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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-137600(P2019-137600A)
(43)【公開日】2019年8月22日
(54)【発明の名称】多孔性複合酸化物
(51)【国際特許分類】
   C01G 41/00 20060101AFI20190726BHJP
   B01J 23/30 20060101ALI20190726BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20190726BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20190726BHJP
   B01J 20/06 20060101ALI20190726BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20190726BHJP
   B01J 39/10 20060101ALI20190726BHJP
   B01J 39/02 20060101ALI20190726BHJP
【FI】
   C01G41/00 A
   B01J23/30 A
   B01J35/10 301F
   B01J35/02 Z
   B01J20/06 A
   B01J20/06 B
   B01J20/28 Z
   B01J39/10
   B01J39/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-140601(P2018-140601)
(22)【出願日】2018年7月26日
(31)【優先権主張番号】特願2017-159740(P2017-159740)
(32)【優先日】2017年8月22日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-23912(P2018-23912)
(32)【優先日】2018年2月14日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【弁理士】
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】上田 渉
(72)【発明者】
【氏名】張 禎シン
(72)【発明者】
【氏名】高光 泰之
【テーマコード(参考)】
4G048
4G066
4G169
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB02
4G048AC08
4G048AD03
4G048AD06
4G048AE05
4G066AA18B
4G066AA23B
4G066AA24B
4G066AA25B
4G066BA23
4G066BA25
4G066BA26
4G066BA31
4G066BA36
4G066CA45
4G066CA46
4G066DA07
4G169AA02
4G169AA08
4G169AA09
4G169AA11
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC35A
4G169BC50A
4G169BC54A
4G169BC54B
4G169BC55A
4G169BC59A
4G169BC60A
4G169BC60B
4G169CA02
4G169CA03
4G169CA08
4G169CA13
4G169DA05
4G169EC02X
4G169EC03X
4G169EC03Y
4G169EC04X
4G169EC05X
4G169EC06X
4G169EC06Y
4G169EC07X
4G169EC08X
4G169EC11X
4G169EC12X
4G169EC12Y
4G169EC13X
4G169EC14X
4G169EC15X
4G169EC16X
4G169EC17X
4G169EC22X
4G169EC22Y
4G169FA01
4G169FB09
4G169FB10
4G169FB27
4G169FB77
(57)【要約】
【課題】
金属酸化物クラスターを含む新規の複合酸化物を提供することを目的とする。
【解決手段】
11個以下の金属酸化物ユニットが縮合した構造からなる金属酸化物クラスターが、リンカーを介して結合した骨格構造を有し、該金属酸化物ユニットが六配位八面体構造を有すること、を特徴とする複合酸化物を提供する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
11個以下の金属酸化物ユニットが縮合した構造からなる金属酸化物クラスターが、リンカーを介して結合した骨格構造を有し、該金属酸化物ユニットが六配位八面体構造を有すること、を特徴とする複合酸化物。
【請求項2】
前記金属酸化物クラスターが2個以上4個以下の前記金属酸化物ユニットが縮合した構造からなる金属酸化物クラスターである請求項1に記載の複合酸化物。
【請求項3】
前記金属酸化物ユニットは、中心金属がタングステン、バナジウム及びモリブデンからなる群のいずれか1種である請求項1又は2に記載の複合酸化物。
【請求項4】
前記リンカーがバナジウム、ニオブ、チタン、亜鉛及びそれらの酸化物からなる群のいずれか1種である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項5】
ミクロ細孔を有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項6】
前記ミクロ細孔の細孔直径が0.3nm以上である請求項5に記載の複合酸化物。
【請求項7】
骨格金属1mol当たりの細孔容積が0.006cm/mol以上である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項8】
