【課題】優れた誘電特性、耐熱性、及び接着性等を発現し、特にプリント配線板用途で優れた硬化物特性を与えるイソシアヌル酸型のエポキシ樹脂及びこのエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物とその硬化物の提供。
【解決手段】本発明のエポキシ樹脂は、3つのN位の内の1つが、1つのグリシジルオキシ基がベンゼン環に置換したベンジル基が付加したものであり、残りの2つのN位は、グリシジル基又は1つのグリシジルオキシ基がベンゼン環に置換したベンジル基が付加したものであるイソシアヌル酸型のエポキシ樹脂である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂は、上記一般式(1)で表される。本発明のエポキシ樹脂の製造方法は限定されないが、上記一般式(3)で表されるヒドロキシ化合物をエピクロヒドリンと反応させる方法が適する。
一般式(3)において、Y
1は式(4)で表される基(ヒドロキシアリールメチル基という。)を示し、Y
2、Y
3は上記ヒドロキシアリールメチル基又は水素原子を示す。従って、上記ヒドロキシ化合物には、ヒドロキシアリールメチル基を1、2又は3個有する3種類がある。
【0019】
本発明のエポキシ樹脂の製造方法においては、上記3種類のヒドロキシ化合物のいずれか1種又は2〜3種含む混合物を出発原料とすることができる。混合物を使用する場合は、ヒドロキシアリールメチル基を3個有する化合物が全体の30質量%以上含まれるものが好ましい。場合によっては、ヒドロキシ化合物中に、Y
1からY
3のすべてが水素原子であるイソシアヌル酸が不純物として含まれてもよいが、イソシアヌル酸の含有率は30質量%以下にとどめることがよい。
【0020】
上記式(4)において、R
11及びR
12は炭素数1〜8の炭化水素基を表す。R
11及びR
12が水素原子である場合、硬化物のガラス転移点が下がるので好ましくない。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、s−アミル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−アミル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。炭化水素基は、二級炭化水素基又は三級炭化水素基であってもよいが、立体障害により合成反応が阻害される場合がある。また、炭素数が大きい置換基は硬化物の誘電率及び誘電正接を低くすることができるため好ましい。
【0021】
式(4)において、R
13、R
14、及びR
15のうち一つが水酸基であり、他の二つが炭素数1〜8の炭化水素基又は水素原子である。
R
13又はR
15が水酸基である場合、R
14が炭化水素基であることが好ましく、R
14が水酸基である場合、R
13及びR
15の両方が炭化水素基であることが好ましい。上記他の二つが共に水素原子である場合、一般式(3)で表されるヒドロキシ化合物を得る反応によっては、式(4)のメチレン基のオルト位に炭素数1〜8の炭化水素基を選択的に導入することが難しくなる場合がある。
炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、s−アミル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。これらのうち、t−ブチル基、t−アミル基等の三級炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基等の芳香族置換基等の炭素数が大きい置換基は、硬化物の誘電特性を低くするため好ましい。しかし、上記他の二つが共にt−ブチル基、t−アミル基等の三級炭化水素基である場合は、エポキシ樹脂を合成する際の反応性が劣る恐れがある。
【0022】
上記式(4)で表されるヒドロキシアリールメチル基としては、具体的には下記に示すような基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
一般式(3)で表されるヒドロキシ化合物は公知の合成方法を用いて反応することで得ることができる。例えば、イソシアヌル酸と下記式(5a)で表される芳香族をパラホルムアルデヒドで反応させる方法や、イソシアヌル酸と下記式(5b)で表されるハロゲン化メチル芳香族を反応させる方法等が挙げられる。
【0025】
【化6】
【化7】
(但し、R
11〜R
15は式(4)のR
11〜R
15とそれぞれ同義であり、Zは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子である。)
【0026】
本発明のエポキシ樹脂の製造方法は、上記一般式(3)で表されるヒドロキシ化合物をエピクロルヒドリンと反応させる方法である。得られるエポキシ樹脂は、上記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂又はこれを主成分とするエポキシ樹脂である。上記ヒドロキシ化合物をエピクロルヒドリンと反応させる反応は、通常のエポキシ化反応と同様に行うことができる。
【0027】
例えば、上記ヒドロキシ化合物を過剰のエピクロルヒドリンに溶解した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下に、50〜150℃、好ましくは、60〜120℃の範囲で1〜10時間反応させる方法が挙げられる。この際のアルカリ金属水酸化物の使用量は、ヒドロキシ化合物中の水酸基及びN−H基の合計量1モルに対して、0.8〜1.2モル、好ましくは、0.9〜1.0モルの範囲である。また、エピクロルヒドリンはヒドロキシ化合物中の水酸基及びN−H基の合計量に対して過剰に用いられるが、通常、ヒドロキシ化合物中の水酸基及びN−H基の合計量1モルに対して、1.5〜30モル、好ましくは、2〜15モルの範囲である。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを留去し、残留物をトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解し、濾過し、水洗して無機塩を除去し、次いで溶剤を留去することにより目的のエポキシ樹脂を得ることができる。なお、上記ヒドロキシ化合物は、一分子中に水酸基及びN−H基を合計で3個有するので、ヒドロキシ化合物1モルに対するアルカリ金属水酸化物、又はエピクロルヒドリンの使用量は上記モル数の3倍と計算される。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂は、上記一般式(1)で表される。ここで、X
1は上記式(2)で表される基(グリシジルオキシアリールメチル基という。)であり、X
2、X
3はグリシジル基又は上記グリシジルオキシアリールメチル基である。本発明のエポキシ樹脂には、グリシジルオキシアリールメチル基を1、2又は3個有する3種類の化合物があり得る。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂は、これら3種類のいずれかの化合物であってもよく、これら3種類の混合物又はこれら3種類の内の任意の2種類の混合物であってもよいが、グリシジルオキシアリールメチル基を3個有する化合物が全体の30質量%以上含まれるものが好ましい。また、場合によっては、エポキシ樹脂中に、X
1からX
3のすべてがグリシジル基であるトリグリシジルイソシアヌル酸が不純物として含有されていてもよいが、この含有率は、30質量%以下にとどめることがよい。
【0030】
また、本発明のエポキシ樹脂は、上記一般式(1)で示される化合物又は混合物であるが、ある程度重合したものが含まれてもよい。
【0031】
一般式(1)で表されるエポキシ樹脂のエポキシ当量は、140〜700g/eq.の範囲であることが好ましく、より好ましくは170〜500g/eq.であり、さらに好ましくは200〜400g/eq.である。エポキシ当量が小さすぎる場合、誘電特性が悪化するとともに接着性も低下する。また、エポキシ当量が大きすぎる場合、耐熱性が低下するとともに樹脂の軟化点が上昇することからハンドリング性が悪化するので好ましくない。
【0032】
X
1からX
3のすべてがグリシジルオキシアリールメチル基となったエポキシ樹脂は、一般式(3)におけるY
1〜Y
3のすべてがヒドロキシアリールメチル基であるヒドロキシ化合物から容易に得ることができる。また、X
1からX
3の1個又は2個がグリシジルオキシアリールメチル基となったエポキシ樹脂は、Y
1からY
3の1個又は2個がヒドロキシアリールメチル基となった対応するヒドロキシ化合物から容易に得ることができる。
