いて形状の描画をすることで、特性変化後の形状を可視化できる。トルクの増加方向に変化させた結果の一例を図3に示す。
【0032】
【数10】
【実施例1】
【0033】
本発明の一実施例に係る形状最適化結果表示装置を図1に示す。
本実施例に係る形状最適化結果表示装置は、図1に示すように、構造最適化装置10、感度解析装置20、特性変化後形状演算装置30及び表示器40とからなる。
【0034】
構造最適化装置10、感度解析装置20及び特性変化後形状演算装置30は、コンピュータ60にインストールされたソフトウェアにより実現されるものであり、コンピュータ60には入力装置50が付属している。
構造最適化装置10は、構造最適化解析を行う装置であり、背景技術の欄に記載した様々な従来技術が適用可能である。
【0035】
具体的には、設計者が与えた設計変数に基づいて形状を定義し、その設計変数値(パラメータ)を変化させて最適形状を探索するパラメータ最適化、設計変数を与えずに、形状を表現して最適化を行うトポロジー最適化である。トポロジー最適化としては、例えば、on/off等の手法がある。
ここでは、構造最適化解析の一例として、有限要素法(Finite Element Method:FEM)を用いた場合について説明する。有限要素法は、構造物を複数の有限の要素にメッシュ状(格子状)に分割して数値解析を行う方法である。構造物として、例えば、埋め込み磁石(Interior Permanent Magnet:IPM)モータを考える。
【0036】
IPMモータは、永久磁石を回転子(ロータ)内に埋め込んだモータであり、マグネットトルクとリラクタンストルクを活用できる。IPMモータは、回転子の磁性コア内に設ける非磁性層(空隙)を適切に設計することにより、トルク特性を改善することができる。
有限要素法により、IPMモータの回転子を格子状に分割して、各要素に計算式を立てて、トルク特性(マグネットトルク+リラクタンストルク)が改善するようにする、つまり、トルク特性向上を目的とした構造最適化を行う。構造最適化により得られた最適化形状Aは、感度解析装置20に送られる。
【0037】
図3は、IPMモータの回転子(ロータ)1及び固定子(ステータ)2を示す部分断面図である。図3に示す通り、回転子1の外周部分には、永久磁石(図示略)を埋め込むための長方形状スリット1aが配置され、その外周面には、非磁性層となる複数の空隙1b,1cが配置されている。また、固定子2にも、非磁性層となる複数の空隙2a,2bが配置されている。図3は、トルク特性向上を目的とした構造最適化により得られた最適化形状として、複数の空隙1b,1c,2a,2bが配置されている。
【0038】
ここで、構造最適化解析の際に、有限要素法の各要素に立てられる計算式は、最適化する目的毎に異なり、目的関数と呼ばれる。ここでは、目的関数は、トルク特性を示す計算式(方程式)である。
目的関数としては、IPMモータの回転子の場合には、トルクリプルを示す計算式、ロータの電気的損失を示す計算式が使用できる。これらの特性を総合的に示す目的関数を使用することも可能である。
【0039】
感度解析装置20は、入力に対して、最適化する目的の特性にどのくらい敏感な応答があるかを調べる感度解析を行う装置である。即ち、外形線の形状を変更すると最適化解析の目的とした特性に影響を与える部分度合いである感度を調べる装置である。
例えば、構造最適化装置10で用いた有限要素法の各要素の計算式を微分して傾きを求め、この傾きが大きいほど感度が高いものとする。具体的な数式等については、[発明を実施するための形態]の欄を参照されたい。
【0040】
感度解析装置20で得られた感度Bは、構造最適化により得られた最適化形状Aと共に特性変化後形状演算装置30に送られる。
【0041】
ここで、感度の高い部分の形状を変更すると最適化解析の目的としていた特性に予期せぬ影響を与えてしまい、最適化解析の効果が損なわれる場合がある。
しかし、従来では、構造最適化により得られた最適化形状は、最適化解析の目的とした特性に与える影響を視覚的に把握できなかったため、開発・設計者が誤って感度の高い部分を手動で変更し、最適化解析の効果が損なわれる場合があった。
これに対し、本発明では、特性変化後形状演算装置30を使用することにより対処した。
【0042】
特性変化後形状演算装置30は、感度解析装置20で解析された感度Bに応じ、特性を任意の量増加した後の最適化形状Cを演算する装置である。任意の量は、入力装置50から入力する。特性変化後形状演算装置30により作成された特性を任意の量増加した後の最適化形状Cは、構造最適化装置10により作成された特性変化前の最適化形状Aと共に表示器40に送られる。