骨格金属1mol当たりの表面積が20m/mol以上である請求項1乃至7のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の複合酸化物を含む触媒。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の複合酸化物を使用する窒素酸化物の還元方法。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の複合酸化物を含むイオン交換体。
【請求項12】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の複合酸化物を使用するイオン交換方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な構造を有する複合酸化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、吸着剤や触媒として期待されている新規な多孔性物質として、ポリオキソメタレートを含む複合酸化物が報告されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ケイ素とタングステンを含むα−ヘテロポリオキソメタレートアニオンと、テトラ−1−ブチルアンモニウムやセシウムとからなる骨格構造を有する材料が報告されている。
【0004】
非特許文献1には、K[CrO(OOCH)(4−エチルピリジン)[α−SiW1240]・4CHOHで示される、有機カチオンと金属酸化物アニオンで形成される材料が報告されている。
【0005】
非特許文献2には、V18からなるユニットが{FeII(HO)}又は{CoII(HO)}によってオキソ架橋された材料が報告されている。
【0006】
非特許文献3には、MoO及びVOが架橋したMoVOで示されるポリ酸塩が報告されている。
【0007】
非特許文献4には、ε−VMo9.42.640で占めされる酸化物アニオンがBiで架橋された構造を有する複合酸化物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−16050号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「アンゲヴァンテ ケミー インターナショナル エディション(Angewandte Chemie International Edition)」 ワイリーVCH(Wiley-VCH Verlag GmbH & Co.),(ドイツ),2012年,vol.51,p.1635−1639
【非特許文献2】「アンゲヴァンテ ケミー インターナショナル エディション(Angewandte ChemieInternational Edition)」 ワイリーVCH(Wiley-VCH Verlag GmbH & Co.),(ドイツ),1999年,vol.38,p.1292−1294
【非特許文献3】「アンゲヴァンテ ケミー インターナショナル エディション(Angewandte Chemieinternational Edition)」 ワイリーVCH(Wiley-VCH Verlag GmbH & Co.),(ドイツ),2008年,vol.47,p.2493−2496
【非特許文献4】「インオーガニックケミストリー(Inorganic Chemistry)」 アメリカ化学会(American Chemical Society),(アメリカ),2014年,vol.53,p.903−911
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、金属酸化物クラスターを含む新規の複合酸化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、金属酸化物クラスターを構造に含む複合酸化物について検討した。その結果、特定の配位構造を有する金属酸化物ユニットからなる金属酸化物クラスターが、リンカーを介して結合した構造を有する複合酸化物を見出した。更には、この様な複合酸化物は、従来の金属酸化物クラスターを構造に含む複合酸化物と比べて著しく比表面積が高くなることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] 11個以下の金属酸化物ユニットが縮合した構造からなる金属酸化物クラスターが、リンカーを介して結合した骨格構造を有し、該金属酸化物ユニットが六配位八面体構造を有すること、を特徴とする複合酸化物。
[2] 前記金属酸化物クラスターが2個以上4個以下の前記金属酸化物ユニットが縮合した構造からなる金属酸化物クラスターである上記[1]に記載の複合酸化物。
[3] 前記金属酸化物ユニットは、中心金属がタングステン、バナジウム及びモリブデンからなる群のいずれか1種である上記[1]又は[2]に記載の複合酸化物。
[4] 前記リンカーがバナジウム、ニオブ、チタン、亜鉛及びそれらの酸化物からなる群のいずれか1種である上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の複合酸化物。
[5] ミクロ細孔を有する上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の複合酸化物。
[6] 前記ミクロ細孔の細孔直径が0.3nm以上である上記[5]に記載の複合酸化物。
[7] 骨格金属1mol当たりの細孔容積が0.006cm/mol以上である上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の複合酸化物。
[8] 骨格金属1mol当たりの表面積が20m/mol以上である上記[1]乃至[7]のいずれかに記載の複合酸化物。
[9] 上記[1]乃至[8]のいずれかに記載の複合酸化物を含む触媒。
[10] 上記[1]乃至[8]のいずれかに記載の複合酸化物を使用する窒素酸化物の還元方法。
[11] 上記[1]乃至[8]のいずれかに記載の複合酸化物を含むイオン交換体。
[12] 上記[1]乃至[8]のいずれかに記載の複合酸化物を使用するイオン交換方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、金属酸化物クラスターを含む新規の複合酸化物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1a】六配位八面体構造を有する金属酸化物ユニットの構造を示す模式図(中心金属と酸素との結合状態)