【0033】
上記式(2)において、R
1及びR
2は炭素数1〜8の炭化水素基を表す。R
3、R
4、及びR
5のうち一つがグリシジルオキシ基を表し、その他の二つは水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す。炭化水素基としては、R
1及びR
2については上記式(4)のR
11及びR
12の説明で例示されたものと、R
3〜R
5については式(4)のR
13〜R
15の説明で例示されたものと、それぞれ同様なものが挙げられる。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂は、硬化剤と共に組成物とされて、各種用途に使用できる。
【0035】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂及び硬化剤よりなるエポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂成分として上記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂を必須成分として配合したものである。
【0036】
このエポキシ樹脂組成物に配合する硬化剤としては、一般にエポキシ樹脂の硬化剤として知られているものはすべて使用できる。例えば、ジシアンジアミド、多価フェノール類、酸無水物類、芳香族及び脂肪族アミン類等がある。具体的に例示すれば、多価フェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、フルオレンビスナフトール、4,4’−ビフェノール、2,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類、あるいは、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、ポリビニルフェノール等に代表される3価以上のフェノール類がある。さらには、フェノール類、ナフトール類又は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、フルオレンビスナフトール、4,4’−ビフェノール、2,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類のホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−キシリレングリコール等の縮合剤により合成される多価フェノール性化合物等がある。また、上記一般式(3)で表されるヒドロキシ化合物も好ましく例示される。
【0037】
酸無水物としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル無水ハイミック酸、無水ナジック酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸とスチレンの共重合化合物等がある。
【0038】
また、アミン類としては、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン等の芳香族アミン類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族アミン類がある。
【0039】
エポキシ樹脂組成物には、これら硬化剤の1種又は2種以上を混合して用いることができる。そして、硬化剤成分として上記一般式(3)で表されるヒドロキシ化合物を少なくとも硬化剤の一部として使用することは有利であり、この場合その配合量は硬化剤全体中、5〜100質量%、好ましくは60〜100質量%の範囲であることがよい。
【0040】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物中には、エポキシ樹脂成分として、一般式(1)で表される本発明のエポキシ樹脂以外に別種のエポキシ樹脂を配合してもよい。この場合のエポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ基を2個以上有する通常のエポキシ樹脂はすべて使用できる。例を挙げれば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、3,3’,5,5’−テトラメチル−ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、フルオレンビスナフトール、4,4’−ビフェノール、2,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン等の2価のフェノール類、あるいは、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類、又はテトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類から誘導されるグルシジルエーテル化物等がある。これらのエポキシ樹脂は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0041】
本発明のエポキシ樹脂組成物中の一般式(1)で表されるエポキシ樹脂の配合量はエポキシ樹脂全体中、5〜100質量%、好ましくは60〜100質量%の範囲であることがよい。
【0042】
エポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、全エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、硬化剤の活性水素基0.2〜1.5モルの範囲が好ましく、0.3〜1.4モルがより好ましく、0.5〜1.3モルがさらに好ましく、0.8〜1.2モルが特に好ましい。この範囲外になると、硬化が不完全になり良好な硬化物性が得られない恐れがある。例えば、フェノール系硬化剤やアミン系硬化剤を用いた場合はエポキシ基に対して活性水素基をほぼ等モル配合し、酸無水物系硬化剤を用いた場合はエポキシ基1モルに対して酸無水物基を0.5〜1.2モル、好ましくは、0.6〜1.0モル配合する。上記フェノール樹脂を単独で使用する場合は、エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、フェノール性水酸基を0.9〜1.1モルの範囲で使用することが好ましい。
【0043】
本発明でいう活性水素基とは、エポキシ基と反応性の活性水素を有する官能基(加水分解等により活性水素を生ずる潜在性活性水素を有する官能基や、同等な硬化作用を示す官能基を含む。)のことであり、具体的には、酸無水物基やカルボキシル基やアミノ基やフェノール性水酸基等が挙げられる。なお、活性水素基に関して、1モルのカルボキシル基やフェノール性水酸基は1モルと、アミノ基(NH
2)は2モルと計算される。また、活性水素基が明確ではない場合は、測定によって活性水素当量を求めることができる。例えば、エポキシ当量が既知のフェニルグリシジルエーテル等のモノエポキシ樹脂と活性水素当量が未知の硬化剤を反応させて、消費したモノエポキシ樹脂の量を測定することによって、使用した硬化剤の活性水素当量を求めることができる。
【0044】
エポキシ樹脂組成物には、得られる硬化物の難燃性の向上を目的に、慣用公知の各種難燃剤を使用することができる。使用できる難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤(難燃剤としてのリン化合物)、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられる。環境に対する観点から、ハロゲンを含まない難燃剤が好ましく、特にリン系難燃剤が好ましい。これらの難燃剤は使用に際してもなんら制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いてもよく、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
【0045】
特に、難燃剤としてのリン化合物をさらに配合したエポキシ樹脂組成物において、リン化合物は、添加系のリン系難燃剤(リン含有添加剤)と反応性のリン化合物の2タイプに分けられ、反応性のリン化合物は、さらにリン含有エポキシ樹脂とリン含有硬化剤に分けられる。添加系のリン系難燃剤と反応性のリン化合物を比較した場合、反応性のリン化合物は、硬化の際にブリードアウトしない、相溶性が良い等の点から、難燃効果が大きく、反応性のリン化合物を使用する方が好ましい。
【0046】