表示器40は、構造最適化装置10により作成された特性変化前の最適化形状Aに重ね合わせて、特性変化後形状演算装置30により作成された特性を任意の量増加した後の最適化形状Cを異なる外形線の線種(色、太さ、破線等)によって表示する機器である。
【0043】
ここで、[発明を実施するための形態]の欄に記載する通り、物性(磁性体領域)を増やすと、つまり、最適形状の外形線が形成している領域を増やすと、最適化解析の目的とした特性Tが増える方向に変化する所がある一方、逆に、物性を減らす、つまり、最適形状の外形線が形成している領域を減らすと、最適化解析の目的とした特性Tが増える方向に変化する所がある。特性Tがどの程度増えるか、減るかについては、感度Bに応じて変化する。即ち、感度Bが高いほど、特性Tが増減する傾向が高い。
例えば、任意の量として、特性Tを5%増加する場合を考える。図3において、特性Tを5%増加する前の最適化形状Aを実線で描き、特性Tを5%増加した後の最適化形状Cを破線で描いた。図3に示すように、空隙1cの周辺の磁性体領域においては、実線で描かれる変化前の最適化形状Aに比較して、破線で描かれる変化後の最適化形状Cは磁性体領域を増やしている。その程度は、感度Bに応じて変化する。
同様に、空隙1bの周辺の磁性体領域においては、おおよそ、実線で描かれる変化前の最適化形状Aに比較して、破線で描かれる変化後の最適化形状は磁性体領域Cを増やしている。その程度は、感度Bに応じて変化する。
このように、最適化解析の目的とした特性Tを任意の量として、例えば、5%増加する場合において、図3において、空隙1b,1cに異なる外形線の線種によって示すので、特性変化前後で最適化形状がどの程度変化するかを直感的に理解することが可能である。
【0044】
要するに、外形線の線種によって、特性変化前後で最適化形状の程度が大きくなる傾向にあることを直感的に理解することができる。
なお、図3は、トルク5%増加の場合として、数8の理論解:4.91%増、ε=1.9×10-2、有限要素解析:4.85%である。
【0045】
本発明の一実施例に係る形状最適化結果表示方法について、図2に示すフローチャートを参照して説明する。図2のフローチャートは、図1に示す形状最適化結果表示装置により実現可能なものである。
先ず、図2に示すように、構造最適化装置10により、構造最適化解析を行う(ステップS1)。図3は、有限要素法を用い、IPMモータの回転子につき構造最適化解析を行った結果である。
【0046】
次に、感度解析装置20により、最適化解析の目的とした特性に影響を与える部分度合いである感度を調べる(ステップS2)。例えば、構造最適化装置10で用いた有限要素法の各要素の計算式を微分して傾きを求め、この傾きが大きいほど感度が高いものとする。
引き続き、特性変化後形状演算装置30により、感度解析装置20で解析された感度Bに応じ、特性を任意の量増加した後の最適化形状Cを演算する(ステップS3)。例えば、トルクが5%低下した(上昇した)形状を考えたときに、数9が0.05となるようなεを計算し、それを元に、数10を用いて、特性変化後の最適化形状Cを計算する。
その後、表示器40により、構造最適化装置10により得られた変化前の最適化形状Aを表示するに際して、特性変化後形状演算装置30により得られた変化後の最適化形状Cを異なる外形線の線種によって同時に表示する(ステップS4)。一例としては、図3のように、変化前を実線とし、変化後を破線とした。
【実施例2】
【0047】
実施例1は、任意の量の変化として、任意の量の増加をする場合の最適化形状を求めたが、本実施例は、任意の量の減少する場合の最適化形状を求めるものであり、異なる外形線の線種によって表示する等その他の事項は同様である。
【実施例3】
【0048】
実施例1は、任意の量の変化として、任意の量の増加をする場合の最適化形状を求めたが、本実施例は、任意の量の増加及び減少する場合の両方の最適化形状を求めるものであり、異なる外形線の線種によって表示する等その他の事項は同様である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、形状最適化結果表示方法及びその装置として、産業上広く利用可能なものである。
【符号の説明】
【0050】
1 回転子(ロータ)
1a 長方形状スリット
1b,1c 空隙
2 固定子(ステータ)
2a,2b 空隙
10 構造最適化装置
20 感度解析装置
30 特性変化後形状演算装置
40 表示器
50 入力装置
60 コンピュータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10