図1b】六配位八面体構造を有する金属酸化物ユニットの構造を示す模式図(中心金属に結合した酸素から構成される八面体構造)
図2】金属酸化物ユニットの縮合状態を示す模式図
図3】4個の金属酸化物ユニットが縮合した構造からなる金属酸化物クラスター(M16)の構造を示す模式図
図4a】実施例1の複合酸化物の窒素吸着等温線、横軸を線形表示(p/p=0.0〜1.0)
図4b】実施例1の複合酸化物の窒素吸着等温線、横軸を対数表示(p/p=1×10−10〜1.0)
図5】実施例1の複合酸化物の細孔径分布
図6】実施例1の複合酸化物のXRDパターン
図7】実施例1の複合酸化物の構造を示す模式図
図8】実施例2の複合酸化物のXRDパターン
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の複合酸化物について説明する。
【0016】
本発明の複合酸化物は、金属酸化物クラスターが、リンカーを介して結合した骨格構造を有し、これは、酸素と金属からなる骨格構造である。骨格構造を構成する金属(以下、「骨格金属」ともいう。)は2種以上であり、少なくとも、金属酸化物クラスターを構成する金属とリンカーを構成する金属は異なる金属である。金属有機構造体(MOF:Metal Organic Frameworks)や多孔性配位高分子(PCP:Porous Coordination Polymer)とは異なり、本発明の複合酸化物は骨格構造に有機官能基を含まないことが好ましい。有機官能基としては、アルキル基、ケトン基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群のいずれか1種以上を挙げることができる。
本発明の複合酸化物のリンカーとは金属酸化物クラスター間を共有結合で結合する物質のことを指す。
【0017】
本発明の複合酸化物は結晶性物質である。本発明の複合酸化物が結晶性物質であることは、粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)測定により確認することができ、一般的なXRD装置を使用したXRD測定により得られた本発明の複合酸化物のXRDパターンにおいて、半値幅が5°以下のピークを有することから確認することができる。
【0018】
六配位八面体構造を有する金属酸化物ユニットが11個以下で縮合した構造からなる金属酸化物クラスターが、リンカーを介して複数結合した骨格構造を有することで、本発明の複合酸化物が三次元構造、更には三次元網目構造となる。これにより細孔が形成されて、従来の金属酸化物クラスターを構造に含む複合酸化物と比べて著しく高い比表面積となり、本発明の複合酸化物が触媒や吸着剤として適したものとなる。一方、金属酸化物ユニットが六配位八面体構造でない場合には、三次元網目構造を有する結晶構造が形成されにくくなる。また、金属酸化物クラスターがリンカーを介して結合していない場合には、得られる複合酸化物の比表面積が小さくなりやすい。
【0019】
本発明の複合酸化物の骨格構造に含まれる金属酸化物クラスターは、金属酸化物ユニットが縮合した構造からなり、該金属酸化物ユニットは六配位八面体構造を有する。「六配位八面体構造」とは、図1で示すように、金属元素(以下、「中心金属」ともいう。)と酸素からなる金属酸化物ユニットにおいて、1個の中心金属(図1(a)中 1)及び中心金属にそれぞれ結合した6個の酸素(図1(a)中 2)から構成される構造である。6個の酸素は、図1に示すように、中心金属を挟んで同一直線上に配置される2個の酸素が3組設けられるように、金属元素を中心としてその周囲に配置されている。当該構造により、6個の酸素を頂点とし、互いに隣接する3個の酸素から形成される面(図1(b)中 3)を8個有する8面体構造となる(図1(b))。
【0020】
金属酸化物ユニットにおいて、中心金属とそれぞれの酸素との結合は、結合距離及び結合方向がそれぞれ任意である。そのため、中心金属と酸素の結合により構成される該八面体構造は、正八面体構造及び正八面体以外の八面体構造のいずれであってもよい。本発明の複合酸化物が規則的な三次元網目構造となりやすくなるため、金属酸化物ユニットは六配位正八面体構造であることが好ましい。金属酸化物ユニットの構造はXRDパターンのRietveld解析(リートベルト解析)や、結晶X線回折により確認することができる。XRDパターンのリートベルト解析によれば、本発明の複合酸化物の結晶構造を同定することができる。なお、金属酸化物ユニットは、六配位八面体構造を構成する1個の中心金属と6個の酸素のみにより構成することができる(つまり、六配位八面体構造を構成する1個の中心金属と6個の酸素以外の物質(元素)が結合していない構成であることができる)。
【0021】
中心金属は、金属酸化物ユニットを形成する金属元素であり、周期表の4族乃至6族のいずれかの金属元素であることが好ましく、タングステン(W)、バナジウム(V)及びモリブデン(Mo)からなる群のいずれか1種であることがより好ましく、W及びMoのいずれかであることが特に好ましい。
【0022】
本発明の複合酸化物に含まれる金属酸化物クラスター(以下、単に「クラスター」ともいう。)は、六配位八面体構造を有する金属酸化物ユニット(以下、「MOユニット」ともいう。)からなり、MOユニットが縮合した構造からなる。「MOユニットが縮合」とは、図2に示すように、MOユニット同士が頂点及び稜を共有した構造を有すること、である。ここで、「稜」とはMOユニットにおいて、互いに隣接する3個の酸素から形成される面の各辺(図1(b)中 4)に相当し、「頂点」とは当該面を形成する酸素(図1(b)中 2)である。つまり、隣接する2つの酸素をMOユニット同士が共有することにより、MOユニットが縮合した構造を形成することができる。
【0023】