リン含有添加剤は、無機リン系化合物、有機リン系化合物のいずれも使用できる。無機リン系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の含窒素無機リン系化合物が挙げられる。
【0047】
また、赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(1)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(2)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(3)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
【0048】
有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物(例えば、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート、ブチルピロホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート、(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェート等)、縮合リン酸エステル類(例えば、PX−200;大八化学工業株式会社製)、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物(例えば、ジフェニルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド等)、ホスホラン化合物(例えば、トリフェニル(9H−フルオレン−9−イリデン)ホスホラン等)等の汎用有機リン系化合物の他、含窒素有機リン系化合物(例えば、SPS−100、SPB−100、SPE−100;大塚化学株式会社製)や、ホスフィン酸金属塩(例えば、EXOLIT OP1230、EXOLIT OP1240、EXOLIT OP930、EXOLIT OP935;クラリアント社製)や、リン原子に直結した活性水素基を有するリン化合物(例えば、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(以下、DOPO)、ジフェニルホスフィンオキシド等)やリン含有フェノール化合物(例えば、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(以下、DOPO−HQ)、10−(2,7−ジヒドロキシ−1−ナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(以下、DOPO−NQ)、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン、ジフェニルホスフェニル−1,4−ジオキシナフタリン、1,4−シクロオクチレンホスフィニル−1,4−フェニルジオール、1,5−シクロオクチレンホスフィニル−1,4−フェニルジオール等)等の有機リン系化合物や、それら有機リン系化合物をエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
【0049】
また、リン含有エポキシ樹脂やリン含有硬化剤に使用される反応性リン化合物としては、上記のリン原子に直結した活性水素基を有するリン化合物やリン含有フェノール類が好ましく、入手の容易さから、例えば、DOPO、DOPO−HQ、DOPO−NQ等がより好ましい。
【0050】
リン含有エポキシ樹脂としては、特開平04−11662号公報、特開平05−214070号公報、特開2000−309624号公報、及び特開2002−265562号公報等で開示されているように、DOPOやジフェニルホスフィンオキシド等の反応性リン化合物と、必要に応じて、1,4−ベンゾキノンや1,4−ナフトキノン等のキノン化合物とを反応させた後、エポキシ樹脂と反応させることで得られるものが特に好ましい。このようなリン含有エポキシ樹脂としては、例えば、エポトートFX−305、エポトートFX−289B、TX−1320A、エポトートTX−1328(新日鉄住金化学株式会社製)等が挙げられる。
【0051】
リン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq.)は、200〜800であることがよく、好ましくは300〜780であり、より好ましくは400〜760である。また、リン含有エポキシ樹脂のリン含有率は、0.5〜6質量%であることがよく、好ましくは2〜5.5質量%であり、より好ましくは3〜5質量%である。
【0052】
リン含有硬化剤としては、上記のリン含有フェノール類の他に、特表2008−501063号公報や特許第4548547号公報に示すような製造方法で、例えばDOPOとアルデヒド類とフェノール化合物とを縮合反応することでリン含有フェノール化合物を得ることができる。このようなリン含有フェノール化合物としては、例えば、LC−950PM60(Shin−A T&C社製)やEXB9000A(DIC株式会社製)等が挙げられる。また、特開2013−185002号公報に示すような製造方法で、さらに芳香族カルボン酸類の反応させることで、リン含有活性エステル化合物を得ることができる。また、国際公開2008/010429号公報に示すような製造方法で、リン含有ベンゾオキサジン化合物を得ることができる。
【0053】
リン含有硬化剤のリン含有率は、0.5〜12質量%であることがよく、好ましくは2〜11質量%であり、より好ましくは4〜10質量%である。
【0054】
リン化合物の配合量は、リン化合物の種類、エポキシ樹脂組成物の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択される。リン化合物が反応性のリン化合物、すなわち、リン含有エポキシ樹脂やリン含有硬化剤の場合、エポキシ樹脂、硬化剤、難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)に対して、リン含有率は、0.2質量%以上6質量%以下が好ましく、0.4質量%以上4質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上3.5質量%以下がさらに好ましく、0.6質量%以上3質量%以下が特に好ましい。リン含有率が少ないと難燃性の確保が難しくなる恐れがあり、多すぎると耐熱性に悪影響を与える恐れがある。
【0055】
ここで、リン含有エポキシ樹脂は、リン化合物でもあるし、エポキシ樹脂でもあるとして扱う。同様に、リン含有硬化剤は、リン化合物でもあるし、硬化剤の両方に該当するものとして扱う。従って、リン含有硬化剤を使用する場合は、他の硬化剤又はリン化合物の使用は不要となる場合がある。同様に、リン含有エポキシ樹脂を使用する場合は、上記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂又はリン化合物の使用は不要となる場合がある。
【0056】
リン化合物が添加系のリン系難燃剤の場合の配合量は、エポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)100質量部中、赤リンを使用する場合は0.1〜2質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン系化合物を使用する場合は同様に0.1〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0057】
また、リン化合物を難燃剤として使用する場合、難燃助剤として、例えばハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ素化合物、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛等を併用してもよい。
【0058】
本発明においては、難燃剤としてこれらのリン化合物を使用することが好ましいが、以下に記載する難燃剤を、リン化合物と併用したり、リン化合物に代えて使用することもできる。
【0059】
窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン[2,4,6−トリス(シアノアミノ)−1,3,5−トリアジン]、メラム[4,4’−イミノビス(1,3,5−トリアジン−2,6−ジアミン)]、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラム等の硫酸アミノトリアジン化合物、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(例えば、LA−7052;DIC株式会社製等)、及びアミノトリアジン変性フェノール樹脂をさらに桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。シアヌル酸化合物としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。窒素系難燃剤の配合量は、窒素系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。また窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
【0060】
シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。シリコーン系難燃剤の配合量は、シリコーン系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。またシリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
【0061】
無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げられる。金属酸化物としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げられる。金属炭酸塩化合物としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げられる。金属粉としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げられる。ホウ素化合物としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げられる。低融点ガラスとしては、例えば、水和ガラス、SiO
2−MgO−H
2O、PbO−B
2O
3系、ZnO−P
2O
5−MgO系、P
2O
5−B
2O
3−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V
2O
5−TeO
2系、Al
2O
3−H
2O系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げられる。無機系難燃剤の配合量は、無機系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜15質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0062】
有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。有機金属塩系難燃剤の配合量は、有機金属塩系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0063】
ハロゲン系難燃剤としては、臭素化合物や塩素化合物が挙げられるが、毒性問題から塩素化合物は好ましくない。臭素化合物としては、例えば、p−ジブロモベンゼン、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、テトラデカブロモ−p−ジフェノキシベンゼン、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモベンゼン、2,2’−エチレンビス(4,5,6,7−テトラブロモイソインドリン−1,3−ジオン(例えば、SAYTEX BT−93;アルべマール社製)、エタン−1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)(例えば、SAYTEX 8010;アルベマール社製)等や、臭素化エポキシオリゴマー(例えば、SR−T1000,SR−T2000;阪本薬品工業製)等が挙げられる。ハロゲン系難燃剤の配合量は、ハロゲン系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)に対して、ハロゲン含有率は5質量%以上15質量%以下が好ましい。又はハロゲン系難燃剤を難燃剤として使用する場合、難燃助剤として、例えば、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン系化合物、酸化スズ、水酸化スズ等のスズ系化合物、酸化モリブテン、モリブテン酸アンモニウム等のモリブテン系化合物、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム等のジルコニウム系化合物、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム等のホウ素系化合物、シリコーンオイル、シランカップリング剤、高分子量シリコーン等のケイ素系化合物、塩素化ポリエチレン等を併用してもよい。
【0064】
本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じて、硬化促進剤、充填材、熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、シランカップリング剤、酸化防止剤、離型剤、消泡剤、乳化剤、揺変性付与剤、平滑剤、顔料等のその他の添加剤を配合することができる。さらに、粘度調整用として有機溶剤や反応性希釈剤等を配合することができる。
【0065】
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール誘導体、第3級アミン類、ホスフィン類等のリン系化合物、金属化合物、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。これら硬化促進剤は単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0066】
イミダゾール誘導体としては、イミダゾール骨格を有する化合物であればよく、特に限定されない。例えば、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ビス−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のアルキル置換イミダゾール化合物や、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2’−シアノエチル)イミダゾール等のアリール基やアラルキル基等の環構造を含有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物等が挙げられる。
【0067】
第3級アミン類としては、例えば、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン(DBU)等が挙げられる。ホスフィン類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等が挙がられる。金属化合物としては、例えば、オクチル酸スズ等が挙げられる。
【0068】
これらの硬化促進剤の内、ビルドアップ材料用途や回路基板用途として使用する場合には、耐熱性、誘電特性、耐ハンダ性等に優れる点から、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジンやイミダゾール類が好ましい。また、半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、トリフェニルホスフィンやDBUが好ましい。
【0069】
硬化促進剤の配合量は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂成分100質量部に対して、0.02〜15質量部が必要に応じて用いられる。好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.5〜8質量部であり、さらに好ましくは0.5〜5質量である。硬化促進剤を用いることにより、硬化温度を下げることや、硬化時間を短縮することができる。
【0070】