本発明の複合酸化物の骨格構造に含まれるクラスターは、整数個のMOユニットが縮合した構造からなる。クラスターは、11個以下のMOユニットが縮合した構造からなり、2個以上11個以下のMOユニットが縮合した構造からなることが好ましく、2個以上6個以下のMOユニットが縮合した構造からなることがより好ましい。本発明の複合酸化物の骨格構造に含まれる特に好ましいクラスターとして、2個以上4個以下のMOユニットが縮合した構造からなるクラスター、更には4個のMOユニットが縮合した構造からなるクラスターを挙げることができる。図3に、4個のMOユニットが縮合した構造からなる金属酸化物クラスター(M16)の構造の模式図を示す。11個以下の金属酸化物ユニットが縮合した構造を有するクラスターが骨格構造に含まれることで、本発明の複合酸化物の比表面積が大きくなりやすい。なお、クラスターを構成するMOユニットの数は、本発明の複合酸化物に含まれる複数のクラスターの間で同一であることが好ましい。
【0024】
クラスターは中心金属(M)を含むMOユニットが縮合した構造からなり、個々のクラスターは、Mを中心金属とするMユニット、及び、Mを中心金属とするMユニットが縮合した構造からなっていてもよい。ここで、M及びMは異なる金属元素であり、それぞれ、周期表の4族乃至6族のいずれかの金属元素であることが好ましく、タングステン(W)、バナジウム(V)及びモリブデン(Mo)からなる群から選ばれる1種であることがより好ましく、W及びMoのいずれかであることが特に好ましい。
【0025】
個々のクラスターは、同じ金属元素を中心金属とするMOユニットが互いに縮合した構造であることが好ましい。具体的なクラスターとしてW16、16及びMo16からなる群のいずれかを挙げることができる。
【0026】
クラスターは電荷を持たない分子性及び電荷を持つイオン性のいずれのクラスターであってもよいが、イオン性のクラスターであることが好ましく、負に帯電したクラスターであることがより好ましい。クラスターが負に帯電していることで、本発明の複合酸化物が酸触媒に適する。
【0027】
クラスターがイオン性のクラスターである場合、該クラスターはイオンにより電荷補償されていることが好ましい。電荷補償のイオンは、クラスターの細孔や表面など、骨格構造外に含有される。クラスターが含むイオンは任意であるが、カチオンを挙げることができ、プロトン、アンモニウム、アルカリ金属カチオン及びアルカリ土類金属カチオンからなる群の1種以上であることが好ましく、プロトンであることがより好ましい。金属酸化物ユニットがプロトンにより電荷補償されていることで、本発明の複合酸化物がブレンステッド酸点を有する。
【0028】
本発明の複合酸化物は、MOユニットからなるクラスターがリンカーを介して結合した骨格構造を有する。「リンカーを介して結合した骨格構造」とは、リンカーによってクラスター同士が架橋された構造からなる骨格構造であり、具体的には、あるクラスターを構成するMOユニット中のひとつの酸素とリンカーとが化学結合を形成し、なおかつ、他のクラスターを構成するMOユニット中のひとつの酸素と該リンカーとが化学結合を形成した構造、の繰り返しにより構成された骨格構造、である。
【0029】
本発明の複合酸化物の骨格構造とは、金属酸化物クラスターとリンカーによって形成される結晶の構造のことを指す。本発明の複合酸化物の骨格構造は、以下の式1で示される構造の繰返しであることができる。
[式1]
式1において、(Clus)はクラスター、L及びLはリンカーであってそれぞれ遷移金属元素またはその酸化物、Oは酸素、xは1以上の整数、yは0以上の整数、及び、zは0以上の整数である。
【0030】
本発明の複合酸化物の構造安定性が高くなるため、クラスターを構成するMOユニット中のひとつの酸素とリンカーとの化学結合(以下、「クラスターとリンカーの結合」ともいう。)は共有結合であることが好ましい。
【0031】
リンカーはクラスター同士の架橋構造を形成できる結合を形成する物質であればよい。リンカーは遷移金属またはその酸化物であることができ、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)及びそれらの酸化物(つまり、バナジウムの酸化物、ニオブの酸化物、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物)からなる群のいずれか1種であることが好ましく、バナジウムまたはその酸化物であることがより好ましい。さらに、式1におけるL及びLは、それぞれ、遷移金属またはその酸化物であり、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)及びそれらの酸化物(つまり、バナジウムの酸化物、ニオブの酸化物、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物)からなる群のいずれか1種であることが好ましく、バナジウムまたはその酸化物であることがより好ましい。式1で示したように、リンカー同士が酸素を介して結合していてもよい。なお、本発明の複合酸化物の骨格構造に含まれるリンカーは、1種類の遷移金属またはその酸化物のみにより構成されることが好ましい。
【0032】
本発明の複合酸化物の骨格構造は、クラスターとリンカーからなり、クラスター同士の直接結合を有さないことが好ましい。クラスター同士の直接結合が含まれる場合には、複合酸化物の比表面積が低くなりやすい。さらに、本発明の複合酸化物はクラスター同士が稜及び頂点を共有する構造を有さないこと、すなわち、12個以上のMOユニットが縮合した構造からなるクラスターを含まないことが好ましい。
【0033】
リンカーと結合するクラスターは、Mを中心金属とするMユニットが縮合した構造からなるクラスター、Mを中心金属とするMユニットが縮合した構造からなるクラスター、若しくは、Mを中心金属とするMユニット及びMを中心金属とするMユニットが縮合した構造からなるクラスター、のいずれであってもよい。なお、クラスターの組成は、本発明の複合酸化物の骨格構造に含まれる複数のクラスターの間で同一であることが好ましい。
【0034】
本発明の複合酸化物は三次元網目構造であることが好ましく、特にPoint表記で412・6と示される構造であることが好ましい。なお、「Point表記」とは、日本結晶学会誌第58巻、第4号、159〜166ページ(2016)に記載された構造の表記法である。
【0035】
本発明の複合酸化物は三斜晶系、単斜晶系、直方晶系、正方晶系、立方晶系、立方晶系及び六方晶系の群からなるいずれかの結晶系に属することが好ましく、六方晶系又は立方晶系の少なくともいずれかの結晶系に属することがより好ましい。
【0036】
本発明の複合酸化物は高い比表面積を有し、骨格金属1mol当たりの表面積が20m/mol以上、更には40m/mol以上、更には60m/mol以上であることが挙げられる。骨格金属1mol当たりの比表面積は、200m/mol以下であることが好ましい。
【0037】
本発明の複合酸化物は任意の組成を有することができるため、重量当たりの比表面積は組成に依存する。上記の比表面積に対応するBET比表面積として、100m/g以上、更には200m/g以上、また更には300m/g以上であること、及び、BET比表面積は1000m/g以下、更には800m/g以下であることが挙げられる。
【0038】
本発明においてBET比表面積は、−196℃における窒素吸着等温線からBET法により求められる比表面積、であることが好ましい。本発明の複合酸化物が上述した高い比表面積となる理由の一つとしては、金属酸化物クラスター同士がリンカーを介して結合することで、骨格構造中に密な部分(金属酸化物クラスターが配置される部分)と疎な部分(リンカーが配置される部分)が形成され、骨格構造の密な部分の間に空間(細孔)が形成されるものと考えられる。そして、密な部分を構成する金属酸化物クラスターが、金属酸化物ユニットが11個以下で縮合した構造からなり、この金属酸化物ユニットが六配位八面体構造を有していることにより、密な部分の間に形成される空間(細孔)が、微細になるとともに多数形成され、高い比表面積となると考えられる。
【0039】
骨格金属1mol当たりの表面積は、BET比表面積(m/g)の値を、複合酸化物に含まれる中心金属原子およびリンカーの金属原子の、重量あたりの物質量(mol/g)の総和で除することによって求められる。
【0040】
本発明の複合酸化物は複数のミクロ細孔を有する。「ミクロ細孔」は、細孔直径2.0nm以下の細孔である。本発明の複合酸化物が有するミクロ細孔は細孔直径が1.0nm以下であること、更には細孔直径が0.8nm以下であることが好ましい。分子を吸着するためには、細孔直径は0.2nm以上であること、更には0.3nm以上であることが好ましい。
【0041】
本発明において「細孔直径」は、−186℃におけるアルゴン吸着等温線から、Saito・Foley法(以下、「SF法」ともいう。)により求めることができ、SF法を用いて取得した細孔径分布曲線における最大ピークの細孔直径である。本発明におけるSF法として、AIChE JOURNAL.第37巻、429〜436ページ(1991)(以下、「参照文献」ともいう。)に記載された方法、を挙げることができる。
【0042】
本発明の複合酸化物は均一な直径のミクロ細孔を有することが好ましい。均一な直径のミクロ細孔を有することにより、均一な吸着・反応場を提供できる。本発明の複合酸化物が、「均一な直径のミクロ細孔」であることは、SF法を用いて取得した細孔径分布曲線のピークが1つであることにより確認することができる。
【0043】
本発明の複合酸化物はミクロ細孔を有していれば、他の細孔を有していてもよい。例えば、本発明の複合酸化物は、細孔直径2.0nmを超え50nm以下の細孔(以下、「メソ細孔」ともいう。)又は細孔直径50nmを超える細孔(以下、「マクロ細孔」ともいう。)の少なくともいずれかを有していてもよい。
【0044】
骨格金属1mol当たりの細孔容積は0.006cm/mol以上、更には0.013cm/mol以上、更には0.019cm/mol以上であることが好ましく、0.06cm/mol以下であることが好ましい。骨格金属1mol当たりの細孔容積は、例えば、−196℃における窒素吸着等温線をt−plot法により解析することで求めることができる単位重量当たりの細孔容積(m/g)を、複合酸化物に含まれる中心金属原子およびリンカーの金属原子の、重量あたりの物質量(mol/g)の総和で除することによって求めることができる。
【0045】
重量当たりの細孔容積は任意であるが、0.03cm/g以上、更には0.06cm/g以上、また更には0.09m/g以上であり、かつ、0.3cm/g以下であることが好ましい。単位重量当たりの細孔容積は、例えば、−196℃における窒素吸着等温線をt−plot法により解析することにより求めることができる。
【0046】
本発明の複合酸化物は、触媒、吸着剤、触媒担体、イオン交換体又は吸着剤担体の少なくともいずれかとして使用することができ、触媒、触媒担体、イオン交換体の少なくともいずれかとして使用することが好ましい。本発明の複合酸化物を含む触媒は、酸化触媒、還元触媒、脱硫触媒、脱硝触媒及び光触媒の群から選ばれる少なくとも1種として使用することが好ましく、脱硫触媒、窒素酸化物還元触媒、水分解用又は二酸化炭素分解用の光触媒として使用することがより好ましい。そして、本発明の複合酸化物を使用する窒素酸化物の還元方法が、好適に実施される。具体的な窒素酸化物の還元方法としては、例えば、窒素酸化物を含む流体を本発明の複合酸化物に接触させる方法を挙げることができる。また、本発明の複合酸化物を含むイオン交換体は、種々のカチオン、更にはアンモニウム、Mg、Ca、Ba、Al、Mn、Fe、Cu、Zn、K、Csからなる群の少なくとも1種、更にはセシウムを選択的に吸着し、複合酸化物内のカチオンを放出するイオン交換体として使用することが好ましい。そして、本発明の複合酸化物を使用するイオン交換方法が、好適に実施される。具体的なイオン交換方法としては、例えば、カチオン種を含む流体を本発明の複合酸化物に接触させる方法を挙げることができる。
【0047】
以下、本発明の複合酸化物の製造方法について説明する。
【0048】
本発明の複合酸化物は、いわゆる、ソルボサーマル法によって製造することができる。好ましい製造方法として、金属酸化物ユニット源、リンカー源及び溶媒を含む組成物を加熱する結晶化工程、を含む製造方法、を挙げることができる。結晶化工程により、金属酸化物ユニット源、リンカー源及び溶媒を含む組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)から本発明の複合酸化物を結晶化することができる。