充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、硫酸バリウム、炭素等の無機充填剤や、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、アラミド繊維、セラミック繊維等の繊維状充填剤や、微粒子ゴム等が挙げられる。これらの中でも、硬化物の表面粗化処理に使用される過マンガン酸塩の水溶液等の酸化性化合物により、分解又は溶解しないものが好ましく、特に溶融シリカや結晶シリカが微細な粒子が得やすいため好ましい。また、充填材の配合量を特に大きくする場合には溶融シリカを用いることが好ましい。溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高めつつ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方がより好ましい。さらに球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。なお、充填剤は、シランカップリング剤処理やステアリン酸等の有機酸処理を行ってもよい。一般的に充填材を用いる理由としては、硬化物の耐衝撃性の向上効果や、硬化物の低線膨張性化が挙げられる。また、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を用いた場合は、難燃助剤として作用し難燃性が向上する効果がある。導電ペースト等の用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0071】
充填材の配合量は、硬化物の低線膨張性化や難燃性を考慮した場合、高い方が好ましい。エポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)に対して、1〜90質量%が好ましく、10〜85質量%がより好ましく、20〜80質量%がさらに好ましい。配合量が多いと積層板用途として必要な含侵性が不十分となり、接着性が低下する恐れがあり、さらに硬化物が脆く、十分な機械物性を得られなくなる恐れがある。また配合量が少ないと、硬化物の耐衝撃性の向上等、充填剤の配合効果がでない恐れがある。
【0072】
また、無機充填剤の平均粒子径は、0.05〜1.5μmが好ましく、0.1〜1μmがより好ましい。無機充填剤の平均粒子径がこの範囲であれば、エポキシ樹脂組成物の流動性を良好に保てる。なお、平均粒子径は、粒度分布測定装置により測定することができる。
【0073】
熱可塑性樹脂を配合することは、特に、エポキシ樹脂組成物をシート状又はフィルム状に成型する場合に有効である。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂との相溶性の面からはフェノキシ樹脂が好ましく、低誘電特性面からはポリフェニレンエーテル樹脂や変性ポリフェニレンエーテル樹脂が好ましい。
【0074】
その他の添加剤としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、熱硬化性ポリイミド等のエポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂や、キナクリドン系、アゾ系、フタロシアニン系等の有機顔料や、酸化チタン、金属箔状顔料、防錆顔料等の無機顔料や、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤や、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系、ヒドラジド系等の酸化防止剤や、シラン系、チタン系等のカップリング剤や、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、ハジキ防止剤、消泡剤等の添加剤等が挙げられる。これらのその他の添加剤の配合量は、エポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)に対して、0.01〜20質量%の範囲が好ましい。また、粘度調整用として有機溶剤又は反応性希釈剤も用いることができる。
【0075】
有機溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシジエチレングリコール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類や、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルジグリコール、パインオイル等のアルコール類や、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、メチルセロソルブアセテート、セロソルブアセテート、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、ベンジルアルコールアセテート等の酢酸エステル類や、安息香酸メチル、安息香酸エチル等の安息香酸エステル類や、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類や、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類や、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0076】
反応性希釈剤としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、トリルグリシジルエーテル等の単官能グリシジルエーテル類や、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等の二官能グリシジルエーテル類や、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールエタンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジルエーテル類、ネオデカン酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル類や、フェニルジグリシジルアミン、トリルジグリシジルアミン等のグリシジルアミン類が挙げられる。
【0077】
有機溶剤は、単独又は複数種類を混合したものを、不揮発分として20〜90質量%で使用することが好ましく、その適正な種類や使用量は用途によって適宜選択される。例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、1−メトキシ−2−プロパノール等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、その使用量は不揮発分で40〜80質量%が好ましい。また、接着フィルム用途では、例えば、ケトン類、酢酸エステル類、カルビトール類、芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、その使用量は不揮発分で30〜60質量%が好ましい。
反応性希釈剤は、主に無溶媒系で粘度の低減やゲルタイムの調整をする場合に使用される。この使用量が多いと、硬化反応が十分に進行せずに未反応成分が硬化物からブリードアウトする恐れや、機械強度等の硬化物物性を低下させる恐れがあるため、必要以上に使用しないことが好ましい。そのため、エポキシ樹脂中に30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0078】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、公知のエポキシ樹脂組成物と同様な方法で硬化することによって本発明の硬化物を得ることができる。硬化物を得るための方法としては、公知の方法をとることができ、注型、注入、ポッティング、ディッピング、ドリップコーティング、トランスファー成形、圧縮成形等や樹脂シート、樹脂付き銅箔、プリプレグ等の形態とし積層して加熱加圧硬化することで積層板とする等の方法が好適に用いられる。その際の硬化温度は通常、100〜300℃の範囲であり、硬化時間は通常、10分間〜5時間程度である。
【0079】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合することにより得られる。エポキシ樹脂、硬化剤、さらに必要により各種添加剤の配合されたエポキシ樹脂組成物は、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。硬化物としては、積層物、注型物、成型物、接着層、絶縁層、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0080】
エポキシ樹脂組成物が用いられる用途としては、プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板用絶縁材料、半導体封止材料、導電ペースト、導電フィルム、ビルドアップ用接着フィルム、樹脂注型材料、接着剤等が挙げられる。これら各種用途のうち、プリント配線板材料、回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ、いわゆる電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。これらの中でも、高難燃性、高耐熱性、低誘電特性、及び溶剤溶解性といった特性からプリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板(積層板)用材料、及び半導体封止材料に用いることが好ましい。
【0081】
エポキシ樹脂組成物を積層板等の板状とする場合、使用する充填材としては、その寸法安定性、曲げ強度等の点で、繊維状のものが好ましく、ガラス繊維を網目状に編み上げたガラス繊維布がより好ましい。
【0082】
エポキシ樹脂組成物は繊維状の補強基材に含浸させることによりプリント配線板等で用いられる本発明のプリプレグを作成することができる。繊維状の補強基材としてはガラス等の無機繊維や、ポリエステル樹脂等、ポリアミン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂等の有機質繊維の織布又は不織布を用いることができるが、これらに限定されるものではない。エポキシ樹脂組成物からプリプレグを製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えば、前記有機溶剤を含むワニス状のエポキシ樹脂組成物を、さらに有機溶剤を配合して適切な粘度に調整した樹脂ワニスに作成し、その樹脂ワニスを前記繊維状基材に含浸した後、加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)させることによって得られる。加熱温度としては、用いた有機溶剤の種類に応じ、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは100〜170℃である。加熱時間は、用いた有機溶剤の種類やプリプレグの硬化性によって調整を行い、好ましくは1〜40分間であり、より好ましくは3〜20分間である。この際、用いるエポキシ樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜80質量%となるように調整することが好ましい。
【0083】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、シート状又はフィルム状に成形して用いることができる。この場合、従来公知の方法を用いてシート化又はフィルム化することが可能である。接着シートを製造する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、前記樹脂ワニスに溶解しない支持ベースフィルム上に、樹脂ワニスをリバースロールコータ、コンマコータ、ダイコーター等の塗布機を用いて塗布した後、加熱乾燥して樹脂成分をBステージ化することで得られる。また、必要に応じて、塗布面(接着剤層)に別の支持ベースフィルムを保護フィルムとして重ね、乾燥することにより接着剤層の両面に剥離層を有する接着シートが得られる。支持ベースフィルムとしては、銅箔等の金属箔、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフインフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、シリコーンフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられ、これらの中では、つぶ等、欠損がなく、寸法精度に優れコスト的にも優れるポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。また、積層板の多層化が容易な金属箔、特に銅箔が好ましい。支持ベースフィルムの厚さは、特に限定されないが、支持体としての強度があり、ラミネート不良を起こしにくいことから10〜150μmが好ましく、25〜50μmがより好ましい。保護フィルムの厚さは、特に限定されないが、5〜50μmが一般的である。なお、成型された接着シートを容易に剥離するため、あらかじめ離型剤にて表面処理を施しておくことが好ましい。また、樹脂ワニスを塗布する厚みは、乾燥後の厚みで、5〜200μmが好ましく、5〜100μmがより好ましい。加熱温度としては、用いた有機溶剤の種類に応じ、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは100〜170℃である。加熱時間は、用いた有機溶剤の種類やプリプレグの硬化性によって調整を行い、好ましくは1〜40分間であり、より好ましくは3〜20分間である。このようにして得られた接着シートは通常、絶縁性を有する絶縁接着シートとなるが、エポキシ樹脂組成物に導電性を有する金属や金属コーティングされた微粒子を混合することで、導電性接着シートを得ることもできる。なお、上記支持ベースフィルムは、回路基板にラミネートした後に、又は加熱硬化して絶縁層を形成した後に、剥離される。接着シートを加熱硬化した後に支持ベースフィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。
【0084】
本発明のプリプレグや上記絶縁接着シートを用いて本発明の積層板を製造する方法を説明する。例えば、プリプレグを用いて積層板を形成する場合は、一枚又は複数枚のプリプレグを積層し、片側又は両側に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加圧加熱することでプリプレグを硬化、一体化させて、積層板を得ることができる。ここで金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を用いることができる。積層物を加熱加圧する条件としては、エポキシ樹脂組成物が硬化する条件で適宜調整して加熱加圧すればよいが、加圧があまり低いと、得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気的特性が低下する場合があるため、成型性を満足する条件で加圧することが望ましい。加熱温度は、160〜250℃が好ましく、170〜220℃がより好ましい。加圧圧力は、0.5〜10MPaが好ましく、1〜5MPaがより好ましい。加熱加圧時間は、10分間〜4時間が好ましく、40分間〜3時間がより好ましい。さらにこのようにして得られた単層の積層板を内層材として、多層板を作成することができる。この場合、まず積層板にアディティブ法やサブトラクティブ法等にて回路形成を施し、形成された回路表面を酸溶液で処理して黒化処理を施して、内層材を得る。この内層材の、片面又は両側の回路形成面に、プリプレグや絶縁接着シートにて絶縁層を形成するとともに、絶縁層の表面に導体層を形成して、多層板形成するものである。
【0085】
絶縁接着シートにて絶縁層を形成する場合は、複数枚の内層材の回路形成面に絶縁接着シートを配置して積層物を形成する。あるいは内層材の回路形成面と金属箔の間に絶縁接着シートを配置して積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成型することにより、絶縁接着シートの硬化物を絶縁層として形成するとともに、内層材の多層化を形成する。あるいは内層材と導体層である金属箔を絶縁接着シートの硬化物を絶縁層として形成する。ここで、金属箔としては、内層材として用いられる積層板に用いたものと同様のものを用いることができる。また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。
【0086】
また、前記プリプレグを用いて絶縁層を形成する場合は、内層材の回路形成面に、プリプレグを一枚又は複数枚を積層したものを配置し、さらにその外側に金属箔を配置して積層体を形成する。そしてこの積層体を加熱加圧して一体成型することにより、プリプレグの硬化物を絶縁層として形成するとともに、その外側の金属箔を導体層として形成するものである。ここで、金属箔としては、内層板として用いられる積層板に用いたものと同様のものを用いることができる。また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。このようにして成形された多層積層板の表面に、さらに、アディティブ法やサブトラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を成型することができる。また、このプリント配線板を内層材として前記の工法を繰り返すことにより、さらに多層の多層板を形成することができる。
【0087】