【0049】
金属酸化物ユニット源は、MOユニットの中心金属を含む化合物(以下、「中心金属化合物」ともいう。)であればよく、中心金属元素を含有する塩化物、硫化物、硝酸塩、酢酸塩、水酸化物及び酸化物からなる群の少なくとも1種であることが好ましい。MOユニットの縮合が進行しやすくなるため、金属酸化物ユニット源は、中心金属化合物を含む溶液であることが好ましく、更には中心金属化合物を含む水溶液であることが好ましい。好ましい金属酸化物ユニット源として、WO、NaWO、KWO及び(NHWO、からなる群の少なくとも1種並びにその水和物、その水酸化カリウム水溶液、その水酸化ナトリウム水溶液、そのアンモニア水水溶液、その水懸濁液、及びそのアルコール懸濁液からなる群のいずれか1種以上が例示できる。
【0050】
リンカー源は、リンカーを構成する金属(遷移金属)を含む化合物(以下、「リンカー金属化合物」ともいう。)であればよく、リンカー金属元素を含有する塩化物、硫化物、硝酸塩、酢酸塩、水酸化物及び酸化物からなる群の少なくとも1種であることが好ましい。好ましいリンカー源として、V、VOSO、NaVO、KVO、CsVO、及びNHVO、からなる群のいずれか1種並びにその水和物が例示できる。特にVOSOが好ましい。なお、リンカー金属元素には、中心金属元素とは異なる金属元素が使用される。
【0051】
溶媒は、水系溶媒又は非水系溶媒のいずれであってもよいが、水系溶媒であることが好ましく、水又はアルコールの少なくともいずれかであることがより好ましく、水であることがより好ましい。また、溶媒は、金属酸化物ユニット源及びリンカー源とは別に原料組成物に含有されてもよいが、金属酸化物ユニット源やリンカー源に溶媒が含まれる場合には、金属酸化物ユニット源及びリンカー源とは別に溶媒を原料組成物に含有しなくてもよい。
【0052】
原料組成物は、金属酸化物ユニット源、リンカー源及び溶媒の他に、他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、例えば、KOH、NH、トリメチルアミン、トリエチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、水酸化ジメチルジエチルアンモニウム、塩化ジメチルジエチルアンモニウム、臭化ジメチルジエチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、及びHSOからなる群の少なくとも1種などを挙げることができる。
【0053】
原料組成物は、金属酸化物ユニット源、リンカー源及び溶媒を含んでいればよい。金属酸化物ユニット源、リンカー源としては、それぞれが溶媒と混合した状態を挙げることができる。原料組成物において、金属酸化物ユニット源及びリンカー源が分散した状態であってもよい。好ましくは、金属酸化物ユニット源、リンカー源、それぞれが溶媒に溶解した状態を挙げることができる。好ましい原料組成物として、中心金属化合物を含む水溶液、リンカー金属化合物を含む水溶液及び水を混合して得られた原料組成物が挙げられる。原料組成物は酸性であることが好ましい。更に、原料組成物のpHは2以上6以下であることが好ましい。また、金属酸化物ユニット源やリンカー源が固体である場合には、これらは溶媒に溶解していることが好ましい。金属酸化物ユニット源やリンカー源を溶媒に溶解するために、前述したKOH、NH、トリメチルアミン、トリエチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、水酸化ジメチルジエチルアンモニウム、塩化ジメチルジエチルアンモニウム、臭化ジメチルジエチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、及びHSOからなる群の少なくとも1種により溶媒のpHを調整したり、溶媒を加熱したりしてもよい。
【0054】
原料組成物を取得する方法は、特に限定されないが、例えば、金属酸化物ユニット源を溶媒に混合した後、金属酸化物ユニット源を混合した溶媒にリンカー源を混合する方法を挙げることができる。特に、金属酸化物ユニット源やリンカー源が固体である場合には、金属酸化物ユニット源を溶媒に混合して溶解した後、金属酸化物ユニット源が溶解した溶媒にリンカー源を混合して溶解し、原料組成物を取得する方法を挙げることができる。
【0055】
原料組成物は、中心金属とリンカーの金属のモル比(以下、「M/L比」ともいう。)が0.1以上100以下、更には0.5以上10以下であることが好ましい。原料組成物は、中心金属とリンカーの金属の合計に対する水のモル比(以下、「HO/(M+L)比」ともいう。)が10以上10000以下、更には100以上1000以下であることが好ましい。これらの範囲を満たすことで、本発明の複合酸化物が結晶化しやすくなる。
【0056】
得られる複合酸化物の結晶構造は、原料組成物に含まれる成分又はその割合や、原料組成物のpH、その他結晶化の条件による影響を受ける。そのため、これらの結晶化の条件を選択することにより、異なる結晶構造を有する複合酸化物を得ることができる。
【0057】
結晶化工程において、原料組成物を加熱するが、加熱温度は80℃以上、更には100℃以上、更には150℃以上、また更には170℃以上であることが好ましい。一方、加熱温度は250℃以下、更には200℃以下であれば、原料組成物から本発明の複合酸化物が結晶化しやすくなる。
【0058】
加熱時間は加熱温度に依存し、加熱温度が高くなるほど加熱時間は短くなる傾向がある。結晶化工程における加熱時間として、0.5時間以上、更には1時間以上、また更には4時間以上であることが挙げられる。生産性の観点から、加熱時間は7日以下、更には3日以下、また更には1日以下、また更には10時間以下を挙げることができる。
【0059】
ここで、金属酸化物ユニット源として、タングステン、バナジウム及びモリブデンからなる群のいずれか1種の金属を含む化合物を用い、リンカー源として、バナジウム、ニオブ、チタン及び亜鉛からなる群のいずれか1種の金属を含む化合物を用いることで、六配位八面体構造を有する金属酸化物ユニットが、11個以下で縮合した構造の金属酸化物クラスターが形成されやすくなる。そして、このクラスターがリンカーを介して結合した骨格構造を有する複合酸化物が生成されやすくなる。
【0060】
好ましい製造方法において、分離工程及び乾燥工程を含んでいてもよく、分離工程、乾燥工程及び修飾工程を含んでいてもよい。
【0061】
結晶化工程により、溶媒と本発明の複合酸化物とを含む生成物が得られる。分離工程では、得られた生成物から複合酸化物と溶媒とを分離する。生成物の分離方法は任意である。分離方法として濾過又は遠心沈降の少なくともいずれかが挙げられ、これらを併用又は繰返し行ってもよい。さらに、分離工程において、生成物を水等の溶媒に混合した後に、分離方法に掛けることで、複合酸化物の分離と洗浄を同時に行うことができる。本発明の複合酸化物は、これらの分離方法により固相として得られる。
【0062】
乾燥工程は、複合酸化物に物理吸着した溶媒や有機物を除去する。複合酸化物に物理吸着した溶媒や有機物を除去できれば、任意の乾燥方法であればよい。乾燥方法として、大気中、50℃以上200℃未満で処理することが例示できる。
【0063】
修飾工程は、本発明の複合酸化物に所望の特性を付与することができる。例えば、修飾工程として、本発明の複合酸化物をイオン交換することが挙げられる。これにより、例えばプロトン交換した場合には、ブレンステッド酸として利用することができる。一方、本発明の複合酸化物をアンモニウム交換した後に200℃以上400℃以下で焼成することができる、これによりアンモニウムイオンがプロトンになり、ブレンステッド酸として利用することができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0065】
(結晶構造の同定)
一般的なX線回折装置(装置名:RINT Ultima+、リガク社製)を使用し、以下の条件で試料の粉末X線回折を測定した。
線源 :CuKα線
管電圧 :40kV
管電流 :40mA
測定範囲 :2θ=4°〜80°
【0066】
得られた回折パターンをリートベルト解析することによって結晶構造を同定した。リートベルト解析にはMaterials Studio v6.1.0(アクセリルス社製)のReflexツールを用いた。
【0067】
(ガス吸着)
試料のBET比表面積は、窒素吸着測定により算出した。窒素吸着測定には一般的な窒素吸着装置(装置名:BELSORP MAX、マイクロトラック・ベル社製)を用いた。試料を真空下150℃で2時間前処理し、液体窒素温度(−196℃)で窒素ガスを吸着させた。比表面積の算出には窒素吸着等温線に基づくBET法を用いた。
試料の細孔直径は、上記の窒素吸着装置を用いたアルゴン吸着測定により算出した。試料の前処理を窒素吸着測定と同様な条件で行った後、−186℃におけるアルゴン吸着等温線に基づくSF法を用いた。SF法の条件は参照文献の[0040]に記載された条件と同様な条件を用いた。
【0068】
ミクロ細孔容積は窒素吸着等温線に基づくt−plot法を用いて求めた。
【0069】
(組成分析)
フッ化水素水溶液に試料を溶解して試料溶液を調製した。一般的なICP装置(装置名:Optima 5300DV、Perkin Elmer社製)を使用して、当該試料溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)で測定することにより、試料の組成を分析した。
【0070】
(電子顕微鏡観察)
一般的な透過型電子顕微鏡(装置名:HD−2000、日立製作所製)を使用し試料をTEM観察した。観察に先立ち、試料をエタノール中に分散させ、超音波処理をすることで前処理とした。
【0071】
実施例1
200mLの水(イオン交換水)にKOH 65mmol(3.634g)を溶解させ水溶液を得た。当該溶液を100℃として、WO(4.637g、W基準で20mmol)を溶解させた後、得られた水溶液を室温まで冷却した。冷却後、22gのHSO溶液(1mol/L)及び11mmol(2.678g)のVOSOを得られた水溶液に添加し10分攪拌した。攪拌後、0.6mLの28%NH水溶液を水溶液に添加し、原料組成物を得た。
【0072】
原料組成物のM/L比は1.8、HO/(M+L)比は388、pHは4.2であった。
【0073】
得られた原料組成物をガラス管に移し、ガラス管をテフロン(登録商標)コートされた300mLのステンレス圧力容器に密閉した。圧力容器を175℃で8時間、自生圧下で加熱した後、容器を開放し、遠心沈降(3500rpm、5分)により混合物から固体を得た。
【0074】
得られた固体を120mLの水(イオン交換水)に懸濁させ、遠心沈降(1000rpm、2分)させて上澄み(約70%)を回収した。固体に水(イオン交換水)を加えて遠心沈降(1000rpm、2分)することを3回繰り返し、得られた上澄み全てを遠心沈降(1000rpm、2分)させて、その上澄み(70%)を回収、それを更に遠心沈降(3500rpm、30分)することによって本実施例の固体を得た。60℃24時間乾燥させた後、1.3gの本実施例の複合酸化物を得た。
【0075】
本実施例の複合酸化物は、表面積が68m/mol、BET比表面積が326m/g、ミクロ細孔容積が0.102cm/gかつ0.021cm/mol、及び、細孔直径が0.51nmであり、半値幅が5°以下のピークを有していた。
【0076】
本実施例の複合酸化物の窒素吸着等温線を図4、SF法による細孔径分布を図5に示した。
【0077】
リートベルト解析は表1のパラメータとPawley法により最適化を行った。結果を図6に示した。図6から明らかなように、解析により得られたXRDパターン(simulated pattern)は実測値(Experimental pattern)とよく一致をし、両者の強度差(Difference)はほとんどなかった。また、解析により得られた原子位置を表2に示した。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