また、積層板にエポキシ樹脂組成物を塗布して絶縁層を形成する場合は、エポキシ樹脂組成物を好ましくは5〜100μmの厚みに塗布した後、100〜200℃で、好ましくは150〜200℃で、1〜120分間、好ましくは30〜90分間、加熱乾燥してシート状に形成する。一般にキャスティング法と呼ばれる方法で形成されるものである。乾燥後の厚みは5〜150μm、好ましくは5〜80μmに形成することが望ましい。なお、エポキシ樹脂組成物の粘度は、十分な膜厚が得られ、塗装むらやスジが発生しにくいことから、25℃において10〜40000mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは200〜30000mPa・sである。このようにして形成された多層積層板の表面に、さらに、アディティブ法やサブストラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を形成することができる。また、このプリント配線板を内層材として前記の工法を繰り返すことにより、さらに多層の積層板を形成することができる。
【0088】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて得られる封止材としては、テープ状の半導体チップ用、ポッティング型液状封止用、アンダーフィル用、半導体の層間絶縁膜用等があり、これらに好適に用いることができる。例えば、半導体パッケージ成形としては、エポキシ樹脂組成物を注型、又はトランスファー成形機、射出成形機等を用いて成形し、さらに50〜200℃で2〜10時間に加熱することにより成形物を得る方法が挙げられる。
【0089】
エポキシ樹脂組成物を半導体封止材料用に調製するためには、エポキシ樹脂組成物に、必要に応じて配合される、無機充填材等の配合剤や、カップリング剤、離型剤等の添加剤を予備混合した後、押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する手法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常シリカが用いられるが、その場合、エポキシ樹脂組成物中、無機質充填剤を70〜95質量%となる割合で配合することが好ましい。このようにして得られたエポキシ樹脂組成物を、テープ状封止材として使用する場合には、これを加熱して半硬化シートを作製し、封止材テープとした後、この封止材テープを半導体チップ上に置き、100〜150℃に加熱して軟化させ成形し、170〜250℃で完全に硬化させる方法を挙げることができる。また、ポッティング型液状封止材として使用する場合には、得られたエポキシ樹脂組成物を必要に応じて溶剤に溶解した後、半導体チップや電子部品上に塗布し、直接、硬化させればよい。
【0090】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらにレジストインキとして使用することも可能である。この場合は、エポキシ樹脂組成物に、エチレン性不飽和二重結合を有するビニル系モノマーと、硬化剤としてカチオン重合触媒を配合し、さらに、顔料、タルク、及びフィラーを加えてレジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。この時の硬化温度は、20〜250℃程度の温度範囲が好ましい。
【実施例】
【0091】
実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。特に断りがない限り、部は質量部を表し、%は質量%を表す。また、測定方法はそれぞれ以下の方法により測定した。
【0092】
・水酸基当量:JIS K0070規格に準拠して測定を行い、単位は(g/eq.)である。
・エポキシ当量:JIS K7236規格に準拠して測定を行い、単位は(g/eq.)である。
・軟化点:JIS K7234規格、環球法に準拠して測定を行った。具体的には、自動軟化点装置(株式会社メイテック製、ASP−MG4)を用いた。単位は(℃)である。
・溶融粘度:東亜工業株式会社製、CV−1S型コーンプレート粘度計を用いて、180℃にて測定を行い、単位は(mPa・s)である。
【0093】
・接着強度:JIS C6481に準拠して、銅箔剥離強度の測定を行った。
・ガラス転移温度、線膨張係数:IPC−TM−650 2.4.24.1に準じて熱機械分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、EXSTAR6000 TMA/SS120U)にて10℃/分の昇温条件で測定を行った時のTMA外挿値の温度をガラス転移温度(Tg)とした。Tg未満の線膨張係数をα1、Tg以降の線膨張係数をα2で表した。
・比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df):IPC−TM−650 2.5.5.9に準じてマテリアルアナライザー(AGILENT Technologies社製)を用い、容量法により周波数1GHzにおける誘電率及び誘電正接を求めることにより評価した。
・燃焼性:UL94に準じ、垂直法により評価した。
・吸水率:JIS K7209規格に準拠した。試験片は誘電率及び誘電正接の測定に使用したサンプルを用い、23℃の水に24時間浸漬して測定を行った。
【0094】
・GPC:本体(東ソー株式会社製、HLC−8220GPC)にカラム(東ソー株式会社製、TSKgelG4000HXL、TSKgelG3000HXL、TSKgelG2000HXL)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液にはテトラヒドロフランを用い、1mL/minの流速とし、検出器はRI検出器を用いた。標準の単分散ポリスチレンより求めた検量線より換算した。
・IR:フーリエ変換型赤外分光光度計(Perkin Eler Precisely製、Spectrum One FT−IR Spectrometer 1760X)の全反射測定法(ATR法)により波数650〜4000cm
−1の吸光度を測定した。
・NMR:フーリエ変換核磁気共鳴装置(JEOL製、JNM−ECA400)によりCDCL
3を溶媒として
1Hの液体測定を行った。
【0095】
合成例1
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、及び冷却管を備えた反応装置に、室温下で、6−t−ブチル−2,4−キシレノール217.5部、イソシアヌル酸50.0部、92%パラホルムアルデヒド45.5部、ヘキサメチレンテトラミン1.3部、ジメチルホルムアミド629部、及び純水11.4部を仕込み、窒素気流下、撹拌しながら約116℃で還流させて40時間反応させた。反応後、撹拌しながら約5℃まで冷却して結晶を析出させ後、結晶を濾過してさらにメタノールで洗浄を行い、減圧乾燥して白色粉末状の、下記式(6)で表されるヒドロキシ化合物(P1)を得た。P1の水酸基当量は233であった。
【化8】
【0096】
合成例2
合成例1において、6−t−ブチル−2,4−キシレノールを72.5部、92%パラホルムアルデヒドを15.2部、ジメチルホルムアミドを278部、純水を3.8部に変更した以外は合成例1と同様にして、下記式(7)で表されるイソシアヌル酸とヒドロキシ化合物の混合物(P2)を得た。P2の水酸基当量は106であった。GPCを用いてP2を分析した結果、イソシアヌル酸が11%、置換基Yの1個がヒドロキシアリールメチル基であるヒドロキシ化合物が50%、置換基Yの2個がヒドロキシアリールメチル基であるヒドロキシ化合物が26%、置換基Yの3個すべてがヒドロキシアリールメチル基であるヒドロキシ化合物が13%であった。
【化9】
【0097】
合成例3
合成例1において、6−t−ブチル−2,4−キシレノール217.5部を2,4,6−トリメチルフェノール316.5部に、ジメチルホルムアミドを827部に変更した以外は合成例1と同様にして、下記式(8)で表されるヒドロキシ化合物(P3)を得た。P3の水酸基当量は191であった。
【化10】
【0098】
合成例4
合成例1において、6−t−ブチル−2,4−キシレノール217.5部を2,3,5−トリメチルフェノール316.5部に、ジメチルホルムアミドを827部に変更した以外は合成例1と同様にして、下記式(9)で表されるヒドロキシ化合物(P4)を得た。P4の水酸基当量は191であった。
【化11】
【0099】
合成例5
合成例1と同様の反応装置に4−(ヒドロキシメチル)−3,5−ジメチルフェノール(和光純薬工業株式会社製、試薬)を300部とジクロロメタンを1000mL加えて溶解した。48%臭化水素酸を665部仕込み、窒素雰囲気下50℃で24時間撹拌した。有機層を水で3回洗浄した後、溶媒を留去して4−(ブロモメチル)−3,5−ジメチルフェノール(中間体1)を得た。
合成例1と同様の反応装置に中間体1を375部、炭酸ナトリウム110部、ジメチルホルムアミド853部を仕込み、窒素気流下、撹拌しながら約60℃10時間反応させた。反応終了後、水853部を仕込み、撹拌しながら約5℃まで冷却して結晶を析出させ後、結晶を濾過してさらにメタノールと水で洗浄を行い、減圧乾燥して白色粉末状の下記式(10)で表されるヒドロキシ化合物(P5)を得た。P5の水酸基当量は177であった。
【化12】
【0100】
合成例6
合成例1において、6−t−ブチル−2,4−キシレノール217.5部をフェノール114.8部に、ジメチルホルムアミドを194部に変更した以外は合成例1と同様にして、下記式(11)で表されるヒドロキシ化合物(P6)を得た。P6の水酸基当量は149であった。
【化13】
【0101】
合成例7
合成例1において、6−t−ブチル−2,4−キシレノール217.5部を2,6−キシレノール149.1部に、ジメチルホルムアミドを492部に変更した以外は合成例1と同様にして、下記式(12)で表されるヒドロキシ化合物(P7)を得た。P7の水酸基当量は177であった。
【化14】
【0102】
合成例8
合成例1において、6−t−ブチル−2,4−キシレノール217.5部を2,5−キシレノール149.1部に、ジメチルホルムアミドを492部に変更した以外は合成例1と同様にして、下記式(13)で表されるヒドロキシ化合物(P8)を得た。P8の水酸基当量は177であった。
【化15】
【0103】
合成例9
合成例1において、6−t−ブチル−2,4−キシレノール217.5部を6−t−ブチル−2−メチルフェノール200.4部に、ジメチルホルムアミドを594部に変更した以外は合成例1と同様にして、下記式(14)で表されるヒドロキシ化合物(P9)を得た。P9の水酸基当量は219であった。
【化16】
【0104】
実施例で使用した材料を以下に示す。
(エポキシ樹脂)
TX−1328:リン含有エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、TX−1328、リン含有率3%、エポキシ当量282)
ECN:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、YDCN−700−3、軟化点73℃、エポキシ当量203)
【0105】
(硬化剤)
PN1:フェノールノボラック樹脂(昭和電工株式会社製、ショウノールBRG−557、軟化点80℃、フェノール性水酸基当量105)
PN2:芳香族変性ノボラック樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、軟化点65℃、フェノール性水酸基当量230)
PN3:フェノールノボラック(群栄化学工業株式会社製、PSM−4261、軟化点80℃、フェノール性水酸基当量103)
DICY:ジシアンジアミド(日本カーバイド工業株式会社製、活性水素当量21)
SMA:スチレン/無水マレイン酸重合樹脂(Cray Valley社製、EF−30、酸価280mgKOH/g)
AE:活性エステル(DIC株式会社製、エピクロンHPC−8000−65T、活性エステル当量223)
DOPO−PN:リン含有フェノール硬化剤(Shin−A T&C社製、LC−950PM60、リン含有率9.2%、フェノール性水酸基当量341)
【0106】
(硬化促進剤)
2E4MZ:2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、キュアゾール2E4MZ)
TPP:トリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製、試薬)
【0107】
充填剤1:球状シリカ(電気化学工業株式会社製、FB−8S)
充填剤2:カーボンブラック(三菱化学株式会社製、MA−100)
【0108】
実施例1
ガラス製セパラブルフラスコに、ヒドロキシ化合物P1を100部、エピクロルヒドリンを396.5部、イオン交換水を4部仕込み、撹拌しながら50℃まで昇温した。均一に溶解後、49%水酸化ナトリウム水溶液を3.6部仕込み3時間反応を行った。次に、64℃まで昇温した後、水の還流が起きる程度まで減圧を引き、49%水酸化ナトリウム水溶液35.7部を3時間かけて滴下し、この滴下中に還流留出した水とエピクロルヒドリンを分離槽で分離しエピクロルヒドリンは反応容器に戻し、水は系外に除いて反応した。反応終了後、温度を70℃まで上げ脱水を行い、その後温度を135℃として残存するエピクロルヒドリンを回収した。常圧に戻し、メチルイソブチルケトン(MIBK)を204部加えて溶解した。イオン交換水を127部加え、撹拌静置して副生した食塩を水に溶解して除去した。次に49%水酸化ナトリウム水溶液を2.9部仕込み、80℃で90分間撹拌反応して精製反応を行った。MIBKを追加し、水洗を数回行いイオン性不純物を除去した。溶剤を回収し、目的のエポキシ樹脂(E1)を得た。得られたエポキシ樹脂E1は、エポキシ当量304、軟化点135℃、溶融粘度2600mPa・sであった。
エポキシ樹脂E1について、GPC測定、IR測定及びNMR測定した結果を
図1〜3に示す。
【0109】
実施例2〜5、比較例1〜4
ヒドロキシ化合物としてP2〜P5を使用した他は、表1に示す各原料の仕込量(部)に従い、実施例1と同様にして、エポキシ樹脂E2〜E5を得た。なお、表中、「エピクロロヒドリン」及び「NaOHaq」は、ヒドロキシ化合物100部に対するエピクロロヒドリン及び49%水酸化ナトリウム水溶液の仕込量である。
同様に、ヒドロキシ化合物P6〜P9を使用して、エポキシ樹脂EH1〜EH4を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量、軟化点、及び溶融粘度を表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
実施例6
エポキシ樹脂としてE1を39.4部、TX−1328を21.2部、硬化剤としてPN1を13.6部、DOPO−PNを25.7部、硬化促進剤として2E4MZを0.1部配合し、MEK、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミドで樹脂濃度50%に調整してエポキシ樹脂組成物ワニスを得た。
得られたエポキシ樹脂組成物ワニスをガラスクロス(日東紡績株式会社製、WEA2116、0.1mm厚)に含浸した。含浸したガラスクロスを150℃の熱風循環オーブン中で11分間乾燥してプリプレグを得た。得られたプリプレグ8枚と、上下に銅箔(三井金属鉱業株式会社製、3EC−III、厚み35μm)を重ね、130℃×15分+190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、1mm厚の積層板を得た。積層板のTg、α1、α2、接着強度、及び難燃性の測定結果を表2に示した。
【0112】
得られたプリプレグをほぐし、篩で100メッシュパスの粉状のプリプレグパウダーとした。得られたプリプレグパウダーをフッ素樹脂製の型に入れて、130℃×15分+190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、50mm角×2mm厚の試験片を得た。試験片のDk、Df、及び吸水率の測定結果を表2に示した。
【0113】
実施例7〜実施例14
エポキシ樹脂としてE2〜E5を使用した他は、表2の配合量(部)で配合し、実施例6と同様にして、エポキシ樹脂組成物ワニスを得て、さらに積層板及び試験片を得た。実施例6と同様の試験を行い、その結果を表2に示した。
【0114】
比較例5〜12
エポキシ樹脂としてEH1〜EH4を使用した他は、表3の配合量(部)で配合し、実施例6と同様にして、エポキシ樹脂組成物ワニスを得て、さらに積層板及び試験片を得た。実施例6と同様の試験を行い、その結果を表3に示した。
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
実施例15〜16、比較例13〜14
エポキシ樹脂として、E1、E3、EH1、及びEH2を用い、表4に示す配合でエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物を用いて175℃で成形し、さらに180℃にて12時間ポストキュアを行い、硬化物試験片を得た。各種物性測定の測定結果を表4に示した。なお、吸水率は24時間後ではなく、100時間後の測定結果を示した。
【0118】
【表4】