リートベルト解析により、本実施例の複合酸化物の構造を同定した。同定の結果、本実施例の複合酸化物は、4個の金属酸化物ユニットが縮合した構造からなる金属酸化物クラスターが、リンカーを介して結合した骨格構造を有し、該金属酸化物ユニットがタングステンを中心金属とする六配位八面体構造を有するタングステン酸化物ユニットであり、金属酸化物クラスターがW16であり、なおかつ、リンカーがバナジウムの酸化物であることが確認できた。本実施例の複合酸化物は結晶系が立方晶系に属することが確認できた。つまり、本実施例の複合酸化物の骨格構造は、以下の式2で示される構造の繰返しであった。同定された本発明の複合酸化物の構造の模式図を図7に示す。
[式2]
【0081】
実施例2
KOHの代わりに65mmolのトリメチルアミンを使用したこと以外は実施例1と同様の方法で本実施例の複合酸化物を得た。
【0082】
実施例1と同様な方法によってリートベルト解析を行い、本実施例の複合酸化物の構造を同定した。同定の結果、本実施例の複合酸化物は、4個の金属酸化物ユニットが縮合した構造からなる金属酸化物クラスターが、リンカーを介して結合した骨格構造を有し、該金属酸化物ユニットはタングステンを中心金属とする六配位八面体構造を有するタングステン酸化物ユニットであり、金属酸化物クラスターがW16であり、なおかつ、リンカーがバナジウムの酸化物であることが確認できた。また、本実施例の複合酸化物は実施例1と同様な骨格構造を有するが、その結晶系が六方晶系に属することが確認できた。本実施例の複合酸化物の粉末X線回折結果を図8に示す。
【0083】
測定例(窒素酸化物還元率の測定)
実施例1の複合酸化物を触媒として使用して窒素酸化物を還元した。すなわち、窒素酸化物として一酸化窒素(NO)を含有する処理ガスを実施例1の複合酸化物に流通させ、アンモニアを還元剤として使用したSCR法(選択的触媒還元法)による窒素酸化物還元率を測定した。測定条件を以下に示す。
触媒量 : 0.15g
処理ガス組成 : NO 250ppm
NH 250ppm
4容量%
残部
処理ガス流量 : 250mL/分
測定温度 : 120℃
【0084】
触媒流通前の処理ガス中の窒素酸化物濃度(250ppm)に対する、触媒流通後の処理ガス中の窒素酸化物濃度(ppm)の割合を求め、以下の式(3)から窒素酸化物還元率を算出した。
R=(1−Nout/Nin)×100 ・・・(3)
式(3)において、Rは窒素酸化物還元率(%)、Ninは、触媒流通前の処理ガス中の窒素酸化物濃度(ppm)、Noutは、触媒流通後の処理ガス中の窒素酸化物濃度(ppm)である。
【0085】
比較例として、一般的に使用されている窒素酸化物還元触媒(鉄含有ベータ型ゼオライト;鉄含有量2重量%、SiO/Al比=18)を用意した。この窒素酸化物還元触媒の窒素酸化物還元率を、実施例1の複合酸化物の窒素酸化物還元率と同様な方法で測定した。
【0086】
測定結果を下記表3に示す。
【表3】
【0087】
上記の結果より、鉄含有ベータ型ゼオライトと比較して、本発明の複合酸化物は窒素酸化物還元率が高いことが確認できた。
【0088】
実施例3
実施例1の複合酸化物1.8gを90mlのイオン交換水に分散させ、塩化アンモニウム4.5gを加えて室温で1時間攪拌した。遠心沈降により固液分離・洗浄することによって、本実施例の複合酸化物を回収した。回収した複合酸化物の組成分析を行ったところ、複合酸化物に含まれるK(カリウム)の含有量が処理前の2.2重量%から0.1重量%未満まで低下し、完全にイオン交換されていることが確認された。
【0089】
実施例4
実施例3で回収した複合酸化物1.4gを70mlのイオン交換水に分散させ、塩化銅(CuCl・2HO)2.8gを加えて室温で30分攪拌した。遠心沈降により固液分離・洗浄することによって、本実施例の複合酸化物を回収した。回収した複合酸化物の組成分析を行ったところ、複合酸化物に含有されるCu(銅)の含有量は5重量%であった。
【0090】
実施例5
実施例4で用いたカチオン種をCuから変更したこと以外は実施例4と同様の方法で、本実施例の複合酸化物を回収した。カチオン種には、Mg、Ca、Ba、Al、Mn、Fe(Fe3+,Fe2+)、Znをそれぞれ用いた。回収したそれぞれの複合酸化物を赤外分光法を用いて分析したところ、複合酸化物にカチオン種が含まれていることが確認できた。この結果から、カチオン種がMg、Ca、Ba、Al、Mn、Fe(Fe3+、Fe2+)、Znであっても、実施例4と同様にイオン交換が進行したことが確認できた。なお、イオン交換が進行したことは、赤外分光スペクトルにおいて金属種(カチオン種)由来のピークが検出されたことで確認した。
【0091】
実施例6
実施例1の複合酸化物15mgを、下記表4記載のイオン種を含む各水溶液3.1mlにそれぞれ分散させ、室温で1時間攪拌した。遠心沈降により上澄みを採取、組成分析することによって水溶液中のカチオン種の濃度(イオン交換後のカチオン種の濃度)をそれぞれ測定し、カチオン種のイオン交換率を以下の式(4)で求めた。
交換率(%)=(イオン交換前のカチオン種の濃度(mol/L)−イオン交換後のカチオン種の濃度(mol/L))÷イオン交換前のカチオン種の濃度(mol/L)×100 ・・・(4)
【0092】
交換率を下記表4に示す。
【表4】
【0093】
上記の結果より、本実施例の複合酸化物は種々のカチオン種、特にセシウムのイオン交換に有用であることが確認できた。
【0094】
実施例7
実施例1の加熱時間を175℃8時間から100℃48時間に変更した。また容器も密閉せず、冷却管を用いて蒸発した水分を容器に還流させた。その他の条件は実施例1と同じとし、本実施例の複合酸化物を得た。本実施例の複合酸化物のXRDパターンは、実施例1の複合酸化物と同じであった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の複合酸化物は吸着剤、イオン交換体や触媒として使用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1:中心金属
2:酸素
3:面
4:稜
図1a
図1b
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8